説明

固体インクパスティル

【課題】固体インクパスティルを用いた固体インクジェットプリンタにおけるスループットを向上させるため、固体相変化インクの融点におけるその融解速度を増大した粒子組成を有する固体インクパスティルを提供する。
【解決手段】本発明に係る固体インクパスティル92は、少なくとも塩、インク賦形剤化合物、粘度調整アミド化合物および着色剤からなるサブ粒状サイズのパスティルを含む固体相変化インクの粒子組成からなる。粒子組成の各サブ粒状サイズのパスティルは最大でも極粗粒砂の大きさであって、固体相変化インクの融点におけるその融解速度を増大させるため、ウェントワース−アッデンの粒度区分上で最大でも2mmの直径とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、「静電気除去固体インク容器(STATIC ELIMINATING SOLID INK CONTAINER)」という名称の米国特許出願人整理番号A2537Q−US−NPに関連する。
【0002】
本発明は固体インク形状に関し、より詳細には、高速固体インクジェットプリンタ用固体インクパスティルに関する。
【背景技術】
【0003】
一般的に、相変化インク画像生成装置またはプリンタにおいては、常温で固相として存在し、装置またはプリンタの高い作動温度において溶融または融解された(そして液滴またはジェットとして吐出可能な)液相として存在する相変化インクが使用される。そのような高温の作動温度において、溶融または融解された液体の相変化インクの液滴またはジェットは、プリンタのプリントヘッド装置から印刷媒体上へと吐出される。係る吐出は、最終的な受像被印刷体に直接行うことも、画像形成部材に間接的に行った後に最終的な受像媒体に転写することもできる。いずれの場合も、インク液滴が印刷媒体の表面に接触すると素早く固化し、固化したインク液滴による所定のパターン状の画像を形成する。
【0004】
そのような相変化インク画像生成装置またはプリンタの例、およびそれらによる受像シートへの画像生成工程の例が、1994年12月13日にティッテリントン他(Titterington et al.)により発行された特許文献1に開示されている。当該特許文献1中に開示されているとおり、相変化インク印刷工程には、溶融した液体相変化インクを形成するために、固体状の相変化インクの温度を上昇させて溶かすことが含まれる。また、液体状の相変化インクを、インクジェットプリントヘッド等の装置を利用して画像形成面上にパターン状に塗布することも含まれる。この工程には、この後に画像形成面上の相変化インク液滴を固化することと、それらを受像被印刷体へ転写することと、相変化インクを被印刷体に定着させることとが含まれる。
【0005】
当業者には周知のとおり、そのような装置で使用される相変化インクはろう状で、摂氏約120度未満で溶けるため、電子写真装置で使用される乾燥粉末トナーとは著しく異なる。そのような相変化インクの例が以下の参考文献に開示されている。2001年11月20日に発行された「相変化インク組成」という名称の特許文献2には、相変化インクであって、(a)融点が摂氏約120度未満であり、且つ、音響損失値が約100dB/mm未満であるカルバミン酸またはチオ尿素と、(b)着色剤と、(c)約10,000未満の数平均分子量を有し、摂氏約120度未満の融点または軟化点を有する分岐炭化水素と、(d)任意の可塑剤と、(e)融点が摂氏約90度未満であり、且つ、音響損失値が100dB/mm未満である任意のアルコールと、(f)任意の耐光性付与剤と、(g)任意の酸化防止剤と、を含む相変化インクが開示されている。
【0006】
2000年8月1日に発行された「インク組成」という名称の特許文献3には、インク組成であって、(1)塩とオキシアルキレン化合物から成る混合物であって、その融点が摂氏約60度乃至摂氏約120度である導電性混合物と、(2)融点が摂氏約80度乃至摂氏約100度であるインク賦形剤化合物と、(3)粘度調整アミド化合物と、(4)耐光性成分と、(5)耐光性酸化防止剤と、(6)着色剤とを含むインク組成が開示されている。
【0007】
