説明

回転電機の固定子およびそれを用いた回転電機

【課題】 固定子コアから突出する固定子巻線のコイルエンドの高さを低減する回転電機の固定子を提供する。
【解決手段】 固定子巻線20を形成する線材30は、固定子コア12のスロット14、15内に設置されるスロット収容部40と、スロット14、15から固定子コア12の外に突出し、周方向に異なるスロット14、15に設置されているスロット収容部40同士を接続しているターン部42とを有している。ターン部42は固定子コア12の軸方向両側にそれぞれ形成されている。ターン部42の略中央部にはねじりを伴わないクランク部44が形成されている。スロット14、15から固定子コア12の外に突出するターン部42の突出箇所に段部46が形成されている。さらに、線材30のターン部42には、略中央部のクランク部44と、ターン部42の突出箇所に形成した段部46との間に、それぞれ2個の段部48が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機の固定子およびそれを用いた回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機および発電機を兼ねているか、あるいは電動機または発電機として専用に使用される回転電機として、特許文献1、2に開示されるものが公知である。特許文献1、2ともに、略U字状に形成された所謂セグメント導体(Segment Conductor;SC)を固定子コアのスロットに設置し、セグメント導体の開放端部を電気的に接続して固定子巻線を形成している。
【0003】
しかしながら、特許文献1では、セグメント導体のターン部の中央をねじって周方向に異なるスロットにセグメント導体を設置しているので、図24に示すように固定子コア300の軸方向両端側に突出する固定子巻線310の部分(以下、固定子コアから軸方向に突出している固定子巻線の部分を「コイルエンド」という。)の高さhが高く、固定子コア300から固定子巻線310が大きく突出するという問題がある。図25に示すように、コイルエンドの高さhは、セグメント導体320が設置されているスロット302の間隔と、コイルエンドにおけるセグメント導体320の曲げ角とにより規定される。セグメント導体320の曲げ角はセグメント導体320の太さやコイル間隔により規定される。言い換えれば、コイルエンドの高さhは、セグメント導体320が設置されているスロット302の間隔を底辺とし、セグメント導体320の曲げ角を底角とする三角形の高さにより規定される。
【0004】
これに対し、特許文献2では、図25に示すようにセグメント導体320のターン部の略中央部にねじりを伴わないクランク形状部322を形成して平坦にすることにより、コイルエンドの高さを低くしようとしている。
しかしながら、セグメント導体320が設置されているスロット302の間隔と、セグメント導体320の太さとがそれぞれ同じであれば、特許文献1および特許文献2において、コイルエンドでセグメント導体320が形成する三角形の底辺と底角の大きさは等しい。したがって、特許文献2のセグメント導体を採用してもコイルエンドの高さを低くすることには限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−285216号公報
【特許文献2】特開2003−18778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、固定子コアから突出する固定子巻線のコイルエンドの高さを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の回転電機の固定子は、周方向に複数のスロットを有する固定子コアと、スロットに設置されている固定子巻線とを備える。固定子巻線は、スロットに収容されているスロット収容部及び、ターン部を有する。ターン部は、周方向の異なるスロットに収容されているスロット収容部同士を、スロットの外部で接続する部分である。
【0008】
ここで特に、本発明では、ターン部が、固定子コアの端面に平行な複数の段部を、固定子コアの軸方向における異なる位置に有している。例えば請求項4に示すように、段部によって、ターン部が階段形状に形成されているという具合である。これにより、段部を備えないターン部と比べ、端面に平行な段部を備えた分だけ、コイルエンドの高さが小さくなる。
【0009】
具体的には請求項2に示すように、ターン部が、固定子コアの軸方向における異なる位置に、少なくとも3つの段部を有する構成とすることが例示される。
【0010】
また、請求項3に示すように、固定子コアの端面に平行な段部の長さは、周方向に隣り合うスロットの間隔以下となっていることが好ましい。このようにすれば、例えばスロットからの突出箇所に段部を設ける場合など、周方向に隣り合うスロットから突出するターン部同士の干渉を防止することができる。結果として、干渉を避けるために、コイルエンドの高さが高くなったり、あるいは、コイルエンドの径方向の幅が大きくなったりすることを防止できる。
【0011】
ところで、固定子巻線の相数がk、回転子の1極当たりの各相のスロットの数がnである場合、周方向に隣接しているk相の固定子巻線が巻回されている1極当たりのスロットの総数はk×nとなる。
【0012】
したがって、周方向の異なるスロットにまたがって設置されている固定子巻線は、周方向にk×n個離れたスロットに設置される。そのため、周方向に隣接しているスロットから突出するターン部同士の干渉を避けるためには、(k×n)個の階段形状の段部がターン部に必要になる。
【0013】
そこで、請求項5に示すように、固定子巻線の相数をk、周方向に交互に異なる複数の磁極を有する回転子の1極当たりの各相のスロットの数をnとしたとき、ターン部に形成されている階段形状の段部の数を、(k×n)にするとよい。このようにすれば、ターン部同士の干渉を防止することができ、結果として、コイルエンドの高さを、さらに低くすることができる。
【0014】
なお、請求項6に示すように、上記ターン部が、固定子コアから最も離れた位置にクランク部を有することとしてもよい。このクランク部は、クランク形状を形成する。このとき請求項7に示すように、クランク部を、固定子コアの端面に平行に形成することが例示される。このようにすれば、例えばターン部の略中央部がねじられている形状に比べ、固定子コア端面からのターン部の高さが低くなるため、コイルエンドの高さが低くなる。
【0015】
また、請求項8に示すように、クランク部が、固定子巻線を形成する線材の幅分だけ固定子コアの径方向にずれている構成としてもよい。このようにすれば、線材同士を径方向に線材の幅分ずらして隙間なく巻回して固定子巻線を形成できる。その結果、固定子巻線の径方向の幅を小さくすることができる。なお、「幅分」とは線材の略幅分ずれている場合を含む。
【0016】
さらにまた、ターン部は、請求項9に示すように、周方向に隣接した別のターン部と軸方向に重なるように配置することが例示される。このようにすれば、コイルエンドの高さを抑えることができる。
【0017】
