説明

固体ワクチン製剤

本発明は、少なくとも1種の抗原を活性物質として含む粘膜投与用に適合された固体ワクチン製剤に関し、ここで、該製剤は、酸素含有金属塩と、抗原と、(i)糖類、(ii)糖アルコール及び(iii)アミノ酸又は医薬的に許容されるその塩から選択される1又は複数種の賦形剤とを含む懸濁剤の凍結乾燥物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘膜投与用に適合され、少なくとも1つの抗原を活性物質として含む固体ワクチン製剤に関し、ここで、該製剤は、酸素含有金属塩と、該抗原と、(i) 糖類、(ii) 糖アルコール及び(iii) アミノ酸又はその医薬的に許容される塩から選択される少なくとも1種の賦形剤とを含む懸濁剤(suspension)の凍結乾燥物を含む。本発明は、上記の凍結乾燥物の、粘膜投与用の固体ワクチン製剤の製造のための使用、及び該製剤の、対象におけるアレルギーの治療又はアレルギー症状の緩和のための使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
トレハロースは、2つのグルコースモノマーからなる非還元二糖である。これは、いくつかの植物とともに、細菌、真菌及び脊椎動物を含む多くの生物に存在する。トレハロースは、タンパク質を安定化することが知られている。
【0003】
US-A-4578270は、水酸化アルミニウム及びリン酸アルミニウムのゲルのような不溶性担体上に吸着された抗原と保護剤との混合物が凍結乾燥に付される凍結乾燥ワクチンの製造方法を開示している。該保護剤は、例えばタンパク質、ポリペプチド、多糖類及びその他の合成保護コロイドであってよい。具体的には、分子量40,000のデキストラン、及びデキストランと多糖類との組み合わせが用いられている。保護剤は、抗原溶液の0.5〜10%の量で用いられている。使用する際に、凍結乾燥ワクチンは、緩衝液で再構成される。
【0004】
US-A-5902565は、後で液体製剤又は固体ペレット若しくはインプラントに組込むことができる乾燥小球形粒子の形のワクチン製剤の製造方法を開示している。アルミニウムゲルのゲル形成性の性質が、完全に保持されている。US-A-5902565のある態様は、アルミニウム塩アジュバントに吸着させた免疫原の水性懸濁液を作製し、該懸濁液を噴霧乾燥することを含む即時放出ワクチンの製造方法に関する。任意に、懸濁液は、糖及び糖誘導体、例えばトレハロース、デキストロース及びグルコサミンのようなタンパク質安定化剤を含む。
【0005】
EP-B1-0130619は、アルミニウムゲル及び安定化剤を抗原に加え、混合物を凍結乾燥することを含む、不活化精製B型肝炎ウイルス表面抗原の凍結乾燥ワクチン調製物の製造方法を開示している。安定化剤は、アミノ酸、コロイド状物質並びに多糖類、例えば単糖類、ラクトース、マルトース及びサッカロースのような二糖類、及び糖アルコールであってよい。
【0006】
Gribbonら(Dev Biol Stand. Basel, Karger, 1996, vol 87, pp 193〜199)は、トレハロースを安定化剤として用いるワクチンの安定化の研究を開示している。ミョウバン(alum)をアジュバントとするジフテリア及び破傷風抗原ワクチンの市販の製剤をトレハロースと混合し、該混合物を凍結乾燥して、乾燥粉末を得た。粉末を45℃にて35週まで貯蔵し、再構成した破傷風トキソイドの活性を測定した。35週間後に、回復された活性は、対応する新鮮な湿潤コントロールと比較して94%であった。さらに、トレハロースの安定化及び保護の効果を、グルコース及びスクロースと比較し、トレハロースがより効果的であることが見出された。
【0007】
Maaら(Journal of Pharmaceutical Sciences, Vol. 92, No.2, February 2003)は、B型肝炎表面抗原又はジフテリア及び破傷風トキソイドを含むミョウバンをアジュバントとするワクチン乾燥粉末製剤の安定化の研究を行っている。種々の乾燥法が試験され、ミョウバンゲルの凝集及び免疫原性の保持において、凍結乾燥、噴霧乾燥及び空気乾燥よりも、噴霧凍結乾燥が優れていることが見出された。また、ミョウバンゲル凝集を避けるための種々の安定化剤の効果が試験され、その効果はわずかなものでしかないことが見出された。
【0008】
Maaら(Pharmaceutical Research, Vol. 20, No. 7, July 2003)は、好ましくは3/3/4の比のトレハロース、マンニトール及びデキストランの組み合わせを安定化剤として用いる、ミョウバンに吸着させたB型肝炎表面抗原ワクチン粉末を製造する噴霧凍結乾燥法を開示している。この文献は、表皮粉末免疫化(EPI)について記載し、粘膜投与について示唆していない。
【0009】
WO 02/101412は、水溶液又は懸濁剤を噴霧凍結乾燥する粉末の製造方法を開示している。水溶液は、少なくとも20重量%の固形分を有し、1) アルミニウム塩又はカルシウム塩のアジュバント、2) 無定形の賦形剤、例えばトレハロース、3) 結晶質の賦形剤、例えばマンニトール、4) ポリマー、例えばデキストランから選択される1又は複数の賦形剤を含有する。(a) トレハロース、マンニトール及びデキストランの組み合わせ、並びに(b) トレハロース、グリシン及びデキストランの組み合わせを含んで、ミョウバンをアジュバントとする具体的な抗原組成物がいくつか記載されている。粉末は、針のないシリンジデバイスによる投与用に有用であると記載されている。
【0010】
WO 01/93829は、アルミニウム塩又はカルシウム塩のアジュバントに吸着した抗原と、糖類と、アミノ酸又はその塩と、コロイド状物質とを含む水性懸濁液を噴霧乾燥又は噴霧凍結乾燥することにより得られる、ワクチンとして用いるのに適するゲル形成性易流動性(free-flowing)粉末に関する。粉末は、無針シリンジを用いるワクチンの経皮送達用に有用であるといわれている。
【0011】
WO 95/33488は、水酸化アルミニウム及びリン酸アルミニウムのような物質の脱水及び再水和の間の凝集を低減又は回避する方法を開示している。この文献は、リン酸アルミニウムの凝集に対するトレハロースの影響の実験的研究を示し、ここで、15%のトレハロースの存否でのリン酸アルミニウムの懸濁剤を、とりわけ凍結乾燥に供している。この濃度のトレハロースが再水和時の凝集を妨げることが見出された。
【0012】
ワクチン製剤
従来の具体的なアレルギーワクチン接種は、長期間にわたって行われる複数回の皮下免疫化を用いて行われる。経過は、2つの時期、用量増加期と維持期とに分けられる。用量増加期には、微小用量から開始して増加する用量を典型的には16週間を超えて投与する。推奨される維持用量に到達すると、この用量を維持期の間、典型的には6週間ごとの注射により投与する。各注射の後に、患者は、アナフィラキシー性の副作用の危険性のために、30分間は医師の付き添いの下にいなければならないが、これは原則として命を脅かすことにはほとんどなり得ない。さらに、診療所は、緊急の治療を支持するための備えを有さなければならない。異なる投与経路に基づくワクチンが、現在の皮下に基づくワクチンに固有のアレルギー性副作用の危険性を消去又は低減させるであろうこと、そして家での自己ワクチン接種さえも可能にできるより一般に普及した使用を促進するであろうことは疑いがない。
