回転角度算出装置及び変位量算出装置
【課題】
少ないセンサで内側回転体の外側回転体に対する相対回転角を算出する回転角演算装置を提供する。
【解決手段】
無負荷で内側回転軸と外側回転軸が同心に配置され、少なくとも内側回転軸に直交する面内で相対変位可能に負荷に応じて変形する弾性部材によって連結された内側回転体及び外側回転体を有する回転体と、内側回転体及び外側回転体のいずれか一方の回転軸から等距離にある周方向の複数の異なる箇所に設けられ、他方の内側回転体又は外側回転体と一体的に回転し、周方向と直交する方向に対向する他方の回転軸から等しい距離に設けられた被測定部材の被測定部位までの直交する方向の距離を検出する複数の変位センサと、複数の変位センサにより検出された複数の距離に基づいて、内側回転体と外側回転体との間の相対回転角を算出する演算手段とを具備して構成する。
少ないセンサで内側回転体の外側回転体に対する相対回転角を算出する回転角演算装置を提供する。
【解決手段】
無負荷で内側回転軸と外側回転軸が同心に配置され、少なくとも内側回転軸に直交する面内で相対変位可能に負荷に応じて変形する弾性部材によって連結された内側回転体及び外側回転体を有する回転体と、内側回転体及び外側回転体のいずれか一方の回転軸から等距離にある周方向の複数の異なる箇所に設けられ、他方の内側回転体又は外側回転体と一体的に回転し、周方向と直交する方向に対向する他方の回転軸から等しい距離に設けられた被測定部材の被測定部位までの直交する方向の距離を検出する複数の変位センサと、複数の変位センサにより検出された複数の距離に基づいて、内側回転体と外側回転体との間の相対回転角を算出する演算手段とを具備して構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外側回転体の内側回転体に対する相対回転角又は相対変位量を算出する回転角度算出装置又は変位量算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車輪に用いられるホイールなどの回転体では、その回転体に働く力、例えば、路面の摩擦力による路面に平行なx軸方向の力,車両の荷重による路面からの垂直反力による鉛直方向(z軸方向)の力、x及びz軸に垂直なy軸回りのトルクMy等に基づいて、車両のアンチロックブレーキシステム(ABS)やトラクションコントロールシステム(TCS)などの車両の旋回挙動を安定化させるビークルスタビリティアシストシステム(VSA)などにおいて、車両の制動制御が行われている。
【0003】
回転体のx,y,z軸方向に加わる力Fx,Fy,Fz及びこれらの軸回りに働くトルクMx,My,Mzの推定に係る先行技術としては、以下の特許文献があった。
【0004】
特許文献1には、リムとホイールディスクの境界部分に接線方向変位センサと垂直方向変位センサをそれぞれ周上に点対称に4箇所設け、4個の接線方向変位センサの出力に基づいて、リムのホイールディスクに対する接線方向の相対変位量αを算出し、4個の垂直方向変位センサの出力に基づいて、リムの軸心のホイールディスクの軸心に対する垂直方向の偏心量Dを算出することが記載されている。
【0005】
特許文献2には、ホイールのリム取り付け枠とハブ取り付け枠との間で十文状に配置された4本のT字型アームのそれぞれを構成する第1及び第2受感ビームのそれぞれに設けられた8個の歪みゲージの出力に基づいて、力Fx,Fy,Fz及びこれらの軸回りに働くトルクMx,My,Mzを推定することが記載されている。
【特許文献1】WO2003/008246号公報
【特許文献2】特開2005−249772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、8個のセンサを用いて、リムのディスクに対する接線方向の相対変位量α及び垂直方向Dの偏心量を算出し、これらから、力の接線方向成分及び垂直方向成分を推定していることから、多くのセンサにコストがかかるという問題点があった。また、特許文献1では、リムの軸心がディスクの中心に対してz軸方向に変位するがx軸方向には変位しないことを前提として、リムのディスクに対する接線方向の相対変位量α及び垂直方向Dの偏心量を算出しているが、リムとディスクとの境界に設けられた弾性体がx軸方向に変位すると、誤差が生じるという問題点がある。更に、リムとディスクの狭い境界部分に接線方向変位センサと垂直方向変位センサを設けていることから、変位量の検出精度に問題がある。
【0007】
特許文献2では、少なくとも3本のT字型アームのそれぞれを構成する第1及び第2受感ビームのそれぞれに設けられた8個の歪みゲージ、合計、少なくとも48(3×8×2)個の出力に基づいて、力Fx,Fy,Fz及びこれらの軸回りに働くトルクMx,My,Mzを推定することから、多くのセンサにコストがかかるという問題点があった。更に、Fz,Mz以外のFx,Fy及びMx,Mzについては、角度検出部が検出したホイールの回転角に基づいて補正する必要があり、処理が複雑になるという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、回転補正が不要、且つより少ないセンサで内側回転体の外側回転体に対する相対回転角を算出し、相対回転角に基づき、力Fx,Fy,Myを推定する回転角度算出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、無負荷で内側回転軸と外側回転軸が同心に配置され、少なくとも前記内側回転軸に直交する面内で相対変位可能に負荷に応じて変形する弾性部材によって連結された内側回転体及び外側回転体を有する回転体と、前記内側回転体及び前記外側回転体のいずれか一方の回転軸から等距離にある周方向の複数の異なる箇所に設けられ、他方の前記内側回転体又は前記外側回転体と一体的に回転し、前記周方向と直交する方向に対向する前記他方の回転軸から等しい距離に設けられた被測定部材の被測定部位までの前記直交する方向の距離を検出する複数の変位センサと、前記複数の変位センサにより検出された複数の前記距離に基づいて、前記内側回転体と前記外側回転体との間の相対回転角を算出する演算手段とを具備したことを特徴とする回転角度算出装置が提供される。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、無負荷で内側回転軸と外側回転軸が同心に配置され、少なくとも前記内側回転軸に直交する面内で相対変位可能に負荷に応じて変形する弾性部材によって連結された内側回転体及び外側回転体を有する回転体と、前記内側回転体及び前記外側回転体のいずれか一方の回転軸から等距離にある周方向の3個以上の異なる箇所に設けられ、他方の前記内側回転体又は前記外側回転体と一体的に回転し、前記周方向と直交する方向に対向する前記他方の回転軸から等しい距離に設けられた被測定部材の被測定部位までの前記直交する方向の距離を検出する3個以上の変位センサと、前記3個以上の変位センサにより検出された前記距離に基づいて、前記内側回転体と前記外側回転体間の相対変位量を算出する演算手段とを具備したことを特徴とする変位量算出装置が提供される。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明において、前記被測定部位を構成する前記被測定部材の表面は単一平面であり、無負荷での前記各変位センサの前記距離の測定方向は、前記変位センサが設けられた前記内側回転体又は前記外側回転体の回転軸に直交する前記変位センサを含む面におけるその回転体の回転中心点から前記平面への法線方向に対して所定角α(α>0)だけ所定方向にずれていることを特徴とする回転角度算出装置又は変位量算出装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によると、回転体がトルクを受けたときに、該トルクが外側回転体を介して弾性部材に伝達され、弾性部材がトルクに応じて変形し、外側回転体が内側回転体に対して相対回転する。内側回転体及び外側回転体のいずれか一方の回転軸から等距離にある周方向の複数の異なる箇所に、他方の内側回転体又は外側回転体と一体的に回転し、周方向と直交する方向に対向する他方の回転軸から等しい距離に設けられた被測定部材の被測定部位までの距離を検出する複数の変位センサを設けたので、演算手段は、複数の変位センサにより検出された被測定部材までの複数の距離の全ての和又は一部の和と相対回転角との関係式から、相対回転角を算出する。例えば、180°ずれた位置に配置された2個の変位センサの出力に基づいて相対回転角を算出することができる。その結果、少ない変位センサにより相対回転角度を算出することができる。
【0013】
請求項2記載の発明によると、内側回転体及び外側回転体のいずれか一方の回転軸から等距離にある周方向の3個以上の異なる箇所に、他方の内側回転体又は外側回転体と一体的に回転し、周方向と直交する方向に対向する他方の回転軸から等しい距離に設けられた被測定部材の被測定部位までの距離を検出する3個以上の変位センサを設けたので、演算手段は、複数の変位センサにより検出された被測定部材までの3個以上の距離の全ての和又は一部の和と相対回転角との関係式から、相対回転角を算出する。その結果、少ない変位センサにより相対変位量を算出することができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、被測定部位を構成する被測定部材の表面を単一平面とし、無負荷での各変位センサの距離の測定方向は、変位センサが設けられた内側回転体又は外側回転体の回転軸に直交する変位センサを含む面におけるその回転体の回転中心点から平面への法線方向に対して所定角α(α>0)だけ所定方向にずれているので、外側回転体が内側回転体に対して相対回転したときの距離と回転前の距離の差分である変位量を大きくすることができ、相対回転角又は相対変位量の推定の精度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態による荷重算出装置1を含むブロック図である。図1に示すように、荷重算出装置1は、変位検出装置2#FL,2#FR,2#RL,2#RR及び変位−荷重変換演算手段4を含む。変位検出装置2#FLは、左前輪について変位を検出する。変位検出装置2#FRは、右前輪について変位を検出する。変位検出装置2#RLは、左後輪について変位を検出する。変位検出装置2#RRは、右後輪について変位を検出する。尚、変位検出手段2は、左前輪、右前輪、左後輪、右後輪の少なくとも1つの車輪について設けられていれば良い。
【0016】
図2は、図1中の変位検出装置2#FL,2#FR,2#RL,2#RRのブロック図である。変位検出装置2#FL,2#FR,2#RL,2#RRは、実質的に同一であることから、変位検出装置を符号2で表わしている。図2に示すように、変位検出装置2は、変位検出手段10#1,10#2,10#3、フィルタ12#1,12#2,12#3及びデータ送信部14を有する。
【0017】
図3は車輪側面図である。図4はホイール32を車軸ハブ34に取り付けた状態における図3のA−A線断面図である。図3及び図4に示すように、ホイール32は、ホイールディスク20、弾性部材22、リム24、並びに変位検出装置10#1,10#2,10#3を構成する変位センサ26#1,26#2,26#3及び被測定部(被測定部材)28#1,28#2,28#3を有する。
【0018】
