説明

回転電機

【課題】回転子コイルエンドの一様な冷却性能と分解組立性を両立したコイルエンド支持構造を有する回転電機を提供する。
【解決手段】
固定子と、前記固定子の内側にエアギャップを介して配置される回転子とを備え、前記回転子の外周部には、所定の間隔を置いて周方向に複数配設されたコイルスロットを備えた回転子鉄心を有し、前記コイルスロットの中には界磁コイルが設けられ、前記界磁コイルは、前記回転子の回転軸方向に沿って突出したコイルエンド部を形成し、前記界磁コイルの内径側に近接してエンドリングを備え、前記回転子鉄心の軸方向端部には、放射状に配置されたスペーサーバーを有する回転電機において、前記回転子の前記コイルエンド部の外周側に近接して円筒状の支持ケーシングを備え、かつ、前記支持ケーシングを径方向内向きに支持する手段を有する回転電機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転電機の回転子に係り、特に、例えば可変速発電機などの円筒形回転子の巻線端部支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、発電機などの回転電機では、回転子と固定子それぞれの巻線や鉄心を冷却する必要があり、そのための冷却構造が設けられている。また回転子巻線は、運転時に作用する遠心力に抗して固定保持する支持構造を備えている。
【0003】
可変速発電機などに採用される円筒形回転子においては、巻先端部が回転軸方向に外側に突出している。円筒形回転子の巻線端部の代表的な支持構造の一つに、巻線端部の外周にバインド線を巻き回す方式がある。一例として、図7に可変速揚水発電機の回転子巻線端部の支持構造を示す。
【0004】
図7の回転子は、回転軸の周囲に軸方向に薄板を積層して形成した鉄心2を有し、鉄心外周部に設けたスロット内に界磁コイル3が収納されている。コイルの端部(以下コイルエンド4)の外周部には、バインド5が設けられている。バインド5は、ステンレススチールワイヤーなどの長尺材料、または高強度繊維と樹脂から構成されており、コイルエンド外周に何重にも巻き回されている。コイルエンド内径側にはエンドリング6が設けられ、バインドの締付力を内径側から支持している。鉄心端部には周方向に複数本のスペーサーバー7が放射状に配置され、隣接するスペーサーバーとの間に径方向の通風路であるエンドダクトを形成している。
【0005】
コイルエンド4を冷却する冷却風は、エンドダクト内径側から流入し、回転子の回転によるファン作用の働きで外径側へと流れコイルに到達する。その後、周方向に隣接するコイルと、バインドおよびエンドリングで形成される通風ダクトを通り、軸方向に流出する。
【0006】
以上のようなバインドによる固定子コイルエンド部の支持構造は、冷却風がダクト内を流れるためコイルエンド全体にわたって一様な風量を保障でき、局所的な温度上昇が生じにくいメリットがある。また、特に高強度繊維と樹脂からなるバインドにおいては、重量的、コスト的に有利である。
【0007】
その一方で、製作時にはバインドを巻き回すための大型の専用冶具が必要であり、特に高強度繊維と樹脂からなるバインドにおいては、熱風により乾燥固化する工程が必要であった。またメンテナンス時にはバインドを切断し、コイルメンテナンス終了後に再びバインドを巻き直す必要があった。
【0008】
製作およびメンテナンス時の分解組立性を改善する方法としては、例えば特許文献1の実施例に記載のように、コイルエンドとバインドとの間に非磁性のバインド拡張リングを設け、リングを加熱膨張させることにより支持構造の脱着を容易にする方法が開示されている。
【0009】
また、例えば特許文献2にはバインドを用いず、Uボルトによりコイルエンドを内径側の支持構造に締結する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−149736号公報
【特許文献2】実開平5−103438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の従来技術では、バインドの脱着が容易になりメンテナンス性は向上するが、製作時、バインドの巻き回しや熱風による固化が必要である点は変化がないという問題がある。
