回転式刃物、および回転式刃物の製造方法
【課題】ブレードのすくい角を大きく、しかも切刃を鋭角に形成して、回転式刃物の切れ味を向上する。併せて、3次元形状のブレードを、容易にしかも的確に形成する。
【解決手段】ホルダー21と、基端がホルダー21に対してインサート固定される複数個のブレード23とで回転式刃物(内刃)8を構成する。ブレード23は、ホルダー21の内部に埋設される埋設部24と、ホルダー21の外面に露出する露出部25と、露出部25の先端に形成される切刃26とを備えている。ブレード23の埋設部24および露出部25のそれぞれを、回転式刃物8の回転方向上手側へ傾斜させて、ブレードのすくい角を大きくする。露出部25には塑性加工を容易化する脆弱部29を形成しておき、露出部25の曲げ加工を容易化する。
【解決手段】ホルダー21と、基端がホルダー21に対してインサート固定される複数個のブレード23とで回転式刃物(内刃)8を構成する。ブレード23は、ホルダー21の内部に埋設される埋設部24と、ホルダー21の外面に露出する露出部25と、露出部25の先端に形成される切刃26とを備えている。ブレード23の埋設部24および露出部25のそれぞれを、回転式刃物8の回転方向上手側へ傾斜させて、ブレードのすくい角を大きくする。露出部25には塑性加工を容易化する脆弱部29を形成しておき、露出部25の曲げ加工を容易化する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のブレードで構成される回転式刃物と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転式刃物の代表例としてロータリー式の内刃がある。この種の内刃は、一群の内刃ブレードを、丸軸状の内刃ホルダーに螺旋状にインサート固定して構成される。内刃ブレードは、例えばステンレス薄板にエッチング処理を施して形成してあり、内刃ホルダーにインサート固定したのち、ブレード先端に研削処理を施して切刃を形成する。この種の内刃において、内刃ブレードの先端側を内刃の駆動方向の回転上手側へ向かって折り曲げることは、本出願人の出願に係る特許文献1に公知である。そこでは、内刃ブレードを断面く字状に折り曲げ、さらにブレード全体を螺旋状に形成している。内刃ブレードの基端寄りには貫通穴が形成してあり、内刃ホルダーを成形する際に、先の貫通穴に溶融樹脂を入り込ませて内刃ブレードを抜け止め固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−215935号公報(段落番号0041、図10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、内刃ブレードを断面く字状に折り曲げる内刃によれば、個々の内刃ブレードにおけるすくい角(図1における角度α)を大きくして切刃を鋭角に形成でき、したがって内刃の切れ味を向上できる。しかし、内刃を製造する過程では、個々の内刃ブレードを断面く字状に折り曲げ、さらにブレード全体を螺旋状に塑性変形する必要がある。つまり、個々の内刃ブレードを、予め3次元形状に塑性加工する必要がある。しかし、内刃ブレードを3次元形状に正確に形成するのには多くの技術的な限界があり、実際には、加工技術上の障壁から内刃ブレードの寸法や形状がばらつきやすく、歩留まりがよくないこともあって、内刃全体の加工コストが嵩みやすい。
【0005】
本発明の目的は、ブレードのすくい角が大きく、さらにブレードの切刃を鋭角にして、切れ味を向上できる回転式刃物を提供することにある。本発明の目的は、すくい角の大きな3次元形状のブレードを常に安定した状態で適正に形成でき、したがって、常に好適な切れ味を発揮できる回転式刃物を提供することにある。本発明の目的は、すくい角の大きな3次元形状のブレードをより簡単にしかも正確に形成して製造コストを削減できる回転式刃物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る回転式刃物は、ホルダー21と、一端がホルダー21に対して固定される複数個のブレード23とを含む。ブレード23は、回転式刃物の回転方向上手側へ傾斜する状態でホルダー21の内部に埋設される埋設部24と、ホルダー21の外面に露出する露出部25と、露出部25の先端に形成される切刃26とを備えている。ブレード23の露出部25を、埋設部24の傾斜位置を基準にして、これよりも回転式刃物の回転方向上手側へさらに傾斜させる。
【0007】
露出部25の傾斜角は埋設部25の傾斜角と同じか、それより大きく設定する。
【0008】
ブレード23の露出部25に、露出部25を構成する壁面の塑性加工を容易化する脆弱部29を形成する。以て、露出部25を、前記脆弱部29を屈曲中心にして、回転式刃物の回転方向上手側へ傾斜させる。
【0009】
脆弱部29は、露出部25の基端に沿って列状に形成する。なお、露出部25の基端とは、埋設部24と露出部25との境界であって、ホルダー21の表面より外側の露出基端部分を意味しており、具体的には、図1、および図11から図14において、それぞれ符号29で示す部分が露出部25の基端となる。
【0010】
露出部25は複数の脆弱部列31・32を含んで湾曲状に折り曲げる。
【0011】
露出部25を構成する壁面に、複数個の脆弱部列31・32を形成する。露出部25の基端側に形成される脆弱部列31における曲げ強度を、前記脆弱部列31より切刃26の側に形成される脆弱部列32における曲げ強度より大きく設定する。
【0012】
ブレード23は、金属板材にエッチング処理を施して形成する。脆弱部29を、エッチング処理を施す過程で同時に形成する。
【0013】
本発明に係る回転式刃物の製造方法においては、複数のブレード23をホルダー21に固定して、回転式刃物の前段体8Aを形成する過程と、曲げ穴43を備えている金型Mに、前記前段体8Aと金型Mとを相対回転しながら、前段体8Aを曲げ穴43へ向かって差し込んで、複数のブレード23の露出部25を曲げ穴43で同時に折り曲げる過程を経て、回転式刃物を製造する。
【0014】
上記の製造方法において、前段体8Aの露出部25に、露出部25の曲げ加工を容易化する脆弱部29を予め形成しておき、前段体8Aを金型Mで成形する過程で、前記脆弱部29を屈曲中心にして、ブレード23の露出部25を折り曲げ形成する。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、ホルダー21と、ホルダー21に固定される複数個のブレード23などで回転式刃物8を構成した。そのうえで、ホルダー21の内部に埋設されるブレード23の埋設部24と、ホルダー21の外面に露出するブレード23の露出部25のそれぞれを、回転式刃物の回転方向上手側へ傾斜させるようにした。
【0016】
このように、埋設部24および露出部25のそれぞれを、回転式刃物8の回転方向上手側へ傾斜させると、露出部のみを回転方向上手側へ傾斜させてすくい角を大きく設定する場合に比べて、埋設部24の傾斜角度分だけ露出部25の曲げ負担を軽減できる。また、埋設部24および露出部25の両者を傾斜させることですくい角αを無理なく大きくでき、すくい角αが大きい分だけ切刃26をより小さな角度の鋭角に形成して、常に好適な切れ味を発揮できる回転式刃物を提供できる。
【0017】
露出部25の傾斜角を埋設部25の傾斜角と同じか、それより大きく設定すると、埋設部24の傾斜角度をより小さくして、ブレード23をより強固にホルダー21に固定できる。つまり、ブレード23をホルダー21に対して、常に安定した状態で固定しながら、露出部25のすくい角αを大きくすることができる。
【0018】
ブレード23の露出部25に脆弱部29を形成しておくと、露出部25の曲げ加工を容易にしかも的確に行なって、すくい角αの大きな3次元形状のブレード23を備えた回転式刃物8を、常に安定した状態で適正に形成できる。
【0019】
