説明

回転運動装置

【課題】液体等を撹拌する用途として使用しても、装置内部への液体の浸入を防止することができる回転運動装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係る回転運動装置1は、電動機の回転運動を電動機側回転軸(第1の回転軸31等)を介して第1のマグネット円板41が受け、面対向する第2のマグネット円板42に伝達し、回転体側回転軸(第2の回転軸32)を介して回転体5が回転する構成を採用しているため、回転運動が効率よく電動機から回転体5に伝達される。また、本発明に係る回転運動装置1は第1のマグネット円板41と第2のマグネット円板42を介して分離可能となることに加え、第1のマグネット円板41と第1の回転軸31を覆うように防水部29が配設されているため、第1のマグネット円板41及び第1の回転軸31の先端は外部に現れることはなく、本体部の内部及び電動機21への液体の浸入を確実に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転運動装置に関する。更に詳しくは、ハンドミキサーやハンディブレンダー等に代表される、回転運動の駆動源となるモーター等の電動機と、当該電動機を収納する本体部と、前記電動機により回転運動が伝達されて回転する回転体と、を備えた回転運動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モーター等の電動機を内蔵し、かかるモーターにより駆動される回転軸を有したハンドミキサーやブレンダー(ハンディブレンダー)等の回転運動装置が提供されている。これらのハンドミキサー等の回転運動装置は、モーター等からの回転トルクが回転軸に伝達され、この回転軸に連結されたスクリューや回転羽根等の回転体を回転させる構成が一般的である(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−325919号公報
【特許文献2】特開2006−325920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記したようなハンドミキサー等は、液体を撹拌する用途として使用することが多いが、かかる液体が回転軸を伝ってハンドミキサーの内部に浸入してしまい、内部が腐食したり、モーターにまで液体が達することにより漏電や焼損事故が発生するという問題が発生していた。これに対して、回転軸における液体の浸入部分にパッキン等のシール材を施して、液体の浸入を防止するということを行っていたが、シール材は回転トルクの負荷となり、回転運動に悪影響を与えることになるばかりか、シール材は加熱や摩耗により寿命が短く、液体浸入を完全に防ぐことができなかった。
【0005】
本発明の目的は、前記の課題に鑑みてなされたものであり、液体等を撹拌する用途として使用しても、装置内部への液体の浸入を防止することができる回転運動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明に係る回転運動装置は、回転運動の駆動源となる電動機と、当該電動機を収納する本体部と、前記電動機により回転運動が伝達されて回転する回転体と、を備えた回転運動装置であって、前記回転運動は回転軸により前記電動機から前記回転体に伝達され、前記回転軸は、前記電動機から回転運動を伝達される電動機側回転軸と、前記回転体に回転運動を伝達する回転体側回転軸に分離され、前記電動機側回転軸の先端には、第1のマグネット円板が、また、前記回転体側回転軸の先端には、第2のマグネット円板が面対向するように取り付けられ、前記回転運動装置は、前記第1のマグネット円板と前記第2のマグネット円板を介して分離可能であり、前記第1のマグネット円板と、当該第1のマグネット円板が取り付けられる前記電動機側回転軸を覆うように防水部が配設されることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る回転運動装置は、前記した本発明の構成において、前記第2のマグネット円板が前記回転体に取り付けられ、前記第1のマグネット円板と前記第2のマグネット円板を介して、前記回転体とそれ以外の部分が分離可能に形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る回転運動装置は、前記した本発明の構成において、前記本体部の先端とパイプ状の筒部が連接一体化され、前記電動機側回転軸が前記筒部の内部を貫通し、前記電動機側回転軸の先端に前記第1のマグネット円板が取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る回転運動装置は、前記した本発明の構成において、前記本体部が第1の本体部と第2の本体部からなり