説明

回転角検出センサ

【課題】回転角検出機構が破損しにくい構造の回転角検出センサを提供することである。
【解決手段】一端が開放された筒状のハウジング1に、その蓋部1aを貫通する回転軸2の一端の大径部2aを収納し、ハウジング1の一端を塞ぐ蓋部材4の内面と回転軸大径部2aの端面との間に回転角検出機構5を設けるとともに、ハウジング蓋部1aの内面に回転軸2と同心に円弧状の溝1bを設け、回転軸大径部2aの段差面2bにハウジング蓋部1aの溝1b内を移動するストッパピン12を取り付けることにより、ストッパピン12が折損しても回転角検出機構5の破損にはつながらないようにしたのである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械や産業機械等に組み込まれ、特に高荷重が負荷される回転軸の回転角度を検出する回転角検出センサに関する。
【背景技術】
【0002】
高荷重が負荷される回転軸の回転角度を検出する回転角検出センサには、回転軸の回転精度を高めるために、回転軸の一端部を高強度のハウジングに収納して回転自在に支持したものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】実用新案登録第2604100号公報
【0003】
図2は上記のような回転角検出センサの一例を示したものである。この回転角検出センサは、図2(a)に示すように、一端が開放された筒状のハウジング51に、ハウジング51他端の蓋部51aを貫通する回転軸52の一端に形成した大径部52aを収納して、この大径部52aを定位置予圧された2つの玉軸受53で回転自在に支持するとともに、ハウジング51の一端を蓋部材54で塞ぎ、この蓋部材54の内面と回転軸大径部52aの端面との間に回転角検出機構55を設けている。回転角検出機構55は、蓋部材54の内面の中央部に形成された円形突部54aにドーナツ状の検出基板56を嵌め合わせ、回転軸大径部52aの端面に円盤状の検出基板57をねじ止めして、両基板56、57の互いの対向面に、回転角を検出するための公知の構成を形成したものである。
【0004】
そして、図2(b)にも示すように、蓋部材54の円形突部54aに回転軸52と同心に円弧状の溝54bを設け、回転軸大径部52aに検出基板57を貫通して蓋部材54の溝54b内を移動するストッパピン58を取り付けて、ストッパピン58が溝54bの周端縁部に突き当たることにより回転軸52の回転範囲が制限されるようにしている。
【0005】
また、回転軸52の回転範囲を制限する他の手段として、図3(a)、(b)に示すように、蓋部材54内面の突部54cを半円形に形成し、この突部54cとドーナツ状検出基板56の内周面との間の空間でストッパピン58を移動させるとともに、その移動を突部54cの平坦な側面で規制するようにしたものもある。
【0006】
ところが、上記のような回転角検出センサでは、回転軸を回転範囲外まで回転させようとする強い力が加わった場合に、蓋部材内面の突部で移動を規制された状態のストッパピンにその強度を超える応力が生じてストッパピンが折れ、その破片で回転角検出機構が破損してしまうことがある。回転角検出機構が破損すると、その交換により補修費が高くなる。
【0007】
これに対しては、ストッパピンの固定位置と突部に接触する位置との距離を短くすることにより、ストッパピンに生じる応力を小さくして、ストッパピンを折れにくくすることが考えられる。しかし、ストッパピンは、回転軸大径部にねじ止めされた検出基板のガタツキをなくすように基板を貫通して回転軸大径部に固定されているため、基板の厚みより短くすることはできず、応力の抑制には限度がある。すなわち、この方法でストッパピンの折損およびそれによる回転角検出機構の破損を確実に防止することは困難である。
【0008】
また、前述した蓋部材内面の半円形突部でストッパピンの移動を規制する方法(図3参照)を変形して、回転軸の回転範囲を180°以上に広げようとすると、突部を半円よりも小さい扇形に形成することになるため、突部に嵌め合わされる検出基板の位置決めが難しくなり、回転角検出精度が低下するおそれがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、回転角検出機構が破損しにくい構造の回転角検出センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明は、一端が開放された筒状のハウジングに、ハウジング他端の蓋部を貫通する回転軸の一端に形成した大径部を収納して、この大径部を回転自在に支持するとともに、前記ハウジングの一端を蓋部材で塞ぎ、この蓋部材の内面と前記回転軸の大径部の端面との間に回転角検出機構を設けた回転角検出センサにおいて、前記ハウジングの蓋部の内面に前記回転軸と同心に円弧状の溝を設け、前記回転軸の大径部の段差面に前記溝内を移動するストッパピンを取り付けて、このストッパピンが前記溝の周端縁部に突き当たることにより前記回転軸の回転範囲が制限されるようにした。
【0011】
すなわち、ストッパピンを回転軸大径部の回転角検出機構に対向する面と反対側の面に取り付けることにより、ストッパピンが折損しても回転角検出機構の破損にはつながらないようにしたのである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の回転角検出センサは、上述したように、回転軸の回転範囲を制限するのに必要な部材であるストッパピンを、回転軸大径部の回転角検出機構に対向する面と反対側の面に取り付けたものであるから、ストッパピンが折損しても回転角検出機構が破損することがない。従って、ストッパピンが折損する事故が生じた場合は折れたストッパピンのみを交換すればよく、従来よりも補修費を安く抑えることができる。
