説明

回転機用巻線接続装置

【課題】
巻線接続端子を最適な溶接形状とし、小型化した回転機用巻線接続装置を提供する。
【解決手段】
固定子鉄心の軸方向の一方側に設けられた接続部材を保持する保持部材を備える回転機用巻線接続装置の巻線接続端子は、本体部と本体部から伸びた2本の角部の間に前記固定子巻線を収容できるU字形の溝が設けられており、前記巻線接続端子のU字形の溝に前記固定子巻線を収容して本体部から伸びた2本の角部を溶かし溶接するものであって、
前記固定子巻線を収容する本体部から伸びた2本の角部の合計面積をT、前記固定子巻線の断面積をSとしたとき、1≦(T/S)≦3を満足するように前記巻線接続端子が形成されている回転機用巻線接続装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定子の固定子鉄心に巻き付けられえた固定子巻線と外部で接続する接続部材と、前記固定子鉄心の軸方向の一方側に設けられた前記接続部材を保持する保持部材を備える回転機用巻線接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような回転機用巻線接続装置には、特許文献1(特開2004−64954号公報)に示すような巻線接続端子10を設けている。本願では図5に示している。
図5に示す巻線接続端子10は、巻線接続端子10の先端部を縦割りにしたスリット部が設けられ、スリット部を挟んだ巻線接続端子10の両片の先端部を先細り形状としている。この図5には固定子鉄心に巻き付けられた固定子巻線20の端部を巻線接続端子10の先端部の縦割りとなったスリット部に挿入した後、図6の溶接後に示す様に巻線接続端子10と固定子巻線20の端部とをTIG溶接等で溶接して接続固定するものである。尚、図6の溶接前の図は、図5の巻線接続端子10を上から見た図である。
【0003】
【特許文献1】特開2004−64954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図6の様に巻線接続端子10の先端部の縦割りにしたスリット部に固定子巻線20を挿入して溶接する際、図5及び図6の溶接前の図よりわかるように巻線接続端子10の両片の先端部が先細形状になっているためTIG溶接等の溶接熱の伝わり方に差が生じて均一に溶接することができない。図6の溶接後の図に示すように、接続固定を確実に行わないといけない固定子巻線20の端部の溶接が不十分であるのに巻線接続端子10の両片の先端部分が早く鎔け落ち溶接部の仕上がりにバラツキが生じてしまう。その結果、溶接部の引張強度が不足になったり、また溶接不良による導通不良も発生する。
【0005】
本発明は、これに鑑みて回転機用巻線接続装置の巻線接続端子の溶接が良好にできるように最適な形状にし、また巻線接続端子を最適な形状にすることにより回転機用巻線接続装置を小型化するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、固定子の固定子鉄心に巻き付けられえた固定子巻線と外部で接続する接続部材と、固定子鉄心の軸方向の一方側に設けられた接続部材を保持する保持部材を備える回転機用巻線接続装置において、接続部材には固定子巻線の端部を収容する巻線接続端子が設けられ、巻線接続端子は、巻線接続端子の本体部と本体部から伸びた2本の角部の間に固定子巻線を収容できるU字形の溝が設けられた巻線接続端子である。また、本体部の端子幅よりも、このU字形の溝が設けられた部分の巻線接続端子の外側両端部の幅が広く構成されている巻線接続端子であり、
前記巻線接続端子のU字形の溝に前記固定子巻線を収容して巻線接続端子の本体部から伸びた2本の角部を溶かし溶接するものであって、
この固定子巻線を収容する本体部から伸びた2本の角部の合計面積をT、固定子巻線の断面積をSとしたとき、1≦(T/S)≦3を満足するように巻線接続端子を形成した回転機用巻線接続装置とする。
【0007】
また、巻線接続端子の本体部から伸びた2本の角部の合計幅は前記固定子巻線の直径より幅広く構成することによりより安定した溶接が可能となる。
【0008】