、前記第1の本体部には前記電動機が収納され、前記第1の本体部と前記第2の本体部が、前記第1のマグネット円板と前記第2のマグネット円板を介して分離可能に形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る回転運動装置は、前記した本発明の構成において、前記第1のマグネット円板及び/または前記第2のマグネット円板が、ショートヨークに載置されて前記回転軸に取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る回転運動装置は、本体部に収納されたモーター等の電動機の回転運動を電動機側回転軸を介して第1のマグネット円板が受け、かかる回転運動を面対向する第2のマグネット円板に伝達し、回転体側回転軸を介して回転体が回転する構成を採用している。これにより、回転運動が効率よく電動機から回転体に伝達されるとともに、第1のマグネット円板と第2のマグネット円板を介して回転運動装置が分離可能となるので、液体等に回転体を浸漬させて混合撹拌した際に回転体を通じての液体の浸入を防止することができる。
【0012】
また、本発明に係る回転運動装置は、2つのマグネット円板の間隔により、回転トルクを調整することができるため、回転トルクの調整を簡便かつ効率よく行うことができるとともに、多種の用途に適用することができる。
【0013】
そして、本発明に係る回転運動装置は、モーター等の電動機の回転運動を受ける第1のマグネット円板と、第1のマグネット円板に連接される電動機側回転軸を覆うように防水部が配設されているため、第1のマグネット円板及び電動機側回転軸の先端は外部に現れることはなく、本体部の内部及びモーター等の電動機への液体の浸入を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係るハンドミキサーの一態様を示した正面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るハンドミキサーの一態様を示した側面図である。
【図3】図2のハンドミキサーの内部構造図である。
【図4】図3の部分拡大図である。
【図5】マグネット円板(磁石円板)の一例を示した概略図である。
【図6】マグネット円板とショートヨークを組み合わせた状態の一例を示した概略図である。
【図7】2つのマグネット円板の間隔と回転トルクの関係の一例を示した図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るハンドミキサーの一態様を示した正面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係るハンドミキサーの一態様を示した側面図である。
【図10】図9のハンドミキサーの内部構造図である。
【図11】図10の部分拡大図である。
【図12】図10の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(A)第1実施形態:
以下、本発明の第1実施形態に係る回転運動装置の構成の一例であるハンドミキサーの一態様を、図面を用いて説明する。図1は本発明の第1実施形態に係るハンドミキサー1の一態様を示した正面図、図2は本発明の第1実施形態に係るハンドミキサー1の一態様を示した側面図、図3は図2のハンドミキサー1の内部構造部、図4は図3の部分拡大図、をそれぞれ示す。ここで、1はハンドミキサー、2は本体部、21はモーター、22は筒部、30はモーター軸、31は第1の回転軸、32は第2の回転軸、41は第1のマグネット円板、42は第2のマグネット円板、5は回転体、51は爪部、をそれぞれ示す。なお、図3にあっては、電気配線や制御板、制御装置等については図示していない。
【0016】
本発明の第1実施形態に係るハンドミキサー1は、第1のマグネット円板41と第2のマグネット円板42(図3及び後記する図4を参照)を介して、回転体5とそれ以外の部分が分離可能(図1に示すAを境に分離)に形成されている。
【0017】
本発明の第1実施形態に係るハンドミキサー1を構成し、電動機であるモーター21を内蔵する本体部2は、本実施形態にあっては長手方向に細長く形成されている。また、本体部2の上部には、両側面から背面にかけて細く絞るように握り部20が形成されており、使用者は、かかる握り部20を握って(あるいは掴んで)ハンドミキサー1を操作・使用する。かかる本体部2は、合成樹脂や金属材料等により構成されることができる。なお、モーター21は、モーター固定ネジ211により本体部2の内部に固定される。
【0018】
