説明

回転式圧縮機

【課題】圧縮機構(20)の吐出口に残留する高圧ガスの再膨張により発生する振動や騒音を簡単な構成で低減する。
【解決手段】高圧ドーム式の回転式圧縮機(1)において、吐出ポート(21b)の内部へ油を供給する油供給経路(40)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式圧縮機に関し、特に、シリンダ室でガスを圧縮する圧縮機構の吐出ポート内に吐出過程完了時に残留した高圧ガスが次の圧縮過程の時にシリンダ室内に戻って再膨張することにより発生する振動や騒音を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えばシリンダ室がブレードにより低圧室と高圧室に区画された回転式圧縮機においては、圧縮機構の動作に伴って低圧室が高圧室に切り換わるとともに高圧室が低圧室に切り換わりながら、低圧室での吸入過程と、高圧室での圧縮過程と吐出過程とが同時に行われて、低圧ガスの圧縮と高圧ガスの吐出とが行われる。この回転式圧縮機では、吐出過程完了時に吐出ポート内に残留した高圧ガスが、次の圧縮過程の開始時に低圧になっているシリンダ室に戻って再膨張することにより、吐出ポート付近で大きな圧力脈動が励起される。そこで、この圧力脈動に伴って発生する振動や騒音を抑える機構を備えたものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の回転式圧縮機では、圧縮機構の吸入ポートがピストンにより閉鎖される吸入閉じ切り以後のタイミングで、シリンダ室に開口した高圧通路から高圧流体をシリンダ室に注入する高圧流体注入機構が設けられている。
【0004】
そして、この特許文献1の圧縮機では、密閉状に形成されたシリンダ室内で再膨張により高周波脈動が生じているガスに高圧流体(高圧油)をぶつけることにより、高周波脈動と高圧圧力とを干渉させて、高周波脈動を抑制する高圧流体注入機構を設けている。このことにより、高周波脈動に起因して生じる振動や騒音を低減するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−219051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の圧縮機では、高圧流体注入機構が、密閉されたシリンダ室に常に開口しているので、給油量を絞りにくく、吸入閉じ切り直後の低圧のシリンダ室に高圧の油が入りすぎるおそれがあった。これは、上記構成だと差圧の影響を受けやすいためである。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みて創案されたものであり、その目的は、吐出過程完了時に圧縮機構の吐出ポートに残留する高圧ガスが、次の圧縮過程の開始時に低圧になっているシリンダ室で再膨張することにより発生する振動や騒音を防止し、かつシリンダ室へ油が入りすぎるのも防止できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、ケーシング(10)と、該ケーシング(10)内に設けられてシリンダ室(25)でガスを圧縮する圧縮機構(20)とを備え、該圧縮機構(20)には、吐出過程中に開放される一方で該吐出過程の終了時から次の圧縮過程の間に閉鎖される吐出弁(28a)が
装着された吐出ポート(21b)が設けられ、該吐出ポート(21b)から吐出過程中に吐出された高圧ガスがケーシング(10)内の空間を介して該ケーシング(10)の外部へ吐出される高圧ドーム式の回転式圧縮機を前提としている。
【0009】
そして、この回転式圧縮機は、上記ケーシング(10)の底部に貯留する潤滑油を、上記吐出過程の途中から上記圧縮過程の開始の間に、上記吐出ポート(21b)の内部へを供給
する油供給経路(40)を備えていることを特徴としている。
【0010】
この第1の発明では、圧縮機構(20)が動作することにより、低圧ガスが圧縮されて高圧ガスになる。そして、吐出過程中に圧縮機構(20)の吐出ポート(21b)から圧縮機の
ケーシング(10)内に吐出されて該ケーシング(10)内の空間に充満した高圧ガスが、該ケーシング(10)から外部へ流出する。この回転式圧縮機を冷媒が循環する冷凍サイクルの圧縮行程に用いる場合には、冷媒は、凝縮行程、膨張行程、及び蒸発行程を経た後に、再び圧縮機構(20)に吸入されて圧縮される。
【0011】
回転式圧縮機では、圧縮機構(20)の動作中に、シリンダ室(25)の容積が拡大する動作と縮小する動作が繰り返される。そして、シリンダ室(25)の容積が拡大するときに冷媒が吸入され、シリンダ室(25)の容積が縮小するときに冷媒が圧縮されて吐出される。ここで、本発明では圧縮機構(20)の動作中における吐出過程の途中から圧縮過程の開始までの間に、吐出ポート(21b)へ油が供給される。そして、圧縮機構(20)の吐出過程
が終了するときには吐出ポート(21b)が吐出弁(28a)で閉鎖されるので、圧縮過程が始まるまでには該吐出ポート(21b)内には油が残った状態になっている。そのため、次に
圧縮過程が開始されるときには吐出ポート(21b)内の油がシリンダ室(25)に流入する
。したがって、シリンダ室(25)が低圧になって圧縮過程が始まっても油は膨張しないので、脈動の発生が抑えられる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、上記油供給経路(40)が、上記吐出過程の途中から吐出過程の終了までの間に上記吐出ポート(21b)の内部へ油を供給するように構成さ
れていることを特徴としている。
【0013】
この第2の発明では、吐出過程が終了するときには吐出ポート(21b)内に油が入った
状態になる。そのため、次に圧縮過程が開始されるときには吐出ポート(21b)内の油が
シリンダ室(25)に流入する。したがって、シリンダ室(25)が低圧になって次の圧縮過程が始まっても、脈動の発生を抑えられる。
【0014】
第3の発明は、第1の発明において、上記油供給経路(40)が、上記吐出過程の終了から圧縮過程の開始の間に上記吐出ポート(21b)の内部へ油を供給するように構成されて
いることを特徴としている。
【0015】
この第3の発明では、吐出過程が終了して次に圧縮過程が開始されるときには吐出ポート(21b)内の油がシリンダ室(25)に流入する。したがって、シリンダ室(25)が低圧
になって次の圧縮過程が始まっても、吐出ポート(21b)内の油がシリンダ室(25)へ流
入するので、脈動の発生を抑えられる。
【0016】
第4の発明は、第1の発明において、上記圧縮機構(20)の動作の1サイクルが360°の回転動作により行われるように構成され、上記圧縮機構(20)における吐出過程の終了位置と圧縮過程の開始位置の間の位置を回転動作の基準位置とし、その基準位置の回転角度を0°とすると、上記油供給経路(40)は、回転角度が315°と45°の間の範囲で上記吐出ポート(21b)の内部へ油を供給するように構成されていることを特徴として
いる。
【0017】
上記の回転角度は、圧縮機構(20)の動作中における吐出過程の途中から圧縮過程の開始までの間に対応する角度である。そのため、上記第1から第3の発明と同様に、吐出過
程が終了して次に圧縮過程が開始されるときには、吐出ポート(21b)内の油がシリンダ
室(25)に流入する。したがって、シリンダ室(25)が低圧になって次の圧縮過程が始まっても、脈動の発生を抑えられる。
【0018】
第5の発明は、第1から第4の発明の何れか1つにおいて、上記油供給経路(40)が、上記ケーシング(10)内に設けられている油溜まり(14)から上記吐出ポート(21b)へ
油を供給するように該油溜まり(14)と吐出ポート(21b)に連通する油供給用直通経路
(40A)を備えていることを特徴としている。
【0019】
この第5の発明では、圧縮機構(20)の動作中に、上記油供給用直通経路(40A)を介
して、油溜まり(14)から圧縮機構(20)の吐出ポート(21b)へ油が供給される。そし
て、圧縮機構(20)の圧縮過程開始時には、吐出過程終了時に吐出ポート(21b)内に入
っている油が低圧のシリンダ室(25)へ入っていくので、高圧ガスの再膨張による脈動の発生が抑えられる。
【0020】
第6の発明は、第5の発明において、上記油溜まり(14)に貯留した油を上記圧縮機構(2)の回転動作に連動して撹拌する油撹拌機構(50)が設けられていることを特徴とし
ている。
【0021】
この第6の発明では、油溜まり(14)に貯留している油を撹拌することにより、油に溶け込んでいる冷媒が発泡して油から分離する。したがって、吐出ポート(21b)には、冷
媒がほとんど溶け込んでいない油が供給される。
【0022】
第7の発明は、第1の発明から第6の発明の何れか1つにおいて、上記圧縮機構(20)が、偏心部(33b)を有するクランク軸(33)の回転動作によりピストン(26)がシリン
ダ(21)内で上記シリンダ室(25)の内周面に沿って旋回運動をする旋回式圧縮機構(20)により構成され、上記油供給経路(40)が、上記クランク軸(33)の偏心部(33b)に
形成されるとともに油が導入される凹部(42)を備え、上記吐出ポート(21b)の内部へ
油を供給する角度範囲で、該凹部(42)が上記圧縮機構(20)の吐出ポート(21b)と連
通するように構成されていることを特徴としている。
【0023】
この第7の発明では、圧縮機構(20)の動作中にはクランク軸(33)が回転し、ピストン(26)がシリンダ室(25)内で旋回運動をする。このとき、クランク軸(33)の偏心部(33b)に形成されている凹部(42)もクランク軸(33)の中心周りを旋回し、該凹部(42)が上記圧縮機構(20)の吐出ポート(21b)と上記の角度範囲で連通する。この凹部(42)へは油が導入されるようになっているので、凹部(42)と吐出ポート(21b)が連通
するときに、凹部(42)から吐出ポート(21b)へ油が流入する。したがって、圧縮機構
(20)の圧縮過程開始時には、その時点で吐出ポート(21b)内に入っている油がシリン
ダ室(25)へ導入される。
【0024】
第8の発明は、第7の発明において、上記吐出ポート(21b)が、上記吐出ポート(21b)の内部へ油を供給する角度範囲で、上記凹部(42)と一部分が重なるような位置に上記圧縮機構(20)に形成された貫通孔により構成されていることを特徴としている。
