説明

回転操作式出力装置

【課題】ロータリーノブの操作回転を移動子の直線移動に変換する動作変換手段をコスト安に構成できるようにする。
【解決手段】ロータリーノブ24の操作回転を移動子32の直線移動に変換する動作変換手段を、ロータリーノブ24(ノブ内側体24b)の軸方向の端面部にこれの回転方向に対し軸方向に傾斜させて形成した傾斜面28と、移動子32が有する受動部(突起32a)と、この受動部をロータリーノブ24の傾斜面28に前記軸方向に圧接させたスプリング34とにより構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーノブの操作回転を移動子の直線移動に変換する動作変換手段を改良した回転操作式出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、回転操作式出力装置としては、例えば自動車など車両の間欠ワイパにおける間欠動作時間の選定に使用されるボリュームやスイッチが存在する。図5はそのものの従来構造を示しており、レバー1にロータリーノブ2が同軸状にて回転可能に設けられている。ロータリーノブ2は、詳細には、ノブ外側体2aとノブ内側体2bの二重円筒状部材から成っており、それらが一体に回転するようになっている。そして、そのうちのノブ内側体2bには、ロータリーノブ2の回転方向に対して軸方向に傾斜する溝3が、軸方向の一方側(図で右側)の端面寄りの中間部に形成されている。
【0003】
ノブ内側体2bの内部には、摺動スイッチ4がインシュレータ5に載置して設けられている。摺動スイッチ4は移動子6を有しており、この移動子6の直線移動によって、それに応じたスイッチ出力を発するようになっている。そして、移動子6にはスライドピン7が装着されて受動部となっており、このスライドピン(受動部)7が前記ノブ内側体2bの溝3に挿入されている。
【0004】
ノブ内側体2bには又、前記一方側の端面部に多数の節度谷8が環状の配置で形成されており、これの1つに節度ピース9がスプリング10のばね力で圧接し係合している。なお、スプリング10は、レバー1の内部に形成された収納部11に収納され、この収納部11から節度ピース9が突出している。
【0005】
以上の構成で、使用者がロータリーノブ2(ノブ外側体2a及びノブ内側体2b)を回転操作すれば、時計回りの回転方向Aには、溝3の節度谷8側の傾斜縁部3aにより、スライドピン7が図で左方向の軸方向Xに直線移動され、一方、時計回りとは反対の回転方向Bには、溝3の節度谷8側とは反対側の傾斜縁部3bにより、スライドピン7が上記軸方向Xとは反対の、図で右方向の軸方向Yに直線移動されることによって、移動子6が両軸方向X,Yに直線移動されるから、摺動スイッチ4がそれに応じたスイッチ出力を発する。又、その間、節度谷8が節度ピース9の係合位置を換え、ロータリーノブ2の回転操作後の位置でのそれらの係合により、ロータリーノブ2を係止する(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−231872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のものの場合、溝3と移動子6の受動部であるスライドピン7は、ロータリーノブ2の操作回転を移動子6の直線移動に変換する動作変換手段であるが、そのうちの溝3はロータリーノブ2(ノブ内側体2b)の中間部に形成されており、その形成は、複雑な金型を要するなど、困難であって、コスト高となっていた。
【0007】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、従ってその目的は、ロータリーノブの操作回転を移動子の直線移動に変換する動作変換手段をコスト安に構成できる回転操作式出力装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の回転操作式出力装置は、ロータリーノブの操作回転を動作変換手段にて移動子の直線移動に変換し、その移動子の直線移動に応じた出力を得るようにしたものにおいて、前記動作変換手段を、前記ロータリーノブの軸方向の端面部にロータリーノブの回転方向に対し軸方向に傾斜させて形成した傾斜面と、前記移動子が有する受動部と、この受動部を前記ロータリーノブの傾斜面に前記軸方向に圧接させたスプリングとにより構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記手段によれば、ロータリーノブの操作回転を移動子の直線移動に変換する動作変換手段は、ロータリーノブの軸方向の端面部にロータリーノブの回転方向に対し軸方向に傾斜させて形成した傾斜面と、移動子が有する受動部と、この受動部を上記ロータリーノブの傾斜面に上記軸方向に圧接させたスプリングとより構成されるものであり、そのうちのロータリーノブの端面部に形成した傾斜面は、従来のロータリーノブの中間部に形成された溝と違って形成が容易であり、それに加えて用いるスプリングも安価なものであって、それらにより、総じてコスト安に構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の第1実施例(第1の実施形態)につき、図1ないし図3を参照して説明する。