【0013】
皮下投与のための従来のアレルギーワクチンでは、アレルゲンは、アジュバントとして働く水酸化アルミニウムゲルの懸濁剤中に典型的には存在する。アジュバントとしての水酸化アルミニウムの機能の背後にある機構は、完全には理解されていないが、水酸化アルミニウムのアジュバントとしての効果は、デポー効果により体へのアレルゲンの長期放出を促進することによると考えられている。
【0014】
水酸化アルミニウムに基づくワクチン製剤は、貯蔵及び輸送の間に冷蔵を必要とするという不利な点がある。また、凍結及び凍結乾燥は、ワクチン製剤の沈降速度及び流動性のような力価及び物理的特性を低減させる。
【0015】
WO 04/047794は、活性成分としてのアレルゲンと、ゼラチン又はデンプンのようなマトリクス形成物質で構成されるマトリクスとを含む、アレルゲンの口腔粘膜(oromucosal)投与に適する速溶解性非圧縮固体アレルゲンワクチン投与形態を開示している。
【0016】
WO 00/45847は、少なくとも1つの免疫原性物質と、酸素含有金属塩を含む粘膜送達系とを含む、粘膜による免疫原性物質送達用のワクチンを提案している。この出願の実施例では、ワクチンは、経口強制栄養(胃へ直接)によるか、又は液剤として腹腔内へ投与されている。よって、舌下投与のような粘膜投与用の固体製剤について記載する実施例はない。
【0017】
EP 1516615は、ウェファー又はフィルムが安定性ポリオールとそこに溶解又は分散された治療剤とから形成される、経粘膜(transmucosal)送達に適する固体用量粘膜付着性(mucoadhesive)ウェファー又はフィルム製剤に関する。ポリオールは、例えばトレハロースであり得、治療剤は抗原及びアジュバントであり得る。この出願は、酸素含有金属塩と抗原と1又は複数の賦形剤との水性懸濁液の凍結乾燥物を含む固体ワクチン製剤、そして特にアレルゲンと水酸化アルミニウムと1又は複数の賦形剤とを含む水性懸濁液の凍結乾燥物を含むワクチン製剤について示唆していない。
【0018】
US 5,591,433は、腸溶コーティングにマイクロカプセル化されたアレルゲンを含む経口製剤に関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、粘膜投与用の改良された固体ワクチン製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、酸素含有金属塩と、少なくとも1つの抗原と、(i) 糖類、(ii) 糖アルコール及び(iii) アミノ酸又はその医薬的に許容される塩から選択される少なくとも1つの賦形剤とを含む懸濁剤の凍結乾燥物を含む固体ワクチン製剤に関する。
【0021】
本発明は、酸素含有金属塩と、少なくとも1つの抗原と、(i) 糖類、(ii) 糖アルコール及び(iii) アミノ酸又はその医薬的に許容される塩から選択される少なくとも1つの賦形剤とを含む懸濁剤の凍結乾燥物の、粘膜投与用の固体ワクチン製剤の製造のための使用にも関する。
【0022】
さらなる態様において、本発明は、上記のような固体製剤の有効量を粘膜投与することを含む、対象にワクチン接種する方法に関する。
特に、本発明は、少なくとも1つのアレルゲンを含む上記のような固体製剤の有効量を粘膜投与することを含む、アレルギーを治療するか又はアレルギー症状を緩和するための方法に関する。
【0023】
本発明は、粘膜投与用の固体ワクチン製剤にアジュバントを含むことが望ましいだろうという認識、及びアジュバントが粘膜付着性を有することが望ましいだろうという認識に基づく。さらに、酸素含有金属塩、例えば水酸化アルミニウムは、アジュバント及び粘膜付着性の特性をともに有するので、このような物質が粘膜投与用の固体ワクチン製剤での使用に理想的であることが認識された。
【0024】
本発明は、トレハロース、スクロース及びある種の他の賦形剤が、水酸化アルミニウム及び対応する酸素含有金属塩を、凍結乾燥の有害な影響から保護することに関して非常に例外的な特性を有すること、そしてそのことにより、水酸化アルミニウムと、トレハロース、スクロース及びある種の他の賦形剤との懸濁剤を凍結乾燥することにより得られる水酸化アルミニウム含有固形物が、容易に再水和して、凍結乾燥プロセスにより驚くべきレベルで影響されない特性を有するアルミニウムゲルを形成し得ることを見出したことに基づく。
【0025】
本発明は、トレハロース、スクロース及びある他の賦形剤の上記の驚くべき機能を、酸素含有金属塩アジュバント、例えば水酸化アルミニウムを含有する、粘膜と接触したときに再水和するように設計された固体ワクチン製剤、例えば速溶解性錠剤の製造に利用できるという認識にも基づく。
【0026】
よって、本発明は、酸素含有金属塩アジュバント、例えば水酸化アルミニウムを含有する粘膜投与用の固体ワクチン製剤を製造する可能性を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図面の簡単な説明
図1は、種々の阻害物質製剤によるDer p特異的IgEのビオチン標識Der pへの結合の阻害の程度を示す。
図2は、種々の阻害物質製剤によるDer p特異的IgEのビオチン標識Der pへの結合の阻害の程度を示す。
図3は、試験した製剤の3つの対の力価の推定量の比較を示す。
【0028】
図4は、種々のPhl p製剤で3回免疫されたマウスでのPhl p特異的IgGのレベルを示す。
図5は、種々のDer p製剤で2回(上のパネル)及び5回(上のパネル)免疫されたマウスでのDer p 1特異的IgGのレベルを示す。
図6は、免疫化プログラムの経過中のDer p 1特異的IgGの時間的発達を示す。
【0029】
発明の詳細な説明
本発明は、酸素含有金属塩と、少なくとも1種の抗原と、(i) 糖類、(ii) 糖アルコール及び(iii) アミノ酸又はその医薬的に許容される塩からなる群より選択される少なくとも1種の賦形剤とを含む懸濁剤の凍結乾燥物を含む固体ワクチン製剤を提供する。
【0030】
本発明は、酸素含有金属塩と、少なくとも1種の抗原と、(i) 糖類、(ii) 糖アルコール及び(iii) アミノ酸又はその医薬的に許容される塩からなる群より選択される少なくとも1つの賦形剤とを含む懸濁剤の凍結乾燥物の、固体ワクチン製剤の製造のための使用にも関する。
【0031】
懸濁剤は、適切には水性懸濁液である。
本発明のある実施形態において、懸濁剤は、糖類から選択される1種の賦形剤を含む。
本発明の別の実施形態において、懸濁剤は、糖アルコールから選択される1種の賦形剤を含む。
本発明のさらに別の実施形態において、懸濁剤は、アミノ酸及びその医薬的に許容される塩から選択される1種の賦形剤を含む。
【0032】
本発明のさらなる実施形態において、懸濁剤は、糖類から選択される1種の賦形剤と、糖アルコールから選択される1種の賦形剤とを含む。
