説明

回転型電子部品およびその製造方法

【課題】本発明は、各種電子機器の入力操作部を構成する際に用いられる回転型電子部品に関し、顧客から要望された軸長のものへの対応が迅速に行えるようにする。
【解決手段】機能素子部を収納するケース部と、軸受1で保持されて上方に突出する上記機能素子部作動用の回転軸20と、その回転軸20の上部に係止された軸長調整軸30とを備え、上記回転軸20と上記軸長調整軸30とが、係止部材40の軸線方向に沿って伸びる線状部45により一体化される構成としたため、軸長の異なる多彩な回転型電子部品が提供可能となり、顧客から要望された軸長のものへの対応が容易に行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器の入力操作部を構成する際などに用いられる回転型電子部品およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の回転型電子部品について、汎用構成の回転型エンコーダを例として以下に図面を用いて説明する。
【0003】
図15は従来の回転型エンコーダの断面図、図16は同要部である軸受と操作軸の組み立て状態を示す図である。
【0004】
同図に示すように、樹脂からなるケース部10の上部にはダイカスト製の軸受1が結合されており、その軸受1の円形の中心孔1Aには、同じくダイカスト製で棒状に形成された操作軸2の円柱部2Aが嵌合保持され、操作軸2は回転及び軸線方向の動きが可能となっている。この操作軸2は、上部が大径部2Eとしてなると共に、略中央位置に設けられた細径溝部2Bに軸受1の中心孔1Aよりも大きい外形のC形の止めリング4が装着されて上方への抜け防止がなされている。
【0005】
この操作軸2は、図16に示すように、軸受1の上方から中心孔1A内に挿通され、その下端側から止めリング4を細径溝部2B位置まで嵌め込んでいって上記状態に組み込まれている。
【0006】
そして、操作軸2は、下方が非円形断面部2Cに構成され、その非円形断面部2Cには、エンコーダ部5の回転体6が回転運動は伝達されるが軸線方向の動きは伝わらないように係合され、さらにその後端部2Dはプッシュ操作型のスイッチ部7のばね性を有する可動接点体8に当接して操作軸2全体が上方へ押された状態となって、上記止めリング4は軸受1の中心孔1Aの周囲天面部分に当接している。なお、9は軸受1の下面に装着されたバネ体であり、下方側に向かって伸ばされた弾性アームが、回転体6の上面に設けられた放射状凹凸部に弾接している。このバネ体9は、回転体6の回転時に回転トルクを発生させると共に、所定の操作角度位置でクリック感触を発生させるために配されている。
【0007】
上記のように構成された従来のプッシュスイッチ付回転型エンコーダは、操作軸2上方の大径部2Eにつまみ3が装着されて使用され、そのつまみ3を回転操作して操作軸2を回転させると、回転体6が回転運動をしてエンコーダ部5から端子を介してパルス信号が得られる。一方、つまみ3を押して操作軸2を押し込むと、スイッチ部7における端子間が導通状態となるものであった。
【0008】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平10−64375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来の回転型電子部品(回転型エンコーダ)は、各種電子機器の入力操作部を構成する際などに用いられるが、その入力操作部の構成は機器ごとに異なる。
【0010】
特に、操作するつまみ3と当該回転型電子部品が装着される配線基板間の高さ寸法は、その入力操作部の構成に応じて異なり、顧客からはそれに対応する操作軸2の長さ寸法のものを都度要望されていた。
【0011】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、顧客からの軸長要望のものに容易に対応できる構成とされた回転型電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0013】
本発明の請求項1に記載の発明は、機能素子部を収納するケース部と、軸受で保持されて上方に突出する上記機能素子部作動用の回転軸と、その回転軸の上部に係止された軸長調整軸とを備え、上記回転軸と上記軸長調整軸とが、係止部材の軸線方向に沿って伸びる線状部により一体化されて係止状態になされていることを特徴とする回転型電子部品である。