ハンドミキサー1を構成する本体部2には、図1ないし図3に示すように、握り部20の正面に略円形状の2つのスイッチ23a,23bが配設されている。2つのスイッチ23a,23bは、通常時(押さない状態)ではモーター21は運動しないが、例えば、スイッチ23aを押すとモーター軸30が低速回転し、スイッチ23bを押すとモーター軸30が高速回転するような制御をされるように構成してもよい。なお、本体部2の背面上端から延びる電源コード(図示せず)の一端に設けられた電源プラグ(図示せず)をコンセント(図示せず)に挿入することにより、モーター21に対して電源が供給されることになる。
【0019】
本体部2に内蔵されるモーター21は、モーター軸30がカップリング24を介して第1の回転軸31と連結され、かかる第1の回転軸31に回転運動を伝達する。本実施形態にあっては、かかるモーター軸30と第1の回転軸31が電動機側回転軸(第1のマグネット円板41が取り付けられる回転軸を含み、電動機(モーター21)からの回転運動を第1のマグネット円板41に伝達する回転軸のこと。以下同じ。)となり、また、第1の回転軸31は、本体部2の先端と連接一体化されるパイプ状の筒部22の内部を貫通する。第1の回転軸31が貫通される筒部22は、例えば、合成樹脂や金属材料等で構成することができる。
【0020】
本体部2と連接一体化されて延びる筒部22の先端には固定部材26が嵌め込み固定されており、また、筒部22を貫通して延びる第1の回転軸31の先端には、マグネット固定部27a及びショートヨーク28aが連接される。マグネット固定部27aは、例えば、真鍮ボス等から形成することができ、その中心孔を第1の回転軸31に圧入して固定される。また、ショートヨーク28aは、かかるマグネット固定部27aに加締め固定されており、ショートヨーク28aにドーナツ状の第1のマグネット円板41が、第1の回転軸31を軸中心として載置されてかかる第1の回転軸31に取り付けられ、かかる第1のマグネット円板41に第1の回転軸31の回転運動が伝達されることになる。以上より、モーター軸30の回転運動により第1の回転軸31が回転すると、第1のマグネット円板41も第1の回転軸31を中心に回転することになる。
【0021】
本実施形態に係るハンドミキサー1において、第2のマグネット円板42が、本実施形態において回転体側回転軸(第2のマグネット円板42が取り付けられる回転軸を含み、第2のマグネット円板42が受けた回転運動を回転体5に伝達する回転軸のこと。以下同じ。)となる第2の回転軸32を軸中心として、第1の回転軸31の先端に取り付けられた第1のマグネット円板41と面対向するように取り付けられている。第2のマグネット円板42は、第2の回転軸32に連接されるショートヨーク28bに載置されてかかる第2の回転軸32に取り付けられている。具体的には、マグネット固定部27bが、その中心孔を第2の回転軸32に圧入して固定される。また、ショートヨーク28bも、前記したと同様にかかるマグネット固定部27bに加締め固定される。かかるショートヨーク28bにドーナツ状の第2のマグネット円板42が、第2の回転軸32を軸中心として載置されてかかる第2の回転軸32に取り付けられ、かかる第2のマグネット円板42から第2の回転軸32に回転運動が伝達されることになる。
【0022】
また、第2の回転軸32における第2のマグネット円板42の下部には、椀状の回転体5が、防水ベアリング61を介して回転可能に固定されている。かかる防水ベアリング61が配設されていることにより、回転体5を介して液体等が浸入することを防止することができる。回転体5は、使用の際に対象となる液体等に浸漬されて、第2の回転軸32を軸中心として回転することにより、対象となる液体等を混合・撹拌する。回転体5には、本実施形態にあっては、3つの爪部51が、中心(第2の回転軸32)から見て3方に、等間隔に配設されている態様を示している。
【0023】
本実施形態に係るハンドミキサー1は、第1のマグネット円板41と第2のマグネット円板42が分離可能であるため、第1のマグネット円板41と第2のマグネット円板42を介して回転体5とそれ以外の部分に分離可能となる(電動機側回転軸であるモーター軸30及び第1の回転軸31と、回転体側回転軸である第2の回転軸32も第1のマグネット円板41と第2のマグネット円板42を介して分離される。)。これにより、液体等に回転体5を浸漬させて混合撹拌した際に回転体5を通じての液体の浸入を防止することができる。加えて、図3及び図4に示すように、本実施形態にあっては、第1のマグネット円板41における第2のマグネット円板42と面対向する部分(第1のマグネット円板41及び第1の回転軸31の先端)は、固定部材26に嵌め込み固定されている防水部29により覆われているため、第1のマグネット円板41、筒部22の先端及び第1の回転軸31の先端は外部に現れることはない。これにより、筒部22を伝って、本体部2の内部及びモーター21への液体の浸入を完全に防止することができる。なお、かかる防水部29の第1のマグネット円板41と対面する部分の厚さは、概ね0.1mm〜1.0mm程度とすればよい。
