説明

回転式電子部品

【課題】グリスの塗布が簡単且つ確実に行え、組み立て作業の容易化を図ることができる回転式電子部品を提供すること。
【解決手段】ケース10と、ケース10内に収納される回転体本体部51と回転体本体部51の上面から突出する軸部53とを有する回転体50と、回転体50の軸部53を挿通して軸部53の外周面を支持する軸支部135を有するとともに回転体本体部51を収納したケース10の上部を覆うカバー130と、回転体本体部51の上面に設けたクリック係合凹部61に係合離脱する弾接部101を有するクリック板100とを具備する回転式電子部品1−1である。回転体本体部51上面の軸部53を突出する根元部分71(軸受部55の部分)に、軸支部135と軸部53間のA部分に塗布したグリス150をクリック係合凹部61に導くグリス導入凹部63を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式可変抵抗器や回転式スイッチ等の回転式電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の回転式電子部品は、例えば特許文献1の図1,図2に示す回転式スイッチ(1)のように、収納部(61)を有するスイッチ基板(60)と、スイッチ基板(60)の収納部(61)内に収納される回転型物(31)と回転型物(31)の上面から突出する軸部(37)とを有するつまみ(30)と、つまみ(30)の軸部(37)を挿通して軸部(37)の外周面を支持する軸支部(12)を有するとともに回転型物(31)を収納したスイッチ基板(60)の上部を覆うカバー(10)と、回転型物(31)の回転によって電気的出力を変化する摺動子(50)等からなる電気的機能部と、カバー(10)の下面に設置され前記回転型物(31)の上面に設けた凹凸部(35)に係合離脱する弾接部(24)を有するクリックバネ部材(20)とを具備して構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−78844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成の回転式スイッチ(1)においては、つまみ(30)の回転をスムーズに行わせるために、カバー(10)の軸支部(12)とつまみ(30)の軸部(37)との間にグリスを塗布している。また前記クリックバネ部材(20)の弾接部(24)と回転型物(31)の凹凸部(35)間の強い摺接(摩擦)によって回転型物(31)に静電気が溜まって回転式スイッチ(1)の出力に誤信号(静電ノイズ)が生じないようにするために、これら弾接部(24)と凹凸部(35)とが摺接する部分にもグリスを塗布して油膜を形成し、両者が直接接触しないように構成している。
【0005】
しかしながら上記回転式スイッチ(1)を組み立てる際に、上述のように2か所にグリスを塗布する作業は煩雑であった。また摺動子(50)等の電気的機能部に近い回転型物(31)の凹凸部(35)にグリスを直接塗布した際に、誤ってこのグリスが前記電気的機能部の部分に付着し、電気的出力に不具合を生じる恐れもあった。これらの問題は回転式スイッチ(1)が小型化されればされるほど大きくなる。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、グリスの塗布が簡単且つ確実に行え、組み立て作業の容易化を図ることができる回転式電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願請求項1に記載の発明は、ケースと、前記ケース内に収納される回転体本体部と回転体本体部の上面から突出する軸部とを有する回転体と、前記回転体の軸部を挿通して軸部の外周面を支持する軸支部を有するとともに前記回転体本体部を収納したケースの上部を覆うカバーと、前記回転体本体部の上面に設けたクリック係合凹部に係合離脱する弾接部を有するクリック板とを具備してなる回転式電子部品であって、前記回転体本体部上面の軸部を突出する根元部分に、前記軸支部と軸部の間に塗布したグリスをクリック係合凹部に導くグリス導入凹部を設けたことを特徴とする回転式電子部品にある。
【0008】
本願請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の回転式電子部品であって、前記回転体本体部上面の軸部を突出する根元部分に、前記カバーに当接させる軸受部を設け、この軸受部の部分に前記グリス導入凹部を設けたことを特徴とする回転式電子部品にある。
【0009】