【0012】
また上記の従来技術では、分解組立性は向上するが、開放空間に突出したコイルエンドの隙間を、径方向外向きに冷却風が通過するため、コイルエンド全体を一様に冷却するための風量分布の設計が複雑となる問題がある。
【0013】
すなわち、本発明の目的は、回転子コイルエンドの一様な冷却性能と分解組立性を両立したコイルエンド支持構造を有する回転電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の回転電機は、上記目的を達成するために、回転子コイルエンドの外周側に円筒状の支持ケーシングを備え、さらにケーシングを径方向内向きに支持する手段を設けた。
即ち、固定子と、前記固定子の内側にエアギャップを介して配置される回転子とを備え、前記回転子の外周部には、所定の間隔を置いて周方向に複数配設されたコイルスロットを備えた回転子鉄心を有し、前記コイルスロットの中には界磁コイルが設けられ、前記界磁コイルは、前記回転子の回転軸方向に概略沿って突出したコイルエンド部を形成し、前記界磁コイルの内径側に近接してエンドリングを備え、前記回転子鉄心の軸方向端部には、放射状に配置されたスペーサーバーを有する回転電機において、回転子コイルエンド部の外周側に円筒状の支持ケーシングを備え、かつ、支持ケーシングを径方向内向きに支持する手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、回転子コイルエンドを支持ケーシングが支持するとともに、ケーシングを径方向内向きに支持する手段が、コイルエンドに作用する遠心力を分担するので、ケーシング単体の場合よりも支持強度が向上する。また冷却風は、周方向に隣接するコイルと、エンドリングおよび支持ケーシングとで形成されるコイルに沿った通風ダクト内を流れるので、コイルエンド全体に亘って冷却風量を一定に保つことができ、一様な冷却性能が保証される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の回転電機の回転子の第1の実施例の説明図である。
【図2】図1のA−A矢視図である。
【図3】本発明の回転電機の回転子の第2の実施例の説明図である。
【図4】図2のB−B断面図である。
【図5】本発明の回転電機の回転子の第3の実施例の説明図である。
【図6】本発明の回転電機の回転子の第4の実施例の説明図である。
【図7】従来の回転電機の回転子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施例を、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0018】
本発明による回転電機の第1の実施例を、図1および図2に基づいて説明する。第1の実施例の概略構成としては、図1の回転子は、回転軸の周囲に軸方向に薄板を積層して形成した鉄心2を有し、鉄心外周部に設けたスロット内に界磁コイル3が収納されている。コイルエンド4の外周部には支持ケーシング8が、また、コイルエンド内径側にはエンドリング6が設けられている。鉄心端部には周方向に複数本のスペーサーバー7が放射状に配置され、隣接するスペーサーバーとの間に径方向の通風路であるエンドダクトを形成している。
【0019】
コイルエンド4を冷却する冷却風は、エンドダクト内径側から流入し、回転子の回転によるファン作用の働きで外径側へと流れコイルに到達する。その後、周方向に隣接するコイルと、支持ケーシングおよびエンドリングで形成される通風ダクトを通り、軸方向に流出する。
【0020】
本実施例では、支持ケーシングの軸方向外端部を径方向内向きに支持する手段は、ケーシング軸方向外端部において内径側への延長部を設け、この延長部をエンドリング6にボルトで締結することにより構成されている。コイルエンドの通風ダクト内の冷却風の流れを阻害しないように、前記内径側への延長部には、通風ダクト出口9の位置に切欠きを設けている。このような構成によれば、径方向内向きに支持するための部材は支持ケーシング8と一体であり、またエンドリング6は従来技術でも既存の構造であるので、部材を追加する必要がない。また、支持ケーシング単独でコイルエンドを支持するよりも支持強度が向上する。
【0021】