【0014】
当該構成であれば、顧客から要望された軸長のものに対し、それに応じる軸長調整軸を、軸線方向に沿って伸びる係止部材の線状部で回転型電子部品の主要本体部分に一体化させて係止させるのみで対応できるため、短納期化などが図れると共に、軸長違いの多彩な回転型電子部品が容易に提供可能となるという作用を有する。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、回転軸の上部側面に上端位置から下方に軸線方向に伸びる係合溝を備え、その係合溝は、溝幅が側方に広がる拡大部を有し、軸長調整軸の筒状部分の内周面に設けられた突起が上記拡大部の側方に広がった領域内に位置すると共に、上記係合溝内に上方から挿入された軸線方向に沿って伸びる係止部材の線状部で上記突起が側方への移動規制をされて係止されていることを特徴とするものである。
【0016】
当該構成であれば、回転軸と軸長調整軸とが簡素な凹凸部分での係合で、その抜け止めが軸線方向に伸びる係止部材の線状部で確実になされたものに構成できるという作用を有する。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載の発明において、拡大部の側方に広がった領域における上下いずれかの端面に対し、突起の対応する端面が圧入状態で係止されていることを特徴とするものであり、回転軸と軸長調整軸との係止状態が、より安定してガタツキのない状態で一体化されたものに構成できるという作用を有する。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項2記載の発明において、回転軸の係合溝が拡大部のみで形成され、軸長調整軸に設けられた突起が、上記拡大部内に挿入された軸線方向に沿って伸びる係止部材の線状部で上記拡大部の側壁面に圧接状態に押し当てられて係止されていることを特徴とするものであり、回転軸の係合溝が簡素な構成のもので済むという作用を有する。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項1記載の発明において、軸長調整軸は、少なくとも下端部が筒状であると共に、その内周面を含めて上下の軸線方向に貫通する係合溝を備え、その係合溝は、溝幅が側方に広がる拡大部を有し、回転軸の上部側面に設けられた突起が上記拡大部内に位置すると共に、上記係合溝内に上方から挿入された軸線方向に沿って伸びる係止部材の線状部で上記突起が側方への移動規制をされて係止されていることを特徴とするものであり、当該構成であっても請求項2記載の発明による作用と同様に、回転軸と軸長調整軸とが、簡素な凹凸部分での係合で、その抜け止めが軸線方向に伸びる係止部材の線状部で確実になされたものに構成できるという作用を有する。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項2記載の回転型電子部品の製造方法であって、上部側面の上端位置から下方に軸線方向に伸び、その溝幅が側方に広がる拡大部を有する係合溝を備えた機能素子部作動用の回転軸を、機能素子部を収容させたケース部に組み合わされる軸受に対し、その上部を上方に突出させて回転可能に保持させる工程と、筒状部分の内周面に突起が設けられた軸長調整軸を準備して、上記回転軸と上記軸長調整軸とを軸線方向で移動させて上記突起を上記拡大部内の位置に挿入させる工程と、上記軸長調整軸または上記回転軸を回転させて上記突起を上記拡大部の側方に広がった領域内に移動させる工程と、軸線方向に沿って伸びる係止部材の線状部を上記係合溝に対して上方から挿入し上記線状部によって上記突起の側方への移動規制をなして係止させる工程を含む回転型電子部品の製造方法である。
【0021】