通常、そのような固体インクまたは相変化インクの固体形状は、例えば特許文献4に開示され、図4に、その背面が螺旋442の巻きに係合された弾丸状または円筒状のペレット424として示されるとおり、「スティック状」、「ブロック状」、「バー状」、または「ペレット状」である。特許文献5では、固体インクは円筒形ブロックとして示されており、特許文献6では、六角形のバーとして示されており、特許文献7では、図3に示すとおり、長さL1が16.7mm、幅L2が約13mm、高さH1が約15.6mmの、段差のある構造を有するテーパー付きブロック300として示されている。そのような固体形状はまた、2002年2月19日に発行された特許文献8などのデザイン特許に開示されている。そのようなブロック状の「スティック」、「ブロック」、「バー」、または「ペレット」は使用に際して、装置フレームの路に沿って加熱融解装置に供給されることにより、融解または相変化して、前述のごとく印刷に供されるために直接プリントヘッドリザーバに供給される。
【0008】
さらに、図5に図示のとおり、特許文献4では、固体インクが、ウェントワース−アッデン(Wentworth−Udden)の粒度区分で2mmから4mmの粒径を有する粒状または顆粒として供給および処理できることが単に示唆されている。当該特許文献に示されるとおり、概ね円筒形のハウジング532が、モータ548に回転されるオーガー542を受ける。円筒形のハウジング532とオーガー542の表面との間の隙間が、粒状の固体インク524で充填されている。オーガー542が回転すると、粒状のインク524が排出位置536に接近し、排出口538を通ってトラフ540内へと落下する。
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,372,852号明細書
【特許文献2】米国特許第6,319,310号明細書
【特許文献3】米国特許第6,096,125号明細書
【特許文献4】米国特許第4,636,803号公報
【特許文献5】米国特許第4,739,339号公報
【特許文献6】米国特許第5,038,157号公報
【特許文献7】米国特許第6,053,608号公報
【特許文献8】米国意匠特許第D453,787号公報
【特許文献9】米国特許第5,378,132号公報
【特許文献10】米国特許第5,013,498号公報
【特許文献11】米国特許第5,633,005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、相変化インクのそのような固体形状には、望ましくない静電帯電、目詰まり、ジャム、相対的に低い融解速度といった主な問題点が含まれる。その結果、従来の相変化インク画像生成装置またはプリンタ、とりわけカラー画像生成装置またはプリンタは、スループットが低く、一般的に30枚/分(PPM)未満の速度でプリントを生成し、通常毎分50枚に近づくことも、ましてやそれを超えることなどできない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る固体インクパスティルは、少なくとも塩、インク賦形剤化合物、粘度調整アミド化合物および着色剤からなるサブ粒状サイズのパスティルを含む固体相変化インクの粒子組成であって、前記粒子組成の各サブ粒状サイズのパスティルは最大でも極粗粒砂の大きさであるとともに、前記固体相変化インクの融点におけるその融解速度を増大させるため、ウェントワース−アッデンの粒度区分上で最大でも2mmの直径を有する粒子組成である。
【0012】
本発明に係る他の固体インクパスティルは、少なくとも(a)融点が摂氏約120度未満であり、且つ、音響損失値が約100dB/mm未満であるカルバミン酸またはチオ尿素と、(b)着色剤と、(c)任意の可塑剤と、(d)融点が摂氏約90度未満であり、且つ、音響損失値が100dB/mm未満である任意のアルコールと、(e)任意の耐光性付与剤と、(f)任意の酸化防止剤とからなるサブ粒状サイズのパスティルを含む固体相変化インクの粒子組成であって、前記粒子組成の各サブ粒状サイズのパスティルは最大でも極粗粒砂の大きさであるとともに、前記固体相変化インクの融点におけるその融解速度を増大させるため、ウェントワース−アッデンの粒度区分上で最大でも2mmの直径を有する粒子組成である。