【0025】
この第8の発明では、上記吐出ポート(21b)が、上記凹部(42)の旋回動作中に上記
吐出ポート(21b)の内部へ油を供給する角度範囲で該凹部(42)と一部分が重なるよう
に形成されているので、圧縮機構(20)が動作する間に、上記の角度範囲で凹部(42)と吐出ポート(21b)とが連通する。凹部(42)には油が導入されるようになっているので
、凹部(42)から吐出ポート(21b)へ油が流入する。したがって、圧縮機構(20)の圧
縮過程開始時には、吐出過程終了時点で吐出ポート(21b)内に入っている油が低圧のシ
リンダ室(25)へ導入される。
【0026】
第9の発明は、第7の発明において、上記吐出ポート(21b)が、上記凹部(42)の旋
回軌道から径方向外側へ外れた位置に形成された貫通孔により形成され、上記ピストン(26)の端面には、上記吐出ポート(21b)と上記凹部(42)とを上記吐出ポート(21b)の内部へ油を供給する角度範囲で連通させる切り欠き(43)が形成されていることを特徴としている。
【0027】
この第9の発明では、上記吐出ポート(21b)が、上記凹部(42)の旋回軌道から径方
向外側へ外れた位置に形成された貫通孔により形成され、上記ピストン(26)の端面には、上記吐出ポート(21b)と上記凹部(42)とを上記吐出ポート(21b)の内部へ油を供給する角度範囲で連通させる切り欠き(43)が形成されているので、圧縮機構(20)の動作中に上記凹部(42)がクランク軸(33)の中心周りを旋回する間の一定の角度範囲で上記凹部(42)と吐出ポート(21b)とが連通する。凹部(42)には油が導入されるようにな
っているので、凹部(42)から吐出ポート(21b)へ油が流入する。したがって、圧縮機
構(20)の圧縮過程開始時には、吐出過程終了時点で吐出ポート(21b)内に入っている
油が低圧のシリンダ室(25)へ導入される。
【0028】
第10の発明は、第7の発明において、上記吐出ポート(21b)が、上記凹部(42)の
旋回軌道から径方向外側へ外れた位置に形成された貫通孔により形成され、上記吐出ポート(21b)には、該吐出ポート(21b)と上記凹部(42)とを上記吐出ポート(21b)の内
部へ油を供給する角度範囲で連通させる切り欠き(44)が形成されていることを特徴としている。
【0029】
この第10の発明では、上記吐出ポート(21b)が、上記凹部(42)の旋回軌道から径
方向外側へ外れた位置に形成された貫通孔により形成され、上記吐出ポート(21b)には
、該吐出ポート(21b)と上記凹部(42)とを、上記吐出ポート(21b)の内部へ油を供給する角度範囲で連連通させる切り欠き(44)が形成されているので、圧縮機構(20)の動作中に上記凹部(42)がクランク軸(33)の中心周りを旋回する間の一定の角度範囲で、凹部(42)と吐出ポート(21b)とが連通する。凹部(42)には油が導入されるようにな
っているので、凹部(42)から吐出ポート(21b)へ油が流入する。したがって、圧縮機
構(20)の圧縮過程開始時には、吐出過程終了時点で吐出ポート(21b)内に入っている
油が、低圧のシリンダ室(25)へ導入される。
【0030】
第11の発明は、第1の発明から第4の発明の何れか1つにおいて、上記油供給経路(40)が、上記ケーシング(10)内に設けられている油溜まり(14)から圧縮機構(20)の内部(摺動面やシリンダ室(25))を介して上記吐出ポート(21b)へ油を間欠的に供給
する油供給用間接経路(40B)を備えていることを特徴としている。
【0031】
この第11の発明では、圧縮機構(20)の動作中には、油供給経路(40)によって、ケーシング(10)内に設けられている油溜まり(14)から圧縮機構(20)の内部(摺動面やシリンダ室(25))に油が導入される。そして、油は、圧縮機構(20)の動作中に該圧縮機構(20)の内部から吐出ポート(21b)の中へ間欠的に押し込まれる。そのため、吐出
過程が終了して次の圧縮過程が始まるときに、吐出ポート(21b)内に油が入っている状
態となる。このように、圧縮機構(20)の内部を介して油が吐出ポート(21b)に導入さ
れるので、油供給経路(40)は油供給用間接経路(40B)として機能する。そして、圧縮
機構(20)の圧縮過程開始時には、吐出過程終了時点で吐出ポート(21b)内に入ってい
る油が低圧のシリンダ室(25)へ導入される。
【0032】
第12の発明は、第11の発明において、上記油溜まり(14)に貯留した油を、上記圧
縮機構(20)の回転動作に連動して撹拌する油撹拌機構(50)が設けられていることを特徴としている。
【0033】
この第12の発明では、油溜まり(14)に貯留している油を撹拌することにより、油に溶け込んでいる冷媒が発泡して油から分離する。したがって、吐出ポート(21b)には、
冷媒がほとんど溶け込んでいない油が供給される。
【0034】
第13の発明は、第11の発明において、上記圧縮機構(20)が、該圧縮機構(20)の摺動面に供給される油を圧縮過程から吐出過程の間の所定の角度範囲で上記シリンダ室(25)に導入するように、該角度範囲で一端が上記摺動面側に開口するとともに他端がシリンダ室(25)に開口する連通溝(45)を備えていることを特徴としている。
【0035】
この第13の発明では、圧縮機構(20)の動作中には、連通溝(45)によって圧縮機構(20)の摺動面とシリンダ室(25)とが、圧縮過程から吐出過程の間の所定の角度範囲で連通することにより、油が上記摺動面からシリンダ室(25)へ供給される。そして、この油は、シリンダ室(25)の容積が縮小するのにしたがって、吐出ポート(21b)へ押し込
まれる。そのため、吐出過程が終了して次の圧縮過程が始まるときに、吐出ポート(21b
)内には油が入っている状態となる。このように、油が吐出ポート(21b)に導入される
ので、油供給経路(40)は油供給用間接経路(40B)として機能する。そして、圧縮機構
(20)の圧縮過程開始時には、吐出過程終了時点で吐出ポート(21b)内に入っている油
が低圧のシリンダ室(25)へ導入される。
【0036】
第14の発明は、第11の発明において、上記圧縮機構(20)が、上記油溜まり(14)からシリンダ室(25)へ導入された油を一時的に貯留するようにシリンダ室(25)の内壁面に形成された油貯留凹部(46)を備えていることを特徴としている。
【0037】
この第14の発明では、圧縮機構(20)の動作中には、油供給経路(40)によって、ケーシング(10)内に設けられている油溜まり(14)から圧縮機構(20)のシリンダ室(25)に油が導入され、油が油貯留凹部(46)に貯留される。油貯留凹部(46)内の油は、シリンダ室(25)の容積が縮小することによって、唯一の行き場となる吐出ポート(21b)
の中へ押し込まれる。そのため、吐出過程が終了して次の圧縮過程が始まるときに、吐出ポート(21b)内には油が入っている状態となる。このように、シリンダ室(25)を介し
て油が吐出ポート(21b)に導入されるので、油供給経路(40)は油供給用間接経路(40B)として機能する。そして、圧縮機構(20)の圧縮過程開始時には、吐出過程終了時点で吐出ポート(21b)内に入っている油が低圧のシリンダ室(25)へ導入される。
【0038】
第15の発明は、第14の発明において、上記圧縮機構(20)が、偏心部(33b)を有
するクランク軸(33)の回転動作によりピストン(26)がシリンダ(21)内で上記シリンダ室(25)の内周面に沿って旋回運動をするとともに、吸入ポート(21a)と吐出ポート
(21b)を有する旋回式圧縮機構(20)により構成され、上記油貯留凹部(46)が、上記
シリンダ室(25)の軸方向端面においてピストン(26)で開閉される位置に形成されるとともに、吐出過程終了から圧縮過程開始のタイミングでピストン(26)の端面から開放され、吐出過程が開始される前にピストン(26)の端面に覆われ、吐出過程中に上記クランク軸(33)とピストン(26)の摺動面と連通するように構成されていることを特徴としている。
【0039】
この第15の発明では、油貯留凹部(46)の位置を特定したことにより、吐出過程が開始されるタイミングでピストン(26)の端面に覆われる一方、吐出過程中に上記クランク軸(33)とピストン(26)の摺動面と連通して油が溜められ、その油が、吸入ポート(21a)が閉じ切られるタイミングで圧縮室に放出される。この油は、圧縮行程が進むと吐出
ポート(21b)に溜まる。したがって圧縮機構(20)の圧縮過程開始時には、吐出過程終
了時点で吐出ポート(21b)内に入っている油が低圧のシリンダ室(25)へ導入される。
【0040】
第16の発明は、第11の発明において、上記圧縮機構(20)のシリンダ(21)には、ケーシング(10)内の油溜まり(14)と圧縮機構(20)のシリンダ室(25)とを連通する油導入孔(47)が形成されていることを特徴としている。
【0041】
この第16の発明では、上記油導入孔(47)によって、ケーシング(10)内に設けられている油溜まり(14)から圧縮機構(20)のシリンダ室(25)に油が導入される。シリンダ室(25)に導入された油は、シリンダ室(25)の容積が縮小することによって、唯一の行き場となる吐出ポート(21b)の中へ押し込まれる。そのため、吐出過程が終了して次
の圧縮過程が始まるときに、吐出ポート(21b)内には油が入っている状態となる。この
ように、シリンダ室(25)を介して油が吐出ポート(21b)に導入されるので、油供給経
路(40)は油供給用間接経路(40B)として機能する。そして、圧縮機構(20)の圧縮過
程開始時には、その時点で吐出ポート(21b)内に入っている油が低圧のシリンダ室(25
)へ導入される。
【0042】
第17の発明は、第11の発明において、上記圧縮機構(20)が、ピストン(26)とブレード(26b)とが一体的に形成された揺動ピストン(26)を有し、圧縮機構(20)の吸
入ポート(21a)と吐出ポート(21b)が該ブレード(26b)を挟んで両側に配置されたス
イング圧縮機により構成され、上記ブレード(26b)には、上記吐出ポート(21b)側の側面に、該ブレード(26b)の背面に形成される背圧室からシリンダ室(25)へ連通するス
