説明

回転規制構造及びこれを備えた撮影用照明装置

【課題】
広範囲の回転角度範囲を持ちつつ、機構の省スペース化と、機構の組立作業工数の減少をも実現する回転規制構造及びそれを備えた撮影用照明装置を提供する。
【解決手段】
本発明は、本体部と、前記本体部に対して回転可能な回転部と、前記回転部の回転を規制する回転規制ユニットを備え、
前記回転規制ユニットに設けられた突起部が、前記本体部もしくは前記回転部に設けられた係止部に当接することで、前記回転部の回転角度範囲が規制される前記回転規制ユニットにおいて、
前記係止部が、第1、第2の当接部及び、第1、第2のガイド部を含み、
前記回転規制ユニットが所定方向に回転すると、前記突起部が前記第1のガイド部を介して前記第1の当接部に当接し前記所定方向への回転を規制し、前記所定方向とは逆方向に回転すると、前記突起部が前記第2のガイド部を介して前記第2の当接部に当接し前記逆方向への回転を規制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体部と、本体部に対して回転する回転部の回転角度範囲を規制する回転規制構造、及びこの回転規制構造を備えた撮影用照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮影用照明装置は、撮影において光量の足りない状況で使うことを目的としている。カメラに撮影用照明装置が内蔵されていない場合は、外付けの撮影用照明装置をカメラに装着して写真撮影が行われる。外付けの撮影用照明装置は、カメラのホットシューに装着される本体部と、発光部を有する回転部に別れており、通常、発光部の発光窓が被写体に正対する状態でカメラに装着される。
【0003】
また、バウンス機能を備えた撮影用照明装置は、この正対状態を基準として発光部を本体部に対して水平(左右)方向、及び鉛直(上下)方向に回転できるため、発光部から放射される光の放射方向を被写体に対して水平方向あるいは垂直方向に可変できる構造になっている。このような撮影用照明装置としては、特許文献1に記載されたものが公知である。
【0004】
上記の特許文献1に記載されたものは、本体部と、本体部に対して回転可能な回転部が回転機構を介して連結され、回転機構が本体部に対して水平方向に回転することにより、回転部も本体部に対して水平方向に回転し発光部からの光の放射方向を変化させることができる。本体部に設けられた係止部と、回転部に設けられる係合部とが当接し、本体部の係止部が回転方向に可動することによって、回転部が本体部に対する水平方向への回転角度範囲が設定されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004-264403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたものは、本体部の係止部を可動させる為の機構が必要になるため、本体部の係止部を可動させる為の機構にカバーやビス等の部品が使われることになる。そのため、課題として本体部の係止部の機構スペースが大きい、作業工数が多いといったことが挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係わる回転規制構造は、上記課題を解決するために、本体部と、前記本体部に対して回転可能な回転部と、回転部の回転を規制する回転規制ユニットを備え、前記回転規制ユニットに設けられた突起部が、前記本体部もしくは前記回転部に設けられた係止部に当接することにより、前記回転部の回転角度範囲が規制されるように構成された回転規制ユニットにおいて、前記係止部が、第1、第2の当接部及び、第1、第2のガイド部を含み、前記回転規制ユニットが所定方向に回転すると、前記突起部が前記第1のガイド部を介して前記第1の当接部に当接し前記所定方向への回転を規制し、前記所定方向とは逆方向に回転すると、前記突起部が前記第2のガイド部を介して前記第2の当接部に当接し前記逆方向への回転を規制することを特徴とする回転規制構造。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、係止部がガイド部と当接部のみで構成される簡単な構造であるため、回転規制構造のうちの係止部に要するスペースが小さいことにより回転規制構造の省スペース化を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。
【0010】
図1は撮影用照明装置の外装図であり、図2は本発明の一実施形態に係わる撮影用照明装置の分解斜視図である。
【0011】
