説明

回転速度計

【目的】 慣性モーメントが小さく、しかも、正確な微小回転速度変化を得ることができる回転速度計を提供することを目的としている。
【構成】 偏光面が互いに直交し振動数がわずかに異なる2波長の単色光を回転方向の異なる円偏光単色光に変換する1/4波長板14と、回転体の回転軸に設置され、回転軸の回転角度に応じて前記2波長の円偏光単色光の位相をシフトさせる1/2波長板15と、前記1/2波長板15の透過光を干渉させる検光子17と、その検光子17を経た干渉光の強度を電気信号に変換する光電変換器18と、電気信号に変換された前記干渉光のビート信号の位相変化を検出する位相検出器33と、前記ビート信号の位相変化から前記回転軸の回転速度を算出する信号処理装置34とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光学式の回転速度計に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、回転速度計として、従来から広く用いられているロータリエンコーダ式のものが存在する。この構成を図4に基づいて説明すると、ディスクスケール41は、薄い円盤に放射状に等間隔の多数のスリットを備え、測定対象回転軸に直接取り付けられている。光を放つLED42と、LED42の光を電気信号に変換するするディテクタ43は、ディスクスケール41のスリット部分を両側から挟む形で向かい合わせに設置されている。
【0003】測定対象回転軸が回転すると、ディスクスケール41も同じ回転速度で回転し、ディスクスケール41に設けた各スリットを透過したLED42の発光をディテクタ43が連続的に検出し、その検出信号は連続した矩形波となる。
【0004】信号処理装置44は、前記矩型波の立ち上がりの時間間隔を計測して回転速度(一分間あたりの回転数(RPM))を求めるようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記のような回転速度計の精度は、ディスクスケール41に直接依存する。例えば、同じ加工精度でディスクスケール41の回転半径を大きくすれば、回転速度の精度は上がる。しかし、ディスクスケール41の半径の拡大に伴って、慣性モーメントは二乗で大きくなり、正確な微小回転速度変化の計測はできない。
【0006】また、慣性モーメントを減らすには、ディスクスケール41の回転半径を小さくすることが考えられる。しかし、ディスクスケール41を小さくすると、ディスクスケール41のスリット部の加工精度を向上させねばならず、正確な微小回転速度変化を得るのは非常に困難であるという欠点があった。
【0007】本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、慣性モーメントが小さく、しかも、正確な微小回転速度変化を得ることができる装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するために、本発明の回転速度計は、偏光面が互いに直交し振動数がわずかに異なる2波長の単色光を回転方向の異なる円偏光単色光に変換する1/4波長板と、回転体の回転軸に設置され、かつ回転軸の回転角度に応じて前記2波長の円偏光単色光の位相をシフトさせる1/2波長板と、前記1/2波長板を透過した透過光を干渉させる干渉手段と、その干渉手段を経た干渉光の強度を電気信号に変換する光電変換手段と、前記電気信号に変換された前記干渉光のビート信号の位相変化を検出する位相検出手段と、その位相検出手段が検出した前記ビート信号の位相変化に基づいて前記回転軸の回転速度を算出する信号処理手段とを備えている。
【0009】
【作用】前記の構成を有する本発明の回転速度計において、1/4波長板は、偏光面が互いに直交し振動数がわずかに異なる2波長の単色光を回転方向の異なる円偏光単色光に変換する。1/2波長板は、回転体の回転軸に設置され、回転軸の回転角度に応じて前記2波長の円偏光単色光の位相をシフトさせる。干渉手段は、前記1/2波長板を透過した透過光を干渉させる。光電変換手段は、前記干渉手段を経た干渉光の強度を電気信号に変換する。位相検出手段は、電気信号に変換された前記干渉光のビート信号の位相変化を検出する。信号処理手段は、前記位相検出手段が検出した前記ビーイ信号の位相変化に基づいて前記回転軸の回転速度を算出する。
【0010】
【実施例】以下に、本発明を具体化した一実施例を図面を参照して説明する。
【0011】図1は本発明を具体化した回転速度計の光学系統の構成を概略的に示したものである。