リット(48)が形成されていることを特徴としている。
【0043】
この第17の発明では、上記スリット(48)によって、上記背圧室から吐出ポート(21b)へ油が導入される。そのため、吐出過程が終了して次の圧縮過程が始まるときに、吐
出ポート(21b)内には油が入っている状態となる。このように、シリンダ室(25)を介
して油が吐出ポート(21b)に導入されるので、油供給経路(40)は油供給用間接経路(40B)として機能する。そして、圧縮機構(20)の圧縮過程開始時には、吐出過程終了時点で吐出ポート(21b)内に入っている油が低圧のシリンダ室(25)へ導入される。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、圧縮機構(20)において圧縮過程が開始されるときには吐出ポート(21b)内の油が該圧縮機構(20)のシリンダ室(25)に流入し、その際に油の膨張は起こ
らない。そのため、再膨張による脈動の発生を抑えられる。また、この発明では油を吐出ポート(21b)に供給するようにしているため、圧縮過程が開始されたシリンダ室への油
の導入量が増えすぎてしまうのも防止できる。さらに、この発明では吐出ポート(21b)
へ油を導入するために、吐出過程の途中から圧縮過程の開始までの間に吐出ポート(21b
)内へ油を入れておけばよく、圧縮機構へ供給された潤滑油を利用できるため、構成を簡単にして圧縮機の低コスト化を図ることができる。
【0045】
上記第2から第4の発明によれば、上記と同様に、圧縮過程が開始されるときに吐出ポート(21b)内の油がシリンダ室(25)に流入し、低圧のシリンダ室(25)で脈動の発生
を抑えられる。また、圧縮過程が開始されたシリンダ室への油の導入量が増えすぎてしまうのも防止できる。さらに、圧縮機構へ供給された潤滑油を利用できるため、構成を簡単にして圧縮機の低コスト化を図ることができる。
【0046】
上記第5の発明によれば、圧縮機構(20)の動作中に、上記油供給用直通経路(40A)
を介して、油溜まり(14)から圧縮機構(20)の吐出ポート(21b)へ供給された油が、
圧縮機構(20)の圧縮過程開始時にシリンダ室(25)へ入っていくので、高圧ガスの再膨
張による脈動の発生が抑えられる。また、第1〜第4の発明と同様に構成を簡単にすることができるし、シリンダ室(25)へ油が入りすぎることも防止できる。
【0047】
上記第6の発明によれば、油溜まり(14)に貯留している油を撹拌することにより、油に溶け込んでいる冷媒を発泡させて油から分離させ、冷媒がほとんど溶け込んでいない油を吐出ポート(21b)に供給するようにしている。したがって、圧縮過程の開始時に吐出
ポート(21b)からシリンダ室(25)に流出する冷媒が少なくなり、脈動低減効果を高め
られる。
【0048】
上記第7の発明によれば、圧縮機構(20)の動作中には、クランク軸(33)の偏心部(33b)に形成されている凹部(42)がクランク軸(33)の中心周りを旋回し、その間の一
定の角度範囲で該凹部(42)が上記圧縮機構(20)の吐出ポート(21b)と連通する。そ
して、この凹部(42)へは油が導入されるようになっているので、凹部(42)と吐出ポート(21b)が連通したときに、凹部(42)から吐出ポート(21b)へ油が流入する。したがって、圧縮機構(20)の圧縮過程開始時には、吐出ポート(21b)内に入っている油が低
圧のシリンダ室(25)へ導入される。このように、本発明では、油が導入される凹部(42)が吐出ポート(21b)と連通するように構成すればよいので、高圧ガスの再膨張による
脈動を簡単な構成で抑えることが可能となる。
【0049】
上記第8の発明によれば、上記吐出ポート(21b)が、該吐出ポート(21b)の内部へ油を供給する角度範囲で、上記凹部(42)と一部分が重なるように形成されているので、圧縮機構(20)の動作中の上記の角度範囲で凹部(42)と吐出ポート(21b)とが連通する
。凹部(42)には油が導入されるようになっているので、凹部(42)から吐出ポート(21b)へ油が流入する。したがって、圧縮機構(20)の圧縮過程開始時には、吐出過程終了
時点で吐出ポート(21b)内に入っている油が低圧のシリンダ室(25)へ導入される。そ
のため、高圧ガスの再膨張による脈動を、クランク軸(33)の偏心部(33b)に凹部(42
)を形成するだけの簡単な構成で抑えることが可能となる。
【0050】
上記第9の発明によれば、上記吐出ポート(21b)が、上記凹部(42)の旋回軌道から
径方向外側へ外れた位置に形成された貫通孔により形成され、上記ピストン(26)の端面には、上記吐出ポート(21b)と上記凹部(42)とを上記吐出ポート(21b)の内部へ油を供給する角度範囲で連通させる切り欠き(43)が形成されているので、圧縮機構(20)の動作中に上記凹部(42)がクランク軸(33)の中心周りを旋回するときには、上記の角度範囲で凹部(42)と吐出ポート(21b)とが連通する。凹部(42)には油が導入されるよ
うになっているので、凹部(42)から吐出ポート(21b)へ油が流入する。したがって、
圧縮機構(20)の圧縮過程開始時には、吐出過程終了時点で吐出ポート(21b)内に入っ
ている油が低圧のシリンダ室(25)へ導入される。そのため、高圧ガスの再膨張による脈動を、クランク軸(33)の偏心部(33b)に凹部(42)を形成するとともに、上記吐出ポ
ート(21b)の内部へ油を供給するときに凹部(42)と吐出ポート(21b)を切り欠き(43)によって連通させるだけの簡単な構成で抑えることが可能となる。
【0051】
上記第10の発明によれば、上記吐出ポート(21b)が、上記凹部(42)の旋回軌道か
ら径方向外側へ外れた位置に形成された貫通孔により形成され、上記吐出ポート(21b)
には、該吐出ポート(21b)と上記凹部(42)とを上記吐出ポート(21b)の内部へ油を供給する角度範囲で連通させる切り欠き(44)が形成されているので、圧縮機構(20)の動作中に上記凹部(42)がクランク軸(33)の中心周りを旋回するときには、上記の角度範囲で凹部(42)と吐出ポート(21b)とが連通する。凹部(42)には油が導入されるよう
になっているので、凹部(42)から吐出ポート(21b)へ油が流入する。したがって、圧
縮機構(20)の圧縮過程開始時には、吐出過程終了時に吐出ポート(21b)内に入ってい
る油が低圧のシリンダ室(25)へ導入される。そのため、高圧ガスの再膨張による脈動を
、クランク軸(33)の偏心部(33b)に凹部(42)を形成するとともに、上記吐出ポート
(21b)の内部へ油を供給する角度範囲で凹部(42)と吐出ポート(21b)を切り欠き(44)によって連通させるだけの簡単な構成で抑えることが可能となる。
【0052】
また、上記第8から第10の発明によれば、凹部(42)を周方向の1箇所にだけ形成しておいて、圧縮機構(20)の上記吐出ポート(21b)の内部へ油を供給する角度範囲で吐
出ポート(21b)と凹部(42)が連通するようにしておけばよいので、吐出ポート(21b)へ油を間欠的に供給できる。
【0053】
上記第11の発明によれば、圧縮機構(20)の動作中には、油供給経路(40)によって、ケーシング(10)内に設けられている油溜まり(14)から圧縮機構(20)の内部(摺動面やシリンダ室(25))に油が導入される。この油は、圧縮機構(20)の動作に伴って吐出ポート(21b)の中へ間欠的に押し込まれる。そのため、吐出過程が終了して次の圧縮
過程が始まるときに、吐出ポート(21b)内には油が入っている状態となる。このように
、圧縮機構(20)の内部を介して油が吐出ポート(21b)に導入されるので、油供給経路
(40)は油供給用間接経路(40B)として機能する。そして、圧縮機構(20)の圧縮過程
開始時には、吐出過程終了時点で吐出ポート(21b)内に入っている油が低圧のシリンダ
室(25)へ導入される。したがって、高圧ガスの再膨張による脈動を、シリンダ室(25)を介して吐出ポート(21b)へ油を導入するだけの簡単な構成で抑えることが可能となる

【0054】
上記第12の発明によれば、油溜まり(14)に貯留している油を撹拌することにより、油に溶け込んでいる冷媒を発泡させて油から分離させ、冷媒がほとんど溶け込んでいない油を吐出ポート(21b)に供給するようにしている。したがって、圧縮過程の開始時に吐
出ポート(21b)からシリンダ室(25)に流出する冷媒が少なくなり、脈動低減効果を高
められる。
【0055】
上記第13の発明によれば、圧縮機構(20)の動作中には、圧縮過程から吐出過程の間の所定の角度範囲で連通溝(45)によって圧縮機構(20)の摺動面とシリンダ室(25)とが連通することにより、油が上記摺動面からシリンダ室(25)へ供給される。そして、この油は、シリンダ室(25)の容積が縮小するのにしたがって、吐出ポート(21b)へ押し
込まれる。そのため、吐出過程が終了して次の圧縮過程が始まるときに、吐出ポート(21b)内には油が入っている状態となる。このように、油が吐出ポート(21b)に導入されるので、油供給経路(40)は油供給用間接経路(40B)として機能する。そして、圧縮機構
(20)の圧縮過程開始時には、その時点で吐出ポート(21b)内に入っている油が低圧の
シリンダ室(25)へ導入される。したがって、高圧ガスの再膨張による脈動を、上記連通溝(45)を使って油をシリンダ室(25)へ導入するだけの簡単な構成で抑えることが可能となる。
【0056】
上記第14の発明によれば、圧縮機構(20)の動作中には、油供給経路(40)によって、ケーシング(10)内に設けられている油溜まり(14)から圧縮機構(20)のシリンダ室(25)に油が導入され、油が油貯留凹部(46)に貯留される。油貯留凹部(46)内の油は、シリンダ室(25)の容積が縮小することによって、唯一の行き場となる吐出ポート(21b)の中へ押し込まれる。そのため、吐出過程が終了して次の圧縮過程が始まるときに、
吐出ポート(21b)内には油が入っている状態となる。このように、シリンダ室(25)を
介して油が吐出ポート(21b)に導入されるので、油供給経路(40)は油供給用間接経路
(40B)として機能する。そして、圧縮機構(20)の圧縮過程開始時には、その時点で吐