脆弱部29を露出部25の基端に沿って列状に形成すると、露出部25の基端における曲げ抵抗を小さくできる。また、脆弱部29を中心とする折り曲げ位置を常に一定に揃えることができる。したがって、露出部25を折り曲げた後のブレード23の形状、および寸法のばらつきを抑止して、3次元形状のブレード23をさらに適正に形成できる。
【0020】
露出部25を複数の脆弱部29を含んで湾曲状に折り曲げると、露出部25の1箇所のみを折り曲げる場合に比べて、すくい角αを一定とするときの各脆弱部29における折り曲げ角度を小さくできる。このことは、各脆弱部29における折り曲げ負担を小さくして、露出部25の曲げ加工をより容易に、しかも的確に行なえることを意味している。したがって、すくい角αの大きな3次元形状のブレード23を、常に安定した状態で適正に形成できる。また、露出部25を湾曲状に形成するブレード23は、その厚み寸法にもよるが、回転式刃物8の回転中心へ向かう外力がブレード23に作用する場合に、露出部25の全体を撓ませて先の外力を逃がすことが可能となる。したがって、肌当りを柔らかにすることを目的として、露出部25を意図的に撓ませるような設計を行なう場合に有効となる。
【0021】
露出部25に複数個の脆弱部列31・32を形成し、基端側の脆弱部列31における曲げ強度を、これより切刃側の脆弱部列32における曲げ強度より大きく設定すると、露出部25の先端側から基端側へ向かって、各脆弱部列32・31を次々と後追い状に曲げることができる。例えば、先端側の脆弱部列32がある程度曲げ変形した状態で、並行して基端側の脆弱部列31を曲げ変形させて、複数個の脆弱部列31・32をバランスよく曲げることができる。これにより、得られた回転式刃物8、あるいはその前段体8Aにおいては、露出部25の曲げ形状および寸法を一定に揃えて、回転式刃物8の切れ味を一定にすることができる。
【0022】
金属板材にエッチング処理を施してブレード23を形成し、エッチング処理を施す過程で脆弱部29を同時に形成すると、脆弱部29を形成するための工程を省いてブレード23を低コストで形成できる。例えば、切削加工、プレス加工、あるいはレーザー加工などで脆弱部29を形成する場合を想定すると、これらの加工に要するコストを削減できることになる。さらに、先の各加工を施す場合に比べて、脆弱部29の位置精度および形状精度を高精度化して、露出部25の曲げ加工精度を向上するのに寄与できる。
【0023】
本発明の製造方法においては、複数のブレード23をホルダー21に固定して、回転式刃物の前段体8Aを形成する。さらに、前段体8Aと金型Mとを相対回転しながら、前段体8Aを金型Mの曲げ穴43へ向かって差し込んで、複数のブレード23の露出部25を曲げ穴43で同時に折り曲げる。このように、複数のブレード23の露出部25を曲げ穴43で同時に折り曲げるようにすると、複数のブレード23を精密に、しかもより少ない手間で迅速に曲げ加工できる。さらに、折り曲げ後のブレード23の直径寸法を、曲げ穴43で正確に規定できる。したがって、すくい角の大きな3次元形状のブレード23をより簡単にしかも正確に形成して、回転式刃物8の製造コストを削減できる。
【0024】
上記の製造方法において、ブランク体23Aの露出部25に脆弱部29を予め形成しておき、ブランク体23Aを曲げ加工する過程で、脆弱部29を屈曲中心にして露出部25を折り曲げると、露出部25の折り曲げ位置を常に一定にできる。したがって、複数のブレード23をさらに精密に折り曲げて、切れ味の鋭い回転式刃物8を歩留まりの良い状態で量産できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】内刃ブレードの曲げ構造を示す縦断側面図である。
【図2】電気かみそりの正面図である。
【図3】ヘッド部における内刃とその周辺部分の縦断側面図である。
【図4】内刃ブレードの前段体の形成例を示す平面図である。
【図5】内刃ブレードの前段体のエッチング過程を示す概略断面図である。
【図6】内刃のブランク体の縦断正面図である。
【図7】内刃のブランク体の縦断側面図である。
【図8】ブランク体とその成形用金型を示す斜視図である。
【図9】ブランク体の金型に対する装填状態を示す平面図である。
【図10】完成した内刃の縦断側面図である。
【図11】内刃ブレードの別の実施例を示す縦断側面図である。
【図12】内刃ブレードのさらに別の実施例を示す縦断側面図である。
【図13】内刃ブレードのさらに別の実施例を示す縦断側面図である。
【図14】内刃ブレードのさらに別の実施例を示す縦断側面図である。
【図15】内刃ブレードの前段体のエッチング過程を示す概略断面図である。
【図16】内刃ブレードのさらに別の実施例を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施例) 図1ないし図10は本発明に係る、回転式刃物を備えた電気かみそりの実施例を示す。図2において電気かみそりは、ヘッド部1と、ヘッド部1を浮動支持する縦長長方形状の本体部2と、本体部2の左右両側および底壁を囲む逆門形の防護枠3などで構成する。防護枠3は装飾枠を兼ねて透明プラスチック材で形成されており、本体部2と協同して電気かみそりのグリップ部を構成している。防護枠3の一方の側枠の上部に、モーター9への通電状態をオンオフ操作するスイッチボタン4が設けてある。図示していないが、本体部2の背面側にはきわぞりユニットが設けてある。
【0027】
ヘッド部1には、一組の外刃7と内刃(回転式刃物)8とで構成されるメイン刃と、内刃8にモーター動力を伝動する伝動機構などが設けてある。ヘッド部1の下部にはモーター9が固定してあり、その回転動力を一対の傘歯車10・11で横軸回りの回転動力に変換し、さらにギヤトレイン12を介して内刃8に伝動できるように構成してある。外刃7は、ニッケル合金を電鋳してシート状の網刃として形成してあり、ヘッド部1に対して着脱される外刃ホルダー14でアーチ状に固定保持してある。図3に示すように外刃7の刃面には、多数個の刃枠15とひげ導入穴16とが交互に形成してある。断面台形状に形成される刃枠15の片方の斜辺部の下端に、外刃7側の切刃7aが形成してある。
【0028】
図示していないが、本体部2の内部には内フレームが設けてあり、この内フレームでヘッド部1がモーター9と共に上下フロート自在に支持してある。なお、モーター9はヘッド部1の側にモーターホルダーを介して固定するが、その大半の部分は内フレームの内部に収容されている。モーター9より下方の内フレームの内部には、2次電池17や回路基板18などの電装品が収容してあり、これらの電装品を防水するために、モーターホルダーと内フレームとの間を防水パッキンでシールしている。
【0029】
内刃8は、プラスチック成形品からなる円柱状の内刃ホルダー(ホルダー)21と、内刃ホルダー21の中心にインサート固定される回転駆動軸22と、内刃ホルダー21の周面に沿って螺旋状にインサート固定される10個の内刃ブレード(ブレード)23とで構成する。回転駆動軸22の片方の軸端に、先のギヤトレイン12の終段ギヤと噛み合う内刃ギヤ13が固定してある。図3において、内刃8は矢印Nで示すように反時計回転方向へ回転駆動されて、外刃7と協同してひげ切断を行なう。
【0030】
図3において内刃ブレード23は、内刃ホルダー21の肉壁内に埋設される埋設部24と、内刃ホルダー21の外面に露出する露出部25と、露出部25の先端に形成される切刃26とを備えている。内刃ブレード23のすくい角α(図1および図3参照)を大きくするために、まず埋設部24を、内刃ホルダー21の中心を通る放射中心軸より内刃8の回転方向上手側に傾斜する状態で、内刃ホルダー21に埋設する。さらに露出部25の中途部を、後述する脆弱部29を屈曲中心にして傾斜させて、埋設部24の傾斜位置を基準とするとき、基準位置より内刃8の回転方向上手側へさらに傾斜させる。つまり、ブレード23の埋設部24と露出部25のそれぞれを、回転式刃物の回転方向上手側へ傾斜させる。また、埋設部25の固定状態を安定して維持しながら、全体のすくい角αをより大きくするために、露出部25の全体の傾斜角を、埋設部24の傾斜角α1より大きく設定している。
