説明

回転加圧脱水機

【課題】汚泥等の処理対象物を、従来よりも高い脱水度にて処理することができる回転加圧脱水機を提供することを目的とする。
【解決手段】内輪スペーサ3及びディフレクタ6と、外輪スペーサ4との間に形成されている環状の濾室11内に液状の処理対象物を導入し、スクリーン5を回転させることによって処理対象物を前方へと進行させ、次第に圧力を加えて脱水処理を行う回転加圧脱水機1において、外輪スペーサ4の内径Rを、800〜1000mmの範囲内に設定し、更に、外輪スペーサ4の内径Rに対する内輪スペーサ3の外径rの比率を、0.36〜0.46の範囲内に設定したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥や、加工食品の原料又はその半加工品等、固体物質と液体物質の混合物(処理対象物)を濾過・圧縮して脱水処理を行う装置であって、特に、回転軸周りに形成された環状の濾室内を進行させるに従って、処理対象物に次第に圧力を加えて脱水処理を行う回転加圧脱水機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転加圧脱水機(ロータリープレスフィルタ)は、特開2001−113109号公報に示されているように、回転軸周りに形成された環状の濾室内に液状の処理対象物(処理原液)を導入し、二枚のドーナツ状スクリーンを回転させることによって処理対象物を前方へと進行させ、次第に圧力を加えて脱水処理を行う装置である。
【特許文献1】特開2001−113109号公報
【特許文献2】特開2004−074066号公報
【特許文献3】特開2004−291036号公報
【特許文献4】WO2005/077848A1
【特許文献5】WO2005/102495A1
【特許文献6】WO2005/105263A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の発明者らは、この種の回転加圧脱水機に関して長年にわたり研究を続けてきた結果、回転加圧脱水機の構成要素の一つである外輪スペーサの内径寸法や内輪スペーサの内径寸法等には、適正値(適正範囲)が存在し、これを特定して設計に反映させることにより、従来よりも高い脱水性能の回転加圧脱水機を得ることができる、という見識を得た。そこで、更なる研究が行われ、本発明に係る回転加圧脱水機が完成された。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の回転加圧脱水機は、内輪スペーサ及びディフレクタと、外輪スペーサとの間に形成されている環状の濾室内に液状の処理対象物を導入し、スクリーンを回転させることによって処理対象物を前方へと進行させ、次第に圧力を加えて脱水処理を行う装置であって、前記外輪スペーサの内径寸法が、800〜1000mmの範囲内に設定されていることを特徴としている。
【0005】
尚、外輪スペーサの内径に対する内輪スペーサの外径の比率を、0.5よりも小さく設定することが好ましく、更には、0.36〜0.46の範囲内に設定することが好ましい。また、先端が上下方向へ駆動するリストリクタを、ケーキ出口付近に配置することが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の回転加圧脱水機は、外輪スペーサの内径寸法が最適化されているため、従来の回転加圧脱水機と比べ、処理対象物をより好適に脱水することができ、併せて外輪スペーサの内径に対する内輪スペーサの外径の比率を最適化することにより、更に低い含水率にてケーキを排出することができる。
【0007】
また、先端が上下方向へ駆動するリストリクタをケーキ出口付近に配置することにより、ケーキ出口から排出されるケーキにおける含水率の上下差を好適に緩和し、平均含水率も下げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、添付図面に沿って、本発明に係る回転加圧脱水機を実施するための最良の形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る回転加圧脱水機1の垂直断面図であり、図2は、図1のX−X線による垂直断面図である。これらの図において、2は回転軸、3は内輪スペーサ、4は外輪スペーサ、5はスクリーン、6はディフレクタ、8は原液供給口、9はケーキ出口、10はリストリクタである。この回転加圧脱水機1は、これらの要素のほか、外側ケーシング、駆動装置、制御装置等によって構成されている。
【0009】
この回転加圧脱水機1は、下水処理施設等において汚泥を処理する際に使用されるものであり、原液供給口8から環状の濾室11(内輪スペーサ3及びディフレクタ6と、外輪スペーサ4との間に形成されている、断面が矩形状のスペースであって、環状(C字状)に延出する部分(環状部分)と直線状に延出する部分(直状部分)を有する。原液供給口8から環状部分及び直状部分を経て、ケーキ出口9に至るまでのスペース。)内に、固形分濃度1〜4%の汚泥(処理原液)を導入し、スクリーン5を回転させることによって汚泥を前方へと進行させ、次第に圧力を加えて濾過圧縮し、ケーキ出口9から、固形分濃度20〜30%程度(含水率70〜80%程度)の汚泥ケーキを排出することができる装置である。
【0010】
本実施形態の回転加圧脱水機1は、外輪スペーサ4の内径寸法が最適化されており(内径R:900mm)、このため、従来の回転加圧脱水機よりも高い脱水性能を獲得するに至っている。以下、この点について説明する。