ホイールディスク(内側回転体)20は、ホイール32の中心に配置され、車軸ハブ34、ブレーキディスク40及びホイールディスク20のそれぞれに設けられた貫通穴にスタッドボルト38を貫通し、ホイールナット36で締結することより、ホイールディスク20及びブレーキディスク40が車軸42と一体回転する車軸ハブ34に取り付けられる。
【0019】
ホイールディスク20は、車軸ハブ34の中心軸を回転軸(内側回転軸)として回転可能であるが、車軸ハブ34に固定されていることから、路面に平行なx軸、車軸42の回転軸(y軸)、x軸及びy軸に垂直なz軸方向への移動が規制されている。ホイールディスク20は、例えば、アルミニウム合金を素材とする鋳造成形品である。
【0020】
リム(外側回転体)24は、ホイールディスク20の外周側に配置され、タイヤ30が装着されて、該タイヤ30を支承するものであり、無負荷状態では、その回転軸(外側回転軸)がホイールディスク20の回転軸と同心にある。その形状はリング状である。リム24は、例えば、アルミニウム合金を素材とする鋳造成形品である。
【0021】
弾性部材22は、ホイールディスク20とリム24との間に配置され、ホイールディスク20とリム24とを連結し、タイヤ30よりリム24を通して伝達される、y軸に垂直な平面において、x軸,z軸方向の力のFx,Fz及びトルクMyの大きさ及び力の方向に応じて変形をするものである。
【0022】
力Fxは、ブレーキ力などに起因する路面からのタイヤ30への摩擦力により、タイヤ30からリム24を通して弾性部材22に伝達される。力(荷重)Fzは、車体からの荷重による路面からタイヤ30及びリム24を通して弾性部材22に伝達される。トルクMyは力Fxによりタイヤ30及びリム24を通してリム24の中心P2回りのモーメントが弾性部材22に伝達される。
【0023】
即ち、弾性部材22は、x軸,z軸方向の力Fx,Fzに応じてx軸方向,y軸方向に伸長,収縮し、また、y軸回りのトルクMyにより、リム24の回転とともに、弾性部材22の各点とリム24の回転中心とを結ぶ直線に直角方向(接線方向)に伸長するものであり、例えば、リングゴムやリング状にホイールディスク20の半径方向に重ねて形成された板ばねなどからなる。力Fx,Fzの伝達経路は、タイヤ30→リム24→弾性部材22→ホイールディスク20→スタッドボルト44→車軸ハブ34→車軸42となる。
【0024】
弾性部材22は、ホイールディスク20及びリム24に、弾性ゴムの場合は加硫接着等により、板ばねの場合は溶接等により固定されている。力Fx,Fz及びトルクMyに応じてホイールディスク20に対して相対変位することにより、その相対変位量により、力Fx,Fz及びトルクMyを推定するためである。形状は、リング形状である。尚、弾性部材22は、ホイールディスク20及びリム24を両者が接触しない程度の弾性を有しつつ両者を連結していればよく、その具体的形状は任意に定めてよい。
【0025】
リム24は、弾性部材22がx軸、z軸及びリム24の中心P2を中心とする円の円周方向に変位することにより、ホイールディスク20に対してx軸,z軸方向に相対移動するとともに、ホイールディスク20に対して相対回転する。
【0026】
変位センサ26#1,26#2,26#3は、被測定部材28#1,28#2,28#3までの距離D1,D2,D3を測定し、その距離に応じた電気信号を出力するものであり、例えば、渦電流式、静電容量式、レーザ式などの非接触式の変位センサや、リニアポテンショメータなどの接触式の変位センサである。
【0027】
図5は、車輪に負荷がかかっていない無負荷状態における車軸42に垂直方向の変位センサ26#1,26#2,26#3を含む断面図である。本実施形態では、変位センサ26#1,26#2,26#3は同一平面上にある例を示しているが、必ずしも、同一平面である必要はない。x軸はホイールディスク20の中心P1を通り、路面に平行な方向、z軸はホイールディスク20の中心P1を通り、車軸ハブ34の回転軸y軸及びx軸に直交する方向である。x軸,y軸は静止座標である。図5では、被測定部材28#1,28#2,28#3は、被測定面28a#1,28a#2,28a#3のみが記載されている。
【0028】
変位センサ26#1,26#2,26#3は、ホイールディスク20の回転軸中心から一定距離r離間し、例えば、図5に示すように、中心P1から距離r離間した周上(例えば、ホイールディスク20の外周上)のそれぞれ120°ずれた位置に、距離測定方向がホイールディスク20の中心P1からリム24側に向かう方向となるように配置されている。尚、変位センサ26#1,26#2,26#3は、リム24の回転軸から一定距離R離間。例えば、中心P2から距離Rの周上(例えば、リム24の内周上)に、距離測定方向が無負荷状態で回転軸、例えば、中心P1を向かう方向に配置しても良い。
【0029】
被測定部材28#1,28#2,28#3は、リム24に取り付けられ、変位センサ26#1,26#2,26#3の測定方向の対向面が被測定面28a#1,28a#2,28a#3となるように配置されており、リム24と一体的に変位する。被測定部材28#1,28#2,28#3の材質は、変位センサ26#1,26#2,26#3が距離D1,D2,D3を検出できるものであれば良い。
【0030】
被測定部材28#1,28#2,28#3には、リム24やホイールディスク20の一部を加工して形成したものも含まれる。形状は、被測定面28a#1,28a#2,28a#3が後述するものであれば、それ以外については、問わない。例えば、取り付けや製作が容易であることの観点から、図3に示すように、直方体を斜めに2分割し、その斜面を被測定面28a#1,28a#2,28a#3としても良い。
【0031】
被測定面28a#1,28a#2,28a#3は、例えば、単一平面である。被測定部材28#1,28#2,28#3は、図5に示すように、ホイールディスク20の中心P1と変位センサ26#1,26#2,26#3により測定される被測定面28a#1,28a#2,28a#3上の測定点とを結ぶ各直線L1,L2,L3がホイールディスク20の中心P1から被測定面28a#1,28a#2,28a#3への垂線の足Q1,Q2,Q3への垂線L1’,L2’,L3’に対して所定角度α(α>0)だけ一定方向にずれている。
【0032】
尚、変位センサ26#1,26#2,26#3をリム24に設ける場合は、被測定部材28#1,28#2,28#3をホイールディスク20の回転軸中心から距離r離間し、距離測定方向がリム24の回転軸方向となるように配置する。また、被測定面28a#1,28a#2,28a#3は、変位センサ26#1,26#2,26#3の距離測定方向が中心P2から被測定面28a#1,28a#2,28a#3への法線に対して所定角度α(α>0)だけ一定方向にずれるように配置する。
【0033】
図6は、所定角度α(α>0)ずらす理由を示す図である。リム24がx軸,z軸方向に移動せずに、θだけ回転した場合を示しており、リム24の中心P2とホイールディスク20の中心P1は一致する。α=0となるように変位センサ26’を配置した場合、リム24が回転角θ回転すると、回転前の被測定面28a0の距離D0’、回転後の被測定面28a1の距離D’とすると、回転による変位量ΔD’=(D’−D0’)となる。
【0034】
一方、α>0となるように、変位センサ26を配置した場合、リム24が回転角θ回転すると、回転前の被測定面28a0の距離D0、回転後の被測定面28a1の距離Dとすると、回転による変位量ΔD=(D−D0)となる。図6により、ΔD’<ΔDとなる。
【0035】
従って、α>0の方がα=0の場合に比べて、リム24の回転角を、大きな変位量で計測することができ、計測の精度が向上する。更に、変位センサ26から変位センサ26’の方向の回転を正とすると、0>θ>−αでは、ΔDが負、θ>0では、ΔDが正となることから、θ>−αのとき、回転の方向を判別することができる。尚、リム24がホイールディスク20に対してθ回転するとともに、リム24がx軸,z軸方向に移動した場合も上記と同様である。
【0036】
図7は被測定面28a#1,28a#2,28a#3のバリエーションを示す図である。図6では、被測定面28a#1,28a#2,28a#3が単一平面の場合を示しているが、図7(a)に示すように、被測定面28aがV字型に傾斜面を有する形状とし、回転角θ=0のときに、変位センサ26を傾斜溝底部Bが測定方向となるように配置しても良い。これにより、被測定面28aが回転したときに、変位量が大きくなるようにできる。また、図7(b)に示すように、階段状としてもよい。このとき、ステップ幅Wを短くして、被測定面28aが回転したとき、変位センサ26が別の段に対向するように被測定面28aを形成することにより、変位量が大きくなるようにできる。
【0037】
図2中のフィルタ12#1,12#2,12#3は、変位検出手段10#1,10#2,10#3の各変位センサ26#1,26#2,26#3から出力される距離D1,D2,D3を示す電気信号から高周波成分を削除し、ノイズをカットする。データ送信部14は、フィルタ12#1,12#2,12#3から出力される電気信号を無線などにより変位−荷重変換演算手段4に送信する。
【0038】
図1中の変位−荷重変換演算手段4は、各変位検出装置2#FL,2#FR,2#RL,2#RRより送信された距離D1,D2,D3から後で詳述するように、リム24のホイールディスク20に対する相対回転角θを算出(演算手段)し、相対回転角θから力Fx,Fz,トルクMyを算出して、VSAシステム6に出力する。変位−荷重変換演算手段4は、例えば、CPUやメモリなどを有するECU(エレクトリック コントロール ユニット)上を動作するプログラムにより構成する。
【0039】
VSAシステム6は、変位−荷重変換演算手段4より出力された車輪WFL,WFR,WRL,WRRについての、力Fx,Fz及びトルクMy、並びに図示しない横加速度センサ、前後加速度センサ、ヨーレートセンサ及びピッチレートセンサなどの出力に基づいて、ABS制御及びTCS制御などのVSA制御を行う。
【0040】
図8乃至図11は変位−荷重変換演算手段4の動作説明図であり、ホイール32が車軸ハブ34に取り付けられて、矢印Aの方向に回転しながら路面を運動している状態を示している。図8乃至図11中のx軸,z軸は図5と同様である。ここでは、例えば、運転者がブレーキペダルを踏み込むことにより、路面からタイヤ30を通してリム24に力Fxが加えられたものとする。
【0041】
ブレーキペダルが踏み込まれると、ブレーキペダルからの液圧に基づき車軸ハブ34と一体回転するブレーキディスク40にブレーキ力が作用し、タイヤ30と路面との間の摩擦力により、タイヤ30を通してリム24に力Fxが加えられる。力Fxがリム24から弾性部材22に伝達されて、弾性部材22がx軸方向に伸縮する。その結果、リム24の中心P2はx軸方向に変位量aだけホイールディスク20の中心P1に対して変位するともに、力Fxにより回転体としてのリム24に作用するトルクMyにより、リム24が回転角θだけホイールディスク20に対して相対回転する。
【0042】
一方、車両からの荷重よる路面からのタイヤ30への垂直反力Fzにより、リム24がz軸方向に力Fzを受け、弾性部材22がz軸方向に伸縮し、リム24がz軸方向に変位量bだけ変位する。これにより、リム24の中心P2の座標は(a,b)となる。
【0043】