【0012】レーザ光源1は、振動数がν1の直線偏光レーザ光を発生するものである。アイソレータ2は、前記レーザ光源1への戻り光を遮断するものであり、出力光が図1のy軸方向に進行し、偏光面がy−z平面と平行になるように設定されている。無偏光ビームスプリッタ3は、アイソレータ2の出力光を2方向に分割するものである。音響光学変調器4は、分割された一方のレーザ光21の振動数を+80MHzシフトさせるものである。音響光学変調器5は、音響光学変調器4の出力レーザ光の振動数を-79.9MHzシフトさせるものである。従って、2つの音響光学変調器4,5を透過したレーザ光21は、振動数ν2が+100kHzシフトしていることになる。以後この出力レーザ光をS0波と呼ぶ。反射鏡6は、レーザ光の光路を変えるものである。
【0013】反射鏡7は、無偏光ビームスプリッタ3により分割されたもう一方のレーザ光22の光路をy軸方向に変えるものである。1/2波長板8は、光軸が図1のx軸に対してz軸方向に45度の角度に設置され、レーザ光22の偏光面をx−y平面と平行になるように回転させるものである。以後この出力レーザ光をP0波と呼ぶ。
【0014】偏光ビームスプリッタ9は、前記S0波及びP0波を同一光路上に統合するものである。
【0015】無偏光ビームスプリッタ10は、前記S0波及びP0波をそれぞれ分割するものである。以後反射鏡11方向に分岐したレーザ光をS1波及びP1波と呼び、直進光をS2波及びP2波と呼ぶ。
【0016】反射鏡11は、S1波及びP1波の光路を変えるものである。検光子12は、前期S1波及びP1波を干渉させるものである。光電変換器13は、この干渉光の強度を電気信号に変換するものである。この電気信号は以降に説明する位相差検出時の基準となる信号であり、以後B信号と呼ぶ。
【0017】1/4波長板14は、光軸が図1のx軸に対してz軸方向に45度の角度に設置され、前記S2波及びP2波を回転方向の異なる円偏光レーザ光に変換するものである。この様子をS2波について図2を用いて詳述する。図2は、図1のx−z平面を、1/4波長板14の光軸(以後、高速軸と呼ぶ)をx軸に、光軸に直交する軸(以後、低速軸と呼ぶ)をy軸に設定した平面座標系(したがって図1に対して45度傾いている平面座標系)である。ここで直線偏光である入力のS2波をベクトルを用いて{A(r)・exp(i(k2・r−ω2・t))、A(r)・exp(i(k2・r−ω2・t))}と表現する(ただし、A(r)は光路上の位置rでのS2波の振幅、k2は波長定数、ω2=2π・ν2は角振動数)。同様にP2波は{B(r)・exp(i(k1・r−ω1・t))、−B(r)・exp(i(k1・r−ω1・t))}と表現する(ただし、B(r)は光路上の位置rでのP2波の振幅、k1は波長定数、ω1=2π・ν1は角振動数)。
【0018】1/4波長板14は、透過光の低速軸(図2R>2、y軸)成分を高速軸(図2、x軸)成分に対してπ/2だけ位相を遅らせる性質を持つため、S2波は{A(r)・exp(i(k2・r−ω2・t))、A(r)・exp(i(k2・r−ω2・t−π/2))}={A(r)・exp(i(k2・r−ω2・t))、−i・A(r)・exp(i(k2・r−ω2・t))}に変換され円偏光となる(円偏光の条件は、x成分とy成分の振幅が等しく、かつx成分とy成分の比が±iである)。同様にP2波は{B(r)・exp(i(k1・r−ω1・t))、i・B(r)・exp(i(k1・r−ω1・t))}に変換され、S2波と回転方向の異なる円偏光となる。
【0019】1/2波長板15は、モータ等の回転体(図示せず)の回転軸に設置され、回転軸の回転角度に応じて前記S2波及びP2波の位相をシフトさせるものである。この様子をS2波について図2を用いて詳述する。ただし、図2に示すように1/2波長板15の高速軸と1/4波長板14の高速軸とのなす角をθとする。ここで1/2波長板15の高速軸をx軸とし、低速軸をy軸とする平面座標系にS2波を座標変換(角度θの回転座標変換)すると、{(cosθ−i・sinθ)・A(r)・exp(i(k2・r−ω2・t))、(−sinθ−i・cosθ)・A(r)・exp(i(k2・r−ω2・t))}となる。
【0020】また、1/2波長板15は水晶の結晶板であり、その複屈折性により透過光の低速軸成分を高速軸成分に対してπだけ遅らせる性質を持つため、S2波の透過光は{(cosθ−i・sinθ)・A(r)・exp(i(k2・r−ω2・t))、(−sinθ−i・cosθ)・A(r)・exp(i(k2・r−ω2・t−π))}={(cosθ−i・sinθ)・A(r)・exp(i(k2・r−ω2・t))、(sinθ+i・cosθ)・A(r)・exp(i(k2・r−ω2・t))}となる。