出ポート(21b)内に入っている油が低圧のシリンダ室(25)へ導入される。したがって
、高圧ガスの再膨張による脈動を、シリンダ室(25)へ油を導入して油を油貯留部に貯留するだけの簡単な構成で抑えることが可能となる。
【0057】
上記第15の発明によれば、吸入ポート(21a)が閉じ切られるタイミングで圧縮室に
放出される油が、圧縮行程が進むと吐出ポート(21b)に溜まり、圧縮機構(20)の圧縮
過程開始時には、その時点で吐出ポート(21b)内に入っている油が低圧のシリンダ室(25)へ導入される。したがって、高圧ガスの再膨張による脈動を抑えることが可能となる

【0058】
上記第16の発明によれば、圧縮機構(20)の動作中には、上記油導入孔(47)によって、ケーシング(10)内に設けられている油溜まり(14)から圧縮機構(20)のシリンダ室(25)に油が導入される。シリンダ室(25)に導入された油は、シリンダ室(25)の容積が縮小することによって、唯一の行き場となる吐出ポート(21b)の中へ押し込まれる
。そのため、吐出過程が終了して次の圧縮過程が始まるときに、吐出ポート(21b)内に
は油が入っている状態となる。このように、シリンダ室(25)を介して油が吐出ポート(21b)に導入されるので、油供給経路(40)は油供給用間接経路(40B)として機能する。そして、圧縮機構(20)の圧縮過程開始時には、吐出過程終了時点で吐出ポート(21b)
内に入っている油が低圧のシリンダ室(25)へ導入される。したがって、高圧ガスの再膨張による脈動を、上記油導入孔(47)によってシリンダ室(25)へ油を導入するだけの簡単な構成で抑えることが可能となる。
【0059】
上記第17の発明によれば、圧縮機構(20)の動作中には、上記スリット(48)によって、上記背圧室から吐出ポート(21b)へ油が導入される。そのため、吐出過程が終了し
て次の圧縮過程が始まるときに、吐出ポート(21b)内には油が入っている状態となる。
このように、シリンダ室(25)を介して油が吐出ポート(21b)に導入されるので、油供
給経路(40)は油供給用間接経路(40B)として機能する。そして、圧縮機構(20)の圧
縮過程開始時には、その時点で吐出ポート(21b)内に入っている油が低圧のシリンダ室
(25)へ導入される。したがって、高圧ガスの再膨張による脈動を、上記スリット(48)によって吐出ポート(21b)へ油を導入するだけの簡単な構成で抑えることが可能となる

【0060】
また、第14から第17の発明によれば、吸入閉じ切り後のシリンダ室(25)へ油溜まり(14)から油を直接に導入するのではなく、吐出ポート(21b)から該シリンダ室(25
)へ油を導入するようにしているので、シリンダ室へ油が入りすぎるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、本発明の実施形態1に係る回転式圧縮機の縦断面図である。
【図2】図2(A)は図1の回転式圧縮機の要部断面図であり、図2(B)は圧縮機構の内部構造図である。
【図3】図3は、ピストンの回転角度が変化するのに応じて増減する圧縮室の圧力変化と、吐出弁の変位量を示すグラフである。
【図4】図4は、実施形態1の変形例1に係る回転式圧縮機を示し、図4(A)は要部縦断面図、図4(B)は圧縮機構の内部構造図である。
【図5】図5は、実施形態1の変形例2に係る回転式圧縮機を示し、図5(A)は要部縦断面図、図5(B)は圧縮機構の内部構造図である。
【図6】図6は、実施形態2に係る回転式圧縮機を示し、図6(A)は要部縦断面図、図6(B)は圧縮機構の内部構造図である。
【図7】図7は、実施形態2の変形例に係る回転式圧縮機を示し、図7(A)は要部縦断面図、図7(B)は圧縮機構の第1状態を示す内部構造図、図7(C)は圧縮機構の第2状態を示す内部構造図である。
【図8】図8(A)〜図8(H)は、ピストンが旋回している状態を示す圧縮機構の断面図である。
【図9】図9は、実施形態3に係る回転式圧縮機を示し、図9(A)は要部縦断面図、図9(B)は圧縮機構の内部構造図である。
【図10】図10は、実施形態4に係る回転式圧縮機を示し、図10(A)は要部縦断面図、図10(B)は圧縮機構の内部構造図である。
【図11】図11は、実施形態5に係る回転式圧縮機を示し、図11(A)は要部立て断面図、図11(B)は圧縮機構の一部を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0063】
《発明の実施形態1》
図1は、実施形態1に係る回転式圧縮機(1)の縦断面図である。この圧縮機(1)は、蒸気圧縮式冷凍サイクルにおいて冷媒を圧縮する圧縮行程を行うものである。図示するように、この圧縮機(1)は、縦長円筒状のケーシング(10)と、このケーシング(10)内
に配置された圧縮機構(20)と駆動機構(30)とを備えている。上記圧縮機構(20)は、ケーシング(10)内の下方の位置に配置され、上記駆動機構(30)はケーシング(10)内の上方の位置に配置されている。上記駆動機構(30)は、圧縮機構(20)を駆動するための電動機により構成されている。
【0064】
上記ケーシング(10)は、縦長の円筒状で上下両端が開口した胴部(11)と、この胴部(11)の上部開口を閉塞するように該胴部(11)に固定された上部鏡板(12)と、胴部(11)の下部開口を閉塞するように該胴部(11)に固定された下部鏡板(13)とから構成されている。上記ケーシング(10)の下端部には、油(冷凍機油)を貯留するための油溜まり(14)が形成されている。油溜まり(14)の油面(15)は、圧縮機構(20)の下部が油に浸かる程度の高さに設定されている。
【0065】
上記ケーシング(10)の胴部(11)には、その下部側の位置に、上記圧縮機構(20)と対応する位置に吸入管(16)が設けられている。また、上記ケーシング(10)の上部鏡板(12)には、そのほぼ中心位置に、ケーシング(10)の軸方向の中心線に沿うように吐出管(17)が設けられている。そして、この圧縮機(1)は、圧縮機構(20)から吐出され
た高圧ガスをケーシング(10)内の空間を介して該ケーシング(10)外へ吐出する高圧ドーム式の圧縮機(1)として構成されている。
【0066】
上記電動機(30)は、ステータ(31)とロータ(32)とを有している。ステータ(31)は、電磁鋼板を積層することにより円筒状に形成されたステータコア(31a)と、該ステ
ータコア(31a)に巻き付けられたコイル(31b)とから構成されている。このステータ(31)は、ステータコア(31a)の外周面が、ケーシング(10)の胴部(11)における上記
圧縮機構(20)の上方位置において、上記胴部(11)に溶接や焼き嵌めによって固定されている。上記ロータ(32)は、電磁鋼板を積層することにより形成されたロータコア(32a)と、該ロータコア(32a)に装着された永久磁石(32b)とから構成されている。この
ロータ(32)は、その外周面とステータ(31)の内周面との間に均一で微細なラジアルギャップ(図ではギャップを誇張して表している)が形成されるように、ステータ(31)の内周側に配置されている。
【0067】
上記ロータ(32)には、その内周面に駆動軸(33)(クランク軸)が固定されている。この駆動軸(33)は、主軸部(33a)と、この主軸部(33a)の軸方向中間部分の下方寄りに形成された偏心部(33b)とから構成されている。この偏心部(33b)は、主軸部(33a
)よりも大径であって、その中心が主軸部(33a)の中心から偏心している。
【0068】
上記圧縮機構(20)は、旋回式の圧縮機構の一種であるスイング式圧縮機構(20)によ
り構成されている。図2(A)は、圧縮機(1)の要部縦断面図であり、主として圧縮機
構(20)の縦断面構造を示し、図2(B)は、圧縮機構(20)を平面的に見た内部構造を示している。この圧縮機構(20)は、図示するように、シリンダ室(25)を有するシリンダ(21)と、このシリンダ室(25)の内部で、該シリンダ室(25)の内周面に沿って旋回運動をすることが可能に構成された揺動ピストン(26)とを有している。
【0069】
上記シリンダ(21)は、上記ケーシング(10)の胴部(11)に固定されるほぼ環状のシリンダ本体(22)と、このシリンダ本体(22)に対して図2(A)の上面に固定されるフロントヘッド(23)と、シリンダ本体(22)に対して図2(A)の下面に固定されるリアヘッド(24)とを有している。フロントヘッド(23)はシリンダ本体(22)の上面にボルトなどの締結部材により固定され、リアヘッド(24)はシリンダ本体(22)の下面にボルトなどの締結部材により固定されている。そして、このシリンダ本体(22)とフロントヘッド(23)とリアヘッド(24)の間に区画された空間が、上記シリンダ室(25)になっている。
【0070】
上記シリンダ室(25)の内部には、上記駆動軸(33)の偏心部(33b)が位置している
。また、この偏心部(33b)には揺動ピストン(26)が装着されている。揺動ピストン(26)は、該偏心部(33b)の外周に摺動自在に嵌合している。上記フロントヘッド(23)とリアヘッド(24)には、駆動軸(33)の主軸部(33a)を回転可能に支持する軸受け部(23a,24a)が形成されている。また、揺動ピストン(26)は、上記駆動軸(33)が回転す
るときに、該揺動ピストン(26)の外周面がシリンダ室(25)の内周面に油膜を介して実質的に接するように構成されている。
【0071】
上記揺動ピストン(26)は、上記駆動軸(33)の偏心部(33b)に嵌合する環状の揺動
ピストン本体部(26a)と、この揺動ピストン本体部(26a)から径方向外方へ突出するブレード(26b)とが一体的に形成されたものである。上記シリンダ本体(22)には、上記
ブレード(26b)を揺動可能に保持する揺動ブッシュ(27)が設けられている。この揺動
ブッシュ(27)は、断面がほぼ半円形でシリンダ本体(22)と同程度の厚さを有する一対の部材であって、シリンダ本体(22)に形成されているブッシュ保持凹部(22a)に、平
坦面同士が対向する状態で保持されている。そして、一対の揺動ブッシュ(27)の平坦面同士の間にブレード溝(27a)が形成され、このブレード溝(27a)に揺動ピストン(26)のブレード(26b)が摺動自在に保持されている。なお、ブッシュ保持凹部(22a)に対して径方向の外側には背圧室が形成されている。