本願請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の回転式電子部品であって、前記軸受部は、前記クリック係合凹部を設けた面よりも高くして前記軸部の周囲にリング状に形成されていることを特徴とする回転式電子部品にある。
【0010】
本願請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の回転式電子部品であって、前記グリス導入凹部は、前記軸部の軸部外周面にも位置していることを特徴とする回転式電子部品にある。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、回転体本体部の上面にグリス導入凹部を設けたので、この回転式電子部品を組み立てる際に、カバーの軸支部と回転体の軸部の間に塗布したグリスがこのグリス導入凹部を通してクリック係合凹部に導かれる。つまりグリスを一か所に塗布するという簡単な作業で2か所部分へのグリスの塗布が確実に行なえる。これによって回転式電子部品の組み立て作業が容易になる。
【0012】
請求項2,3に記載の発明によれば、回転体本体部に元々形成している軸受部の部分にグリス導入凹部を設けたので、回転体の構造を複雑化することなく、グリス導入凹部を容易に形成することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、軸部の軸部外周面にグリス導入凹部を設けたので、この回転式電子部品を組み立てる際にカバーの軸支部と回転体の軸部の間に塗布したグリスをよりスムーズにこのグリス導入凹部を通してクリック係合凹部に導くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】回転式電子部品1−1を示す斜視図である。
【図2】回転式電子部品1−1を下側から見た斜視図である。
【図3】回転式電子部品1−1の分解斜視図である。
【図4】回転式電子部品1−1を下側から見た分解斜視図(但し図3に示すものを180°回転した向きから見た状態)である。
【図5】回転式電子部品1−1の縦断面図(図1のA−A断面図)である。
【図6】フレキシブル回路基板30と端子板45を示す斜視図である。
【図7】回転式電子部品1−1からカバー130を取り外した状態を示す斜視図である。
【図8】回転式電子部品1−2を示す斜視図である。
【図9】回転式電子部品1−2の分解斜視図である。
【図10】回転式電子部品1−2からカバー130−2を取り外した状態を示す斜視図である。
【図11】回転式電子部品1−3を示す分解斜視図である。
【図12】他のクリック板100−4の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1〜図5は本発明の第1実施形態に係る回転式電子部品1−1を示す図であり、図1は斜視図、図2は下側から見た斜視図(但し図1に示すものを約180°回転した向きから見た状態)、図3は図1の分解斜視図、図4は図2の分解斜視図、図5は縦断面図(図1のA−A断面図)である。これらの図に示すように回転式電子部品1−1は、ケース10の回転体収納凹部13内に、摺動子80を取り付けた回転体50の回転体本体部51を収納し、且つその上にクリック板100を設置し、さらにその上にカバー130を被せて構成されている。以下各構成部品について説明する。なお以下の説明において、「上」とはケース10からカバー130を見る方向をいい、「下」とはその反対方向をいうものとする。
【0016】
ケース10は合成樹脂製のケース本体11の内部に回路基板(以下「フレキシブル回路基板」という)30と複数本(6本)の端子板45とをインサート成形して構成されている。ケース本体11は略矩形箱型に形成され、その上面中央に回転体収納凹部13を設けている。ケース10の回転体収納凹部13を囲む4辺からなる側壁部15の上面の2か所には上方向に突出する突起状の係止部17が設けられている。また側壁部15の上面の4つの角部の内の隣り合う2つの角部の近傍には薄く凹むクリック板挿入部19が設けられている。ケース10の回転体収納凹部13を囲む4辺からなる側壁部15の内の対向する一対の側壁部15の中央部分にはその上面から凹状に凹む凹部23が形成されている。側壁部15の内周面側の下部には、回転体50の回転体本体部51の下面を載置する回転体載置部25が設けられている。
【0017】
ケース10の回転体収納凹部13の底面には、フレキシブル回路基板30がその上面を露出して設置されている。図6はフレキシブル回路基板30及びこれに接続される端子板45を示す斜視図である。同図に示すようにフレキシブル回路基板30は、その上面に同心円状に4本の摺接パターン31を形成しており、またそれらからフレキシブル回路基板30の外周近傍まで6つの端子接続パターン33を引き出している。