変位センサ26#1,26#2,26#3は、点P1を中心として、ホイールディスク20と一体回転することから、観測時点において、変位センサ26#1は、x軸からφ反時計回りに回転しているものとする。x軸,z軸を(a,b)平行移動した軸をx’軸,z’軸とする。リム24の中心P2(a,b)から被測定面28a#1への被測定面28a#1に対する垂線の足をQ1とする。
【0044】
点P2と点Q1の距離はRである。点P2を中心に点P2と点Q1を結ぶ直線(以下、直線P2Q1)を角度α回転した直線と被測定面28a#1との交点をS1、点P2を中心に直線P2Q1を角度(θ+α)回転した直線と被測定面28a#1との交点をT1とする。また、変位センサ26#1による被測定面28a#1の観測点をU1とする。変位センサ26#1の距離測定方向は、ホイールディスク20の中心P1からの被測定面28aへの法線に対して、αずれて配置されていること、リム24がホイールディスク20に対してθだけ相対回転していることから、直線P2T1は、直線P1U1と平行になる。
【0045】
図10中のB部拡大図である図11に示すように、点P2から直線P1U1への垂線の足をV1とする。直線T1U1を点T1が点P2に一致するように平行移動した直線と直線P1U1との交点をW1とする。点P2と点V1の距離は、(bcosφ−asinφ)となる。角W1P2V1が(θ+α)、P2とV1の距離が(bcosφ−asinφ)であることから、V1とW1の距離は((bcosφ−asinφ)tan(θ+α))となる。
【0046】
座標(a,0)からの直線P1V1への垂線の足と点P1の距離が(acosφ)であり、座標(a,0)から直線P2V1の距離が(bsinφ)であることから、P1とV1の距離は(acosφ+bsinφ)となる。
【0047】
P1とW1の距離は、(P1とV1の距離)+(V1とW1の距離)であることから、(acosφ+bsinφ+(bcosφ−asinφ)tan(θ+α))となる。
【0048】
一方、点P2から被測定面28a#1までの距離はRであること、角度T1P2Q1は(θ+α)であることから、P2とT1の距離はR/cos(θ+α)となる。四角形P2W1U1T1は平行四辺形であることから、W1とU1の距離=P2とT1の距離=R/cos(θ+α)となる。
【0049】
P1とU1の距離=P1とW1の距離+W1とU1の距離=(acosφ+bsinφ)+(bcosφ−asinφ)tan(θ+α)+R/cos(θ+α)となる。一方、変位センサ26#1の観測点は点P1から半径rの位置に取り付けられていることから、P1とU1の距離=D1+rとなる。
【0050】
よって、次式(1)が成り立つ。
【0051】
D1=R/cos(θ+α)−r+(acosφ+bsinφ)+(bcosφ−asinφ)tan(θ+α) ・・・ (1)
D2,D3については、式(1)において、それぞれφに(φ+2π/3),(φ+4π/3)を代入すればよいことから、式(2),(3)が成り立つ。
【0052】
D2=R/cos(θ+α)−r+{(acos(φ+2π/3)+bsin(φ+2π/3))+(bcos(φ+2π/3)−asin(φ+2π/3))tan(θ+α)}
・・・ (2)
D3=R/cos(θ+α)−r+{(acos(φ+4π/3)+bsin(φ+4π/3))+(bcos(φ+4π/3)−asin(φ+4π/3))tan(θ+α)}
・・・ (3)
式(1),(2),(3)を加えると、sinφ+sin(2π/3)+sin(4π/3)=0,cosφ+cos(2π/3)+cos(4π/3)=0であることから、式(4)が成り立つ。
【0053】
D1+D2+D3=3{R/cos(θ+α)−r} ・・・ (4)
式(4)から式(5)が成り立つ。
【0054】
cos(θ+α)=3R/{3r+(D1+D2+D3)} ・・・ (5)
ここで、α,R,rは既知であることから、式(5)より、α,R,r及び測定値D1,D2,D3より、ホイール32の回転角φに依存することなく回転角θを算出できる。
【0055】
式(1),(2),(3)のように、aとbはホイール32の回転角度φに依存していることから、このままだと、ホイール回転角φを検出する角度検知センサが必要となる。しかし、Fx=Ka×a(Kaは弾性部材22のx軸方向の伸びと力Fxにより決まる定数)、My=Kθ×θ(Kθは弾性部材22のリム24の中心P2を中心とする円周方向の伸びとトルクMyにより決まる定数)という関係と、My=Fx×R0(R0:回転体の動半径)という関係があるため、回転体の動半径が既知R0であれば、
a=Fx/Ka=My/(Ka×R0)=Kθ×θ/(Ka×R0)より、aを求めることができる。
【0056】
ここで、
Xi=Di+r−R/cos(θ+α)(i=1,2,3)とおくと、次式(6)が成り立つ。
【0057】
a2+b2={4(X12−X2X3)cos2(θ+α)}/3 ・・・ (6)
式(6)より、式(7)に示すbが求められる。
【0058】
b={4(X12−X2X3)cos2(θ+α)/3−a2}1/2 ・・・ (7)
a,θ,α,X1,X2,X3を式(7)に代入して、bを算出する。
【0059】
演算に使用する動半径R0は一定値を用いても良いし、ホイールディスク20の回転速度や荷重Fzによって補正された値を用いても良い。
【0060】
変位−荷重変換演算手段4は、車輪WFL,WFR,WRL,WRRについての変位量a,b、相対回転角度θ、及び次式(8),(9),(10)より、車輪WFL,WFR,WRL,WRRについてのFx,Fz,Myを算出する。
【0061】
Fx=Ka×a ・・・ (8)
Fz=Kb×b ・・・ (9)
My=Kθ×θ ・・・ (10)
但し、Kbは弾性部材22のz軸方向の弾性力に基づく値である。
【0062】
以上説明したように、本実施形態によれば、ホイール32とリム24間の距離D1,D2,D3を120°間隔、3箇所で測定することにより、ホイールディスク20の中心P1からのリム24の中心P2のずれa,b及びリム24のホイールディスク20に対する相対回転角θを算出することができ、Fx,Fy,Myを求めることができる。
【0063】
また、aとθと間には、回転体の動半径R0を介して相関があるため、ホイールディスク20の回転角φを検出しなくても、力Fx,Fzを算出することができる。尚、力Fxの推定精度を向上させるために、ホイールディスク20の回転角φを検出するホイール回転角度検知センサを設けて、回転角φを式(1),(2),(3)に代入して、a,bを算出することにより、力Fx,Fzを算出しても良い。
【0064】
第2実施形態
図12は本発明の第2実施形態による荷重算出装置90を含むブロック図であり、図1中の構成要素と実質的に同一の構成要素には同一の符号を付している。図13は、図12中の変位検出装置100#FL,100#FR,100#RL,100#RRのブロック図であり、図2中の構成要素と実質的に同一の符号を付している。変位検出手段110#1,100#2,100#3は変位センサ120#1,120#2,120#3及び被測定部(被測定部材)122#1,122#2,122#3から構成される。
【0065】
図14は負荷がかかった状態でのホイールを示す図である。図14に示すように、3個の変位センサ120#1,120#2,120#3は、ホイールディスク20の中心P1から距離r離間した周上に配置されている点は第1実施形態の変位センサ26#1,26#2,26#3と同様であるが、それぞれ90°ずれて配置されている点が第1実施形態の変位センサ26#1,26#2,26#3と異なる。変位センサ120#1,120#2,120#3は、距離測定方向が中心P1から被測定面122a#1,122a#2,122a#3への法線に対してαずれている点は第1実施形態と同様である。
【0066】
図12中の変位−荷重変換演算手段102は、以下のようにして、変位検出装置100#FL,100#FR,100#RL,100#RRからのそれぞれの距離D1,D2,D3からFx,Fz,Myを推定する。
【0067】
上述したと同様に、次式(11),(12),(13)が成り立つ。
【0068】
D1=R/cos(θ+α)−r+{(acosφ+bsinφ)+(bcosφ−asinφ)tan(θ+α)} ・・・ (11)
D2=R/cos(θ+α)−r+{(acos(φ+π/2)+bsin(φ+π/2))+(bcos(φ+π/2)−asin(φ+π/2))tan(θ+α)}
・・・ (12)
D3=R/cos(θ+α)−r+{(acos(φ+π)+bsin(φ+π))+(bcos(φ+π)−asin(φ+π))tan(θ+α)}
・・・ (13)
cosφ+cos(φ+π)=0,sinφ+sin(φ+π)=0,式(11),(13)より、式(14)が成り立つ。
【0069】
D1+D3=2R/cos(θ+α)−2r ・・・ (14)
式(14)より、式(15)が成り立つ。
【0070】
cos(θ+α)=2R/{2r+(D1+D3)} ・・・ (15)
ここで、Xi=Di+r−R/cos(θ+α)(i=1,2)とおくと、式(16)が成り立つ。
【0071】
a2+b2=(X12+X22)cos2(θ+α) ・・・ (16)
式(16)より式(17)に示すbが求められる。
【0072】
b={(X12+X22)cos2(θ+α)−a2}1/2 ・・・ (17)
第1実施形態と同様に、式(15)より算出される相対回転角θ、回転体の動半径R0、Ka、Kθより、aを算出する。a,θ,α,X1,X2を式(17)に代入して、bを算出する。
【0073】
以上説明した本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果がある。
【0074】
第3実施形態
図15は本発明の第3実施形態による荷重算出装置128を含むブロック図であり、図1中の構成要素と実質的に同一の構成要素には同一の符号を付している。図16は、図15中の変位検出装置130#FL,130#FR,130#RL,130#RRのブロック図であり、図2中の構成要素と実質的に同一の符号を付している。変位検出手段140#1,140#2,140#3,140#4は変位センサ150#1,150#2,150#3,150#4及び被測定部(被測定部材)152#1,152#2,152#3,152#4から構成される。
【0075】
図17は負荷がかかった状態でのホイールを示す図である。図17に示すように、4個の変位センサ150#1,150#2,150#3,150#4は、ホイールディスク20の中心P1から距離r離間した周上に配置されており、それぞれ90°ずれて配置されている。変位センサ150#1,150#2,150#3,150#4は、距離測定方向が中心P1から被測定面152a#1,152a#2,152a#3,152a#4への法線に対してαずれている点は第1実施形態と同様である。
【0076】
図15中の変位−荷重変換演算手段132は、以下のようにして、変位検出装置130#FL,130#FR,130#RL,130#RRからのそれぞれの距離D1,D2,D3,D4からFx,Fz,Myを推定する。
【0077】
上述したと同様に、次式(18),(19),(20),(21)が成り立つ。
【0078】
D1=R/cos(θ+α)−r+{(acosφ+bsinφ)+(bcosφ−asinφ)tan(θ+α)} ・・・ (18)
D2=R/cos(θ+α)−r+{(acos(φ+π/2)+bsin(φ+π/2))+(bcos(φ+π/2)−asin(φ+π/2))tan(θ+α)}
・・・ (19)
D3=R/cos(θ+α)−r+{(acos(φ+π)+bsin(φ+π))+(bcos(φ+π)−asin(φ+π))tan(θ+α)}