上述した固定子巻線には、例えば請求項10に示すように、断面形状が矩形状のものを採用することが考えられる。また、請求項11に示すように、固定子巻線を、固定子コアの全周にわたって連続して形成するとよい。このようにすれば、固定子巻線の電気的接続箇所を極力減少させることができる。その結果、固定子巻線の製造コストが低減するとともに、腐食等の接続不良が発生する虞のある電気的接続箇所を減らすことができる。
【0018】
請求項12では、固定子巻線が、導体及び当該導体の外周を覆う絶縁被覆を有している。このとき、絶縁被覆は100〜200μmの厚みとなっている。このように100〜200μmの厚みの絶縁被覆で導体の外周を覆えば、固定子巻線の間に絶縁紙等を挟み込んで絶縁する必要がない、という点で有利である。
【0019】
このとき、請求項13に示すように、上記絶縁被覆が、内層及び、当該内層の外周を覆い内層よりもガラス転移温度の低い外層を有していることとしてもよい。このようにすれば、回転電機に発生する熱により外層が内層よりも早く結晶化するため、外層の表面硬度が高くなり、固定子巻線に傷がつきにくくなる。結果として、たとえ複数の段部をターン部に形成するような加工を施したとしても、固定子巻線の絶縁を十分に確保することができる。
【0020】
また、固定子巻線が、請求項14に示すように、さらに絶縁被覆の外周を覆う融着材を有することとしてもよい。ここで「融着材」とは、加熱することにより溶融し、冷却することにより凝固する材料をいう。このようにすれば、同じスロットに設置されているスロット収容部同士を融着材により容易に熱接着することができる。その結果、同じスロットに設置されている複数のスロット収容部が一体化し、スロット内の固定子巻線の機械的強度が向上する。
【0021】
以上、回転電機の固定子の発明として説明してきたが、請求項15に示すような、上述の固定子を備える回転電機の発明として実現することもできる。この場合であっても、上述したのと同様の効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(A)第1実施形態の線材の形状を示す斜視図、(B)固定子コアに巻回された固定子巻線を示す斜視図。
【図2】(A)線材の断面図、(B)線材の断面図。
【図3】(A)固定子を示す斜視図、(B)固定子を側方から見た図。
【図4】(A)固定子巻線の入力部および中性点を示す斜視図、(B)(A)のB方向矢視図。
【図5】線材のコイルエンドの形状を示す模式図。
【図6】回転電機の磁極およびスロットの構成を示す模式図。
【図7】1相当たりのスロットの配置を示す説明図。
【図8】1相当たりの巻線仕様図。
【図9】(A)第2実施形態の線材の形状を示す斜視図、(B)固定子コアに巻回された固定子巻線を示す斜視図。
【図10】第4実施形態の回転電機の構成を示した図である。
【図11】第4実施形態の回転電機のコイルの斜視図である。
【図12】第4実施形態の回転電機の固定子のコアを示した図である。
【図13】第4実施形態の回転電機の固定子のコアを構成する分割コアを示した図である。
【図14】第4実施形態の回転電機のコイルを構成する各相巻線の構成を示す断面図である。
【図15】第4実施形態の回転電機のコイルの結線を示した図である。
【図16】第4実施形態の回転電機の固定子のターン部を示した図である。
【図17】ターン部における干渉を示した図である。
【図18】第4実施形態の回転電機のコイルの結線を示した図である。
【図19】第4実施形態の回転電機のコイルのU相の結線を示した図である。
【図20】第4実施形態の回転電機のコイルを形成する固定子巻線の成形体を示した図である。
【図21】第4実施形態の回転電機のコイルにおけるU相の結線状態を示した図である。
【図22】第4実施形態の回転電機の巻線のスロットへの収容位置を示した図である。
【図23】第4実施形態の回転電機の巻線のスロットへの収容位置を示した図である。
【図24】(A)従来の固定子を示す斜視図、(B)固定子を側方から見た図。
【図25】従来の線材のコイルエンドの形状を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による固定子を図3に示す。図3に示す固定子10は、例えば車両の電動機および発電機を兼ねる回転電機に使用される。固定子10は、内周側に回転子60(図6参照)を回転自在に収容する。回転子60は、永久磁石により周方向に交互に異なる磁極を固定子10の内周側と向き合う外周側に複数形成している。固定子コア12は、所定厚さの磁性鋼板を軸方向に積層して環状に形成されている。図1に示すように、固定子コア12には、軸方向に沿い周方向に隣接するスロット14、15を一組として固定子コア12の内周側の周方向に複数組のスロットが形成されている。固定子巻線20は三相巻線であり、周方向に隣接する一組のスロット14、15に各相の固定子巻線20が設置されている。そして、スロット14、15を一組として周方向に隣接する三組のスロット14、15に異なる相の固定子巻線20が設置されている。
【0024】
図2(A)に示すように、固定子巻線20の線材30は、銅製の導体32と、導体32の外周を覆い導体32を絶縁する内層34および外層36からなる絶縁被覆とから形成されている。内層34は導体32の外周を覆い、外層36は内層34の外周を覆っている。内層34および外層36を合わせた絶縁被覆の厚みは、100μm〜200μmの間に設定されている。絶縁被膜の厚みを100μm以上とすることで自動車の駆動用モータ等の高電圧回転電機に適用した場合でも線材30同士の絶縁を確保でき、絶縁被膜の厚みを200μm以下とすることで固定子の占積率を確保できる。このように、内層34および外層36からなる絶縁被覆の厚みが厚いので、線材30同士を絶縁するために線材30同士の間に絶縁紙等を挟み込んで絶縁する必要がない。
【0025】
外層36はナイロン等の絶縁材、内層34は外層よりもガラス転移温度の高い熱可塑性樹脂またはポリアミドイミド等の絶縁材で形成されている。これにより、回転電機に発生する熱により外層36は内層34よりも早く結晶化するため、外層36の表面硬度が高くなり、線材30に傷がつきにくくなる。このため、線材30の絶縁を確保できる。
【0026】
さらに、図2(B)に示すように、固定子巻線20の線材30は、内層34および外層36からなる絶縁被覆の外周をエポキシ樹脂等からなる融着材37により覆われている。これにより、回転電機に発生する熱により融着材37は絶縁被膜よりも早く溶融するので、同じスロット14に設置されている複数の線材30同士が融着材37同士により熱接着する。その結果、同じスロット14に設置されている複数の線材30が一体化することで、スロット14の線材30の機械的強度が向上する。もちろん、融着材37で覆われない構成としてもよい。
【0027】
図1に示すように、線材30は、固定子コア12のスロット14、15内に設置されるスロット収容部40と、スロット14、15から固定子コア12の外に突出し、周方向に異なるスロット14、15に設置されているスロット収容部40同士を接続しているターン部42とを有しており、固定子コア12に波巻されることにより固定子巻線20を形成している。ターン部42は固定子コア12の軸方向両側にそれぞれ形成されている。ターン部42の略中央部にはねじりを伴わないクランク部44が形成されている。クランク部44は、ターン部42の固定子コアから最も離れた位置にクランク形状に形成されており、固定子コア12の端面13に平行に形成されている。このクランク部44のクランク形状によるずれ量は、線材30の略幅分である。これにより、径方向に隣接している線材30のターン部42同士を密に巻回できる。その結果、コイルエンドの径方向の幅が小さくなるため、固定子巻線20が径方向外側に張り出すことを防止できる。