【0011】
外輪スペーサ4の内径Rについて、「900mm」が最適値であるとする理由は次の通りである。この種の回転加圧脱水機において、外輪スペーサ4の内径Rを大きくした場合、その分だけ濾過面積が増加することになり、この「濾過面積が増加する」という観点からは、外輪スペーサ4の内径Rを大きくすることにより脱水度を向上させることができる、と考えられる。
【0012】
より具体的には、図2に示すように、外輪スペーサ4の内径を「R」とし、内輪スペーサ3の外径を「r」とした場合、この回転加圧脱水機1における濾過面積S(2枚のスクリーン5のうち、濾室11に臨む部分の総面積)は、次式の通りとなる。
S=((R/2)−(r/2))π×2
この式からも明らかなように、濾過面積Sの値は、外輪スペーサの内径Rの2乗に比例する。つまり、外輪スペーサ4の内径Rを大きくすると、濾過面積Sは大きくなる。そして、回転加圧脱水機は濾過式の脱水機であり、「RUTHの濾過理論」で表されるように、濾液量は濾過面積Sに比例する。従って、外輪スペーサ4の内径Rが大きいほど濾液量は多くなり、脱水度は向上することになる。
【0013】
しかしながら、外輪スペーサ4の内径Rを大きくした場合、濾室11のカーブはその分だけ緩くなり、この「濾室11のカーブが緩くなる」という観点からは、処理対象物(汚泥)の処理量が一定である場合には、外輪スペーサ4の内径Rを大きくすると脱水度は低下してしまう、と考えられる。
【0014】
より具体的に説明すると、図3は、外輪スペーサ4の内径Rが異なる3台の回転加圧脱水機(内径R:300mm、600mm、1200mm)に対し、濾過速度(単位濾過面積に対する処理対象物の固形物供給量)が等しくなるように処理対象物(汚泥)を供給した場合において、各回転加圧脱水機から排出されたケーキにおける含水率の測定結果を示すグラフであり、このグラフからも明らかなように、濾過速度が一定である場合には、外輪スペーサ4の内径Rが大きいほど、機外へ排出されるケーキにおける含水率は高くなる(脱水度は低くなる)。
【0015】
濾過速度が一定である場合、外輪スペーサ4の内径Rが大きいほど、機外へ排出されるケーキにおける含水率が高くなるのは、濾室11のカーブが「緩い」場合よりも、「きつい」場合の方が、圧搾力が大きくなると考えられるところ、外輪スペーサ4の内径Rが大きい場合には、濾室11のカーブが緩くなり、これにより圧搾力が低下してしまうからであると考えられる。
【0016】
このように、外輪スペーサ4の内径Rを大きくしようとすると(或いは、小さくしようとすると)、相反する効果を伴うファクタに影響を与えることになる。このことは、「外輪スペーサ4の内径Rの値」には、対象物の処理量との関係で最適値が存在することを意味している。
【0017】
本発明の発明者らは、「外輪スペーサ4の内径Rの値」に最適値が存在することを前提として、各種の実験、検証を行い、その具体的な数値を特定した。図4は、外輪スペーサ4の内径Rが異なる3台の回転加圧脱水機(内径R:300mm、600mm、1200mm)に対し、濾過速度(単位濾過面積に対する処理対象物の固形物供給量)が等しくなるように処理対象物(汚泥)を供給した場合において、各回転加圧脱水機から排出されたケーキにおける含水率の測定結果(黒丸)と、供給量を一律に揃えた場合(供給量:1.4m/h)におけるケーキ含水率の測定結果(白丸)を示すグラフである。
【0018】
このグラフからも明らかなように、外輪スペーサ4の内径Rを小さくすると、内径Rが大きい場合と比べ、一定濾過面積に対する汚泥供給量が増加して、含水率が上昇する現象と、濾室11のカーブがきつくなることにより圧搾力が増加し、ケーキ含水率が低下する現象が同時に現れる。これらの二つの現象を総合的に評価すべく解析を行ったところ、図4のグラフにおいて太線で示すような曲線(含水率の推定値)が導き出された。そして、この推定曲線によると、内径Rが900mm程度のときに含水率は最低となる。このようにして、本発明の発明者らは、外輪スペーサ4の内径Rについて、「900mm」が最適値であるとの知見を得るに至った。
【0019】
尚、汚泥供給量を1.4m/hより増やしたときは、一定濾過面積に対する汚泥供給量の影響が大きく出るため、最低含水率となる内径Rの値は900mmより大きくなり、逆に汚泥供給量を下げた場合は、最低含水率となる内径Rの値は900mmより小さくなることが推定される。汚泥処理が行われる際、汚泥供給量は、コスト面を考えると1.4m/h程度となり、これを中心として上下することを考慮すると、内径Rの最適値は、現実的には800〜1000mmの範囲となる。
【0020】
また、本実施形態の回転加圧脱水機1は、外輪スペーサ4の内径寸法だけでなく、「外輪スペーサ4の内径」に対する「内輪スペーサ3の外径」の比率についても最適化されており(内輪スペーサ3の外径r:370mm/外輪スペーサ4の内径Rに対する内輪スペーサ3の外径rの比率:0.41)、このことも、脱水性能の向上に寄与している。
【0021】
この点について詳細に説明すると、従来の一般的な回転加圧脱水機においては、「外輪スペーサの内径」に対する「内輪スペーサの外径」の比率は、「0.5」以上となっていたところ、本発明の発明者らが、外輪スペーサ4の内径Rの最適値を得るために行った研究の過程において、当該比率を小さくすると、濾過面積が増加するとともに、濾室11の一部(内輪スペーサ3に近い領域)のカーブがきつくなり、その結果、圧搾力が大きくなり、脱水度を向上させることができる、という知見を得るに至った。