当該製造方法によれば、上記回転軸に対する上記軸長調整軸の一体化のための各工程が部材の軸線方向への直線的な移動や軸の回転移動で行えるので組み立て工数などが少なく機械化なども容易であるという作用を有する。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項5記載の回転型電子部品の製造方法であって、上部側面に突起を備えた機能素子部作動用の回転軸を、機能素子部を収容させたケース部に組み合わされる軸受に対し、その上部を上方に突出させて回転可能に保持させる工程と、少なくとも下端部が筒状であると共に、その内周面を含めて上下の軸線方向に貫通し、溝幅が側方に広がる拡大部を有する係合溝を備えた軸長調整軸を準備して、上記回転軸と上記軸長調整軸とを軸線方向で移動させて上記突起を上記拡大部内の位置に挿入させる工程と、上記軸長調整軸または上記回転軸を回転させて上記突起を上記拡大部の側方に広がった領域内に移動させる工程と、軸線方向に沿って伸びる係止部材の線状部を上記係合溝に対して上方から挿入し上記線状部によって上記突起の側方への移動規制をなして係止させる工程を含む回転型電子部品の製造方法であり、当該製造方法も請求項6記載の発明による作用と同様に、上記回動軸に対する上記軸長調整軸の一体化のための各工程が部材の軸線方向への直線的な移動や軸の回転移動で行えるので組み立て工数などが少なく機械化なども容易であるという作用を有する。
【発明の効果】
【0023】
以上のように本発明によれば、顧客から要望された軸長のものに対し、それに応じる軸長調整軸を、軸線方向に沿って伸びる係止部材の線状部で、回転型電子部品の主要本体部分に一体化させて係止させることにより、軸長の異なる多彩な回転型電子部品が容易に提供可能になるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施の形態について、従来と同様に回転型エンコーダを例として以下に図面を用いて説明する。なお、従来と同一構成部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0025】
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態による回転型エンコーダの断面図、図2は同要部である軸部分における組み合わせ前の分解斜視図である。
【0026】
同図において、20は、円柱状または円筒状の略円形棒状で、その中間位置に設けられたリング状突出部20Aからの上部が円柱部20Bに形成された回転軸であり、この回転軸20は、樹脂製のケース部10の上部に結合されたダイカスト製の軸受1の中心孔1Aに下方側から挿通されて回転及び軸線方向の動きが可能なように嵌合保持されている。
【0027】
そして、上記ケース部10には、従来と同じく機能素子部としてなるエンコーダ部5およびプッシュ操作型のスイッチ部7が構成されており、回転軸20の下方の非円形断面部20Cにエンコーダ部5の回転体6が回転運動は伝達されるが軸線方向の動きは伝わらないように係合され、さらにその後端部20Dはスイッチ部7のばね性を有する可動接点体8に当接して回転軸20全体は上方に押された状態となっており、このため回転軸20は、リング状突出部20Aの上面部が軸受1における中心孔1Aの周囲天面部分に当接して上方への抜け止めが図られている。なお、軸受1の下面にはバネ体9が装着されており、その弾性アームが回転体6の上面に設けられた放射状凹凸部に弾接していることなどは従来と同じである。
【0028】
そして、上記軸受1から上方に突出している回転軸20の上部部分の側面にあたる外周円周面には係合溝25が設けられている。上記係合溝25は、側面視でL字状をなし、回転軸20上端から軸線方向に沿って一定幅で下方に伸びる上方溝部26と、その上方溝部26の下部に繋がり溝幅が側方に矩形で広がる拡大部27とからなる。なお、以下には、図1や図2に記載した左の周方向側に拡大部27が広がって形成されたL字状の係合溝25のものを例として説明し、その説明では、図2に示したように、上記拡大部27の広がった方向側を左、その逆の方向側を右と定義して説明する。
【0029】
そして、上記係合溝25は、回転軸20の中心軸線に対し、全て同一の深さで設けられている。つまり、その底面は、回転軸20の外周円周面に平行なものとして形成されている。
【0030】
また、拡大部27の下方内壁面は、軸線方向と直交する水平な平坦面として形成されている。それに対し、拡大部27の上方溝部26から左側に広がる位置の上方内壁面は、同様に水平な平坦面もしくは上方溝部26から左側に離れるにつれて上下寸法が大きくなる傾斜状態の面に形成されている。また、拡大部27と上方溝部26の右側内壁面どうしは、段差などなく同一面で構成されている。
