説明

固体インク貯槽用誘導加熱器

【課題】印刷ヘッドからインクが放射できるようにする前に、固体インクを再度融解させる必要があり、溶融インクを加熱し保存する印刷機内の装置に対する改善策を提供する。
【解決手段】相変化インクを蓄える容器は、主に断熱材で構成される筺体108と、この筺体内に配置した誘導加熱エレメント130とを含む。誘導加熱エレメントは、加熱器の表面積を増大させ、貯槽流出口付近の凝固インクを素早く融解して印刷処理を可能にする仕方で形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
下記に記載する装置と方法は、相変化インクを加熱する装置に関し、より詳しくは固化インクを融解するインク貯槽内浸漬加熱器の使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷機は、インクジェット放射器から液体インクの液滴を放射し、中間転写面あるいは用紙等の媒体基質等の画像受容面上に画像を形成する。フルカラーのインクジェット印刷機は、幾つかの異なる印刷用着色インクの貯蔵に複数のインク貯槽を用いる。一般に知られるフルカラー印刷機は、4個のインク貯槽を有する。各貯槽は、フルカラー画像の生成用に異なる色のインク、すなわちシアン、マゼンタ、ブラック、イエローのインクを貯蔵している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
相変化インクジェット印刷機は、室温で固相を維持するインクを用いている。印刷機内にインクを装填した後、固体インクは融解装置へ移送され、この装置が固体インクを融解して液体インクを生成する。液体インクは、印刷ヘッドに対し内部か外部のいずれともできる貯槽内に貯蔵される。液体インクは、必要に応じて印刷ヘッドのインクジェット放射器に供給される。印刷機から電力を断ってエネルギーを節約したり印刷機の保守を行なったりする場合、溶融インクは冷却し始め、遂には固形に戻ってしまうことがある。この場合、印刷ヘッドからインクが放射できるようにする前に、固体インクを再度融解させる必要がある。その結果、インクの融解に要する時間が印刷処理に向けた固体インク印刷機の利用可能性に重大な影響を及ぼす。それ故、溶融インクを加熱し保存する印刷機内の装置に対する改善が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態において、印刷機は、固体インクを受容する構成としたインク装填器と、インク装填器から固体インクを受容するよう配置した融解装置とを備える。融解装置は、固体インクを所定温度まで加熱し、固体インクを融解して液体を生成する構成としてある。容器は融解装置に流体的に接続されており、融解装置から融解固体インクを受け入れる。容器は、断熱材で出来た筺体を含んでいる。筺体は、高さと幅と深さを有する筺体内部に所定容積の空間を有する。筺体の容積空間内には誘導加熱エレメントが配置してあり、容積空間内のインクを融解する。加熱エレメントは、容積空間の高さと幅により画定される面積を上回る表面積を有する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】間接式相変化インクジェット印刷システムの概略図である。
【図2】貯槽内に配置した加熱エレメントを有する誘導加熱システムを含むインク貯槽の概略側立面図である。
【図3】明確さに配慮し加熱システムを省略して図示した図2のインク貯槽の概略背立面図である。
【図4】貯槽の流出口と加熱システムの加熱エレメントの一部とを示す図2の貯槽の一部拡大図である。
【図5】複数チャネルを有するブロック材を備える図2の加熱システムに用いる加熱エレメントの一実施形態の斜視図である。
【図6】貯槽の幅全体に延在する構成の複数の細長いロッドを備える図2の加熱システムに用いる加熱エレメントの別の実施形態の斜視図である。
【図7】貯槽の深さ全体に延在する構成の複数の細長いロッドを備える図2の加熱システムに用いる加熱エレメントの別の実施形態の斜視図である。
【図8】複数のウェブすなわち格子様シートを備える図2の加熱システムに用いる加熱エレメントの別の実施形態の斜視図である。
【図9】貯槽内に配置した加熱エレメントと恒温装置として実施したコントローラとを有する誘導加熱システムを含むインク貯槽の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