・・・ (20)
D4=R/cos(θ+α)−r+{(acos(φ+3π/2)+bsin(φ+3π/2))+(bcos(φ+3π/2)−asin(φ+3π/2))tan(θ+α)}
・・・ (21)
cosφ+cos(φ+π)=0,sinφ+sin(φ+π)=0,cos(φ+π/2)+cos(φ+3π/2)=0,sin(φ+π/2)+sin(φ+3π/2π)=0より、式(18),(19),(20),(21)を加算すると、式(22)が成り立つ。
【0079】
D1+D2+D3+D4=4R/cos(θ+α)−4r ・・・ (22)
式(22)より、式(23)が成り立つ。
【0080】
cos(θ+α)=4R/{4r+(D1+D2+D3+D4)} ・・・ (23)
ここで、Xi=Di+r−R/cos(θ+α)(i=1,2,3,4)とおくと、式(24)が成り立つ。
【0081】
a2+b2=−(X1X3+X2X4)cos2(θ+α) ・・・ (24)
式(24)より式(25)に示すbが求められる。
【0082】
b={−(X1X3+X2X4)cos2(θ+α)−a2}1/2 ・・・ (25)
a,θ,α,X1,X2,X3,X4を式(25)に代入して、bを算出する。
【0083】
第1実施形態と同様に、式(23)より算出される相対回転角θ、回転体の動半径R0、Ka、Kθより、aを算出する。そして、aを式(25)に代入して、bを算出する。
【0084】
以上説明した本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果がある上に、変位センサの数を増やすことによって、センサの個体差などになるばらつきの影響を減らすことができるため、荷重Fx,Fz及びトルクMyの推定精度を上げることができる。
【0085】
第4実施形態
図18は本発明の第4実施形態による荷重算出装置158を含むブロック図であり、図1中の構成要素と実質的に同一の構成要素には同一の符号を付している。図19は、図19中の変位検出装置160#FL,160#FR,160#RL,160#RRのブロック図であり、図2中の構成要素と実質的に同一の符号を付している。変位検出手段162#1,162#2は変位センサ170#1,170#2及び被測定部(被測定部材)172#1,172#2から構成される。
【0086】
図20は無負荷状態におけるホイールを示す図である。図21は負荷がかかった状態におけるホイールを示す図である。図20及び図21に示すように、変位センサ170#1,170#2は、ホイールディスク20の中心P1から距離rだけ離間した周上に配置されており、それぞれ180°ずれて配置されている。変位センサ170#1,170#2は、距離測定方向が中心P1から被測定面172a#1,172a#2への法線に対してαずれている点は第1実施形態と同様である。
【0087】
図18中の変位−荷重変換演算手段162は、以下のようにして、変位検出装置160#FL,160#FR,160#RL,160#RRからのそれぞれの距離D1,D2からトルクMy及び力Fxを推定する。
【0088】
上述したと同様に、次式(26),(27)が成り立つ。
【0089】
D1=R/cos(θ+α)−r+{(acosφ+bsinφ)+(bcosφ−asinφ)tan(θ+α)} ・・・ (26)
D2=R/cos(θ+α)−r+{(acos(φ+π)+bsin(φ+π))+(bcos(φ+π)−asin(φ+π))tan(θ+α)}
・・・ (27)
cosφ+cos(φ+π)=0,sinφ+sin(φ+π)=0より、式(26),(27)を加算すると、式(28)が成り立つ。
【0090】
D1+D2=2R/cos(θ+α)−2r ・・・ (28)
式(28)より、式(29)が成り立つ。
【0091】
cos(θ+α)=2R/{2r+(D1+D2)} ・・・ (29)
θはホイールディスク20の回転角度φに依存しないため、D1,D2により、θを求める。θからMyを算出する。そして、第1実施形態と同様に、θ、回転体の動半径R0、Ka、Kθより、aを算出し、aよりFxを算出する。
【0092】
以上説明した本実施形態によれば、変位センサを180°間隔でホイールディスク20の中心P1から半径r上に二つ設置すれば、My及びFxを求めることができる。
【0093】
図22乃至24は変位センサの配置条件を説明するための図である。Myを推定するには、図22のように、2つの変位センサ180#1,180#2をホイールディスクの中心P1から半径r上に180°間隔で配置し、式(26)〜式(29)に基づいて、θを推定し、Myを推定する。
【0094】
Fx,Fz,My全てを推定するには、最低3つのセンサを必要とし、図23(a),(b)のように、全ての変位センサ182#1,182#2,182#3、変位センサ184#1,184#2,184#3,184#4をP1から半径r上に等間隔に配置し、変位センサ182#1,182#2,182#3、変位センサ184#1,184#2,184#3,184#4の出力の和より、相対回転量θを推定し、Myを推定する。MyよりFxを推定し、aを推定する。そして、a,θ及び式(7),式(17),式(25)または、類似の式によりbを推定する。
【0095】
あるいは、図24(a),(b)のように、二つの変位センサ186#1,186#3,変位センサ188#1,188#3をP1から半径r上に180°間隔で配置して、第4実施形態と同様にして、相対回転量θを推定し、Myを推定する。MyよりFxを推定し、aを推定する。
【0096】
図24(a)のように、変位センサ186#2をP1から半径r上の任意の場所、例えば、変位センサ186#1からξ(任意の角度)に配置すると、式(30),(31),(32)が成り立つ。
【0097】
D1=R/cos(θ+α)−r+{(acosφ+bsinφ)+(bcosφ−asinφ)tan(θ+α)} ・・・ (30)
D2=R/cos(θ+α)−r+{(acos(φ+ξ)+bsin(φ+ξ))+(bcos(φ+ξ)−asin(φ+ξ))tan(θ+α)}
・・・ (31)
D3=R/cos(θ+α)−r+{(acos(φ+π)+bsin(φ+π))+(bcos(φ+π)−asin(φ+π))tan(θ+α)} ・・・ (32)
D1とD3は180°間隔で配置された変位センサ186#1,186#3により検出される距離、D2は変位センサ186#2により検出される距離である。ここで、D1+D3からθ及びaを求めることができる。更にXi=Di+r−R/cos(θ+α)とおくと、次式(33)が成り立つことから、bが求められる。
【0098】
a2+b2=(X12−2X1X2cosξ+X22)cos2(θ+α)/sin2ξ
・・・ (33)
変位センサが4つ以上ある場合、任意の二つの変位センサ(但し、180°間隔で配置されている二つを両方選択することはできない。式(33)中のsin2ξ=0となるからである。また、この時のξは選択した二つのセンサ間の角度である。)を用いて、式(33)よりa2+b2を算出し、全組み合わせの平均を出すなどすれば、変位センサのばらつき等による誤差を抑えて荷重を推定することが可能となる。但し、sinξ≒0にならない条件であることが望ましい。
【0099】
例えば、図24(b)に示すように、180°間隔で配置された変位センサ188#1,188#3に加えて、変位センサ188#2,188#4がある場合は、式(33)に従って、変位センサ188#1,188#2により検出された距離D1,D2、変位センサ188#1,188#4により検出された距離D1,D4、変位センサ188#2,188#3により検出された距離D2,D3、変位センサ188#2,188#4により検出された距離D2,D4及び変位センサ188#3,188#4により検出された距離D3,D4によりそれぞれa2+b2を出し、全組み合わせの平均を出すなどすれば、変位センサのばらつき等による誤差を抑えて荷重を推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の第1実施形態による荷重算出装置のブロック図である。
【図2】図1中の変位検出装置のブロック図である。
【図3】車輪の側面図である。
【図4】図3中のA−A線断面図である。
【図5】無負荷状態におけるホイールを示す図である。
【図6】αずらす理由を示す図である。
【図7】被測定面のバリエーションを示す図である。
【図8】変位−荷重変換演算手段の動作説明図である。
【図9】変位−荷重変換演算手段の動作説明図である。
【図10】変位−荷重変換演算手段の動作説明図である。
【図11】変位−荷重変換演算手段の動作説明図である。
【図12】本発明の第2実施形態による荷重算出装置のブロック図である。
【図13】図12中の変位検出装置のブロック図である。
【図14】負荷状態におけるホイールを示す図である。
【図15】本発明の第3実施形態による荷重算出装置のブロック図である。
【図16】図15中の変位検出装置のブロック図である。
【図17】負荷状態におけるホイールを示す図である。
【図18】本発明の第4実施形態による荷重算出装置のブロック図である。
【図19】図18中の変位検出装置のブロック図である。
【図20】無負荷状態におけるホイールを示す図である。
【図21】負荷状態におけるホイールを示す図である。
【図22】変位センサの配置条件を説明するための図である。
【図23】変位センサの配置条件を説明するための図である。
【図24】変位センサの配置条件を説明するための図である。
【符号の説明】
【0101】
2#FL,2#FR,2#RL,2#RR 変位検出装置
4 変位−荷重変換演算手段
20 ホイールディスク
22 弾性部材
24 リム
26#1,26#2,26#3 変位センサ
28#1,28#2,28#3 被測定部(被測定部材)
28a#1,28a#2,28a#3 被測定面
30 タイヤ
34 車軸ハブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、外側回転体の内側回転体に対する相対回転角又は相対変位量を算出する回転角度算出装置又は変位量算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車輪に用いられるホイールなどの回転体では、その回転体に働く力、例えば、路面の摩擦力による路面に平行なx軸方向の力,車両の荷重による路面からの垂直反力による鉛直方向(z軸方向)の力、x及びz軸に垂直なy軸回りのトルクMy等に基づいて、車両のアンチロックブレーキシステム(ABS)やトラクションコントロールシステム(TCS)などの車両の旋回挙動を安定化させるビークルスタビリティアシストシステム(VSA)などにおいて、車両の制動制御が行われている。
【0003】
回転体のx,y,z軸方向に加わる力Fx,Fy,Fz及びこれらの軸回りに働くトルクMx,My,Mzの推定に係る先行技術としては、以下の特許文献があった。
【0004】
特許文献1には、リムとホイールディスクの境界部分に接線方向変位センサと垂直方向変位センサをそれぞれ周上に点対称に4箇所設け、4個の接線方向変位センサの出力に基づいて、リムのホイールディスクに対する接線方向の相対変位量αを算出し、4個の垂直方向変位センサの出力に基づいて、リムの軸心のホイールディスクの軸心に対する垂直方向の偏心量Dを算出することが記載されている。
【0005】