【0013】
また、ストッパピンを取り付けた回転軸大径部の段差面とストッパピンが移動するための溝を設けたハウジング蓋部の内面との間隔を小さくすることにより、ストッパピンが溝の周端縁部に突き当たったときに生じる応力を小さくして、ストッパピンを折れにくくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図1に基づき、本発明の実施形態を説明する。この回転角検出センサの基本的な構成は、前述した従来のものと同じであり、図1(a)に示すように、一端が開放された筒状のハウジング1に、ハウジング1他端の蓋部1aを貫通する回転軸2の一端に形成した大径部2aを収納して、この大径部2aを定位置予圧された2つの玉軸受3で回転自在に支持するとともに、ハウジング1の一端を蓋部材4で塞ぎ、この蓋部材4の内面と回転軸大径部2aの端面との間に回転角検出機構5を設けている。また、図示は省略するが、回転軸2の他端側にはレバーが固定され、このセンサを組み込んだ機械が作動したときに前記レバーを介して回転軸2が回転するようになっている。
【0015】
前記ハウジング1は、回転軸2の回転精度を高めるために高強度の素材で形成されている。また、蓋部材4との接合部にOリング6を配置した状態で蓋部材4とボルト締めするとともに、回転軸2を通す蓋部1aの孔の内周面に、回転軸2外周に固定した鍔付き摺動筒7と摺動するリップシール8を嵌め込んで、外部からダスト等が侵入しないようにしている。
【0016】
前記回転角検出機構5は、蓋部材4の内面の中央部に形成された円形突部4aにドーナツ状の検出基板9を嵌め合わせ、回転軸大径部2aの端面に円盤状の検出基板10をねじ止めして、両基板9、10の互いの対向面に、回転角を検出するための公知の構成を形成したものである。この回転角検出のための構成としては、例えば、円形の抵抗部および集電部のパターンとこれらに接触するブラシとを互いに対向するように各基板9、10に配置し、ブラシ接触位置の変化による抵抗変化を回転角として検出するもの等がある。また、回転軸大径部2aにねじ止めされた基板10の回転軸大径部2aに対するガタツキをなくすために、この基板10を貫通するピン11を回転軸大径部2aに圧入している。
【0017】
そして、図1(b)にも示すように、ハウジング蓋部1aの内面に回転軸2と同心に円弧状の溝1bを設け、回転軸大径部2aの段差面2bにハウジング蓋部1aの溝1b内を移動するストッパピン12を取り付けて、ストッパピン12が溝1bの周端縁部に突き当たることにより回転軸2の回転範囲が制限されるようにしている。従って、ハウジング蓋部1aの溝1bの周長を変えることにより回転軸2の回転範囲を自在に設定することができるし、その回転範囲の広さを変えても回転角検出機構5を構成する部品の位置決め精度への影響はなく、一定の回転角検出精度を確保できる。
【0018】
この回転角検出センサは、上記の構成であり、回転軸2の回転範囲を制限するためのストッパピン12を、回転軸大径部2aの回転角検出機構5に対向する面と反対側の段差面2bに取り付けたので、ストッパピン12が折損した場合でも回転角検出機構5が破損することはなく、補修費が安くすむ。
【0019】
また、回転軸大径部2aの段差面2bとハウジング蓋部1aの内面との間隔を小さくすることにより、ストッパピン12がハウジング蓋部1aの溝1bの周端縁部に突き当たったときに生じる応力を小さくして、ストッパピン12を折れにくくすることもできる。ここで、上記回転軸大径部2aとハウジング蓋部1aとの間隔は、通常サイズのセンサの場合、ハウジング蓋部1aの溝1bの周囲に形成される逃げの深さを0.5mm程度とし、これを含めて段差面2bから逃げの底面までの距離を1.5mm程度以下とすることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】aは実施形態のセンサの縦断正面図、bはaのI−I線に沿った断面図
【図2】aは従来センサの縦断正面図、bはaのストッパピンの移動範囲の説明図
【図3】aは別の従来センサの縦断正面図、bはaのストッパピンの移動範囲の説明図
【符号の説明】
【0021】
1 ハウジング
1a 蓋部
1b 溝
2 回転軸
2a 大径部
2b 段差面
3 玉軸受
4 蓋部材
4a 突部
5 回転角検出機構
9、10 検出基板
12 ストッパピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が開放された筒状のハウジングに、ハウジング他端の蓋部を貫通する回転軸の一端に形成した大径部を収納して、この大径部を回転自在に支持するとともに、前記ハウジングの一端を蓋部材で塞ぎ、この蓋部材の内面と前記回転軸の大径部の端面との間に回転角検出機構を設けた回転角検出センサにおいて、前記ハウジングの蓋部の内面に前記回転軸と同心に円弧状の溝を設け、前記回転軸の大径部の段差面に前記溝内を移動するストッパピンを取り付けて、このストッパピンが前記溝の周端縁部に突き当たることにより前記回転軸の回転範囲が制限されるようにしたことを特徴とする回転角検出センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−147381(P2007−147381A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−340489(P2005−340489)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】