【0024】
前記したように、本実施形態に係るハンドミキサー1は、第1のマグネット円板41及び第2のマグネット円板42(以下、総称して単に「マグネット円板4」とする場合もある。)が、面対向して配設されている。図5は、マグネット円板4の一例を示した概略図((A)は平面図、(B)は(A)のV−V断面図)であり、図6は、マグネット円板4及びショートヨーク(ここでは総称して「ショートヨーク28」とする。)の一例を示した概略図である。図5及び図6に示すように、本実施形態に係るハンドミキサー1を構成する複数極に着磁されたマグネット円板4は、周面に所定角度の間隔で交互にN極とS極が現れるように着磁されており、図5にあっては、45°の間隔で片面に対して8極(N極及びS極を4極ずつ)着磁している態様を示している。なお、マグネット円板4は、少なくとも相手側のマグネット円板(第1のマグネット円板41に対して第2のマグネット円板42。あるいはその逆。)と対向する面について着磁しておく(片面着磁をしておく)必要があるが、加えて、かかる面と反対の面も着磁(両面着磁)しておけば、強力な磁力を得ることができるため好ましい。
【0025】
ショートヨーク28は、本実施形態にあっては、フランジ281が形成され、中心に孔282が空けられた盆状の部材であり、例えば、鋼板等の磁性材料を用いて、表面を電気亜鉛メッキ処理したものにより構成することができる。マグネット円板4の周囲にショートヨーク28を配することにより、マグネット円板4の磁束がショートヨーク28の中を通り抜けるため、ショートヨーク28を配さない場合と比較して開放部分の磁束量が増加し、強磁方向を作り出すことができ、マグネット円板4の磁力を強くすることができる。
【0026】
本実施形態にあっては、図5に示すように、マグネット円板4の磁極の向きは、それぞれN極、S極が交互に配置されており、また、極数も同じ(8つ)である。よって、モーター21が運動していない状態では、第1のマグネット円板41の各磁石と第2のマグネット円板42の各磁石がそれぞれ引き付け合うことになる。一方、モーター21が稼働し、モーター軸30及びそれに連接される第1の回転軸31が回転することにより第1のマグネット円板41が第1の回転軸31を中心に回転すると、第1のマグネット円板41と引き付けあっている状態の第2のマグネット円板42も回転することになり、第2のマグネット円板42が回転することにより、第2の回転軸32及び回転体5が回転する。このように、本実施形態のハンドミキサー1は、モーター21の回転運動が、モーター軸30→第1の回転軸31→第1のマグネット円板41→第2のマグネット円板42→第2の回転軸32→回転体5と伝達されることにより、回転体5が回転されることになる。
【0027】
本発明を構成するマグネット円板4のサイズは、ハンドミキサー1ないしは回転運動装置の大きさや求められる回転トルク等の特性等により適宜決定すればよいが、例えば、本実施形態のようなハンドミキサー1等の、手で握って用いるタイプのものであれば、外径をφ15.0〜30.0mm、内径をφ5.0〜12.0mm、厚さを0.8〜2.0mm程度にすればよい。
【0028】
また、マグネット円板4を構成する材料としては、従来公知の磁性材料を適宜選択して使用することができるが、永久磁石として非常に高い磁力を備え、また、機械的強度にも優れる等の理由で、ネオジムマグネット(NdFe14B)を使用することが好ましい。なお、ネオジムマグネットは、ニッケルメッキ等で表面処理を施してもよい。
【0029】
なお、本実施形態に係るハンドミキサー1は、第1の回転軸31に配設される第1のマグネット円板41と、第2の回転軸32に配設される第2のマグネット円板42との間隔を調整することにより、回転トルクの量を調整することができる。表1は、図7は、2つのマグネット円板4の間隔と回転トルクの関係を示すデータであり、図7は、2つのマグネット円板4の間隔と回転トルクの関係の一例を示した図である(使用したマグネット円板4の仕様は下記の通りである。)。このように、回転トルクは、2つのマグネット円板4の間隔に対して略1次関数的に減少する関係にあるので、このような関係をもとに、2つのマグネット円板4の間隔を調整して、回転トルクを決定すればよい。なお、第1のマグネット円板41と第2のマグネット円板42の間隔は、その用途により適宜決定することができるが、一定の回転トルク以上となると回転体5が空転する場合もあり、第1のマグネット円板41と第2のマグネット円板42との間隔の調整がかかる空転を防止する安全機構としての役割も備えることに鑑みれば、一般に、0.2mm〜2.0mm程度に設定することができる。構成部品の平面度や取り付けによる面振れ等を考慮すると、0.3mm〜1.5mm程度とすることが特に好ましい。