特許文献2には、ホイールのリム取り付け枠とハブ取り付け枠との間で十文状に配置された4本のT字型アームのそれぞれを構成する第1及び第2受感ビームのそれぞれに設けられた8個の歪みゲージの出力に基づいて、力Fx,Fy,Fz及びこれらの軸回りに働くトルクMx,My,Mzを推定することが記載されている。
【特許文献1】WO2003/008246号公報
【特許文献2】特開2005−249772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、8個のセンサを用いて、リムのディスクに対する接線方向の相対変位量α及び垂直方向Dの偏心量を算出し、これらから、力の接線方向成分及び垂直方向成分を推定していることから、多くのセンサにコストがかかるという問題点があった。また、特許文献1では、リムの軸心がディスクの中心に対してz軸方向に変位するがx軸方向には変位しないことを前提として、リムのディスクに対する接線方向の相対変位量α及び垂直方向Dの偏心量を算出しているが、リムとディスクとの境界に設けられた弾性体がx軸方向に変位すると、誤差が生じるという問題点がある。更に、リムとディスクの狭い境界部分に接線方向変位センサと垂直方向変位センサを設けていることから、変位量の検出精度に問題がある。
【0007】
特許文献2では、少なくとも3本のT字型アームのそれぞれを構成する第1及び第2受感ビームのそれぞれに設けられた8個の歪みゲージ、合計、少なくとも48(3×8×2)個の出力に基づいて、力Fx,Fy,Fz及びこれらの軸回りに働くトルクMx,My,Mzを推定することから、多くのセンサにコストがかかるという問題点があった。更に、Fz,Mz以外のFx,Fy及びMx,Mzについては、角度検出部が検出したホイールの回転角に基づいて補正する必要があり、処理が複雑になるという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、回転補正が不要、且つより少ないセンサで内側回転体の外側回転体に対する相対回転角を算出し、相対回転角に基づき、力Fx,Fy,Myを推定する回転角度算出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、無負荷で内側回転軸と外側回転軸が同心に配置され、少なくとも前記内側回転軸に直交する面内で相対変位可能に負荷に応じて変形する弾性部材によって連結された内側回転体及び外側回転体を有する回転体と、前記内側回転体及び前記外側回転体のいずれか一方の回転軸から等距離にある周方向の複数の異なる箇所に設けられ、他方の前記内側回転体又は前記外側回転体と一体的に回転し、前記周方向と直交する方向に対向する前記他方の回転軸から等しい距離に設けられた被測定部材の被測定部位までの前記直交する方向の距離を検出する複数の変位センサと、前記複数の変位センサにより検出された複数の前記距離に基づいて、前記内側回転体と前記外側回転体との間の相対回転角を算出する演算手段とを具備したことを特徴とする回転角度算出装置が提供される。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、無負荷で内側回転軸と外側回転軸が同心に配置され、少なくとも前記内側回転軸に直交する面内で相対変位可能に負荷に応じて変形する弾性部材によって連結された内側回転体及び外側回転体を有する回転体と、前記内側回転体及び前記外側回転体のいずれか一方の回転軸から等距離にある周方向の3個以上の異なる箇所に設けられ、他方の前記内側回転体又は前記外側回転体と一体的に回転し、前記周方向と直交する方向に対向する前記他方の回転軸から等しい距離に設けられた被測定部材の被測定部位までの前記直交する方向の距離を検出する3個以上の変位センサと、前記3個以上の変位センサにより検出された前記距離に基づいて、前記内側回転体と前記外側回転体間の相対変位量を算出する演算手段とを具備したことを特徴とする変位量算出装置が提供される。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明において、前記被測定部位を構成する前記被測定部材の表面は単一平面であり、無負荷での前記各変位センサの前記距離の測定方向は、前記変位センサが設けられた前記内側回転体又は前記外側回転体の回転軸に直交する前記変位センサを含む面におけるその回転体の回転中心点から前記平面への法線方向に対して所定角α(α>0)だけ所定方向にずれていることを特徴とする回転角度算出装置又は変位量算出装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によると、回転体がトルクを受けたときに、該トルクが外側回転体を介して弾性部材に伝達され、弾性部材がトルクに応じて変形し、外側回転体が内側回転体に対して相対回転する。内側回転体及び外側回転体のいずれか一方の回転軸から等距離にある周方向の複数の異なる箇所に、他方の内側回転体又は外側回転体と一体的に回転し、周方向と直交する方向に対向する他方の回転軸から等しい距離に設けられた被測定部材の被測定部位までの距離を検出する複数の変位センサを設けたので、演算手段は、複数の変位センサにより検出された被測定部材までの複数の距離の全ての和又は一部の和と相対回転角との関係式から、相対回転角を算出する。例えば、180°ずれた位置に配置された2個の変位センサの出力に基づいて相対回転角を算出することができる。その結果、少ない変位センサにより相対回転角度を算出することができる。
【0013】
請求項2記載の発明によると、内側回転体及び外側回転体のいずれか一方の回転軸から等距離にある周方向の3個以上の異なる箇所に、他方の内側回転体又は外側回転体と一体的に回転し、周方向と直交する方向に対向する他方の回転軸から等しい距離に設けられた被測定部材の被測定部位までの距離を検出する3個以上の変位センサを設けたので、演算手段は、複数の変位センサにより検出された被測定部材までの3個以上の距離の全ての和又は一部の和と相対回転角との関係式から、相対回転角を算出する。その結果、少ない変位センサにより相対変位量を算出することができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、被測定部位を構成する被測定部材の表面を単一平面とし、無負荷での各変位センサの距離の測定方向は、変位センサが設けられた内側回転体又は外側回転体の回転軸に直交する変位センサを含む面におけるその回転体の回転中心点から平面への法線方向に対して所定角α(α>0)だけ所定方向にずれているので、外側回転体が内側回転体に対して相対回転したときの距離と回転前の距離の差分である変位量を大きくすることができ、相対回転角又は相対変位量の推定の精度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態による荷重算出装置1を含むブロック図である。図1に示すように、荷重算出装置1は、変位検出装置2#FL,2#FR,2#RL,2#RR及び変位−荷重変換演算手段4を含む。変位検出装置2#FLは、左前輪について変位を検出する。変位検出装置2#FRは、右前輪について変位を検出する。変位検出装置2#RLは、左後輪について変位を検出する。変位検出装置2#RRは、右後輪について変位を検出する。尚、変位検出手段2は、左前輪、右前輪、左後輪、右後輪の少なくとも1つの車輪について設けられていれば良い。
【0016】
図2は、図1中の変位検出装置2#FL,2#FR,2#RL,2#RRのブロック図である。変位検出装置2#FL,2#FR,2#RL,2#RRは、実質的に同一であることから、変位検出装置を符号2で表わしている。図2に示すように、変位検出装置2は、変位検出手段10#1,10#2,10#3、フィルタ12#1,12#2,12#3及びデータ送信部14を有する。
【0017】
図3は車輪側面図である。図4はホイール32を車軸ハブ34に取り付けた状態における図3のA−A線断面図である。図3及び図4に示すように、ホイール32は、ホイールディスク20、弾性部材22、リム24、並びに変位検出装置10#1,10#2,10#3を構成する変位センサ26#1,26#2,26#3及び被測定部(被測定部材)28#1,28#2,28#3を有する。
【0018】
ホイールディスク(内側回転体)20は、ホイール32の中心に配置され、車軸ハブ34、ブレーキディスク40及びホイールディスク20のそれぞれに設けられた貫通穴にスタッドボルト38を貫通し、ホイールナット36で締結することより、ホイールディスク20及びブレーキディスク40が車軸42と一体回転する車軸ハブ34に取り付けられる。
【0019】
ホイールディスク20は、車軸ハブ34の中心軸を回転軸(内側回転軸)として回転可能であるが、車軸ハブ34に固定されていることから、路面に平行なx軸、車軸42の回転軸(y軸)、x軸及びy軸に垂直なz軸方向への移動が規制されている。ホイールディスク20は、例えば、アルミニウム合金を素材とする鋳造成形品である。
【0020】
リム(外側回転体)24は、ホイールディスク20の外周側に配置され、タイヤ30が装着されて、該タイヤ30を支承するものであり、無負荷状態では、その回転軸(外側回転軸)がホイールディスク20の回転軸と同心にある。その形状はリング状である。リム24は、例えば、アルミニウム合金を素材とする鋳造成形品である。
【0021】
弾性部材22は、ホイールディスク20とリム24との間に配置され、ホイールディスク20とリム24とを連結し、タイヤ30よりリム24を通して伝達される、y軸に垂直な平面において、x軸,z軸方向の力のFx,Fz及びトルクMyの大きさ及び力の方向に応じて変形をするものである。
【0022】
力Fxは、ブレーキ力などに起因する路面からのタイヤ30への摩擦力により、タイヤ30からリム24を通して弾性部材22に伝達される。力(荷重)Fzは、車体からの荷重による路面からタイヤ30及びリム24を通して弾性部材22に伝達される。トルクMyは力Fxによりタイヤ30及びリム24を通してリム24の中心P2回りのモーメントが弾性部材22に伝達される。
【0023】
即ち、弾性部材22は、x軸,z軸方向の力Fx,Fzに応じてx軸方向,y軸方向に伸長,収縮し、また、y軸回りのトルクMyにより、リム24の回転とともに、弾性部材22の各点とリム24の回転中心とを結ぶ直線に直角方向(接線方向)に伸長するものであり、例えば、リングゴムやリング状にホイールディスク20の半径方向に重ねて形成された板ばねなどからなる。力Fx,Fzの伝達経路は、タイヤ30→リム24→弾性部材22→ホイールディスク20→スタッドボルト44→車軸ハブ34→車軸42となる。
【0024】
弾性部材22は、ホイールディスク20及びリム24に、弾性ゴムの場合は加硫接着等により、板ばねの場合は溶接等により固定されている。力Fx,Fz及びトルクMyに応じてホイールディスク20に対して相対変位することにより、その相対変位量により、力Fx,Fz及びトルクMyを推定するためである。形状は、リング形状である。尚、弾性部材22は、ホイールディスク20及びリム24を両者が接触しない程度の弾性を有しつつ両者を連結していればよく、その具体的形状は任意に定めてよい。
【0025】
リム24は、弾性部材22がx軸、z軸及びリム24の中心P2を中心とする円の円周方向に変位することにより、ホイールディスク20に対してx軸,z軸方向に相対移動するとともに、ホイールディスク20に対して相対回転する。
【0026】