本発明のさらなる実施形態において、懸濁剤は、糖類から選択される1種の賦形剤と、アミノ酸及びその医薬的に許容される塩から選択される1種の賦形剤とを含む。
【0033】
本発明のさらなる実施形態において、懸濁剤は、糖アルコールから選択される1種の賦形剤と、アミノ酸及びその医薬的に許容される塩から選択される1種の賦形剤とを含む。
上記のような本発明のある実施形態において、懸濁剤は、糖類から選択される1種の賦形剤と、糖アルコールから選択される1種の賦形剤と、アミノ酸及びその医薬的に許容される塩から選択される1種の賦形剤とを含む。
【0034】
本明細書において用いる場合、糖類は、単糖類、二糖類及びオリゴ糖を意味する。
適切には、糖類は、デキストロース、スクロース、ラクトース、トレハロース、セロビオース、ラフィノース、イソマルトース及びシクロデキストリンから選択される。
好ましくは、糖類は、トレハロース及びスクロースからなる群より選択される。
【0035】
本明細書において用いる場合、糖アルコールは、糖のカルボニル基が1級又は2級のヒドロキシ基に還元されている、糖(好ましくは単糖)の水素化された形を意味する。
適切には、糖アルコールは、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、グリセロール、エリスリトール、アラビトール及びアリトールからなる群より選択され、好ましくは、糖アルコールはマンニトールである。
【0036】
適切には、アミノ酸は、グリシン、アラニン、グルタミン、アルギニン、リジン、プロリン、セリン及びヒスチジン並びにそれらの医薬的に許容される塩から選択される。好ましくは、アミノ酸はグリシンである。
アミノ酸の塩は、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、例えばナトリウム、カリウム又はマグネシウム塩、或いはその他のアミノ酸との塩、例えばグルタミン酸塩又はアスパラギン酸塩であり得る。
【0037】
さらなる実施形態において、懸濁剤は、ポリマーである追加の賦形剤を含む。該ポリマーは、デキストラン、マルトデキストラン、デンプン、セルロース、ゼラチン、アガロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリエチレングリコール(PEG)から選択され得る。好ましくは、ポリマーはデキストランである。
【0038】
よって、本発明のある実施形態において、懸濁剤は、糖類から選択される1種の賦形剤、例えばトレハロース及びスクロースと、糖アルコールから選択される1種の賦形剤、例えばマンニトールと、ポリマーである1種の賦形剤、例えばデキストランとを含む。
【0039】
本発明のさらなる実施形態において、懸濁剤は、糖類から選択される1種の賦形剤、例えばトレハロース又はスクロースと、アミノ酸及びその医薬的に許容される塩から選択される1種の賦形剤、例えばグリシンと、ポリマーである1種の賦形剤、例えばデキストランとを含む。
【0040】
本発明のさらなる実施形態において、懸濁剤は、糖アルコールから選択される1種の賦形剤、例えばマンニトールと、アミノ酸及びその医薬的に許容される塩から選択される1種の賦形剤、例えばグリシンと、ポリマーである1種の賦形剤、例えばデキストランとを含む。
【0041】
本発明の別の実施形態において、懸濁剤は、糖類から選択される1種の賦形剤、例えばトレハロース又はスクロースと、ポリマーである1種の賦形剤、例えばデキストランとを含む。
本発明の別の実施形態において、懸濁剤は、糖アルコールから選択される1種の賦形剤、例えばマンニトールと、ポリマーである1種の賦形剤、例えばデキストランとを含む。
【0042】
本発明の別の実施形態において、懸濁剤は、アミノ酸及びその医薬的に許容される塩から選択される1種の賦形剤、例えばグリシンと、ポリマーである1種の賦形剤、例えばデキストランとを含む。
【0043】
種々のグレードのデキストランが利用可能であり、適切なデキストランは、10,000より大きい分子量、例えば10,000〜200,000の範囲の平均分子量を有する。好ましくは、デキストランは、40.000、60.000又は70.000ダルトンの分子量を有する。
【0044】
本発明のある実施形態によると、懸濁剤は、スクロース及びマンニトールの混合物を含む。
本発明の別の実施形態において、懸濁剤は、スクロース、グリシン及びデキストランの混合物を含む。
本発明の別の実施形態において、懸濁剤は、トレハロース及びマンニトールの混合物を含む。
【0045】
本発明の別の実施形態において、懸濁剤は、スクロース、マンニトール及びデキストランの混合物を含む。
本発明の別の実施形態において、懸濁剤は、トレハロース、グリシン及びデキストランの混合物を含む。
本発明の別の実施形態において、懸濁剤は、トレハロース、マンニトール及びデキストランの混合物を含む。
【0046】
本発明の別の実施形態において、懸濁剤はトレハロース及びグリシンの混合物を含む。
本発明の別の実施形態において、懸濁剤はスクロース及びグリシンの混合物を含む。
本発明の別の実施形態において、懸濁剤はグリシン及びマンニトールの混合物を含む。
【0047】
本発明で用いるための賦形剤の好ましい組み合わせは、糖類、糖アルコール又はアミノ酸若しくは医薬的に許容されるその塩と、ポリマーとの組み合わせである。
【0048】
懸濁剤がスクロース及びマンニトールを含む場合、スクロース対マンニトールの重量比は、適切には1:4〜4:1、又は1:2〜2:1、例えば1:4、3:2、2:3、4:1、2:1、1:2又は1:1であり、好ましくはこの比は1:1である。
【0049】
懸濁剤がスクロース、グリシン及びデキストランを含む場合、スクロース対グリシン対デキストランの重量比は、適切には5:4:1、4:5:1、3:5:2、2:5:3、4:4:2、3:4:3、2:4:4、6:3:1、7:2:1及び8:1:1から選択され、好ましくは、スクロース対グリシン対デキストランの比は5:4:1である。
【0050】
懸濁剤がトレハロース及びマンニトールを含む場合、トレハロース対マンニトールの重量比は、適切には1:4〜4:1、又は1:2〜2:1、例えば1:4、3:2、2:3、4:1、2:1、1:2若しくは1:1であり、好ましくは、重量比は1:1である。
懸濁剤がスクロース、マンニトール及びデキストランを含む場合、スクロース対マンニトール対デキストランの重量比は、適切には5:4:1、4:5:1、3:5:2、2:5:3、4:4:2、3:4:3、2:4:4、6:3:1、7:2:1及び8:1:1から選択され、好ましくは、重量比は3:5:2である。
【0051】
懸濁剤がトレハロース、マンニトール及びデキストランを含む場合、トレハロース対マンニトール対デキストランの重量比は、適切には5:4:1、4:5:1、3:5:2、2:5:3、4:4:2、3:4:3、2:4:4、6:3:1、7:2:1又は8:1:1から選択される。
懸濁剤がトレハロース、グリシン及びデキストランを含む場合、トレハロース対グリシン対デキストランの重量比は、適切には5:4:1、4:5:1、3:5:2、2:5:3、4:4:2、3:4:3、2:4:4、6:3:1、7:2:1及び8:1:1である。