さらに本実施例では、支持ケーシングの軸方向内端部を径方向内向きに支持する手段は、ケーシング軸方向内側端部をスペーサーバー7にボルト締結することにより構成されている。このような構成によれば、スペーサーバー7は従来技術でも既存の構造であるので、部材を追加する必要がなく、また、支持ケーシング単独でコイルエンドを支持するよりも支持強度が向上する。
【0022】
支持ケーシング8は望ましくは非磁性材料で構成される。また、コイルとの熱伸び差を吸収するため、支持ケーシング8とエンドリング6の軸方向外端位置はコイルエンド4の外端位置よりも外側となるようにして伸び代をもたせ、支持ケーシング8とコイルエンド4との間には摩擦係数が小さいシート状部材を挟むなどしてスライド層を設けることが望ましい。
【0023】
本実施例では、支持ケーシングが軸方向外側と内側の二箇所で、ボルト締結により径方向内側に支持されており、従来のバインドによる方式よりも分解組立性が向上する。また、冷却風は、隣接するコイルとエンドリング、支持ケーシングで形成される通風ダクト内をコイルに沿って一定風量で流れるため、コイルエンド全体にわたって一様な風量を保障でき、局所的な温度上昇が生じにくいメリットがある。
【実施例2】
【0024】
本発明による回転電機の第2の実施の形態を図3および図4に示す。本実施例では、スペーサーバー7の外周端に周方向への突出部を設け、支持ケーシングの軸方向内側端部を前記突出部の内径側に差し込むことで、径方向内側への支持構造を形成する。その他の構造は実施例1と同様である。
【0025】
本実施例によれば、支持ケーシングとエンドリングとの熱伸び差が大きい場合にも、スペーサーバー7と支持ケーシング8との接触部がスライドして熱伸び差を吸収できる。
【実施例3】
【0026】
本発明による回転電機の第3の実施の形態を図5に基づいて説明する。本実施例では、スペーサーバー7の外周端に軸方向外側への突出部を設け、支持ケーシングの軸方向内側端部を前記突出部の内径側に差し込むことで、径方向内側への支持構造を形成する。その他の構造は実施例1と同様である。
【0027】
本実施例によれば、スペーサーバーの製作工程の一部として支持構造を作ることができ、工数がほとんど増えないという利点がある。
【実施例4】
【0028】
本発明による回転電機の第4の実施の形態を図6に基づいて説明する。
【0029】
上記の実施例1から実施例3までは、いずれも支持ケーシングの円筒部を等肉厚の構造としていたが、これは円筒部の肉厚を限定するものではない。本実施例では、径方向内側に支持する構造を有する部位、即ちケーシング円筒部の軸方向内側端部と外側端部のみの肉厚を増加させ、中間部はリブ10を付加することで強度を上げている。この例では、周方向のリブ10aと、軸方向のリブ10bを付加した。
【0030】
本実施例のような構造は、回転子の回転速度が速い場合など、回転子コイルエンドに作用する遠心力が強い場合に、支持構造の重量増加を抑えつつ支持強度を向上させるのに好適な構造である。また、このリブ構造は、コイルエンド部の発熱を冷却風に伝達する放熱フィンの役割も備えている。
【0031】
以上、実施例1から実施例4までの全てにおいて、支持ケーシングは一体構造の場合を例示したが、これは分割構造を排除するものではない。例えば、回転速度が比較的小さい場合には、支持ケーシングの円筒部に実施例4に示したリブ構造を採用した上で、周方向に分割した構成も可能である。このような分割構造にすると、さらに分解組立性が向上すると同時に、輸送時に寸法制限がある場合にも、これを回避できる。
【符号の説明】
【0032】
1 回転子端部
2 鉄心
3 界磁コイル
4 コイルエンド
5 バインド
6 エンドリング
7 スペーサーバー
8 支持ケーシング
9 通風ダクト出口
10 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と、前記固定子の内側にエアギャップを介して配置される回転子とを備え、前記回転子の外周部には、所定の間隔を置いて周方向に複数配設されたコイルスロットを備えた回転子鉄心を有し、前記コイルスロットの中には界磁コイルが設けられ、前記界磁コイルは、前記回転子の回転軸方向に沿って突出したコイルエンド部を形成し、前記界磁コイルの内径側に近接してエンドリングを備え、前記回転子鉄心の軸方向端部には、放射状に配置されたスペーサーバーを有する回転電機において、