下記の説明と添付図面は、本願明細書に開示するシステムならびに方法の環境の概括的理解およびこのシステムと方法の詳細を提供するものである。図面中、同様の参照符号は全体を通じて同様の要素を指し示すのに用いる。本願明細書に使用する用語「印刷機」は、インクを用いて媒体上に画像を生成する任意の装置を包含する。用語「印刷機」は、これらに限定はされないが、デジタル複写機や製本機やファクシミリ機や多機能機等を含む。明細書は固体インク貯槽内での固体インクの融解を制御するシステムに焦点を当てるが、貯槽内でインクを融解する装置は固相を有する相変化流体を用いる任意の装置に用いることができる。さらに、固体インクはインクやインクスティックあるいはスティックと呼び、あるいは称することができる。用語「パラメトリック容積」は、空隙や空腔を含むことのある加熱エレメント等の1つの物体の形状周りの包絡線により画定される容積を指す。したがって、物体のパラメトリック容積には物体内の開放空間と加えて物体を形成する材料の容積もまた含まれる。本明細書に使用するパラメトリック容積は、加熱器をその中に装着する密嵌合複数側面ボックスの内容積を意味する。
【0007】
図1は、溶融相変化インクを用いる間接印刷あるいはオフセット印刷用に構成した相変化インク印刷機の一実施形態の概略側面図である。図1の印刷機10は、インク処理システム12と印刷システム26と媒体供給・処理システム48と制御システム68とを含んでいる。インク処理システム12は、固体インクを受け取って融解装置へ給送し、液体インクを生成する。印刷システム26は溶融インクを受け取り、システム68の制御を受けて液体インクを画像受容面へ放射する。媒体供給・処理システム48は印刷機10内の1以上の供給源から媒体を抽出し、この媒体の転写定着ニップへの給送に同期して画像受容面から媒体へインク画像を転写し、続いて印刷した媒体を出力領域へ給送する。
【0008】
より詳しくは、インク処理システム12はインク装填機とも呼ばれ、一般にインクスティックと呼ばれるインクブロック14等の固形の相変化インクを受容する構成としてある。インク装填機12は、インクスティック14をその中に挿入する給送チャネル18を含んでいる。単一の給送チャネル18が図1に見てとれるが、インク装填機12は印刷機10内に用いるインクスティック14の各色あるいは各色調ごとに別個の給送チャネルを含んでいる。給送チャネル18はこのチャネル18の一端の融解組立体20に向けインクスティック14を案内し、そこでスティックを相変化インク融解温度まで加熱し、固体インクを融解して液体インクを形成する。相変化インク組成に応じ、任意の適当な融解温度を用いることができる。一実施形態では、相変化融解温度は約80℃から130℃である。
【0009】
融解組立体20からの溶融インクは、重力によりあるいは他の手段により貯蔵用の容器へ導かれる。容器は、内部に所定の容積空間を有する筺体を含んでおり、この筺体の内部にインクが貯蔵される。容器は、時として溶融インク貯槽やインク貯槽あるいは融解貯槽と呼ばれる。印刷機10内で使用するそれぞれのインク色やインク色調やインク組成ごとに、個別貯槽24を配設することができる。別の選択肢として、単一の貯槽筺体を隔室に区画し、異なる着色インクを収容することができる。図1に示す如く、インク貯槽24は印刷ヘッドの前面27に形成されたインクジェット放射器に通ずる印刷ヘッド28内の流路へ溶融インクを給送する。インク貯槽24は、印刷ヘッド28に組み込むか、あるいは密接に関連付ける。代替実施形態では、貯槽24は印刷ヘッド28とは別個のもしくは無関係のユニットとすることができる。各融解貯槽24は、下記にさらに詳しく示す如く、対応貯槽内に収容されたインクを少なくとも印刷機10の適当な動作状態期間中にインクの融解、かつ/またはインクを液体すなわち融解形状に保つのに適した温度に加熱するよう作動可能な加熱エレメントを含んでいる。図1の実施形態では、インク貯槽24は融解組立体20から直接に溶融インクを受け取るよう配置してある。代替実施形態では、貯槽24は融解組立体20から溶融インクを受け取る中間貯槽(図示せず)等の別の溶融インク供給源から溶融インクを受け入れることができる。
【0010】
印刷システム26は、溶融インクの液滴を放射するよう構成したインクジェットを有する少なくとも1個の印刷ヘッド28を含んでいる。図1には1個の印刷ヘッドが図示してあるが、任意の適当な数の印刷ヘッド28を用いることもできる。印刷ヘッドは制御システム68が生成する始動信号に従って動作し、インク液滴をインク受容面に向け放射する。図示の如く、図1の印刷機10は、インク液滴を中間面30上に放射し、続いて印刷媒体に転写する間接式印刷プロセスを用いる構成としてある。代替実施形態では、印刷機10は記録媒体上にインク液滴を直接放射する構成とすることができる。