【0028】
また、スロット14、15から固定子コア12の外に突出するターン部42の突出箇所に、線材30がまたがって設置されているスロット同士に向けて固定子コア12の軸方向両側の端面13に沿って段部46が形成されている。これにより、図5に示すように、スロット14、15から突出している線材30のターン部42の突出箇所の間隔、言い換えればターン部42が形成する三角形状部分の底辺の長さは、線材30がまたがって設置されているスロット同士の間隔よりも狭くなっている。その結果、コイルエンドの高さhが低くなる。しかも、すべてターン部42の突出箇所に、固定子コア12の軸方向両側の端面13に沿った段部46が形成されている。これにより、固定子コア12から突出している線材30の形状全体が小さくなる。
【0029】
また、固定子コア12の端面13に沿った段部46の長さをd1、周方向に隣接するスロット同士の間隔をd2とすると、d1≦d2になっている。したがって、線材30の段部46が周方向に隣り合うスロットから突出する線材30と干渉することを防止できる。これにより、周方向に隣接するスロットから突出する線材30同士が互いに干渉することを避けるために、コイルエンドの高さが高くなったり、あるいはコイルエンドの径方向の幅が大きくなったりすることを防止できる。その結果、コイルエンドの高さが低くなる。さらに、コイルエンドの径方向の幅が小さくなるため、固定子巻線20が径方向外側に張り出すことを防止できる。
【0030】
さらに、線材30には、ターン部42の略中央部のクランク部44と、ターン部42の突出箇所に形成した段部46との間に、それぞれ2個の段部48が形成されている。つまり、固定子コア12の一方の軸方向の端面13側の線材30のターン部42には、合計6個の段部と1個のクランク部とが形成されている。これにより、段部およびクランク部を形成しない三角形状のターン部330の高さに比べ、ターン部42の高さhが低くなる。段部48の形状も、段部46と同様に、固定子コア12の端面13に平行に形成されている。したがって、線材30のターン部42は、クランク部44を挟んで両側に固定子コア12の軸方向に段部を複数有する階段形状に形成されている。このとき、固定子コア12の軸方向両側の端面13に平行な段部48の長さはいずれも、周方向に隣り合うスロット14,15の間隔以下の長さとなっている。これにより、ターン部42の突出箇所が周方向に隣り合うスロット14,15から突出するターン部42と干渉することを防止できる。結果として、干渉を避けるために、コイルエンドの高さhが大きくなったり、あるいは、コイルエンドの径方向の幅が大きくなったりすることを防止できる。
【0031】
ここで、第1実施形態の三相の固定子巻線20において、回転子の1極当たり各相の線材30は2個のスロット14、15に設置されている。つまり、周方向に連続して隣接している三相固定子巻線20の回転子の1極当たりのスロットの総数は3×2=6である。その結果、周方向の異なるスロット14、15にまたがって設置されている線材30は、周方向に6個離れたスロット同士に設置されるので、線材30の略中央部の1個のクランク部44を加え、周方向に隣接しているスロットから突出する線材30同士の干渉を避けるため、第1実施形態のように(3×2)個の段部と1個のクランク部とをターン部42に形成することが望ましい。
【0032】
第1実施形態では、このように固定子コア12の一方の軸方向側のコイルエンドで線材30に6個の段部と1個のクランク部とを形成したことにより、コイルエンドの高さを低くし、コイルエンドの径方向の幅を小さくすることができる。
【0033】
次に、固定子巻線20の巻回の仕方を図6〜図8に基づいて説明する。図6〜図8では、説明を簡単にするために、回転子60の磁極数、固定子コア12のスロットの総数を減らしている。各相においてスロット14、15を一組とし、図7に示すように、4組のスロット14、15が90°間隔に固定子コア12に形成されているものとする。したがって、スロット14、15を一組とした相の異なる組同士は30°間隔で固定子コア12に形成されている。各スロット14、15にはそれぞれ線材30の4本のスロット収容部40が合計8本設置されている。各組のスロット14の径方向外側から内側に向けて線材30が設置されている位置に1〜4の番号を付し、各組のスロット15の径方向外側から内側に向けて線材30が設置されている位置に5〜8の符号を付す。
【0034】
そして図8において、一相の固定子巻線20について巻線仕様を説明する。図8において、例えば(1−4)とは、図7の#1の4の位置に設置されている線材30を表している。図8に示すように、スロット14、15の8箇所の位置に設置されている線材は、まず、以下に示す位置の線材が連続して接続し8グループを形成している。(1−1)、(1−5)の位置の線材は入力部50(図4参照)と接続している。また、一相の固定子巻線20は、(4−1)、(4−5)の2個の巻端をそれぞれ中性点52(図4参照)としている。三相の固定子巻線20の合計6個の中性点52は図4に示すように1箇所に集められている。つまり、第1実施形態の三相固定子巻線20はスター結線されている。
(グループ1) (1−1)−(2−2)−(3−1)−(4−2)
(グループ2) (1−2)−(2−1)−(3−2)−(4−1)
(グループ3) (1−3)−(2−4)−(3−3)−(4−4)
(グループ4) (1−4)−(2−3)−(3−4)−(4−3)
(グループ5) (1−5)−(2−6)−(3−5)−(4−6)
(グループ6) (1−6)−(2−5)−(3−6)−(4−5)
(グループ7) (1−7)−(2−8)−(3−7)−(4−8)
(グループ8) (1−8)−(2−7)−(3−8)−(4−7)
【0035】
そして、これら8グループの連続する線材は、(1−2)と(4−3)、(1−3)と(4−2)、(1−4)と(4−8)、(1−6)と(4−7)、(1−7)と(4−6)、(1−8)と(4−4)を接続することにより、以下に示す入力部50から中性点52に至る図8において点線と実線とで示された連続した線材30により、並列に接続された固定子巻線20(#1)および固定子巻線20(#2)を一組形成している。他の二相の固定子巻線20も同様に、入力部50から中性点52に至る連続した線材30により、並列に接続された固定子巻線20をそれぞれ一組形成している。図8に示す(1−4)と(4−8)、(1−8)と(4−4)の接続部54は図4において、三相分が同じ符号54で示されている。
・固定子巻線#1
(入力部)−(グループ1)−(グループ3)−(グループ8)−(グループ6)−(中性点)
・固定子巻線#2
(入力部)−(グループ5)−(グループ7)−(グループ4)−(グループ2)−(中性点)
【0036】