【0031】
具体的には、図1に示すように露出部25を2段階に折り曲げて、埋設部24の傾斜角α1を12度とするとき、その基端寄りの壁面の傾斜角α2を20度とし、切刃26寄りの壁面の傾斜角α3を36度として、露出部25の全体の傾斜角を56度とした。因みに、埋設部24の傾斜角α1が大きいと、埋設部24が内刃ホルダー21に対して横臥する状態で固定されるので、内刃ブレード23の埋設部分の強度が低下しやすい。
【0032】
完成状態の内刃8においては、切刃26の回転方向後側に連続して摺動面27を形成するが、内刃ブレード23の先端の回転方向後側の壁面に逃げ面28を凹み形成して、摺動面27と外刃7との接触面積を極力小さくできるようにしている。また、内刃ブレード23の露出部25には、露出部25を構成する壁面の塑性加工を容易化する脆弱部29が形成してあり、埋設部24には、インサート固定された内刃ブレード23を抜け止め固定するための貫通穴30が形成してある。
【0033】
内刃ブレード23は、図4および図5に示すエッチング処理過程を経て形成され、図6および図7に示すように内刃ホルダー21にインサート固定される。さらに、図8および図9に示す成形過程で露出部25を折り曲げたのち、図10に示すように内刃ブレード23の先端に研削処理を施して形成する。以下に、各加工過程の詳細を説明する。
【0034】
図4に示すように、内刃ブレード23のブランク体23Aは、ステンレス板材からなる原材シート35にエッチング処理を施して湾曲帯状にくり抜き形成される。このとき同時に、埋設部24側の湾曲縁に沿って丸穴状の貫通穴30の一群が形成され、露出部25側の湾曲縁に沿って逃げ面28が連続凹部状に形成される。さらに、露出部25側の壁面に沿って、一群の脆弱部29が部分円弧状に連続する2個の脆弱部列31・32が同時に形成される。各脆弱部列31・32を構成する脆弱部29は、貫通穴30より直径が小さな丸穴からなる。なお、湾曲帯状の各ブランク体23Aは、埋設部24側の湾曲縁の中央に設けた橋絡部36を介して原材シート35と繋がっている。
【0035】
原材シート35は、厚みが0.2〜0.3mmの焼き入れされたマルテンサイト系のステンレス板材からなる。図5(a)に示すように、原材シート35の表裏両面にフィルム状の感光膜を積層したのち、フォトマスクを介して感光膜を露光し、感光膜を現像し洗浄することにより、露光部分が除去された耐蝕性のレジスト膜37を形成する。この状態の原材シート35の表裏両面にエッチング液を吹き付けることにより、図5(b)に示すように、レジスト膜37で覆われていない原材シート35の表裏両面を腐蝕させて、凹曲面状の蝕刻面38・39を形成する。因みに図5における原材シート35は、腐蝕の過程を理解しやすくするために厚み寸法が誇張して表現してある。
【0036】
エッチング液による腐蝕が進行すると、図5(c)に示すように、原材シート35の表裏に形成された蝕刻面38・39どうしが貫通穴状に繋がる。この貫通穴によって、ブランク体23Aの外郭線が形成され、同時に埋設部24の貫通穴30と、露出部25の脆弱部29とが形成される。また、露出部25の先端に逃げ面28が形成される。図4に示すように、2個の脆弱部列31・32のうち、露出部25の基端側に形成される脆弱部列31における曲げ強度は、切刃26の側に形成される脆弱部列32における曲げ強度より大きく設定してある。具体的には、両脆弱部列31・32を構成する丸穴状の脆弱部29の直径寸法を同じとして、前者脆弱部列31における脆弱部29の隣接ピッチを、後者脆弱部列32における脆弱部29の隣接ピッチの2倍にして、両者の曲げ強度を異ならせるようにした。
【0037】
得られたブランク体23Aは、数次の塑性加工を施して螺旋状に捻り変形させる。こののち、塑性変形されたブランク体23Aを内刃ホルダー21の成形用金型に装填して固定保持し、さらに回転駆動軸22を成形用金型に装填した状態で内刃ホルダー21を射出成形することにより、図6に示す内刃8の前段体8Aが得られる。この状態の内刃ブレード23は、図7に示すように、その埋設部24が内刃ホルダー21の中心を通る放射中心軸より内刃8の回転方向上手側へ傾斜角α1だけ傾斜しており、貫通穴30の内部には内刃ホルダー21を構成する樹脂が入り込んでいる。露出部25に形成される脆弱部列31・32は、いずれも内刃ホルダー21の周面より外方において露出している。
【0038】
図8および図9に露出部25を折り曲げるための金型の概略構造を示す。金型Mは、上端に下すぼまりテーパー状の導入穴42を有し、導入穴42の下端に連続して曲げ穴43が形成してある。導入穴42は内刃ホルダー21の直径寸法より大きく、しかし露出部25を折り曲げたときの内刃ブレード23の外直径寸法より僅かに小さく設定してある。この金型Mの導入穴42に内刃ブレード23の一端をあてがい、金型Mを矢印P方向へ回転しながら前段体8Aの全体を曲げ穴43へ押し込むことにより、図10に示すように、10個の内刃ブレード23の露出部25の全てを、内刃8の回転方向上手側へ同時に2段階に折り曲げることができる。
【0039】
内刃ブレード23を折り曲げる過程では、折り曲げ抵抗が小さな先端側の脆弱部列32を屈曲中心にして、ブレード先端側の壁面が折り曲げられ、その途中において基端側の脆弱部列31を屈曲中心にして、ブレード中途部およびブレード基端側の壁面が並行してバランスよく折り曲げられる。したがって、得られた内刃8の前段体8Aにおいては、露出部25の曲げ形状、および寸法を一定に揃えることができる。このとき、埋設部24には大きな曲げモーメントが作用するが、埋設部24の傾斜角(埋設角度)α1が小さいので、内刃ホルダー21が変形し、あるいは破損するのを阻止できる。
【0040】
最後に、得られた内刃8の前段体8Aの先端に、センターレス研削法によって粗研削と仕上げ研削とを施すことにより、内刃ホルダー21と同心状の摺動面27が形成され、摺動面27の突端縁に切刃角度θが鋭角の切刃26が形成される。研削加工によって除去された部分を、図10の拡大図に想像線で示している。なお、本発明における切刃角度θは、内刃8の回転中心と切刃26とを結ぶ線を基準にして、切刃26に連続するすくい面41と先の基準線とで挟まれる角度を意味しており、この実施例における切刃角度θは50度とした。切刃角度θを50度とするとき、摺動面27とすくい面41とで挟まれる刃先角βは40度となる。
【0041】
以上のように構成した内刃8によれば、内刃ブレード23のすくい角αを大きくして、刃先角βが鋭角の切刃26を形成できるので、長期にわたって良好な切れ味を発揮できる内刃8が得られる。また、露出部25を2段階に折り曲げるので、内刃8の回転中心方向の外力が内刃ブレード23に作用する場合に、露出部25の全体を屈曲内面側へ撓み変形させて先の外力を逃がすことが可能となる。したがって、肌当りを柔らかにすることを目的として、露出部25を撓ませる設計を行なう場合に有効となる。加えて、図4ないし図10で説明した過程を経て内刃8を形成する本発明の回転式刃物の製造方法によれば、すくい角αが大きな3次元形状の内刃ブレード23を備えた内刃8を、より容易に、しかも常に安定した状態で的確に形成できる。
【0042】
以下に、本発明の別の実施例を図11ないし図15に基づき説明する。なお、以下の説明においては、先の実施例と異なる点を主に説明し、先の実施例と同じ部材には同じ符号を付してその説明を省略する。図11に示す内刃ブレード23は、先の実施例とほぼ同じであるが、露出部25の基端側に形成される脆弱部29を、露出部25と埋設部24の境界に位置させて、内刃ホルダー21を成形するときの溶融樹脂が脆弱部29の内部に入り込むようにした。このように、基端側の脆弱部29をプラスチック材で塞ぐと、先の実施例に比べて、基端側の脆弱部列31の折り曲げ抵抗を、先端側の脆弱部列32の折り曲げ抵抗より大きくして、基端側のブレード壁が先端側のブレード壁に先行して折り曲げられるのをさらに確実に防止できる。したがって、内刃ブレード23の曲げ加工をさらに確実に行なうことができる。