【0013】
本発明に係る他の固体インクパスティルは、少なくとも塩、インク賦形剤化合物、粘度調整アミド化合物および着色剤から成るサブ粒状サイズのパスティルを含む固体相変化インクの粒子組成であって、前記粒子組成の各サブ粒状サイズのパスティルは、前記固体相変化インクの融点におけるその融解速度を増大させるため、ウェントワース−アッデンの粒度区分上で1mm未満の直径を有する微粒砂、細粒砂、中粒砂、粗粒砂のいずれかの大きさである粒子組成である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の開示においては、少なくとも塩、インク賦形剤化合物、粘度調整アミド化合物および着色剤からなるサブ粒状サイズのパスティル(Pastille)を含む固体相変化インクの粒子組成が提供されており、粒子組成の各サブ粒状サイズのパスティルは最大でも極粗粒砂の大きさであり、固体相変化インクの融点におけるその融解速度を増大させるため、ウェントワース−アッデンの粒度区分上で最大でも2mmの直径を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に図1を参照して説明する。当該図には、本開示に係る高速相変化インク画像生成装置またはプリンタ10などの画像生成装置が図示されている。図示されているように、装置10は、以下に記載するとおり、そのオペレーティングサブシステムおよびコンポーネントが直接または間接的に搭載されたフレーム11を含む。まず、この高速相変化インク画像生成装置またはプリンタ10は、ドラム型として図示された画像形成部材12を含むが、同様に、支持されたエンドレスベルト型であってもよい。画像形成部材12は方向16に可動な画像形成面14を有し、この画像形成面14上に相変化インク画像が形成される。
【0016】
高速相変化インク画像生成装置またはプリンタ10は更に、本開示に従って特に粒状またはパスティル状である、少なくとも1つの固形の相変化インクの少なくとも1つの供給源22を有する相変化インク供給サブシステム20を含む。この相変化インク画像生成装置またはプリンタ10は多色画像生成装置であるため、インク供給システム20は、相変化インクの4つの異なる色CYMK(シアン、イエロー、マゼンタ、ブラック)を示す4つの供給源22、24、26、28(以下に詳細に記載する)を含む。相変化インク供給システムはまた、相変化インクの固体パスティルを液体に融解または相変化させるための融解制御装置(図示せず)を含む。相変化インク供給システムは、その後液体状のインクを、少なくとも1つのプリントヘッドアッセンブリ32を有するプリントヘッドシステム30に供給するのに適している。相変化インク画像生成装置またはプリンタ10は高速、または大量処理多色画像生成装置であるため、プリントヘッドシステム30は、図示のとおり、多色インクプリントヘッドアッセンブリおよび複数の(例えば4つの)別個のプリントヘッドアッセンブリ32、34、36、および38を含む。
【0017】
さらに示すとおり、相変化インク画像生成装置またはプリンタ10は、被印刷体供給ハンドリングシステム40を含む。被印刷体供給ハンドリングシステム40は例えば、被印刷体供給源42、44、46、48を含み、このうち例えば供給源48が、例えばカットシート状の受像被印刷体を格納および供給するための大容量給紙装置またはフィーダであってもよい。いずれにせよ、被印刷体供給ハンドリングシステム40は、被印刷体予熱器52、被印刷体および画像ヒータ、任意の溶融デバイス60を有する被印刷体ハンドリング処理システム50を含む。相変化インク画像生成装置またはプリンタ10は、図示のとおり、文書保持トレイ72を有する原紙フィーダ70と、文書シート供給および回収装置74と、文書露光走査システム76と、を含むことができる。
【0018】
