説明

回転速度検出装置

【課題】二輪車に容易に取り付けることができる回転速度検出装置を提供する。
【解決手段】二輪車10の車輪20の回転速度を検出する回転速度検出装置40であって、二輪車10の車輪20の回転に伴って回転するギア32に噛み合うウォームギア34と一体的に回転するシャフト340の回転を電気信号に変換して外部の計器に出力する回転速度センサと、車輪20の中央に位置するハブ30に取り付けられる、回転速度センサを収納するハウジング400と、を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートバイや自転車等の二輪車等に用いられる回転速度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二輪車の車速算出装置(計器)は、回転速度検出装置によって検出された車輪の回転速度に基づいて車速を検出している。特許文献1に示された車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置のギヤボックスの構造においては、車輪とともに回転する歯車の回転がウォームギアに伝達される。そして、ウォームギアの回転をメカケーブルによって、計器装置に伝達して車速を検出している。メカケーブルとは、金属製のワイヤが、樹脂や金属などからなる被覆部材で覆われており、ワイヤが、被覆部材内で、回転するものである。すなわち、メカケーブルは、その内部に設けられたワイヤが回転することによって、ウォームギヤ(車輪)の回転を計器に伝達するものである。
【0003】
メカケーブルによって車輪の回転を計器に伝達する構成の場合、メカケーブルに、ウォームギア側の端部と計器側の端部との間に生じるトルク負荷が蓄積する。このため、長期間の使用により、ワイヤが断裂するおそれがあった。
【0004】
近年、ウォームギアの回転を、メカケーブル内のワイヤの回転によって計器に伝達するものから、車輪の回転速度を、車輪近傍に設けられた磁気センサによって検出し、検出された回転速度を計器装置に電気ケーブルによって伝達するものが広まっている。このような構成であれば、車輪の回転速度を計器に伝達する電気ケーブルにトルク負荷がかからず、長期間の使用に好適である。
【0005】
例えば、特許文献2に、車輪のハブと共に一体回転するブレーキドラムと、このブレーキドラムの横側面開口部を閉塞するように車体フレーム側に固定されたブレーキパネルとにより形成されたブレーキ室内に、ブレーキドラムと共に回転する信号回転体を配置すると共に、該信号回転体の回転速度を検出するセンサをブレーキパネル側に固定した自動二輪車の速度検出装置が開示されている。
【0006】
また、特許文献3に、回転軸線に沿う一側に開口してホイルハブと一体に回転するブレーキドラムと、このブレーキドラムの開口部を覆うブレーキパネルとを有するドラムブレーキが装着された車輪を備える自動二輪車において、ブレーキドラムに関してブレーキパネルとは反対側でホイルハブに固設された支持部と、この支持部に固定されるセンサリングと、このセンサリングの回転速度を検出するセンサとを備えることを特徴とする自動二輪車における車輪速度検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭60−100284号公報
【特許文献2】特開平6−144328号公報
【特許文献3】特開平8−133154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2及び特許文献3に開示された速度検出装置は、ブレーキドラムと共に回転するトーンリング(信号回転体及びセンサリング)をハブに配設する必要があり、その構造から、その取り付けが困難であるという問題点があった。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、目的とすることは、二輪車に容易に取り付けることができる回転速度検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の回転速度検出装置は、二輪車の車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置であって、前記二輪車の車輪の回転に伴って回転するギアに噛み合うウォームギアと一体的に回転するシャフトの回転を電気信号に変換して外部の計器に出力する回転速度センサと、前記車輪の中央に位置するハブに取り付けられる、回転速度センサを収納するハウジングと、を備えるものである。
【0011】
また、本発明の回転速度検出装置は、前記回転速度センサは、磁力を発する磁石と、前記磁石から発せられる磁力の前記シャフトの回転に伴う変化を検出する磁気検出手段とを備え、前記ハウジングはシャフトの周囲を取り囲む第一収納部と、前記回転速度センサを収納する第二収納部とを備え、前記回転速度センサは前記シャフトに近接するように前記第二収納部内に位置決め固定されているものである。