【0072】
以上の構成により、上記圧縮機構(20)は、駆動軸(33)が回転すると、揺動ブッシュ(27)が揺動するとともに、揺動ブッシュ(27)のブレード溝(27a)の中をブレード(26b)が進退して、シリンダ室(25)の中で揺動ピストン(26)がシリンダ室(25)の内周面に沿って旋回運動をする。このように、上記圧縮機構(20)は、偏心部(33b)を有す
る駆動軸(33)が回転することによって、ブレード(26b)が揺動しながら揺動ピストン
(26)がシリンダ(21)内で旋回運動をする上述のスイング式圧縮機構(20)により構成されている。
【0073】
上記シリンダ(21)のシリンダ本体(22)には吸入ポート(21a)が形成され、この吸
入ポート(21a)には上記吸入管(16)が接続されている。また、上記シリンダ(21)の
フロントヘッド(23)には吐出ポート(21b)が形成され、この吐出ポート(21b)は下面側が上記シリンダ室(25)に開口している。また、吐出ポート(21b)の上面には、リー
ド弁である吐出弁(28a)と、吐出弁のリフト量を規制するための弁押さえ(28b)が設けられている。上記フロントヘッド(23)の上面には、吐出ポート(21b)を覆うように吐
出カバー(29)(吐出マフラ)が装着されている。この吐出カバー(29)には、その内周側端部とフロントヘッド(23)の軸受け部(23a)との間に吐出凹部(29a)が形成されて
いる。
【0074】
上記駆動軸(33)の下端部には、上記油溜まり(14)に浸漬される給油ポンプ(34)が設けられている。そして、上記駆動軸(33)には、該駆動軸(33)の中心に沿って上記給油ポンプ(34)から上方へ伸びる給油通路(35)が図2(A)に示すように形成されている。この給油通路(35)は、偏心部(33b)の上下両側の位置で駆動軸(33)の径方向へ
伸びる軸受け部給油路(36)を介して、軸受け部(23a、24a)と駆動軸(33)との摺動面へ油を供給するようになっている。
【0075】
上記給油通路(35)は、駆動軸(33)の下端から上方へ向かって、該駆動軸(33)の中心を通って形成されている。この給油通路(35)は、駆動軸(33)の下端から偏心部(33b)の若干上方までの領域に形成された大径の給油路(35a)と、この給油路(35a)の上
端からフロントヘッド(23)の上端よりも少し上方の位置までの領域に形成された小径のガス抜き通路(35b)とから構成されている。ガス抜き通路(35b)の上端にはガス抜き孔(35c)が形成され、このガス抜き孔(35c)は駆動軸(33)を半径方向に貫通している。
【0076】
この圧縮機(1)は、上記ケーシング(10)内に設けられている油溜まり(14)から上
記吐出ポート(21b)へ油を供給する油供給経路(40)を備えている。この実施形態1に
おいて、油供給経路(40)は、上記油溜まり(14)から吐出ポート(21b)へ直接に連通
する油供給用直通経路(40A)として構成されている。
【0077】
上記油供給経路(40)は、上記駆動軸(33)の給油通路(35)を利用して構成されている。油供給経路(40)は、上記偏心部(33b)の上下方向のほぼ中央で該偏心部(33b)の径方向へ開口する径方向給油孔(41a)と、駆動軸(33)の偏心部(33b)の外周面を軸方向へのびる軸方向スリット(41b)を含んでいる。偏心部(33b)には、上記軸方向スリット(41b)と連通するように環状溝(42)(凹部)が形成されている。この環状溝(42)
は、偏心部(33b)の軸方向両端部に形成されている。なお、上記環状溝(42)は、本来
は、偏心部(33b)と揺動ピストン(26)の摺動面へ油を供給するためのものである。
【0078】
上記吐出ポート(21b)は、上記環状溝(42)(凹部)の旋回動作中において、吐出過
程の途中から上記圧縮過程の開始までの間に、該環状溝(42)と一部分が重なるように上記圧縮機構(20)に形成された断面円形の貫通孔である。この吐出ポート(21b)は、そ
の内周側の端部が、上記偏心部(33b)が上死点に位置する付近の領域(吐出過程の途中
から上記圧縮過程の開始までの間の領域)で、上記偏心部(33b)の環状溝(42)とオー
バーラップするように形成されている。上記環状溝(42)と吐出ポート(21b)とがオー
バーラップする回転角度の範囲は、ピストンが上死点にある図2(B)の位置を0°とするときに、時計回り方向に315°を過ぎた付近から45°付近に至る範囲で設定するとよい。特に、この角度範囲は、330°を過ぎた付近から20°付近に至る範囲で設定するとよい。
【0079】
上記の角度範囲について図3のグラフを用いて説明する。
【0080】
このグラフには、ピストンの回転角度が変化するのに応じて増減する圧縮室の圧力変化と、吐出弁の変位量(弁変位)を示している。圧力の単位はMPa、弁変位の単位はmmである。冷媒の圧縮は、ピストンの回転中に吸入ポート(21a)が閉じ切ったときに始まり
、その角度は、本実施形態において、ピストンが上死点にある図2(B)の位置を0°とすると、時計回り方向に約45°付近の位置になる。また、図に「ポート給油」と示しているのは吐出ポート(21b)への給油をする本実施形態の圧縮機を表し、「ベース機」と
示しているのはポート給油をしない従来の圧縮機を表している。
【0081】
ピストンの回転が進むと、回転角度が90°付近になるまでは圧縮室(25)の圧力はほとんど変化せず、90°を過ぎた辺りから約225°付近まで、最初は緩やかに、徐々に急激に圧力が上昇する。この225°付近の角度で吐出弁(28a)が開き始め、すぐにそ
の圧力での最大リフト量まで開く。吐出弁(28a)が最大リフト量まで開くと圧縮室(25
)の圧力は一端下がり、弁は回転角度が270°の手前になるまではほぼ一定のリフト量を維持する。その後、弁変位は徐々に小さくなり、その間も一定期間は圧縮室(25)の圧力がほぼ一定値に維持されるが、やがて吐出弁(28a)がほぼ閉じる角度(315°を過
ぎ、330°付近)になると、実質的に吐出過程が終了する。そして、吐出弁(28a)が
閉鎖されると、圧縮室(25)の圧力も急激に低下する。
【0082】
以上のように、この実施形態では、上記ケーシング(10)の底部に貯留する潤滑油を、上記油供給経路(40)により、上記吐出過程の途中から上記圧縮過程の開始までの間(ピストンの回転角度が315°〜45°の間)に、上記吐出ポート(21b)の内部へを供給
するようにしている。なお、上記の「吐出過程の途中」は、圧縮室(25)の圧力がピークの値から下がってきたところのことを表している。また、吐出開始直後は吐出ポート(21b)内の圧力が高いため、油を供給する構成を採用しても実質的にはポートへ油を供給す
ることはほとんどできず、その後、吐出圧力がピークから下がり出すと吐出ポート(21b
)に油が入っていくようになる。なお、この実施形態では、吐出ポート(21b)に油を供
給しているので、吐出ポート(21b)の内圧は、吐出終了後に緩やかに低下してから急激
に低下していく従来の圧縮機に比べて、一端上昇してから急激に低下する変化を呈する。
【0083】
また、以上のようにして吐出過程の途中から上記圧縮過程の開始までの間に吐出ポート(21b)に油を供給することにより、吐出ポート(21b)が吐出弁(28a)で閉じられた後
、ピストンが吐出ポート(21b)を通過するときには、吐出ポート(21b)内に油が溜まっている状態となる。したがって、その直後に訪れる従来の冷媒再膨張のタイミングで吐出ポート(21b)内に油が入っていることになる。そして、従来であれば冷媒が再膨張する
角度範囲内で、本実施形態では、冷媒が圧縮室(25)に流出して再膨張する代わりに、吐出ポート(21b)から圧縮室(25)へ油が流出する。油は膨張しないので、油の流出が脈
動を誘引することはない。
【0084】
以上のように、油供給経路(40)は、上記吐出過程の途中から上記圧縮過程の開始までの間に、上記吐出ポート(21b)の内部へ冷凍機油を供給するように構成されている。そ
して、圧縮機構(20)の動作の1サイクルをピストンの360°回転にすると、吐出過程の途中から上記圧縮過程の開始までの間の一定の角度範囲でだけ、上記吐出ポート(21b
)へ冷凍機油が間欠的に供給される。これは、上記駆動軸(33)の偏心部(33b)に形成
された環状溝(42)と、上記圧縮機構(20)の吐出ポート(21b)とが、吐出過程の途中
から上記圧縮過程の開始までの間の領域だけ、間欠的に連通するためである。
【0085】
−運転動作−
次に、この回転式圧縮機(1)の運転動作について説明する。
【0086】
上記電動機(30)を起動するとロータ(32)が回転し、その回転が駆動軸(33)に伝達される。そして、駆動軸(33)が回転すると、シリンダ(21)内で揺動ピストン(26)がシリンダ室(25)の内周面に沿って旋回運動を行う。このことにより、シリンダ室(25)の容積が縮小と拡大を繰り返す。そして、シリンダ室(25)の容積が拡大するときに吸入ポート(21a)からシリンダ室(25)へ冷媒が吸入され、シリンダ室(25)の容積が縮小
するときに冷媒が圧縮されて吐出ポート(21b)からケーシング(10)内へ吐出される。
【0087】
シリンダ室(25)から吐出された高圧冷媒はケーシング(10)内に充満する。ケーシング(10)内に充満した高圧冷媒は吐出管(17)から流出し、冷媒回路を循環する際に凝縮
行程、膨張行程、及び蒸発行程を経た後、再び圧縮機(1)に吸入されて圧縮行程が行わ
れる。以上のようにして冷媒が冷媒回路を循環することにより、蒸気圧縮式冷凍サイクルが行われる。
【0088】
上記圧縮機構(20)の動作中は、給油ポンプ(34)によって油溜まり(14)から吸い上げられた冷凍機油が軸受け部(23a,24a)へ給油され、駆動軸(33)と軸受け部(23a,24a)の間の摺動抵抗が大きくなるのが抑えられるとともに、偏心部(33b)と揺動ピスト
ン(26)の間にも供給されてその間の摺動抵抗が大きくなるのが抑えられる。また、給油ポンプ(34)によって汲み上げられた油は、吐出過程の途中から上記圧縮過程の開始までの間に、油供給経路(40)の径方向給油孔(41a)及び軸方向スリット(41b)と、偏心部(33b)の環状溝(42)(凹部)を通って吐出ポート(21b)へ供給される。