更に、巻線接続端子の表面は錫メッキを施すことによって溶接を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、固定子鉄心に巻き付けられた固定子巻線の端部と接続させる接続部材が保持される保持部材を備える回転機用巻線接続装置において、接続部材には固定子巻線の端部を収容する巻線接続端子が設けられ、巻線接続端子の本体部と本体部から伸びた2本の角部で構成されたU字形の溝に固定子巻線を収容して巻線接続端子の本体部から伸びた2本の角部を溶かし溶接する溶接断面積を最適な溶接形状とすることにより溶接する際の溶接熱の伝わり方を均一にすることができ、溶接部の仕上がりが良好で、バラツキの少ない安定した溶接引張強度を得ることができる。また、溶接部分が確実に接続することができるので接触抵抗が小さく導通不良等を低減することができる。また、最適な巻線接続端子の形状としているので小型化も可能である。
【0010】
また、固定子巻線の直径より巻線接続端子の本体部から伸びた2本の角部の合計幅を前記固定子巻線の直径より幅広い構成とすることにより、よい安定した溶接が可能となる。
また、巻線接続端子の表面は錫メッキを施すことにより溶接が更に容易に行うことができる。
【0011】
また、このような回転機用巻線接続装置を車両用途として固定子鉄心の軸方向の一方側に備えた電動機とすることにより電動機の小型化が可能となり接触抵抗が小さく、導通不良を低減し、品質を向上した電動機とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を図面を用いて説明する。図1は固定子の固定子鉄心に固定子巻線2aを巻き付けた固定子鉄心から固定子巻線2aの端部を引出し、外部の接続部材40U、40V、40W、40Xa、40Xbと溶接もしくはハンダ等により結線する回転機用巻線接続装置50である。図1に示した回転機用巻線接続装置50の接続部材40U、40V、40W、40Xa、40Xbは絶縁性の高い保持部材60で保持され固定子の軸方向の一方に取り付けられている。また、保持部材60の材料としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)やポリブチレンテレフタレート(PBT)、液晶ポリマー(LCP)等がある。
【0013】
このような回転機用巻線接続装置50を固定子鉄心の軸方向の一方に備えた固定子を用いた電動機は、大電流が流れる太い巻線を用いる固定子に適用することが多い。特に、自動車に搭載される電動パワーステアリングなどに使用される。尚、固定子巻線2aは固定子鉄心に分割コアを用いて、樹脂絶縁を施した上から直接、固定子巻線2aを巻き付けた集中巻き方式による電動機である。
【0014】
図1に示す回転機用巻線接続装置50では、固定子のスロットが12スロットで10極を形成し2Y結線した三相電動機である。固定子巻線2aは、U相、V相、W相を構成し、U相を構成する固定子巻線2aの一方の端部は中性点を形成する接続部材40Xa、40Xbに接続し、他方は固定子巻線2aと外部で接続する接続部材40Uに接続する。同様に、V相を構成する固定子巻線2aの一方の端部は中性点を形成する接続部材40Xa、40Xbに接続し、他方は固定子巻線2aと外部で接続する接続部材40Vに接続する。またW相も固定子巻線2aの一方の端部は中性点を形成する接続部材40Xa、40Xbに接続し、他方は固定子巻線2aと外部で接続する接続部材40Wに接続する。尚、U、V、Wは、各々電動機外部の電源側に接続する端子部である。
【0015】
ここで、各相の固定子巻線2aの一方の端部で中性点を構成するために接続する接続部材40Xa、40Xb、並びに、各相の固定子巻線2aと外部で接続する接続部材40U、40V、40Wには、固定子巻線2aの一方もしくは他方の端部を収容する巻線接続端子1aが各々設けられている。
接続部材40Uの両端部には2Y結線されるU相の固定子巻線2aの端部を収容する巻線接続端子1aが両端部に1ヶ所づつUa、Ubが設けられている。
接続部材40Vの両端部には2Y結線されるV相の固定子巻線2aの端部を収容する巻線接続端子1aが両端部に1ヶ所づつVa、Vbが設けられている。
接続部材40Wの両端部には2Y結線されるW相の固定子巻線2aの端部を収容する巻線接続端子1aが両端部に1ヶ所づつWa、Wbが設けられている。
一方の接続部材40Xaの両端部に1ヶ所づつXaa、Xac及び両端部の間に1ヶ所Xabの計3ヶ箇所に2Y結線される中性点の固定子巻線2aの端部を収容する巻線接続端子1aが設けられている。