【0043】
図12に脆弱部29の別の実施例を示す。そこでは、内刃ブレード23の基端側の脆弱部29を円形の凹部で形成し、先端側の脆弱部29を長円状の凹部で形成する点が、先の実施例と異なる。各凹部は、内刃ブレード23のブランク体23Aを形成する過程で、ハーフエッチング処理することにより形成する。このように、脆弱部29は楕円状、あるいは多角形状の穴や独立した凹部など、任意形状の穴や凹部で形成することができる。この実施例における貫通穴30は、先の実施例で説明したブランク体23Aと同様に丸穴状に形成されて、埋設部24側の湾曲縁に沿って円弧列状に形成してある。
【0044】
図13は脆弱部29のさらに別の実施例を示す。そこでは、内刃ブレード23の露出部25の壁表面のそれぞれに、合計5箇所の脆弱部29を形成して、露出部25の全体を湾曲状に折り曲げ形成した。各脆弱部29は、内刃ブレード23の長手方向(左右方向)に連続する断面が半円状の溝で形成する。このように、脆弱部29を長手方向に連続する溝で形成すると、曲げ形状のばらつきを排除して露出部25をより正確に成形できる。この実施例における溝からなる各脆弱部29は、それ自体が先の実施例における脆弱部列31・32と同等の機能を発揮する。この実施例に係る内刃ブレード23は、肌当りを柔らかにすることを目的として、露出部25を湾曲状に形成する設計を行なう場合に有効となる。
【0045】
上記の各実施例では、内刃ブレード23の先端に研削加工を施して切刃26を形成したがその必要はない。その場合には図14に示すように、内刃ブレード23のすくい面41をエッチング時の蝕刻面で形成して、すくい面41の先端部分を切刃26とすることができる。この実施例に係る内刃ブレード23は、貫通穴30を露出部25と埋設部24の境界を跨る状態で形成して、貫通穴30が脆弱部29を兼ねるようにした。また、図11で説明した内刃ブレード23の脆弱部29と同様に、内刃ホルダー21を成形するときの溶融樹脂が脆弱部29の内部に入り込むようにした。内刃ブレード23の全体は、露出部25の基端の脆弱部29を折り曲げ中心にして、く字状に折り曲げられる。
【0046】
内刃ブレード23のブランク体23Aは、図15に示すエッチング過程を経て形成する。具体的には、原材シート35の表面に限って耐蝕性のレジスト膜37を形成する。この状態の原材シート35の表面にエッチング液を吹き付けることにより、図15(b)に示すように、レジスト膜37で覆われていない原材シート35の表面を腐蝕させて、凹曲面状の蝕刻面38を形成する。エッチング液による腐蝕が進行すると、蝕刻面38が原材シート35の裏面側に達して貫通穴を形成する。この貫通穴によって、図15(c)に示すように、ブランク体23Aの外郭線が形成され、同時に埋設部24の貫通穴30と、露出部25のすくい面41とが形成される。
【0047】
図16は、内刃ブレード23のさらに別の実施例を示す。そこでは露出部25の中途部に溝状の脆弱部29を設け、脆弱部29を屈曲中心にして、脆弱部29と切刃26との間の壁面を、内刃8の回転方向上手側へ傾斜させるようにした。このように、露出部25は、その中途部を一度だけ折り曲げてすくい角αを大きくすることができる。必要があれば、切刃26の近傍の露出部25の壁面を一度だけ折り曲げて、すくい角αを大きくすることができる。
【0048】
上記の実施例では、脆弱部列31・32を一群の貫通穴で形成したが、その必要はなく、穴と溝が混在する状態で形成することができる。つまり、脆弱部29は溝および/または露出部25の壁面を貫通する穴で形成することができる。ブランク体23Aと金型Mとは、互いに相対回転する関係にあればよく、金型Mを固定しておいて、ブランク体23Aを回転駆動しながら曲げ穴43に押し込み操作してもよい。脆弱部列は、露出部25の2箇所以上に形成するのが好ましいが、少なくとも1箇所に形成してあればよい。抜け止め用の貫通穴30に換えて、埋設部24の一部を折り曲げて内刃ブレード23を抜け止め固定することができる。
【0049】
本発明の回転式刃物は、電気かみそりの内刃8以外に、毛玉取り器の回転刃や、鉛筆削り器の回転刃などにも適用できる。また、内刃ブレード23は内刃ホルダー21に対して螺旋状に埋設固定する必要はなく、回転駆動軸22と平行になる状態で内刃ブレード23が内刃ホルダー21に埋設してあってもよい。その場合にも、内刃8の前段体8Aの内刃ブレード23を金型Mで同時に曲げることができる。さらに、露出部25を内刃8の回転方向上手側へ予め曲げてブランク体23Aを形成したのち、これを内刃ホルダー21にインサート固定して内刃8を形成することができる。その場合には、前段体8Aを成形した後の、金型Mによる曲げ加工を省略することができる。
【0050】
内刃ホルダー21は丸軸状である必要はなく、断面が多角形状の軸体で形成することができる。ブランク体23Aはプレス加工で形成することができ、脆弱部29を穴で形成する場合には、ブランク体23Aの外形と脆弱部29を同時に打ち抜き加工することができる。また、脆弱部29を溝で形成する場合には、切削加工で溝を形成した後、脆弱部29を含むブランク体23Aを打ち抜き加工するとよい。
【符号の説明】
【0051】
7 外刃
8 回転式刃物(内刃)
21 ホルダー(内刃ホルダー)
23 ブレード(内刃ブレード)
24 埋設部
25 露出部
26 切刃
29 脆弱部
31・32 脆弱部列
α すくい角
β 刃先角
θ 切刃角度
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のブレードで構成される回転式刃物と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転式刃物の代表例としてロータリー式の内刃がある。この種の内刃は、一群の内刃ブレードを、丸軸状の内刃ホルダーに螺旋状にインサート固定して構成される。内刃ブレードは、例えばステンレス薄板にエッチング処理を施して形成してあり、内刃ホルダーにインサート固定したのち、ブレード先端に研削処理を施して切刃を形成する。この種の内刃において、内刃ブレードの先端側を内刃の駆動方向の回転上手側へ向かって折り曲げることは、本出願人の出願に係る特許文献1に公知である。そこでは、内刃ブレードを断面く字状に折り曲げ、さらにブレード全体を螺旋状に形成している。内刃ブレードの基端寄りには貫通穴が形成してあり、内刃ホルダーを成形する際に、先の貫通穴に溶融樹脂を入り込ませて内刃ブレードを抜け止め固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−215935号公報(段落番号0041、図10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、内刃ブレードを断面く字状に折り曲げる内刃によれば、個々の内刃ブレードにおけるすくい角(図1における角度α)を大きくして切刃を鋭角に形成でき、したがって内刃の切れ味を向上できる。しかし、内刃を製造する過程では、個々の内刃ブレードを断面く字状に折り曲げ、さらにブレード全体を螺旋状に塑性変形する必要がある。つまり、個々の内刃ブレードを、予め3次元形状に塑性加工する必要がある。しかし、内刃ブレードを3次元形状に正確に形成するのには多くの技術的な限界があり、実際には、加工技術上の障壁から内刃ブレードの寸法や形状がばらつきやすく、歩留まりがよくないこともあって、内刃全体の加工コストが嵩みやすい。
【0005】