【0089】
一般に、圧縮機構(20)における1サイクルの動作は、吸入過程、圧縮過程、及び吐出過程から構成されている。ここで、吐出過程が終了するときに、揺動ピストン(26)は、ほぼ図2(A)に示す上死点付近の位置の少し手前の位置となり、このとき、吐出ポート(21b)は吐出弁(28a)と揺動ピストン(26)によって両端が閉じられている。したがって、吐出ポート(21b)の中は密閉された空間となって高圧冷媒が残存し、高圧冷媒を吐
出しきれない死容積となる。したがって、そのままでは、次に圧縮過程が開始されたときに、吐出ポート(21b)内の高圧冷媒が低圧のシリンダ室(25)の内部へ流入して再膨張
し、脈動が生じることになる。
【0090】
一方、本実施形態では、上記吐出過程の途中から上記圧縮過程の開始までの間に、吐出ポート(21b)内に高圧の冷凍機油を供給するようにしている。このことにより、吐出ポ
ート(21b)内の死容積が小さくなる。吐出ポート(21b)内に冷凍機油が入っていると、次の圧縮過程が始まるときに吐出ポート(21b)から低圧のシリンダ室(25)へ冷凍機油
が流入する。その際に、冷凍機油は冷媒ガスとは違って実質的に膨張しない。したがって、再膨張による脈動を抑えられる。
【0091】
−実施形態1の効果−
以上説明したように、この実施形態1によれば、上記吐出過程の途中から上記圧縮過程の開始までの間に、吐出ポート(21b)内に高圧の冷凍機油を供給するようにしているの
で、高圧冷媒の再膨張による圧縮機構(20)の脈動を抑えることができる。したがって、上記再膨張により発生する振動や騒音を低減することができる。そして、吐出ポート(21b)内に残る高圧ガスの再膨張によって振動や騒音が発生するのを、給油通路(35)を利
用して吐出ポート(21b)に油を供給する簡単な構成で実現できる。しかも、本実施形態
では、吐出ポート(21b)の位置を径方向内側へずらすだけでよいので、従来構造のもの
と比べて製造コストが高くなるのも抑えられる。
【0092】
また、吐出ポート(21b)に冷凍機油が間欠的に供給されるので、吐出ポート(21b)内に油が溜まりすぎることがない。吐出ポート(21b)に冷凍機油が溜まりすぎると冷媒吐
出動作の妨げになるおそれがあるが、この実施形態では冷媒が吐出ポート(21b)に間欠
的にしか入らないので、そのような問題は生じない。しかも、吐出過程の途中から上記圧縮過程の開始までの間に吐出ポート(21b)内へ油を供給するようにしているので、油の
供給量が安定する。
【0093】
また、給油通路(35)を流れる油は、該給油通路(35)内で撹拌される作用を受けて発泡し、このことによって油の中の冷媒の溶解度が下がる。つまり、油と冷媒が分離した状態で運転を行えるから、効率が低下するのを抑えられる。
【0094】
−実施形態1の変形例−
(変形例1)
実施形態1の第1の変形例は、図4(A),図4(B)に示すように、油供給経路(40)の構成を図1,図2の例とは異なるようにしたものである。
【0095】
この変形例1に係る油供給経路(40)は、上記揺動ピストン(26)の上端面に、吐出過程の途中から上記圧縮過程の開始までの間に上記吐出ポート(21b)と上記偏心部(33b)の環状溝(42)とを連通させる切り欠き(43)を形成するようにした例である。この構成において、吐出ポート(21b)は、揺動ピストン(26)が上死点にある位置を含んだその
前後の領域で、その内周側の端部が偏心部(33b)の環状溝(42)と直接にはオーバーラ
ップしない位置に形成されている。一方、吐出ポート(21b)と偏心部(33b)の環状溝(42)とは、揺動ピストン(26)が上死点にあるときとその前後の領域で(吐出過程の途中から上記圧縮過程の開始までの間に)、切り欠き(43)によって連通するようになっている。
【0096】
この変形例1では、図2に示した例と同様の効果を奏することができるのに加えて、吐出ポート(21b)の位置が多少ずれても吐出ポート(21b)への給油量が変化しないようにすることができる。また、揺動ピストン(26)は焼結で一体成形により形成できる。したがって、切り欠き(43)を形成するための機械加工が不要である。そのため、機械加工の工程が増えるのを抑え、製造コストが高くなるのを抑えられる。
【0097】
(変形例2)
実施形態1の第2の変形例は、図5(A),図5(B)に示すように、油供給経路(400)の構成を図1〜図4の例とは異なるようにしたものである。
【0098】
この変形例2に係る油供給経路(40)は、上記吐出ポート(21b)に、吐出過程の途中
から上記圧縮過程の開始までの間に該吐出ポート(21b)と上記偏心部(33b)の環状溝(42)とを連通させる切り欠き(44)を形成するようにした例である。この構成において、吐出ポート(21b)は、揺動ピストン(26)が上死点にある位置を含んだその前後の領域
で、その内周側の端部が偏心部(33b)の環状溝(42)とオーバーラップしない位置に形
成されている。一方、吐出ポート(21b)と偏心部(33b)の環状溝(42)とは、揺動ピストン(26)が上死点にあるときとその前後の領域で(吐出過程の途中から上記圧縮過程の開始までの間に)、切り欠き(43)によって連通するようになっている。
【0099】
このように構成しても、図2に示した例と同様の効果を奏することができるのに加えて、吐出ポート(21b)の位置が多少ずれても給油量が変化しないようにすることができる
。また、フロントヘッド(23)を焼結で形成すれば、切り欠き(44)を形成するための機械加工が不要になるから、製造コストが高くなるのを防止できる。
【0100】
(変形例3)
上記実施形態では、吐出過程の途中から上記圧縮過程の開始までの間に吐出ポート(21b)内へ油を供給するようにしているが、その範囲を狭めて、吐出過程の途中から吐出過
程の終了までの間に吐出ポート(21b)内へ油を供給するようにしてもよい。このように
しても、吐出過程が終わった状態で吐出ポート(21b)に油を入れておけるので、次の圧
縮過程が開始するときの冷媒ガスの再膨張による脈動の発生を抑えることができる。
【0101】
(変形例4)
また、上記実施形態では、吐出過程の途中から上記圧縮過程の開始までの間に吐出ポート(21b)内へ油を供給するようにしているが、その範囲を狭めて、吐出過程の終了から
圧縮過程の開始までの間に吐出ポート(21b)内へ油を供給するようにしてもよい。この
ようにしても、圧縮過程が始まるまでには吐出ポート(21b)に油を入れておけるので、
次の圧縮過程が開始するときの冷媒ガスの再膨張による脈動の発生を抑えることができる。
【0102】
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2について説明する。
【0103】
この実施形態2は、図6(A),図6(B)に示すように、油供給経路(40)の構成を図1〜図5の例とは異なるようにしたものである。
【0104】
図1〜図5に示した実施形態1及びその変形例に係る圧縮機(1)では、油供給経路(40)は、冷凍機油をケーシング(10)の油溜まり(14)から吐出ポート(21b)へ直接に供給するようにした例であるが、この実施形態では、冷凍機油を一旦シリンダ室(25)に溜めてから吐出ポート(21b)へ供給するように油供給経路(40)を構成している。つまり
、この実施形態2では、油供給経路(40)は、油溜まり(14)の冷凍機油を、シリンダ室(25)を介して吐出ポート(21b)へ間接的に供給する油供給用間接経路(40B)として構成されている。
【0105】
この実施形態2に係る油供給経路(40)は、上記シリンダ室(25)の内部に形成された連通溝(45)を含んでいる。この連通溝(45)は、リアヘッド(24)におけるシリンダ室(25)の内面側に形成されている。また、連通溝(45)は、シリンダ室(25)の径方向にのびる径方向溝により形成されている。この連通溝(45)は、上揺動ピストン(26)の回転角度が圧縮過程の開始から吐出過程の終了までの角度範囲(圧縮過程から吐出過程の間の所定の角度範囲)になる間において、駆動軸(33)の偏心部(33b)と揺動ピストン(26)との摺動面からシリンダ室(25)にまたがって通路ができるように、揺動ピストン本
体部(26a)の厚さ寸法よりも僅かに長い溝により形成されている。
【0106】
この実施形態2において、圧縮機構(20)が動作すると、吸入ポート(21a)からシリ
ンダ室(25)へ冷媒が吸入されて、揺動ピストン(26)がシリンダ室(25)の内面に沿って旋回する運動によって圧縮される。圧縮されて高圧になった冷媒は、吐出ポート(21b
)からケーシング(10)内の空間へ吐出される。そして、以上の吸入過程と圧縮過程と吐出過程とが繰り返される。
【0107】
圧縮機構(20)の動作中には、ケーシング(10)の油溜まり(14)から偏心部(33b)
と揺動ピストン(26)の間の摺動面に冷凍機油が導入される。この冷凍機油は、圧縮過程が開始してから吐出過程が終了するまでの角度範囲において、上記摺動面から上記連通溝(45)を通ってシリンダ室へ流出する。そして、シリンダ室(25)の吐出側の容積が縮小するのにしたがって、吐出過程の途中から上記圧縮過程の開始までの間に(吐出ポート(21b)の内部へ油を供給する角度範囲内で)、冷凍機油が吐出ポート(21b)に流入する。したがって、次の圧縮過程が開始されるときには、吐出ポート(21b)に入っている冷凍
機油が圧縮室(25)に流出するので、高圧冷媒の再膨張はほとんど起こらず、それに起因する脈動も低減される。したがって、圧縮機の振動や騒音が低減される。
【0108】
また、図2の実施形態1と比較すると、給油する際の回転角度の設計自由度が高くなるので、最適なタイミングで給油することが容易に可能となる。
【0109】
さらに、特許文献1のものとは違い、給油通路が常にシリンダ室(25)へ開口してはいないので、再膨張を防止するためにシリンダ室(25)に油が入りすぎるのも防止できる。
【0110】
−実施形態2の変形例−
実施形態2の変形例は、油供給経路(40)を図6の例とは異なるようにしたものである

【0111】