【0012】
また、本発明の回転速度検出装置は、前記回転速度センサは、磁力を発する磁石と、前記磁石から発せられる磁力の前記シャフトの回転に伴う変化を検出する磁気検出手段と、前記磁気検出手段に電気的に接続させる回路基板と、前記磁石、及び前記磁気検出手段、及び前記回路基板を保持するホルダとを備え、前記ホルダは前記磁気検出手段が前記シャフトに近接するように前記第二収納部内に位置決め固定されているものである。
【0013】
また、本発明の回転速度検出装置は、前記ホルダは第二の収納部内において充填部材によって覆われているものである。
【0014】
また、本発明の回転速度検出装置は、前記回転速度センサは、磁力を発する磁石と、前記磁石から発せられる磁力の前記シャフトの回転に伴う変化を検出する磁気検出手段と、前記磁気検出手段に電気的に接続させる回路基板とを備え、前記ハウジングは前記回路基板から電気的に引き出されたリード端子を備えたコネクタ部と、前記基部と一体に設けられ前記リード端子を外部と電気的に接続するための接続部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、二輪車に容易に取り付られる回転速度検出装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る回転速度検出装置を備える二輪車の一部を示す模式的な側面図。
【図2】同実施形態に係る回転速度検出装置の拡大断面図。
【図3】図2のA−A線の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る回転速度検出装置の1実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。
【0018】
<実施形態1>
【0019】
以下に示す実施形態に係る回転速度検出装置40は、図1に示された二輪車10の車輪20部分に取り付けられる。より具体的には、回転速度検出装置40は、二輪車10の車輪20の中央に設けられたハブ30における延出部(取り付け部)300に取り付けられる。
【0020】
ハブ30には、はすば歯車で構成され、車輪20の回転に伴って車輪20のホイールシャフト(図示せず)と同軸方向に回転するギア32と、ギア32に噛合することによって、ギア32の回転面に対して垂直な方向に回転するウォームギア(ドリブンギア)34とが収容されている。また、ハブ30は、そのウォームギア34に対向する位置から二輪車10の本体側へと延出し、他の面より外方に突出し、中空に形成された延出部300を備える。ハブ30の延出部300内には、ウォームギア34に連結され、ウォームギア34の回転に伴って回転するシャフト340が設けられている。なお、シャフト340は、ウォームギア34と一体的に形成されているものでなく個別に形成されているものであってもよく、ウォームギア34の回転と同期して(一体的に)回転するものであればよい。なお、ウォームギア34は、車輪20のドラムブレーキ306内に配置されている。
【0021】
詳細については後述するが、回転速度検出装置40は、シャフト340の回転速度を、シャフト340の回転に伴う磁界の変化を検出し、電気信号(本実施形態では、方形波のパルス信号)に変換し、出力することによって、検出する。車輪20の回転速度は、ギア32とウォームギア34とによって、シャフト340の回転速度と同じ又は一定の関係にあるので、シャフト340の回転速度の検出は、車輪20の回転速度の検出とも言える。つまり、回転速度検出装置40は、車輪20の回転速度を検出するものである。前記で変換されたパルス信号は、シャフト340の回転速度に応じた周期を有する信号であり、ケーブル42を介して回転速度検出装置40から計器50へと送られる。計器50は、回転速度検出装置40から供給される前記のパルス信号に基づいて、車速を算出(検出)し、算出した車速を計器50に設けられた表示部500に表示する。前記のように、前記のパルス信号の周期は、車輪20の回転速度に関係し、車輪20の回転速度は、二輪車の走行速度に関係するので、前記のパルス信号の周期に基づいて二輪車の走行速度は容易に算出される。1周期分にパルス信号を、車輪の一回転分の数(既知の値である。)だけカウントし、車輪の外周の長さをこのカウントに要した時間で割れば、二輪車10の車速は算出される。計器50と回転速度検出装置40とを備え、二輪車20の車速を検出する車速検出システムが構成される。
【0022】
