説明

回転装置およびこれを用いた循環浄化システム

【課題】従来よりも少ないコストで駆動させることができるとともに、故障によるリスクを抑えた回転装置およびこれを用いた循環浄化システムを提供すること。
【解決手段】回転軸と、前記回転軸の外周に略放射状に配置された複数本のシャフトと、前記複数本のシャフトの先端部に設けられたバケット部と、前記複数本のシャフトの延出方向に沿って移動可能に設置された錘体と、前記錘体の移動制御を行う制御手段と、を備え、前記制御手段の駆動により、前記複数本のシャフトに対応して設置された錘体を、前記回転軸とバケット部との間または前記バケット部と回転軸との間のいずれかの方向に漸次移動させ、これにより、前記回転軸に一方向の回転モーメントを生じさせ、前記回転軸とともに前記バケット部を回転させるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水を水面から所定の高さまで汲み揚げる回転装置およびこの回転装置を用いて汲み揚げた水を浄化し、この浄化した水を再び汲み揚げた場所に戻すようにした循環浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば湖水の浄化において、湖水の水を水車などの回転装置で汲み揚げ、浄化装置で浄化した後、再びこの水を湖に戻すことが行われている。
【0003】
このような循環浄化システムは、回転装置の駆動に要する電力を賄うことができれば容易に用いることができるため、広く普及されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、未だインフラの整備されていない遠隔地などによっては、回転装置の駆動に要する電力を賄うことができなかったり、または賄えたとしても電力コストの問題で使用できない場合も生じており、特にこのような循環浄化システムが必要不可欠な場所にかぎって普及していないのが実情である。
【0005】
また回転装置は、モーターなどの動力源で回転軸を回転させることで駆動がなされているが、駆動の要であるモーターが故障した場合には、これが修理されるまで駆動を再開できず、故障によるリスクが大きいという問題も生じていた。
【0006】
本発明はこのような現状に鑑み、従来よりも少ないコストで駆動させることができるとともに、故障によるリスクを抑えた回転装置およびこれを用いた循環浄化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前述したような従来技術における課題および目的を達成するために発明されたものであって、
本発明の回転装置は、
回転軸と、
前記回転軸の外周に略放射状に配置された複数本のシャフトと、
前記複数本のシャフトの先端部に設けられたバケット部と、
前記複数本のシャフトの延出方向に沿って移動可能に設置された錘体と、
前記錘体の移動制御を行う移動制御手段と、
を備え、
前記移動制御手段の駆動により、前記複数本のシャフトに対応して設置された錘体を、前記回転軸とバケット部との間または前記バケット部と回転軸との間のいずれかの方向に漸次移動させ、
これにより、前記回転軸に一方向の回転モーメントを生じさせ、前記回転軸とともに前記バケット部を回転させるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
このように構成すれば、移動制御手段で錘体を回転軸とバケット部との間またはバケット部と回転軸との間のいずれかの方向に移動させるだけで、回転装置を駆動させることができるため、従来よりも少ないコストで駆動させることができる。
【0009】
また、複数の移動制御手段を用いて回転装置を駆動させる構造であるため、万が一、一部の移動制御手段が故障したとしても交換が容易であるため、迅速な復旧が可能であり、リスクを分散させることができる。
【0010】
さらに従来のように回転軸を一つのモーターで駆動させる場合には、一つのモーターで大きな出力が必要であり、消費電力も相当に必要であったが、本願発明では、複数の錘体をそれぞれに移動制御手段で移動させるだけであるため、消費電力も少なくて済み、駆動コストを従来のような回転軸を一つのモーターで駆動させる場合と比べて抑えることができる。
【0011】
また、本発明の回転装置は、
前記錘体が、
前記シャフトに沿って設けられた案内棒の外周に移動可能に設置されていることを特徴とする。
【0012】
このように構成されていれば、錘体の動作をスムーズに行うことができるとともに、バケット部で水を汲み揚げる際に、錘体がバケット部の邪魔になることを防止できる。
【0013】
また、本発明の回転装置は、
前記バケット部に、振り子状錘体が枢着され、
前記回転装置の回転に合わせて、前記振り子状錘体が移動するよう構成されていることを特徴とする。
【0014】
このように構成されていれば、移動制御手段で錘体を回転軸とバケット部との間またはバケット部と回転軸との間のいずれかの方向に移動させるのに加えて、振り子状錘体が回転装置の回転にあわせ、振り子状に落下することとなるため、この落下によって、さらに回転装置の回転力が増し、確実に回転装置を駆動させることができる。