本発明の目的は、ブレードのすくい角が大きく、さらにブレードの切刃を鋭角にして、切れ味を向上できる回転式刃物を提供することにある。本発明の目的は、すくい角の大きな3次元形状のブレードを常に安定した状態で適正に形成でき、したがって、常に好適な切れ味を発揮できる回転式刃物を提供することにある。本発明の目的は、すくい角の大きな3次元形状のブレードをより簡単にしかも正確に形成して製造コストを削減できる回転式刃物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る回転式刃物は、ホルダー21と、一端がホルダー21に対して固定される複数個のブレード23とを含む。ブレード23は、回転式刃物の回転方向上手側へ傾斜する状態でホルダー21の内部に埋設される埋設部24と、ホルダー21の外面に露出する露出部25と、露出部25の先端に形成される切刃26とを備えている。ブレード23の露出部25を、埋設部24の傾斜位置を基準にして、これよりも回転式刃物の回転方向上手側へさらに傾斜させる。
【0007】
露出部25の傾斜角は埋設部25の傾斜角と同じか、それより大きく設定する。
【0008】
ブレード23の露出部25に、露出部25を構成する壁面の塑性加工を容易化する脆弱部29を形成する。以て、露出部25を、前記脆弱部29を屈曲中心にして、回転式刃物の回転方向上手側へ傾斜させる。
【0009】
脆弱部29は、露出部25の基端に沿って列状に形成する。なお、露出部25の基端とは、埋設部24と露出部25との境界であって、ホルダー21の表面より外側の露出基端部分を意味しており、具体的には、図1、および図11から図14において、それぞれ符号29で示す部分が露出部25の基端となる。
【0010】
露出部25は複数の脆弱部列31・32を含んで湾曲状に折り曲げる。
【0011】
露出部25を構成する壁面に、複数個の脆弱部列31・32を形成する。露出部25の基端側に形成される脆弱部列31における曲げ強度を、前記脆弱部列31より切刃26の側に形成される脆弱部列32における曲げ強度より大きく設定する。
【0012】
ブレード23は、金属板材にエッチング処理を施して形成する。脆弱部29を、エッチング処理を施す過程で同時に形成する。
【0013】
本発明に係る回転式刃物の製造方法においては、複数のブレード23をホルダー21に固定して、回転式刃物の前段体8Aを形成する過程と、曲げ穴43を備えている金型Mに、前記前段体8Aと金型Mとを相対回転しながら、前段体8Aを曲げ穴43へ向かって差し込んで、複数のブレード23の露出部25を曲げ穴43で同時に折り曲げる過程を経て、回転式刃物を製造する。
【0014】
上記の製造方法において、前段体8Aの露出部25に、露出部25の曲げ加工を容易化する脆弱部29を予め形成しておき、前段体8Aを金型Mで成形する過程で、前記脆弱部29を屈曲中心にして、ブレード23の露出部25を折り曲げ形成する。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、ホルダー21と、ホルダー21に固定される複数個のブレード23などで回転式刃物8を構成した。そのうえで、ホルダー21の内部に埋設されるブレード23の埋設部24と、ホルダー21の外面に露出するブレード23の露出部25のそれぞれを、回転式刃物の回転方向上手側へ傾斜させるようにした。
【0016】
このように、埋設部24および露出部25のそれぞれを、回転式刃物8の回転方向上手側へ傾斜させると、露出部のみを回転方向上手側へ傾斜させてすくい角を大きく設定する場合に比べて、埋設部24の傾斜角度分だけ露出部25の曲げ負担を軽減できる。また、埋設部24および露出部25の両者を傾斜させることですくい角αを無理なく大きくでき、すくい角αが大きい分だけ切刃26をより小さな角度の鋭角に形成して、常に好適な切れ味を発揮できる回転式刃物を提供できる。
【0017】
露出部25の傾斜角を埋設部25の傾斜角と同じか、それより大きく設定すると、埋設部24の傾斜角度をより小さくして、ブレード23をより強固にホルダー21に固定できる。つまり、ブレード23をホルダー21に対して、常に安定した状態で固定しながら、露出部25のすくい角αを大きくすることができる。
【0018】
ブレード23の露出部25に脆弱部29を形成しておくと、露出部25の曲げ加工を容易にしかも的確に行なって、すくい角αの大きな3次元形状のブレード23を備えた回転式刃物8を、常に安定した状態で適正に形成できる。
【0019】
脆弱部29を露出部25の基端に沿って列状に形成すると、露出部25の基端における曲げ抵抗を小さくできる。また、脆弱部29を中心とする折り曲げ位置を常に一定に揃えることができる。したがって、露出部25を折り曲げた後のブレード23の形状、および寸法のばらつきを抑止して、3次元形状のブレード23をさらに適正に形成できる。
【0020】
露出部25を複数の脆弱部29を含んで湾曲状に折り曲げると、露出部25の1箇所のみを折り曲げる場合に比べて、すくい角αを一定とするときの各脆弱部29における折り曲げ角度を小さくできる。このことは、各脆弱部29における折り曲げ負担を小さくして、露出部25の曲げ加工をより容易に、しかも的確に行なえることを意味している。したがって、すくい角αの大きな3次元形状のブレード23を、常に安定した状態で適正に形成できる。また、露出部25を湾曲状に形成するブレード23は、その厚み寸法にもよるが、回転式刃物8の回転中心へ向かう外力がブレード23に作用する場合に、露出部25の全体を撓ませて先の外力を逃がすことが可能となる。したがって、肌当りを柔らかにすることを目的として、露出部25を意図的に撓ませるような設計を行なう場合に有効となる。
【0021】
露出部25に複数個の脆弱部列31・32を形成し、基端側の脆弱部列31における曲げ強度を、これより切刃側の脆弱部列32における曲げ強度より大きく設定すると、露出部25の先端側から基端側へ向かって、各脆弱部列32・31を次々と後追い状に曲げることができる。例えば、先端側の脆弱部列32がある程度曲げ変形した状態で、並行して基端側の脆弱部列31を曲げ変形させて、複数個の脆弱部列31・32をバランスよく曲げることができる。これにより、得られた回転式刃物8、あるいはその前段体8Aにおいては、露出部25の曲げ形状および寸法を一定に揃えて、回転式刃物8の切れ味を一定にすることができる。
【0022】
金属板材にエッチング処理を施してブレード23を形成し、エッチング処理を施す過程で脆弱部29を同時に形成すると、脆弱部29を形成するための工程を省いてブレード23を低コストで形成できる。例えば、切削加工、プレス加工、あるいはレーザー加工などで脆弱部29を形成する場合を想定すると、これらの加工に要するコストを削減できることになる。さらに、先の各加工を施す場合に比べて、脆弱部29の位置精度および形状精度を高精度化して、露出部25の曲げ加工精度を向上するのに寄与できる。
【0023】
本発明の製造方法においては、複数のブレード23をホルダー21に固定して、回転式刃物の前段体8Aを形成する。さらに、前段体8Aと金型Mとを相対回転しながら、前段体8Aを金型Mの曲げ穴43へ向かって差し込んで、複数のブレード23の露出部25を曲げ穴43で同時に折り曲げる。このように、複数のブレード23の露出部25を曲げ穴43で同時に折り曲げるようにすると、複数のブレード23を精密に、しかもより少ない手間で迅速に曲げ加工できる。さらに、折り曲げ後のブレード23の直径寸法を、曲げ穴43で正確に規定できる。したがって、すくい角の大きな3次元形状のブレード23をより簡単にしかも正確に形成して、回転式刃物8の製造コストを削減できる。
【0024】
上記の製造方法において、ブランク体23Aの露出部25に脆弱部29を予め形成しておき、ブランク体23Aを曲げ加工する過程で、脆弱部29を屈曲中心にして露出部25を折り曲げると、露出部25の折り曲げ位置を常に一定にできる。したがって、複数のブレード23をさらに精密に折り曲げて、切れ味の鋭い回転式刃物8を歩留まりの良い状態で量産できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】内刃ブレードの曲げ構造を示す縦断側面図である。
【図2】電気かみそりの正面図である。
【図3】ヘッド部における内刃とその周辺部分の縦断側面図である。
