説明

回転電機及び電動パワーステアリング装置

【課題】回転電機の軸方向の長さの短縮化と構造の単純化を実現しつつ、複数種類の径のケースを使用できる回転電機を提供する。
【解決手段】回転電機12は、ロータ61及びステータ62を収容する有底円筒形のケース50と、ケース50の開口部を閉鎖し、ロータ61の出力軸を通す蓋部52と、ケース50を挿入可能なケース挿入孔52aを有し、ケース50の外周に取り付け可能で、なおかつ回転電機12をその取付け対象物に取り付けるための取付け部52bを有するフランジ部材52と、フランジ部材52とケース50との間に介在され、脱着可能なスペーサ53と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機及び電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば自動車用操舵系に用いられる電動式のパワーステアリング装置(EPS:Electric Power Steering)の駆動源として、回転電機が用いられている。
【0003】
従来の回転電機は、ロータ及びステータを収容する有底円筒形のケースと、当該ケースの開口部に配設されロータの出力軸が通るブラケット部を有している。このブラケット部により、ネジを介して回転電機が周辺機器の減速機などに取り付けられている。
【0004】
例えばブラケット部の内側には、ロータの出力軸の軸受や、ロータの回転方向の位置合わせを行うレゾルバセンサ等が軸方向に並べて配置され、ブラケット部は、それらの軸受やレゾルバセンサを固定する機構を備えている。また、ブラケット部の外壁には、ステータに給電するためのハーネスやレゾルバセンサの信号線を外部に引き出すための貫通孔等が設けられている。また、軸方向に向いた複数のネジにより回転電機を周辺機器に固定する必要があるため、ブラケット部のネジの取付け部は、軸方向の十分の厚みを有している(特許文献1〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3593102号公報
【特許文献2】特開2004−23841号公報
【特許文献3】特開2008−109837号公報
【特許文献4】特開2007−237790号公報
【特許文献5】国際公開第2007/026894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、従来の回転電機では、ブラケット部に軸方向の十分な長さが必要であり、これによって、回転電機が軸方向に比較的長くなっていた。回転電機の電動パワーステアリング装置への搭載性、当該電動パワーステアリング装置の自動車への搭載性等を考慮すると、回転電機の軸方向の長さを短くして、回転電機を小型化し、重量を軽くすることが望ましい。また、ブラケット部の構造を簡単にし、回転電機にかかるコストを低減することも望ましい。
【0007】
そこで、回転電機のケースを挿入可能なケース挿入孔を有し、前記ケースの外周に取り付け可能で、なおかつ前記回転電機を減速機などの取付け対象物に取り付けるための取付け部を有するフランジ部材を有する回転電機が提案できる。この回転電機によれば、当該フランジ部材がケースの外周に重なり、そこでフランジ部材により回転電機を減速機などに取り付けることができるので、その分回転電機の軸方向の長さを短縮できる。従来のブラケット部の機能がフランジ部材と蓋部に分けられるので、フランジ部材と蓋部の形状等を簡略化できる。
【0008】
ところで、目的に応じて回転電機の出力を変えたい場合、例えば回転電機が、ケース径の異なるものに換えられる。これは、ケース径(ステータ径)が出力と相関があるためである。しかしながら、上述の提案の回転電機を用いた場合、ケースを挿入するフランジ部材があるので、ケースの径毎に異なるフランジ部材が必要になり、複数種類の径のケースを使用して出力を変更する場合には適さない。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、回転電機の軸方向の長さの短縮化と構造の単純化を実現しつつ、複数種類の径のケースを使用できる回転電機と、その回転電機を備えた電動パワーステアリング装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明は、ロータ及びステータを収容する有底円筒形のケースと、前記ケースの開口部を閉鎖し、前記ロータの出力軸を通す蓋部と、前記ケースを挿入可能なケース挿入孔を有し、前記ケースの外周に取り付け可能で、なおかつ回転電機をその取付け対象物に取り付けるための取付け部を有するフランジ部材と、前記ケースの外周に取り付けられたフランジ部材と前記ケースとの間に介在され、脱着可能なスペーサと、を有する回転電機である。
【0011】