次に、回転速度検出装置40の構造について、図2を参照して具体的に説明する。回転速度検出装置40は、磁石406と、回路基板408と、回路基板408に実装され磁石406の磁界の変化を検出する磁気検出手段409と、磁石406、基板408、磁気検出手段409を保持するホルダ410と、回路基板408と電気的に接続するリード端子411の一部を内蔵したコネクタ部412と、磁石406、基板408、磁気検出手段409、ホルダ410、コネクタ部412を収納するハウジング400と、を備える。ハウジング400は、各部材について、少なくとも一部を収納するものであればよい。本実施形態では、磁気検出手段409と、磁石406と、によって、シャフト340の回転速度を電気信号に変換して計器50に出力する回転速度センサが構成される。
【0023】
延出部300内に設けられたシャフト340の端部には、平板状に形成された突起から成る被検出部342が形成されている。この被検出部342が回転することによって、被検出部342と磁気検出手段409との距離が変化することによって、磁気検出手段409に接した磁石406の磁界が変化し、この変化を被検出部342の回転として磁気検出手段(信号出力手段)409が検出する。
【0024】
磁石406は、肉厚の円柱形フェライト磁石から成る。磁石406は、磁気検出手段409と接した状態で、ホルダ410に保持されている。
【0025】
磁気検出手段409は、ホール素子から成り、磁石406に接するようにホルダ410に配置され、リード409aによって回路基板408と電気的に接続されている。磁気検出手段409は、被検出部342の回転によって変化する磁石406の磁界を検出する。磁気検出手段409は、磁界の変化に応じた(シャフト340の回転速度に応じた)周期のパルス信号からなる電気信号に変換して出力し、回路基板408、リード端子411、ケーブル42内に配設された配線手段を介して、そのパルス信号を計器50へ伝送する。
【0026】
ホルダ410は、合成樹脂からなり、磁石406、基板408、磁気検出手段409を保持するものである。
【0027】
コネクタ部412は、合成樹脂からなり、回路基板408と電気的に接続する、電源入力、信号出力、アースである3本のリード端子411の一部を内蔵している。リード端子411の両端は、コネクタ部412か露出しており、一端は、回路基板408と電気的に接続しており、他端は、コネクタ部412に設けた接続部である凹部412a内に露出し、図示しない雌端子を備えたコネクタと電気的に接続するものである。
【0028】
ハウジング400は、車輪20の中央に位置するハブ30に取り付けられるものである。ハウジング400は、その一部が延出部300に形成された接続穴302に嵌合されて、ハブ30の延出部300に取り付けられることとなる。更に、ハウジング400の一部の外周に、係止ねじ(固定部材)303に係止する係止溝(凹部)404が形成されている。延出部300には、接続穴302に直交する方向であり係止溝404の接線の延長上に、接続穴302と外部と連通するねじ孔304が形成されている。このねじ孔304に係止ねじ303が外側からねじこまれると、係止溝404の一部に係止ねじ303が配置されることとなる。このようにすることで、ハブ30から抜脱する方向に回転速度検出装置40に力が加わったとしても、係止溝404を形成する部位が係止ねじ303に当接(係合)し、回転速度検出装置40のハウジング400が、接続穴302から抜脱されることが防がれる。つまり、ハブ30と回転速度検出装置40との接続が保たれる。
【0029】
ハウジング400は、シャフト340(特に、被検出部342)の周囲を取り囲む円柱状の凹部からなる第一収納部401と、ホルダ410を収納する第二収納部402と、コネクタ部412を収納する第三収納部403とを備えている。なお、本実施形態では、第二収納部402と第三収納部403とは連結しており、一体に形成されている。第三収納部403は、円柱状の凹部からなり、第二収納部402は、第三収納部403の底側(第一収納部401側)の一部が、第一収納部401側へ突出した形状であり、第一収納部401と第二収納部402は、シャフト340の回転軸方向に互いの一部が重なる位置関係であり、第一収納部401と第二収納部402は、近接している。
【0030】
第二収納部402内には、ホルダ410が収納されている。すなわち、回転速度センサを構成する磁石406と磁気検出手段409が収納されている。ホルダ410は、回転速度センサ(磁気検出手段409)が、シャフト340の被検出部342に近接するように、第二収納部402に収納されている。本実施形態では、回路基板408が、ホルダ410より幅が広く、第二収納部402内に、回路基板408を案内する図示しない溝部が形成されており、この溝部によって、ホルダ410が第二収納部402に位置決め固定されている。
【0031】