【0031】
上記形状の係合溝25は、回転軸20の中心軸線に対し線対称位置の二箇所に設けられている。
【0032】
そして、回転軸20の上部には、軸長調整軸30が結合されて一体化されている。
【0033】
この軸長調整軸30は、略円筒状で、その内周円周面に直方体状で内側に突出する二つの突起35を備えており、上記各係合溝25に対応する上記各突起35は、拡大部27の左側に広がった領域内に位置している。なお、上記突起35の上面は、上記係合溝25の底面に沿う形状で形成されている。
【0034】
また、詳細は後述するが、突起35は拡大部27の上記左側に広がった領域における上方および下方内壁面間に圧入状態で保持されている。なお、回転軸20と軸長調整軸30とは同じ材質どうしとすることが好ましく、特に高温高湿条件下などでの寸法変動が少なくて硬度も高いダイカスト製どうしとすると、上記圧入保持状態が安定して好ましい。
【0035】
そして、40は、上部の中実円柱状に形成されたキャップ部41と、軸線方向に沿って平行に下方に直線状に伸びる一対の線状部45とを備えた係止部材であり、上記各線状部45が軸長調整軸30の上方から各係合溝25内に挿通されて組み込まれている。各線状部45は、一定幅で構成されている。そして、その線状部45は、拡大部27内まで挿入され、少なくとも線状部45の下方位置では、その左側の側端面が突起35の右側の側端面に、またその右側の側端面が拡大部27の右側内壁面に圧接状態となるように圧入されており、この線状部45によって上記突起35は側方への移動規制が確実になされた係止状態となっている。なお、回転軸20および軸長調整軸30がダイカスト製のものであれば、係止部材40もダイカスト製とすることが好ましい。なお、係止部材は、少なくとも線状部を備えていればよく、丸断面または角断面をもつ針金状の金属製の鋼線をコの字状に曲げて形成されていたり、係合溝25ごとに個々のものが圧入されていてもよい。
【0036】
また、当該構成のように軸長調整軸30が略円筒状の場合には、係止部材40としてキャップ部41を有するものが好ましい。つまり、組み込まれた状態で、キャップ部41下面外周が軸長調整軸30の内周中間段部30Aに当接して係止部材40の下方への移動規制をすると共に、キャップ部41によって軸長調整軸30の上部が覆われて軸長調整軸30内に塵埃が入らない構成にできるためである。
【0037】
本発明によるプッシュスイッチ付回転型エンコーダは、以上のように構成され、軸長調整軸30につまみ3を装着して各種機器の入力操作部を構成する際などに使用される。
【0038】
その動作は、つまみ3を回転操作して軸長調整軸30と一体化している回転軸20を回転させると、回転体6が回転運動をしてエンコーダ部5から端子を介して所定のパルス信号が得られ、また、つまみ3を押して軸長調整軸30と一体化している回転軸20を押し込むと、スイッチ部7における端子間が導通状態となる。
【0039】
本発明によるものは、上記のように軸長調整軸30を回転軸20に一体化させて構成したものであるため、軸長調整軸30を組み付ける前までの主要本体部分を標準的に製作しておき、顧客から要求された軸長にあわせて、事前に準備した数種類の長さの軸長調整軸30およびそれに対応する係止部材40の中から対応する長さのものを選び、それらを回転軸20に組み込み軸長調整軸30を含んで要望された軸長のものとして迅速に対応することができる。
【0040】
ここで、当該回転型電子部品の製造方法につき、その要部の軸長調整軸30の組み込み方法を図面を用いて説明する。なお、各図においては、判り易くするため、ケース部10などの図示は省略している。
【0041】
まず、上部側面の外周円周面に係合溝25を備えた機能素子部作動用の上記回転軸20を準備し、図3に示すように、その上部部分が上方に突出するように軸受1の下方側から回転軸20を中心孔1A内に挿入させる。その後、上記軸受1を、エンコーダ部5およびスイッチ部7の構成部材が組み込まれたケース部10などと組み合わせ、回転軸20で機能素子部が操作可能な主要本体部分を製作する。
【0042】