本発明によれば、フランジ部材をケースの外周に取り付けることができるので、フランジ部材がケースの外周に重なり、その分回転電機の軸方向の長さを短縮できる。また、従来のブラケット部の機能がフランジ部材と蓋部に分けられるので、フランジ部材と蓋部の形状等を簡略化できる。加えて、回転電機が、フランジ部材とケースの間に介在され、脱着可能なスペーサを有するので、ケースの径に応じた厚みのスペーサを、フランジ部材とケースの間に介在させ、ケースとフランジ部材の隙間を埋めて、ケースとフランジ部材とをしっかり固定することができる。よって、一つのフランジ部材で、複数種類の径のケースに対応でき、回転電機にかかるコストを低減できる。
【0012】
前記ケースの外周面には、前記フランジ部材を取り付けるためのフランジ取付け部が形成され、前記フランジ部材は、前記ケースを当該ケースの底側から挿入して、前記フランジ取付け部に取り付け可能であってもよい。かかる場合、ケースを、配線の少ない底側から挿入して、フランジ部材をケースに取り付けることができるので、フランジ部材の取り付けを簡単に行うことができる。
【0013】
前記フランジ部材には、回転電機の駆動を制御する制御ユニットが取り付けられていてもよい。かかる場合、制御ユニットがケースから独立しているので、径の異なるケース毎に制御ユニットの筺体等の設計変更を行う必要がなく、コストを低減できる。
【0014】
前記ケースには、前記ケース内から外部に通じる配線が通る貫通孔が形成されていてもよい。かかる場合、ケースの内部の配線をケースの壁面から外部に取り出すことができ、ブラケット部から引き出した従来よりも、回転電機の軸方向の長さを短縮できる。
【0015】
前記蓋部の内側と外側には、それぞれ凹部が形成され、それらの凹部には、前記ロータのレゾルバセンサと前記ロータの出力軸の軸受が設けられていてもよい。かかる場合、蓋部の内側と外側の凹部に、レゾルバセンサと軸受が配置されるので、レゾルバセンサと軸受を合わせた軸方向の厚みが低減される。これによって、回転電機の軸方向の長さをさらに短縮できる。
【0016】
前記スペーサは、弾性体で形成されていてもよい。かかる場合、スペーサ自体が伸縮するので、回転電機の駆動により発熱しその熱によってケースやフランジ部材が熱膨縮しても、その熱膨縮に適切に対応できる。よって、回転電機の信頼性を向上できる。また、ケース内で生じる振動を吸収できるので、回転電機の騒音を低減できる。
【0017】
前記スペーサの内周面には、凹凸が形成されていてもよい。かかる場合、スペーサの熱伝導性が低くなるので、ケース側或いはフランジ部材側が、ぞれぞれで発生した熱により互いに影響しあうことが抑制される。
【0018】
前記スペーサと前記フランジ部材は、互いに嵌合する嵌合部を有していてもよい。かかる場合、スペーサとフランジ部材との位置ずれを防止できる。
【0019】
別の観点による本発明は、上記記載の回転電機を有する電動パワーステアリング装置である。本発明によれば、安価で搭載性がよく、出力変更を好適に行うことができる電動パワーステアリング装置が実現される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、回転電機の軸方向の長さの短縮化と構造の単純化を実現しつつ、複数種類の径のケースを使用できる回転電機を実現できるので、回転電機又は電動パワーステアリング装置にかかるコストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】電動パワーステアリング装置の構成の概略を示す説明図である。
【図2】ウォーム減速機構の構成の概略を示す説明図である。
【図3】回転電機の構成の概略を示す縦断面の説明図である。
【図4】回転電機をフロント側から見た正面図である。
【図5】ケース、フランジ部材及び蓋部の互いの取付け部を示す回転電機の断面図である。
【図6】フランジ部材をフロント側から見た正面図である。
【図7】フランジ部材の取付け部を示す回転電機の断面図である。
【図8】スペーサの正面図である。
【図9】フランジ部材にスペーサを取り付けた状態を示す説明図である。
【図10】フランジ部材にスペーサを取り付けない場合を示す説明図である。
【図11】凹凸を有するスペーサをフランジ部材に取り付けた状態を示す説明図である。
【図12】軸方向の突条部を有するスペーサの断面図である。
【図13】軸方向に向かう多数の突条部を有するスペーサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる回転電機を有する電動パワーステアリング装置1の構成の概略を示す説明図である。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0023】