【図4】内刃ブレードの前段体の形成例を示す平面図である。
【図5】内刃ブレードの前段体のエッチング過程を示す概略断面図である。
【図6】内刃のブランク体の縦断正面図である。
【図7】内刃のブランク体の縦断側面図である。
【図8】ブランク体とその成形用金型を示す斜視図である。
【図9】ブランク体の金型に対する装填状態を示す平面図である。
【図10】完成した内刃の縦断側面図である。
【図11】内刃ブレードの別の実施例を示す縦断側面図である。
【図12】内刃ブレードのさらに別の実施例を示す縦断側面図である。
【図13】内刃ブレードのさらに別の実施例を示す縦断側面図である。
【図14】内刃ブレードのさらに別の実施例を示す縦断側面図である。
【図15】内刃ブレードの前段体のエッチング過程を示す概略断面図である。
【図16】内刃ブレードのさらに別の実施例を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施例) 図1ないし図10は本発明に係る、回転式刃物を備えた電気かみそりの実施例を示す。図2において電気かみそりは、ヘッド部1と、ヘッド部1を浮動支持する縦長長方形状の本体部2と、本体部2の左右両側および底壁を囲む逆門形の防護枠3などで構成する。防護枠3は装飾枠を兼ねて透明プラスチック材で形成されており、本体部2と協同して電気かみそりのグリップ部を構成している。防護枠3の一方の側枠の上部に、モーター9への通電状態をオンオフ操作するスイッチボタン4が設けてある。図示していないが、本体部2の背面側にはきわぞりユニットが設けてある。
【0027】
ヘッド部1には、一組の外刃7と内刃(回転式刃物)8とで構成されるメイン刃と、内刃8にモーター動力を伝動する伝動機構などが設けてある。ヘッド部1の下部にはモーター9が固定してあり、その回転動力を一対の傘歯車10・11で横軸回りの回転動力に変換し、さらにギヤトレイン12を介して内刃8に伝動できるように構成してある。外刃7は、ニッケル合金を電鋳してシート状の網刃として形成してあり、ヘッド部1に対して着脱される外刃ホルダー14でアーチ状に固定保持してある。図3に示すように外刃7の刃面には、多数個の刃枠15とひげ導入穴16とが交互に形成してある。断面台形状に形成される刃枠15の片方の斜辺部の下端に、外刃7側の切刃7aが形成してある。
【0028】
図示していないが、本体部2の内部には内フレームが設けてあり、この内フレームでヘッド部1がモーター9と共に上下フロート自在に支持してある。なお、モーター9はヘッド部1の側にモーターホルダーを介して固定するが、その大半の部分は内フレームの内部に収容されている。モーター9より下方の内フレームの内部には、2次電池17や回路基板18などの電装品が収容してあり、これらの電装品を防水するために、モーターホルダーと内フレームとの間を防水パッキンでシールしている。
【0029】
内刃8は、プラスチック成形品からなる円柱状の内刃ホルダー(ホルダー)21と、内刃ホルダー21の中心にインサート固定される回転駆動軸22と、内刃ホルダー21の周面に沿って螺旋状にインサート固定される10個の内刃ブレード(ブレード)23とで構成する。回転駆動軸22の片方の軸端に、先のギヤトレイン12の終段ギヤと噛み合う内刃ギヤ13が固定してある。図3において、内刃8は矢印Nで示すように反時計回転方向へ回転駆動されて、外刃7と協同してひげ切断を行なう。
【0030】
図3において内刃ブレード23は、内刃ホルダー21の肉壁内に埋設される埋設部24と、内刃ホルダー21の外面に露出する露出部25と、露出部25の先端に形成される切刃26とを備えている。内刃ブレード23のすくい角α(図1および図3参照)を大きくするために、まず埋設部24を、内刃ホルダー21の中心を通る放射中心軸より内刃8の回転方向上手側に傾斜する状態で、内刃ホルダー21に埋設する。さらに露出部25の中途部を、後述する脆弱部29を屈曲中心にして傾斜させて、埋設部24の傾斜位置を基準とするとき、基準位置より内刃8の回転方向上手側へさらに傾斜させる。つまり、ブレード23の埋設部24と露出部25のそれぞれを、回転式刃物の回転方向上手側へ傾斜させる。また、埋設部25の固定状態を安定して維持しながら、全体のすくい角αをより大きくするために、露出部25の全体の傾斜角を、埋設部24の傾斜角α1より大きく設定している。
【0031】
具体的には、図1に示すように露出部25を2段階に折り曲げて、埋設部24の傾斜角α1を12度とするとき、その基端寄りの壁面の傾斜角α2を20度とし、切刃26寄りの壁面の傾斜角α3を36度として、露出部25の全体の傾斜角を56度とした。因みに、埋設部24の傾斜角α1が大きいと、埋設部24が内刃ホルダー21に対して横臥する状態で固定されるので、内刃ブレード23の埋設部分の強度が低下しやすい。
【0032】
完成状態の内刃8においては、切刃26の回転方向後側に連続して摺動面27を形成するが、内刃ブレード23の先端の回転方向後側の壁面に逃げ面28を凹み形成して、摺動面27と外刃7との接触面積を極力小さくできるようにしている。また、内刃ブレード23の露出部25には、露出部25を構成する壁面の塑性加工を容易化する脆弱部29が形成してあり、埋設部24には、インサート固定された内刃ブレード23を抜け止め固定するための貫通穴30が形成してある。
【0033】
内刃ブレード23は、図4および図5に示すエッチング処理過程を経て形成され、図6および図7に示すように内刃ホルダー21にインサート固定される。さらに、図8および図9に示す成形過程で露出部25を折り曲げたのち、図10に示すように内刃ブレード23の先端に研削処理を施して形成する。以下に、各加工過程の詳細を説明する。
【0034】
図4に示すように、内刃ブレード23のブランク体23Aは、ステンレス板材からなる原材シート35にエッチング処理を施して湾曲帯状にくり抜き形成される。このとき同時に、埋設部24側の湾曲縁に沿って丸穴状の貫通穴30の一群が形成され、露出部25側の湾曲縁に沿って逃げ面28が連続凹部状に形成される。さらに、露出部25側の壁面に沿って、一群の脆弱部29が部分円弧状に連続する2個の脆弱部列31・32が同時に形成される。各脆弱部列31・32を構成する脆弱部29は、貫通穴30より直径が小さな丸穴からなる。なお、湾曲帯状の各ブランク体23Aは、埋設部24側の湾曲縁の中央に設けた橋絡部36を介して原材シート35と繋がっている。
【0035】
原材シート35は、厚みが0.2〜0.3mmの焼き入れされたマルテンサイト系のステンレス板材からなる。図5(a)に示すように、原材シート35の表裏両面にフィルム状の感光膜を積層したのち、フォトマスクを介して感光膜を露光し、感光膜を現像し洗浄することにより、露光部分が除去された耐蝕性のレジスト膜37を形成する。この状態の原材シート35の表裏両面にエッチング液を吹き付けることにより、図5(b)に示すように、レジスト膜37で覆われていない原材シート35の表裏両面を腐蝕させて、凹曲面状の蝕刻面38・39を形成する。因みに図5における原材シート35は、腐蝕の過程を理解しやすくするために厚み寸法が誇張して表現してある。
【0036】
エッチング液による腐蝕が進行すると、図5(c)に示すように、原材シート35の表裏に形成された蝕刻面38・39どうしが貫通穴状に繋がる。この貫通穴によって、ブランク体23Aの外郭線が形成され、同時に埋設部24の貫通穴30と、露出部25の脆弱部29とが形成される。また、露出部25の先端に逃げ面28が形成される。図4に示すように、2個の脆弱部列31・32のうち、露出部25の基端側に形成される脆弱部列31における曲げ強度は、切刃26の側に形成される脆弱部列32における曲げ強度より大きく設定してある。具体的には、両脆弱部列31・32を構成する丸穴状の脆弱部29の直径寸法を同じとして、前者脆弱部列31における脆弱部29の隣接ピッチを、後者脆弱部列32における脆弱部29の隣接ピッチの2倍にして、両者の曲げ強度を異ならせるようにした。