本発明に係わる撮影用照明装置は、図1と図2の様に、本体部1と、前記本体部1に対して水平方向と鉛直方向それぞれに回転可能な発光部3を有する回転部2と、回転部2に設けられ回転部2の本体部1に対する水平方向への回転を規制する回転規制ユニット5を備える。回転部2が本体部1に対して水平方向及び鉛直方向に回転可能であることにより、発光部3の発光窓4から放射される光を被写体に対して水平方向あるいは垂直方向に可変できる構造になっている。
【0012】
本体部1は、モールド部材で形成される一対の本体部後部1aと本体部前部1bを備え、本体部1には電気回路や電源ユニットなど装置駆動に必要な各種ユニット(何れも図示しない)が内蔵され、カメラ本体(図示しない)にホットシューを介して装着できるよう構成されている。本体内部は電気回路や電源ユニットの配置空間を確保するために、その他の部材が占める空間は少ないほうが望ましい。そのため、回転規制機構が占める空間も小さくする必要がある。
【0013】
本実施形態における水平回転方向への回転規制については、後述する回転規制ユニット5の回転規制機構において詳細に説明する。
【0014】
図3は、図2中の回転規制ユニット5及び係止部10の拡大図である。
回転規制ユニット5は、図3の様に、断面略円形状の回転規制板6と断面略円形状の固定板7とスプリングワッシャ9と段付ネジ8を備え、さらに回転規制板6には突起部6aが設けられている。この突起部6aが、本体部後部1aに設けられている後述の当接部11に当接することによって、回転部2の本体部1に対する水平方向への回転を規制する。
【0015】
回転規制板6と固定版7とスプリングワッシャ9が段付ネジ8を介して回転部2に固定されており、回転部2の動きに合わせて回転部2と一体的に回転する。固定板7とスプリングワッシャ9の間で遊びを持たせているので、回転規制板6は回転規制ユニット5の回転面と交差する方向に可動する。
【0016】
また、突起部6a及び回転規制板6は、突起部6aと当接部11が当接する際、もしくは当接した後に生じる所定の負荷に耐えられるよう、共に金属材料で構成されている。本実施形態では、当接部11に回転部2及び発光部3の重さや、使用者の回転部に対する回転動作時に加わる力などを鑑みて、回転規制板6及び突起部6aを、例えばスチール材料で構成している。尚、回転規制板6及び突起部6aは、スチールと同等もしくはそれ以上の強度を持つ材料で構成されていればよい。
【0017】
本体部に設けられた係止部10は、第1当接面11aと第2当接面11bを含む当接部11と、第1ガイド部12aと第2ガイド部12bから成るガイド部12を有する。当接部11(第1当接面11aと第2当接面11b)は、所定の負荷に耐えられるよう設計される両端が互いに逆方向に曲がった鉤型の金属である。
【0018】
例えば、本実施形態では、当接部11に回転部2及び発光部3の重さ、もしくは人による回転動作時に加わる負荷に耐えられるよう当接部11をステンレス製にすることにより、係止部10全体を樹脂性のみで構成するものと比べて耐久性を向上させている。尚、当接部11は金属製であればよい。また、回転部の回転規制の際に生じる所定の負荷に対して十分に耐久性をもつ当接部11を樹脂製部品としてガイド部12と共に本体部1と一体形成してもよい。
【0019】
回転規制板6は、突起部6aが当接部11と当接することでその回転を規制され、後述するように突起部6aは左回転と右回転でそれぞれ当接部11に当接する箇所が異なる。例えば、回転規制板6が左回転(図3中矢印13)すると突起部6aは当接面11aに、右回転(図3中矢印14)すると突起部6aは当接面11bに当接する構造になっている。
【0020】
ここで、回転規制ユニット5の回転規制機構について詳細に説明する。
【0021】
回転部2が本体部後部1aに対して左回転(図3中矢印13)すると、図4の様に、回転規制板5はスプリングワッシャに9より固定板7方向(図4中矢印15)に力を受け、回転規制板6全体がその力によって固定板7に押さえつけられることで本体部後側1aに対して水平に保持される。さらに、回転規制板6は突起部6aが本体部後部1aに設けられたガイド部12bにより確実に当接部11aへと誘導される。そして、最終的に突起部6aが当接部11aで当接することによって回転規制板6の左回転方向への更なる回転が規制される。
【0022】
逆に、回転部2が本体部後部1aに対して右回転(図3中矢印14)すると、図5の様に、回転規制板6は突起部6aが本体部後部1aに設けられたガイド部12aの斜面に沿って動くことで回転方向に対して垂直方向に動き、回転規制板6全体が本体部後部1aに対して斜めに傾く。そして、最終的に突起部6aが当接部11bで当接することによって回転規制板6の右回転方向への更なる回転が規制される。
【0023】
以上より、本体部後部1aの係止部10は、当接部11とガイド部12のみで構成される簡単な構造であるため、回転規制構造のうちの係止部10に要するスペースが小さいことにより回転規制構造の省スペース化を可能にしている。
【0024】