電動パワーステアリング装置1は、例えばコラムタイプのものであり、車両のステアリングホイールHが固定されるステアリングシャフト10と、ラック・ピニオン運動変換機構11と、ステアリングホイールHに付加された操舵トルクに応じて補助操舵トルクを発生させる回転電機12と、回転電機12とステアリングシャフト10との間に介在され、回転電機12の回転を減速させるウォーム減速機構13と、回転電機12の駆動を制御する制御ユニット14等を有している。
【0024】
ステアリングシャフト10は、ステアリング入力軸10aとステアリング出力軸10bを有し、ハウジング20に覆われている。ステアリング入力軸10aの上端にステアリングホイールHが固定されている。ステアリング入力軸10aとステアリング出力軸10bは、トルクセンサ21のトーションバーを介して接続されている。ステアリングホイールHの操作により生じる操舵トルクは、ステアリング入力軸10aを通じてトルクセンサ21により検出され、制御ユニット14に出力され、当該制御ユニット14によって、検出された操舵トルクに基づいて回転電機12の出力が制御される。この回転電機12の構成の詳細については後述する。
【0025】
ウォーム減速機構13は、例えば図2に示すようにステアリング出力軸10bに取り付けられたウォームホイール30と、ウォームホイール30の外周歯車に噛み合うウォーム31を有している。ウォーム31は、ハウジング32に対して固定されている2つの軸受33、34により支持されている。ウォーム31の一端は、回転電機12の後述するシャフト60に対して同軸上にスプライン構造で結合されている。これにより、例えばステアリング出力軸10b及びウォームホイール30の駆動によりウォーム31が受けた軸方向の反力を、ウォーム減速機構13において吸収できる。
【0026】
図1に示すようにステアリング出力軸10bとラック・ピニオン運動変換機構11とは、2つの自在継手40、41と連結部材42により連結されている。また、ラック・ピニオン運動変換機構11は、ラック・ピニオンギアによりステアリング出力軸10bと操作車輪のタイロッドを接続している。
【0027】
回転電機12により出力された回転力は、ウォーム減速機構13を介して、補助操舵トルクとしてステアリング出力軸10bに伝達され、当該補助操舵トルクは、ステアリング出力軸10bからラック・ピニオン運動変換機構11を介して操作車輪のタイロッドに伝達される。
【0028】
次に、上述の回転電機12の構成について説明する。回転電機12は、例えば図3に示すように有底円筒形のケース50と、ケース50の開口部を閉鎖する蓋部51と、ケース50の外周に取り付け可能なフランジ部材52と、ケース50の外周に取り付けられたフランジ部材52とケース50との間に介在されるスペーサ53等を有している。
【0029】
ケース50は、例えば軸方向のフロント側(図3の左側)の面が開口し、リア側(図3の右側)の面が閉鎖された有底筒形状を有している。蓋部51は、ケース50のフロント側の開口部を閉鎖している。
【0030】
図4及び図5に示すようにケース50のフロント側の端部には、蓋部51とフランジ部材52を取り付けるための、外側に突出したフランジ取付け部50aが形成されている。フランジ取付け部50aには、貫通孔50bが形成されている。フランジ取付け部50aは、複数個所、例えばケース50の直径上で対向する2か所に形成されている。
【0031】
図3に示すようにケース50内には、シャフト60を回転させるロータ61と、ケース50に対し固定されたステータ62が設けられている。
【0032】
ステータ62は、ケース50の内壁面に固定されている。ステータ62は、ケース50に圧入、接着、焼きばめ等で固定されている。ステータ62は、筒形状のステータコア70を有している。ステータコア70には、インシュレータ71が挿入され、その状態でコイル72が巻き付けられている。なお、3相モータの場合、3n個(nは整数)のステータコアは、継鉄部(バックヨーク)毎を圧入、溶接等で一体化してもよい。一体化しないステータコアは、ケース50に対して圧入してもよい。
【0033】
ロータ61は、ステータ62の内側に設置されている。ロータ61は、内部にロータコアを有し、その軸心にシャフト60が貫通している。また、ロータコアの外周面には、セグメントマグネットを2n個(nは整数)又は、リングマグネットが設けられている。ロータコアの外周部形状は、セグメントマグネットと接する面に凹凸を設けてもよい。ロータコアの内部には、磁石を配置する埋め込み磁石タイプを用いてもよい。ロータカバーは、薄肉の非磁性の材料(例えば、ステンレス材、アルミニウム、熱収縮チューブ等)から形成されており、ロータ軸方向からの圧入、焼きばめ、溶接等で設置することができる。
【0034】