【0037】
得られたブランク体23Aは、数次の塑性加工を施して螺旋状に捻り変形させる。こののち、塑性変形されたブランク体23Aを内刃ホルダー21の成形用金型に装填して固定保持し、さらに回転駆動軸22を成形用金型に装填した状態で内刃ホルダー21を射出成形することにより、図6に示す内刃8の前段体8Aが得られる。この状態の内刃ブレード23は、図7に示すように、その埋設部24が内刃ホルダー21の中心を通る放射中心軸より内刃8の回転方向上手側へ傾斜角α1だけ傾斜しており、貫通穴30の内部には内刃ホルダー21を構成する樹脂が入り込んでいる。露出部25に形成される脆弱部列31・32は、いずれも内刃ホルダー21の周面より外方において露出している。
【0038】
図8および図9に露出部25を折り曲げるための金型の概略構造を示す。金型Mは、上端に下すぼまりテーパー状の導入穴42を有し、導入穴42の下端に連続して曲げ穴43が形成してある。導入穴42は内刃ホルダー21の直径寸法より大きく、しかし露出部25を折り曲げたときの内刃ブレード23の外直径寸法より僅かに小さく設定してある。この金型Mの導入穴42に内刃ブレード23の一端をあてがい、金型Mを矢印P方向へ回転しながら前段体8Aの全体を曲げ穴43へ押し込むことにより、図10に示すように、10個の内刃ブレード23の露出部25の全てを、内刃8の回転方向上手側へ同時に2段階に折り曲げることができる。
【0039】
内刃ブレード23を折り曲げる過程では、折り曲げ抵抗が小さな先端側の脆弱部列32を屈曲中心にして、ブレード先端側の壁面が折り曲げられ、その途中において基端側の脆弱部列31を屈曲中心にして、ブレード中途部およびブレード基端側の壁面が並行してバランスよく折り曲げられる。したがって、得られた内刃8の前段体8Aにおいては、露出部25の曲げ形状、および寸法を一定に揃えることができる。このとき、埋設部24には大きな曲げモーメントが作用するが、埋設部24の傾斜角(埋設角度)α1が小さいので、内刃ホルダー21が変形し、あるいは破損するのを阻止できる。
【0040】
最後に、得られた内刃8の前段体8Aの先端に、センターレス研削法によって粗研削と仕上げ研削とを施すことにより、内刃ホルダー21と同心状の摺動面27が形成され、摺動面27の突端縁に切刃角度θが鋭角の切刃26が形成される。研削加工によって除去された部分を、図10の拡大図に想像線で示している。なお、本発明における切刃角度θは、内刃8の回転中心と切刃26とを結ぶ線を基準にして、切刃26に連続するすくい面41と先の基準線とで挟まれる角度を意味しており、この実施例における切刃角度θは50度とした。切刃角度θを50度とするとき、摺動面27とすくい面41とで挟まれる刃先角βは40度となる。
【0041】
以上のように構成した内刃8によれば、内刃ブレード23のすくい角αを大きくして、刃先角βが鋭角の切刃26を形成できるので、長期にわたって良好な切れ味を発揮できる内刃8が得られる。また、露出部25を2段階に折り曲げるので、内刃8の回転中心方向の外力が内刃ブレード23に作用する場合に、露出部25の全体を屈曲内面側へ撓み変形させて先の外力を逃がすことが可能となる。したがって、肌当りを柔らかにすることを目的として、露出部25を撓ませる設計を行なう場合に有効となる。加えて、図4ないし図10で説明した過程を経て内刃8を形成する本発明の回転式刃物の製造方法によれば、すくい角αが大きな3次元形状の内刃ブレード23を備えた内刃8を、より容易に、しかも常に安定した状態で的確に形成できる。
【0042】
以下に、本発明の別の実施例を図11ないし図15に基づき説明する。なお、以下の説明においては、先の実施例と異なる点を主に説明し、先の実施例と同じ部材には同じ符号を付してその説明を省略する。図11に示す内刃ブレード23は、先の実施例とほぼ同じであるが、露出部25の基端側に形成される脆弱部29を、露出部25と埋設部24の境界に位置させて、内刃ホルダー21を成形するときの溶融樹脂が脆弱部29の内部に入り込むようにした。このように、基端側の脆弱部29をプラスチック材で塞ぐと、先の実施例に比べて、基端側の脆弱部列31の折り曲げ抵抗を、先端側の脆弱部列32の折り曲げ抵抗より大きくして、基端側のブレード壁が先端側のブレード壁に先行して折り曲げられるのをさらに確実に防止できる。したがって、内刃ブレード23の曲げ加工をさらに確実に行なうことができる。
【0043】
図12に脆弱部29の別の実施例を示す。そこでは、内刃ブレード23の基端側の脆弱部29を円形の凹部で形成し、先端側の脆弱部29を長円状の凹部で形成する点が、先の実施例と異なる。各凹部は、内刃ブレード23のブランク体23Aを形成する過程で、ハーフエッチング処理することにより形成する。このように、脆弱部29は楕円状、あるいは多角形状の穴や独立した凹部など、任意形状の穴や凹部で形成することができる。この実施例における貫通穴30は、先の実施例で説明したブランク体23Aと同様に丸穴状に形成されて、埋設部24側の湾曲縁に沿って円弧列状に形成してある。
【0044】
図13は脆弱部29のさらに別の実施例を示す。そこでは、内刃ブレード23の露出部25の壁表面のそれぞれに、合計5箇所の脆弱部29を形成して、露出部25の全体を湾曲状に折り曲げ形成した。各脆弱部29は、内刃ブレード23の長手方向(左右方向)に連続する断面が半円状の溝で形成する。このように、脆弱部29を長手方向に連続する溝で形成すると、曲げ形状のばらつきを排除して露出部25をより正確に成形できる。この実施例における溝からなる各脆弱部29は、それ自体が先の実施例における脆弱部列31・32と同等の機能を発揮する。この実施例に係る内刃ブレード23は、肌当りを柔らかにすることを目的として、露出部25を湾曲状に形成する設計を行なう場合に有効となる。
【0045】
上記の各実施例では、内刃ブレード23の先端に研削加工を施して切刃26を形成したがその必要はない。その場合には図14に示すように、内刃ブレード23のすくい面41をエッチング時の蝕刻面で形成して、すくい面41の先端部分を切刃26とすることができる。この実施例に係る内刃ブレード23は、貫通穴30を露出部25と埋設部24の境界を跨る状態で形成して、貫通穴30が脆弱部29を兼ねるようにした。また、図11で説明した内刃ブレード23の脆弱部29と同様に、内刃ホルダー21を成形するときの溶融樹脂が脆弱部29の内部に入り込むようにした。内刃ブレード23の全体は、露出部25の基端の脆弱部29を折り曲げ中心にして、く字状に折り曲げられる。
【0046】
内刃ブレード23のブランク体23Aは、図15に示すエッチング過程を経て形成する。具体的には、原材シート35の表面に限って耐蝕性のレジスト膜37を形成する。この状態の原材シート35の表面にエッチング液を吹き付けることにより、図15(b)に示すように、レジスト膜37で覆われていない原材シート35の表面を腐蝕させて、凹曲面状の蝕刻面38を形成する。エッチング液による腐蝕が進行すると、蝕刻面38が原材シート35の裏面側に達して貫通穴を形成する。この貫通穴によって、図15(c)に示すように、ブランク体23Aの外郭線が形成され、同時に埋設部24の貫通穴30と、露出部25のすくい面41とが形成される。
【0047】
図16は、内刃ブレード23のさらに別の実施例を示す。そこでは露出部25の中途部に溝状の脆弱部29を設け、脆弱部29を屈曲中心にして、脆弱部29と切刃26との間の壁面を、内刃8の回転方向上手側へ傾斜させるようにした。このように、露出部25は、その中途部を一度だけ折り曲げてすくい角αを大きくすることができる。必要があれば、切刃26の近傍の露出部25の壁面を一度だけ折り曲げて、すくい角αを大きくすることができる。
【0048】