続いて、上記係合溝25の上方溝部26よりも細幅の突起35を円筒部の内周円周面に備えた上記軸長調整軸30を準備し、その軸長調整軸30を上記回転軸20の上部部分に対し、上記各突起35を上記回転軸20の各係合溝25の上方溝部26に沿わせつつ、図4に実線矢印で示すように、軸線方向で軸長調整軸30を挿入させていく。その突起35の係合溝25への挿入状態を側面視で図5に示す。
【0043】
そして、上記軸長調整軸30の挿入は、図6に示したように、下方側に相当する突起35の下方側端面が、拡大部27の下方内壁面に当接して停止される。なお、軸長調整軸30は複数のものの中から必要に応じた長さ寸法のものを選択して用いている。また、その突起35においても、上記停止状態で、突起35の上方側端面が、拡大部27の上方内壁面よりも若干上方側に突出した状態となる寸法のものを用いている。
【0044】
続いて、図6に実線矢印で示すように、上記突起35が上記拡大部27の左側に広がっている領域内に位置するように、上記軸長調整軸30または上記回転軸20を回転させる。このとき、突起35は、上記左側に広がった領域を含めて平坦に形成されている拡大部27の下方内壁面に沿って回転移動していき、拡大部27の上記左側に広がった領域の上方および下方内壁面間に圧入されていく。なお、上記回転移動に伴って圧入される方式としては、上記寸法関係に設定してなされるもの以外に、例えば、拡大部よりも短寸法の突起が、拡大部の上方内壁面に形成された圧入用凸部を潰しながら圧入状態となるものなどでもよく特に限定されるものではない。
【0045】
そして上記回転移動は、突起35の左側の側端面が拡大部27の左側内壁面に当接するまで行われ、その停止状態で、突起35の右側の側端面は上方溝部26における左側内壁面より若干突出した状態となる。
【0046】
最後に、上記各上方溝部26に応じて直線状に下方に伸びる一対の線状部45を備えた係止部材40を準備して、図7および図8に実線矢印で示すように、上記各線状部45を上記軸長調整軸30の上方から各上方溝部26内に挿入させていく。このとき、線状部45としては、少なくとも上記突起35位置に応じた部分で、左右側の側端面が上記突起35の右側の側端面と上記拡大部27の右側内壁面との間で圧入される寸法のものを用い、線状部45を拡大部27内に挿入させることによって突起35は抜け方向側となる周方向における回転止めがなされて軸長調整軸30は回転軸20とガタツキなく一体化される。なお、係止部材40は、中実のキャップ部41が、軸長調整軸30の内周中間段部30Aに当接することにより下方移動が停止され、上記に説明した本発明による軸構成のものとして完成される。
【0047】
以上のように本発明による製造方法では、上記軸長調整軸30の組み込み時の各工程が、部材の軸線方向への直線的な移動や軸の回転移動で行えるので組み立て工数などが少なく機械化なども容易である。また、回転軸20を軸受1の下方側から中心孔1A内に挿通させ、回転軸20に設けられたリング状突出部20Aで回転軸20の上方への抜け止めが図れる構成であるため、従来のようにC形の止めリングなどの部材を別途装着する工程などをなくせて主要本体部分の製作工数の削減効果も期待できる。また、当該回転軸20の形状であれば、回転軸20を側方側などで割る簡素な二面割りの金型で安価に形成することもでき、金型製作期間も短く済んで費用も安く済む。また、同様に係止部材40においても上下側で割る二面割りの金型で安価に形成することができる。さらに、完成品としての軸長を軸長調整軸30で設定するものであるため、回転軸20の長さを統一化して主要本体部分のまとめ生産を行うこともでき、組み立て設備の切り替えロスなども少なくできて合理的な生産が可能となり、製品単価も低く抑えられる。
【0048】
さらに、つまみ3が装着される軸長調整軸30の上部部分の径を大きく設定することも可能であり、その径が大きくなるほど、つまみ3の装着ガタツキなどが少ないものに構成できる。
【0049】
なお、上記にはプッシュスイッチ付回転型エンコーダを例として説明したが、本発明による思想は、プッシュスイッチを備えていない回転型エンコーダや他の回転型電子部品(可変抵抗器や回転型スイッチ)などにも適用することができる。
【0050】
また、上記軸長調整軸30と回転軸20との係合部分は、各種展開が図れる。
【0051】