まず、図2には、車両、特には自動車のレバーコンビネーションスイッチ装置の全体構成を示しており、スイッチボディ21にレバー22を突設している。レバー22はスイッチボディ21から上下に回動可能で、その上下の回動により、この場合、自動車のフロントワイパのコントロールをするようになっており、そのために、レバー22には自動車のフロントワイパのコントロールに係る標示23を設け、スイッチボディ21にはレバー22の上下の回動に応じて切換わる接点(図示省略)を内設している。
【0011】
そして、レバー22には、ロータリーノブ24を同軸状にて回転可能に設けている。このロータリーノブ24は、この場合、自動車のフロントワイパの間欠動作時間の選定に使用されるもので、詳細には図1に示すように、ノブ外側体24aとノブ内側体24bの二重円筒状部材から成っており、それらが一体に回転するようになっている。又、そのうちのノブ外側体24aには、図2に示すように、外周面に使用者の指の掛かりを良くするための凹凸部25を設けると共に、指示マーク26を設けており、それに対応してレバー22には、自動車のフロントワイパの間欠動作時間の増減を表す標示27を設けている。
【0012】
一方、ノブ内側体24bには、図1及び図3に示すように、ロータリーノブ24の回転方向に対して軸方向(図1で左右)傾斜する傾斜面28を、軸方向の一方側(この場合、スイッチボディ21側とは反対の側)の端面部に形成している。又、ノブ内側体24bの一方側の端面部には、多数の節度谷29を半環状の配置で形成している。
【0013】
これらに対して、ノブ内側体24bの内部には、インシュレータ30を配置しており、このインシュレータ30の片面部には複数の固定接点31を表面のみ露出させて埋設し、更にその片側に移動子32をレバー22の軸方向に直線移動可能に配置している。移動子32は、下面に可動コンタクト(図示省略)を保持したコンタクトホルダであり、その可動コンタクトが、移動子32の移動により、固定接点31との接触を換えて、自動車のフロントワイパの間欠動作時間の増減をさせる出力が発せられるようになっている。
【0014】
そして又、移動子32は、上面に突起32aを有しており、この突起32aを、インシュレータ30の片面に形成したばね座部33との間に装設したスプリング34のばね力にて上記ノブ内側体24b(ロータリーノブ24)の傾斜面28に前記軸方向に圧接させている。
【0015】
更に、前記節度谷29の1つには、節度ピース35をスプリング36のばね力で圧接させて係合させている。なお、スプリング36は、レバー22の内部に形成した収納部37に収納しており、この収納部37から節度ピース35を突出させている。
【0016】
なお、レバー22の先端部には、図2に示すように、上記ロータリーノブ24とは異なるロータリーノブ38を回転可能に設けている。このロータリーノブ38は、自動車のリヤワイパのコントロールをするためのもので、そのための標示39をレバー22の外面に設け、ロータリーノブ38の回転に応じて切換わる接点(図示省略)をレバー22の内部に設けている。
【0017】
さて、以上の構成で、使用者がロータリーノブ24(ノブ外側体24a及びノブ内側体24b)を回転操作すれば、時計回りの回転方向Aには、傾斜面28に移動子32の突起32aがスプリング34のばね力により追従し、一方、時計回りとは反対の回転方向Bには、傾斜面28により移動子32の突起32aがスプリング34のばね力に抗して押されることにより、それぞれ図で左方向の軸方向Xと、それとは反対の、図で右方向の軸方向Yとに移動子32の突起32aが直線移動される。これにより、移動子32もそれぞれ同方向に移動されるから、移動子32に保持された可動コンタクトが固定接点31との接触を換えて、自動車のフロントワイパの間欠動作時間の増減をさせる出力が発せられる。又、その間、節度谷29が節度ピース35の係合位置を変え、ロータリーノブ24の回転操作後の位置でのそれらの係合により、ロータリーノブ24を係止する。
【0018】
従って、移動子32の突起32aは、ロータリーノブ24の回転による移動の動きを受ける受動部であり、それとロータリーノブ24の傾斜面28は、ロータリーノブ24の操作回転を移動子32の直線移動に変換する動作変換手段であるが、そのうちのロータリーノブ24の軸方向の端面部に形成した傾斜面28は、従来のロータリーノブ2の中間部に形成された溝3と違って、形成に複雑な金型を要することがなく、形成が容易であり、又、それに加えて用いるスプリング36も安価なものであって、それらにより、総じて従来のものよりコスト安に構成することができる。