装置またはプリンタ10の各種サブシステム、コンポーネント、および機能の操作と制御は、コントローラまたは電子サブシステム(ESS)80の支援のもと実行される。ESSまたはコントローラ80は例えば、中央演算処理装置(CPU)82、電子記憶装置83、およびディスプレイまたはユーザーインターフェース(UI)84を有する内蔵型の専用小型コンピュータである。ESSまたはコントローラ80は例えば、センサ入力および制御手段85とともにピクセル配置制御手段86を含む。さらにCPU82は、走査システム76、もしくはオンラインまたはワークステーション接続87などの画像入力源とプリントヘッドアッセンブリ32、34、36、38との間の画像データフローを読み取り、取り込み、準備、および管理する。そのように、ESSまたはコントローラ80は、全ての他の装置サブシステムおよび機能を動作および制御するためのメインマルチタスクプロセッサである。
【0019】
作動中、生成される画像の画像データは、走査システム76から、もしくはオンラインまたはワークステーション接続87を介してコントローラ80に送られ、処理された後プリントヘッドアッセンブリ32、34、36、38から出力される。さらに、コントローラは、例えばユーザーインターフェース86を介したオペレータ入力から、関連するサブシステムおよびコンポーネントの制御を判定および/または受理し、それに従って制御を実行する。その結果、適切な色の固体相変化インクが融解され、プリントヘッドアッセンブリへと供給される。さらに、ピクセル配置制御が画像形成面14に対して実行され、それにより所望の画像がそのような画像データに従って形成され、受像被印刷体が供給源42、44、46、48のいずれか1つから供給されて表面14上の画像形成とタイミングを合わせて手段50に処理される。最終的に画像は、表面14から受像被印刷体へと転写ニップ88内で転写され、溶融デバイス60で引き続き溶融される。
【0020】
次に図1および図2を参照して、固体インクパスティルの4つの供給源22、24、26、28を含むインク供給システム20のいくつかの詳細が本開示に従って図示されている。前記で指摘したとおり、供給源22、24、26および28は、相変化インクの4つの異なる色CYMK(シアン、イエロー、マゼンタ、ブラック)を示す。図2に図示されるとおり、各供給源22、24、26および28は、大量のろう状インクパスティル92を本開示に従って供給するために収容し保存する固体インク容器90を含む(以下に詳細を記す)。
【0021】
図示のとおり、固体インク容器90は概ね円筒形であり、その第1端96には開口部94を有する。望ましくは、固体インク容器90は、開口部94に近接した開放端100を有する第1の概ね円筒形の部分98と、開放端100の反対側に閉端102とを含む。固体インクパスティル92を第1の概ね円筒形の部分98から押し出すため、固体インク容器90は望ましくは、円筒形の部分98の内周106にらせん状のリブ104を含む。装置10内の固体インク容器90の対応する回転により、らせん状リブ104は右巻きまたは左巻きのいずれの配向を有してもよい。
【0022】
固体インク容器90はまた、第1の円筒形の部分98の開放端100から延伸する第2の円筒形または環状の部分110を含む。図示のとおり、第2の円筒形または環状の部分110は内部部材114を含み、この内部部材114はインサートであってもよいとともに、軸または中心線122に向かってその内側に延伸する径方向突出部112を有する。径方向突出部112はそれぞれ、容器90の回転方向120に湾曲する運搬面116を有する。それにより径方向突出部112は、運搬面116に沿ってポケット124を形成し、このポケット124は、固体インクパスティル92が第1の円筒形の部分98の開放端100から移動させられたときに大量の固体インクパスティル92で充填されるとともに、そのような大量のパスティル92を容器90から供給するために内部部材114の内周に沿って運搬する。
【0023】
さらに図示のとおり、固体インク容器90は、第2の円筒形または環状の部分110の第2端130から延伸する板状の端部126を含む。板状の端部126は、容器90の第1端96を含むとともに容器90の開口部94を含む。板状の端部126はまた、端部126のディスク領域134から内側に延伸する内部ハブ132を含む。穿刺可能なシール136が内部ハブ132のへり139の内面138に接触して位置することが望ましい。シール136は、装置10に固体インク容器90を取り付けたり取り外す際に固体インクパスティル92を収容する役割を果たす。
