説明

回転操作装置

【課題】簡単な構造で容易に組立てることができ、かつ確実にクリック感を与えることができる回転操作装置を提供する。
【解決手段】回転操作具13のボス部をボリュームシャフト33aに回転不能に嵌合する。板スプリング49の内側環状部51をボス部先端に当接すると共に、外側環状部52をノッチ溝座47の上面に当接して、該板スプリング49を回転操作具13とノッチ溝座47との間に挟む。板スプリング49は弾性変形しつつ、その突起56がノッチ溝座47に係脱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機等の農業機械に用いられ、回転操作具の回転量及び回転位置を電圧等の電気量に変換するボリューム(ポテンショメータ)等に用いられる回転操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
田植機等の農業機械に用いられるスイッチ装置(含むボリューム)は、車外に露出状態となるため、風雨の影響を受けやすく、高いシール精能が求められる。特に、油圧感度調節等のロータリポテンショメータ(ボリューム)からなる回転操作装置は、回転軸部分からの水の浸入を防止するようにゴム等の防水部材が回転操作具(ダイヤル)とケースとの間に介在されている。従来、該回転操作装置(スイッチ装置の防水構造)として下記の特許文献に記載されたものが提案されている。該特許文献記載の回転操作装置は、スイッチケースの開口部の周囲に、円筒状のガイドリブと、該ガイドリブの外周側に溝部とを設け、上記開口部を介してケース内部の制御機器に接続する回転操作具に円筒状の縁部を設け、該回転操作具を、前記縁部が上記溝部に入り込んでガイドリブの外周を覆うように装着する。そして、上記ケース側のガイドリブと、上記回転操作具側の縁部との間にリング状の防水部材が配置され、該防水部材は、縁部の内周面に対してガイドリブの外周面よりも接触面接を小にして当接し、回転操作具との摺動抵抗をガイドケースより小さくして、回転操作具の操作を軽く行うことができるように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−49887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記回転操作装置は、回転操作具の回転操作時にクリック感を与えるためのクリック部材が設けられている。該クリック部材は、回転操作具のベース部の側部に開口形成された側孔に圧縮バネを介して嵌め込まれており、該クリック部材が、上記ガイドリブの内周面に形成された多数の凹部に係合することにより位置決めされ、そして凹部から突起を乗り越えて隣接する凹部に係合することにより、クリック感が与えられる。
【0005】
上記クリック部材は、部品点数が多く構造が複雑であり、また回転操作具をスイッチケースの開口部に装着する際、圧縮バネに抗してクリック部材を側孔内に引っ込めた状態で組付ける必要があり、回転操作装置の組立てが面倒になっている。
【0006】
そこで、本発明は、板スプリングを用いてクリック感を与えるようにし、もって上述した課題を解決した回転操作装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被操作部材(33)のシャフト(33a)をケース(30)の開口部(30a)から突出し、該シャフトに回転操作具(13)のボス部(42)を嵌合してなる回転操作装置(40)において、
前記ケース(30)に、前記開口部(30a)を囲むように凹凸のノッチ溝座(47)を形成し、
前記シャフト(33a)に、前記ノッチ溝座(47)に係脱し得る突起(56)を有する板スプリング(49)を回転不能に嵌合し、
前記板スプリング(49)を弾性変形しつつ、前記突起(56)が前記ノッチ溝座に係脱してクリック感を発生してなる、
ことを特徴とする回転操作装置にある。
【0008】
前記板スプリング(49)は、前記シャフト(33a)に嵌合する嵌合孔(50)を有する内側環状部(51)と、該内側環状部の外径側にて空隙(53)を存して配置され、かつ前記突起を有する外側環状部(52)と、前記内側環状部(51)と外側環状部(52)とを連結する連結部(55)と、を有し、
前記回転操作具(13)の前記ボス部(42)の先端に前記内側環状部(51)の一面を当接し、前記ノッチ溝座(47)に前記突起(56)が係合するように前記外側環状部(52)の他面を当接し、
前記回転操作具(13)による前記板スプリング(49)の回転に伴い、該板スプリング(49)を弾性変形して前記突起(56)が前記ノッチ溝座(47)の凸部を乗り越えてなる。
【0009】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る本発明によると、板スプリングに突起を設け、該板スプリングを弾性変形しつつ、上記突起がケースに形成されたノッチ溝座に係脱してクリック感を発生するので、簡単な構造により、クリック感を確実にかつ正確に発生することができる。
【0011】
請求項2に係る本発明によると、板スプリングは、内側環状部と外側環状部を有し、内側環状部の一面を回転操作具のボス部先端に当接すると共に、外側環状部の他面をノッチ溝座に当接して、該板スプリングを回転操作具とノッチ溝座との間に挟むように介在するので、回転操作装置は、回転操作具を板スプリングを介在してシャフトに嵌合することにより簡単かつ容易に組立てることができ、かつ板スプリングの弾性を確実に機能して、正確かつ長期に亘って確実なクリック機能を生じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を適用し得る田植機を示す平面図。
