説明

回転駆動される球体の姿勢を制御する装置及び方法

【課題】広い可動範囲で圧電素子により回転駆動される球体の姿勢を制御する方法及び装置を提供することにある。
【解決手段】回転駆動される球体100の姿勢を制御する方法及び装置においては、3個の圧電素子n1、n2、n3で構成される3組のアクチュエータユニットau1、au2、au3を備え、各圧電素子n1、n2、n3に駆動信号が印加されて各アクチュエータユニットau1、au2、au3が駆動され、球体100の姿勢が制御される。球体100の現姿勢と目標姿勢とから球体100を回転させる回転軸が決定され、予め位相の組み合わせを記述した位相差テーブル115Aが参照されて駆動信号に付加する位相が決定される。位相の異なる駆動信号が各圧電素子n1、n2、n3に印加され、各アクチュエータユニットau1、au2、au3が駆動されて球体100が目標姿勢に制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転駆動される球体の姿勢を制御する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
球体を回転駆動する装置いわゆる球面アクチュエータにおいて、球体が所望の姿勢になるように球体を圧電素子で回転駆動させるために、圧電素子に印加する駆動電圧を制御する様々な方法が知られている。例えば、特許文献1には、3つの超音波モータで球体を回転駆動する球面アクチュエータが開示されている。この球面アクチュエータでは、超音波モータが球体の周囲に配置されている。そして、球体が超音波モータのステータに接触されており、圧電素子に電圧を印加されてステータが振動される。このステータの振動により球体が回転駆動されることになる。このような球面アクチュエータでは、各超音波モータは、球体を一定の方向のみに回転させることが可能であり、各超音波モータの出力を調整することで球体を所望の方向へ回転駆動させる。即ち、各超音波モータが発生させる角速度ベクトルの和が所望の角速度ベクトルと一致するように超音波モータが制御される。
【0003】
非特許文献1及び2には、圧電素子をトラス状に組み合わせた複数の駆動ユニットで構成される球面アクチュエータが開示されている。この球面アクチュエータでは、球体と駆動ユニットとの間の接触摩擦力によって球体を回転駆動させている。このような球面アクチュエータでは、圧電素子の方向余弦方向への所望変位から圧電素子に印加する駆動電圧が導出され、球体の姿勢を制御している。
【特許文献1】特開平8−132382号公報
【非特許文献1】川崎重工技報136号 1998年1月 38−44項
【非特許文献2】精密工学会論文誌61巻3号 1995年 386−390頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された球面アクチュエータでは、各超音波モータが発生させる角速度ベクトルの向きは、不変であり、超音波モータを設置できる場所が限定される。このため、球体を回転駆動させる方向によって、効率が著しく異なる問題がある。また、球体が超音波モータによって囲まれるため、球体の実質的な可動範囲が極めて狭いといった問題がある。
【0005】
非特許文献1及び2に開示された球面アクチュエータでは、球体の姿勢を検出と駆動電圧の調整を同時に行う必要があり、高速に駆動電圧を制御するハードウェアを備えなければならない問題がある。また、球体の実質的な可動範囲が極めて狭い、或いは圧電素子間の拘束条件を無視して設計されているため、圧電素子を効率的に駆動できないといった問題がある。
【0006】
以上のように、従来の圧電素子で回転駆動される球体の姿勢を制御する装置或いは方法では、球体を効率的に回転駆動できなく、球体の実質的な可動範囲が狭いといった問題がある。また、高速に駆動電圧を制御可能なハードウェアを備える必要があるといった問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、圧電素子に印加する駆動信号を容易に定められ、球体を効率的に回転駆動させ、球体を目標姿勢に制御できる装置及び方法を提供することにある。
【0008】
本発明によれば、
磁力で吸引される材料で形成され、或いは、磁力で吸引される材料で作られた部分を有する回転駆動される球体と、
前記球体を支持する為の基台と、
第1、第2及び第3のアクチュエータユニットで構成される駆動部であって、
前記第1、第2及び第3のアクチュエータユニットの夫々は、駆動信号の印加で伸張される第1、第2及び第3の圧電素子を含み、前記第1、第2及び第3の圧電素子が互いに略直交して延出されるように配置され、前記第1、第2及び第3の圧電素子の一端が1つの交点で互いに固定されて駆動チップを構成し、前記第1、第2及び第3の他端が前記基台に固定されて前記駆動チップを3次元方向に運動可能に支持し、
前記第1、第2及び第3のアクチュエータユニットは、前記駆動チップで前記球体を回転可能に支持し、前記交点と前記球体との摩擦により前記球体を回転駆動する駆動部と、
前記球体との間に所定の間隙を介して前記基台に配置され、前記球体及び前記圧電ユニット間の摩擦力を調整する為の可変の磁場を発生させる磁場発生部と、
前記球体の姿勢の変化を検出して現在の姿勢を決定する検出部と、
前記球体の目標姿勢を指定する姿勢指定信号を出力する目標姿勢指示部と、
前記検出部から入力される前記姿勢信号と前記目標姿勢指示部から入力される前記姿勢指示信号とを比較して前記圧電素子夫々に印加する前記駆動電圧の位相及び振幅を決定して出力信号を出力する出力決定部と、