【0030】
(マグネット円板4の間隔と回転トルク)
【表1】

【0031】
(マグネット円板4の仕様)
材 質 : ネオジムマグネット(NdFe14B−37H)
外 径 : φ22.2mm
内 径 : φ11.0mm
厚 さ : 1.1mm
【0032】
次に、本実施形態に係るハンドミキサー1の使用方法の一例を説明する。電源コード(図示せず)の一端に設けられた電源プラグ(図示せず)をコンセント(図示せず)に挿入し、本体部2に配設されたスイッチ23aを一度押すことにより、モーター21が運動して、モーター軸30と接続された第1の回転軸31が低速回転する(なお、スイッチ23bを一度押すことにより、モーター21が運動して第1の回転軸31が高速運動する。)。第1の回転軸31の回転により、先端に取り付けられる第1のマグネット円板41が第1の回転軸31を軸中心として回転することになる。第1のマグネット円板41の各磁石と、第2のマグネット円板42の各磁石は引き付け合っていることから、第1のマグネット円板41の回転に応じて面対向する第2のマグネット円板42も連動して回転し、それに伴って第2の回転軸32及び回転体5も回転することになり、浸漬された対象の液体等を好適に混合・撹拌することができる。なお、この際、第1のマグネット円板41の各磁石と第2のマグネット円板42の各磁石との間には、それらの相対的位置関係の如何によって、適宜反発力も作用し合うため、かかる反発力も回転動力の伝達に貢献することになる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態に係るハンドミキサー1は、本体部2に収納されたモーター21の回転運動を電動機側回転軸となる第1の回転軸31等を介して第1のマグネット円板41が受け、かかる回転運動を面対向する第2のマグネット円板42に伝達し、回転体側回転軸となる第2の回転軸32を介して回転体5が回転する構成を採用している。これにより、回転運動が効率よくモーター21から回転体5に伝達されるとともに、第1のマグネット円板41と第2のマグネット円板42を介してハンドミキサー1が回転体5とそれ以外の部分に分離可能となるので、液体等に回転体5を浸漬させて混合撹拌した際に回転体5を通じての液体の浸入を防止することができる。
【0034】
また、本実施形態に係るハンドミキサー1は、2つのマグネット円板4の間隔により、回転トルクを調整することができるため、回転トルクの調整を簡便かつ効率よく行うことができる。
【0035】
そして、本実施形態に係るハンドミキサー1は、モーター21の回転運動を受ける第1のマグネット円板41と、第1のマグネット円板41に連接される第1の回転軸31を覆うように防水部29が配設されているため、第1のマグネット円板41、第1の回転軸31の先端は外部に現れることはなく、本体部2の内部及びモーター21等の電動機への液体の浸入を確実に防止することができる。
【0036】
(B)第2実施形態:
以下、本発明の第2実施形態に係るハンドミキサー1の一態様の構成について図面を用いて説明する。前記した第1実施形態に係るハンドミキサー1では、第1のマグネット円板41及び第2のマグネット円板42が、回転体5付近に配設され、かかる回転体5がそれ以外の部分から分離可能な態様を示した。一方、かかる第1のマグネット円板41及び第2のマグネット円板42等は、本体部2の内部に配設され、本体部2が2つに分離可能なようにしてもよい。以下、第1実施形態で示したハンドミキサー1について、第1のマグネット円板41等を本体部2の内部に配設した態様を第2実施形態として説明する。
【0037】
図8は、本発明の第2実施形態に係るハンドミキサー1を示した正面図、図9は、本発明の第2実施形態に係るハンドミキサー1を示した側面図、図10は、図9のハンドミキサーの内部構造図、図11及び図12は、図10の部分拡大図、をそれぞれ示す。
なお、以下の説明においては、前記した第1実施形態と同様の構造及び同一部材には同一符号を付して、その詳細な説明は省略または簡略化する。
【0038】
図8ないし図10に示すように、本発明の第2実施形態に係るハンドミキサーは、第1実施形態に係るハンドミキサー1における本体部2が第1の本体部2aと第2の本体部2bに分離され、第1のマグネット円板と第2のマグネット円板を介して、第1の本体部2aと第2の本体部2bが分離可能(図8に示すAを境に分離)に形成されている。
【0039】