【0052】
懸濁剤がトレハロース及びグリシンを含む場合、トレハロース対グリシンの重量比は、適切には1:4〜4:1、又は1:2〜2:1、例えば1:4、3:2、2:3、4:1、2:1、1:2若しくは1:1であり、好ましくは、重量比は1:1である。
懸濁剤がスクロース及びグリシンを含む場合、スクロース対グリシンの重量比は、適切には1:4〜4:1、又は1:2〜2:1、例えば1:4、3:2、2:3、4:1、2:1、1:2若しくは1:1であり、好ましくは、重量比は1:1である。
【0053】
懸濁剤がマンニトール及びグリシンを含む場合、マンニトール対グリシンの重量比は、適切には1:4〜4:1、又は1:2〜2:1、例えば1:4、3:2、2:3、4:1、2:1、1:2若しくは1:1であり、好ましくは、重量比は1:1である。
【0054】
上記の懸濁剤は、さらに、0.1〜5重量%の界面活性剤、例えばポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート(Tween 20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween 80)、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのブロックコポリマー(Pluronic)を含有し得る。
【0055】
ある実施形態によると、本発明による製剤は錠剤である。
錠剤は、非圧縮錠剤(例えば速溶解性錠剤)であり得る。
【0056】
本発明の別の実施形態によると、錠剤は、圧縮錠剤である。
上記のようないずれの錠剤も、舌下投与用であり得る。
【0057】
本発明による製剤は、散剤でもあり得る。
本発明のさらなる実施形態において、製剤は粒子の形である。
製剤は、顆粒剤(granulate)でもあり得る。
【0058】
さらなる実施形態において、製剤は、凍結乾燥物を含むカプセル剤である。カプセル剤に含有される凍結乾燥物は、粉末、粒子又は顆粒の形であり得る。ある実施形態において、カプセル剤は、下記のような被覆された微粒子を含む。
【0059】
抗原
本発明による固体製剤は、1種の抗原、又は複数の抗原を含み得る。
【0060】
アレルゲン
本発明の具体的な実施形態において、抗原はアレルゲンである。アレルゲンは、個体へのそれらの繰り返しの曝露によりアレルギー性反応、すなわちIgE媒介反応を誘発すると報告されているいずれの天然に存在するタンパク質であり得る。天然に存在するアレルゲンの例は、花粉アレルゲン(木本、ハーブ、雑草、イネ科草本(grass)の花粉アレルゲン)、昆虫アレルゲン(吸入物、唾液、及び毒物のアレルゲン、例えばダニアレルゲン、ゴキブリ及びユスリカアレルゲン、膜翅目毒物のアレルゲン)、動物の体毛及び鱗屑アレルゲン(例えばイヌ、ネコ、ウマ、ラット、マウスなど由来)、並びに食物アレルゲンを含む。
【0061】
木本、イネ科草本及びハーブからの重要な花粉アレルゲンは、分類学上の、ブナ目(Fagales)、モクセイ目(Oleales)、マツ目(Pinales)及びスズカケノキ科(platanaceae)(とりわけ、カンバ(birch)(カバノキ属(Betula))、ハンノキ(alder)(ハンノキ属(Alnus))、セイヨウハシバミ(hazel)(ハシバミ属(Corylus))、セイヨウシデ(hornbeam)(クマシデ属(Carpinus))、オリーブ(olive)(オリーブ属(Olea))、シーダー(cedar)(スギ属(Cryptomeria)及びビャクシン属(Juniperus))、プラタナス(Plane tree)(プラタナス属(Platanus))が挙げられる)、イネ目(Poales)(とりわけ、ドクムギ属(Lolium)、アワガエリ属(Phleum)、イチゴツナギ属(Poa)、ギョウギシバ属(Cynodon)、カモガヤ属(Dactylis)、シラゲガヤ属(Holcus)、クサヨシ属(Phalaris)、ライムギ属(Secale)及びモロコシ属(Sorghum)のイネ科草本が挙げられる)、キク目(Asterales)及びイラクサ目(Urticales)(とりわけ、ブタクサ属(Ambrosia)、ヨモギ属(Artemisia)及びヒカゲミズ属(Parietaria)のハーブが挙げられる)に由来するものである。
【0062】
その他の重要な吸入アレルゲンは、ヒョウヒ属(Dermatophagoides)及びユーログリファス属(Euroglyphus)のチリダニ、貯蔵庫ダニ(例えば、レピドグリフィス属(Lepidoglyphys)、ニクダニ属(Glycyphagus)及びケナガコナダニ属(Tyrophagus))に由来するもの、ゴキブリ、ユスリカ及びノミ(例えば、チャバネゴキブリ属(Blatella)、ペリプラネタ属(Periplaneta)、キロノムス属(Chironomus)及びクテノケファリデス属(Ctenocephalides))に由来するもの、及び哺乳動物(例えば、ネコ、イヌ及びウマ)に由来するもの、毒物アレルゲン(刺すか又は噛み付く昆虫(分類学上のハチ目(Hymenoptera)(ミツバチ(ミツバチ上科(superfamily Apidae))、スズメバチ(スズメバチ上科(superfamily Vespidea))及びアリ(アリ上科(superfamily Formicoidae))を含む)に由来するもの)である。真菌に由来する重要な吸入アレルゲンは、とりわけ、アルテルナリア属(Alternaria)及びクラドスポリウム属(Cladosporium)に由来するものである。
【0063】
本発明のより好ましい実施形態において、アレルゲンは、Bet v 1、Aln g 1、Cor a 1及びCar b 1、Que a 1、Cry j 1、Cry j 2、Cup a 1、Cup s 1、Jun a 1、Jun a 2、jun a 3、Ole e 1、Lig v 1、Pla l 1、Pla a 2、Amb a 1、Amb a 2、Amb t 5、Art v 1、Art v 2、Par j 1、Par j 2、Par j 3、Sal k 1、Ave e 1、Cyn d 1、Cyn d 7、Dac g 1、Fes p 1、Hol l 1、Lol p 1及び5、Pha a 1、Pas n 1、Phl p 1、Phl p 5、Phl p 6、Poa p 1、Poa p 5、 Sec c 1、Sec c 5、Sor h 1、Der f 1、Der f 2、Der p 1、Der p 2、Der p 7、Der m 1、Eur m 2、Gly d 1、Lep d 2、Blo t 1、Tyr p 2、Bla g 1、Bla g 2、Per a 1、Fel d 1、Can f 1、Can f 2、Bos d 2、Equ c 1、Equ c 2、Equ c 3、Mus m 1、Rat n 1、Apis m 1、Api m 2、Ves v 1、Ves v 2、Ves v 5、Dol m 1、Dil m 2、Dol m 5、Pol a 1、Pol a 2、Pol a 5、Sol i 1、Sol i 2、Sol i 3及びSol i 4、Alt a 1、Cla h 1、Asp f 1、Bos d 4、Mal d 1、Gly m 1、Gly m 2、Gly m 3、Ara h 1、Ara h 2、Ara h 3、Ara h 4、Ara h 5又はこれらのいずれかの分子育種からのシャッフラント(shufflant)ハイブリッドである。