【0011】
中間面30は、ドラム保守ユニット(DMU)としても知られる剥離剤塗布組立体38により回動部材34に塗布される剥離剤からなる層や薄膜を含んでいる。回動部材34は図1ではドラムとして図示してあるが、代替実施形態では回動部材34は移動もしくは回動型のベルトやバンドやローラあるいは他の同種の構造で構成することができる。転写定着ローラ40は回動部材34上の中間面30に対し圧接され、印刷媒体52のシートがそこを通過するニップ44を形成する。シートは、印刷ヘッド28のインクジェットにより中間面30上に形成されるインク画像に同期してニップ44を通って給送される。ニップ44内に圧力(一部事例では熱)が生成され、表面30から印刷媒体52へのインク液滴の移送を促し、一方でインクが回動部材34に付着するのを実質阻止する。
【0012】
印刷機10の媒体供給・処理システム48は、媒体をニップ44を介して案内する印刷機10内に画成された媒体路50に沿って印刷媒体を移送し、このニップにおいてインクが中間面30から印刷媒体52へ転写されるよう構成してある。媒体供給・処理システム48は、装置10ごとに種別や大きさが異なる印刷媒体を蓄え供給する供給トレイ58等の少なくとも1個の媒体供給源58を含んでいる。媒体供給・処理システムは、駆動することのできるローラ60やあるいは空転ローラ、さらにバッフルや偏向器等も加え、媒体経路50に沿って媒体を移送する適当な機構を含んでいる。
【0013】
媒体路50は、印刷媒体の温度を制御して調節し、媒体が適当な温度でニップ44に到達し、中間面30からインクを受け取るようにする1以上の媒体調整装置を含ませることができる。例えば、図1の実施形態では、予熱組立体64が媒体経路50に沿って配設してあり、ニップ44に到達する前に印刷媒体を初期所定温度に持っていく。予熱組立体64は、輻射熱や伝導熱や対流熱あるいはこれらの熱の任意の組み合わせ形態に依存させ、実際の一実施形態では約30℃から約70℃の範囲の目標予熱温度に媒体を持っていくことができる。代替実施形態では、媒体上にインクを塗布する前またはその期間中あるいはその後に媒体経路に沿って他の熱調整装置を用い、媒体(とインク)温度を制御することができる。
【0014】
制御システム68は、印刷機10の様々なサブシステムと構成要素と機能の動作と制御を支援する。制御システム68は、スキャナシステムやワークステーション結線等の1以上の画像供給源72に作動可能に接続し、この供給源から画像データを受け取って管理し、印刷機の構成要素とサブシステムに給送する制御信号を生成する。始動信号等の一部の制御信号は画像データに基づくものであり、これらの始動信号は印刷ヘッドを前記した如く動作させる。他の制御信号により、印刷機の構成要素とサブシステムは様々な処置と処理を遂行し、中間面30を調製し、媒体を転写定着ニップに給送し、インク画像を撮像装置10が出力する媒体へ転写する。
【0015】
制御システム68は、コントローラ70と電子記憶装置すなわちメモリ74とユーザインタフェース(UI)78とを含む。コントローラ70は、中央処理装置(CPU)や特定用途向け集積回路(ASIC)や書き換え可能ゲートアレイ(FPGA)デバイスあるいはマイクロコントローラ等の処理装置を備える。数あるタスクの中で、処理装置は画像供給源72が供給する画像を処理する。コントローラ70を構成する1以上の処理装置が、メモリ74が記憶するプログラム化された命令をもって環境設定される。コントローラ70は、これら命令を実行して印刷機の構成要素とサブシステムとを動作させる。適当な任意種のメモリあるいは電子記憶装置を、用いることができる。例えば、メモリ74は読み出し専用メモリ(ROM)等の不揮発性メモリ、あるいはEEPROMやフラッシュメモリ等のプログラム可能な不揮発性メモリとすることができる。
【0016】
ユーザインタフェース(UI)78は、制御システム68とオペレータとの相互作用を可能にする撮像装置10上に配置された適当な入/出力デバイスを備える。例えば、UI78にはキーパッドとディスプレイ(図示せず)とを含めることができる。コントローラ70は、ユーザインタフェース78に作動可能に結合され、その装置のユーザあるいはオペレータによりユーザインタフェース78への選択あるいは他の情報入力を示す信号を受け取る。コントローラ70はユーザインタフェース78に作動可能に結合され、選択可能な選択肢や機械の状態や消費品の状態等を含め、ユーザやオペレータに対し情報を表示する。コンピュータネットワーク等の通信リンク84にコントローラ70を結合し、遠隔地から画像データやユーザ相互作用データを受信することもできる。