また、係止部10のガイド部12は樹脂性部品として本体部後部1aと一体化して形成されるため、回転規制構造の本体部側の組み立て作業は当接部11を取り付けるのみとなることで、部品点数の削減、及び組み立て工数の削減も可能にしている。尚、係止部は本体部前部1bにあてもよい。
【0025】
回転部の回転角度範囲は、突起部6aの幅と、当接面11aと11bの間隔、ガイド部12の形状と配置で決まる。突起部6aの幅と、当接面11aと11bの間隔、ガイド部12の形状と配置は、任意に決めることができるので、回転規制板6が180°以上回転できるよう調整することも可能である。例えば、図6の様に、図6(a)から図6(b)へと2つの当接部間の距離を長くすることにより上記の180°の左回転と右回転に加えて更に回転角度範囲を広げることができ、左方向と右方向それぞれに180°以上の回転が可能となる。
【0026】
この様に、本実施形態に係わる撮影用照明装置によれば、従来にない簡単な構造で広い回転角度範囲を実現することができるのである。
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0027】
また、上述してきた回転規制構造は、撮影用照明装置に限定されるものではなく、回転動作を伴う製品などに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、撮影用照明装置の外装図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係わる撮影用照明装置の分解斜視図である。
【図3】図3は、回転規制ユニット5及び係止部10の拡大図である。
【図4】図4は、左回転時の回転規制機構を示した図である。
【図5】図5は、右回転時の回転規制機構を示した図である。
【図6】図6は、当接部の拡大図である。
【符号の説明】
【0029】
1 本体部
1a 本体部後部
1b 本体部前部
2 回転部
3 発光部
4 発光窓
5 回転規制ユニット
6 回転規制板
6a 突起部
7 固定版
8 段付ネジ
9 スプリングワッシャ
10 係止部
11 当接部
11a 右回転時の当接面
11b 左回転時の当接面
12 ガイド部
12a 右回転時のガイド部
12b 左回転時のガイド部
13 左回転方向
14 右回転方向
15 回転規制板に働く力の方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、前記本体部に対して回転可能な回転部と、前記本体部及び前記回転部の一方に設けられ前記回転部の回転を規制する回転規制ユニットを備え、
前記回転規制ユニットに設けられた突起部が、前記本体部もしくは前記回転部の他方に設けられた係止部に当接することにより、前記回転部の回転角度範囲が規制されるように構成された前記回転規制ユニットにおいて、
前記係止部が、第1、第2の当接部及び、第1、第2のガイド部を含み、
前記回転規制ユニットが所定方向に回転すると、前記突起部が前記第1のガイド部を介して前記第1の当接部に当接し前記所定方向への回転を規制し、前記所定方向とは逆方向に回転すると、前記突起部が前記第2のガイド部を介して前記第2の当接部に当接し前記逆方向への回転を規制することを特徴とする回転規制構造。
【請求項2】
前記突起部は、前記第1のガイド部を介して前記所定方向への回転における回転面と交差する方向に可動する請求項1に記載の回転規制構造。
【請求項3】
前記係止部は、前記突起部が前記第1及び前記第2のガイド部を介して当接できるよう両端が互いに逆方向に曲がった形状を有することを特徴とする請求項1に記載の回転規制構造。
【請求項4】
前記当接部は、両端が互いに逆方向に曲がった鉤型の金属であることを特徴とする請求項3に記載される回転規制構造。
【請求項5】
前記第1及び第2のガイド部は、前記回転規制ユニットの回転面と交差する方向に前記突起部の運動方向を誘導することを特徴とする請求項1に記載の回転規制構造。
【請求項6】
前記ガイド部は、前記本体部もしくは前記回転部のうち前記一方と一体化した樹脂製部品であることを特徴とする請求項4に記載の回転規制構造。
【請求項7】
前記回転規制ユニットは、前記所定回転方向とその逆方向にそれぞれ180°、もしくはそれ以上の回転角度が実現可能な請求項1に記載の回転規制構造。
【請求項8】
請求項1から請求項7までの何れか一項に記載の回転規制構造を備えたことを特徴とする撮影用照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−158708(P2011−158708A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20300(P2010−20300)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】