ケース50のリア側の底部中央には、凹部50cが形成され、当該凹部50cには、シャフト60のリア側を支持する軸受80が設けられている。
【0035】
ステータ62のフロント側には、ステータ62のコイル72に電気的に接続された端子台90が設置されている。また、端子台90には、ステータ62に給電するためのバスバー91が電気的に接続されている。バスバー91は、ケース50に設けられた貫通孔50dを通じて、制御ユニット14の後述する端子台112に接続されている。ケース50の貫通孔50dには、グロメット92が設置され、バスバー91は、グロメット92の穴部を通ってケース50の外部に通じている。
【0036】
蓋部51は、例えば薄板の円形状に形成されている。蓋部51は、例えばケース50の開口部の径よりも大きく形成され、外周部分がケース50よりも外側に突出している。蓋部51には、中央にシャフト60のフロント側が通る貫通孔51aと、蓋部51のリア側の面の中央に設けられたリア面凹部51bと、フロント側の面の中央に設けられたフロント面凹部51cが設けられている。リア面凹部51bには、シャフト60のフロント側を支持する軸受100が設けられており、フロント面凹部51cには、ロータ61によるシャフト60の回転位置を検出するレゾルバセンサ101が設けられている。
【0037】
レゾルバセンサ101は、シャフト60に圧入された円筒状のレゾルバロータ102と、そのレゾルバロータ102の外周を囲むレゾルバステータ103を有している。レゾルバステータ103は、フロント面凹部51cに圧入、カシメ、溶接等により固定されている。レゾルバステータ103には、図4に示すように制御ユニット14に通じるセンサハーネス104が電気的に接続されている。なお、このセンサハーネス104は、ケース50の外側から制御ユニット14に通じてもよいし、ケース50の内側から制御ユニット14に通じてもよい。
【0038】
蓋部51には、図4及び図5に示すようにケース51とフランジ部材52を取り付けるための、外側に突出した取付け部51dが形成されている。取付け部51dには、円弧状に長い長穴の貫通孔51eが形成されている。この長穴の貫通孔51eにより、蓋部51の周方向の取り付け位置を調整し、レゾルバセンサ101の初期位置を調整できる。取付け部51dは、複数個所、例えば蓋部51の直径上で対向する2か所に形成されている
【0039】
図6は、フランジ部材52のフロント側の正面図である。フランジ部材52は、ケース50を挿入可能な円形のケース挿入孔52aを有している。ケース挿入孔52aは、例えばケース50をケース50の底側から挿入してフロント側に設置できるように、ケース50の外径よりも大きな径を有している。これにより、図3に示すようにフランジ部材52を、ケース50の外周面に嵌め込んでケース50のフロント側の外周面に設置できる。フランジ部材52の外周部には、例えば図6及び図7に示すように取付け対象物としてのウォーム減速機13に取り付けるための取付け部52bが形成されている。取付け部52bは、複数個所、例えばケース挿入孔52aの直径上で対向する2か所に形成されている。取付け部52bには、例えばネジ穴52cが形成され、ネジ穴52cにネジを嵌め込んで回転電機12をウォーム減速機13に取り付けることができる。
【0040】
また、フランジ部材52の外周部には、図6に示すように蓋部51及びケース50に取り付けるためのネジ穴52dが形成されている。ネジ穴52dは、複数個所、例えばケース挿入孔52aの直径上で対向する2か所に形成されている。図4に示すようにフランジ部材52のネジ穴52d、蓋部51の貫通孔51e及びケース50の貫通孔50bにボルト105を通して固定することにより、フランジ部材52、蓋部51及びケース50を互いに固定できる。
【0041】
図3に示すようにフランジ部材52の内周(ケース挿入孔52a)のフロント側には、後述のスペーサ53の凸部53aと嵌合するリング状の凹部52eが形成されている。
【0042】
図4に示すようにフランジ部材52には、制御ユニット14が一体化されて設けられている。例えば制御ユニット14は、筺体110に覆われている。筺体110の側面には、センサハーネス104を電気的に接続するコネクタ111が設けられている。筺体110のフロント側には、凹部110aが形成されており、凹部110aには、バスバー91を電気的に接続する端子台112が設けられている。制御ユニット14は、トルクセンサ21により検出された操舵トルクの情報や、レゾルバセンサ101により検出された回転位置情報を得ることができる。また、制御ユニット14は、操舵トルク情報等に基づいて、バスバー91を通じてステータ62に給電し、回転電機12の駆動を制御できる。
【0043】