【0017】
コントローラ70は、インク処理システム12や印刷システム26や媒体処理システム48や剥離剤塗布組立体38や媒体経路50やコントローラ70に作動可能に接続される印刷機10の他のデバイスや機構等の印刷機10の様々なシステムと構成要素に出力される制御信号を生成する。コントローラ70は、メモリ74が記憶するプログラム化された命令とデータとに従って制御信号を生成する。制御信号は、例えばシステム構成要素の動作速度や電力レベルやタイミングや動作や他のパラメータを制御し、本願明細書において集約的に動作モードとして表記する動作の様々な状態やモードやレベルにて印刷機10を動作させる。これらの動作モードには、例えば始動モードや暖機モードや様々な印刷モードや動作準備完了モードや保守モード、あるいは待機や休眠等の節電モードが含まれる。
【0018】
印刷機が印刷モードあるいは動作準備完了モードで動作しているとき、貯槽内のインクは貯槽に関連する加熱器により液体状態に保たれる。加熱器は、インク温度をインク融解温度を上回る所定範囲内に維持することのできる熱を出力するよう構成してある。待機モードや節電モードにおいて印刷機を停止させた何らかの動作モードと装置状態にある期間中、加熱器が出力する熱を低減したり、加熱システムを完全に動作停止させたりすることでインク温度を融解温度未満に降下させることができる。その結果、インクは貯槽内で程度の差はあるにせよ凝固すなわち固化させられる。印刷機10を印刷モードあるいは動作準備完了モードに復帰させると、貯槽加熱器が起動され、貯槽内の固化インクを融解することのできるレベルの熱を発生させ、インク温度を適当な印刷用温度に持っていく。
【0019】
印刷装置内の相変化インクを停止状態や待機モードあるいは節電モードから印刷モードあるいは準備完了モードへ移行させる際に直面する1つの懸念は、貯槽内のインクを十分に融解させて印刷を開始させるのに必要な時間量である。貯槽加熱器は通常、貯槽内のインク外部に配置された加熱エレメントを用いてきた。これら加熱器は、貯槽筺体にさらされ、すなわちこれに熱的に接触するインクを先ず融解させる温度に筺体が達するまで、貯槽筺体内に熱エネルギーを送り込む。熱エネルギーはそこで、筺体の内容積内のインクを介して内方へ移動する。したがって、所与の容積のインクを完全溶融状態へ移行させるのに必要な時間は、熱エネルギーにさらすのに利用可能なインクの表面積の大きさと塊全体に行き渡らせるべく熱エネルギーを伝導させねばならない距離とに少なくとも一部依存する。しかしながら、インク外部の熱源にさらし、あるいは接触させるのに利用可能な表面積は、貯槽の幾何学的形状により制限される。インクを印刷用の完全溶融状態へ移行させるのに必要な時間を低減すべく、通常要求される筈の温度を上回る温度にてインクを加熱することができる。しかしながら、より高い熱出力は印刷機のエネルギー消費を増大させる。
【0020】
既に公知の貯槽加熱器に対する代替例として、相変化インク印刷機の貯槽に誘導加熱システムを装備させることができる。下記に説明する如く、誘導加熱システムには貯槽内のインクに浸し、貯槽外部の熱源から誘導加熱する構成とした加熱エレメントが含まれる。したがって、熱エネルギーは貯槽内のインク容積内に生成され、筺体を加熱する必要性は回避される。加えて、誘導加熱エレメントはインクとの熱的接触に利用可能な加熱表面積を増大させるべく、極めて高い表面積対容積比を可能にする構成あるいは形状を有する。その結果、貯槽内のインク容積の実質部分の融解すなわち昇温はインク貯槽の全部あるいは一部を加熱する加熱器を用いて行なうことができるよりもずっと素早く行なわれる。加えて、加熱エレメントは、インクを流出口内とその周囲で融解し、初期融解容積が貯槽内のインク容積の完全溶融状態の確立前に即使用可能とするよう貯槽流出口の近傍に配置することができる。
【0021】
ここで図2を参照するに、本開示にかかる誘導インク加熱システム104を有する融解貯槽組立体100がより詳しく図示してある。図示の如く、貯槽はここでは所定量の溶融インクを受け入れて保持する貯槽容積110と呼ぶ内部容器を画定する筺体108を含んでいる。筺体108は、実質的な干渉を伴うことなく筺体を通過する磁界通路を許容可能で、固相と融解相の両方で様々な相変化インクに適合する非導電材で形成してある。熱硬化性プラスチックとエラストマー性材料とを含む様々なプラスチックを、筺体108内に用いることができる。加えて、筺体108には断熱性と伝熱性の両方の材料からなる1以上の層を含めることができる。筺体108の材料は、貯槽容積110内の少なくとも適度な熱保持を提供する構成としてある。