【図2】その田植機の操作ハンドル及びパネル部分を示す正面図。
【図3】その油圧感度調節装置部分を示す側面図。
【図4】上記操作パネルにおける本発明に係る操作ユニットを示す斜視図。
【図5】その側面断面図。
【図6】その分解斜視図。
【図7】本発明に係る回転操作装置(ボリュームスイッチ)を示す断面図。
【図8】その分解斜視図。
【図9】その板スプリングを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。田植機1は、図1に示すように、走行車輪により支持された走行機体2を備えており、該走行機体は、その前部にボンネット3で優れたエンジンを搭載しており、その後部が運転席5になっている。走行機体2の後方には植付け装置6が昇降自在に支持されており、また走行機体2の左右には走行機体の前方から上記植付け装置6に向けて苗を供給する苗供給装置(苗スライダー)9が装備されている。
【0014】
運転席5には、シート7の前方に操作ハンドル10及び操作パネル11が配置されており、図2及び図4に詳示するように、操作パネル11の左方には一体の操作ユニット12が配置されている。操作ユニット12には油圧感度調節用の回転操作具(ダイヤル)13、並びに植付スイッチ、前照灯スイッチ、マーカスイッチ、ホーンスイッチ等の各種スイッチ15…がその表示ランプ16と共に配置されている。回転操作具13は、クリック感を伴って回転操作され、ボリューム(ポテンショメータ)を操作すると共に、その表面板に軟らかい、硬いとの間に操作位置の目安となる目盛が記載されている。なお、図2,図4は、ケースの、その上面に上記目盛等のシートが貼り付けられていない状態を示す。
【0015】
上記回転操作具13により操作される油圧感度調節装置19は、図3に示すように、油圧感度調節モータ20及び該モータの回転量が伝達されるセクタギヤ21を有している。一方、植付け装置6には後部を支点Aとして上下方向揺動自在にフロート22が設けられており、該フロート22の前方はプレート23が連結されていると共にスプリング25により下方に向けて押圧されている。そして、上記プレート23及びスプリング25がボーデンワイヤ26を介して上記セクタギヤ21に連結している。これにより、上記回転操作具13の操作に基づく油圧感度調節モータ20の回動位置により、フロート22の姿勢及び土圧感度が調節され、フロートの上下揺動により植付け装置6を走行機体2に対して上下動する油圧の感度が調節される。
【0016】
操作ユニット12は、図5及び図6に示すように、合成樹脂からなるケース30と、スイッチ基板31と、コントローラ基板32とを有する。スイッチ基板31には被操作部材であるボリューム(ポテンショメータ)33、複数の押ボタンスイッチ15…及びLEDランプ16…が実装されており、コントローラ基板32はその制御回路を備えていると共に、外部に電線35が延出して、前記油圧感度調節用モータ20等のアクチュエータに連通している。そして、ケース30内に、シール36及び上記ボリューム33用のパッキン37を挟んで上記スイッチ基板31及びコントローラ基板32が重なるように実装され、かつケース30の裏面からモールド処理が行われ、密閉される。
【0017】
ついで、本発明に係る回転操作装置35について、図7,図8及び図9に基づき説明する。回転操作装置40は、油圧感度調節用の前記ボリューム33を操作する前記回転操作具(ダイヤル)13を有している。上記ボリューム33のシャフト33aは一面が面取りされたD形シャフトであり、前記パッキン37を嵌挿して、水密状にケース30から外部に突出している。回転操作具13は、指示突部41a及び周囲に凹凸が形成された摘み用の外郭部41と、上記ボリュームシャフト33aとの嵌合・連結部となる円筒状のボス部42とを有する。該ボス部42内に上記ボリュームシャフト33aが板スプリングからなるスリーブ45を介して嵌合する。該スリーブ45はボリュームシャフト33aのD形面取りの両端部分に係合する凹部45a,45aを有しており、従って回転操作具13は、ボリュームシャフト33aと相対回転することなく、かつ遊びを生ずることなく回転方向及び軸方向一体に嵌合している。
【0018】
ケース30の上面は、上記ボリュームシャフト33a貫通用の開口30aを囲むように、同芯状に上方に突出する円環状の鍔部46が形成されている。また、該鍔部46の内側には同じく同芯円環状に上面が上方に向って凹凸状のノッチ溝を有するノッチ溝座47が形成されている。そして、回転操作具13が上記ボリュームシャフト33aに嵌挿して、上記ノッチ溝座47の上面と円筒状ボス部42の間に、ワッシャ状の板スプリング49が挟まれるように介在する。
【0019】
板スプリング49は、図9に詳示するように、ボリュームシャフト33a嵌合用のD形状の孔(D孔)50を有しており、該D孔により形成された内側環状部51と、該内側環状部の外径側にて空隙53を存して配置された外側環状部52と、これら両環状部51,52との間を連結する2個の連結部55,55とからなる。外側環状部52には、180度間隔で、下方に向けてV字状に突出する突起56,56が形成されており、これら突起56が上記ノッチ溝座47に係脱してクリック感(ノッチ感)を生じる。