図8は、スペーサ53の正面図である。スペーサ53は、図3に示すように円筒状に形成され、ケース50とフランジ部材52の間に介在される。スペーサ53は、例えばゴムなどの弾性体により形成され、ケース50及びフランジ部材52から着脱自在である。スペーサ53のフロント側には、外側に突出しフランジ部材52の凹部52eと嵌合する環状の凸部53aが設けられている。スペーサ53は、フランジ部材52の凹部52eと嵌合した状態で、フロント側の端面が蓋部51と密着して固定される。スペーサ53には、例えば図8に示すようにバスバー91が通るための凹部53bと、ケース50のフランジ取付け部50aと干渉しないための凹部53cが形成されている。スペーサ53は、複数種類の厚みのものが用意されており、ケース50とフランジ部材52との間に隙間ができないようにケース50の径に応じて選択できる。
【0044】
以上のように構成された回転電機12を組み立てる際には、例えば図9に示すようにケース50の径Aに応じてスペーサ53が選択され、当該スペーサ53がフランジ部材52の内側(ケース挿入孔52a)に取り付けられる。その状態で、フランジ部材52がケース50の底側からケース52の外周面に嵌め込まれ、ケース50のフランジ取付け部50aと蓋部51に当接して、ケース50のフロント側の外周面に配置される。なお、図10に示すようにケース50の径Bがフランジ部材52のケース挿入孔52aと同じ径である場合には、スペーサ53を取り付けずに、フランジ部材52がケース50の外周面に嵌め込まれる。
【0045】
その後、ボルト105が、蓋部51の貫通孔51e、ケース50の貫通孔50b及びフランジ部材52のネジ穴52dに嵌め込まれ、フランジ部材52、ケース50及び蓋部51が仮固定される。このとき、バスバー91やセンサハーネス104が制御ユニット14の各端子台112、コネクタ111に接続される。
【0046】
その後、ロータ61を回転させ、そのとき発生させた誘起電圧と、レゾルバセンサ101により検出される回転位置信号が整合するように、蓋部51を回転させレゾルバセンサ101の位置を調整する。調整後、ボルト105により蓋部51を、フランジ部材52及びケース50に固定する。その後、フランジ部材52の取付け部52bのネジ穴52cにネジが嵌め込まれ、回転電機12がウォーム減速機13に取り付けられる。
【0047】
以上の実施の形態によれば、フランジ部材52をケース50の外周に取り付けることができるので、フランジ部材52がケース50の外周に重なり、その分回転電機12の軸方向の長さを短縮できる。また、従来のブラケット部の機能がフランジ部材52と蓋部51に分けられるので、フランジ部材52と蓋部51の形状等を簡略化できる。加えて、回転電機12が、フランジ部材52とケース50の間に介在され、脱着可能なスペーサ53を有するので、ケース50の径に応じた厚みのスペーサ53を、フランジ部材52とケース50の間に介在させ、ケース50とフランジ部材52の隙間を埋めて、ケース50とフランジ部材52とをしっかり固定することができる。よって、一つのフランジ部材52で、複数種類の径のケース50に対応でき、回転電機12にかかるコストを低減できる。
【0048】
また、フランジ部材52は、ケース50を当該ケース50の底側から挿入して、フランジ取付け部50aに取り付け可能である。このため、ケース50を、配線の少ない底側から挿入して、フランジ部材52をケース50に取り付けることができるので、フランジ部材52の取り付けを簡単に行うことができる。
【0049】
フランジ部材52には、制御ユニット14が取り付けられており、制御ユニット14がケース50から独立しているので、径の異なるケース50毎に制御ユニット14の筺体110等の設計変更を行う必要がなく、コストを低減できる。
【0050】
ケース50には、ケース50内から外部に通じる配線が通る貫通孔50dが形成されているので、ケース50の内部の配線をケース50の壁面から外部に取り出すことができる。よって、ブラケット部から引き出した従来よりも、回転電機12の軸方向の長さを短縮できる。
【0051】
蓋部51の内側と外側には、それぞれ凹部51b、51cが形成され、それらの凹部51b、51cには、軸受100とレゾルバセンサ101が設けられている。このため、軸受100とレゾルバセンサ101を合わせた軸方向の厚みが低減され、これによって、回転電機12の軸方向の長さをさらに短縮できる。
【0052】
スペーサ53は、弾性体で形成されているので、スペーサ53自体が伸縮し、回転電機12の駆動による発熱等により生じたケース50やフランジ部材52の熱膨縮に対応できる。よって、回転電機12の信頼性を向上できる。また、ケース50内で生じる振動を吸収できるので、回転電機12の騒音を低減できる。
【0053】
スペーサ53とフランジ部材52は、嵌合部を構成する凸部53aと凹部52eを有しているので、スペーサ53とフランジ部材52の位置ずれを防止できる。