【0022】
筺体108は、少なくとも1個の流入開口112と少なくとも1個の流出開口すなわち導管114を含む。溶融インクは、融解組立体20や導管や他の貯槽から等の溶融インク供給源から流入口112を介して容積110内に導入される。流入口112は、頂面あるいは頂壁116内またはその近傍の筺体108の上部に配置されている。図2の実施形態では、流入口112は貯槽容積110上方の頂部116内に全開口あるいは部分開口として実装することができる。溶融インクは、流出開口あるいは導管114を介して容積110から給送される。貯槽100は、印刷ヘッド28に組み込むかあるいは密接に関連付けることができ、あるいは印刷ヘッドとは別個もしくは無関係とすることができる。図2の実施形態では、貯槽100は印刷ヘッド28内の複数のインクジェット放射器27へ溶融インクを給送する構成とした印刷ヘッド貯槽を備える。別の選択肢として、流出口114は貯槽容積110を別の導管や管や他の流路構造(図示せず)に接続し、遠くの印刷ヘッドや別の貯槽へ溶融インクを移送することができる。
【0023】
図2と図3を参照するに、筺体108の貯槽容積110はインクを収容する所定の容積空間を画定する寸法を有する。貯槽容積空間を画定する寸法は、使用する形状に依存する。例えば、図2と図3の実施形態では、貯槽容積110は一般的に高さHと幅Wと深さDとで画定される立方体すなわち直平行六面体形状を有する。代替実施形態では、貯槽容積110には数例を挙げるに、筒状や、定型形状や不定型形状、さらには組み合わせ形状等の他の適当な形状を持たせることができる。貯槽容積に関連して使用する高さと幅と深さは、この種形状に関して容積を画定するのに用いる寸法上の属性を包含するものと広く解釈することができる。貯槽容積110内にさらに画定したのが、液体インク上限容積液位(点線134で図示)と液体インク下限容積液位(点線138で図示)とである。本願明細書に使用する如く、上限134と下限138はそれぞれ装置10の通常動作期間中の貯槽容積110内で維持する所望のインク最大容積とインク最小容積を表わす。図2に示す如く、インク液位センサ118を貯槽容積110内に少なくとも一部位置決めし、貯槽容積110内のインクの高さすなわち液位が上限容積134と下限容積138の一方もしくは両方に達した時にこれを検出することができる。任意の適当な種別のインク液位センサ118を、用いることができる。インク液位センサ118はコントローラ120に結合してあり、被検出インク液位を示す信号をコントローラ120へ出力する構成としてある。コントローラ120は、貯槽容積110内のインク液位に少なくとも一部基づき流入口112を介する貯槽容積110への溶融インクの供給を制御する構成としてある。
【0024】
図2に示す如く、上限容積134を貯槽容積110の上面116よりも下側に設定し、印刷機10の傾斜配置および/または傾斜に対する許容量を提供することができる。下限容積138は、貯槽容積110の底部117上方と流出口114上方とに設定される。貯槽容積110内のインク高さが下限容積138よりも下側に至り、すなわち降下した場合、コントローラ120は貯槽容積208内の液位が下限液位を上回るよう保証すべく、動作を保留しあるいは他の行動をとることができる。コントローラ120は、前述したような処理装置を備える。コントローラ120は印刷機10の制御システム68内に組み込むことができ、あるいは貯槽組立体100用の別個の専用制御システムで構成することができる。
【0025】
誘導加熱システム104は、誘導電源124と誘導コイル128と誘導加熱エレメント130とを備える。誘導コイル128は、筺体108の外部に配置してある。貯槽筺体は、加熱エレメントの誘導加熱に適合する任意の材料とすることができる。筺体108に対するプラスチック材の使用により、筺体外部に保持造作および/または配置造作109の導入を可能とし、組み込まれた配置造作の使用により筺体内部に配置しあるいは固定することもできる貯槽容積110と加熱エレメント130とに対するコイルの配置を容易にすることができる。電気リード線138が、誘導コイル128を電源124に連結している。動作時、電源124はコイル128を流れる交流を発生する。交流により、コイル128は貯槽チャンバ110内の誘導加熱エレメント130に飛び込む交番磁界を生成することができる。当分野で熟知されている如く、交番磁界は渦電流損および/またはヒステリシスを介して誘導加熱エレメント130内に熱を誘起する。コントローラ120は、加熱エレメント130内に生成される熱量の制御用に算出された1以上の所定の電力レベルおよび/または周波数にて交番電流を生成すべく電源124が起動できるよう、誘導電源124に結合してある。電源124の電力レベルと周波数、加えてコイル128の寸法等の他のパラメータもまた制御し、加熱エレメント130に対し位置決めすることで、加熱エレメント130内に目標熱レベルを即生成することができる。