【0015】
また、本発明の回転装置は、
前記移動制御手段が、シリンダーであることを特徴とする。
【0016】
このようにシリンダーであれば、錘体の動きをスムーズに行うことができるため、錘体の移動時に回転装置に衝撃が加わり難くなり、回転装置の耐久性を向上させることができる。
【0017】
さらに、油圧シリンダーであれば規格品の使用ができるため、入手が比較的容易であり、万が一の故障の際にも復旧が容易である。
【0018】
また、本発明の回転装置は、
前記シャフト内に設けられた取水路と、
前記回転軸に接続された排水路と、
を備え、
前記回転装置が、水の汲み揚げに用いられる際において、
前記バケット部で汲み揚げられた水が、前記シャフト内の取水路内を通って、前記回転軸の排水路より排出されるよう構成されていることを特徴とする。
【0019】
このように上記したような回転装置を用いて水の汲み揚げをすれば、従来よりも少ないエネルギーで水の汲み揚げを行うことができる。
【0020】
また、本発明の回転装置は、
前記シャフトが、略くの字状の屈曲部を有することを特徴とする。
【0021】
このように構成されていれば、バケット部で水を汲み揚げた際に、水がいっぺんに排水路に流入せず、流速を緩和させることができるため、水の汲み揚げ時における振動を抑えることができる。
【0022】
また、本発明の循環浄化システムは、
上記に記載の回転装置と、
前記回転装置により汲み揚げられた水を浄化する浄化装置と、
前記浄化装置により浄化された水を再び汲み揚げられた場所へ放出する放出管と、
を備えることを特徴とする。
【0023】
このように上記した回転装置を用いて、水の循環浄化システムを構成すれば、従来よりも少ない運転コストでシステムの維持が可能であるため、例えば遠隔地などにおいても使用ができる。
【0024】
また、本発明の循環浄化システムは、
前記放出路の途中に、水力発電機を備えることを特徴とする。
【0025】
このように水力発電機を備えていれば、ここで得られた電力を、回転装置の移動制御手段の駆動にも役立たせることができるため、より回転装置の駆動に要するコストを抑えることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、回転装置の駆動を、移動制御手段で錘体を回転軸とバケット部との間、またはバケット部と回転軸との間のいずれかの方向に移動させることで行っているため、従来よりも少ない運転コストで駆動させることができるとともに、故障によるリスクを抑えた回転装置およびこれを用いた循環浄化システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の第1の実施例による回転装置の概略図である。
【図2】図2は、図1に示した第1の実施例による回転装置のシャフト部分を拡大して説明するための拡大図である。
【図3】図3は、本発明の第2の実施例による回転装置の概略図である。
【図4】図4は、図3に示した第2の実施例による回転装置のシャフト部分を拡大して説明するための拡大図である。
【図5】図5は、本発明の回転装置を用いた循環浄化システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。
【0029】
図1は、本発明の第1の実施例による回転装置の概略図、図2は、図1に示した第1の実施例による回転装置のシャフト部分を拡大して説明するための拡大図である。
【0030】
本発明の回転装置およびこれを用いた循環浄化システムは、従来よりも少ないコストで駆動させることができるとともに、故障によるリスクを抑えることのできるものである。<回転装置10>
本願発明における回転装置10は、図1および図2に示したように、回転軸12と、この回転軸12の外周に略放射状に配置された複数本(本実施例では16本)のシャフト14と、このシャフト14の先端部に設けられたバケット部16と、シャフト14の延出方
向に沿って移動可能に設置された錘体18と、この錘体18の移動制御を行う移動制御手段20と、を備えている。
【0031】
なお本実施例においては、移動制御手段20は、案内棒22の外周に接続されるようになっているが、シャフト14自身に接続されていても良いものである。
【0032】
そして、移動制御手段20を駆動させることによって、案内棒22に設置された錘体18を、回転軸12とバケット部16との間、またはバケット部16と回転軸12との間のいずれかの方向に漸次移動させ、これにより、回転軸12に一方向(本実施例では時計周り方向)の回転モーメントを生じさせ、回転軸12とともにバケット部16を回転させるように構成されている。
【0033】
ここで移動制御手段20としては、例えばシリンダーを用いることができ、中でも油圧シリンダー,エアーシリンダーを用いることが好ましい。
【0034】
次いで図1に示した回転装置10を元に、移動制御手段20による錘体18の動きを説明する。
【0035】