このように、固定子コア12の全周にわたり連続した線材30により入力部50から中性点52まで一相の固定子巻線を形成しているので、公知のセグメント導体を溶接等により電気的に接続して入力部50から中性点52までの固定子巻線を形成する構成に比べ、電気的接続箇所を極力減らすことができる。これにより、固定子巻線20の製造コストが低下するとともに、固定子巻線20の電気的接続不良を極力低減できる。
また、第1実施形態では、コイルエンドの径方向の幅が小さくなりコイルエンドが径方向外側に張り出さないので、中性点52をコイルエンドの径方向外側に取り出すことができる。
【0037】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態を図9に示す。尚、第1実施形態と実質的に同一構成部分に同一符号を付す。
【0038】
第2実施形態の線材70には、第1実施形態の線材30と同様に、ターン部74の略中央部にはねじりを伴わないクランク部76が形成されており、スロット14、15から固定子コア12の外に突出するターン部74の突出箇所に、スロット収容部72が設置されているスロット同士に向けて固定子コア12の端面13に沿った段部78が形成されている。ただし、第2実施形態の線材70には、ターン部74の略中央部のクランク部76とターン部74の突出箇所に形成した段部78との間は直線状に形成されており、段部は形成されていない。
【0039】
この線材70の構成においても、スロット14、15から突出している線材70が形成する三角形状部分の底辺の長さは、線材70がまたがって設置されているスロット同士の間隔よりも狭くなっている。その結果、コイルエンドの高さhが低くなる。
【0040】
(第3実施形態)
上記実施形態では、固定子巻線20の線材30、70は銅から形成される導体32からなる回転電機の固定子について説明した。これに対し、本実施形態の線材30、70はアルミニウムから形成する。アルミニウムは銅に比べて電気抵抗が大きい材料である。しかし、ターン部の突出箇所の間隔を線材が設置されているスロット同士の間隔より狭くすることで、固定子コアから突出している線材の形状が全体に小さくなり、固定子巻線全体の電気抵抗が小さくなる。このため、アルミニウムから線材30、70を形成しても固定子巻線全体の電気抵抗は従来の回転電機の固定子の固定子巻線と同程度にすることができる。導体32をアルミニウムから形成することにより、線材の加工が容易にできる。
【0041】
(第4実施形態)
本第4実施形態の回転電機401の構成を図10に示した。本実施形態の回転電機401は、略有底筒状の一対のハウジング部材410a,410bが開口部同士で接合されてなるハウジング410と、ハウジング410に軸受け510,511を介して回転自在に支持される回転軸420に固定された回転子402と、ハウジング410の内部で回転子402を包囲する位置でハウジング410に固定された固定子403と、を備えている。
【0042】
回転子402は、永久磁石により周方向に交互に異なる磁極を、固定子403の内周側と向き合う外周側に複数形成している。回転子402の磁極の数は、回転電機により異なるため限定されるものではない。本実施形態においては、8極(N極:4、S極:4)の回転子402が用いられている。
【0043】
固定子403は、図11に示した複数の各相巻線から形成される三相のコイル404と、図12に示した固定子コア430と、を備えた構成を有している。
【0044】
固定子コア430は、図12に示したように、内周に複数のスロット431が形成された円環状を有している。複数のスロット431は、その深さ方向が固定子コア430の径方向と一致するように形成されている。固定子コア430に形成されたスロット431の数は、回転子402の磁極数に対し、コイル404の一相あたり2個の割合で形成されている。すなわち、8×3×2=48個のスロット431が形成されている。
【0045】
固定子コア430は、図13に示した分割コア432を24個、周方向に配設して形成されている。分割コア432は、ひとつのスロット431を区画するとともに、周方向で隣接する分割コア432との間でひとつのスロット431を区画する形状(径方向内方に伸びるティース部432aと、ティース部432aを支持するコアバック部432b)に形成されている。
【0046】
固定子コア430を構成する分割コア432は、0.3mmの厚さの電磁鋼板を410枚積層させて形成されている。なお、積層された電磁鋼板の間には、絶縁薄膜が配置されている。なお、固定子コア430は、この電磁鋼板の積層体から形成することに限定されず、従来公知の金属薄板および絶縁薄膜を用いて形成してもよい。
【0047】
コイル404は、複数の固定子巻線440を所定の巻回方法で巻回してなる。コイル404を構成する固定子巻線440は、図14(A)に示したように、銅製の導体441と、導体441の外周を覆い導体441を絶縁する内層442a及び外層442bからなる絶縁被覆442とから形成されている。内層442aおよび外層442bを合わせた絶縁被覆442の厚みは、100μm〜200μmの間に設定されている。このように、内層442aおよび外層442bからなる絶縁被覆442の厚みが大きいので、固定子巻線440同士を絶縁するために固定子巻線440同士の間に絶縁紙等を挟み込んで絶縁する必要がなくなっている。なお、線材同士を絶縁するために絶縁紙405を配してもよい。
【0048】
さらに、コイル404の固定子巻線440は、図14(B)に示したように、内層442aおよび外層442bからなる絶縁被覆442の外周をエポキシ樹脂等からなる融着材448で被覆してもよい。これにより、回転電機に発生する熱により融着材448は絶縁被覆442よりも早く溶融するので、同じスロット431に設置されている複数の固定子巻線440同士が融着材448同士により熱接着する。その結果、同じスロット431に設置されている複数の固定子巻線440が一体化することで、スロット431の固定子巻線440の機械的強度が向上する。
【0049】
コイル404は、図15に示したように、三相巻線(U1,U2,V1,V2,W1,W2)により形成されている。より具体的には、U1相を形成する固定子巻線440aとU2相を形成する固定子巻線440bが直列接続され、U2相を形成する固定子巻線440cとU1相を形成する固定子巻線440dが直列接続され、固定子巻線440a、440bと固定子巻線440c、440dとが並列接続されてU相巻線が形成されている。V相およびW相も同様に巻線が形成されている。
【0050】
図11に示したように、コイル404を構成する固定子巻線440は、固定子コア430の内周側で周方向に沿って波巻きされている。そして、固定子コア430に形成されたスロット431に収容される直線状のスロット収容部443と、隣り合ったスロット収容部443同士を接続するターン部444と、を備えている。スロット収容部443は、所定のスロット数(本実施形態では3相×2個(倍スロット)=6個)ごとのスロット431に収容されている。ターン部444は、固定子コア430の軸方向の端面から突出して形成されている。
【0051】
コイル404において、ターン部444は固定子コア430の軸方向両側にそれぞれ形成されている。ターン部444の略中央部は、ねじりを伴わないクランク状をなすように成形されている。
【0052】