【0064】
本発明の最も好ましい実施形態において、アレルゲンは、イネ科草本花粉アレルゲン又はチリダニアレルゲン又はブタクサアレルゲン又はシーダー花粉又はネコアレルゲン又はカンバアレルゲンである。
【0065】
適切には、イネ科草本花粉アレルゲンは、Phl p 1、Phl p 5及びPhl pから選択される。カンバ花粉アレルゲンはBet v 1である。ブタクサアレルゲンは、Art v 1及びArt v 2から選択される。
【0066】
本発明のさらに別の実施形態において、固体ワクチン製剤は、同じアレルゲン性供給源に由来するか又は異なるアレルゲン性供給源に由来する少なくとも2種の異なる種類のアレルゲン、例えば、それぞれ異なるイネ科草本及びダニの種からのイネ科草本グループ1及びイネ科草本グループ5アレルゲン、又はダニグループ1及びグループ2アレルゲン、ブタクサ及びオオブタクサ(short and giant ragweed)アレルゲンのような雑草アレルゲン、アルテルナリア及びクラドスポリウムのような異なる真菌アレルゲン、カンバ、セイヨウハシバミ、セイヨウシデ、オーク及びハンノキ(alder)アレルゲンのような木本アレルゲン、落花生、ダイズ及び乳アレルゲンのような食物アレルゲンを含む。
【0067】
固体ワクチン製剤に含まれるアレルゲンは、抽出物、抽出物の混合物、精製アレルゲン、修飾アレルゲン、組換えアレルゲン又は組換えアレルゲンの変異体であり得る。アレルゲン性抽出物は、同じアレルゲンの1又は複数のアイソフォームを天然に含んでよいが、組換えアレルゲンは、典型的には、アレルゲンの1つのアイソフォームを表すのみである。好ましい実施形態において、アレルゲンは、抽出物の形である。別の好ましい実施形態において、アレルゲンは、組換えアレルゲンである。さらに好ましい実施形態において、アレルゲンは、天然に存在するIgE低結合性変異体又は組換えIgE低結合性変異体である。
【0068】
組換えアレルゲンにより、発現系を用いて組換え技術により産生されるアレルゲンを意味する。
【0069】
アレルゲンは、等モル量で存在できるか、又は存在するアレルゲンの比は、好ましくは1:20まで変動できる。
【0070】
本発明のさらなる実施形態において、IgE低結合性アレルゲンは、WO 99/47680、WO02/40676又はWO 03/096869によるアレルゲンである。
【0071】
微生物物質
本発明の別の具体的な実施形態において、抗原は、微生物物質である。特に、微生物物質はウイルス、細菌、真菌、寄生虫又はそれらのいずれの一部分である。
微生物物質の例は、ビブリオ種(Vibrio species)、サルモネラ(Salmonella)種、ボルデテラ(Bordetella)種、ヘモフィラス(Haemophilus)種、トキソプラズモシス・ゴンディイ(Toxoplasmosis gondii)、サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus)、クラミジア(Chlamydia)種、ストレプトコッカル(Streptococcal)種、ノーウォークウイルス、エシェリキア・コリ(Escherischia coli)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、ヘリコバクター・フェリス(Helicobacter felis)、ロタウイルス、ナイセリア・ゴノレエ(Neisseria gonorrhea)、ナイセリア・メニンジディティス(Neisseria meningiditis)、アデノウイルス、エプスタインバーウイルス、日本脳炎ウイルス、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carini)、単純ヘルペス、クロストリジア(Clostridia)種、呼吸系発疹ウイルス、クレブシエラ(Klebsielia)種、シゲラ(Shigella)種、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、パルボウイルス、カンピロバクター(Campylobacter)種、リケッチア(Rickettsia)種、バリセラ・ゾスター(Varicella zoster)、エルシニア(Yersinia)種、ロスリバーウイルス、J. C.ウイルス、ロドコッカス・エクイ(Rhodococcus equi)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、パスツレラ・ヘモリチカ(Pasteurella haemolytica)、ポリオウイルス、インフルエンザウイルス、ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)及びサルモネラ・エンテリカ血清型チフィ(Salmonella enterica serovar Typhi)である。
【0072】
微生物物質のさらなる例は、以下の疾患の症状を予防するか又は低減するものである:インフルエンザ、結核、髄膜炎、肝炎、百日咳、ポリオ、破傷風、ジフテリア、マラリア、コレラ、ヘルペス、腸チフス、HIV、AIDS、麻疹、ライム病、旅行者性下痢(Travellers Diarrhea)、A、B及びC型肝炎、中耳炎、デング熱、狂犬病、パラインフルエンザ、風疹、黄熱病、赤痢、レジオネラ病、トキソプラズマ病、キュー熱、出血性熱(Haemorrhegic Fever)、アルゼンチン出血性熱、カリエス、シャーガス病、イー・コリによる尿路感染、肺炎球菌疾患、おたふくかぜ及びチクングンヤ。
【0073】
酸素含有金属塩
適切な酸素含有金属塩の例は、例えば、カチオンがAl、K、Ca、Mg、Zn、Ba、Na、Li、B、Be、Fe、Si、Co、Cu、Ni、Ag、Au及びCrから選択されるものである。
酸素含有化合物のアニオンは、有機若しくは無機のアニオン、又は有機アニオンと無機アニオンとの組み合わせであり得る。適切な酸素含有金属塩の例は、例えば、アニオンがサルフェート、ヒドロキシド、ホスフェート、ナイトレート、イオデート、ブロメート、カーボネート、ハイドレート、アセテート、シトレート、オキサレート及びタルトレート並びにそれらの混合された形から選択されるものである。酸素含有金属塩は、配位化合物をさらに含む。配位化合物の定義は、例えば、The Handbook of Chemistry and Physics 第56版, B節, 第7章 (1975〜76)に与えられる。
【0074】
本発明の関係において、「混合された形」の表現は、種々のアニオンの組み合わせ、及び例えばクロリド及びスルフィドとの組み合わせを含むことを意図する。
【0075】
固体ワクチン製剤は酸素含有金属塩を含むが、酸素がS、SeまたはTeのような原子を介して別の基で置換され得ることが企図される。