【0024】
容器90を装置10内に取り付ける際に、穿刺可能なシール136に加えて密封手段を設けるために二次的シール140が設けられており、この二次的シール140は、穿刺可能なシール136に平行に、且つ外側に離間して内部ハブ132内に設けられている。当然のことながら、内部ハブ132は、容器90とは別体の構成部品であっても容器90と一体であってもよい。二次的シール140は、インク供給源装置29内への取り付けの際に、オーガー管144上に摺動可能に嵌合してオーガー管144を密封する中央開口部142を含む。
【0025】
次に図面6から8を参照して、関連部分を本願に引用して援用する共有の特許文献3に開示されているとおり、固体または相変化インクパスティル92は例えば、(1)塩とオキシアルキレン化合物から成る混合物であって、その融点が摂氏約60度乃至摂氏約120度である導電性化合物と、(2)融点が摂氏約80度乃至摂氏約100度であるインク賦形剤化合物と、(3)粘度調整アミド化合物と、(4)耐光性成分と、(5)耐光性酸化防止剤と、(6)着色剤と、を含む。
【0026】
または、その関連部分を本願に引用して援用する共有の特許文献2にさらに開示されるとおり、固体または相変化インクパスティル92は例えば、(a)融点が摂氏約120度未満であり、且つ、音響損失値が約100dB/mm未満であるカルバミン酸またはチオ尿素と、(b)着色剤と、(c)約10,000未満の数平均分子量を有し、摂氏約120度未満の融点または軟化点を有する分岐炭化水素と、(d)任意の可塑剤と、(e)融点が摂氏約90度未満であり、且つ、音響損失値が100dB/mm未満である任意のアルコールと、(f)任意の耐光性付与剤と、(g)任意の酸化防止剤とを含むことができる。
【0027】
次に、図3から5を参照して、前記に開示したとおり、通常、そのような固体インクまたは相変化インクの固体形状は、例えば特許文献4に開示され、図4に、その背面が螺旋442の巻きに係合された弾丸状または円筒状のペレット424として図示されるとおり、「スティック状」、「ブロック状」、「バー状」、または「ペレット状」である。特許文献5では、固体インクは円筒形ブロックとして示されており、特許文献6では、六角形のバーとして示されており、米国特許第6,053,608号では、図3に示すとおり、長さL1が16.7mm、幅L2が約13mm、高さH1が約15.6mmの、段差のある構造を有するテーパー付きブロック300として示されている。そのような固体形状はまた、2002年2月19日に発行された特許文献8などのデザイン特許に開示されている。そのようなブロック状の「スティック」、「ブロック」、「バー」、または「ペレット」は使用に際して、装置フレームの路に沿って加熱融解装置に供給されることにより、「スティック」、「ブロック」、「バー」、または「ペレット」は、融解または相変化して、前述のごとく印刷に供されるために直接プリントヘッドリザーバに供給される。
【0028】
さらに、図5に図示のとおり、特許文献4では、固体インクが、粒状または顆粒として供給および処理できることが単に示唆されている。当該特許文献に示されるとおり、概ね円筒形のハウジング532が、モータ548に回転されるオーガー542を受ける。円筒形のハウジング532とオーガー542の表面との間の隙間が、粒状の固体インク524で充填されている。オーガー542が回転すると、粒状のインク524が排出位置536に接近し、排出口538を通ってトラフ540内へと落下する。しかしながら、相変化インクのそのような固体形状には、望ましくない静電帯電、目詰まり、ジャム、相対的に低い融解速度といった主な問題点が含まれる。
【0029】