変位センサ26#1,26#2,26#3は、被測定部材28#1,28#2,28#3までの距離D1,D2,D3を測定し、その距離に応じた電気信号を出力するものであり、例えば、渦電流式、静電容量式、レーザ式などの非接触式の変位センサや、リニアポテンショメータなどの接触式の変位センサである。
【0027】
図5は、車輪に負荷がかかっていない無負荷状態における車軸42に垂直方向の変位センサ26#1,26#2,26#3を含む断面図である。本実施形態では、変位センサ26#1,26#2,26#3は同一平面上にある例を示しているが、必ずしも、同一平面である必要はない。x軸はホイールディスク20の中心P1を通り、路面に平行な方向、z軸はホイールディスク20の中心P1を通り、車軸ハブ34の回転軸y軸及びx軸に直交する方向である。x軸,y軸は静止座標である。図5では、被測定部材28#1,28#2,28#3は、被測定面28a#1,28a#2,28a#3のみが記載されている。
【0028】
変位センサ26#1,26#2,26#3は、ホイールディスク20の回転軸中心から一定距離r離間し、例えば、図5に示すように、中心P1から距離r離間した周上(例えば、ホイールディスク20の外周上)のそれぞれ120°ずれた位置に、距離測定方向がホイールディスク20の中心P1からリム24側に向かう方向となるように配置されている。尚、変位センサ26#1,26#2,26#3は、リム24の回転軸から一定距離R離間。例えば、中心P2から距離Rの周上(例えば、リム24の内周上)に、距離測定方向が無負荷状態で回転軸、例えば、中心P1を向かう方向に配置しても良い。
【0029】
被測定部材28#1,28#2,28#3は、リム24に取り付けられ、変位センサ26#1,26#2,26#3の測定方向の対向面が被測定面28a#1,28a#2,28a#3となるように配置されており、リム24と一体的に変位する。被測定部材28#1,28#2,28#3の材質は、変位センサ26#1,26#2,26#3が距離D1,D2,D3を検出できるものであれば良い。
【0030】
被測定部材28#1,28#2,28#3には、リム24やホイールディスク20の一部を加工して形成したものも含まれる。形状は、被測定面28a#1,28a#2,28a#3が後述するものであれば、それ以外については、問わない。例えば、取り付けや製作が容易であることの観点から、図3に示すように、直方体を斜めに2分割し、その斜面を被測定面28a#1,28a#2,28a#3としても良い。
【0031】
被測定面28a#1,28a#2,28a#3は、例えば、単一平面である。被測定部材28#1,28#2,28#3は、図5に示すように、ホイールディスク20の中心P1と変位センサ26#1,26#2,26#3により測定される被測定面28a#1,28a#2,28a#3上の測定点とを結ぶ各直線L1,L2,L3がホイールディスク20の中心P1から被測定面28a#1,28a#2,28a#3への垂線の足Q1,Q2,Q3への垂線L1’,L2’,L3’に対して所定角度α(α>0)だけ一定方向にずれている。
【0032】
尚、変位センサ26#1,26#2,26#3をリム24に設ける場合は、被測定部材28#1,28#2,28#3をホイールディスク20の回転軸中心から距離r離間し、距離測定方向がリム24の回転軸方向となるように配置する。また、被測定面28a#1,28a#2,28a#3は、変位センサ26#1,26#2,26#3の距離測定方向が中心P2から被測定面28a#1,28a#2,28a#3への法線に対して所定角度α(α>0)だけ一定方向にずれるように配置する。
【0033】
図6は、所定角度α(α>0)ずらす理由を示す図である。リム24がx軸,z軸方向に移動せずに、θだけ回転した場合を示しており、リム24の中心P2とホイールディスク20の中心P1は一致する。α=0となるように変位センサ26’を配置した場合、リム24が回転角θ回転すると、回転前の被測定面28a0の距離D0’、回転後の被測定面28a1の距離D’とすると、回転による変位量ΔD’=(D’−D0’)となる。
【0034】
一方、α>0となるように、変位センサ26を配置した場合、リム24が回転角θ回転すると、回転前の被測定面28a0の距離D0、回転後の被測定面28a1の距離Dとすると、回転による変位量ΔD=(D−D0)となる。図6により、ΔD’<ΔDとなる。
【0035】
従って、α>0の方がα=0の場合に比べて、リム24の回転角を、大きな変位量で計測することができ、計測の精度が向上する。更に、変位センサ26から変位センサ26’の方向の回転を正とすると、0>θ>−αでは、ΔDが負、θ>0では、ΔDが正となることから、θ>−αのとき、回転の方向を判別することができる。尚、リム24がホイールディスク20に対してθ回転するとともに、リム24がx軸,z軸方向に移動した場合も上記と同様である。
【0036】
図7は被測定面28a#1,28a#2,28a#3のバリエーションを示す図である。図6では、被測定面28a#1,28a#2,28a#3が単一平面の場合を示しているが、図7(a)に示すように、被測定面28aがV字型に傾斜面を有する形状とし、回転角θ=0のときに、変位センサ26を傾斜溝底部Bが測定方向となるように配置しても良い。これにより、被測定面28aが回転したときに、変位量が大きくなるようにできる。また、図7(b)に示すように、階段状としてもよい。このとき、ステップ幅Wを短くして、被測定面28aが回転したとき、変位センサ26が別の段に対向するように被測定面28aを形成することにより、変位量が大きくなるようにできる。
【0037】
図2中のフィルタ12#1,12#2,12#3は、変位検出手段10#1,10#2,10#3の各変位センサ26#1,26#2,26#3から出力される距離D1,D2,D3を示す電気信号から高周波成分を削除し、ノイズをカットする。データ送信部14は、フィルタ12#1,12#2,12#3から出力される電気信号を無線などにより変位−荷重変換演算手段4に送信する。
【0038】
図1中の変位−荷重変換演算手段4は、各変位検出装置2#FL,2#FR,2#RL,2#RRより送信された距離D1,D2,D3から後で詳述するように、リム24のホイールディスク20に対する相対回転角θを算出(演算手段)し、相対回転角θから力Fx,Fz,トルクMyを算出して、VSAシステム6に出力する。変位−荷重変換演算手段4は、例えば、CPUやメモリなどを有するECU(エレクトリック コントロール ユニット)上を動作するプログラムにより構成する。
【0039】
VSAシステム6は、変位−荷重変換演算手段4より出力された車輪WFL,WFR,WRL,WRRについての、力Fx,Fz及びトルクMy、並びに図示しない横加速度センサ、前後加速度センサ、ヨーレートセンサ及びピッチレートセンサなどの出力に基づいて、ABS制御及びTCS制御などのVSA制御を行う。
【0040】
図8乃至図11は変位−荷重変換演算手段4の動作説明図であり、ホイール32が車軸ハブ34に取り付けられて、矢印Aの方向に回転しながら路面を運動している状態を示している。図8乃至図11中のx軸,z軸は図5と同様である。ここでは、例えば、運転者がブレーキペダルを踏み込むことにより、路面からタイヤ30を通してリム24に力Fxが加えられたものとする。
【0041】
ブレーキペダルが踏み込まれると、ブレーキペダルからの液圧に基づき車軸ハブ34と一体回転するブレーキディスク40にブレーキ力が作用し、タイヤ30と路面との間の摩擦力により、タイヤ30を通してリム24に力Fxが加えられる。力Fxがリム24から弾性部材22に伝達されて、弾性部材22がx軸方向に伸縮する。その結果、リム24の中心P2はx軸方向に変位量aだけホイールディスク20の中心P1に対して変位するともに、力Fxにより回転体としてのリム24に作用するトルクMyにより、リム24が回転角θだけホイールディスク20に対して相対回転する。
【0042】
一方、車両からの荷重よる路面からのタイヤ30への垂直反力Fzにより、リム24がz軸方向に力Fzを受け、弾性部材22がz軸方向に伸縮し、リム24がz軸方向に変位量bだけ変位する。これにより、リム24の中心P2の座標は(a,b)となる。
【0043】
変位センサ26#1,26#2,26#3は、点P1を中心として、ホイールディスク20と一体回転することから、観測時点において、変位センサ26#1は、x軸からφ反時計回りに回転しているものとする。x軸,z軸を(a,b)平行移動した軸をx’軸,z’軸とする。リム24の中心P2(a,b)から被測定面28a#1への被測定面28a#1に対する垂線の足をQ1とする。
【0044】
点P2と点Q1の距離はRである。点P2を中心に点P2と点Q1を結ぶ直線(以下、直線P2Q1)を角度α回転した直線と被測定面28a#1との交点をS1、点P2を中心に直線P2Q1を角度(θ+α)回転した直線と被測定面28a#1との交点をT1とする。また、変位センサ26#1による被測定面28a#1の観測点をU1とする。変位センサ26#1の距離測定方向は、ホイールディスク20の中心P1からの被測定面28aへの法線に対して、αずれて配置されていること、リム24がホイールディスク20に対してθだけ相対回転していることから、直線P2T1は、直線P1U1と平行になる。
【0045】
図10中のB部拡大図である図11に示すように、点P2から直線P1U1への垂線の足をV1とする。直線T1U1を点T1が点P2に一致するように平行移動した直線と直線P1U1との交点をW1とする。点P2と点V1の距離は、(bcosφ−asinφ)となる。角W1P2V1が(θ+α)、P2とV1の距離が(bcosφ−asinφ)であることから、V1とW1の距離は((bcosφ−asinφ)tan(θ+α))となる。
【0046】
座標(a,0)からの直線P1V1への垂線の足と点P1の距離が(acosφ)であり、座標(a,0)から直線P2V1の距離が(bsinφ)であることから、P1とV1の距離は(acosφ+bsinφ)となる。
【0047】
P1とW1の距離は、(P1とV1の距離)+(V1とW1の距離)であることから、(acosφ+bsinφ+(bcosφ−asinφ)tan(θ+α))となる。
【0048】
一方、点P2から被測定面28a#1までの距離はRであること、角度T1P2Q1は(θ+α)であることから、P2とT1の距離はR/cos(θ+α)となる。四角形P2W1U1T1は平行四辺形であることから、W1とU1の距離=P2とT1の距離=R/cos(θ+α)となる。
【0049】
P1とU1の距離=P1とW1の距離+W1とU1の距離=(acosφ+bsinφ)+(bcosφ−asinφ)tan(θ+α)+R/cos(θ+α)となる。一方、変位センサ26#1の観測点は点P1から半径rの位置に取り付けられていることから、P1とU1の距離=D1+rとなる。
【0050】
よって、次式(1)が成り立つ。
【0051】
D1=R/cos(θ+α)−r+(acosφ+bsinφ)+(bcosφ−asinφ)tan(θ+α) ・・・ (1)
D2,D3については、式(1)において、それぞれφに(φ+2π/3),(φ+4π/3)を代入すればよいことから、式(2),(3)が成り立つ。
【0052】
D2=R/cos(θ+α)−r+{(acos(φ+2π/3)+bsin(φ+2π/3))+(bcos(φ+2π/3)−asin(φ+2π/3))tan(θ+α)}
・・・ (2)
D3=R/cos(θ+α)−r+{(acos(φ+4π/3)+bsin(φ+4π/3))+(bcos(φ+4π/3)−asin(φ+4π/3))tan(θ+α)}
・・・ (3)