【0021】そして、これを元の平面座標系に座標変換(角度−θの回転座標変換)をして整理をすると、S2波は{(cos2θ−i・sin2θ)・A(r)・exp(i(k2・r−ω2・t))、(sin2θ+i・cos2θ)・A(r)・exp(i(k2・r−ω2・t))}={A(r)・exp(i(k2・r−ω2・t−2θ))、i・A(r)・exp(i(k2・r−ω2・t−2θ))}となり、偏光方向が反転するとともに、位相が2θ遅れる。同様にP2波は{B(r)・exp(i(k1・r−ω1・t+2θ))、−i・B(r)・exp(i(k1・r−ω1・t+2θ))}となり、偏光方向が反転するとともに位相が2θ進む。
【0022】反射鏡16は、S2波及びP2波の光路を変えるものである。検光子17は、干渉手段を構成するものであり、前記S2波及びP2波の同一偏光成分を干渉させるものである。説明を簡略化するために、例えば、図2におけるx軸成分を干渉させると、干渉光IはA(r)・exp(i(k2・r−ω2・t−2θ))+B(r)・exp(i(k1・r−ω1・t+2θ))となる。
【0023】光電変換器18は、前記干渉光の強度|I|2=A(r)2+B(r)2+2A(r)・B(r)・cos((ω2−ω1)・t+4θ+(k1−k2)・r)を電気信号に変換するものである。第3項はS2波とP2波の干渉によるビート信号であり、その位相は4θ+(k1−k2)・rとなり、1/2波長板15の回転角度θと光路上の位置rを変数とする項とからなる。ここで光電変換器18は光路上の位置が固定されているため、このビート信号の位相は4θ+(定数)となる。この電気信号を以後D信号を呼ぶ。
【0024】次に、図3を用いて電気系の構成を説明する。
【0025】D信号増幅器31は、前期D信号の交流成分(ビート信号)を増幅するものである。上述のように、このビート信号の位相は4θ+(定数)である。
【0026】同様にB信号増幅器32は、前期B信号のビート信号を増幅するものである。このときビート信号の位相は光路上の位置を変数とする項のみからなる。光電変換器13も光路上の位置が固定されているため、このビート信号の位相は定数となり、以降で説明するD信号の位相に対する比較基準とする。
【0027】位相比較器33は、位相検出手段を構成するものであって、前記D信号とB信号のビート信号の位相差Θを検出するものであり、位相差Θは上述のように1/2波長板15の回転角度θとの間に、Θ=4θ+(定数)の関係を持つ。
【0028】信号処理装置34は、信号処理手段を構成するものであって、回転角速度dθ/dt=1/4・dΘ/dtの関係を用いて回転角速度を求める。
【0029】以上詳述したように、位相差Θを検出することにより、回転角度θを高精度で検出することができ、しかも、1/2波長板15は水晶の結晶板である為に、回転軸の負荷となる慣性モーメントを小さくすることができ回転速度を正確に計測することができる。
【0030】
【発明の効果】以上説明したことから明かなように、本発明の回転速度計は、前記実施例で詳述したような構成及び作用を有する1/4波長板と、1/2波長板と、干渉手段と、光電変換手段と、位相検出手段と、信号処理手段とを備えたことにより、回転軸の負荷となる慣性モーメントが小さく、しかも、正確な微小回転速度変化を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本実施例の光学系の概略構成図である。
【図2】図2は実施例の波長板の光軸等の位置関係の説明図である。
【図3】図3は本実施例の電気的制御構成を示すブロック図である。
【図4】図4は従来例の回転速度計の構成図である。
【符号の説明】
14 1/4波長板
15 1/2波長板
17 検光子
18 光電変換器
33 位相比較器
34 信号処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】 偏光面が互いに直交し振動数がわずかに異なる2波長の単色光を回転方向の異なる円偏光単色光に変換する1/4波長板と、回転体の回転軸に設置され、かつ回転軸の回転角度に応じて前記2波長の円偏光単色光の位相をシフトさせる1/2波長板と、前記1/2波長板を透過した透過光を干渉させる干渉手段と、その干渉手段を経た干渉光の強度を電気信号に変換する光電変換手段と、前記電気信号に変換された前記干渉光のビート信号の位相変化を検出する位相検出手段と、その位相検出手段が検出した前記ビート信号の位相変化に基づいて前記回転軸の回転速度を算出する信号処理手段と、を備えたことを特徴とする回転速度計。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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