なお、説明の便宜上、図1に示した回転装置10のシャフト14の位置を、時計の針の位置である例えば12時,3時,6時,9時として表現する。
【0036】
まず、回転装置の16本のシャフト14は、回転軸12を中心として直線状に8本の直線からなっている。
【0037】
8本の直線のそれぞれは、常に回転軸12を中心に片側(本実施例では回転軸12を中心として右側)に負荷がかかるよう、錘体18の位置が設定されており、例えば回転装置10の3時と9時の場所に位置するシャフト14の場合では、3時の場所に位置するシャフト14の錘体18が最外端に位置しているのに対して、9時の場所に位置するシャフト14の錘体18は回転軸12側に寄って位置している。
【0038】
このため、回転軸12を中心とすると、3時の場所に位置するシャフト14の方が9時の場所に位置するシャフト14よりも鉛直方向に大きな力が加わっていることとなる。
【0039】
このような状態を各シャフト14の回転に合わせて、移動制御手段20で錘体18を漸次移動させることで、常に回転軸12を中心として右側に鉛直方向の力が加わるため、本実施例では時計周りの方向に回転するようになっている。
【0040】
なお、移動制御手段20による錘体18の移動は、錘体18の重量,回転軸の回転速度などによりタイミングを適宜設定することが好ましく、例えば移動制御手段20の制御を集中的に行うコントローラー(図示せず)を用いても良いものである。
【0041】
また、後述するように本回転装置10を水の汲み揚げに用いる場合には、各シャフト14内にバケット部16と連通する取水路を設けるとともに、回転軸12に排水路を設けることで、バケット部16で汲み揚げられた水がシャフト14内の取水路を通過し、回転軸12に向かうとともに排水路から排出させるようにすることができる。
【0042】
このとき、シャフト14に略くの字状の屈曲部30を設けておけば、バケット部16で水を汲み揚げた際に、水がいっぺんに排水路に流入せず、流速を緩和させることができ、汲み揚げによる振動を抑えることができる。
【0043】
さらに、回転軸12に補助的に小型のモーター(図示せず)を取り付けて、回転軸12の回転に必要なエネルギーを補うようしても良いことは当然のことである。
【0044】
このように、本発明の回転装置10は、上記したように駆動における主たる動力を、移動制御手段20による錘体18の移動で賄う特徴的な構造であるため、従来よりも少ない運転コストで駆動させることができるとともに、故障によるリスクを抑えることができる。
【0045】
次に本発明の回転装置10の他の実施例について説明する。
【0046】
図3は、本発明の第2の実施例による回転装置の概略図、図4は、図3に示した第2の実施例による回転装置のシャフト部分を拡大して説明するための拡大図である。
【0047】
図3および図4に示した回転装置10は、基本的には、図1および図2に示した実施例の回転装置10と同じ構成であるので、同じ構成部材には、同じ参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0048】
図3および図4に示した回転装置10は、バケット部16に振り子状錘体24が枢着されている点で、図1および図2に示した回転装置10とは異なっている。
【0049】
このような振り子状錘体24は、バケット部16が12時の場所に位置するとき、枢着部28を中心として、12時から略3時までの間を移動できるよう、この位置にストッパー26a,26bがそれぞれ設けられている。
【0050】
振り子状錘体24は単に枢着部28に枢着されているだけであるため、シャフト14が略3時から6時の位置にある場合には、ストッパー26a,26bによって位置が保持されないため、垂直方向に単に垂下した状態となる。
【0051】
そして、シャフト14が6時から12時の間は、ストッパー26aにより振り子状錘体24が支えられた状態である。
【0052】
さらに、シャフト14が12時から3時の場所に向かって移動する際には、振り子状錘体24を保持するものがないため、自重で落下して、ストッパー26bで保持されるようになる。
【0053】
このシャフト14が12時から3時の場所に向かって移動する際に生ずる振り子状錘体24の落下により、回転装置10の時計回りの回転力を生じさせるようになっている。
【0054】
ここで、バケット部16に枢着された振り子状錘体24の振り角度θ1は、図4に示したように、ストッパー26a側を基点として、0°〜90°の範囲内、より好ましくは0°〜70°の範囲内であることが好ましく、この角度にあわせてストッパー26bの位置を設定すれば良い。
【0055】
これは振り子状錘体24の振り角度θ1が必要以上に大きいと、振り子状錘体24が12時の位置から自重で落下した際に、ストッパー26bに加わる衝撃力が大きくなりすぎるからである。
【0056】
一方、振り子状錘体24の振り角度θ1が上記範囲よりも小さい場合には、振り子状錘体24の落下によって回転装置10の回転力を増加させるのに十分な力が得られない。
【0057】