前記位相及び前記振幅を有する正弦波の前記駆動電圧を駆動信号として前記圧電素子の夫々に出力して前記駆動部を駆動する正弦波発生部と、
を具備することを特徴とする球体の姿勢を制御する装置が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、
磁力で吸引される材料で形成され、或いは、磁力で吸引される材料で作られた部分を有する回転駆動される球体と、
前記球体を支持する為の基台と、
第1、第2及び第3のアクチュエータユニットで構成される駆動部であって、
前記第1、第2及び第3のアクチュエータユニットの夫々は、駆動信号の印加で伸張される第1、第2及び第3の圧電素子を含み、前記第1、第2及び第3の圧電素子が互いに略直交して延出されるように配置され、前記第1、第2及び第3の圧電素子の一端が1つの交点で互いに固定されて駆動チップを構成し、前記第1、第2及び第3の他端が前記基台に固定されて前記駆動チップを3次元方向に運動可能に支持し、
前記第1、第2及び第3のアクチュエータユニットは、前記駆動チップで前記球体を回転可能に支持し、前記交点と前記球体との摩擦により前記球体を回転駆動する駆動部と、
前記球体との間に所定の間隙を介して前記基台に配置され、前記球体及び前記圧電ユニット間の摩擦力を調整する為の可変の磁場を発生させる磁場発生部と、
前記球体の姿勢の変化を検出して現在の姿勢を決定する検出部と、
前記球体の目標姿勢を指定する姿勢指定信号を出力する目標姿勢指示部と、
予め設定される前記位相の組み合わせが記述された位相差テーブルを格納する記憶部を有する出力決定部と、
前記位相及び前記振幅を有する正弦波の前記駆動電圧を駆動信号として前記圧電素子の夫々に出力して前記駆動部を駆動する正弦波発生部と、
から構成される球体の姿勢を制御する装置において、
予め定められた制御周期毎に、前記姿勢信号と前記姿勢指示信号とを比較して前記球体を回転させる球体回転軸を定め、
前記位相差テーブルを参照して前記第1、第2及び第3のアクチュエータユニットを駆動する際に基準とされる第1、第2及び第3の回転軸を演算し、
前記球体回転軸を表す第1のベクトルと前記第1、第2及び第3の回転軸を表す第2のベクトルとの内積が最大となる位相の組み合わせを取得し、
前記第1、第2及び第3のアクチュエータユニットと第1の回転軸との距離に応じて前記駆動電圧の前記振幅を定め、
前記位相及び前記振幅を有する正弦波の前記駆動電圧で前記各アクチュエータユニットを駆動して前記球体を前記目標姿勢になるように回転駆動することを特徴とする球体の姿勢を制御する方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の球体の姿勢を制御する装置及び方法においては、球体を目的の姿勢にする為に圧電素子に印加する駆動電圧を容易に定めることができ、球体を効率的に回転駆動させることができる装置及び方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、必要に応じて図面を参照しながら、本発明の一実施の形態に係る回転駆動される球体の姿勢を制御する装置及び方法を説明する。
【0012】
図1から図13は、本発明の実施の形態に係る回転駆動される球体の姿勢を制御する装置及び方法を示している。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る球体100の姿勢を制御する装置の全体の構成を概略的に示している。図2(a)、(b)には、図1に示した装置の球体100を回転させる駆動部を概略的に示している。図2(a)に示すように、回転駆動される球体100の姿勢を制御する装置において、球体100は、磁力により吸引される物性を有している。即ち、球体100は、磁力で吸引される材料で作られ、或いは、磁力で吸引される材料で作られた部分を含んでいる。また、球体100は、球体100の中心を原点とした3次元慣性座標系(XYZ座標系)で回転可能に3個のアクチュエータユニットau1、au2、au3に支持されている。このアクチュエータユニットau1、au2、au3は、基台102、103に設置固定されている。球体100の下部には、電磁石或いは磁石等で構成されて磁場を発生させる磁場発生部としての与圧付加装置104が配置されている。この与圧付加装置104は、球体100に対して吸引力を生じるように磁場を発生させ、発生させる磁場の強弱により球体100とアクチュエータユニットau1、au2、au3との接点に生じる摩擦力を調整することができる。
【0014】
図2(b)は、アクチュエータユニットau1、au2、au3を3次元慣性座標系(xyz座標系)に拡大表示した図である。アクチュエータユニットau1、au2、au3は、夫々球体100に接する駆動チップ105及び3個の、即ち、第1、第2及び第3の圧電素子n1、n2、n3から構成されている。第1、第2及び第3の圧電素子n1、n2、n3は、一端が交点としての駆動チップ105に固定され、他端が基台102、103に固定され、第1、第2及び第3の圧電素子n1、n2、n3は、互いに直交して延出されるように配置されている。図2(b)では、第1、第2及び第3の圧電素子n1、n2、n3は、夫々x方向、y方向及びz方向に延出されるように配置されている。このような構成によりアクチュエータユニットau1、au2、au3の駆動チップ105は、基台102、103に運動可能に支持されることになる。また、第1、第2及び第3の圧電素子n1、n2、n3は、同一の長さLを有し、第1、第2及び第3の駆動信号が印加されて伸張される特性を有している。