本発明に従って用いられる酸素含有金属塩は、粘膜送達系に処方された場合に所望の効果を与えるいずれの酸素含有金属塩であり得る。このような酸素含有物質の例は、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、硫酸カルシウム、Maalox (水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウムの混合物)、水酸化ベリリウム、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、塩化亜鉛及び硫酸バリウムである。好ましい酸素含有金属塩は、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム及びリン酸カルシウムである。最も好ましい酸素含有金属塩は、水酸化アルミニウムである。
【0076】
凍結乾燥物の調製
酸素含有金属塩と賦形剤と抗原との懸濁剤の凍結乾燥物は、酸素含有金属塩と賦形剤と抗原と、任意に追加のマトリクス形成剤及び/又はその他の物質の懸濁剤をまず形成することにより調製できる。このような追加のマトリクス形成剤及び/又はその他の物質は、作製する製剤の種類により選択される、下記を参照されたい。懸濁剤は、好ましくは水性懸濁液である。
【0077】
酸素含有金属塩として例えば水酸化アルミニウムを用いる場合、懸濁剤中の水酸化アルミニウムの濃度(mg Al/mlとして)は、好ましくは0.035〜1000 mg/ml、より好ましくは0.10〜100 mg/ml、最も好ましくは2〜30 mg/mlである。その他の酸素含有金属塩について、金属塩の濃度(mg カチオン/mlとして)は、好ましくは0.035〜1000 mg/ml、より好ましくは0.35〜100 mg/ml、より好ましくは0.7〜75 mg/ml、最も好ましくは1.5〜50 mg/mlである。
【0078】
抗原がアレルゲンである場合、懸濁剤中のアレルゲンの濃度は、好ましくは0.01〜100 mg/ml、より好ましくは0.1〜10 mg/mlである。アレルゲンに対する酸素含有金属塩の重量比は、好ましくは0.1〜100、より好ましくは1〜20である。酸素含有金属塩に吸着されるアレルゲンの程度は、添加した量の典型的には5〜99%、より好ましくは10〜99%である。アレルゲンの酸素含有金属塩への吸着は、緩衝系並びに温度及び反応時間を含む吸着が起こる反応条件に依存する。
【0079】
酸素含有金属塩のpIは、典型的には、2〜11の範囲である。アレルゲンタンパク質についてのpIは、典型的には、4〜9の範囲である。好ましくは、アレルゲン及び酸素含有金属塩は、アレルゲンのpIが酸素含有金属塩のpIより低くなるように選択される。
【0080】
懸濁剤中の賦形剤の合計濃度は、好ましくは0.1 mM〜1.2 M、より好ましくは0.5 mM〜800 mM、最も好ましくは100〜500 mMである。
懸濁剤は、好ましくは5〜25重量%の賦形剤(合計量)、又はより好ましくは10〜15重量%の賦形剤(合計量)を含む。
【0081】
懸濁剤を、次いで、凍結乾燥に供する。凍結乾燥法及び技術は、調製される固体製剤の種類、例えば散剤、粒子又は顆粒剤により選択される。
【0082】
本発明のある実施形態において、懸濁剤は滴に分けられ、凍結されて低温滴(cryodrops)を得て、これをその後の凍結乾燥に供して顆粒を得る。本発明の別の実施形態において、懸濁剤の適切な容量を容器に入れ、凍結乾燥させてケーキ状の残渣を得て、これを次いで粉砕して、所望のサイズの粒子又は粒子の粉末を形成する。
本発明のさらに別の実施形態において、懸濁剤を多重積層ブリスタシートの凹部に入れ、懸濁剤が入ったシートを凍結乾燥に供して非圧縮錠剤を形成する。次いで、シートを任意に密閉する。
さらに別の実施形態において、懸濁剤を、より低い固形物濃度の懸濁剤を任意に用いてUS 2003/0202978に記載されるようにして、又はUS 2005/0266021に記載されるようにして噴霧凍結乾燥に供する。
【0083】
粘膜投与用の固体ワクチン製剤
本発明の固体ワクチン製剤は、経口(消化系粘膜経由、例えば胃腸粘膜)、鼻、膣、舌下、眼、直腸、尿(urinal)、哺乳動物内(intramammal)、肺、耳咽喉(すなわち耳経由)、頬側又は口腔粘膜を含むいずれの粘膜経由で投与でき、好ましくは頬側若しくは舌下粘膜、又は胃腸粘膜である。
【0084】
ワクチンの粘膜投与を、抗原への曝露の天然の対象である粘膜を介して行うことが好ましいと推測されている。よって、空中浮遊粘膜抗原に対するアレルギーについて、呼吸系を介する投与、好ましくは頬側又は舌下投与を用いることが好ましいだろう。それに応じて、消化系の粘膜と接触する粘膜物質に対するアレルギーについて、経口投与を用いることが好ましいだろう。
【0085】
本発明の固体ワクチン製剤は、散剤、粒子、顆粒剤、圧縮錠剤、非圧縮錠剤、インプラント、単一の壁を有し凍結乾燥物を含有するカプセル剤からなる群より選択される製剤を含む粘膜投与に適し、かつ凍結乾燥物からなるか又は凍結乾燥物を含むいずれの固形の形、例えば粉末、粒子又は顆粒、及び凝集性のカプセル化剤とそこに包埋された粉末、粒子又は顆粒の形態の凍結乾燥物とを含む微粒子の形を有し得る。製剤は、粉末、粒状物、粒子の形、又は上記のように包埋された微粒子の形の凍結乾燥物を含むカプセル剤(例えばゼラチンカプセル)であってもよい。
【0086】
圧縮錠剤
例えば粉末、粒子又は顆粒の形の凍結乾燥物を用いて圧縮錠剤を製造できる。圧縮錠剤は、いずれの従来の錠剤形成剤又は賦形剤を含み得る。錠剤は、凝集性のカプセル化剤を含む微粒子の形の凍結乾燥物も含有し得る。
【0087】
非圧縮錠剤
本発明の具体的な実施形態において、固体ワクチン製剤は、頬側又は舌下投与に適する速溶解性非圧縮錠剤である。速溶解性非圧縮錠剤の例は、US-A-5,648,093、WO 00/51568、WO 02/13858、WO99/21579、WO 00/44351、US-A-4,371,516、EP-278 877、WO 2004/047794及びWO 2004/075875に開示されるものである。好ましい速溶解性非圧縮錠剤は、凍結乾燥により製造されるものである。好ましいマトリクス形成剤は、魚ゼラチン及び変性デンプンである。
【0088】
非圧縮錠剤は、凍結乾燥物の他に、任意の従来の錠剤形成剤又は賦形剤、例えばアジュバント、制酸剤、希釈剤、エンハンサー、粘膜付着性物質、香料、風味隠蔽剤、防腐剤、抗酸化剤、界面活性剤、増粘剤、着色料、pH調整剤、甘味料などを含み得る。これらの賦形剤は、アレルゲンワクチンを処方する当業者により理解される様式で従来の製薬のプラクティスに従って全て選択される。
【0089】