図16に示したように、スロット431から固定子コア430の外に突出するターン部444のすべての突出箇所には、固定子コア430の端面に沿った段部444Dが形成されている。図16において、段部444Dは固定子コア430から離れて設けられているが、固定子コア430と接するように配置しても良い。また、ターン部444は、固定子コア430の端面に平行な段部を固定子コアの軸方向に複数有する階段形状に形成されたことで、固定子巻線440の階段状のターン部444が周方向に隣り合うスロット431から突出する固定子巻線440と干渉することを防止できる。これにより、周方向に隣接するスロット431から突出する固定子巻線440同士が互いに干渉することを避けるために、コイル404の固定子コア430の端面から突出したコイルエンドの高さが高くなったり、あるいはコイルエンドの径方向の幅が大きくなったりすることを防止できる。その結果、コイルエンドの高さが低くなる。さらに、コイルエンドの径方向の幅が小さくなるので、コイル404が径方向外側に張り出すことを防止できる。
【0053】
階段状のターン部444は、その固定子コア430から最も離れた位置(最も高い部分)が、クランク部444Aとなっている。クランク部444Aは、固定子コア430の端面に平行に形成されており、固定子コアの径方向へのずれ量は固定子巻線440の略幅分である。具体的には、固定子巻線440の幅の1.0倍〜1.3倍のずれ量としている。固定子巻線440のターン部444は、クランク部444Aを挟んで両側を階段状に形成されている。そして、クランク部444Aでは、隣接したスロット431に収容された固定子巻線440のターン部444と上下方向に重なっている。
【0054】
ターン部444は、4段の階段状に形成されている。つまり、ターン部444は、固定子コア430の端面に平行にのびる段部が固定子コア430の軸方向に向ってそれぞれ異なる位置に3段(444B〜444D)形成されている。ここで、段部444B〜444Dは固定子コアの端面に平行となるように形成されているが、厳密な意味で平行である必要はなく、コイルエンドの高さを低くできる範囲内で略平行であれば良い。本実施形態においては、固定子コア430の端面から最も離れたクランク部444Aを除き、最も離れた段部を最上段部444B、その次に離れた段部を第二段部444C、固定子コア430の端面に最も近接した段部を第三段部444Dと称する。ここで、最上段部444B、第二段部444C、第三段部444Dの固定子コア430の端面に平行な部分の長さは、周方向に隣り合うスロット431の間隔以下となっている。
【0055】
本実施形態において、クランク部444Aと最上段部444Bの距離をl1、最上段部444Bと第二段部444Cの距離をl2、第二段部444Cと第三段部444Dとの間の距離をl3としたときに、l1>l2=l3となっている。例えば、l1がl2の1.02〜1.3倍の距離となっている。ここで、この各距離は、l1≧l2=l3であってもよい。そして、段部444B〜444Dの一段の高さは、固定子巻線440を形成する線材の略高さ分である。具体的には、線材の高さの1.0倍〜1.3倍の高さとしている。なお、本実施形態においてターン部444のクランク部444Aおよび各段部444B〜444D間の距離は、図16に模式的に示したように、クランク部444Aおよび各段部444B〜444Dの固定子コア430に背向する表面に基づいて決定した。本実施形態では、ターン部444が階段状に形成されたことで、すき間を生じることなくターン部444同士を重ね合わせることができ、ターン部444を密に巻回できる。
【0056】
さらに、本実施形態では、ターン部444のクランク部444Aおよび各段部444B〜444D間のそれぞれの距離のうち、クランク部444Aと最上段部444Bとの距離l1が他の段部444B〜444D間のそれぞれの距離l2,l3よりも長くなっている。これにより、ターン部444のクランク部444Aが別のターン部444と重なるときに別のターン部444の固定子巻線440と干渉を生じなくなっている。このとき、ターン部444のうち、クランク部444Aの端部と最上段部444Bの端部とを接続する接続部の傾斜は、最上段部444Bの端部と第二段部444Cの端部とを接続する接続部の傾斜よりも急な傾斜となっている。
【0057】
これに対して、クランク部444Aと最上段部444Bとの距離l1が他の段部444B〜444D間のそれぞれの距離l2,l3よりも短い場合(l1<l2=l3)には、図17に示したように、乗り越えるターン部444を構成する固定子巻線440の矩形状の断面での角部同士が接触して干渉が生じる。
【0058】
本実施形態において、ターン部444の第三段部444Dと固定子コア430の端面との距離は、特に限定されるものではないが、固定子巻線440を形成する線材の略高さ分であることが好ましい。
【0059】
コイル404は、ターン部444が固定子コア430から突出したコイルエンドの高さの範囲内で、コイル404を構成する各固定子巻線440の端部が径方向外方に向かって突出している。そして、各固定子巻線440の端部であって、中性点側の端部は、他方の端部よりも高い位置で径方向外方に突出している。
【0060】
次に、本実施形態におけるコイル404を構成する固定子巻線440の巻回状態を図18〜23を用いてより具体的に説明する。
【0061】
本実施形態のコイル404は、それぞれ二組の三相巻線(U1,U2,V1,V2,W1,W2)により形成されている。図18に、三相巻線のそれぞれの結線の状態を示した。図18におけるスロット番号は、U1相をなす固定子巻線440の中性点側の端部に最も近接したスロット収容部443が収容されるスロット431を1番とし、以後、固定子巻線440が巻回される周方向にそって2番、3番‥と便宜的につけた番号である。また、図19に、図18のU相(U1,U2)をなす固定子巻線440のみの結線の状態を示した。なお、図18および図19において、上下方向に直線状に形成された部分がスロット収容部443に相当し、上方側および下方側の傾斜した部分がターン部444に相当する。
【0062】
本実施形態のコイル404の展開図を図20に示した。図20に示したように、コイル404は、固定子巻線440aと440cの端部を接続して中性点側とするとともに,固定子巻線440bと440dの端部を接続して相端子側としている。
【0063】
各相の結線方法は同様であり、コイル404の固定子巻線440の巻回の仕方をU相を用いて説明する。U相における固定子巻線440の結線の状態を図21に示した。図21(a)は440a,440bの結線状態、図21(b)は440c,440dの結線状態を示す。また、各固定子巻線440a,440bのスロット431内の深さ方向での位置とターン部444の位置との関係を図22に示し、各固定子巻線440c,440dのスロット431内の深さ方向での位置とターン部444の位置との関係を図23に示した。
【0064】
まず、固定子巻線440a,440bの結線状態を図21(a)および図22を用いて説明する。U相をなす固定子巻線440が収容されるスロット431は、回転子402が8極であり、固定子コア430に16個(440a−1,440a−2,・・・,440a−8,440b−1,440b−2,・・・,440b−8)が形成されている。スロット431には8本のスロット収容部443が深さ方向に重なって収容される。スロット431の深さ方向でスロット収容部443が収容される位置を、開口部から深さ方向に進むにつれて、8番、7番、6、…1番と呼ぶ。