第1、第2及び第3の圧電素子n1、n2、n3に印加される第1、第2及び第3のこの駆動信号は、球体100を目標姿勢に回転駆動させる為の位相及び振幅を有する正弦波の交流電圧に正弦波の片振幅と同じ振幅の直流バイアス電圧が付与されたものとして発生される。本来圧電素子は、収縮するものではない。そのため、各アクチュエータユニットau1、au2、au3の第1、第2及び第3の圧電素子n1、n2、n3には、予め直流バイアス電圧によって自然長がLに保たれているものとする。圧電素子n1、n2、n3に駆動信号が印加されると、駆動チップ105は、基台102、103に対して相対的に変位されることになる。この変位は、圧電素子n1、n2、n3の長さLに対して十分に小さく、球体100は、基台102、103に対しては相対的に略不動に維持されながら回転駆動される。
【0015】
球体100は、アクチュエータユニットau1、au2、au3の駆動チップ105に摩擦接触されている。後に詳細に説明されるように圧電素子n1、n2、n3に駆動信号が印加され、アクチュエータユニットau1、au2、au3が駆動されると、球体100と駆動チップ105との摩擦により球体100が回転駆動されることになる。即ち、3個のアクチュエータユニットau1、au2、au3は、球体100を回転駆動する駆動部を構成している。そして、アクチュエータユニットau1、au2、au3に印加する駆動信号を調整して伸張量を調整することで、球体100を任意の方向に回転駆動させることができる。
【0016】
尚、アクチュエータユニットau1、au2、au3の3つの駆動チップ105は、球体100の下半球(球体の赤道を基準とする水平面を基準とした下方の半球部分)の外面で接することが好ましく、3つの駆動チップ105が球体100の下半球を通過する略水平仮想面内に円弧を描くように配置される。しかも、3つの駆動チップ105が接する円弧が定める円上に均等に配置、即ち、円の中心に対して120°毎に3つの駆動チップ105が球体100に接するように配置されることが好ましい。
【0017】
図1に示すように、この球体の姿勢を制御する装置は、回転駆動される球体100の姿勢の変化を検出する姿勢センサ部110を備えている。この姿勢センサ部110は、姿勢を検出する方式として種々の方式があるが、一例として、平成19年12月27日に出願された特願2007−337806に開示された方法で姿勢を検出することができることを明記しておく。この姿勢センサ部110から出力される姿勢信号は、姿勢検出部111に与えられ、球体100の姿勢が検出される。姿勢決定部112は、姿勢検出部111から与えられる検出信号から球体100の現姿勢を決定する。姿勢決定部112で決定された現姿勢と目標姿勢指示部113が指示する目標姿勢との差から制御出力決定部114が球体100を駆動させる為の制御出力を決定する。この制御出力に基づいて与圧出力部116が与圧付加装置104を制御し、与圧付加装置104が発生する磁場が制御される。また、この制御出力に基づいて位相・振幅決定部115で9個の圧電素子n1、n2、n3夫々に印加する駆動信号の位相及び振幅が決定される。9個の位相・振幅情報を有する出力信号は、正弦波発生部117に与えられ、正弦波発生部111がこの出力信号に基づいて各圧電素子n1、n2、n3に印加する駆動信号を直流バイアス信号を含めて発生させる。この駆動信号は、圧電アンプ118で増幅され、各圧電素子n1、n2、n3に印加される。これにより、アクチュエータユニットau1、au2、au3が駆動され、球体100が目標姿勢に制御されることになる。
【0018】
尚、図1において、矢印に/で付加されている数字3、又は、9は、伝達される信号の数を表している。
【0019】
図3は、図2に示される駆動信号を発生させる回路部分の構成をより詳細に示している。3個のアクチュエータユニットau1、au2、au3の夫々が3つの圧電素子n1、n2、n3で構成されることから、装置全体では、合計9個の圧電素子n1、n2、n3を備えることとなる。従って、図3に示されるように、正弦波発生部117には、9個の圧電素子n1、n2、n3に対応して第1〜第9の正弦波発生器117n1、117n2、117n3が用意され、各正弦波発生部117n1、117n2、117n3から発生される正弦波の位相及び振幅は、上述したように位相・振幅決定部115によって決定される。また、圧電アンプ部118には、正弦波発生器117n1、117n2、117n3と同様に、9個の圧電素子n1、n2、n3に対応して第1〜第9の圧電アンプ118n1、118n2、118n3が用意されている。正弦波発生器117n1、117n2、117n3で発生された正弦波は、圧電アンプ118n1、118n2、118n3で増幅されて各圧電素子n1、n2、n3に駆動信号として印加され、各圧電素子n1、n2、n3が駆動されて球体100が目標姿勢に向けて駆動される。
【0020】
図4(a)は、図1に示される装置の球体100を回転させる駆動部を概略的に示す斜視図であり、図4(b)は、図4(a)に示される装置を真上方向から見た平面図である。また、図4(c)は、図4(b)をC−C線に沿って切断した断面を概略的に示す図である。
【0021】
図4(a)及び図4(b)に示されるように、アクチュエータユニットau1、au2、au3は、球体100の外周面に沿って原点Oに関して120°の角度を空けて等間隔に配置されている。そして、球体100が3個の駆動チップ105上に載置され、この3個の駆動チップ105で支持されるように配置されている。また、図4(c)に示されるように、3個の駆動チップ105は、原点Oと駆動チップ105とを結ぶ直線がXY平面(赤道を通る平面)に対して角度αをなすように配置されている。本実施の形態では、この角度αが45°となるように設計されている。しかし、角度αは、駆動チップ105が互いに接触しなければ、0°より大きく90°未満の範囲に設定することができる。