例えば、上記には拡大部27の平坦な下方内壁面を利用しつつ突起35を回転移動させるものについて説明したが、回転軸20に対する軸長調整軸30の軸線方向への挿入距離で管理して回転軸20または軸長調整軸30の回転移動動作を行うならば、拡大部は係合溝内の中間位置などに構成してあってもよい。
【0052】
また、図9に示すように、拡大部27のみで構成された係合溝が上端位置に形成された回転軸50であっても上記軸構成の係合は可能である。つまり、この場合でもそれに応じた軸長調整軸30を軸線方向で移動させて突起35を上記係合溝である拡大部27内に挿入させ、続いて軸長調整軸30または回転軸50を回転移動させて突起35を拡大部27内で移動させ、その一方の側端面を拡大部27の対応する一方の内壁面に当接させる。その後、軸長調整軸30の上方から上記係合溝に対応する係止部材40を組み合わせ、その線状部45を、突起35の他方の側端面と拡大部27の他方の内壁面間に圧入状態で挿入させることにより突起35を側方に圧接状態で押し当てて係止させればよい。なお、当該構成のものの場合、突起35の上方側への移動規制が確実になされるように、線状部に段部を備えさせ、上記係止状態で突起35の上方側にその段部が位置する構成としてもよい。
【0053】
以上のように、本発明によるものは、回転軸20、50と軸長調整軸30とが、簡素な凹凸部分での係合で、その抜け止めが軸線方向に沿って平行に直線状に伸びる係止部材40の線状部45で確実になされたものに簡素な工程で構成できて、顧客から要望された軸長のものを適宜製作して提供することができることから、少量多品種のものなどにも適用できる有用なものである。
【0054】
(実施の形態2)
当該実施の形態は、上記実施の形態1によるものに対し、回転軸と軸長調整軸との係合部分の凹凸関係を逆構成で設けて係合させたものである。このため、要部となる軸構成の部分を主として以下に説明する。なお、実施の形態1によるものと略同一の構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0055】
図10は本発明の第2の実施の形態による回転型エンコーダの軸部分における組み合わせ前の分解斜視図である。
【0056】
同図において、60は、図示しないケース部10上に結合された軸受1の中心孔1Aに挿通されて回転操作および押し込み操作可能に保持された機能素子部作動用の回転軸である。
【0057】
この回転軸60は、中間位置に軸受1の中心孔1Aよりも大径のリング状突出部60Aを備え、そこから上方位置が軸受1の中心孔1Aに回転可能に保持される第一円柱部60B、さらに上記第一円柱部60Bからの上方部分が第一円柱部60Bよりも細径の第二円柱部60Cとして構成されている。第一円柱部60Bの長さ寸法は、押し込み操作された際、中心孔1A内から第一円柱部60Bが外れない寸法設定で形成されている。なお、この回転軸60も上記中心孔1A内に下方から挿入されて軸受1に組み合わされて上方への抜け止めがリング状突出部60Aでなされていること等は実施の形態1によるものと同じである。なお、回転軸60の軸受1からの上方への抜け止め方式は特に限定されない。
【0058】
そして、第二円柱部60Cの上端側面位置の外周円周面には、略直方体状の突起61が側方に突出させて形成されている。その突起61は、回転軸60の回転中心軸線に対して対称となる二箇所の位置でその外周円周面に配されている。なお、その突起61どうし間における径寸法は、第一円柱部60Bの径内に収まる寸法で設定されている。
【0059】
一方、上記回転軸60に一体化される軸長調整軸70は、少なくとも下端部が筒状であると共に、その円形の中心孔の内周円周面を含めて上下の軸線方向に貫通した係合溝75が各突起61に対応させてそれぞれ設けられている。個々の係合溝75は、実施の形態1によるものの場合と同様に略L字状に形成され、突起61より広幅で軸線方向に直線状に設けられた下方溝部76と、その下方溝部76上方に繋がり溝幅が側方に広がる拡大部77とからなる。なお、そのL字構成は実施の形態1によるものとほとんど同じであるため、その詳細説明などは省略する。なお、以下では図10に示した係合溝75において上記拡大部77の広がった方向側を右、その逆の方向側を左と定義して説明する。そして、40は、上記係合溝75に応じた直線状の線状部45を備えた係止部材である。