図7(A),図7(B),図7(C)に示すように、この圧縮機構(20)の油供給経路(40)は、上記シリンダ室(25)の内部に形成された油貯留凹部(46)を含んでいる。この油貯留凹部(46)は、リアヘッド(24)におけるシリンダ室(25)の内面側に形成されている。このように、この圧縮機構(20)のシリンダ(21)内には、上記吐出ポート(21b)から離れた位置に油貯留凹部(46)が形成されている。この油貯留凹部(46)は、円
形のくぼみにより形成されている。
【0112】
圧縮機構(20)の動作中には、ケーシング(10)の油溜まり(14)から偏心部(33b)
と揺動ピストン(26)の間の摺動面に冷凍機油が導入される。この冷凍機油は、一旦、油貯留凹部(46)に溜められる。このように油貯留凹部(46)に冷凍機油が入っている状態で揺動ピストン(26)がシリンダ室(25)の内面に沿って旋回運動をすると、圧縮過程から吐出過程が進んでシリンダ室(25)の容積が小さくなるに連れて、油貯留凹部(46)の冷凍機油が該油貯留凹部(46)から押し出されて吐出ポート(21b)へ向かい、やがて吐
出ポート(21b)内へ流入する。そして、吐出過程の途中から上記圧縮過程の開始までの
間に、吐出ポート(21b)内に冷凍機油が入っている状態になる。したがって、次の圧縮
過程が開始されるときに、高圧冷媒の再膨張はほとんど起こらず、それに起因する脈動も低減される。したがって、圧縮機の振動や騒音が低減される。
【0113】
また、図2の実施形態1と比較すると、給油する際の回転角度の設計自由度が高くなるので、最適なタイミングで給油することが容易に可能となる。
【0114】
さらに、特許文献1のものとは違い、給油通路が常にシリンダ室(25)に開口してはいないので、再膨張を防止するためにシリンダ室(25)に油が入りすぎるのも防止できる。
【0115】
この変形例では、さらに、一回転あたりの給油量を一定にできる。したがって、回転数が変化しても、吐出ポート(21b)の死容積を適正な給油量で埋めることができる。
【0116】
次に、図8を用いて、油貯留凹部(46)を形成するのに好ましい位置について説明する。
【0117】
図8は、(A)→(B)→(C)→(D)→(E)→(F)→(G)→(H)→(A)の順にピストンが旋回している状態を示す圧縮機構(20)の断面図であり、揺動ピストン(26)が順に45°ずつ回転した状態を示している。また、揺動ピストン(46)が上死点にある図8(A)の位置を便宜上の基準とし、その角度を0°(360°)としている。
【0118】
上記油貯留凹部(46)は、上記シリンダ室(25)の軸方向端面において揺動ピストン(26)で開閉される位置に形成されている。具体的には、油貯留凹部(46)は、吸入ポート(21a)が閉じ切られる図8(B)のタイミングで揺動ピストン(26)の端面から開放さ
れ、吐出過程が開始される直前の図8(E)のタイミングで揺動ピストン(26)の端面に覆われ、吐出過程中の図8(G)のタイミングで上記クランク軸(33)と揺動ピストン(26)の摺動面と連通する位置に形成されている。
【0119】
油貯留凹部(46)の位置をこのように特定すると、吐出過程が開始される直前の図8(E)のタイミングで油貯留凹部(46)がピストン(26)の端面に覆われる一方、油貯留凹部(46)は、図8(G)の吐出過程中に上記クランク軸(33)とピストン(26)の摺動面と連通する。そして、油貯留凹部(46)に油が溜められ、その油が、吸入ポート(21a)
が閉じ切られるタイミングで圧縮室(25)に放出される。この油は、圧縮過程から、さらに吐出過程を経て次の圧縮過程が開始するまで、吐出ポート(21b)に溜められる。した
がって圧縮機構(20)の次の圧縮過程開始時には、その時点で吐出ポート(21b)内に入
っている油が低圧のシリンダ室(25)へ導入される。、
このように、吸入ポート(21a)が閉じ切られるタイミングで圧縮室(25)に放出され
る油が、次の圧縮過程が始まるまでの間に吐出ポート(21b)に溜まり、その圧縮過程開
始時には、吐出過程終了時点で吐出ポート(21b)内に入っている油が低圧のシリンダ室
(25)へ導入される。したがって、高圧ガスの再膨張による脈動を抑えることが可能となる。
【0120】
なお、上記油貯留凹部(46)は、具体的には、
凹部径<(ピストン外径−ピストン内径)/2
半径位置=(ピストン外径+ピストン内径)/4
角度範囲=190°〜310°
の条件を満たす位置に形成される。
【0121】
《発明の実施形態3》
本発明の実施形態3について説明する。
【0122】
この実施形態3は、図9(A),図9(B)に示すように、油供給経路(40)の構成を図1〜図8の例とは異なるようにしたものである。
【0123】
この実施形態3では、上記シリンダ(21)に、ケーシング(10)内の油溜まり(14)と圧縮機構(20)のシリンダ室(25)とを連通する油導入孔(47)を形成している。
【0124】
このように構成すると、圧縮機構(20)の動作中に、油溜まり(14)に溜まった油が上記油導入孔(47)を通ってシリンダ室(25)へ入り、さらに、吐出過程の途中から上記圧縮過程の開始までの間に吐出ポート(21b)へ導入される。油導入孔(47)からシリンダ
室(25)への油の導入は、揺動ピストン(26)の動作中に油導入孔(47)が間欠的に開くときに行われる。そして、圧縮過程が開始する時点で油が吐出ポート(21b)内に油が入
っている状態になるので、吐出ポート(21b)内に油を導入しない場合に比べて吐出ポー
ト(21b)の死容積が小さくなる。したがって、上記各実施形態と同様に、高圧冷媒の再
膨張による振動や騒音の発生を抑えられる。
【0125】
また、実施形態1と比べると、給油する回転角の設計自由度が高いので、最適なタイミングで給油することが可能となる。
【0126】
さらに、上記油導入孔(47)がシリンダ室(25)に間欠的に連通するので、吐出ポート(21b)へ油が入りすぎるのも防止できる。
【0127】
《発明の実施形態4》
本発明の実施形態4について説明する。
【0128】
この実施形態4は、図10(A),図10(B)に示すように、油供給経路(40)の構成を図1〜図9の例とは異なるようにしたものである。
【0129】
この実施形態4においても、上記圧縮機構(20)は、ピストンとブレード(26b)とが
一体的に形成されたスイング圧縮機(1)により構成されている。そして、上記ブレード
(26b)には、上記吐出ポート(21b)側の側面に、該ブレード(26b)の背面の背圧室か
らシリンダ室(25)に連通するスリット(48)が形成されている。
【0130】
上記スリット(48)は、ブレード(26b)の下端面に形成されている。そして、この実
施形態では、油溜まり(14)の油面(15)は、上記スリット(48)が浸かる高さになるように設定されている。また、スリット(48)は、図10(B)のように揺動ピストン(26)が下死点付近に位置するときに、シリンダ室(25)と連通するようになっている。つまり、スリット(48)は、揺動ピストン(26)の動作中にシリンダ室(25)と間欠的に連通する。
【0131】
この実施形態4においては、圧縮機構(20)の動作中に、油溜まり(14)の油がスリット(48)を通ってシリンダ室(25)に入り、さらに、吐出過程の途中から上記圧縮過程の開始までの間に吐出ポート(21b)に導入される。そして、圧縮過程が始まる時点で油が
吐出ポート(21b)内に入っている状態になるので、吐出ポート(21b)内に油を導入しない場合に比べて吐出ポート(21b)の死容積が小さくなる。したがって、上記各実施形態
と同様に、再膨張による振動や騒音の発生を抑えられる。
【0132】
また、この実施形態では、油が吐出ポート(21b)の近くからシリンダ室(25)へ入る
ので、吐出ポート(21b)へ油を確実に導入できる。
【0133】
さらに、上記スリット(48)がシリンダ室(25)に間欠的に連通するので、吐出ポート(21b)へ油が入りすぎるのも防止できる。
【0134】
なお、この実施形態では、上記スリット(48)をブレード(26b)の下端に沿って形成
しているが、上記スリット(48)は、ブレード(26b)を高さ方向に2等分する位置に、
ブレード(26)の端面と平行に形成してもよい。この場合、油面レベルが上記各実施形態よりも高い位置になるように油溜まり(14)の油量を設定しておけばよい。なお、スリット(48)は、ブレード(28b)の高さ方向の中央に形成するよりもブレード(28b)の下端に沿って形成する方が、油溜まり(14)の油面(15)高さが低くなったときでも油を吐出ポート(21b)に導入できるので、再膨張による振動や騒音をより確実に抑えることが可
能となる。
【0135】
《発明の実施形態5》
本発明の実施形態5について説明する。
【0136】
この実施形態5は、図11(A),図11(B)に示すように、クランク軸(33)の下端に上記油溜まり(14)に貯留した油を上記圧縮機構(20)の回転動作に連動して撹拌する油撹拌機構(50)を設けるようにした例である。
【0137】
上記油撹拌機構として、油撹拌部材(50)がクランク軸(33)の下端に装着され、下端には撹拌羽根(52)を有している。この撹拌部材(50)は、厚さが1.6mm程度の金属板を加工して形成したものである。この撹拌部材(50)をクランク軸(33)に装着することにより、圧縮機構(20)の回転動作に撹拌部材(50)が連動して回転するようになっている。
【0138】
この実施形態の撹拌部材(50)は、上記実施形態1〜4のうち、どの実施形態及び変形例に適用してもよい。
【0139】
この実施形態では、油溜まり(14)に貯留している油を撹拌羽根(52)で撹拌することにより、油に溶け込んでいる冷媒が発泡して冷凍機油から分離する。したがって、圧縮機構(20)の吐出ポート(21b)には、ほとんど冷媒が溶け込んでいない油が供給される。
したがって、圧縮過程の開始時に吐出ポート(21b)からシリンダ室(25)に流出する冷
媒が少なくなり、脈動低減効果を高められる。
【0140】
なお、給油路(35a)を上昇する冷凍機油には遠心力が作用するので、冷凍機油は、そ
の遠心力の作用により、径方向給油孔(41a)と軸方向スリット(41b)を通って圧縮機構(20)へ供給される。一方、油から分離した冷媒も給油路(35a)を上昇するが、ガス冷
媒は軽いために遠心力の作用を受けず、中心に集まる。そして、給油路(35a)の中心部