式(1),(2),(3)を加えると、sinφ+sin(2π/3)+sin(4π/3)=0,cosφ+cos(2π/3)+cos(4π/3)=0であることから、式(4)が成り立つ。
【0053】
D1+D2+D3=3{R/cos(θ+α)−r} ・・・ (4)
式(4)から式(5)が成り立つ。
【0054】
cos(θ+α)=3R/{3r+(D1+D2+D3)} ・・・ (5)
ここで、α,R,rは既知であることから、式(5)より、α,R,r及び測定値D1,D2,D3より、ホイール32の回転角φに依存することなく回転角θを算出できる。
【0055】
式(1),(2),(3)のように、aとbはホイール32の回転角度φに依存していることから、このままだと、ホイール回転角φを検出する角度検知センサが必要となる。しかし、Fx=Ka×a(Kaは弾性部材22のx軸方向の伸びと力Fxにより決まる定数)、My=Kθ×θ(Kθは弾性部材22のリム24の中心P2を中心とする円周方向の伸びとトルクMyにより決まる定数)という関係と、My=Fx×R0(R0:回転体の動半径)という関係があるため、回転体の動半径が既知R0であれば、
a=Fx/Ka=My/(Ka×R0)=Kθ×θ/(Ka×R0)より、aを求めることができる。
【0056】
ここで、
Xi=Di+r−R/cos(θ+α)(i=1,2,3)とおくと、次式(6)が成り立つ。
【0057】
a2+b2={4(X12−X2X3)cos2(θ+α)}/3 ・・・ (6)
式(6)より、式(7)に示すbが求められる。
【0058】
b={4(X12−X2X3)cos2(θ+α)/3−a2}1/2 ・・・ (7)
a,θ,α,X1,X2,X3を式(7)に代入して、bを算出する。
【0059】
演算に使用する動半径R0は一定値を用いても良いし、ホイールディスク20の回転速度や荷重Fzによって補正された値を用いても良い。
【0060】
変位−荷重変換演算手段4は、車輪WFL,WFR,WRL,WRRについての変位量a,b、相対回転角度θ、及び次式(8),(9),(10)より、車輪WFL,WFR,WRL,WRRについてのFx,Fz,Myを算出する。
【0061】
Fx=Ka×a ・・・ (8)
Fz=Kb×b ・・・ (9)
My=Kθ×θ ・・・ (10)
但し、Kbは弾性部材22のz軸方向の弾性力に基づく値である。
【0062】
以上説明したように、本実施形態によれば、ホイール32とリム24間の距離D1,D2,D3を120°間隔、3箇所で測定することにより、ホイールディスク20の中心P1からのリム24の中心P2のずれa,b及びリム24のホイールディスク20に対する相対回転角θを算出することができ、Fx,Fy,Myを求めることができる。
【0063】
また、aとθと間には、回転体の動半径R0を介して相関があるため、ホイールディスク20の回転角φを検出しなくても、力Fx,Fzを算出することができる。尚、力Fxの推定精度を向上させるために、ホイールディスク20の回転角φを検出するホイール回転角度検知センサを設けて、回転角φを式(1),(2),(3)に代入して、a,bを算出することにより、力Fx,Fzを算出しても良い。
【0064】
第2実施形態
図12は本発明の第2実施形態による荷重算出装置90を含むブロック図であり、図1中の構成要素と実質的に同一の構成要素には同一の符号を付している。図13は、図12中の変位検出装置100#FL,100#FR,100#RL,100#RRのブロック図であり、図2中の構成要素と実質的に同一の符号を付している。変位検出手段110#1,100#2,100#3は変位センサ120#1,120#2,120#3及び被測定部(被測定部材)122#1,122#2,122#3から構成される。
【0065】
図14は負荷がかかった状態でのホイールを示す図である。図14に示すように、3個の変位センサ120#1,120#2,120#3は、ホイールディスク20の中心P1から距離r離間した周上に配置されている点は第1実施形態の変位センサ26#1,26#2,26#3と同様であるが、それぞれ90°ずれて配置されている点が第1実施形態の変位センサ26#1,26#2,26#3と異なる。変位センサ120#1,120#2,120#3は、距離測定方向が中心P1から被測定面122a#1,122a#2,122a#3への法線に対してαずれている点は第1実施形態と同様である。
【0066】
図12中の変位−荷重変換演算手段102は、以下のようにして、変位検出装置100#FL,100#FR,100#RL,100#RRからのそれぞれの距離D1,D2,D3からFx,Fz,Myを推定する。
【0067】
上述したと同様に、次式(11),(12),(13)が成り立つ。
【0068】
D1=R/cos(θ+α)−r+{(acosφ+bsinφ)+(bcosφ−asinφ)tan(θ+α)} ・・・ (11)
D2=R/cos(θ+α)−r+{(acos(φ+π/2)+bsin(φ+π/2))+(bcos(φ+π/2)−asin(φ+π/2))tan(θ+α)}
・・・ (12)
D3=R/cos(θ+α)−r+{(acos(φ+π)+bsin(φ+π))+(bcos(φ+π)−asin(φ+π))tan(θ+α)}
・・・ (13)
cosφ+cos(φ+π)=0,sinφ+sin(φ+π)=0,式(11),(13)より、式(14)が成り立つ。
【0069】
D1+D3=2R/cos(θ+α)−2r ・・・ (14)
式(14)より、式(15)が成り立つ。
【0070】
cos(θ+α)=2R/{2r+(D1+D3)} ・・・ (15)
ここで、Xi=Di+r−R/cos(θ+α)(i=1,2)とおくと、式(16)が成り立つ。
【0071】
a2+b2=(X12+X22)cos2(θ+α) ・・・ (16)
式(16)より式(17)に示すbが求められる。
【0072】
b={(X12+X22)cos2(θ+α)−a2}1/2 ・・・ (17)
第1実施形態と同様に、式(15)より算出される相対回転角θ、回転体の動半径R0、Ka、Kθより、aを算出する。a,θ,α,X1,X2を式(17)に代入して、bを算出する。
【0073】
以上説明した本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果がある。
【0074】
第3実施形態
図15は本発明の第3実施形態による荷重算出装置128を含むブロック図であり、図1中の構成要素と実質的に同一の構成要素には同一の符号を付している。図16は、図15中の変位検出装置130#FL,130#FR,130#RL,130#RRのブロック図であり、図2中の構成要素と実質的に同一の符号を付している。変位検出手段140#1,140#2,140#3,140#4は変位センサ150#1,150#2,150#3,150#4及び被測定部(被測定部材)152#1,152#2,152#3,152#4から構成される。
【0075】
図17は負荷がかかった状態でのホイールを示す図である。図17に示すように、4個の変位センサ150#1,150#2,150#3,150#4は、ホイールディスク20の中心P1から距離r離間した周上に配置されており、それぞれ90°ずれて配置されている。変位センサ150#1,150#2,150#3,150#4は、距離測定方向が中心P1から被測定面152a#1,152a#2,152a#3,152a#4への法線に対してαずれている点は第1実施形態と同様である。
【0076】
図15中の変位−荷重変換演算手段132は、以下のようにして、変位検出装置130#FL,130#FR,130#RL,130#RRからのそれぞれの距離D1,D2,D3,D4からFx,Fz,Myを推定する。
【0077】
上述したと同様に、次式(18),(19),(20),(21)が成り立つ。
【0078】
D1=R/cos(θ+α)−r+{(acosφ+bsinφ)+(bcosφ−asinφ)tan(θ+α)} ・・・ (18)
D2=R/cos(θ+α)−r+{(acos(φ+π/2)+bsin(φ+π/2))+(bcos(φ+π/2)−asin(φ+π/2))tan(θ+α)}
・・・ (19)
D3=R/cos(θ+α)−r+{(acos(φ+π)+bsin(φ+π))+(bcos(φ+π)−asin(φ+π))tan(θ+α)}
・・・ (20)
D4=R/cos(θ+α)−r+{(acos(φ+3π/2)+bsin(φ+3π/2))+(bcos(φ+3π/2)−asin(φ+3π/2))tan(θ+α)}
・・・ (21)
cosφ+cos(φ+π)=0,sinφ+sin(φ+π)=0,cos(φ+π/2)+cos(φ+3π/2)=0,sin(φ+π/2)+sin(φ+3π/2π)=0より、式(18),(19),(20),(21)を加算すると、式(22)が成り立つ。
【0079】
D1+D2+D3+D4=4R/cos(θ+α)−4r ・・・ (22)
式(22)より、式(23)が成り立つ。
【0080】
cos(θ+α)=4R/{4r+(D1+D2+D3+D4)} ・・・ (23)
ここで、Xi=Di+r−R/cos(θ+α)(i=1,2,3,4)とおくと、式(24)が成り立つ。
【0081】
a2+b2=−(X1X3+X2X4)cos2(θ+α) ・・・ (24)
式(24)より式(25)に示すbが求められる。
【0082】
b={−(X1X3+X2X4)cos2(θ+α)−a2}1/2 ・・・ (25)
a,θ,α,X1,X2,X3,X4を式(25)に代入して、bを算出する。
【0083】
第1実施形態と同様に、式(23)より算出される相対回転角θ、回転体の動半径R0、Ka、Kθより、aを算出する。そして、aを式(25)に代入して、bを算出する。
【0084】
以上説明した本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果がある上に、変位センサの数を増やすことによって、センサの個体差などになるばらつきの影響を減らすことができるため、荷重Fx,Fz及びトルクMyの推定精度を上げることができる。
【0085】
第4実施形態
図18は本発明の第4実施形態による荷重算出装置158を含むブロック図であり、図1中の構成要素と実質的に同一の構成要素には同一の符号を付している。図19は、図19中の変位検出装置160#FL,160#FR,160#RL,160#RRのブロック図であり、図2中の構成要素と実質的に同一の符号を付している。変位検出手段162#1,162#2は変位センサ170#1,170#2及び被測定部(被測定部材)172#1,172#2から構成される。
【0086】
図20は無負荷状態におけるホイールを示す図である。図21は負荷がかかった状態におけるホイールを示す図である。図20及び図21に示すように、変位センサ170#1,170#2は、ホイールディスク20の中心P1から距離rだけ離間した周上に配置されており、それぞれ180°ずれて配置されている。変位センサ170#1,170#2は、距離測定方向が中心P1から被測定面172a#1,172a#2への法線に対してαずれている点は第1実施形態と同様である。
【0087】
図18中の変位−荷重変換演算手段162は、以下のようにして、変位検出装置160#FL,160#FR,160#RL,160#RRからのそれぞれの距離D1,D2からトルクMy及び力Fxを推定する。
【0088】
上述したと同様に、次式(26),(27)が成り立つ。
【0089】