【0026】
加熱エレメント130は、コイル128からの磁界に応答して貯槽内のインクを融解するのに適した熱レベルを生成し維持することのできる熱伝導材料で少なくとも一部形成してある。一実施形態では、加熱エレメントは、少なくとも一部ステンレス鋼等の金属材料で形成するが、任意の適当な熱伝導材料を用いることができる。加熱エレメントには、交番磁界に応答して加熱エレメント130のヒステリシス加熱を容易にする強磁性特性を持たせることができる。
【0027】
加熱エレメントは、貯槽容積110の底部117近傍の貯槽容積110内に配置し、頂部116に向かって延在する。一実施形態では、加熱エレメント130のパラメトリック容積は貯槽容積110の総容積の50%を上回り最大で上限容積134までである。図2に示す如く、加熱エレメント130の少なくとも一部は貯槽容積110の下限容積138よりも下側に配置し、大半の動作モードならびに装置状態の期間中に加熱エレメントの少なくとも一部をインク内に浸すことができるようにしてある。図4に最もよく見てとれる如く、加熱エレメント130には流出口114近くのインクの融解を促すよう流出口114近傍にある貯槽容積110内の所定位置を占有させることができる。加熱エレメント130の構成に応じ、加熱エレメント130は流出口114の入り口までずっと延在させ、一部事例では流出口114内まで一部延在させることができる。
【0028】
加熱エレメント130は、加熱エレメント130のパラメトリック容積に関連する極めて大きな表面積を備える構成あるいは形状を有する。一実施形態では、加熱エレメント130は貯槽容積110の高さHと幅Wとにより画定される表面積を上回るインク102への露出に利用可能な表面積を提供する形状を有する。加熱エレメント130用に、多くの異なる形状と構成を用いることができる。例えば、加熱エレメント130は、ウェブ(編物)やバンドル(束状構造)やメッシュ(網目組織)やスクリーン(遮幕)やブレイド(編組)やウィーブ(織物)、あるいは導電性繊維や撚り線や糸状体の集合体で構成することができる。この種の薄肉導電材の分類は、繊維および/または糸状体間に流出口114を介してインクを流せる十分な空間を提供しつつ、即達成可能な極めて大きな表面積対容積比をもたらす。図2から図4の加熱エレメント130は、鋼綿に似た繊維質または糸状体様のバンドル(束状構造)もしくはクラスター(塊状構造)を表わす。
【0029】
図5から図8は、使用できる加熱エレメント130の他の可能な若干の構成を表わす。例えば、図5は材料ブロックを通って延在する複数チャネル538を有する導電材からなるブロック534を備える加熱エレメント530を表わすものである。チャネル538はブロック534内に均一に分散させてあり、したがってブロック534の長さと幅全体に実質均一に熱が生成される。図6は、複数の細長いロッド634からなる加熱エレメント630を表わす。ロッド634は、貯槽容積110の幅W全体に長く伸びるよう構成してある。図5のチャネル538と同様、ロッドを均一に離間させ、加熱エレメント630の長さと幅全体に実質均一に熱が生成されるようにしてある。エンドキャップ638(図6に仮想線で図示)あるいは同種の構造を加熱エレメント630の一端あるいは両端に用い、ロッド634を構造的に接続することができる。図7は、複数の細長いロッド734からなる加熱エレメント730を表す。エンドキャップ738(図7の仮想線で図示)は、ロッド734を熱的に接続するのに用いることができる。加熱エレメント730は、この加熱エレメント730の細長いロッド734が貯槽容積110内の深さDに沿って延在するよう構成されている点を除き、加熱エレメント630と実質同一である。図8は、層内に互いに一様に離間させて配置した導電材からなる複数のウェブやスクリーンや格子様シート834を備える加熱エレメント830を示すものである。ロッド838は連続ウェブ834間を延び、ウェブ834を構造的に連結している。