このように、振り子状錘体24を設けた本実施例では、バケット部16に振り子状錘体24を設けたので、回転装置10の回転力がさらに増し、確実に回転装置10を駆動させることができる。
<循環浄化システム50>
上記した回転装置10を用いた循環浄化システム50について説明する。
【0058】
図5に示した循環浄化システム50は、上記した回転装置10により汲み揚げられた水36が、シャフト14内の取水路32を通過して回転軸12に接続された排水路34を介して浄化装置38へ送られ、浄化装置38により浄化された水36は、放出路40を介して再び汲み揚げられた場所へ放出されるようになっており、水36の汲み揚げからは放出までが、一つのサイクルとして機能するようになっている。
【0059】
なお、放出路40の途中に、水力発電機42を備えても良く、この場合、浄化装置38から落下した水によって発電された電力を、回転装置10の移動制御手段20の駆動電力の補助として使用ができ、より回転装置10の駆動に要する運転コストを抑えることができる。
【0060】
このように上記した回転装置10を用いた循環浄化システム50は、運転コストを抑えることができるため、例えば遠隔地などであっても供給が可能な効率の良いシステムである。
【0061】
以上、本発明の好ましい形態について説明したが、本発明は上記の形態に限定されるものではなく、例えば、図1に示した回転装置10では、シャフト14の数と同数の錘体18および移動制御手段20が設けられているが、数は特に限定されるものではなく、要は回転軸12を中心として左右均等で直線状の位置に錘体18および移動制御手段20が設けられていれば良いものである。
【0062】
また、別途太陽光発電機を設置し、ここで得られた電力も使用して、移動制御手段20を駆動させるようにすることができるなど、本発明の目的を逸脱しない範囲での種々の変更が可能なものである。
【符号の説明】
【0063】
10・・・回転装置
12・・・回転軸
14・・・シャフト
16・・・バケット部
18・・・錘体
20・・・移動制御手段
22・・・案内棒
24・・・振り子状錘体
26a・・ストッパー
26b・・ストッパー
28・・・枢着部
30・・・屈曲部
32・・・取水路
34・・・排水路
36・・・水
38・・・浄化装置
40・・・放出路
42・・・水力発電機
50・・・循環浄化システム
θ1・・振り子状錘体の振り角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸の外周に略放射状に配置された複数本のシャフトと、
前記複数本のシャフトの先端部に設けられたバケット部と、
前記複数本のシャフトの延出方向に沿って移動可能に設置された錘体と、
前記錘体の移動制御を行う移動制御手段と、
を備え、
前記移動制御手段の駆動により、前記複数本のシャフトに対応して設置された錘体を、前記回転軸とバケット部との間または前記バケット部と回転軸との間のいずれかの方向に漸次移動させ、
これにより、前記回転軸に一方向の回転モーメントを生じさせ、前記回転軸とともに前記バケット部を回転させるように構成されていることを特徴とする回転装置。
【請求項2】
前記錘体が、
前記シャフトに沿って設けられた案内棒の外周に移動可能に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の回転装置。
【請求項3】
前記バケット部に、振り子状錘体が枢着され、
前記回転装置の回転に合わせて、前記振り子状錘体が移動するよう構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の回転装置。
【請求項4】
前記移動制御手段が、油圧シリンダーであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の回転装置。
【請求項5】
前記回転装置が、
前記シャフト内に設けられた取水路と、
前記回転軸に接続された排水路と、
を備え、
前記回転装置が、水の汲み揚げに用いられる際において、
前記バケット部で汲み揚げられた水が、前記シャフト内の取水路内を通って、前記回転軸の排水路より排出されるよう構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の回転装置。
【請求項6】
前記シャフトが、略くの字状の屈曲部を有することを特徴とする請求項5に記載の回転装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の回転装置と、
前記回転装置により汲み揚げられた水を浄化する浄化装置と、
前記浄化装置により浄化された水を再び汲み揚げられた場所へ放出する放出路と、
を備えることを特徴とする循環浄化システム。
【請求項8】
前記放出路の途中に、水力発電機を備えることを特徴とする請求項7に記載の循環浄化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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