そのような従来の固体インクの形状とは対照的に、本開示に従った固体インクの粒子組成は、少なくとも塩、インク賦形剤化合物、粘度調整アミド化合物および着色剤を含むサブ粒状サイズのパスティルから成る固体相変化インクの粒子組成であり、粒子組成の各サブ粒状サイズのパスティルは最大でも極粗粒砂の大きさであり、固体相変化インクの融点におけるその融解速度を増大させるため、ウェントワース−アッデンの粒度区分上で最大でも2mmの直径を有する。前記に開示され本願に引用して援用するとおり、本開示にしたがった固体相変化インクの粒子組成はさらに、(a)塩とオキシアルキレン化合物から成る混合物であって、その融点が摂氏約60度乃至摂氏約120度である混合物と、(b)耐光性成分と、(c)耐光性酸化防止剤と、を含むことができる。
【0030】
そのような粒子サイズは、例えば、噴霧スプレープロセス、パスティレーションプロセス、またはプリルタワープロセスなどを使用して固体インクを粒子状に変化させることにより得られる。パスティル化装置およびプロセスが1995年1月3日に発行された、「流動性を有する材料からパスティルを製造する装置」という名称の特許文献9に開示されており、流動性を有する材料から顆粒またはタブレットを製造する装置において、内歯を有する回転可能な中空シリンダと、内歯と係合する外歯を有するプレスシリンダとの間のプレススロットに材料が供給されることが開示されている。穴は、中空シリンダの内歯の歯底からその外側まで延伸している。中空シリンダがプレスシリンダと係合する際に材料はこれらの穴から押し出され、冷却面にタブレットまたは顆粒として置かれる。冷却面から離間した中空シリンダの外周の少なくとも一部は、加熱シェルにより取り囲まれている。加熱シェルの外側で、且つ加熱シェルから離れた位置にもう1つのシェルが配置されており、加熱シェルと他方のシェルの間に排ガスシャフトが、堆積物の冷却に伴い発生するガスを抜き取るための吸引ノズルと連通するように形成されている。
【0031】
1991年5月7日に発行された、「パスティルの製造方法および製造装置」という名称の特許文献10には、少量の粘性物質を小さな開口部からその下に配置された移動コンベヤー表面上へと通過させることによりパスティルを形成することが開示されている。粘性物質は、物質が開口部から突出した後、ただし物質が十分な大きさになって自力で落下する前にコンベヤー表面と接触する。むしろ、コンベヤー表面が物質を開口部から強く引き出すため、物質が自力で解放、落下するに任せた場合と比べて小さいサイズのパスティルが形成される。
【0032】
1997年5月27日に発行された、「ジメチコンパスティル」という名称の特許文献11には、ポリジメチルシロキサン(ジメチコン、シメチコン)を含有する、ゴム類、アルギン酸塩、カラギーン、澱粉、ペクチン、およびゼラチンを含むグループから選択された、完全または部分的に水溶性の天然または/および合成ポリマーから製造される種類のパスティルについて開示されている。当該発明は、そのようなパスティルの製造方法にも関する。
【0033】
他の例としては、オランダ、ワディンクスフェーンのGMFゴーダ(GMF Gouda)というメーカーのディスクパスティレータすなわちペレット化ディスクを使用して、前記固体インク組成の溶融状態のものをパスティル化、すなわちパスティルを製造することができる。同様に、同社のジェットプリラーをプリルタワープロセスに使用して、前記の固体インク組成の溶融状態のものからプリルを製造することもできる。
【0034】
前記のパスティル化工程は、溶融された凝固可能な液体製品が小さな普通の粒子またはパスティルに凝固されるプロセスである。パスティル化プロセスでは、溶融された凝固可能な製品が、例えばGMFゴーダのディスクパスティレータの固定式投与ヘッドを介して、制御された大きさの液滴またはパスティルとして断続的に回転するディスク上に投与される。そのような制御されたサイズの液滴はディスクに衝突すると同時に凝固し始める。投与、凝固、およびパスティル化のプロセスは、1回転未満で完了する。この結果得られるのが、容易に輸送可能な粒子、すなわち、形状および品質が概ね均一なパスティルである。
【0035】