【0022】
尚、基台102、103は、分離して形成されているが、一体型に形成されても良く、アクチュエータユニットau1、au2、au3の互いの位置関係が維持される基台であれば良い。
【0023】
次に、アクチュエータユニットau1、au2、au3が駆動される場合の駆動チップ105の挙動についての詳細な説明をする。図5(a)〜図5(h)は、図2(b)をx軸の正方向から見たyz平面を示す図である。ここでは、駆動チップ105の挙動を理解し易くするために、圧電素子n1が独自に伸張しないものとしてyz平面内で駆動チップ105が変位する際には、その変位に応じて圧電素子n1が伸張されるものとする。即ち、圧電素子n1による拘束条件を無視して駆動チップ105の挙動を説明する。図5(a)〜図5(h)は、圧電素子n2、n3にπ/2位相が異なる駆動信号を印加した場合における、位相がπ/4変化する毎のアクチュエータユニットau1、au2、au3が駆動される様子を模式的に示している。図5(a)〜図5(h)に示すように、圧電素子n2、n3が駆動電圧としてπ/2位相が異なる駆動信号を印加されると、駆動チップ105は、yz平面に平行な面上で楕円軌道を描いて駆動されることになる。これは、アクチュエータユニットau1、au2、au3が圧電素子n2、n3のみで構成される場合に限らず、圧電素子n1、n3のみ、或いは、圧電素子n1、n2のみで構成される場合についても同様に駆動される。
【0024】
図6(a)は、図2に示した装置を真上から見た図であり、回転軸501、502、503、504が定められている。前述したように、アクチュエータユニットau1、au2、au3が圧電素子n1による拘束条件を無視した場合には、圧電素子n2、n3に位相の異なる駆動信号が印加されることで駆動チップ105は、楕円軌道を描くように駆動される。この拘束条件を考慮した場合も同様に、圧電素子n1、n2、n3に位相の異なる駆動信号が印加されることで駆動チップ105は、楕円軌道を描くように駆動される。駆動チップ105を回転軸501まわりに回転方向dir1、dir2に、回転軸502まわりに回転方向dir3、dir4に、回転軸503まわりに回転方向dir5、dir6に、また、回転軸504まわりに回転方向dir7、dir8に回転させるには、図6(b)に示されるような各圧電素子n1、n2、n3に印加する駆動信号に対して、例えば、図6(c)に示すような位相を付加することで実現できる。
【0025】
球体100を回転軸501まわりに回転方向dir1に回転させるには、全てのアクチュエータユニットau1、au2、au3の駆動チップ105を回転軸501まわりに回転方向dir1に回転させるように駆動させれば良い。従って、アクチュエータユニットau1の圧電素子n1、n2及びアクチュエータユニットau2、au3の圧電素子n3に印加する駆動信号に位相をπ/2だけ付加すれば良い。
【0026】
また、球体100を回転軸504まわりに回転方向dir7に回転させるには、アクチュエータユニットau1、au2、au3の圧電素子n2に印加する駆動電圧に位相をπ/2だけ付加し、アクチュエータユニットau1、au2、au3の圧電素子n3に印加する駆動信号に位相をπ/4だけ付加すれば良い。ここで、π/4は、アクチュエータユニットau1、au2、au3が前述したように、原点Oに対して45°の角度をなして配置されていることに起因する。
【0027】
尚、駆動チップ105を各回転方向dir1〜8に回転させるために、駆動振動に付加する位相は、厳密に図6(c)に示す値である必要はない。駆動チップ105が適切な駆動円を描けば良く、図6(c)には、駆動例の典型的な位相のみが示されている。
【0028】
実際に球体100を回転駆動させるには、球体100の目標姿勢に応じて任意の回転軸及び回転方向が設定されることになる。図7(a)には、各アクチュエータユニットau1、au2、au3の駆動チップ105が描く駆動円が模式的に示されている。この駆動円は、駆動チップ105が回転方向dir7に回転させる場合の駆動円を示している。図7(b)に示すように、各アクチュエータユニットau1、au2、au3の駆動チップ105が描く駆動円の駆動軸に沿って駆動トルクN1、N2、N3が発生する。これらの駆動トルクのベクトル和が実際に球体100を回転駆動させる駆動トルクNとなる。駆動トルクN、N1、N2、N3の長さは、駆動トルクの大きさを表し、向きは、駆動円の回転軸と一致して回転方向に対して右ねじの方向を指し示している。各アクチュエータユニットau1、au2、au3に印加する駆動信号から駆動トルクN1、N2、N3が算出でき、そのベクトル和から球体100が回転駆動される方向を算出することができる。
【0029】