【0060】
ここで、当該実施の形態によるものの回転軸60と軸長調整軸70とを一体化させる際の製造方法について説明する。
【0061】
まず、軸受1に下方側から回転軸60を挿入させ、その回転軸60で図示しない機能素子部を作動可能なように主要本体部分に組み合わせ、次に、図11に実線矢印で示すように、軸受1から突出した回転軸60の上部部分に対し軸長調整軸70を軸線方向に移動させつつ挿入させていく。このとき、図12に示すように各突起61を各下方溝部76内に挿入させていき、その突起61が拡大部77内まで挿入された時点で、続いて突起61が拡大部77の右側に広がった領域内に位置するように、回転軸60または軸長調整軸70を回転させる。なお、図12および以下の図13では、判り易くするため、回転軸60を突起61のみの図示としている。
【0062】
上記回転移動は、突起61の右側の側端面が上記右側に広がった領域の右側内壁面に当接して停止され、その状態で突起61の左側の側端面は下方溝部76の右側内壁面よりも若干突出した位置になる。上記配置とするには、拡大部77の右側に広がる幅に対し、突起61の幅寸法を若干大きい寸法のものとしておけばよい。
【0063】
最後に、図13に示すように、軸長調整軸70の上方側から係止部材40の線状部45を各係合溝75に挿入させていく。この挿入で突起61の左側の側端面と拡大部77の左側内壁面との間に線状部45が圧入状態で挿入されていき、突起61が側方への圧接状態となって上記突起61の側方などへの移動規制がなされた係止状態のもの、すなわち軸長調整軸70が回転軸60とガタツキなく一体化された図14に示す状態のものとして完成される。なお、図14にも示したように、突起61の上方への移動規制を線状部45周囲の段部などで行う構成とするとさらに好ましい。
【0064】
上記のようにして製造された当該実施の形態によるものも、回転軸60や軸長調整軸70などを軸線方向に移動させたり回転移動させる工程を経て、突起61が拡大部77の側方に広がった領域内に位置すると共に、その抜け止めが軸線方向に沿って平行に直線状に伸びる係止部材40の線状部45で確実になされた一体構成のものにでき、所望の軸長のものを容易かつ適宜生産することが可能となる。なお、回転軸60を標準化することにより回転型電子部品の主要本体部分を標準的にまとめ生産できるなどの利点は実施の形態1の場合と同じである。
【0065】
なお、上記軸長調整軸70と上記回転軸60との係合部分は、例えば、拡大部を係合溝の下端位置や中間位置に構成して係止部材40の線状部45によって同様にして係止させたり、また、その中間位置に構成されたものにおいては、実施の形態1によるものと同様に突起61の回転移動で突起61の上下端面のいずれかを拡大部の側方に広がった領域の上方および下方内壁面間に圧入保持させるものなどとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明による回転型電子部品は、主要本体部分を標準化できると共に、軸長の異なる多彩なものが容易に構成でき、短納期化などの対応が可能となる等の効果を有し、各種電子機器の入力操作部を構成する際等に用いられる回転型電子部品などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施の形態による回転型エンコーダの断面図
【図2】同要部である軸部分における組み合わせ前の分解斜視図
【図3】同製造方法を説明する図
【図4】同製造方法を説明する図
【図5】同製造方法を説明する図
【図6】同製造方法を説明する図
【図7】同製造方法を説明する図
【図8】同製造方法を説明する図
【図9】同他の軸構成事例を示す分解斜視図
【図10】本発明の第2の実施の形態による回転型エンコーダの軸部分における組み合わせ前の分解斜視図
【図11】同製造方法を説明する図
【図12】同製造方法を説明する図
【図13】同製造方法を説明する図
【図14】同製造方法を説明する図
【図15】従来の回転型エンコーダの断面図
【図16】同要部である軸受と操作軸の組み立て状態を示す図
【符号の説明】
【0068】
1 軸受
1A 中心孔
3 つまみ
5 エンコーダ部
6 回転体
7 スイッチ部
8 可動接点体
9 バネ体
10 ケース部
20、50、60 回転軸