他方の接続部材40Xbの両端部に1ヶ所づつXba、Xbc及び両端部の間に1ヶ所Xbbの計3ヶ箇所に2Y結線される中性点の固定子巻線2aの端部を収容する巻線接続端子1aが設けられている。
【0016】
接続部材40U、40V、40W、40Xa、40Xbは、保持部材に保持されている状態で、固定子鉄心の軸方向に直角な断面で見て異なる半径を有し3層の略円弧状に配置されている。
本実施形態では、固定子鉄心の軸方向に直角な断面で見て最外周層には2Yを結線する中性点の接続部材40Xa、40Xbを2ヶ所と、U相を2Y結線する接続部材40Uが略同心円弧状に配置されている。
その内側の中間層にはU相を2Y結線する接続部材40UとW相を2Y結線する接続部材40Wが略同心円弧状に配置されている。
更に、その内側の最内周層にはV相を2Y結線する接続部材40Vが配置されている。
【0017】
尚、接続部材40Uは、固定子鉄心の軸方向に直角な断面で見て最外周層の2ヶ所の接続部材40Xa、40Xbと略同心円弧状に形成し、最外周層に配置された接続部材40Uに段付き渡り部40Uaが設けられ、中間層に配置された接続部材40Wと略同心円弧状に形成した接続部材としている。これによって回転機用巻線接続装置50に各接続部材40U、40V、40Wと40Xa、40Xbを3層構造に配置することができる。これにより回転機用巻線接続装置50の径方向の大きさを小さくすることができ小型化することができる。
また、実施形態では接続部材40Uの段付き渡り部40Uaは、1ヶ所であるが複数箇所設けても良い。また、図1の実施形態では接続部材40Xa、40Xbの2ヶ所に分かれているが、2ヶ所の接続部材40Xa、40Xbを繋いだ状態でも同様の効果がある。
【0018】
このような実施形態における固定子鉄心の軸方向に直角な断面で見て径方向の大きさを小さくした回転機用巻線接続装置50の巻線接続端子1aを図2で説明する。図2の巻線接続端子1aは、実施形態のように回転機用巻線接続装置50の径方向の大きさが小さく巻線接続端子1aの配置や形状が大きく取れない場合に特に適している。
【0019】
本実施形態の図2の巻線接続端子1aは本体部cと本体部cから伸びた2本の角部a、bで構成されており、本体部cからU字状に伸びた2本の角部a、bの間に固定子巻線2aの一方の端部、もしくは他方の端部が挿入し易いようになっている。
【0020】
本実施形態における溶接条件は、溶接電流が110(A)〜90(A)、溶接時間を195(msec)〜105(msec)であり、TIG溶接を用いている。また本実施形態における固定子巻線2aの線径はφ1.0〜φ2.5の太線の固定子巻線2aを用いている。
【0021】
この条件において、溶接を行った際、固定子巻線2aの線径の断面積Sに対する、巻線接続端子1aの本体部cからU字状に伸びた2本の角部a、bの面積Ta、Tbの広さによって固定子巻線2aと巻線端子部1aとの溶接の溶接引張強度が変わってくる。本体部cと角部a、bの境界線は、本体部cに対してU字形状の溝に固定子巻線2aが挿入される底部の位置から直角に引いた垂線である。固定子巻線2aの線径の断面積Sに対して巻線接続端子2aの本体部cからU字状に伸びた2本の角部a、bの面積Ta、Tbが小さい場合は、早く溶接熱が伝わり、溶断してしまい鎔け落ちてしまう。
【0022】
また、逆に、固定子巻線2aの線径の断面積Sに対して巻線接続端子1aの本体部cからU字状に伸びた2本の角部a、bの面積Ta、Tbが大き過ぎる場合は、溶接熱が伝わり難く溶接が不完全となってしまう。このような状況より判断して安定した溶接引張強度を維持でき、図3に示すような溶接箇所3aにおいて、外観上、溶接突起などが発生しない形状とすることが重要となる。
【0023】
図4に示す様に、安定した最大の溶接引張強度が得られるピーク値55(Kg)に対して、溶接引張強度が維持でき、溶接箇所3aの外観上、溶接突起などの発生しない形状とするには44(Kg)以上必要である。つまり、溶接引張強度をピーク値の値に対して溶接引張強度を約80%以上とすることにより安定した溶接引張強度が維持でき、溶接箇所3aの外観上、溶接突起なども発生しない形状とすることができる。
【0024】