【0065】
固定子巻線440a,440bは直列接続されており、固定子巻線440a−1の端部が固定子403の中性点に接続され、固定子巻線440b−1の端部が固定子巻線440dと接続されてU相端子に接続される。
【0066】
固定子巻線440aは、中性点に最も近いスロット収容部443となるスロット440a−1の1番に収容される。固定子巻線440bは、固定子巻線440bの端部に最も近いスロット収容部443となるスロット440b−1の1番に収容される。
【0067】
固定子巻線440aのスロット440a−1に収容されたスロット収容部443にターン部444を介して接続されたスロット収容部443(次のスロット収容部443)は、固定子コア430の軸方向で中性点に接続される端部が突出した側(以下、上方側)に背向した端部側(以下、下方側)のターン部444I(下)を介して接続され、スロット440a−2の2番に収容される。このように、ターン部444I(下)は、スロット440a−1の1番とスロット440a−2の2番とを固定子コア430の下方側で接続する。
スロット440a−2に収容された固定子巻線440aの次のスロット収容部443は、ターン部444II(上)を介して接続され、スロット440a−3の1番に収容される。このように、ターン部444II(上)は、スロット440a−2の2番とスロット440a−3の1番とを固定子コア430の上方側で接続する。
スロット440a−3に収容された固定子巻線440aの次のスロット収容部443は、ターン部444III(下)を介して接続され、スロット440a−4の2番に収容される。このように、ターン部444III(下)は、スロット440a−3の1番とスロット440a−4の2番とを固定子コア430の下方側で接続する。
【0068】
固定子巻線440bのスロット440b−1に収容されたスロット収容部443にターン部444を介して接続されたスロット収容部443(次のスロット収容部443)は、固定子コア430の軸方向でU相に接続される端部が突出した側(以下、上方側)に背向した端部側(以下、下方側)のターン部444II(下)を介して接続され、スロット440b−2の2番に収容される。このように、ターン部444II(下)は、スロット440b−1の1番とスロット440b−2の2番とを固定子コア430の下方側で接続する。
スロット440b−2に収容された固定子巻線440bの次のスロット収容部443は、ターン部444III(上)を介して接続され、スロット440b−3の1番に収容される。このように、ターン部444III(上)は、スロット440b−2の2番とスロット440b−3の1番とを固定子コア430の上方側で接続する。
スロット440b−3に収容された固定子巻線440bの次のスロット収容部443は、ターン部444IV(下)を介して接続され、スロット440b−4の2番に収容される。このように、ターン部444IV(下)は、スロット440b−3の1番とスロット440b−4の2番とを固定子コア430の下方側で接続する。
【0069】
このように、2本の固定子巻線440a,440bは、固定子コア430の上方側に位置するターン部444II(上)〜444VII(上)が隣接するスロット収容部443の2番と1番とを、下方側に位置するターン部444I(下)〜444VIII(下)が隣接するスロット収容部443の1番と2番とを、接続する。この接続方法で周方向に1周して、スロット440a−1からスロット440a−8, スロット440b−1からスロット440b−8まで2本の固定子巻線440a,440bのスロット収容部443が設置される。スロット440a−8,440b−8では、2番目に固定子巻線440aのスロット収容部443が収容される。
【0070】
そして、スロット440a−8,440b−8の2番目にスロット収容部443が収容された固定子巻線440a,440bの次のスロット収容部443は、スロット440a−1,440b−1の3番に収容される。このように、ターン部444VIII(上),444I(上)は、スロット440a−8,440b−8の2番とスロット440a−1,440b−1の3番とを固定子コア430の上方側で接続する。つまり、周方向で1周したら、径内方向に、接合体が巻回して1層分内径側にずれている。
【0071】
スロット440a−1の3番に接続された固定子巻線440aはターン部444I(下)を介して接続され、スロット440a−2の4番に収容される。このように、ターン部444I(下)は、スロット440a−1の3番とスロット440a−2の4番とを固定子コア430の下方側で接続する。
スロット440a−2に収容された固定子巻線440aの次のスロット収容部443は、ターン部444II(上)を介して接続され、スロット440a−3の3番に収容される。このように、ターン部444II(上)は、スロット440a−2の4番とスロット440a−3の3番とを固定子コア430の上方側で接続する。
【0072】
スロット440a−3に収容された固定子巻線440aの次のスロット収容部443は、ターン部444III(下)を介して接続され、スロット440a−4の4番に収容される。このように、ターン部444III(下)は、スロット440a−3の3番とスロット440a−4の4番とを固定子コア430の下方側で接続する。
スロット440b−1の3番に接続された固定子巻線440bはターン部444II(下)を介して接続され、スロット440b−2の4番に収容される。このように、ターン部444II(下)は、スロット440b−1の3番とスロット440b−2の4番とを固定子コア430の下方側で接続する。
【0073】
スロット440b−2に収容された固定子巻線440bの次のスロット収容部443は、ターン部444III(上)を介して接続され、スロット440b−3の3番に収容される。このように、ターン部444III(上)は、スロット440b−2の4番とスロット440b−3の3番とを固定子コア430の上方側で接続する。
スロット440b−3に収容された固定子巻線440bの次のスロット収容部443は、ターン部444IV(下)を介して接続され、スロット440b−4の4番に収容される。このように、ターン部444IV(下)は、スロット440b−3の3番とスロット440b−4の2番とを固定子コア430の下方側で接続する。
【0074】
このように、2本の固定子巻線440a,440bは、固定子コア430の上方側に位置するターン部444II(上)〜444VII(上)が隣接するスロット収容部443の3番と4番とを、下方側に位置するターン部444I(下)〜444VIII(下)が隣接するスロット収容部443の3番と4番とを接続する。この接続方法で周方向に1周して、スロット440a−1からスロット440a−8, スロット440b−1からスロット440b−8まで2本の固定子巻線440a,440bのスロット収容部443が設置される。スロット440a−8,440b−8では、4番目に固定子巻線440aのスロット収容部443が収容される。
