説明

回転電機用ロータ

【課題】ロータ内の多数の冷媒流路に対して冷媒を均等に供給できる回転電機用ロータを提供する。
【解決手段】磁性を有する複数の板状部材18を回転軸40の軸芯X方向に積層し、軸芯X方向に貫通した冷媒流路10aを回転軸40の周方向に沿って複数形成したロータ本体10と、回転軸40を介して供給された冷媒を複数の冷媒流路10aに分配する冷媒分配機構とを備え、冷媒分配機構に、回転軸40から供給された冷媒を周方向に沿って留める環状の溜まり部61を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性を有する複数の板状部材を回転軸の軸芯方向に積層し、前記軸芯方向に貫通した冷媒流路を前記回転軸の周方向に沿って複数形成したロータ本体と、前記回転軸を介して供給された冷媒を前記複数の冷媒流路に分配する冷媒分配機構とを備えた回転電機用ロータに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の回転電機用ロータに関連する先行技術文献情報として下記に示す特許文献1がある。この特許文献1に記された回転電機用ロータでは、筒状に形成されたロータの回転軸の内部に出力軸が相対回転可能に配置され、両軸部材は歯車機構によって接続されている。ロータ内の永久磁石の近傍を軸心と平行に延びる複数の冷媒流路に冷媒を分配する冷媒分配機構としては、出力軸の基端付近から軸心方向の中間部まで延びて同箇所から径方向外向きに出力軸外に開放される軸冷却流路を設けている。冷媒流路の中央部付近から径方向内側に向かって延びる連絡流路が、出力軸とロータの回転軸との相対角度位相に応じて、軸冷却流路の開放端と対向可能な構成とされている。尚、ロータの回転軸の内面と出力軸との間には環状の間隙があるため、冷却油ポンプによって送り出され軸冷却流路の開放端を出る冷却油(冷媒)は、その一部のみが連絡流路を介してロータの冷媒流路へと向かい、残りの冷却油はロータの回転軸や出力軸のベアリングを潤滑した後、オイルパンなどを経て冷却油ポンプに戻る構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−290979号公報(0019−0020段落、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記された回転電機用ロータでは、軸冷却流路の開放端から送り出された冷却油は、環状の間隙を経てロータの連絡流路に進入する必要がある。また、特許文献1に記された出力軸に設けることの可能な径方向外向き孔の数は、出力軸の強度を考慮すれば高々2個と考えられるが、一般的な回転電機用ロータではロータ内に多数(6個以上など)の永久磁石が配置される。これらの理由により、特許文献1に記された回転電機用ロータでは、冷却油が軸冷却流路の開放端から多数の連絡流路に均等に進入し難い。このため、周方向に沿って複数配置された冷媒流路の間で必ずしも一定とならず、冷媒による冷却効果も周方向において不均一に働き、ロータの一部が過熱する虞があった。また、ロータ内での冷却油の不均一分配によってロータ自身の見掛けの質量分布にもアンバランスが生じるために、振動によるうなり発生の要因となる虞もあった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上に例示した従来技術の状況に鑑み、ロータ内の多数の冷媒流路に対して冷媒をより均等に供給することができ、その結果、ロータの一部が過熱する虞が抑制され、且つ、振動によるうなり発生も出難い回転電機用ロータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による回転電機用ロータの第1の特徴構成は、
磁性を有する複数の板状部材を回転軸の軸芯方向に積層し、前記軸芯方向に貫通した冷媒流路を前記回転軸の周方向に沿って複数形成したロータ本体と、
前記回転軸を介して供給された冷媒を前記複数の冷媒流路に分配する冷媒分配機構とを備え、