第1の本体部2aは、電動機であるモーター21が内蔵され、モーター固定ネジ211により第1の本体部2aの内部に固定される。また、モーター21と繋がるモーター軸30には、前記した第1実施形態と同様なマグネット固定部27a及びショートヨーク28aが連接されている(本実施形態にあっては、かかるモーター軸30が電動機側回転軸となる。)。マグネット固定部27aは、その中心孔をモーター軸30に圧入して固定し、ショートヨーク28aは、かかるマグネット固定部27aに加締め固定される。かかるショートヨーク28aにドーナツ状の第1のマグネット円板41が、モーター軸30を軸中心として載置されてかかるモーター軸30に取り付けられ、かかる第1のマグネット円板41にモーター軸30の回転運動が伝達されることになる。これにより、モーター21の稼働によりモーター軸30が回転すると、第1のマグネット円板41もモーター軸30を軸中心として回転することになる。なお、図10及び図11に示すように、モーター軸30におけるモーター21とマグネット固定部27aとの間には、スラスト軸受(スラストベアリング)62が配されている。
【0040】
第2の本体部2bは、第1の本体部2aの先端側(第1のマグネット円板41が配設される側)に、モーター軸30に取り付けられた第1のマグネット円板41を覆うように配され、第1の本体部2aの突起Xと第2の本体部2bの突起Yが咬み合い、第1の本体部2aに対して取り外し可能に固定される。
【0041】
第2の本体部2bの内部では、第1の回転軸31と第2の回転軸32が、カップリング24を介して接続されており、第1の回転軸31の一端には、前記した第1のマグネット円板41と面対向するように、第2のマグネット円板42が、第1の回転軸31に連接されるショートヨーク28bに載置された状態でかかる第1の回転軸31に取り付けられ、第1の回転軸31を軸中心として配設される。また、マグネット固定部27bが、その中心孔を第1の回転軸31に圧入して固定され、ショートヨーク28bも、マグネット固定部27bに加締め固定される。さらに、かかるショートヨーク28bにドーナツ状の第2のマグネット円板42が、第1の回転軸31を軸中心として載置されてかかる第1の回転軸31に取り付けられ、かかる第2のマグネット円板42から第1の回転軸31に回転運動が伝達されることになる。そして、かかる回転運動は、第1の回転軸31から第2の回転軸32へ、カップリング24を介して伝達される(本実施形態にあっては、かかる第1の回転軸31及び第2の回転軸32が回転体側回転軸となる。)。なお、マグネット固定部27bとカップリング24との間には、防水ベアリング61と軸受(スラストベアリング)62が配されている。
【0042】
第2の本体部2bの先端部には、筒部22が連接一体化されており、かかる筒部22を第2の回転軸32が貫通する。また、筒部22の先端には、回転体5が、防水ベアリング61を介して回転可能に固定されている。回転体5には、本実施形態にあっては、前記した第1実施形態と同様、3つの爪部51が、中心(第2の回転軸32)から見て3方に等間隔に配設されているが、本実施形態にあっては、回転体5の周辺に第1のマグネット円板41や第2のマグネット円板42を配する必要がないので、第1実施形態と比較して、回転体5の高さ、深さ等のサイズを抑えることができ、コンパクトな形状にすることができる。
【0043】
第1実施形態と同様、本実施形態に係るハンドミキサー1は、第1のマグネット円板41と第2のマグネット円板42が分離可能であり、第1のマグネット円板41と第2のマグネット円板42を介して第1の本体部2aと第2の本体部2bに分離可能となる(電動機側回転軸であるモーター軸30と、回転体側回転軸である第1の回転軸31及び第2の回転軸32も第1のマグネット円板41と第2のマグネット円板42を介して分離される。)。これにより、液体等に回転体5を浸漬させて混合撹拌した際に回転体5を通じての液体の浸入を防止することができる。加えて、図11に示すように、本実施形態にあっては、第1のマグネット円板41における第2のマグネット円板42と面対向する部分は、第1の本体部2aに嵌め込み固定されている防水部29により覆われている。よって、第1のマグネット円板41、マグネット固定部27a及びモーター軸30の先端は外部に現れることはなく、第1の本体部2aの内部及びモーター21への液体の浸入を完全に防止することができる。なお、防水部29は、防水性を向上すべく、第1の本体部2aと一体化されて形成されることが好ましい。かかる防水部29の第1のマグネット円板41と対面する部分の厚さは、概ね0.3mm〜1.5mm程度とすればよい。
【0044】