【0018】
端子板45は略帯状の金属板製であり、その先端部分は下方向に略直角に折り曲げられている。
【0019】
回転体50は合成樹脂の一体成形品であり、略円板状の回転体本体部51の上面中央から、回転体本体部51の外径寸法よりもその外径寸法の小さい略円柱状の軸部53を突出して構成されている。回転体本体部51の上面の軸部53を突出する根元部分71にはカバー130の下面に当接させるリング形状の軸受部55が設けられている。軸受部55の周囲には軸受部55の上面よりも低い上面を有するリング形状のクリック弾接面57が形成され(つまり軸受部55はクリック弾接面57よりも高く形成されている)、さらにクリック弾接面57の外周の所定位置からは半径方向外方に向けて突出するストッパ部59が形成されている。そしてクリック弾接面57の上面からストッパ部59の上面にわたってクリック係合凹部61が形成されている。クリック係合凹部61は回転体本体部51の半径方向に向けて直線状に形成されている。
【0020】
そして回転体50の軸受部55の部分には、クリック係合凹部61に連結するグリス導入凹部63が形成されている。グリス導入凹部63は回転体本体部51の半径方向に向けて直線状に形成されており、その幅寸法は前記クリック係合凹部61の幅寸法と同一であり、またその底面はクリック係合凹部61の底面と同一面になっている。
【0021】
回転体本体部51の下面には摺動子取付用の小突起65が形成されている。回転体50の内部の中央には中空部67が形成されている。中空部67は回転体本体部51の下面中央から軸部53内の中央付近まで形成されている。軸部53はその上部にこの軸部53を図示しないつまみに嵌合するための切り欠き部69が形成されているが、中空部67はこの切り欠き部69の下部近傍位置まで形成されている。
【0022】
摺動子80は2枚の弾性金属板によって形成され、それぞれ略矩形状の基部81,83の外周から複数本ずつのアーム部85を突出して構成されている。基部81,83には小孔からなる取付部87が形成され、また各アーム部85の先端は接点部89となっている。
【0023】
クリック板100は弾性金属板を略帯状の直線状に形成して構成されており、その中央には下方向に突出するように湾曲する弾接部101が設けられ、その両端近傍には小孔からなる一対のカバー取付部103が設けられている。
【0024】
カバー130は金属板製であり、略矩形状の上面板131の対向する一対の外周辺に接続されている側面板133,133を略垂直下方に屈曲させて構成されている。上面板131の中央には上方向に突出する円筒形状の軸支部135が形成されている。また上面板131の前記ケース10の一対の係止部17に対向する位置にはそれぞれこれら係止部17を嵌合する小孔からなる挿入係止部137が形成されている。また上面板131の前記クリック板100の一対のカバー取付部103に対向する位置にはそれぞれこれらカバー取付部103に挿入される下方向に突出する取付部139が形成されている。取付部139は下方向に凸状に突出するために上面板131の上面側では凹部となっている。また上面板131の所定位置には、周囲をコ字状に切り欠いて舌片状とした部分を真下方向に向けて折り曲げてなるストッパ当接部140が形成されている。また側面板133は略矩形状であって、その下辺の中央には下方向に向かって舌片状に突出する他部材取付部141が設けられ、またその下辺の他部材取付部141の左右両側には下方向に向かって舌片状に突出するケース取付部143が設けられている。
【0025】
次に回転式電子部品1−1を組み立てるには、まず予め回転体本体部51の下面に摺動子80を配置し、その際回転体50下面の小突起65を摺動子80の取付部87に挿入し、その先端を熱かしめして回転体50に摺動子80を固定する。一方カバー130の上面板131の下面にクリック板100を配置し、その際カバー130の一対の取付部139をクリック板100の一対のカバー取付部103に挿入し、各取付部139の先端をかしめることによって、カバー130の上面板131の下面にクリック板100を取り付ける。
【0026】
そして摺動子80を取り付けた回転体50の軸部53の下部の外周部分(前記カバー130の軸支部135に軸支される部分)(図3,4に点線で示すA部分)にグリス150を塗布した上で、この回転体50の回転体本体部51をケース10の回転体収納凹部13内に収納し、回転体本体部51の下面外周近傍部分をケース10の回転体載置部25の上面に当接・載置する。グリス150としては鉱油系のグリスを用いる(他のグリスでも良い)。