本発明の好ましい実施形態において、錠剤は、タンパク質安定化剤を含有する。タンパク質安定化剤の例は、ポリエチレングリコール(PEG)、例えばPEG300、PEG400、PEG600、PEG1000、PEG1500、PEG3000、PEG3050、PEG4000、PEH6000、PEG20000及びPEG35000;アミノ酸、例えばグリシン、アラニン、アルギニン;単糖、二糖又は三糖類、例えばトレハロース及びスクロース;ポリビニルアルコール(PVA);ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート、ツイーン又はスパン);ヒト血清アルブミン(HSA);ウシ血清アルブミン(BSA)である。好ましくは、PEGをタンパク質安定化剤として用いる。タンパク質安定化剤としての他に、PEGは、投与形態のマトリクスに弾性特性を付与すると考えられる。
【0090】
適切な着色料は、赤色、黒色及び黄色酸化鉄並びにFD & C色素、例えばFD & C青色2号及びFD & C赤色40号を含む。適切な香料は、ミント、ラズベリー、カンゾウ、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、カラメル、バニラ、チェリー及びグレープの香料及びそれらの組み合わせを含む。適切なpH調整剤は、クエン酸、酒石酸、リン酸、塩化水素酸及びマレイン酸を含む。適切な甘味料は、アスパルテーム、アセスルファムK及びタウマチン(thaumatic)を含む。適切な風味隠蔽剤は、重炭酸ナトリウム、イオン交換樹脂、シクロデキストリン包含化合物、吸着質又はマイクロカプセル化された活性物質を含む。
【0091】
アジュバントは、抗原(例えばアレルゲン)の吸着を促進するとともに、抗原(例えばアレルゲン)の免疫刺激特性を増強させるために通常用いられる。
本発明のある実施形態において、酸素含有金属塩に加えて少なくとも1種のアジュバントを、本発明による錠剤に組み込む。適切なアジュバントの例は、易熱性エンテロトキシン(LT)、コレラトキシン(CT) (及びそれらの無毒化画分)、コレラトキシンB (CTB)、ポリマー化リポソーム、変異トキシン、例えばLTK63及びLTR72、マイクロカプセル、非毒性細菌フラグメント、サイトカイン、キトサン、E.coliの相同易熱性(及びそれらの無毒化画分)、サポニン、細菌生成物、例えばリポ多糖(LPS)及びムラミルジペプチド(MDP)、リポソーム、CpG (免疫増強性DNA配列)、微粒子ポリマーの形のラクチド/グリコリドホモ(コポリマーなどである。アレルゲンワクチンにおけるアジュバントの使用は、問題のアレルゲンが、通過すべき障壁を透通できないという事実により、しばしば判断される。よって、アジュバントは、吸着促進物質として役に立つか、又は免疫増強剤として作用し得る。
【0092】
本発明による非圧縮速溶解性錠剤は、それ自体である程度粘膜付着性であり得る。しかし、本発明の好ましい実施形態において、投与形態の口腔粘膜との接触時間を増加させるために、投与形態に粘膜付着性賦形剤をさらに加えることが望ましいだろう。適切な粘膜付着性賦形剤は、ポリアクリルポリマー、例えばカルボマー及びカルボマー誘導体;セルロース誘導体、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウム;天然ポリマー、例えばゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ペクチン及びグリセロールである。
【0093】
微粒子
パイエル板は、小腸、大腸及び虫垂の壁に位置するリンパ結節の凝集塊であり、感染因子及び体にとって異質のその他の物質の付着及び透通に対する体の防御の重要な部分である。パイエル板は、集合リンパ小節としても知られている。同様の集合リンパ小節は、気道、直腸、鼻腔、口腔、咽頭、尿生殖路、大腸及び体のその他の粘膜組織で見出すことができる。上記の組織は、粘膜関連リンパ組織(MALT)と一般的によばれ得る。
適切なサイズ及び適切な物理化学的特性を有する微粒子として処方された医薬活性物質は、パイエル板及びMALTにより効率的に吸収されることが示されている。
【0094】
微粒子の使用は、投与形態の製造及び貯蔵の間と、患者への活性物質の投与のプロセスとにおいて、医薬活性物質を分解から保護するという利点を含む。このことは、活性物質がアレルゲンである場合に特に重要である。敏感な生理活性物質を分解から保護するためのマイクロカプセル化の使用は、公知になってきている。典型的には、生理活性物質は、通常はポリマー性であるいくつかの防御壁材料の任意のものの中にカプセル化される。微粒子内部の物質の量は、微粒子組成物の少量から95%又はそれより多くほど高くまでの範囲で所望により変動できる。微粒子の直径は、好ましくは20μm未満、より好ましくは15μm未満、より好ましくは10μm未満、最も好ましくは1と10μmの間である。
【0095】
カプセル化剤(encapsulating agent)は、いずれの生分解性物質、好ましくはポリマー物質であり得る。好ましくは、カプセル化剤は、ポリ-ラクチド、ポリ-ラクチド-ポリ(エチレングリコール)、ポリ(DL-ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(グリコリド)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリ(ラクチド-コ-カプロラクトン)、ポリ(エステルアミド、ポリオルソエステル及びポリ(8-ヒドロキシ酪酸)、及びポリ無水物、最も好ましくはポリ(DL-ラクチド-コ-グリコリド)からなる群より選択される。カプセル化剤のその他の例は、ポリ(ブチル-2-シアノアクリレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)及びフマル酸とセバシン酸のポリ無水物コポリマー、ポリ(FA:SA)である。本発明に従って用いるのに適するカプセル化剤は、動物又は植物タンパク質由来のもの、例えばゼラチン、デキストリン及び大豆、コムギ及びオオバコのタンパク質;ガム、例えばアカシア、グアー、アガー及びザンサン;多糖類;デンプン及び変性デンプン、アルギン酸塩(alignates);カルボキシメチルセルロース;カラギーナン;デキストラン;ペクチン;合成ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;並びにポリペプチド/タンパク質又は多糖類の複合体、例えばゼラチン-アカシア複合体を含む。
【0096】
本発明のある実施形態において、2種又はそれより多いカプセル化剤が用いられる。好ましくは、カプセル化剤は、微粒子を疎水性にするように選択される。疎水性微粒子は、MALTによってより吸収されやすいか、又はMALTを介してその効果を惹起することを可能にすると考えられている。
【0097】
ある実施形態において、用いられるカプセル化剤は、エチルアクリレートメタクリル酸コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートの腸溶コーティング、又はその他の腸溶コーティングである。米国特許第5,591,433号を参照されたい。
【0098】
カプセル剤
本発明のカプセル剤は、いずれの従来の型のカプセルであり得る。本発明の具体的な実施形態において、カプセル剤の壁は、ゼラチンで構成される。特に、カプセル剤は、経口投与用に適合され得る。カプセル剤の壁は、微粒子の関係において上述したいずれのカプセル化剤で構成されるか又は該カプセル化剤で被覆され得る。