【0020】
上記板スプリング49は、その内側環状部52の一面(表面)が回転操作具13のボス部42の下面に当接し、その外側環状部52の他面(裏面)がノッチ溝座47の上面に当接している。そして、突起56がノッチ溝座47のノッチ溝に係合している状態で、該板スプリング49は平面状にあって自然状態となる。
【0021】
従って、本回転操作装置40は、回転操作具13を摘んで回転すると、該回転操作具13と一体にボリューム33が回転して電圧を変化して、コントローラ基板32を介して油圧感度用モータ20を回転して、油圧感度調節装置19を操作する。この際、板スプリング49は、そのD孔50によりボリュームシャフト33a及び回転操作具13と一体に回転し、その内側環状部51が回転操作具13のボス部42の先端に当接して上方への移動が規制された状態で、外側環状部52は、下方突起56がノッチ溝座47の凸部を乗り越える毎に、連結部55等を弾性変形しつつ上方へ変位して、クリック感(ノッチ感)を発生する。
【0022】
従って、本回転操作装置40は、回転操作具13を回転すると、板スプリング49が弾性変形しつつノッチ溝座47をノッチ溝を乗り越えて、ノッチ溝の凹凸毎にクリック感を生じて操作される。また、板スプリング49は、そのD孔50にボリュームシャフト33aが嵌合することにより位置決めされ、かつ回転操作具13は板スプリングからなるスリーブ45を介してボリュームシャフト33aに嵌合することにより位置決めされ、更にノッチ溝座47はケース30に直接形成されているので、回転操作具13、ボリューム33、板スプリング49及びノッチ溝座47間の関係寸法は遊びのない略々0となり、正確なピッチでクリック感を得ることができる。
【0023】
また、回転操作具13は、板スプリング49をノッチ溝座47との間に挟んで、かつスリーブ45を介在してボリュームシャフト33aに一体に嵌合すれば足り、組立ても簡単である。板スプリング49は、突起56がノッチ溝座47の凹部に入っている自然状態にあって平坦面となり、突起56がノッチ溝座47の凸部を乗り越える際、外径側が上反りになるように弾性変形する。従って、ボリューム33に押しボタンスイッチ内蔵タイプを用いることになり、回転操作具13を下方に押圧すると、板スプリング49は、上記平坦面からなる自然状態から、中央側が下反りになるように弾性変形して、上記スイッチ内蔵タイプのボリュームのスイッチ操作を行うことができる。
【0024】
前記回転操作具13をボリュームシャフト33aに組付けた状態にあっては、ケース30の鍔部46が回転操作具13の外郭部41とボス部42との間の空間Bに突出して、鍔部46と外郭部41内周面との間、並びにボス部42外周面との間でラビリンスを構成する。従って、雨曝し状態にある田植機の操作ユニット12に用いても、上記ラビリンスにより雨水が回転操作具13の内部に浸入することを減少し、更にパッキン37がボリュームシャフト33aに水密状に嵌合しているので、雨水がケース30内に浸入することを防止できる。
【0025】
操作ユニット12は、上面及び側方周囲がケース30で覆われ、かつケース30内にスイッチユニット基板31及びコントローラ基板32を実装した状態で、裏面からモールド処理されており、ボリューム及び複数のスイッチ及びライトが一体構造として防水構造となっている。これにより、部品アイテムの削減と組立性向上を図ることができると共に、防水性を確保される。
【符号の説明】
【0026】
12 操作ユニット
13 回転操作具
19 油圧感度調節装置
30 ケース
30a 開口部
31 スイッチ基板
32 コントローラ基板
33 被操作部材(ボリューム)
33a シャフト
40 回転操作装置
42 ボス部
46 鍔部
47 ノッチ溝座
49 板スプリング
51 内側環状部
52 外側環状部
53 空隙
55 連結部
56 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被操作部材のシャフトをケースの開口部から突出し、該シャフトに回転操作具のボス部を嵌合してなる回転操作装置において、
前記ケースに、前記開口部を囲むように凹凸のノッチ溝座を形成し、
前記シャフトに、前記ノッチ溝座に係脱し得る突起を有する板スプリングを回転不能に嵌合し、
前記板スプリングを弾性変形しつつ、前記突起が前記ノッチ溝座に係脱してクリック感を発生してなる、
ことを特徴とする回転操作装置。
【請求項2】
前記板スプリングは、前記シャフトに嵌合する嵌合孔を有する内側環状部と、該内側環状部の外径側にて空隙を存して配置され、かつ前記突起を有する外側環状部と、前記内側環状部と外側環状部とを連結する連結部と、を有し、
前記回転操作具の前記ボス部の先端に前記内側環状部の一面を当接し、前記ノッチ溝座に前記突起が係合するように前記外側環状部の他面を当接し、
前記回転操作具による前記板スプリングの回転に伴い、該板スプリングを弾性変形して前記突起が前記ノッチ溝座の凸部を乗り越えてなる、
請求項1記載の回転操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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