ホルダ410とコネクタ部412aをそれぞれ第二、第三収納部402、403に収納した状態で、第二、第三収納部402、403内は、充填部材405によって覆われている。充填部材405は、熱硬化性の樹脂であり、磁石406、磁気検出手段409などを保護するものである。
【0032】
上記のように構成される回転速度検出装置40の車速の検出機能について説明する。車輪20が回転すると、ホイールシャフトを介してギア32が車輪20とともに回転する。ギア32が回転すると同時に、ギア32に噛合するウォームギア34及びウォームギア34に一体的に回転するシャフト340が回転する。シャフト340が回転すると、シャフト340に設けた被検出部342が回転する。この被検出部342の回転に伴い、磁石406の磁界が変化する。磁気検出手段409は、この磁界の変化を検出し、その磁界の変化に応じたパルス信号を、ケーブル42内に配設された配線手段420を介して計器50へ伝送する。計器50は、その信号の周期に応じて、車速を算出し、算出した車速を表示部500に表示する。
【0033】
なお、延出部及び延出部300内に設けられている被連結シャフト340は、車輪の回転速度を検出するための従来技術であるメカケーブルに接続されるものと同一構造である。つまり、回転速度検出装置40は、従来の延出部300及び被連結シャフト340を有するハブ30に、容易に取り付けられる。
【0034】
また、本実施形態に係る回転速度検出装置40は、二輪車10のサスペンションから車輪を外さずに、回転速度検出装置40を取り付け及び取り外しが可能であり、メカケーブルからの交換、その他メンテナンスが容易である。
【0035】
本発明は、上記実施形態(また、図面に記載された構成を含む。)に限られない。上記の構成に適宜変更を加えることは当然可能である。
【0036】
なお、ドラムブレーキを有する車両であれば、ホイールシャフトの回転に伴って回転するギア及びそのギアに噛合するウォームギアを備えているため、本発明に係る回転速度検出装置を取り付けるのに好適である。
【符号の説明】
【0037】
10 二輪車
20 車輪
32 ギア
34 ウォームギア(ドリブンギア)
340 シャフト
342 被検出部
40 回転速度検出装置
400 ハウジング
401 第一収納部
402 第二収納部
405 充填部材
406 磁石
408 回路基板
409 磁気検出手段(信号出力手段)
410 ホルダ
411 リード端子
412 コネクタ部
412a 凹部
50 計器



【特許請求の範囲】
【請求項1】
二輪車の車輪の回転速度を検出する回転速度検出装置であって、前記二輪車の車輪の回転に伴って回転するギアに噛み合うウォームギアと一体的に回転するシャフトの回転を電気信号に変換して外部の計器に出力する回転速度センサと、前記車輪の中央に位置するハブに取り付けられる、回転速度センサを収納するハウジングと、を設けたことを特徴とする回転速度検出装置。
【請求項2】
前記回転速度センサは、磁力を発する磁石と、前記磁石から発せられる磁力の前記シャフトの回転に伴う変化を検出する磁気検出手段とを備え、前記ハウジングはシャフトの周囲を取り囲む第一収納部と、前記回転速度センサを収納する第二収納部とを備え、前記回転速度センサを前記シャフトに近接するように前記第二収納部内に位置決め固定したことを特徴とする請求項1記載の回転速度検出装置。
【請求項3】
前記回転速度センサは、磁力を発する磁石と、前記磁石から発せられる磁力の前記シャフトの回転に伴う変化を検出する磁気検出手段と、前記磁気検出手段に電気的に接続させる回路基板と、前記磁石、及び前記磁気検出手段、及び前記回路基板を保持するホルダとを備え、前記ホルダを前記磁気検出手段が前記シャフトに近接するように前記第二収納部内に位置決め固定したことを特徴とする請求項1記載の回転速度検出装置。
【請求項4】
前記ホルダを第二の収納部内において充填部材によって覆ったことを特徴とする請求項3記載の回転検出装置。
【請求項5】
前記回転速度センサは、磁力を発する磁石と、前記磁石から発せられる磁力の前記シャフトの回転に伴う変化を検出する磁気検出手段と、前記磁気検出手段に電気的に接続させる回路基板とを備え、前記ハウジングに前記回路基板から電気的に引き出されたリード端子を備えたコネクタ部と、前記基部と一体に設けられ前記リード端子を外部と電気的に接続するための接続部とを設けたことを特徴とする請求項1記載の回転速度検出装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−233717(P2012−233717A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100683(P2011−100683)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)