【0054】
以上の実施の形態で記載したスペーサ53の内周面には、凹凸が形成されていてもよい。例えば図11に示すようにスペーサ53の内周面に、周方向の複数の突条部120が形成されている。かかる場合、スペーサ53の熱伝導性が低くなるので、ケース50側或いはフランジ部材52側が、ぞれぞれで発生した熱により互いに影響しあうことが抑制される。
【0055】
また、スペーサ53の凹凸は、図12及び図13に示すように軸方向に向かう複数の突条部120を有するものであってもよい。この突条部120は、周方向に等間隔に配置されている。この場合、ケース50の保持バランスが良いので、回転電機12の中心バランスが良好になる。また、例えばスペーサ53を製造する際の型の型抜き設計が容易なので、製造が容易である。図12のスペーサ53に比べて、図13のスペーサ53は、突条部120が多いので、スペーサ53にかかる面圧を分散し、各突条部120にかかる負担を軽減できる。
【0056】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0057】
例えば以上の実施の形態で記載したケース50内の構成は、他の構成であってもよく、例えばレゾルバセンサ101と軸受100が逆の位置で、蓋部51の外側のフロント面凹部51cに軸受100が設けられ、蓋部51の内側のリア面凹部51bにレゾルバセンサ101が設けられていてもよい。また、スペーサ53の材質は、弾性体に限られず、振動を抑制する制振鋼板や、樹脂等で形成されていてもよい。また、フランジ部材52には、制御ユニット以外のものが取り付けられてもよい。また、以上の実施の形態では、回転電機12が電動パワーステアリング装置1に適用されていたが、本発明は、他の用途の装置のモータにも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、回転電機の軸方向の長さの短縮化と構造の単純化を実現しつつ、複数種類の径のケースを使用できる回転電機を実現する際に有用である。
【符号の説明】
【0059】
1 電動パワーステアリング装置
12 回転電機
14 制御ユニット
50 ケース
51 蓋部
52 フランジ部材
52a ケース挿入孔
52b 取付け部
53 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ及びステータを収容する有底円筒形のケースと、
前記ケースの開口部を閉鎖し、前記ロータの出力軸を通す蓋部と、
前記ケースを挿入可能なケース挿入孔を有し、前記ケースの外周に取り付け可能で、なおかつ回転電機をその取付け対象物に取り付けるための取付け部を有するフランジ部材と、
前記ケースの外周に取り付けられたフランジ部材と前記ケースとの間に介在され、脱着可能なスペーサと、を有する、回転電機。
【請求項2】
前記ケースの外周面には、前記フランジ部材を取り付けるためのフランジ取付け部が形成され、
前記フランジ部材は、前記ケースを当該ケースの底側から挿入して、前記フランジ取付け部に取り付け可能である、請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記フランジ部材には、回転電機の駆動を制御する制御ユニットが取り付けられている、請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記ケースには、前記ケース内から外部に通じる配線が通る貫通孔が形成されている、請求項1〜3のいずれかに記載の回転電機。
【請求項5】
前記蓋部の内側と外側には、それぞれ凹部が形成され、それらの凹部には、前記ロータのレゾルバセンサと前記ロータの出力軸の軸受が設けられている、請求項1〜4のいずれかに記載の回転電機。
【請求項6】
前記スペーサは、弾性体で形成されている、請求項1〜5のいずれかに記載の回転電機。
【請求項7】
前記スペーサの内周面には、凹凸が形成されている。請求項1〜6のいずれかに記載の回転電機。
【請求項8】
前記スペーサと前記フランジ部材は、互いに嵌合する嵌合部を有している、請求項1〜7のいずれかに記載の回転電機。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の回転電機を有する電動パワーステアリング装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−160642(P2011−160642A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22931(P2010−22931)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】