【0027】
次に前記ケース10の上にカバー130を被せ、その際回転体50の軸部53をカバー130の軸支部135に挿入する。カバー130の上面板131をケース10の上面に当接し、その際クリック板100の両端部分はケース10のクリック板挿入部19内に収納され、またケース10の係止部17はカバー130の挿入係止部137に挿入され位置決めされる。またこのときカバー130の両側面板133,133はケース10の対向する両外周側面にぴったり当接する。そしてカバー130の各ケース取付部143の先端部分をケース10の下面に折り曲げてカバー130とケース10とを一体化すれば、回転式電子部品1−1が完成する。
【0028】
ところで前述のように、回転体50の軸部53をカバー130の軸支部135内にカバー130の下面側から挿入する際、軸部53に塗布したグリス150の一部(軸部53と軸支部135間に付着するグリス以外の余剰のグリス)はしごかれて回転体本体部51側に移動して軸受部55の上面に至り、スムーズにグリス導入凹部63に導入される。グリス導入凹部63に導入されたグリス150はグリス導入凹部63に連通するクリック係合凹部61にスムーズに導入される。
【0029】
つまり、回転体本体部51の上面にグリス導入凹部63を設けたので、この回転式電子部品1−1を組み立てる際に、カバー130の軸支部135と回転体50の軸部53の間に塗布したグリス150がこのグリス導入凹部63を通してクリック係合凹部61に導かれる。つまりグリス150を一か所に塗布するという簡単な作業で2か所部分へのグリス150の供給が行われ、これによって回転式電子部品1−1の組み立て作業が容易になる。特にこの回転式電子部品1−1によれば、回転体本体部51に元々形成している軸受部55の部分にグリス導入凹部63を設けたので、回転体50の構造を複雑化することなく、グリス導入凹部63を容易に形成することができる。
【0030】
図7は回転式電子部品1−1からカバー130を取り外した状態を示す斜視図である。なお実際にはクリック板100はカバー130に固定されているので、図7に示す状態になることはない。同図に示す状態は、回転体50のクリック係合凹部61にクリック板100の弾接部101が係合している状態を示している。
【0031】
そして回転体50を回転すれば、摺動子80がフレキシブル回路基板30の摺接パターン31上を摺動し、各端子板45間の電気的出力が変化する。
【0032】
一方回転体50を回転した際、クリック板100の弾接部101は回転体50のクリック弾接面57に弾接しながら摺動し、回転体50の所定の回転位置(図7に示す位置)においてクリック係合凹部61に係合してクリック感触が発生する。クリック係合凹部61には前述のようにグリス150が導入されて溜まっており、このグリス150が弾接部101に付着する。このため弾接部101とクリック弾接面57との間に強い弾接力が働いても、グリス150の油膜によって合成樹脂と金属とが直接擦れず(摩擦係数が小さく摩擦力も小さい)、このため静電気は生じにくい。このため静電ノイズが回転式電子部品1−1の電気的出力に入り込むことはない。
【0033】
なお上記組立手順はその一例であり、他の各種異なる組立手順を用いて組み立てても良いことは言うまでもない。例えば上記組立例ではグリス150を塗布した回転体50の回転体本体部51をケース10の回転体収納凹部13内に収納した後にケース10の上にカバー130を被せたが、例えば予めカバー130の軸支部135内にその下側からグリス150を塗布した回転体50の軸部53を挿入しておき、この回転体50が取り付いたカバー130をケース10の上に被せても良い。またグリス150を塗布するタイミングも変更可能であり、要はカバー130の軸支部135内に回転体50の軸部53を挿入する前のタイミングであればよい。
【0034】
以上説明したようにこの回転式電子部品1−1は、ケース10と、ケース10内に収納される回転体本体部51と回転体本体部51の上面から突出する軸部53とを有する回転体50と、回転体50の軸部53を挿通して軸部53の外周面を支持する軸支部135を有するとともに回転体本体部51を収納したケース10の上部を覆うカバー130と、回転体本体部51の上面に設けたクリック係合凹部61に係合離脱する弾接部101を有するクリック板100とを具備し、回転体本体部51上面の軸部53を突出する根元部分71に、軸支部135と軸部53間に塗布したグリス150をクリック係合凹部61に導くグリス導入凹部63を設けて構成されている。