図8(a)及び図8(b)を参照して、球体100をX軸まわりに回転方向801に回転駆動させる方法を説明する。先ず、各アクチュエータユニットau1、au2、au3の回転方向が固定されていて回転方向dir7、8のみに限定して駆動される場合を考える。この場合には、図8(a)に示すような方向にアクチュエータユニットau1、au2、au3を駆動させることで、球体100をX軸まわりに回転方向801に回転駆動させることができる。駆動トルクNとアクチュエータユニットau1が球体100に作用させる駆動トルクN1とは、直交している。そのため、アクチュエータユニットau1は、球体100をX軸まわりに回転駆動させるのに寄与することができない。球体100を効率的に回転駆動させるためには、図7(b)に示すように、全てのアクチュエータユニットau1、au2、au3が発生させる駆動トルクN1、N2、N3方向が所望の駆動トルクと一致するように駆動信号が調整されることが好ましい。しかしながら、駆動チップ105が描く駆動円は、アクチュエータユニットau1、au2、au3が基台102、103に固定されているという拘束条件のもとで描かれるため、この拘束条件を考慮して駆動信号に位相を付加することが必要となる。
【0030】
図9(a)には、球体100を回転駆動させる制御ループが示されている。球体100の姿勢制御がステップS01で開始される場合には、初めに、ステップS01に示されるように目標姿勢指示部113から球体100の目標姿勢が指定される。また、ステップS02に示されるように姿勢決定部112で球体100の現姿勢が決定される。次に、ステップS03に示されるように、目標姿勢と現姿勢から、アクチュエータユニットau1、au2、au3が球体100に作用させる駆動トルクNが演算される。そして、ステップS04に示されるように、この駆動トルクNに応じて、各アクチュエータユニットau1、au2、au3の各圧電素子n1、n2、n3に印加する駆動信号の位相及び振幅が決定される。ステップS05に示すように、この位相及び振幅を有する駆動信号が各圧電素子n1、n2、n3に印加され、球体100が目標姿勢に制御される。
【0031】
このような制御ループのサンプリング時間(制御周期)Tは、一般の機械システム及びロボットと同様で、数ミリ秒間隔から早くて数百マイクロ秒間隔に設定されている。即ち、駆動信号の周波数は、高々数kHzに設定される。しかし、一般に、圧電素子n1、n2、n3に印加する駆動信号の周波数は、数十kHz以上の超音波の帯域に設定される。従って、あるサンプリングから次のサンプリングまでに、数十kHzの周波数を有する駆動信号の位相及び振幅を連続的に変更することは、できない。そのため、サンプリング周期Tの間においては、位相及び振幅が一定の駆動信号が発生され、サンプリング周期毎に位相及び振幅が変更されて次のサンプリング周期では、前サンプリング周期とは異なる位相及び振幅が一定の駆動信号が発生される。図9(b)には、この圧電素子n1、n2、n3に印加する駆動信号がサンプリング時間T毎に変化される様子が示されている。図9(b)に示されるように、制御ループのサンプリング時間Tは、駆動信号の周期と比して長い。そのため、数kHzというサンプリング時間T毎に駆動信号の位相及び振幅を変更している。そのため、図1に示される装置では、前述したように、上位制御系として位相・振幅決定部115を設け、この位相・振幅決定部115で位相及び振幅を演算し、次のサンプリング時間Tが来るまで正弦波発生部117が算出された位相及び振幅を有する駆動信号を出力し続けている。
【0032】
ここで、図1に示される装置においての駆動信号に付加する位相を定める方法を説明する。前述したように、アクチュエータユニットau1、au2、au3を構成する3個の圧電素子n1、n2、n3に印加する駆動信号の位相を変化させることで駆動チップ105が描く駆動円の姿勢を変更させることができる。図10(a)に示すように、圧電素子n1、n2、n3に付加する位相差を{0,π/2,0}と定めると駆動円の回転軸901が(1,0,−1)の方向へ向く。ここで、{A,B,C}は、圧電素子n1、n2、n3の夫々に印加する駆動信号に位相A、B、Cを付与することを表している。従って、位相差{0,π/2,0}は、圧電素子n1、n2、n3に印加する駆動信号に与えられる位相が夫々0,π/2,0であることを意味している。また、図10(b)に示すように、圧電素子n1、n2、n3に付加する位相差を{0,0,π/2}と定めると駆動円の回転軸1002が(−1,1,0)の方向へ向く。一方、駆動円の回転軸を定めた後においては、駆動信号に付加する位相を一意に定めることはできない。即ち、駆動円の駆動軸の向きと付加する位相の関係は1対1の関係にはない。また、各アクチュエータユニットau1、au2、au3が描く駆動円は、圧電素子n1、n2、n3の一端が基台102、103に固定されているという拘束条件のもとで描かれるものである。この拘束条件のもとでは、駆動円の回転軸から3つの位相差を算出することは、困難である。しかし、その逆、即ち、ある位相を付加した駆動信号を印加する場合における各アクチュエータユニットau1、au2、au3の駆動円の回転軸を算出することは容易である。そこで、位相・振幅決定部115は、予め設定される位相の組み合わせが記述された位相差テーブル115Aを格納する記憶部及び駆動信号の位相を決定する為の内積演算を行う演算部115Aを備えている。そして、位相差テーブル115Aを参照して所望の回転軸が得られるような位相の組み合わせを取得することで、容易に駆動信号に付加する位相を定めることができる。即ち、駆動円の回転軸が決定されて、この駆動円の回転軸で位相テーブルが参照されてこの回転軸での回転を実現する最適な位相が決定される。ここで、位相差テーブル115Aで駆動チップ105が描くべき所望の駆動円の回転軸が参照された際に該当する所望の回転軸を選定することができない場合には、所望の回転軸に一番近くなるような位相の組み合わせが選択される。所望の回転軸に一番近くなるような位相の組み合わせが次々に選定されることで、所望の回転軸での駆動円を実現することができる。