前記冷媒分配機構に、前記回転軸から供給された冷媒を前記周方向に沿って留める環状の溜まり部を設けた点にある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成による回転電機用ロータでは、回転軸を介して供給される冷媒は、ロータの回転による遠心力の効果で、環状の溜まり部を全周にわたって満たし、その溜まり部から溢れ出た冷媒が遠心力によって順次、径方向外側の冷媒流路に向かう。そのため、冷媒がロータに設けられた複数の冷媒流路に均等に配分されるので、ロータの一部が過熱する虞が少なく、回転駆動中の振動によるうなり発生も出難い回転電機用ロータが得られた。
【0008】
本発明の他の特徴構成は、前記溜まり部を、前記回転軸に形成した冷媒供給口と対向させ、且つ、前記軸芯の径外方向に関して前記冷媒流路よりも前記回転軸寄りに位置させている点にある。
【0009】
本構成であれば、溜まり部を冷媒供給口と対向させているため、冷媒供給口から排出された冷媒が直ぐに溜まり部に進入でき、周方向に沿って環状に留まり易くなる。また、溜まり部が回転軸寄りに有るので、冷媒の溜まり部をシャフトの外周面よりもロータの冷媒流路寄りに設けた場合に比して、ロータの回転時における溜まり部の周速が低くなり、溜まり部における冷媒の挙動がより静的なものとなるため、ロータに設けられた複数の冷媒流路への冷媒の均等配分がより達成され易くなる。
【0010】
本発明の他の特徴構成は、前記溜まり部が前記軸芯に関する径方向内側に開口した環状溝からなる点にある。
【0011】
本構成であれば、十分な量の冷媒を遠心力によって環状溝の底部に安定的に留めることができ、この環状溝の軸心方向の片側の壁面によって構成される堰部から溢れた冷媒が遠心力で径方向外向きに飛ばされることで、冷媒流路の周辺や同周辺に配置された永久磁石を効率よく冷却できる。
【0012】
本発明の他の特徴構成は、前記溜まり部を、前記回転軸に形成した冷媒供給口と複数の前記冷媒流路の開口とを覆う状態に前記回転軸に外嵌した冷媒案内部材の一部として設けてある点にある。
【0013】
本構成であれば、溜まり部を一体的に備えた冷媒案内部材を製作して、回転軸に外嵌設置することで必要な溜まり部の構成が実現されるため、部品数や組み立て工数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】回転電機の破断側面図である。
【図2】回転電機の軸心方向に垂直な断面図である。
【図3】本発明に係る回転電機用ロータの分解斜視図である。
【図4】溜まり部の成形方法を示す拡大図である。
【図5】溜まり部の第2実施形態を示す拡大図である。
【図6】溜まり部の第3実施形態を示す拡大図である。
【図7】溜まり部の第4実施形態を示す拡大図である。
【図8】溜まり部の第5実施形態を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示した断面図、図2に示した断面図及び図3に示した分解斜視図に基づいて、本発明に係る回転電機用ロータを電動モータのロータとして使用する場合の実施形態について説明する。各図において矢印は冷媒の流れを示す。電動モータ1は永久磁石型モータであり、ハイブリッド車や電気自動車の駆動源として利用可能なものである。電動モータ1は、回転軸40によってケース30に軸心X回りで軸支されるロータ本体10と、ロータ本体10の径方向外側に配置され、ケース30に固定されるステータ20とを備えて構成される。ケース30は、図1において左側部分を構成するケース部材30aと、右側部分を構成するケース部材30bとを接合して構成される。尚、回転軸40を駆動するように構成すれば、本回転電機を発電機として機能させることも可能である。
【0016】
ロータ本体10は複数の電磁鋼板18(磁性を有する板状部材の一例)を積層させて構成されるが、プレス加工により各電磁鋼板18に円周方向に等間隔に打ち抜き穴を設けることで、ロータ本体10の円周方向には等間隔に複数の冷媒流路10aが形成されている。図3に示すように、永久磁石11は、それぞれの冷媒流路10aの径方向外側に接着固定されている。冷却油(冷媒の一例)が冷媒流路10aを流れて排出口10bから排出される間に、永久磁石11の熱が冷媒によって回収されることにより、永久磁石11が高温により減磁することが抑制される。
【0017】