ここで本実施形態の巻線接続端子1aの形状に溶接を施した場合、図3に示すような溶接箇所3aとするには固定子巻線2aの線径の断面積Sに対して巻線接続端子1aの本体部cからU字状に伸びた2本の角部a、bの断面積Ta、Tbの合計の面積T=Ta+Tbの比率が、1≦(T/S)≦3とすることにより安定した溶接を行うことができ80%以上の溶接引張強度を維持することができる。また、溶接箇所3aの外観上、溶接突起などが発生しない形状とすることができる。
【0025】
図4より解るように(T/S)の比率が1以下である場合は、巻線接続端子1aが鎔けすぎて強度が落ちてしまう。また、(T/S)の比率が3以上ある場合、溶接を確実にすることができずに溶接強度が落ちてしまう。具体的には、(T/S)の比率が、(T/S)=1の場合は54(Kg)であり、(T/S)=2の場合は55(Kg)、(T/S)=3の場合は48(kg)である。
【0026】
また、図2に示す様に、固定子巻線2aの線径Rに対して、巻線接続端子1aの本体部cからU字状に伸びた2本の角部a、bの最少の端子幅ra、rbは、線径Rより幅広にすることにより、溶接熱により巻線接続端子1aの本体部cからU字状に伸びた2本の角部a、bが鎔け落ちることもない。先に固定子巻線2aが鎔けてから巻線接続端子1aの2本の角部a、bが鎔けて溶接されることになり確実に溶接することができ溶接引張強度を上げることができる。従って、巻線接続端子1aの線径Rより端子幅の最少幅ra、rbの合計(ra+rb)を幅広にすることにより安定した溶接が可能となる((ra+rb)≧R)。
【0027】
また、巻線接続端子1aの端子表面に錫メッキを施すことにより、より溶融性が上がり、接触抵抗が低く、耐食性に優れ溶接強度を向上した巻線接続端子とすることが可能となる。
尚、この錫メッキは、錫メッキを施した銅板を打ち抜いて巻線接続端子1aを形成している関係上、銅板の打ち抜いた刃断面には錫メッキが施されていない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】回転機用巻線接続装置の図。
【図2】回転機用巻線接続装置に使用する巻線接続端子の図。
【図3】図2の巻線接続端子を溶接した後の溶接部形状の図。
【図4】溶接引張強度と端子の面積/巻線線径断面積との関係を示すグラフ。
【図5】従来の巻線接続端子の溶接前の図。
【図6】図5に示した巻線接続端子の溶接前後の状態を示した図。
【符号の説明】
【0029】
1a、10、Ua、Ub、Va、Vb、Wa、Wb、Xaa〜Xac、Xba〜Xbc・・・巻線接続端子
U、V、W・・・端子部
2a、20・・・巻線
3a、30・・・溶接箇所
40U、40V、40W、40Xa、40Xb・・・接続部材
40Ua・・・段付き渡り部
50・・・回転機用巻線接続装置
60・・・保持部材
S・・・巻線の断面積

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子の固定子鉄心に巻き付けられえた固定子巻線と外部で接続する接続部材と、前記固定子鉄心の軸方向の一方側に設けられた前記接続部材を保持する保持部材を備える回転機用巻線接続装置であって、
前記接続部材には前記固定子巻線の端部を収容する巻線接続端子が設けられ、
前記巻線接続端子は、本体部と本体部から伸びた2本の角部の間に前記固定子巻線を収容できるU字形の溝が設けられており、
前記巻線接続端子のU字形の溝に前記固定子巻線を収容して本体部から伸びた2本の角部を溶かし溶接するものであって、
前記固定子巻線を収容する本体部から伸びた2本の角部の合計面積をT、前記固定子巻線の断面積をSとしたとき、1≦(T/S)≦3を満足するように前記巻線接続端子が形成されていることを特徴とする回転機用巻線接続装置。
【請求項2】
前記巻線接続端子の本体部から伸びた2本の角部の合計幅は前記固定子巻線の直径より幅広に構成されたことを特徴とする請求項1項記載の回転機用巻線接続装置。
【請求項3】
前記巻線接続端子は錫メッキが施されたことを特徴とする請求項1項及び請求項2項記載の回転機用巻線接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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