【0033】
位相差テーブル115Aを参照してある位相の組み合わせを定めた場合の各アクチュエータユニットau1、au2、au3の回転軸1102、1103、1104及び球体100を回転させる回転軸1101の例が図11(a)に示されている。そして、図11(b)に示されるように、球体100を駆動トルク1101で回転させる場合には、駆動トルク1101とアクチュエータユニットn1が発生する駆動トルク1102との内積が演算部115Bで演算され、この内積が最大となるような駆動トルク1102が選定される。この駆動トルク1101のベクトルの向きが、駆動円の回転軸に選定され、この駆動円の回転軸で位相テーブル115Bが参照されて位相テーブル115B中で最も近い回転軸が選定され、駆動トルク1101を与える位相の値が決定される。即ち、この駆動トルク1101を与える位相の値がアクチュエータユニットn1へ印加する駆動信号に付加する位相として位相差テーブルから選択される。駆動トルク1102、1103についても同様の内積演算を行いアクチュエータユニットn2、n3に印加する駆動信号に付加する位相が選択される。この内積が最大となる位相の組み合わせで各アクチュエータユニットau1、au2、au3を駆動させることで、回転駆動される球体100が目標姿勢に制御される。
【0034】
但し、この位相の組み合わせを選択するに当たり、各アクチュエータユニットau1、au2、au3の回転軸が球100の中心或いは中心の付近を通らないように選定することが必要とされる。図12(a)には、右下のアクチュエータユニットの駆動円1201の回転軸がX軸方向を向いている例が示されている。この駆動円1201の回転軸を軸(0,1,1)まわりに徐々に傾けていくと、図12(b)に示すような駆動円1202となる。そして、軸(0,1,1)まわりに90°傾けると、図12(c)に示すように、駆動円1203の回転軸は、(0,−1,1)を向くようになる。このような場合、駆動円1203は、球体100の表面と駆動チップ105との接触面上を動くだけなので、球体の回転駆動に寄与することができない。そこで、駆動円1201の回転軸の選定に関しては、重みを付加して位相の組み合わせを選択し、駆動円の回転軸が球体100の中心或いは中心の付近を通るような場合を避けることが好ましい。
【0035】
駆動信号の振幅は、回転される球体100の回転軸と各アクチュエータユニットau1、au2、au3との距離に応じて定められる。駆動円の回転軸は、球体100を回転させる回転軸と完全に一致するというわけではない。また、アクチュエータユニットau1、au2、au3の駆動円は、非常に微小な半径を有する。しかし、球体100の回転軸が決まれば、アクチュエータユニットau1、au2、au3の駆動チップ105と回転軸との距離によって駆動チップ105の持つべき駆動円半径長さが決まり、この駆動円半径長さは、回転軸からの距離が遠いほど大きく、近いほど小さくなる。従って、駆動円の半径の長さに応じて容易に駆動信号の振幅を決定することができる。
【0036】
次に、図13を参照して内積演算を含むアクチュエータユニットau1、au2、au3の駆動円を決定する手続きを詳細に説明する。このフローチャートは、サンプリング時間が経過する度に所定のタイミングで実施される。そして、サンプリング時間毎に新しい目標姿勢が定められ、球体100をその目標姿勢になるように制御させる為の駆動信号の位相及び振幅が決定される。あるサンプリング時間Tiにおいて、初めに、ステップS11に示すように、姿勢センサ部110及び姿勢検出部111で球体100の現姿勢が検出され、姿勢決定部112で球体100の現姿勢が、ある基準姿勢から現在のサンプリング時間までに球体100が回転されて変化した姿勢に対する回転軸及びそのまわりの回転角度の値として取得される。次に、ステップS12に示されるように、この回転軸と回転角度の4個の値は一軸回転法に基づく表記であるため、この4個の値から方向余弦行列が算出される。そして、ステップS13に示されるように、この方向余弦行列から現在の球体100の姿勢を表すクォータニオンパラメータが算出される。クォータニオンは、3次元の軸とその軸を中心とする回転を表わし、例えば、コンピュータグラフィックにおいて3次元空間での姿勢制御に用いられる。
【0037】
一方、ステップS14に示されるように、サンプリング時間Tiにおける球体100の目標姿勢が目標姿勢指示部113で指定される。ステップS15に示されるように、目標姿勢指定部113で指定される目標姿勢を表すクォータニオンが算出される。ステップS16に示されるように、制御出力決定部114において、これら2つのクォータニオンからクォータニオンフィードバックトルク、即ち、球体100を現姿勢から目標姿勢へ回転させる為の駆動トルクが算出される。次に、ステップS17に示されるように、このクォータニオンフィードバックトルクは、駆動される球体100上の座標系での値であるため、慣性座標系に変換される。ステップS18に示されるように、慣性座標系でのクォータニオンフィードバックトルクは、サンプリング時間Tにおける望ましい球体100の回転軸を表すベクトルとみなせるため、慣性座標系での駆動トルクを正規化することで球体100の回転軸が取得される。ステップS19に示されるように、この回転軸が各アクチュエータユニットの座標系へ座標変換され、この回転軸に関する情報が制御出力決定部114から位相・振幅決定部115に与えられる。ステップS20に示されるように、アクチュエータユニットau1において、この球体回転軸を表す単位ベクトルと位相差テーブルで参照されて算出される駆動円の回転軸を表す単位ベクトルとの内積が演算される。