回転軸40は、ケース30に設けられた一対のベアリング31を介してケース30に軸支される。回転軸40は内部空間40aを有する円筒状に構成されている。ケース部材30aの内面と対向する回転軸40の一端は閉鎖されているが、回転軸40の他端には、やはり円筒状の出力軸41が同心状に固定されている。また、回転軸40の出力軸41よりもロータ本体10寄りの箇所には、軸心Xを挟んで向き合う一対の冷媒供給口40bが径方向に貫通形成されている。
冷却油は、電動式のポンプPによってオイルパン70から出力軸41の内部空間41aを経て回転軸40の内部空間40aに進入し、内部空間40aを満たした後に、冷媒供給口40bから冷媒流路10aに導かれる。
【0018】
回転軸40の外周には、概して皿状の冷媒案内部材60が固定されている。図1と図3に示すように、冷媒案内部材60は、最も小径の第1フランジ部60aと、第1フランジ部60aの外周部からロータ本体10側に垂直に延出された第1ボス部60bと、第1ボス部60bのロータ本体10側の端部から概して径方向外向きに延出された第2フランジ部60cと、第2フランジ部60cの外周部からロータ本体10側に垂直に延出された第2ボス部60dとを有する。冷媒案内部材60は、一対の冷媒供給口40bと複数の冷媒流路10aの開口とを同時に覆う状態で回転軸40に外嵌設置されている。
【0019】
冷媒案内部材60は、第1ボス部60bが一対の冷媒供給口40bに対して外径側で対向するように配置されている。
冷媒案内部材60は、第1フランジ部60aの内径側に形成された雌ネジを回転軸40の外周の雄ネジ部に螺合させることで固定されており、この螺合の過程で、第2ボス部60dのロータ本体10側の端面は、ロータ本体10の冷媒流路10aを外径側に回避した箇所に当て付けられている。
【0020】
冷媒案内部材60の第2フランジ部60cの内径側の端部には、第1ボス部60bの内面よりも内径側に突出した環状の堰部60pが形成されている。この堰部60pの第1ボス部60b寄りの端面と、第1ボス部60bの内周面と、第1フランジ部60aの第1ボス部60b寄りの端面とが互いに協働して、回転軸40を介して供給される冷却油を回転軸40の径方向外側に周方向に沿って留める環状の溜まり部61(冷媒分配機構の一例)を形成している。すなわち、溜まり部61は、回転軸40の外周面、特に冷媒供給口40bと対向し、径方向内側に開口する環状溝を呈しているため、ロータ本体10の回転による遠心力に基づいて所定量の冷却油を環状に留め、その後、堰部60pから溢れた冷媒を複数の冷媒流路10aに均等分配することができる。
【0021】
回転軸40の内部空間40aから、冷媒供給口40bを介して径方向外向きに排出された冷却油は、溜まり部61内で一旦環状に保持され、溜まり部61を溢れた冷却油が、遠心力によりロータ本体10の端面と第2フランジ部60cの内面との間の円板状の流路を経て、冷媒流路10aに供給される。すなわち、冷却油は溜まり部61で一定の厚さを備えた環状に保持された後に、環状の堰部60pを越えた冷却油が、遠心力により径方向外向きに送り出されるので、8つの冷媒流路10aに対してほぼ均等に分配される。溜まり部61は、回転軸40の外周面寄りに設けられた小径の保持部の体裁をなしているので、径方向に関して冷媒流路10aの付近に設ける場合に比して、冷却油が溜まり部61に静的に保持される。
【0022】
永久磁石11は冷媒流路10aの径方向外側に配置されているので、ロータ本体10の回転時に冷却油に遠心力が作用すると、冷媒案内部材60によって導入された冷却油が永久磁石11に接しながら流れ、永久磁石11が効率的に冷却される。尚、永久磁石11を冷却流路10aとは別の空間に配置してもよいが、永久磁石11を冷却油によって効果的に冷却するために冷却用流路10aの近傍に配置すべきことは言うまでもない。
【0023】
ステータ20は、ロータ本体10と同様に、複数の電磁鋼板を積層させて構成される。ステータ20にはコイル21が配置され、コイル21に通電を行うことにより、ステータ20に磁界が発生し、永久磁石11を備えたロータが回転する。コイル21には絶縁紙や絶縁皮膜が設けられており、複数の導線を束ねるために結束糸が用いられている。ステータ20から突出したコイルエンド21aにおいては、上記絶縁紙、絶縁皮膜、結束糸等が外部に曝されているため、高速の冷却油が衝突するとこれらが破損する虞がある。
【0024】