図6から7に図示のとおり、本開示にしたがった固体インクのパスティルまたはプリルの形状または形態は粒子状である。すなわち、その多数のパスティルまたはプリル粒子91が、処理および取り扱い上、より大きなバルク量92(図2も参照のこと)を形成している。そのようにして形成された各パスティルまたは顆粒91は、前記のとおり粒子径Dpが最大でも2mmで、比較的小さな表面積Apであってその75%が概ね球状であるなど、粒子組成のバルク流量を増大させるための有利な特別な固体形状を有する。したがって、そして同様の理由から、小さな表面積Apの最大でも25%しか概ね平坦ではない、または平坦ではないはずである。パスティル粒子サイズが望ましくは2mm以下の場合、10gm/分から15gm/分の溶融速度が85ワットの電力で達成可能であることが分かっている。1つの実施例では、1パスティル当たりの溶融速度が最大で3秒毎パスティルであり、全体ではパスティルの重量にして少なくとも10gm/分に達することが分かっている。
【0036】
他の実施例では、固体相変化インクの粒子組成が、サブ粒状サイズのパスティルであって、少なくとも(a)融点が摂氏約120度未満であり、且つ、音響損失値が約100dB/mm未満であるカルバミン酸またはチオ尿素と、(b)着色剤と、(c)任意の可塑剤と、(d)融点が摂氏約90度未満であり、且つ、音響損失値が100dB/mm未満である任意のアルコールと、(e)任意の耐光性付与剤と、(f)任意の酸化防止剤とからなるサブ粒状サイズのパスティルを含み、粒子組成の各サブ粒状サイズのパスティルは最大でも極粗粒砂の大きさであり、固体相変化インクの融点におけるその融解速度を増大させるため、ウェントワース−アッデンの粒度区分上で最大でも2mmの直径を有する。
【0037】
本開示の他の態様によれば、固体相変化インク92の粒子組成は、少なくとも塩、インク賦形剤化合物、粘度調整アミド化合物および着色剤からなるサブ粒状サイズのパスティルを含み、粒子組成の各サブ粒状サイズのパスティルは、固体相変化インクの融点におけるその融解速度を増大させるため、ウェントワース−アッデンの粒度区分上で1mm未満の直径を有する微粒砂、細粒砂、中粒砂、粗粒砂のいずれかの大きさである。
【0038】
本態様によれば、粒子組成の各サブ粒状サイズのパスティルは、固体相変化インクの融点におけるその融解速度を増大させるため、例えば、ウェントワース−アッデンの粒度区分上で0.0625から0.125mmの範囲内の直径を有する微粒砂の大きさである。したがって、また、粒子組成の各サブ粒状サイズのパスティルは、固体相変化インクの融点におけるその融解速度を増大させるため、例えば、ウェントワース−アッデンの粒度区分上で0.125から0.250mmの範囲内の直径を有する細粒砂の大きさである。さらに、粒子組成の各サブ粒状サイズのパスティルは、固体相変化インクの融点におけるその融解速度を増大させるため、例えば、ウェントワース−アッデンの粒度区分上で0.250から0.500mmの範囲内の直径を有する中粒砂の大きさである。最後に、粒子組成の各サブ粒状サイズのパスティルは、固体相変化インクの融点におけるその融解速度を増大させるため、例えば、ウェントワース−アッデンの粒度区分上で0.500から1.000mmの範囲内の直径を有する粗粒砂の大きさである。
【0039】
いずれの場合も、固体相変化インクの粒子組成は、さらに、(a)塩とオキシアルキレン化合物から成る混合物であって、その融点が摂氏約60度乃至摂氏約120度である混合物と、(b)耐光性成分と、(c)耐光性酸化防止剤とを含むことができる。直径が1mm以下であるペレットにより、50PPM以上の高速プリンタに必要な大流量を達成すべく、非常にすばやく融解することのできる最小限の表面積が得られる。
【0040】
装置の処理速度が50PPMのとき40%の印刷シート画線比率を維持するためには、約10gm/分の融解速度でろう状の粒子パスティルを融解すれば十分であることが分かった。また、本開示にしたがった特定のサイズのパスティル91により、融解に要する電力が最小限にとどめられることも分かっており、さらに、折りたたみフィン式PTCヒーターなどの熱伝達セルの小さいヒーターの使用も可能になる。
【0041】