この内積が最大となる回転軸がアクチュエータユニットau1の駆動チップ105の回転軸として決定される。ここで、この内積演算では、駆動チップ105の回転軸が球体100の中心或いは中心の付近を通らないように重み付けが行われて選定される。ステップS21に示されるように、この回転軸を与える位相の組み合わせがアクチュエータユニットau1の圧電素子n1、n2、n3に印加する駆動信号の位相として定まる。ステップS22に示されるように、球体100の回転軸からアクチュエータユニットau1までの距離に応じて振幅が決定される。ステップS23に示すように、この位相及び振幅を有する駆動信号が正弦波発生器117n1、117n2、117n3に出力される。また、ステップS20〜S22と同様に、アクチュエータユニットau2及びau3に関してステップS24〜S27及びステップS28〜S31で駆動信号の位相及び振幅が定められ、正弦波発生器117n1、117n2、117n3に駆動信号が出力される。
【0038】
以上のように、あるサンプリング時間Tiにおいて、駆動信号に付加する位相及び振幅が決定され、各アクチュエータユニットau1、au2、au3が駆動される。そして、球体100が回転駆動されて目標姿勢に制御されることとなる。
【0039】
実際に図1に示される装置を駆動する場合には、与圧付加装置104を制御して球体100に付与する磁気吸引力の調整が必要となる。球体100を回転駆動させる回転速度を遅くする場合、即ち、アクチュエータユニットau1、au2、au3の駆動トルクを小さくする場合には、磁気吸引力を弱めればよい。また、球体100を回転駆動させる回転速度速くする場合、即ち、アクチュエータユニットau1、au2、au3の駆動トルクを大きくする場合には、磁気吸引力を強めればよい。球体100の姿勢を維持する場合には、更に、与圧付加装置104へ供給する電流を大きくして回転不能となるように磁気吸引力を強めればよい。
【0040】
以上のような実施の形態の構成によれば、各アクチュエータユニットau1、au2、au3を所望の方向に駆動させることができるため、球体100を効率的に駆動することができる。また、このアクチュエータユニットau1、au2、au3は、球体100の下半球のみに配置されるため、球体100の実質的な可動範囲が広くなる。さらに、予め定められた位相の組み合わせを記述した位相差テーブルを参照することで、各圧電素子n1、n2、n3に印加する駆動信号の位相及び振幅を容易に定めることができ、球体100を目標姿勢に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明の実施の形態に係る球体の姿勢を制御する装置を概略的に示すブロック図である。
【図2】(a)は、図1に示した装置の球体を回転させる駆動部の構造を概略的に示す斜視図である。(b)は、(a)に示したアクチュエータユニットを概略的に示す斜視図である。
【図3】図1に示した正弦波発生部及び圧電アンプ部の構成を詳細に示すブロック図である。
【図4】(a)及び(b)は、図1に示した装置の各構成要素の位置関係を説明する為の斜視図及び上面図である。(c)は、(b)に示したC―C線に沿って切断した装置を概略的に示す断面図である。
【図5】(a)〜(h)は図1に示したアクチュエータユニットの駆動原理を説明する為の模式図である。
【図6】(a)は、図1に示した装置における球体を回転させる回転軸の一例を示す模式図であり、(b)は、(a)に示した圧電素子の配置を示す概略図である。(c)は、(a)に示した圧電素子の駆動信号に付加する位相を記述した表である。
【図7】(a)及び(b)は、図1に示した駆動チップが回転駆動されて駆動トルクを発生する様子を示す模式図である。
【図8】(a)及び(b)は、図1に示した装置において所望の駆動トルクを得る為のアクチュエータユニットの駆動方法を説明する為の模式図である。
【図9】(a)は、図1に示した装置における駆動信号の位相及び振幅を定める処理を概略的に示すフローチャートであり、(b)は、サンプリング時間毎に駆動信号が変化される様子を示す模式図である。
【図10】(a)及び(b)は、図1に示した駆動チップが描く駆動円とその回転軸を示す模式図である。
【図11】(a)及び(b)は、図1に示したアクチュエータユニットを駆動する回転軸を定める方法を説明する為の模式図である。
【図12】(a)〜(c)は、図1に示した駆動チップが描く駆動円の向きによって球体の表面との接触が変化する様子を示す模式図である。
【図13】図1に示した装置における駆動信号の位相及び振幅を定めるフローチャートである。
【符号の説明】
【0042】
100…球体、102,103…基台、104…与圧付加装置、105…駆動チップ、110…姿勢センサ部、111…姿勢検出部、112…姿勢決定部、113…目標姿勢指示部、114…制御出力決定部、115…位相・振幅決定部、115A…位相差テーブル、115B…演算部、116…与圧出力部、117…正弦波発生部、118…圧電アンプ、au1,au2,au3…アクチュエータユニット、n1,n2,n3…圧電素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁力で吸引される材料で形成され、或いは、磁力で吸引される材料で作られた部分を有する回転駆動される球体と、
前記球体を支持する為の基台と、
第1、第2及び第3のアクチュエータユニットで構成される駆動部であって、