そこで、ロータ本体10の両端面のうち、冷媒案内部材60と反対側の面には、コイルエンド21aを高速の冷却油から保護するための冷媒規制部材50が取り付けられている。図3に示すように、冷媒規制部材50は、中心に貫通孔50hを備えた底部50aと、底部50aの外周から軸心Xとほぼ平行に電磁鋼板18から離間する方向に延出された壁部50bとを有する皿状に構成されている。貫通孔50hによって冷媒規制部材50を回転軸40に外嵌させて、回転軸40の外周面の一部に形成された雄ネジに対してナット51を締め付けていくと、底部50aがロータ本体10の端面に押付け固定される。図2及び図3に示すように、底部50aの各冷媒流路10aと対応する位置には冷媒排出孔50dが形成されている。冷却油の円滑な排出を図るために、冷媒排出孔50dの外径側の内面は、永久磁石11の内径側の面とほぼ一致するように構成されている。
【0025】
図では、遠心力により径方向外側に沿って流れる冷却油が連通孔50dから排出され易いように、連通孔50dは冷媒流路10aの径方向外側寄りに形成されている。一方、仮に連通孔50dを冷媒流路10aの径方向内側寄りに形成すると、一定量以上の冷却油が冷媒流路10aに溜まってから、冷却油が連通孔50dから排出される。従って、冷媒流路10a内の冷却油が時間をかけて永久磁石11の熱を回収できるので、冷却効率の向上が期待できる。即ち、連通孔50dを径方向のどのような位置に形成するか、また、連通孔50dの孔径や形状は電動モータ1が使用される条件等に応じて適宜決めればよい。
【0026】
ロータ本体10の電磁鋼板18の抜け止め手段として、回転軸40の外周の一部には一つの環状の固定フランジ部40dが一体的に突出形成されている。冷媒案内部材60は、回転軸40の外周面の一部に形成された雄ネジ部に螺合固定されている。この螺合固定に基づいて、冷媒案内部材60の第2ボス部60dがロータ本体10の電磁鋼板18を冷媒規制部材50に対して押付け付勢している。
【0027】
規制部材50の壁部50aの先端50bは、コイルエンド21aの先端21bよりも先端側に突出するように構成されている。従って、壁部50aの先端50bから遠心力により径方向外側に排出される冷却油が、コイルエンド21aと衝突することを防止できる。その結果、コイルエンド21aの絶縁紙、絶縁皮膜、結束糸等の損傷を回避することができる。
【0028】
また、ケース30の内周面のうち冷却油が衝突する領域には、径方向内側に突出するフィン32を設けてある。永久磁石11を冷却して昇温した冷却油がロータ本体10から排出された後、フィン32と接触することにより、フィン32を介した熱交換が促進され、冷却油の放熱を効率的に行うことができる。フィン32に衝突し、運動エネルギーを消失するとともに冷却された冷却油が、ケース30の内面を伝ってステータ20やコイル21に供給されることにより、これらの部材を破損することなく、効率的に冷却を行うことができる。尚、フィン32の形状は図1、2に示したものに限らず、内周面から斜めに突出したものでもよいし、複数のフィン32が必ずしも同一形状である必要はない。
【0029】
〔別実施形態〕
〈1〉図1に示す冷媒案内部材60は、環状の堰部60pが軸心方向の中間位置で内径側に突出した形状のため、一般的な構造の金型で射出成形することは困難であり、そのため、溜まり部61のない部品を作製後に環状溝を呈する溜まり部61を研削加工するなどの煩雑な工程が必要となる。この研削加工の工程をなくす手法の一つとして、図4では、図1と同等の形状の冷媒案内部材60を2段階で比較的簡単に製造する方法を示している。すなわち、先ず、図4(a)に示すように、軸心Xと平行に延出した環状の延長部60p′を備えた冷媒案内部材60を射出成形などで作製し、次工程で、ポンチなどを用いて延長部60p′を曲げ加工することで、内径側に突出する堰部60pを形成している。
【0030】
〈2〉図5に示す第2実施形態では、冷媒案内部材60とは別の補助円板部材70を冷媒案内部材60に取り付ける手法で溜まり部61を形成している。補助円板部材70は貫通孔を備えた円板状を呈しており、第2フランジ部60cの内面に数箇所でネジ止め固定されている。補助円板部材70の貫通孔の内径を第1ボス部60bの内周面よりも若干小さく設定することで、冷媒を溜める堰部60pが形成され、溜まり部61が得られている。
【0031】