【0030】
加熱システム104のコントローラ120は、電源124の電力レベルおよび/または周波数を制御し、インクを印刷機10の動作モードに適した温度に加熱できるよう作動可能としてある。例えば、印刷機10が印刷モードあるいは準備完了モードで動作し、融解組立体20を起動して固体相変化インクを融解温度にまで融解させると、溶融インクは流入口112を介して貯槽容積110内に流入する。コントローラ120は、貯槽容積110内に受容したインクを液体状態に維持する構成の所定レベルにて電源124を起動する。溶融インクは、流出口114を介して印刷ヘッド28内のインクジェット式の放射器へ流すことができる。印刷モードまたは準備完了モードから待機モードあるいは電力節約モードへの移行時に、コントローラ120はモードに応じて電源124の起動を停止し、あるいは電源124の電力レベルおよび/または周波数を低減することができる。その結果、インク温度はそのインクの凝固点またはそれ未満に降下し、貯槽容積110内でインクが固化することがある。
【0031】
装置が待機モードあるいは電力節約モードから印刷モードあるいは準備完了モードへ移行すると、コントローラ120が電源124を起動し、加熱エレメント130を誘導加熱する。加熱エレメント130内に熱が生成されると、加熱エレメント130近傍の領域の固体インク102が先ず融解し始める。流出口114近傍の位置への加熱器エレメント130の配置が、流出口114近傍でインクの融解が行なわれ、加熱器130が加熱を開始した後、流出口114を通って溶融インクが素早く流動できるようにする。したがって、たとえ貯槽要領110内のインク102の他の部分が完全な溶融状態に至らずとも、溶融インクは流出口114を介して印刷ヘッド28へ流れることができる。
【0032】
ここで図9を参照するに、一実施形態では、コントローラ120は温度センサ140を用いて構成し、貯槽容積110内のインクの温度調整を可能にできる。本実施形態では、コントローラ120は温度センサ140から温度情報を受け取り、スイッチ144を選択的に開閉し、電気リード線138を介して電源124から誘導コイル128への電流の流れを制御する。スイッチ144は、電機スイッチもしくは固態スイッチとすることができる。本実施形態では、コントローラ120は温度センサ140が検出する貯槽温度に応じてスイッチ144を選択的に開閉する。温度センサ140が生成する信号がインク温度が所定の下側温度閾値未満であることを示すと、コントローラ120はスイッチ144を閉じ、電源124からの電流がコイル128を流れ、コイル128に交番磁界を生成させることができる。加熱エレメント130の温度は交番磁界に応じて増加し、インク貯槽110内のインクを加熱する。インク102の温度が下側閾値温度を上回る上側閾値温度に達すると、コントローラ120がスイッチ144を開き、コイル124から電流を断ち、加熱エレメント130内の熱を低減する。別の選択肢として、より精密な制御方法は温度変化レートすなわち下側あるいは上側の温度設定点からのオフセットに近づく所定温度を用い、加熱器に給送される電流および/またはオン/オフ周回周波数の切り換えを開始させることができる。この型の「スイッチ」の1つの形は、PID(比例・積分・微分型)コントローラである。使用できる相変化インクの一部実施形態用の下側と上側の温度閾値は、それぞれ110℃と125℃である。
【0033】
別の動作モードにあっては、インク102は固相にて貯槽容積110を占有する。コントローラ120はスイッチ144を開き、当分野で公知の様々なエネルギー節約プログラムや技法に従ってインク102を冷却し固化させることができる。インク102はまた、インクを凝固点まで冷却できるようにするに十分な時間期間に亙り電源から印刷装置の接続を断ったときに固化させることができる。固化インクの融解時に、コントローラ120はスイッチ144を閉成し、電源124からの電流がリード線138を介してコイル128へ流れることができるようにし、加熱エレメント130内に熱を誘起させる交番磁界をコイル128に発生させる。加熱エレメント130は、貯槽容積110の幅W全体に均一に熱を加える。印刷ヘッド28内のインクジェット放射器27に対し加熱エレメント130がその近傍にあるが故に、放射器27に近いインク102はインクジェット放射器27からより遠くにある部分の貯槽容積110内にあるインクよりも素早く融解する。したがって、放射器27は印刷ヘッドの幅全体に一様な態様にて溶融インクを受容し、たとえインク102の一部が固体のままであろうとも、複数の放射器を介して溶融インクを放射に利用可能である。