【0022】
但し、内輪スペーサ3の外径rを、回転軸2の直径よりも小さくすることはできないため、当該比率を小さくすることには限界がある。また、当該比率が小さ過ぎると、外輪スペーサ4に近い濾室11内領域(外側)を通過した処理対象物と、内輪スペーサ3に近い領域(内側)を通過した処理対象物との間で、含水率の差が限度を超えて開いてしまう可能性がある。
【0023】
具体的には、当該比率が「0.35」よりも小さいと、内側を通過したものと外側を通過したものとの含水率の差が限度を超えてしまうと考えられ、汚泥処理の場合、「0.41(±0.05)」(即ち、0.36〜0.46)が最適値であると考えられる。このため本実施形態においては、「外輪スペーサの内径」に対する「内輪スペーサの外径」の比率は、「0.41」に設定され、内輪スペーサの外径rは「370mm」に設定されている。
【0024】
尚、本実施形態の回転加圧脱水機1は、内輪スペーサの外径の比率が小さくなっているため、許容範囲内ではあるものの、ケーキ出口9付近において、上方のケーキ(ディフレクタ6に近い部位のケーキ)と下方のケーキ(外輪スペーサ4に近い部位のケーキ)との間で、含水率に差が生じてしまう。そこで、このような偏差を少しでも緩和できるように、先端が上下方向へ駆動するリストリクタ10が、ケーキ出口9付近に配置されている(図1参照)。
【0025】
従来のリストリクタとしては、先端が水平方向へ駆動するものが主流であったが、本実施形態においては、先端が上下方向へ駆動するリストリクタ10が採用されており、ケーキ出口9においてケーキを下から上へ向かって押し付けることにより、含水率の上下差を緩和し、平均含水率も低下させることができる。また、この上下駆動するリストリクタ10は、ケーキ出口の最大開口をより大きくすることができるため、濾室11内におけるケーキの閉塞防止にも効果的である。
【0026】
図5は、外輪スペーサ4の内径Rが異なる2台の回転加圧脱水機(内径R:900mm、1200mm)に対し、下水消化汚泥を供給した場合において、各回転加圧脱水機から排出されたケーキにおける含水率の測定結果を示すグラフである。尚、四角の点は、内径Rが1200mmの回転加圧脱水機についての測定結果を示し、三角の点は、内径Rが900mmの回転加圧脱水機についての測定結果を示している。この測定結果によると、汚泥供給量1.4〜3.0m/hの範囲において、内径Rが900mmの回転加圧脱水機は、1200mmの回転加圧脱水機と比べ、ケーキ含水率が0.6〜2.7%(平均1.9%)低くなっており、この実験により、外輪スペーサ4の内径Rの最適値が「900mm」であることが裏付けられた。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る回転加圧脱水機1の垂直断面図。
【図2】図1のX−X線による回転加圧脱水機1の垂直断面図。
【図3】内径Rが異なる3台の回転加圧脱水機(内径R:300mm、600mm、1200mm)についてのケーキ含水率の測定結果を示すグラフ。
【図4】内径Rが異なる3台の回転加圧脱水機(内径R:300mm、600mm、1200mm)についてのケーキ含水率の測定結果を示すグラフ。
【図5】内径Rが異なる2台の回転加圧脱水機(内径R:900mm、1200mm)についてのケーキ含水率の測定結果を示すグラフ。
【符号の説明】
【0028】
1:回転加圧脱水機、
2:回転軸、
3:内輪スペーサ、
4:外輪スペーサ、
5:スクリーン、
6:ディフレクタ、
8:原液供給口、
9:ケーキ出口、
10:リストリクタ、
11:濾室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪スペーサ及びディフレクタと、外輪スペーサとの間に形成されている環状の濾室内に処理対象物を導入し、スクリーンを回転させることによって処理対象物を前方へと進行させ、次第に圧力を加えて脱水処理を行う回転加圧脱水機において、
前記外輪スペーサの内径寸法が、800〜1000mmの範囲内に設定されていることを特徴とする回転加圧脱水機。
【請求項2】
前記外輪スペーサの内径に対する前記内輪スペーサの外径の比率が、0.5よりも小さくなるように設定されていることを特徴とする、請求項1に記載の回転加圧脱水機。
【請求項3】
前記外輪スペーサの内径に対する前記内輪スペーサの外径の比率が、0.36〜0.46の範囲内に設定されていることを特徴とする、請求項1に記載の回転加圧脱水機。
【請求項4】
先端が上下方向へ駆動するリストリクタを、ケーキ出口付近に配置したことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の回転加圧脱水機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−326011(P2007−326011A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−158003(P2006−158003)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(591162022)巴工業株式会社 (32)
【Fターム(参考)】