本実施形態に係るハンドミキサー1は、第1実施形態に係るハンドミキサー1と同様、第1のマグネット円板41、第2のマグネット円板42の磁極の向きは、それぞれN極、S極が交互に配置されており、また、極数も同じ(8つ)であるため、モーター21が運動していない状態では、第1のマグネット円板41の各磁石と第2のマグネット円板42の各磁石がそれぞれ引き付け合うことになる。一方、モーター21が運動し、モーター軸30が回転することにより第1のマグネット円板41がモーター軸30を軸中心に回転すると、第1のマグネット円板41と引き付けあっている状態の第2のマグネット円板42も回転することになり、第2のマグネット円板42が回転することにより、第1の回転軸31及び第2の回転軸32、並びに回転体5が回転する。このように、本実施形態のハンドミキサー1は、モーター21の回転運動が、モーター軸30→第1のマグネット円板41→第2のマグネット円板42→第1の回転軸31→第2の回転軸32→回転体5と伝達されることにより、回転体5が回転されることになる。
【0045】
なお、本発明に係るハンドミキサー1にあっては、第1のマグネット円板41と第2のマグネット円板42との間隔を調整することにより回転トルクを調整できることは前記したとおりであるが、本実施形態に係るハンドミキサー1にあって、第1のマグネット円板41と第2のマグネット円板42との間隔を調整するため、第2の本体部2bの内部には、調整部材71及び調整ネジ72が配設されている。
【0046】
リング状の調整部材71は、第2のマグネット円板から第2の回転軸32寄りに、第1の回転軸31を取り囲むように配設されており、中心の孔に第1の回転軸31と防水ベアリング61と軸受(スラストベアリング)62を配し、マグネット固定部27bと接続されている。また、調整部材71とモーター21、及び調整部材71と第2の本体部2bの内面との間には、板状の緩衝ゴム73が挟まれている。
【0047】
ここで、調整ネジ72を締めると調整部材71が下がり(第2の回転軸32側に寄り)、それに伴いショートヨーク28bと第2のマグネット円板42も下がるため、間隔が広がる。一方、調整ネジ72を緩めると、調整部材71が上がり(モーター21側に寄り)、それに伴いショートヨーク28bと第2のマグネット円板42も上がるため、間隔が狭くなる。このようにして第1のマグネット円板41と第2のマグネット円板42との間隔が効率よく調整されることになる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係るハンドミキサー1は、前記した第1実施形態に係るハンドミキサーの効果を備えた上で、第1のマグネット円板41及び第2のマグネット円板42を本体部2の内部に配設しているので、本体部2が2つのマグネット円板を介して第1の本体部2aと第2の本体部2bに分離可能となる。
【0049】
(C)実施形態の変形:
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記し
た実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的及び効果を達成できる
範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。ま
た、本発明を実施する際における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的及び効果を達
成できる範囲内において、他の構造や形状等としても問題はない。本発明は前記した各実
施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良は、本
発明に含まれるものである。
【0050】
例えば、前記した実施形態では、ハンドミキサー1が第1のマグネット円板41と第2のマグネット円板42を介して分離され、第1実施形態では回転体5とそれ以外の部分、第2実施形態では第1の本体部2a及び第2の本体部2bが分離される態様を示したが、ハンドミキサー1ないしは回転運動装置1の分離される場所はこれらに限定されず、2つのマグネット円板41,42を所望の場所に面対向するように配して、2つのマグネット円板41,42を介して分離できるようにすればよい。
【0051】
前記した実施形態では、マグネット円板4について、図5に示すように、周面に45°間隔で交互にN極とS極が現れるように着磁されており、片面に対して8極(N極及びS極を4極ずつ)着磁している構成を示して説明したが、マグネット円板4の構成はこれに限定されず、片面に対して任意の極(例えば、N極及びS極をそれぞれ1、2、3、5極、あるいはこれ以上)ずつ着磁するようにしてもよい。
【0052】
前記した実施形態では、本発明に係るハンドミキサー1を構成する回転体5の形状として、図1や図8等に示した形状を例に挙げて説明したが、回転体5の形状や構成はこれらに限定されず、混合撹拌対象の液体等に応じて任意の形状とすることができる。また、回転体5を構成する爪51の数も、前記した実施形態では3つ形成した例を示して説明したが、これには限定されず、爪51の数は任意の数とすることができる。
【0053】