【0034】
上記した実施形態は単なる例示に過ぎず、代替実施形態を限定するものではない。誘導加熱エレメントの様々な実装例を、説明した。いずれの場合も、加熱器以外の様々な構成要素が異なる実装に適合する。例えば、筺体材料、排気、温度フィードバック制御、貯槽容積、あるいは限界容積液位は、どのような誘導加熱エレメントとも共に用いることができる。誘導加熱エレメントは、貯槽に対しどんな形であれ配向することができる。傾斜隆起や屈曲や孔や空所等を組み込んだ構成は、加熱エレメントの表面積を拡大し、重力が液状化インクを貯槽流出口へ付勢できるようにする。図1は間接的な相変化撮像装置を図示したものであるが、上記した加熱エレメントと貯槽は直接表記装置を含む相変化インク撮像装置の他の実施形態での使用に等しく適したものである。加えて、上記した特徴は1または複数のインク貯槽を用いる撮像装置での使用と1以上のカラーインクを用いる撮像装置に適したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷機であって、
固体インクを受容する構成のインク装填器と、
前記インク装填器から固体インクを受容するよう配置され、前記固体インクをその融解温度まで加熱し、液体を生成する構成とした溶融装置と、
前記溶融装置に流体接続され、該融解装置から融解した固体インクを受容する容器で、
断熱材で出来た筺体で、その内部に容積空間を有し、該容積空間が高さと幅と深さとを有する前記筺体と、
前記筺体の前記容積空間内に配置され、該容積空間内のインクを融解させる誘導加熱エレメントで、前記容積空間の高さと幅により画定される領域を上回る表面積を有する構成とした前記誘導加熱エレメントとを備える
前記容器とを備える、印刷機。
【請求項2】
前記容器内の前記誘導加熱エレメントの少なくとも一部を前記筺体の流出口の近傍に配置した、請求項1に記載の印刷機。
【請求項3】
前記容器内の誘導加熱エレメントの一部が前記筺体の流出口まで延在する、請求項2に記載の印刷機。
【請求項4】
前記容器の筺体はさらに、容積空間に流体接続され、前記容積空間から溶融インクを受け取り、前記印刷装置から放射させる複数のインクジェット放射器を備える、請求項1に記載の印刷機。
【請求項5】
前記容器の筺体の断熱材は、熱硬化性プラスチックである、請求項1に記載の印刷機。
【請求項6】
前記誘導加熱エレメントのパラメトリック容積は、筺体内の容積空間を完全に満たす液体容積の50%を上回る、請求項1に記載の印刷機。
【請求項7】
前記容器内の前記誘導加熱エレメントはさらに、複数の導電性の細長いロッドを備える、請求項1に記載の印刷機。
【請求項8】
前記容器内の誘導加熱エレメントはさらに、導電材からなるウェブを備える、請求項1に記載の印刷機。
【請求項9】
前記容器内の誘導加熱エレメントはさらに、導電材料のブロックを通る複数のチャネルを有する導電材ブロックを備える、請求項1に記載の印刷機。
【請求項10】
前記容積空間内に配置され、前記筺体内の容積空間内に蓄えられたインクの温度を検出できるようにした温度センサと、
前記容器近傍の前記印刷機内に配置した電気コイルと、
電源と、
前記電源と前記電気コイルに作動可能に接続したスイッチと、
前記温度センサと前記スイッチとに作動可能に接続したコントローラで、前記筺体内の容積空間内に蓄えられたインクの温度に対応する前記温度センサが生成する電気信号を受け取り、前記スイッチを動作させる電気信号を生成でき、前記温度センサから受け取った電気信号を所定の閾値と比較し、該温度センサから受け取った信号が前記所定の閾値未満であることを識別することに応答して前記スイッチを動作させる電気信号を生成し、該スイッチを動作させる電気信号により該スイッチが前記電源を前記コイルに選択的に接続し、該電気コイルが生成する電磁界が前記誘導加熱エレメント内に電流を誘起し、前記容器内の容積空間内に熱を発生させられるようにする構成とした前記コントローラとをさらに備える、請求項1に記載の印刷機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−121325(P2012−121325A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256810(P2011−256810)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】