【0035】
またこの回転式電子部品1−1においては、回転体本体部51上面の軸部53を突出する根元部分71に、カバー130に当接させる軸受部55が設けられ、この軸受部55の部分に前記グリス導入凹部63を設けている。この軸受部55は、クリック係合凹部61を設けた面(クリック弾接面57)よりも高い位置に位置し、軸部53の周囲にリング状に形成されている。
【0036】
図8〜図10は本発明の第2実施形態に係る回転式電子部品1−2を示す図であり、図8は斜視図、図9は分解斜視図、図10は回転式電子部品1−2からカバー130−2を取り外した状態を示す斜視図(図7の場合と同様に、実際にはクリック板100−2はカバー130−2に固定されているので、図10に示す状態になることはない。)である。同図に示す回転式電子部品1−2において、前記図1〜図7に示す回転式電子部品1−1と同一又は相当部分には同一符号を付す(但し各符号に「−2」を付記する。)。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記図1〜図7に示す実施形態と同じである。この回転式電子部品1−2においても、ケース10−2の回転体収納凹部13−2内に、摺動子80−2を取り付けた回転体50−2の回転体本体部51−2を収納し、且つその上にクリック板100−2を設置し、さらにその上にカバー130−2を被せて構成されている。
【0037】
この回転式電子部品1−2において前記回転式電子部品1−1と相違する主な点は、端子板45−2の本数が3本である点と、摺動子80−2の枚数が1枚である点と、回転体50−2の回転体本体部51−2の外周からストッパ部59−2を突出させず、このためクリック係合凹部61−2をクリック弾接面57−2の部分のみに設けた点とである。なおこの回転式電子部品1−2の場合、ストッパ部59−2は回転体本体部51−2の下面側に設けられており、図9に示すケース10−2の回転体収納凹部13−2に設けたストッパ当接部21−2に当接することで回転体50−2の無制限な回転が防止される。
【0038】
この回転式電子部品1−2においても、前記回転式電子部品1−1と同様に、回転体50−2の軸受部55−2の部分に、クリック係合凹部61−2に連結するグリス導入凹部63−2を形成しているので、回転体50−2の軸部53−2をカバー130−2の軸支部135−2内にカバー130−2の下面側から挿入する際、軸部53−2に塗布したグリス150−2の一部(軸部53−2と軸支部135−2間に付着するグリス以外の余剰のグリス)がしごかれて回転体本体部51−2側に移動して軸受部55−2の上面に至り、スムーズにグリス導入凹部63−2に導入される。グリス導入凹部63−2に導入されたグリス150−2はグリス導入凹部63−2に連通するクリック係合凹部61−2にスムーズに導入される。
【0039】
つまり、回転体本体部51−2の上面にグリス導入凹部63−2を設けたので、この回転式電子部品1−2を組み立てる際に、カバー130−2の軸支部135−2と回転体50−2の軸部53−2の間に塗布したグリス150−2がこのグリス導入凹部63−2を通してクリック係合凹部61−2に導かれる。つまりグリス150−2を一か所に塗布するという簡単な作業で2か所部分へのグリス150−2の供給が行われ、これによって回転式電子部品1−2の組み立て作業が容易になる。特にこの回転式電子部品1−2によれば、回転体本体部51−2に元々形成している軸受部55−2の部分にグリス導入凹部63−2を設けたので、回転体50−2の構造を複雑化することなく、グリス導入凹部63−2を容易に形成することができる。
【0040】
図11は本発明の第3実施形態に係る回転式電子部品1−3を示す分解斜視図である。同図に示す回転式電子部品1−3において、前記図1〜図7に示す回転式電子部品1−1と同一又は相当部分には同一符号を付す(但し各符号に「−3」を付記する。)。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記図1〜図7に示す実施形態と同じである。この回転式電子部品1−3においても、ケース10−3の回転体収納凹部13−3内に、摺動子80−3を取り付けた回転体50−3の回転体本体部51−3を収納し、且つその上にクリック板100−3を設置し、さらにその上にカバー130−3を被せて構成されている。
【0041】