〈3〉図6に示す第3実施形態では、冷媒案内部材60とは別の補助筒状部材71を冷媒案内部材60に取り付ける手法で溜まり部61を形成している。補助筒状部材71は、円筒状の固定部71aと、固定部71aのロータ本体10寄りの端面から径方向内側に突出したフランジ部71bとからなる。固定部71aの外周面は第1ボス部60bの内周面とほぼ同寸法に形成されており、第1ボス部60bの内周面に圧入などによって固定されている。フランジ部71bが冷媒を溜める堰部60を形成し、溜まり部61が得られている。
【0032】
〈4〉図7に示す第4実施形態では、冷媒案内部材60とは別の補助筒状部材72を回転軸40の外周面に固定する手法で溜まり部61を形成している。補助筒状部材72は、円筒状の固定部72aと、固定部72aのロータ本体10寄りの端面から径方向内側に突出した第1フランジ部72bと、固定部72aの反ロータ本体10寄りの端面から径方向内側に突出した第2フランジ部72cとからなる。固定部72aの外周面は第1ボス部60bの内周面とほぼ同寸法に形成されており、第1ボス部60bの内周面に圧入などによって固定されている。補助筒状部材72は第2フランジ部72cの内周面に形成された雌ネジによって回転軸40の外周面に螺合されている。第1フランジ部72bが冷媒を溜める堰部60を形成し、溜まり部61が得られている。
【0033】
〈5〉図8に示す第5実施形態は、図5に示す第2実施形態の補助円板部材70を更に変形した補助円板部材73を冷媒案内部材60に取り付ける手法で溜まり部61を形成している。補助円板部材73はその内周面に凹凸部が周方向に沿って全周に連続的に形成されている点で第2実施形態の補助円板部材70と異なる。凹凸部は径方向内側に突出した凸部70aと、径方向内側に窪んだ凹部70bとを備えている。例えば、凸部70aの内周面が第2実施形態の補助円板部材70の内周面に一致し、凹部70bの底面が第1ボス部60bの内周面と第2実施形態の補助円板部材70の内周面との中間の位置になるように構成することができるが、凸部70aの内周面や凹部70bの底面の位置については、冷媒の粘性や供給量などに応じて種々変更可能である。この構成では、電動モータの温度や気温の上昇などによって冷媒の粘性が高まるのに応じて、隣接する凸部70aどうしの間から溜まり部61外に冷媒が溢れ出易くなり、冷媒流路10aへの冷媒流量が増えるという作用が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、磁性を有する複数の板状部材を回転軸の軸芯方向に積層し、軸芯方向に貫通した冷媒流路を前記回転軸の周方向に沿って複数形成したロータ本体と、回転軸を介して供給された冷媒を複数の冷媒流路に分配する冷媒分配機構とを備えた回転電機用ロータに適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
10 ロータ本体
10a 冷媒流路
18 電磁鋼板(板状部材)
40 回転軸
X 軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性を有する複数の板状部材を回転軸の軸芯方向に積層し、前記軸芯方向に貫通した冷媒流路を前記回転軸の周方向に沿って複数形成したロータ本体と、
前記回転軸を介して供給された冷媒を前記複数の冷媒流路に分配する冷媒分配機構とを備え、
前記冷媒分配機構に、前記回転軸から供給された冷媒を前記周方向に沿って留める環状の溜まり部を設けた回転電機用ロータ。
【請求項2】
前記溜まり部を、前記回転軸に形成した冷媒供給口と対向させ、且つ、前記軸芯の径外方向に関して前記冷媒流路よりも前記回転軸寄りに位置させている請求項1に記載の回転電機用ロータ。
【請求項3】
前記溜まり部が前記軸芯に関する径方向内側に開口した環状溝からなる請求項1または2に記載の回転電機用ロータ。
【請求項4】
前記溜まり部を、前記回転軸に形成した冷媒供給口と複数の前記冷媒流路の開口とを覆う状態に前記回転軸に外嵌した冷媒案内部材の一部として設けてある請求項1から3のいずれか一項に記載の回転電機用ロータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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