20A、60A リング状突出部
20B 円柱部
20C 非円形断面部
20D 後端部
25、75 係合溝
26 上方溝部
27、77 拡大部
30、70 軸長調整軸
30A 内周中間段部
35、61 突起
40 係止部材
41 キャップ部
45 線状部
60B 第一円柱部
60C 第二円柱部
76 下方溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能素子部を収納するケース部と、軸受で保持されて上方に突出する上記機能素子部作動用の回転軸と、その回転軸の上部に係止された軸長調整軸とを備え、上記回転軸と上記軸長調整軸とが、係止部材の軸線方向に沿って伸びる線状部により一体化されて係止状態になされていることを特徴とする回転型電子部品。
【請求項2】
回転軸の上部側面に上端位置から下方に軸線方向に伸びる係合溝を備え、その係合溝は、溝幅が側方に広がる拡大部を有し、軸長調整軸の筒状部分の内周面に設けられた突起が上記拡大部の側方に広がった領域内に位置すると共に、上記係合溝内に上方から挿入された軸線方向に沿って伸びる係止部材の線状部で上記突起が側方への移動規制をされて係止されていることを特徴とする請求項1記載の回転型電子部品。
【請求項3】
拡大部の側方に広がった領域における上下いずれかの端面に対し、突起の対応する端面が圧入状態で係止されていることを特徴とする請求項2記載の回転型電子部品。
【請求項4】
回転軸の係合溝が拡大部のみで形成され、軸長調整軸に設けられた突起が、上記拡大部内に挿入された軸線方向に沿って伸びる係止部材の線状部で上記拡大部の側壁面に圧接状態に押し当てられて係止されていることを特徴とする請求項2記載の回転型電子部品。
【請求項5】
軸長調整軸は、少なくとも下端部が筒状であると共に、その内周面を含めて上下の軸線方向に貫通する係合溝を備え、その係合溝は、溝幅が側方に広がる拡大部を有し、回転軸の上部側面に設けられた突起が上記拡大部内に位置すると共に、上記係合溝内に上方から挿入された軸線方向に沿って伸びる係止部材の線状部で上記突起が側方への移動規制をされて係止されていることを特徴とする請求項1記載の回転型電子部品。
【請求項6】
請求項2記載の回転型電子部品の製造方法であって、上部側面の上端位置から下方に軸線方向に伸び、その溝幅が側方に広がる拡大部を有する係合溝を備えた機能素子部作動用の回転軸を、機能素子部を収容させたケース部に組み合わされる軸受に対し、その上部を上方に突出させて回転可能に保持させる工程と、筒状部分の内周面に突起が設けられた軸長調整軸を準備して、上記回転軸と上記軸長調整軸とを軸線方向で移動させて上記突起を上記拡大部内の位置に挿入させる工程と、上記軸長調整軸または上記回転軸を回転させて上記突起を上記拡大部の側方に広がった領域内に移動させる工程と、軸線方向に沿って伸びる係止部材の線状部を上記係合溝に対して上方から挿入し上記線状部によって上記突起の側方への移動規制をなして係止させる工程を含む回転型電子部品の製造方法。
【請求項7】
請求項5記載の回転型電子部品の製造方法であって、上部側面に突起を備えた機能素子部作動用の回転軸を、機能素子部を収容させたケース部に組み合わされる軸受に対し、その上部を上方に突出させて回転可能に保持させる工程と、少なくとも下端部が筒状であると共に、その内周面を含めて上下の軸線方向に貫通し、溝幅が側方に広がる拡大部を有する係合溝を備えた軸長調整軸を準備して、上記回転軸と上記軸長調整軸とを軸線方向で移動させて上記突起を上記拡大部内の位置に挿入させる工程と、上記軸長調整軸または上記回転軸を回転させて上記突起を上記拡大部の側方に広がった領域内に移動させる工程と、軸線方向に沿って伸びる係止部材の線状部を上記係合溝に対して上方から挿入し上記線状部によって上記突起の側方への移動規制をなして係止させる工程を含む回転型電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−109537(P2007−109537A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−300021(P2005−300021)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】