前記した実施形態では、本発明に係る回転運動装置1の具体例として、図1等に示したハンドミキサー1の構成を挙げて説明したが、2つのマグネット円板4の間隔により、回転トルクを調整することができることからも、多種の用途に適用可能であり、回転運動装置1の形状や構成はハンドミキサー1には限定されず、例えば、ハンディブレンダー、回転体5をスクリューとした船外機等も本発明に係る回転運動装置1に含まれるものである。
【0054】
前記した実施形態では、第1のマグネット円板41及び第2のマグネット円板42が、ショートヨーク28に載置した態様を示したが、2つのマグネット円板41,42の一方をショートヨーク28に載置するようにしてもよく、また、ショートヨークを使用せず、第1のマグネット円板41及び第2のマグネット円板42をマグネット固定部27a,27bや回転軸(電動機側回転軸、回転体側回転軸)に直接取り付けるようにしてもよい。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造及び形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、食料品、飲料品等の各種液体等を混合撹拌する装置を提供する手段として有利に使用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 …… ハンドミキサー(回転運動装置)
2 …… 本体部
2a …… 第1の本体部
2b …… 第2の本体部
20 …… 握り部
21 …… モーター(電動機)
211 …… モーター固定ネジ
22 …… 筒部
23a,23b …… スイッチ
24 …… カップリング
26 …… 固定部材
27a,27b……マグネット固定部
28 …… ショートヨーク
28a,28b ……ショートヨーク
281 …… フランジ
282 …… 孔
29 …… 防水部
30 …… モーター軸
31 …… 第1の回転軸
32 …… 第2の回転軸
4 …… マグネット円板
41 …… 第1のマグネット円板
42 …… 第2のマグネット円板
5 …… 回転体
51 …… 爪部
61 …… 防水ベアリング
62 …… スラスト軸
71 …… 調整部材
72 …… 調整ネジ
73 …… 緩衝ゴム
X …… 突起
Y …… 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転運動の駆動源となる電動機と、当該電動機を収納する本体部と、前記電動機により回転運動が伝達されて回転する回転体と、を備えた回転運動装置であって、
前記回転運動は回転軸により前記電動機から前記回転体に伝達され、
前記回転軸は、前記電動機から回転運動を伝達される電動機側回転軸と、前記回転体に回転運動を伝達する回転体側回転軸に分離され、
前記電動機側回転軸の先端には、第1のマグネット円板が、また、前記回転体側回転軸の先端には、第2のマグネット円板が面対向するように取り付けられ、
前記回転運動装置は、前記第1のマグネット円板と前記第2のマグネット円板を介して分離可能であり、
前記第1のマグネット円板と、当該第1のマグネット円板が取り付けられる前記電動機側回転軸を覆うように防水部が配設されることを特徴とする回転運動装置。
【請求項2】
前記第2のマグネット円板が前記回転体に取り付けられ、
前記第1のマグネット円板と前記第2のマグネット円板を介して、前記回転体とそれ以外の部分が分離可能に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転運動装置。
【請求項3】
前記本体部の先端とパイプ状の筒部が連接一体化され、
前記電動機側回転軸が前記筒部の内部を貫通し、
前記電動機側回転軸の先端に前記第1のマグネット円板が取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の回転運動装置。
【請求項4】
前記本体部が第1の本体部と第2の本体部からなり、
前記第1の本体部には前記電動機が収納され、
前記第1の本体部と前記第2の本体部が、前記第1のマグネット円板と前記第2のマグネット円板を介して分離可能に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転運動装置。
【請求項5】
前記第1のマグネット円板及び/または前記第2のマグネット円板が、ショートヨークに載置されて前記回転軸に取り付けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の回転運動装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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