そして、スロット440a−8,440b−8の4番目にスロット収容部443が収容された固定子巻線440a,440bの次のスロット収容部443は、スロット440a−1,440b−1の5番に収容される。このように、ターン部444VIII(上),444I(上)は、スロット440a−8,440b−8の4番とスロット440a−1,440b−1の5番とを固定子コア430の上方側で接続する。つまり、周方向で1周したら、径内方向に、接合体が巻回して1層分内径側にずれている。
【0075】
スロット440a−1の5番に接続された固定子巻線440aはターン部444I(下)を介して接続され、スロット440a−2の6番に収容される。このように、ターン部444I(下)は、スロット440a−1の5番とスロット440a−2の6番とを固定子コア430の下方側で接続する。
スロット440a−2に収容された固定子巻線440aの次のスロット収容部443は、ターン部444II(上)を介して接続され、スロット440a−3の5番に収容される。このように、ターン部444II(上)は、スロット440a−2の6番とスロット440a−3の5番とを固定子コア430の上方側で接続する。
【0076】
スロット440a−3に収容された固定子巻線440aの次のスロット収容部443は、ターン部444III(下)を介して接続され、スロット440a−4の6番に収容される。このように、ターン部444III(下)は、スロット440a−3の5番とスロット440a−4の6番とを固定子コア430の下方側で接続する。
スロット440b−1の5番に接続された固定子巻線440bはターン部444II(下)を介して接続され、スロット440b−2の6番に収容される。このように、ターン部444II(下)は、スロット440b−1の5番とスロット440b−2の6番とを固定子コア430の下方側で接続する。
【0077】
スロット440b−2に収容された固定子巻線440bの次のスロット収容部443は、ターン部444III(上)を介して接続され、スロット440b−3の5番に収容される。このように、ターン部444III(上)は、スロット440b−2の6番とスロット440b−3の5番とを固定子コア430の上方側で接続する。
スロット440b−3に収容された固定子巻線440bの次のスロット収容部443は、ターン部444IV(下)を介して接続され、スロット440b−4の6番に収容される。このように、ターン部444IV(下)は、スロット440b−3の5番とスロット440b−4の6番とを固定子コア430の下方側で接続する。
このように、2本の固定子巻線440a,440bは、固定子コア430の上方側に位置するターン部444II(上)〜444VII(上)が隣接するスロット収容部443の5番と6番とを、下方側に位置するターン部444I(下)〜444VIII(下)が隣接するスロット収容部443の5番と6番とを接続する。この接続方法で周方向に1周して、スロット440a−1からスロット440a−8, スロット440b−1からスロット440b−8まで2本の固定子巻線440a,440bのスロット収容部443が設置される。スロット440a−8,440b−8では、6番目に固定子巻線440aのスロット収容部443が収容される。
【0078】
そして、スロット440a−8,440b−8の6番目にスロット収容部443が収容された固定子巻線440a,440bの次のスロット収容部443は、スロット440a−1,440b−1の7番に収容される。このように、ターン部444VIII(上),444I(上)は、スロット440a−8,440b−8の6番とスロット440a−1,440b−1の7番とを固定子コア430の上方側で接続する。つまり、周方向で1周したら、径内方向に、接合体が巻回して1層分内径側にずれている。
スロット440a−1の7番に接続された固定子巻線440aはターン部444I(下)を介して接続され、スロット440a−2の8番に収容される。このように、ターン部444I(下)は、スロット440a−1の7番とスロット440a−2の8番とを固定子コア430の下方側で接続する。
【0079】
スロット440a−2に収容された固定子巻線440aの次のスロット収容部443は、ターン部444II(上)を介して接続され、スロット440a−3の7番に収容される。このように、ターン部444II(上)は、スロット440a−2の8番とスロット440a−3の7番とを固定子コア430の上方側で接続する。
スロット440a−3に収容された固定子巻線440aの次のスロット収容部443は、ターン部444III(下)を介して接続され、スロット440a−4の8番に収容される。このように、ターン部444III(下)は、スロット440a−3の7番とスロット440a−4の8番とを固定子コア430の下方側で接続する。
【0080】
スロット440b−1の7番に接続された固定子巻線440bはターン部444II(下)を介して接続され、スロット440b−2の8番に収容される。このように、ターン部444II(下)は、スロット440b−1の7番とスロット440b−2の8番とを固定子コア430の下方側で接続する。
スロット440b−2に収容された固定子巻線440bの次のスロット収容部443は、ターン部444III(上)を介して接続され、スロット440b−3の7番に収容される。このように、ターン部444III(上)は、スロット440b−2の8番とスロット440b−3の7番とを固定子コア430の上方側で接続する。
【0081】
スロット440b−3に収容された固定子巻線440bの次のスロット収容部443は、ターン部444IV(下)を介して接続され、スロット440b−4の8番に収容される。このように、ターン部444IV(下)は、スロット440b−3の7番とスロット440b−4の8番とを固定子コア430の下方側で接続する。
このように、2本の固定子巻線440a,440bは、固定子コア430の上方側に位置するターン部444II(上)〜444VII(上)が隣接するスロット収容部443の7番と8番とを、下方側に位置するターン部444I(下)〜444VIII(下)が隣接するスロット収容部443の7番と8番とを接続する。この接続方法で周方向に1周して、スロット440a−1からスロット440a−8, スロット440b−1からスロット440b−8まで2本の固定子巻線440a,440bのスロット収容部443が設置される。スロット440a−8,440b−8では、8番目に固定子巻線440aのスロット収容部443が収容される。
【0082】
そして、このスロット440a−8,440b−8の8番目に収容されたスロット収容部443が接続される。このように、固定子巻線440a,440bが固定子コア430に巻装される。
【0083】
次に、固定子巻線440c,440dの結線状態は、図21(b)および図23に示したとおりであり、固定子巻線440a,440bと同様に結線しているため、詳細な説明は省略する。
【0084】
本実施形態では、ターン部444のクランク部444A及び各段部444B〜444D間の距離がl1>l2=l3(あるいはl1≧l2=l3)をなすことで、異なるターン部444を構成する固定子巻線440同士の干渉が抑えられ、干渉によるすき間を生じることなくターン部444同士を重ね合わせることができ、ターン部444を密に巻回できる。
さらに、本実施形態では、クランク部444Aと最上段部444Bとの間の距離が長く形成されており、ターン部が別のターン部と重なるときにターン部同士の干渉を防止できる。