前記第1、第2及び第3のアクチュエータユニットの夫々は、駆動信号の印加で伸張される第1、第2及び第3の圧電素子を含み、前記第1、第2及び第3の圧電素子が互いに略直交して延出されるように配置され、前記第1、第2及び第3の圧電素子の一端が1つの交点で互いに固定されて駆動チップを構成し、前記第1、第2及び第3の他端が前記基台に固定されて前記駆動チップを3次元方向に運動可能に支持し、
前記第1、第2及び第3のアクチュエータユニットは、前記駆動チップで前記球体を回転可能に支持し、前記交点と前記球体との摩擦により前記球体を回転駆動する駆動部と、
前記球体との間に所定の間隙を介して前記基台に配置され、前記球体及び前記圧電ユニット間の摩擦力を調整する為の可変の磁場を発生させる磁場発生部と、
前記球体の姿勢の変化を検出して現在の姿勢を決定する検出部と、
前記球体の目標姿勢を指定する姿勢指定信号を出力する目標姿勢指示部と、
前記検出部から入力される前記姿勢信号と前記目標姿勢指示部から入力される前記姿勢指示信号とを比較して前記圧電素子夫々に印加する前記駆動電圧の位相及び振幅を決定して出力信号を出力する出力決定部と、
前記位相及び前記振幅を有する正弦波の前記駆動電圧を駆動信号として前記圧電素子の夫々に出力して前記駆動部を駆動する正弦波発生部と、
を具備する球体の姿勢を制御する装置。
【請求項2】
前記姿勢制御部は、予め設定される前記位相の組み合わせを記述する位相差テーブルを格納する記憶部を有し、予め定められた制御周期毎に、前記姿勢信号と前記姿勢指示信号とを比較して前記球体を回転させる球体回転軸を定め、前記位相差テーブルで位相の組み合わせを参照して前記第1、第2、及び第3のアクチュエータユニットを駆動する際に基準とされる第1、第2及び第3の回転軸を演算し、前記球体回転軸を表す第1のベクトルと前記第1、第2及び第3の回転軸を表す第2のベクトルとの内積が最大となる位相の組み合わせを、前記位相差テーブルから取得することを特徴とする請求項1記載の球体の姿勢を制御する装置。
【請求項3】
前記姿勢制御部は、前記第2のベクトルが前記球体の内部に向かないように前記第2のベクトルの方向に重み付けを行って内積を演算することを特徴とする請求項2記載の球体の姿勢を制御する装置。
【請求項4】
前記姿勢制御部は、前記第1の回転軸と前記第1、第2及び第3のアクチュエータユニットの前記交点までの距離に比例して前記駆動電圧の前記振幅を定めることを特徴とする請求項1乃至3に記載の球体の姿勢を制御する装置。
【請求項5】
前記磁場発生部は、前記球体に作用する磁場の大きさを変化させることで前記球体と前記第1、第2及び第3のアクチュエータユニットとの摩擦力を調整し、前記球体を回転させる速度を調整できることを特徴とした請求項1乃至4に記載の球体の姿勢を制御する装置。
【請求項6】
前記磁場発生部は、前記球体を回転不能に固定することができる磁場を発生することを特徴とした請求項1乃至4に記載の球体の姿勢を制御する装置。
【請求項7】
磁力で吸引される材料で形成され、或いは、磁力で吸引される材料で作られた部分を有する回転駆動される球体と、
前記球体を支持する為の基台と、
第1、第2及び第3のアクチュエータユニットで構成される駆動部であって、
前記第1、第2及び第3のアクチュエータユニットの夫々は、駆動信号の印加で伸張される第1、第2及び第3の圧電素子を含み、前記第1、第2及び第3の圧電素子が互いに略直交して延出されるように配置され、前記第1、第2及び第3の圧電素子の一端が1つの交点で互いに固定されて駆動チップを構成し、前記第1、第2及び第3の他端が前記基台に固定されて前記駆動チップを3次元方向に運動可能に支持し、
前記第1、第2及び第3のアクチュエータユニットは、前記駆動チップで前記球体を回転可能に支持し、前記交点と前記球体との摩擦により前記球体を回転駆動する駆動部と、
前記球体との間に所定の間隙を介して前記基台に配置され、前記球体及び前記圧電ユニット間の摩擦力を調整する為の可変の磁場を発生させる磁場発生部と、
前記球体の姿勢の変化を検出して現在の姿勢を決定する検出部と、
前記球体の目標姿勢を指定する姿勢指定信号を出力する目標姿勢指示部と、
予め設定される前記位相の組み合わせが記述された位相差テーブルを格納する記憶部を有する出力決定部と、
前記位相及び前記振幅を有する正弦波の前記駆動電圧を駆動信号として前記圧電素子の夫々に出力して前記駆動部を駆動する正弦波発生部と、
から構成される球体の姿勢を制御する装置において、
予め定められた制御周期毎に、前記姿勢信号と前記姿勢指示信号とを比較して前記球体を回転させる球体回転軸を定め、
前記位相差テーブルを参照して前記第1、第2及び第3のアクチュエータユニットを駆動する際に基準とされる第1、第2及び第3の回転軸を演算し、
前記球体回転軸を表す第1のベクトルと前記第1、第2及び第3の回転軸を表す第2のベクトルとの内積が最大となる位相の組み合わせを取得し、
前記第1、第2及び第3のアクチュエータユニットと第1の回転軸との距離に応じて前記駆動電圧の前記振幅を定め、
前記位相及び前記振幅を有する正弦波の前記駆動電圧で前記各アクチュエータユニットを駆動して前記球体を前記目標姿勢になるように回転駆動すること特徴とする球体の姿勢を制御する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−45895(P2010−45895A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207036(P2008−207036)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】