【0019】
以上に対して、図4は本発明の第2実施例(第2の実施形態)を示すもので、第1実施例と同一の部分には同一の符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ述べる。
このものの場合、レバー22にロータリーノブ24と向かい合わせでロータリーノブ41を設けている。このロータリーノブ41も、構成はロータリーノブ24と同様(ノブ外側体41a、ノブ内側体41b)であり、ロータリーノブ24の傾斜面28と平行(点対称)な傾斜面42を、ノブ内側体41bの軸方向の端面部であるロータリーノブ24側の端面部に有している。そして、その傾斜面42には、移動子43の突起(受動部)43aを、移動子32と移動子43との間に装設した共通のスプリング44のばね力によって圧接させており、従って、ロータリーノブ24の傾斜面28にも、移動子32の突起32aをスプリング44のばね力によって圧接させている。
【0020】
なお、スプリング44はインシュレータ30の上面部に形成した筒状部45に挿通している。又、ロータリーノブ41も、ロータリーノブ24側の端面部に多数の節度谷46を形成していて、これの1つに節度ピース47を節度ピース35との間に装設した共通のスプリング48のばね力で圧接させて係合させており、従って、ロータリーノブ24の節度谷29の1つにも、節度ピース35をスプリング48のばね力で圧接させて係合させている。加えて、スプリング48は、レバー22の内部に形成した筒状の収納部49に収納しており、この収納部49から節度ピース35,47を突出させている。
【0021】
更に、この場合、インシュレータ30には、移動子43が保持した可動コンタクト(図示省略)が移動子43の移動により接触を換える固定接点50を、固定接点31に加えて設けている。
【0022】
以上の構成で、ロータリーノブ24を回転操作すれば、移動子32が、ロータリーノブ24の傾斜面28とスプリング44のばね力とで、前述と同じく動作し、ロータリーノブ41を回転操作すれば、移動子43の突起43aがロータリーノブ41の傾斜面42とスプリング44のばね力とで、上述の、ロータリーノブ24を回転操作したときの移動子32の動作と同様に動作する。
【0023】
すなわち、この場合には、ロータリーノブ24の回転操作による移動子32の移動と、ロータリーノブ41の回転操作による移動子43の移動とをスプリング44を共通に使用してできるもので、そのほか、節度用のスプリング48やインシュレータ30も共通に使用してでき、それらの分、合理的な構造で実現できる。
【0024】
このほか、本発明は上記し且つ図面に示した実施例にのみ限定されるものではなく、例えばロータリーノブはノブ外側体とノブ内側体とに分けず、それらを一体に有するものであっても良く、又、移動子に応動するものは接点ではなく、可変抵抗であっても良いし、更に全体としても、自動車など車両用に限られないど、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施例を示す主要部分の縦断面図
【図2】自動車のレバーコンビネーションスイッチ装置全体の正面図
【図3】主要部分の分解斜視図
【図4】本発明の第2実施例を示す図1相当図
【図5】従来例を示す図1相当図
【符号の説明】
【0026】
図面中、24はロータリーノブ、28は傾斜面、32は移動子、32aは突起(受動部)、34はスプリング、41はロータリーノブ、42は傾斜面、43は移動子、43aは突起(受動部)、44はスプリングを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリーノブの操作回転を動作変換手段にて移動子の直線移動に変換し、その移動子の直線移動に応じた出力を得るようにしたものにおいて、
前記動作変換手段を、
前記ロータリーノブの軸方向の端面部にロータリーノブの回転方向に対し軸方向に傾斜させて形成した傾斜面と、
前記移動子が有する受動部と、
この受動部を前記ロータリーノブの傾斜面に前記軸方向に圧接させたスプリングとにより構成したことを特徴とする回転操作式出力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−242517(P2007−242517A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−65822(P2006−65822)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】