D1=R/cos(θ+α)−r+{(acosφ+bsinφ)+(bcosφ−asinφ)tan(θ+α)} ・・・ (26)
D2=R/cos(θ+α)−r+{(acos(φ+π)+bsin(φ+π))+(bcos(φ+π)−asin(φ+π))tan(θ+α)}
・・・ (27)
cosφ+cos(φ+π)=0,sinφ+sin(φ+π)=0より、式(26),(27)を加算すると、式(28)が成り立つ。
【0090】
D1+D2=2R/cos(θ+α)−2r ・・・ (28)
式(28)より、式(29)が成り立つ。
【0091】
cos(θ+α)=2R/{2r+(D1+D2)} ・・・ (29)
θはホイールディスク20の回転角度φに依存しないため、D1,D2により、θを求める。θからMyを算出する。そして、第1実施形態と同様に、θ、回転体の動半径R0、Ka、Kθより、aを算出し、aよりFxを算出する。
【0092】
以上説明した本実施形態によれば、変位センサを180°間隔でホイールディスク20の中心P1から半径r上に二つ設置すれば、My及びFxを求めることができる。
【0093】
図22乃至24は変位センサの配置条件を説明するための図である。Myを推定するには、図22のように、2つの変位センサ180#1,180#2をホイールディスクの中心P1から半径r上に180°間隔で配置し、式(26)〜式(29)に基づいて、θを推定し、Myを推定する。
【0094】
Fx,Fz,My全てを推定するには、最低3つのセンサを必要とし、図23(a),(b)のように、全ての変位センサ182#1,182#2,182#3、変位センサ184#1,184#2,184#3,184#4をP1から半径r上に等間隔に配置し、変位センサ182#1,182#2,182#3、変位センサ184#1,184#2,184#3,184#4の出力の和より、相対回転量θを推定し、Myを推定する。MyよりFxを推定し、aを推定する。そして、a,θ及び式(7),式(17),式(25)または、類似の式によりbを推定する。
【0095】
あるいは、図24(a),(b)のように、二つの変位センサ186#1,186#3,変位センサ188#1,188#3をP1から半径r上に180°間隔で配置して、第4実施形態と同様にして、相対回転量θを推定し、Myを推定する。MyよりFxを推定し、aを推定する。
【0096】
図24(a)のように、変位センサ186#2をP1から半径r上の任意の場所、例えば、変位センサ186#1からξ(任意の角度)に配置すると、式(30),(31),(32)が成り立つ。
【0097】
D1=R/cos(θ+α)−r+{(acosφ+bsinφ)+(bcosφ−asinφ)tan(θ+α)} ・・・ (30)
D2=R/cos(θ+α)−r+{(acos(φ+ξ)+bsin(φ+ξ))+(bcos(φ+ξ)−asin(φ+ξ))tan(θ+α)}
・・・ (31)
D3=R/cos(θ+α)−r+{(acos(φ+π)+bsin(φ+π))+(bcos(φ+π)−asin(φ+π))tan(θ+α)} ・・・ (32)
D1とD3は180°間隔で配置された変位センサ186#1,186#3により検出される距離、D2は変位センサ186#2により検出される距離である。ここで、D1+D3からθ及びaを求めることができる。更にXi=Di+r−R/cos(θ+α)とおくと、次式(33)が成り立つことから、bが求められる。
【0098】
a2+b2=(X12−2X1X2cosξ+X22)cos2(θ+α)/sin2ξ
・・・ (33)
変位センサが4つ以上ある場合、任意の二つの変位センサ(但し、180°間隔で配置されている二つを両方選択することはできない。式(33)中のsin2ξ=0となるからである。また、この時のξは選択した二つのセンサ間の角度である。)を用いて、式(33)よりa2+b2を算出し、全組み合わせの平均を出すなどすれば、変位センサのばらつき等による誤差を抑えて荷重を推定することが可能となる。但し、sinξ≒0にならない条件であることが望ましい。
【0099】
例えば、図24(b)に示すように、180°間隔で配置された変位センサ188#1,188#3に加えて、変位センサ188#2,188#4がある場合は、式(33)に従って、変位センサ188#1,188#2により検出された距離D1,D2、変位センサ188#1,188#4により検出された距離D1,D4、変位センサ188#2,188#3により検出された距離D2,D3、変位センサ188#2,188#4により検出された距離D2,D4及び変位センサ188#3,188#4により検出された距離D3,D4によりそれぞれa2+b2を出し、全組み合わせの平均を出すなどすれば、変位センサのばらつき等による誤差を抑えて荷重を推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の第1実施形態による荷重算出装置のブロック図である。
【図2】図1中の変位検出装置のブロック図である。
【図3】車輪の側面図である。
【図4】図3中のA−A線断面図である。
【図5】無負荷状態におけるホイールを示す図である。
【図6】αずらす理由を示す図である。
【図7】被測定面のバリエーションを示す図である。
【図8】変位−荷重変換演算手段の動作説明図である。
【図9】変位−荷重変換演算手段の動作説明図である。
【図10】変位−荷重変換演算手段の動作説明図である。
【図11】変位−荷重変換演算手段の動作説明図である。
【図12】本発明の第2実施形態による荷重算出装置のブロック図である。
【図13】図12中の変位検出装置のブロック図である。
【図14】負荷状態におけるホイールを示す図である。
【図15】本発明の第3実施形態による荷重算出装置のブロック図である。
【図16】図15中の変位検出装置のブロック図である。
【図17】負荷状態におけるホイールを示す図である。
【図18】本発明の第4実施形態による荷重算出装置のブロック図である。
【図19】図18中の変位検出装置のブロック図である。
【図20】無負荷状態におけるホイールを示す図である。
【図21】負荷状態におけるホイールを示す図である。
【図22】変位センサの配置条件を説明するための図である。
【図23】変位センサの配置条件を説明するための図である。
【図24】変位センサの配置条件を説明するための図である。
【符号の説明】
【0101】
2#FL,2#FR,2#RL,2#RR 変位検出装置
4 変位−荷重変換演算手段
20 ホイールディスク
22 弾性部材
24 リム
26#1,26#2,26#3 変位センサ
28#1,28#2,28#3 被測定部(被測定部材)
28a#1,28a#2,28a#3 被測定面
30 タイヤ
34 車軸ハブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無負荷で内側回転軸と外側回転軸が同心に配置され、少なくとも前記内側回転軸に直交する面内で相対変位可能に負荷に応じて変形する弾性部材によって連結された内側回転体及び外側回転体を有する回転体と、
前記内側回転体及び前記外側回転体のいずれか一方の回転軸から等距離にある周方向の複数の異なる箇所に設けられ、他方の前記内側回転体又は前記外側回転体と一体的に回転し、前記周方向と直交する方向に対向する前記他方の回転軸から等しい距離に設けられた被測定部材の被測定部位までの前記直交する方向の距離を検出する複数の変位センサと、
前記複数の変位センサにより検出された複数の前記距離に基づいて、前記内側回転体と前記外側回転体との間の相対回転角を算出する演算手段と、
を具備したことを特徴とする回転角度算出装置。
【請求項2】
無負荷で内側回転軸と外側回転軸が同心に配置され、少なくとも前記内側回転軸に直交する面内で相対変位可能に負荷に応じて変形する弾性部材によって連結された内側回転体及び外側回転体を有する回転体と、
前記内側回転体及び前記外側回転体のいずれか一方の回転軸から等距離にある周方向の3個以上の異なる箇所に設けられ、他方の前記内側回転体又は前記外側回転体と一体的に回転し、前記周方向と直交する方向に対向する前記他方の回転軸から等しい距離に設けられた被測定部材の被測定部位までの前記直交する方向の距離を検出する3個以上の変位センサと、
前記3個以上の変位センサにより検出された前記距離に基づいて、前記内側回転体と前記外側回転体間の相対変位量を算出する演算手段と、
を具備したことを特徴とする変位量算出装置。
【請求項3】
前記被測定部位を構成する前記被測定部材の表面は単一平面であり、無負荷での前記各変位センサの前記距離の測定方向は、前記変位センサが設けられた前記内側回転体又は前記外側回転体の回転軸に直交する前記変位センサを含む面におけるその回転体の回転中心点から前記平面への法線方向に対して所定角α(α>0)だけ所定方向にずれていることを特徴とする請求項1記載の回転角度算出装置又は請求項2記載の変位量算出装置。
【請求項1】
無負荷で内側回転軸と外側回転軸が同心に配置され、少なくとも前記内側回転軸に直交する面内で相対変位可能に負荷に応じて変形する弾性部材によって連結された内側回転体及び外側回転体を有する回転体と、
前記内側回転体及び前記外側回転体のいずれか一方の回転軸から等距離にある周方向の複数の異なる箇所に設けられ、他方の前記内側回転体又は前記外側回転体と一体的に回転し、前記周方向と直交する方向に対向する前記他方の回転軸から等しい距離に設けられた被測定部材の被測定部位までの前記直交する方向の距離を検出する複数の変位センサと、
前記複数の変位センサにより検出された複数の前記距離に基づいて、前記内側回転体と前記外側回転体との間の相対回転角を算出する演算手段と、
を具備したことを特徴とする回転角度算出装置。
【請求項2】
無負荷で内側回転軸と外側回転軸が同心に配置され、少なくとも前記内側回転軸に直交する面内で相対変位可能に負荷に応じて変形する弾性部材によって連結された内側回転体及び外側回転体を有する回転体と、
前記内側回転体及び前記外側回転体のいずれか一方の回転軸から等距離にある周方向の3個以上の異なる箇所に設けられ、他方の前記内側回転体又は前記外側回転体と一体的に回転し、前記周方向と直交する方向に対向する前記他方の回転軸から等しい距離に設けられた被測定部材の被測定部位までの前記直交する方向の距離を検出する3個以上の変位センサと、
前記3個以上の変位センサにより検出された前記距離に基づいて、前記内側回転体と前記外側回転体間の相対変位量を算出する演算手段と、
を具備したことを特徴とする変位量算出装置。
【請求項3】
前記被測定部位を構成する前記被測定部材の表面は単一平面であり、無負荷での前記各変位センサの前記距離の測定方向は、前記変位センサが設けられた前記内側回転体又は前記外側回転体の回転軸に直交する前記変位センサを含む面におけるその回転体の回転中心点から前記平面への法線方向に対して所定角α(α>0)だけ所定方向にずれていることを特徴とする請求項1記載の回転角度算出装置又は請求項2記載の変位量算出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2008−76226(P2008−76226A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255691(P2006−255691)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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