以上のように、少なくとも塩、インク賦形剤化合物、粘度調整アミド化合物および着色剤からなるサブ粒状サイズのパスティルを含む固体相変化インクの粒子組成が提供されており、粒子組成の各サブ粒状サイズのパスティルは最大でも極粗粒砂の大きさであり、固体相変化インクの融点におけるその融解速度を増大させるため、ウェントワース−アッデンの粒度区分上で最大でも2mmの直径を有する。
【0042】
特許請求の範囲は、当初提出されたものおよびその後補正されたものも、現時点では予見できないまたは認められていないものも含め、変異物、代替物、変形物、改良物、均等物、および本明細書中に開示された実施例および教示の概ね均等物を含むものとし、それらは出願人/特許権者、およびその他から発生する可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本開示の固体インクパスティルを使用するための例示的な高速相変化インク画像生成装置の垂直概略図である。
【図2】本開示の固体インクパスティルを保持および供給するための容器の分解斜視図である。
【図3】低速相変化インク画像形成装置用の先行技術に係る固体インク形状を示す図である。
【図4】低速相変化インク画像形成装置用の先行技術に係る固体インク形状を示す図である。
【図5】低速相変化インク画像形成装置用の先行技術に係る固体インク形状を示す図である。
【図6】本開示の固体インクパスティルの異なる倍率による説明図である。
【図7】本開示の固体インクパスティルの異なる倍率による説明図である。
【図8】ウェントワース−アッデンの粒度区分を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
10 プリンタ、20 相変化インク供給サブシステム、30 プリントヘッドシステム、40 被印刷体供給ハンドリングシステム、50 被印刷体ハンドリング処理システム、60 溶融デバイス、70 原紙フィーダ、80 コントローラ、90 固体インク容器、92 固体インクパスティル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも塩、インク賦形剤化合物、粘度調整アミド化合物および着色剤からなるサブ粒状サイズのパスティルを含む固体相変化インクの粒子組成であって、前記粒子組成の各サブ粒状サイズのパスティルは最大でも極粗粒砂の大きさであるとともに、前記固体相変化インクの融点におけるその融解速度を増大させるため、ウェントワース−アッデンの粒度区分上で最大でも2mmの直径を有する粒子組成の固体インクパスティル。
【請求項2】
少なくとも(a)融点が摂氏約120度未満であり、且つ、音響損失値が約100dB/mm未満であるカルバミン酸またはチオ尿素と、(b)着色剤と、(c)任意の可塑剤と、(d)融点が摂氏約90度未満であり、且つ、音響損失値が100dB/mm未満である任意のアルコールと、(e)任意の耐光性付与剤と、(f)任意の酸化防止剤とからなるサブ粒状サイズのパスティルを含む固体相変化インクの粒子組成であって、前記粒子組成の各サブ粒状サイズのパスティルは最大でも極粗粒砂の大きさであるとともに、前記固体相変化インクの融点におけるその融解速度を増大させるため、ウェントワース−アッデンの粒度区分上で最大でも2mmの直径を有する粒子組成の固体インクパスティル。
【請求項3】
少なくとも塩、インク賦形剤化合物、粘度調整アミド化合物および着色剤から成るサブ粒状サイズのパスティルを含む固体相変化インクの粒子組成であって、前記粒子組成の各サブ粒状サイズのパスティルは、前記固体相変化インクの融点におけるその融解速度を増大させるため、ウェントワース−アッデンの粒度区分上で1mm未満の直径を有する微粒砂、細粒砂、中粒砂、粗粒砂のいずれかの大きさである粒子組成の固体インクパスティル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−283020(P2006−283020A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−87026(P2006−87026)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】