前記回転子の前記コイルエンド部の外周側に近接して円筒状の支持ケーシングを備え、かつ、前記支持ケーシングを径方向内向きに支持する手段を有することを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記支持ケーシングを径方向内向きに支持する手段は、支持ケーシングの軸方向外端部を前記エンドリングの軸方向外端部と連結する手段、および支持ケーシングの軸方向内側端部を前記スペーサーバーと連結する手段とで構成されることを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記支持ケーシングの軸方向外端部を前記エンドリングの軸方向外端部と連結する手段は、前記支持ケーシングの軸方向外端部において、内径側への延長部を設け、前記延長部を前記エンドリングにボルト締結することにより構成することを特徴とする請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記支持ケーシングの軸方向内側端部を前記スペーサーバーと連結する手段は、前記支持ケーシングの軸方向内側端部を前記スペーサーバーにボルト締結することにより構成していることを特徴とする請求項2に記載の回転電機。
【請求項5】
固定子と、前記固定子の内側にエアギャップを介して配置される回転子とを備え、前記回転子の外周部には、所定の間隔を置いて周方向に複数配設されたコイルスロットを備えた回転子鉄心を有し、前記コイルスロットの中には界磁コイルが設けられ、前記界磁コイルは、前記回転子の回転軸方向に沿って突出したコイルエンド部を形成し、前記界磁コイルの内径側に近接してエンドリングを備え、前記回転子鉄心の軸方向端部には、放射状に配置されたスペーサーバーを有する回転電機において、
前記回転子の前記コイルエンド部の外周側に近接して円筒状の支持ケーシングを備え、かつ、前記スペーサーバーの外周部に周方向に延長した突出部を設け、前記支持ケーシングの軸方向内側端部を、前記突出部の内径側に差し込むことにより、前記支持ケーシングの軸方向内側端部を前記スペーサーバーと連結し、前記支持ケーシングを径方向内向きに支持することを特徴とする回転電機。
【請求項6】
固定子と、前記固定子の内側にエアギャップを介して配置される回転子とを備え、前記回転子の外周部には、所定の間隔を置いて周方向に複数配設されたコイルスロットを備えた回転子鉄心を有し、前記コイルスロットの中には界磁コイルが設けられ、前記界磁コイルは、前記回転子の回転軸方向に沿って突出したコイルエンド部を形成し、前記界磁コイルの内径側に近接してエンドリングを備え、前記回転子鉄心の軸方向端部には、放射状に配置されたスペーサーバーを有する回転電機において、
前記回転子の前記コイルエンド部の外周側に近接して円筒状の支持ケーシングを備え、かつ、前記スペーサーバーの外周部に軸方向に延長した突出部を設け、前記支持ケーシングの軸方向内側端部を、前記突出部の内径側に差し込むことにより、前記支持ケーシングの軸方向内側端部を前記スペーサーバーと連結し、前記支持ケーシングを径方向内向きに支持することを特徴とする回転電機。
【請求項7】
固定子と、前記固定子の内側にエアギャップを介して配置される回転子とを備え、前記回転子の外周部には、所定の間隔を置いて周方向に複数配設されたコイルスロットを備えた回転子鉄心を有し、前記コイルスロットの中には界磁コイルが設けられ、前記界磁コイルは、前記回転子の回転軸方向に沿って突出したコイルエンド部を形成し、前記界磁コイルの内径側に近接してエンドリングを備え、前記回転子鉄心の軸方向端部には、放射状に配置されたスペーサーバーを有する回転電機において、
前記回転子の前記コイルエンド部の外周側に近接して円筒状の支持ケーシングを備え、前記支持ケーシングは、放熱フィンを兼ねたリブ構造を有し、かつ、前記支持ケーシングを径方向内向きに支持する手段を有することを特徴とする回転電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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