【0085】
(他の実施形態)
上記実施形態では、電動機および発電機を兼ねている回転電機の固定子について説明した。これに対し、電動機または発電機のいずれかの専用の回転電機の固定子として上記実施形態の固定子を適用してもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、固定子コア12の全周にわたって連続した線材により各相の固定子巻線を形成した。これに対し、U字状のセグメント導体を互いに溶接等により接続し、このセグメント導体に第1実施形態または第2実施形態に示したクランク部および段部を形成して固定子巻線を形成してもよい。
【0087】
また、固定子巻線は三相に限らず、多相であればよい。この場合、多相固定子巻線の相数をk、回転子の1極当たりの各相のスロットの数をnとすると、線材のターン部に形成される階段部の数は(k×n)であることが望ましい。
また上記実施形態では、ターン部の略中央部にクランク部を形成した。これに対し、スロットから突出するターン部の突出箇所に段部が形成されるのであれば、ターン部の略中央部にクランク部を形成しない形状でもよい。
また、上記実施形態では、固定子の内周側に回転子を設置し固定子が内周側で回転子と向き合う構成について説明した。これに対し、固定子の外周側に回転子を設置し固定子が外周側で回転子と向き合う構成を採用してもよい。
【0088】
上記実施形態では、三相固定子巻線20をスター結線にした。これに対し、三相固定子巻線を環状のデルタ結線にしてもよい。
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0089】
10:固定子、12:固定子コア、13:端面、14,15:スロット、20:固定子巻線、30:線材、32:導体、34:内層、36:外層、37:融着材、40:スロット収容部、42:ターン部、44:クランク部、46:階段部、48:階段部、50:入力部、52:中性点、54:接続部、60:回転子、70:線材、72:スロット収容部
、74:ターン部、76:クランク部、78:階段部、300:固定子コア、302:スロット、310:固定子巻線、320:セグメント導体、322:クランク形状部、330:ターン部、401:回転電機、402:回転子、403:固定子、404:コイル、410:ハウジング、420:回転軸、430:固定子コア、431:スロット、432:分割コア、440:巻線、441:導体、442:絶縁被覆、442a:内層、442b:外層、443:スロット収容部、444:ターン部、444A:クランク部、444B:最上段部、444C:第二段部、444D:第三段部、448:融着材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に複数のスロットを有する固定子コアと、前記スロットに設置されている固定子巻線とを備える回転電機の固定子において、
前記固定子巻線は、前記スロットに収容されているスロット収容部と、周方向の異なる前記スロットに収容されている前記スロット収容部同士を、前記スロットの外部で接続しているターン部とを有し、
前記ターン部は、前記固定子コアの端面に平行な複数の段部を、前記固定子コアの軸方向における異なる位置に有すること
を特徴とする回転電機の固定子。
【請求項2】
前記ターン部は、前記段部を、前記固定子コアの軸方向における異なる位置に、少なくとも3つ有すること
を特徴とする請求項1に記載の回転電機の固定子。
【請求項3】
前記段部は、前記固定子コアの端面に平行な長さが、周方向に隣り合う前記スロットの間隔以下となっていること
を特徴とする請求項1又は2に記載の回転電機の固定子。
【請求項4】
前記ターン部は、前記段部によって、階段形状に形成されていること
を特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の回転電機の固定子。
【請求項5】
前記固定子巻線の相数をk、周方向に交互に異なる複数の磁極を有する回転子の1極当たりの各相の前記スロットの数をnとすると、前記ターン部に形成されている前記段部の数は(k×n)であること
を特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の回転電機の固定子。
【請求項6】
前記ターン部は、前記固定子コアから最も離れた位置にクランク形状を形成するクランク部を有すること
を特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の回転電機の固定子。
【請求項7】
前記クランク部は、前記固定子コアの端面に平行に形成されていること
を特徴とする請求項6に記載の回転電機の固定子。
【請求項8】
前記クランク部は、前記固定子巻線を形成する線材の幅分だけ前記固定子コアの径方向にずれていること
を特徴とする請求項6又は7に記載の回転電機の固定子。
【請求項9】
前記ターン部は、周方向に隣接した別のターン部と軸方向に重なるように配置されていること
を特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の回転電機の固定子。
【請求項10】
前記固定子巻線は、断面形状が矩形状であること
を特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の回転電機の固定子。
【請求項11】
前記固定子巻線は、前記固定子コアの全周にわたって連続して形成されていること
を特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の回転電機の固定子。
【請求項12】
前記固定子巻線は、導体及び、当該導体の外周を覆う絶縁被覆を有し、
前記絶縁被覆は、100〜200μmの厚みであること
を特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の回転電機の固定子。
【請求項13】
前記絶縁被覆は、内層及び、当該内層の外周を覆い前記内層よりもガラス転移温度の低い外層を有すること
を特徴とする請求項12に記載の回転電機の固定子。
【請求項14】
前記固定子巻線は、さらに前記絶縁被覆の外周を覆う融着材を有すること
を特徴とする請求項12又は13に記載の回転電機の固定子。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の回転電機の固定子と、
前記固定子の内周側または外周側に、周方向に交互に異なる磁極を形成している回転子と
を備えたことを特徴とする回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2010−119294(P2010−119294A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41433(P2010−41433)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【分割の表示】特願2008−52528(P2008−52528)の分割
【原出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】