この回転式電子部品1−3において前記回転式電子部品1−1と相違する点は、回転体50−3の構造のみである。即ちこの実施形態に係る回転体50−3においては、グリス導入凹部63−3を軸受部55−3の部分に設けるだけでなく、軸受部55−3の部分に設けたグリス導入凹部63−3に連続して軸部53−3の軸部外周面73−3の部分にも位置するように設けている。軸部外周面73−3に設けたグリス導入凹部63−3は、軸部53−3の上下方向(回転体50−3の回転軸に沿う方向)に向けて溝状に軸部53−3の軸受部55−3の部分から軸部天面75−3まで至るように直線状に形成されている。
【0042】
このように軸部外周面73−3(特に軸部外周面73−3の内のグリス150−3を塗布した部分A−3)にグリス導入凹部63−3を設けておけば、軸部外周面73−3に塗布したグリス150−3がさらにスムーズにグリス導入凹部63−3内に導入され易くなる。つまり回転式電子部品1−3を組み立てる際にカバー130−3の軸支部135−3と回転体50−3の軸部53−3の間に塗布したグリス150−3をよりスムーズにこのグリス導入凹部63−3を通してクリック係合凹部61−3に導くことができるようになる。
【0043】
なおグリス導入凹部63−3は、軸部外周面73−3のグリス150−3を塗布する部分A−3の内の少なくとも一部分から軸受部55−3にわたる位置に連続するように設ければよいが、この実施形態では軸部外周面73−3に形成するグリス導入凹部63−3を形成するにあたり、金型加工を容易に行うようにするため、軸部53−3の軸部天面75−3まで至るように形成している。
【0044】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、上記実施形態ではクリック係合凹部61とグリス導入凹部63とを回転体本体部51の半径方向に向かって直線状に連結したが、連結構造は直線状に限定されず、他の各種構造によって連結しても良い。またクリック係合凹部61の数は、上記実施形態のように1つに限定されず、複数か所に設けても良い。その場合各クリック係合凹部61に対して1つずつグリス導入凹部63を設けても良いし、複数のクリック係合凹部61に対して1つのグリス導入凹部63を設けても良い。また上記実施形態では軸受部55をクリック係合凹部61を設けた面(クリック弾接面57)よりも高くしているが、場合によっては同一面又はそれより低い面としても良い。
【0045】
また上記実施形態で使用したクリック板100は直線状であるがこのクリック板の形状・構造にも種々の変形が可能であり、例えば図12に示すように、クリック板100−4は円弧状であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1−1 回転式電子部品
10 ケース
11 ケース本体
13 回転体収納凹部
30 フレキシブル回路基板(回路基板)
45 端子板
50 回転体
51 回転体本体部
53 軸部
55 軸受部
57 クリック弾接面
61 クリック係合凹部
63 グリス導入凹部
71 根元部分
80 摺動子
100 クリック板
101 弾接部
130 カバー
135 軸支部
150 グリス
73−3 軸部外周面
75−3 軸部天面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、前記ケース内に収納される回転体本体部と回転体本体部の上面から突出する軸部とを有する回転体と、前記回転体の軸部を挿通して軸部の外周面を支持する軸支部を有するとともに前記回転体本体部を収納したケースの上部を覆うカバーと、前記回転体本体部の上面に設けたクリック係合凹部に係合離脱する弾接部を有するクリック板とを具備してなる回転式電子部品であって、
前記回転体本体部上面の軸部を突出する根元部分に、前記軸支部と軸部の間に塗布したグリスをクリック係合凹部に導くグリス導入凹部を設けたことを特徴とする回転式電子部品。
【請求項2】
請求項1に記載の回転式電子部品であって、
前記回転体本体部上面の軸部を突出する根元部分に、前記カバーに当接させる軸受部を設け、この軸受部の部分に前記グリス導入凹部を設けたことを特徴とする回転式電子部品。
【請求項3】
請求項2に記載の回転式電子部品であって、
前記軸受部は、前記クリック係合凹部を設けた面よりも高くして前記軸部の周囲にリング状に形成されていることを特徴とする回転式電子部品。
【請求項4】
請求項2に記載の回転式電子部品であって、
前記グリス導入凹部は、前記軸部の軸部外周面にも位置していることを特徴とする回転式電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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