上記の実施例では、脆弱部列31・32を一群の貫通穴で形成したが、その必要はなく、穴と溝が混在する状態で形成することができる。つまり、脆弱部29は溝および/または露出部25の壁面を貫通する穴で形成することができる。ブランク体23Aと金型Mとは、互いに相対回転する関係にあればよく、金型Mを固定しておいて、ブランク体23Aを回転駆動しながら曲げ穴43に押し込み操作してもよい。脆弱部列は、露出部25の2箇所以上に形成するのが好ましいが、少なくとも1箇所に形成してあればよい。抜け止め用の貫通穴30に換えて、埋設部24の一部を折り曲げて内刃ブレード23を抜け止め固定することができる。
【0049】
本発明の回転式刃物は、電気かみそりの内刃8以外に、毛玉取り器の回転刃や、鉛筆削り器の回転刃などにも適用できる。また、内刃ブレード23は内刃ホルダー21に対して螺旋状に埋設固定する必要はなく、回転駆動軸22と平行になる状態で内刃ブレード23が内刃ホルダー21に埋設してあってもよい。その場合にも、内刃8の前段体8Aの内刃ブレード23を金型Mで同時に曲げることができる。さらに、露出部25を内刃8の回転方向上手側へ予め曲げてブランク体23Aを形成したのち、これを内刃ホルダー21にインサート固定して内刃8を形成することができる。その場合には、前段体8Aを成形した後の、金型Mによる曲げ加工を省略することができる。
【0050】
内刃ホルダー21は丸軸状である必要はなく、断面が多角形状の軸体で形成することができる。ブランク体23Aはプレス加工で形成することができ、脆弱部29を穴で形成する場合には、ブランク体23Aの外形と脆弱部29を同時に打ち抜き加工することができる。また、脆弱部29を溝で形成する場合には、切削加工で溝を形成した後、脆弱部29を含むブランク体23Aを打ち抜き加工するとよい。
【符号の説明】
【0051】
7 外刃
8 回転式刃物(内刃)
21 ホルダー(内刃ホルダー)
23 ブレード(内刃ブレード)
24 埋設部
25 露出部
26 切刃
29 脆弱部
31・32 脆弱部列
α すくい角
β 刃先角
θ 切刃角度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダー(21)と、一端がホルダー(21)に対して固定される複数個のブレード(23)とを含み、
ブレード(23)は、回転式刃物の回転方向上手側へ傾斜する状態でホルダー(21)の内部に埋設される埋設部(24)と、ホルダー(21)の外面に露出する露出部(25)と、露出部(25)の先端に形成される切刃(26)とを備えており、
ブレード(23)の露出部25が、埋設部(24)の傾斜位置を基準にして、これよりも回転式刃物の回転方向上手側へさらに傾斜させてある回転式刃物。
【請求項2】
露出部(25)の傾斜角が埋設部(25)の傾斜角と同じか、それより大きく設定してある請求項1に記載の回転式刃物。
【請求項3】
ブレード(23)の露出部(25)に、露出部(25)を構成する壁面の塑性加工を容易化する脆弱部(29)が形成されており、
露出部(25)が、前記脆弱部(29)を屈曲中心にして、回転式刃物の回転方向上手側へ傾斜させてあることを特徴とする請求項1または2に記載の回転式刃物。
【請求項4】
脆弱部(29)が、露出部(25)の基端に沿って列状に形成してある請求項3に記載の回転式刃物。
【請求項5】
露出部(25)が複数の脆弱部列(31・32)を含んで、湾曲状に折り曲げてある請求項3または4に記載の回転式刃物。
【請求項6】
露出部(25)を構成する壁面に、複数個の脆弱部列(31・32)が形成されており、
露出部(25)の基端側に形成される脆弱部列(31)における曲げ強度が、前記脆弱部列(31)より切刃(26)の側に形成される脆弱部列(32)における曲げ強度より大きく設定してある請求項5に記載の回転式刃物。
【請求項7】
ブレード(23)が、金属板材にエッチング処理を施して形成されており、
脆弱部(29)が、エッチング処理を施す過程で同時に形成してある請求項3から6のいずれかに記載の回転式刃物。
【請求項8】
複数のブレード(23)をホルダー(21)に固定して、回転式刃物の前段体(8A)を形成し、
曲げ穴(44)を備えている金型(M)に、前記前段体(8A)と金型(M)とを相対回転しながら、前段体(8A)を曲げ穴(44)へ向かって差し込んで、複数のブレード(23)の露出部(25)を曲げ穴(44)で同時に折り曲げることを特徴とする回転式刃物の製造方法。
【請求項9】
前段体(8A)の露出部(25)に、露出部(25)の曲げ加工を容易化する脆弱部(29)が予め形成されており、
前段体(8A)を金型(M)で成形する過程で、前記脆弱部(29)を屈曲中心にして、ブレード(23)の露出部(25)を折り曲げ形成する請求項8に記載の回転式刃物の製造方法。
【請求項1】
ホルダー(21)と、一端がホルダー(21)に対して固定される複数個のブレード(23)とを含み、
ブレード(23)は、回転式刃物の回転方向上手側へ傾斜する状態でホルダー(21)の内部に埋設される埋設部(24)と、ホルダー(21)の外面に露出する露出部(25)と、露出部(25)の先端に形成される切刃(26)とを備えており、
ブレード(23)の露出部25が、埋設部(24)の傾斜位置を基準にして、これよりも回転式刃物の回転方向上手側へさらに傾斜させてある回転式刃物。
【請求項2】
露出部(25)の傾斜角が埋設部(25)の傾斜角と同じか、それより大きく設定してある請求項1に記載の回転式刃物。
【請求項3】
ブレード(23)の露出部(25)に、露出部(25)を構成する壁面の塑性加工を容易化する脆弱部(29)が形成されており、
露出部(25)が、前記脆弱部(29)を屈曲中心にして、回転式刃物の回転方向上手側へ傾斜させてあることを特徴とする請求項1または2に記載の回転式刃物。
【請求項4】
脆弱部(29)が、露出部(25)の基端に沿って列状に形成してある請求項3に記載の回転式刃物。
【請求項5】
露出部(25)が複数の脆弱部列(31・32)を含んで、湾曲状に折り曲げてある請求項3または4に記載の回転式刃物。
【請求項6】
露出部(25)を構成する壁面に、複数個の脆弱部列(31・32)が形成されており、
露出部(25)の基端側に形成される脆弱部列(31)における曲げ強度が、前記脆弱部列(31)より切刃(26)の側に形成される脆弱部列(32)における曲げ強度より大きく設定してある請求項5に記載の回転式刃物。
【請求項7】
ブレード(23)が、金属板材にエッチング処理を施して形成されており、
脆弱部(29)が、エッチング処理を施す過程で同時に形成してある請求項3から6のいずれかに記載の回転式刃物。
【請求項8】
複数のブレード(23)をホルダー(21)に固定して、回転式刃物の前段体(8A)を形成し、
曲げ穴(44)を備えている金型(M)に、前記前段体(8A)と金型(M)とを相対回転しながら、前段体(8A)を曲げ穴(44)へ向かって差し込んで、複数のブレード(23)の露出部(25)を曲げ穴(44)で同時に折り曲げることを特徴とする回転式刃物の製造方法。
【請求項9】
前段体(8A)の露出部(25)に、露出部(25)の曲げ加工を容易化する脆弱部(29)が予め形成されており、
前段体(8A)を金型(M)で成形する過程で、前記脆弱部(29)を屈曲中心にして、ブレード(23)の露出部(25)を折り曲げ形成する請求項8に記載の回転式刃物の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−172353(P2010−172353A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15017(P2009−15017)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000164461)九州日立マクセル株式会社 (338)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000164461)九州日立マクセル株式会社 (338)
【Fターム(参考)】
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