を上昇する冷媒の気泡は、ガス抜き通路(35b)を上昇し、さらにガス抜き孔(35c)通ってケーシング(10)の中へ流出する。
【0141】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0142】
例えば、実施形態1〜3は本発明をスイング型の圧縮機構(20)を備えた圧縮機(1)
に適用した例を示しているが、実施形態1の油供給経路(40)は、円筒状のピストンと板状のブレード(26b)とが別部材で構成されて該ブレード(26b)の径方向内方端がピストンの外周面に圧接するローリングピストン型の圧縮機構(20)を備えた圧縮機(1)に適
用してもよい。
【0143】
さらに、図6の連通溝(45)や図7の油貯留凹部(46)は、フロントヘッドに設けてもよい。
【0144】
さらに、上記各実施形態では吐出弁(28a)としてリード弁を用いるようにしているが
、本発明において吐出弁(28a)をリード弁に限定するものではなく、リード弁の代わり
にポペット弁を用いることも可能である。
【0145】
また、上記実施形態2〜5において、吐出過程の途中から上記圧縮過程の開始までの間に冷凍機油が吐出ポート(21b)に供給しておき、次の圧縮過程が開始されるときに吐出
ポート(21b)から圧縮室(25)へ冷媒が流出するようにしているが、吐出ポート(21b)への冷媒の供給は、吐出過程の途中から吐出過程が終了するまでの間、または、吐出過程が終了してから圧縮過程が開始するまでの間に行うようにしてもよい。このようにしても、圧縮過程が始まるまでには吐出ポートに
油が供給されるので、冷媒ガスの再膨張による脈動の発生を抑えることができる。
【0146】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0147】
以上説明したように、本発明は、回転式圧縮機(1)において、シリンダ室(25)でガ
スを圧縮する圧縮機構(20)の吐出ポート(21b)に残留した高圧ガスがシリンダ室(25
)内に戻って再膨張することにより発生する振動や騒音を低減する技術について有用である。
【符号の説明】
【0148】
1 スイング圧縮機(回転式圧縮機)
10 ケーシング
14 油溜まり
20 圧縮機構
21 シリンダ
21b 吐出ポート
25 シリンダ室
26 ピストン
33 クランク軸
33b 偏心部
40 油供給経路
40A 油供給用直通経路
40B 油供給用間接経路
42 凹部
43 切り欠き
44 切り欠き
45 連通溝
46 油貯留凹部
47 貫通孔
48 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(10)と、該ケーシング(10)内に設けられてシリンダ室(25)でガスを圧縮する圧縮機構(20)とを備え、該圧縮機構(20)には、吐出過程中に開放される一方で該吐出過程の終了時から次の圧縮過程の間に閉鎖される吐出弁(28a)が装着された吐出
ポート(21b)が設けられ、該吐出ポート(21b)から吐出過程中に吐出された高圧ガスがケーシング(10)内の空間を介して該ケーシング(10)の外部へ吐出される高圧ドーム式の回転式圧縮機であって、
上記ケーシング(10)の底部に貯留する潤滑油を、上記吐出過程の途中から上記圧縮過程の開始の間に、上記吐出ポート(21b)の内部へを供給する油供給経路(40)を備えて
いることを特徴とする回転式圧縮機。
【請求項2】
請求項1において、
上記油供給経路(40)は、上記吐出過程の途中から吐出過程の終了までの間に上記吐出ポート(21b)の内部へ油を供給するように構成されていることを特徴とする回転式圧縮
機。
【請求項3】
請求項1において、
上記油供給経路(40)は、上記吐出過程の終了から圧縮過程の開始の間に上記吐出ポート(21b)の内部へ油を供給するように構成されていることを特徴とする回転式圧縮機。
【請求項4】
請求項1において、
上記圧縮機構(20)の動作の1サイクルが360°の回転動作により行われるように構成され、
上記圧縮機構(20)における吐出過程の終了位置と圧縮過程の開始位置の間の位置を回転動作の基準位置とし、その基準位置の回転角度を0°とすると、
上記油供給経路(40)は、回転角度が315°と45°の間の範囲で上記吐出ポート(21b)の内部へ油を供給するように構成されていることを特徴とする回転式圧縮機。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1つにおいて、
上記油供給経路(40)は、上記ケーシング(10)内に設けられている油溜まり(14)から上記吐出ポート(21b)へ油を供給するように該油溜まり(14)と吐出ポート(21b)に連通する油供給用直通経路(40A)を備えていることを特徴とする回転式圧縮機。
【請求項6】
請求項5において、
上記油溜まりに貯留した油を上記圧縮機構の回転動作に連動して撹拌する油撹拌機構(50)が設けられていることを特徴とする回転式圧縮機。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1つにおいて、
上記圧縮機構(20)は、偏心部(33b)を有するクランク軸(33)の回転動作によりピ
ストン(26)がシリンダ(21)内で上記シリンダ室(25)の内周面に沿って旋回運動をする旋回式圧縮機構(20)により構成され、
上記油供給経路(40)は、上記クランク軸(33)の偏心部(33b)に形成されるととも
に油が導入される凹部(42)を備え、上記吐出ポート(21b)の内部へ油を供給する角度
範囲で、該凹部(42)が上記圧縮機構(20)の吐出ポート(21b)と連通するように構成
されていることを特徴とする回転式圧縮機。
【請求項8】
請求項7において、
上記吐出ポート(21b)は、上記吐出ポート(21b)の内部へ油を供給する角度範囲で上記凹部(42)と一部分が重なる位置に上記圧縮機構(20)に形成された貫通孔により構成
されていることを特徴とする回転式圧縮機。
【請求項9】
請求項7において、
上記吐出ポート(21b)は、上記凹部(42)の旋回軌道から径方向外側へ外れた位置に
形成された貫通孔により形成され、
上記ピストン(26)の端面には、上記吐出ポート(21b)と上記凹部(42)とを上記吐
出ポート(21b)の内部へ油を供給する角度範囲で連通させる切り欠き(43)が形成され
ていることを特徴とする回転式圧縮機。
【請求項10】
請求項7において、
上記吐出ポート(21b)は、上記凹部(42)の旋回軌道から径方向外側へ外れた位置に
形成された貫通孔により形成され、
上記吐出ポート(21b)には、該吐出ポート(21b)と上記凹部(42)とを上記吐出ポート(21b)の内部へ油を供給する角度範囲で連通させる切り欠き(44)が形成されている
ことを特徴とする回転式圧縮機。
【請求項11】
請求項1から4の何れか1つにおいて、
上記油供給経路(40)は、上記ケーシング(10)内に設けられている油溜まり(14)から圧縮機構(20)の内部を介して上記吐出ポート(21b)へ油を供給する油供給用間接経
路(40B)を備えていることを特徴とする回転式圧縮機。
【請求項12】
請求項11において、
上記油溜まり(14)に貯留した油を、上記圧縮機構(20)の回転動作に連動して撹拌する油撹拌機構(50)が設けられていることを特徴とする回転式圧縮機。
【請求項13】
請求項11において、
上記圧縮機構(20)は、該圧縮機構(20)の摺動面に供給される油を、圧縮過程から吐出過程の間の所定の角度範囲で上記シリンダ室(25)に導入するように、該角度範囲で一端が上記摺動面側に開口するとともに他端がシリンダ室(25)に開口する連通溝(45)を備えていることを特徴とする回転式圧縮機。
【請求項14】
請求項11において、
上記圧縮機構(20)は、上記油溜まり(14)からシリンダ室(25)へ導入された油を一時的に貯留するようにシリンダ室(25)の内壁面に形成された油貯留凹部(46)を備えていることを特徴とする回転式圧縮機。
【請求項15】
請求項14において、
上記圧縮機構(20)は、偏心部(33b)を有するクランク軸(33)の回転動作によりピ
ストン(26)がシリンダ(21)内で上記シリンダ室(25)の内周面に沿って旋回運動をするとともに、吸入ポート(21a)と吐出ポート(21b)を有する旋回式圧縮機構(20)により構成され、
上記油貯留凹部(46)は、上記シリンダ室(25)の軸方向端面においてピストン(26)で開閉される位置に形成されるとともに、吐出過程終了から圧縮過程開始のタイミングでピストン(26)の端面から開放され、吐出過程が開始される前にピストン(26)の端面に覆われ、吐出過程中に上記クランク軸(33)とピストン(26)の摺動面と連通するように構成されていることを特徴とする回転式圧縮機。
【請求項16】
請求項11において、
上記圧縮機構(20)のシリンダ(21)には、ケーシング(10)内の油溜まり(14)と圧縮機構(20)のシリンダ室(25)とを連通する油導入孔(47)が形成されていることを特
徴とする回転式圧縮機。
【請求項17】
請求項11において、
上記圧縮機構(20)は、ピストン(26)とブレード(26b)とが一体的に形成された揺
動ピストン(26)を有し、圧縮機構(20)の吸入ポート(21a)と吐出ポート(21b)が該ブレード(26b)を挟んで両側に配置されたスイング圧縮機により構成され、
上記ブレード(26b)には、上記吐出ポート(21b)側の側面に、該ブレード(26b)の
背面に形成される背圧室からシリンダ室(25)へ連通するスリット(48)が形成されていることを特徴とする回転式圧縮機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−21608(P2011−21608A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210888(P2010−210888)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【分割の表示】特願2010−135745(P2010−135745)の分割
【原出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】