本発明によると、カプセル剤は、抗原、酸素含有金属塩及び賦形剤を含む懸濁剤の、粉末、顆粒又は粒子の形の凍結乾燥物を含有できる。或いは、カプセル剤は、上記の微粒子を含有し得る。
【0099】
頬側又は舌下での処置
固体ワクチン製剤は、ワクチンの毎日の投与を含むワクチン接種プロトコルで用い得る。別のワクチン接種プロトコルは、ワクチンを2日ごと、3日ごと、又は4日ごとに投与することを含む。例えば、ワクチン接種プロトコルは、4週間より長く、好ましくは8週間より長く、より好ましくは12週間より長く、より好ましくは16週間より長く、より好ましくは20週間より長く、より好ましくは24週間より長く、より好ましくは30より長く、最も好ましくは36週間より長い期間ワクチンを投与することを含む。
【0100】
投与期間は、連続期間であり得る。或いは、投与期間は、非投与の1又は複数回の期間によりさえぎられる不連続な期間である。好ましくは、非投与の(合計)期間は、投与の(合計)期間よりも短い。
【0101】
ワクチンは、試験個体に1日当たり1回投与できる。或いは、ワクチンは、試験個体に1日当たり2回投与される。ワクチンは、単用量(uni-dose)ワクチンであり得る。或いは、ワクチンは複用量(multi-dose)ワクチンである。
【0102】
固体製剤の形のアレルゲンの用量をある最大限まで増加させる伝統的な増加用量脱感作治療は、アレルギー症状を緩和させる。錠剤の単回用量(unit dose)の好ましい力価は、150〜1000000 SQ-u/錠剤、より好ましくは力価は500〜500000 SQ-u/錠剤、より好ましくは力価は1000〜250000 SQ-u/錠剤、さらにより好ましくは1500〜125000 SQ-u/錠剤、最も好ましくは1500〜75000 SQ-u/錠剤である。
本発明の別の実施形態において、錠剤は、好ましくは1500〜75000 SQ-u/錠剤の範囲内の反復一用量(mono-dose)である。
【0103】
定義
本発明の関係において、以下の定義を用いる。
用語「凍結乾燥(lyophilisation)」及び「凍結乾燥(freeze-drying)」は、交換可能に用いられる。
用語「凍結乾燥物」は、例えばケーキ又は粒状物又は粉末の形の、凍結乾燥プロセスから得られるいずれの形の固形残渣を意味する。
用語「口腔粘膜」は、口腔の粘膜、咽頭の粘膜及び舌下粘膜に関する意味である。
用語「頬側」は、口腔に関する意味である。
用語「舌下」は、口腔の舌の下の位置に関する意味である。
【0104】
用語「SQ」は、SQ単位を意味する。SQ単位は、アルク−アベッロエイ/エスの「SQ biopotency」標準化法に従って決定され、ここで100,000 SQ単位は、標準的な皮下維持量と等しい。通常、1 mgの抽出物は、それらが由来するアレルゲン供給源と用いられる製造方法とに応じて、100,000〜1,000,000 SQ単位の間を含有する。正確なアレルゲンの量、すなわち合計メジャーアレルゲン含量及び合計アレルゲン活性は、イムノアッセイにより決定できる。
【実施例】
【0105】
実施例1:水酸化アルミニウムと種々の賦形剤とを含む懸濁剤の噴霧凍結乾燥
噴霧凍結乾燥(SFD)に供した懸濁剤の組成は、表1に示すとおりであった。
【0106】
【表1】

【0107】
製剤は、システム:凍結造粒機LS 2 (PowderPro AB)を用いて噴霧凍結させ、Lyovac GT-2凍結乾燥機(PowderPro)又はUsifroid凍結乾燥機(FRD0001、アルク−アベッロにて)を用いて乾燥させた。このシステムは、磁気撹拌機の上にあるガラスビーカーの上方に保持された2流体ノズルを有する(compromises)。液体窒素の損失を低減するために、ガラスビーカーの上部にカバーをつけている。ビーカーの約半分を液体窒素で満たした。液体窒素表面を安定させるために、2〜3分休止した。製剤を、蠕動ポンプで制御して、4 l/時(ほとんどの製剤について)の供給速度を用いて液体窒素中に噴霧した。0.15バール〜0.3バールの範囲の気圧を、噴霧の間に用いた。生成された凍結粒子の分散物を連続的に撹拌し、上部に液体窒素を入れた凍結乾燥トレーに移した。PowderProでの乾燥は、可能な最低圧力(約-33℃に対応)にて、Lyovac GT-2凍結乾燥機で行った。アルク−アベッロでの乾燥は、表2に列挙する設定を用いてUsifroid凍結乾燥機(FRD0001)で行った。
【0108】
【表2】

【0109】
粉末の制御は、目視検査、流動性、再構成(reconstitution)及び嵩密度であった。アルヒドロゲル(Alhydrogel)の特徴は、沈降試験及び顕微鏡分析(光学及び偏光)により測定した。許容される粉末は、表1に列挙する賦形剤組成の全てを用いて製造したが、いくらかの粉末は水分を吸着して粘性/大粒子凝集物となった。列挙した賦形剤の存在下での噴霧凍結乾燥プロセスは、アルヒドロゲルに悪影響を与えなかった。沈降パターンのわずかな変化が観察されたが、顕微鏡分析を用いて大規模な凝集は観察されなかった。
【0110】
実施例2:水酸化アルミニウムベースワクチン製剤の凍結乾燥
背景及び目的
水酸化アルミニウム(Al(OH)3)ベースのワクチン製剤は、冷蔵で、そして調製物がその力価及び特性を維持すべきであれば、非凍結条件下で貯蔵されなければならない。さらに、ワクチン製剤の凍結乾燥は、再構成後のワクチンの力価及び一般的な特性(沈降速度、流動性)をともに低下させる。
【0111】
トレハロースは、ジグルコースの炭水化物であり、凍結乾燥及び貯蔵の間の種々の化合物の安定化のための添加物として用いられている。本研究の目的は、特に凍結乾燥の間の、水酸化アルミニウムの水性懸濁液とアレルゲンDer p又はPhl pの抽出物との混合物の形のワクチン製剤に対するトレハロースの影響、特に物理的及び化学的特性、活性/力価及びワクチンの免疫原性に対する影響を決定することである。
【0112】
方法
サンプル調製
水酸化アルミニウム単独について行われた全ての分析において、Brenntagから得られた20%のアルヒドロゲル(登録商標) 1.3 % (灰分残渣含量(Al2O3): 1.3重量%; 対応するAl(OH)3含量: 1.99重量%; アルミニウム含量: 6.25 mg Al/ml±5%)を用いた。
【0113】
吸着
液体製剤は、10%のアレルゲン、1000000 SQ/mlを、Brenntagから得られた20%のアルヒドロゲル(登録商標) 1.3 % (灰分残渣含量(Al2O3): 1.3重量%; 対応するAl(OH)3含量: 1.99重量%; アルミニウム含量: 6.25 mg Al/ml±5%)と4〜8℃にて一晩混合することにより調製した。トレハロースを含むか又は含まない追加の70%のコカ緩衝液(Coca's buffer)を加えた。一方は、FITC標識Phl p抽出物を吸着に用いた。
【0114】
凍結乾燥
1 mLのサンプル(マウス免疫化プロトコルについては1.2 mL)を、ガラスバイアルに分割した。サンプルを、次いで、-80℃にて5分間凍結させ、一晩凍結乾燥させた。サンプルを1mLのMilliQ水に再溶解する前に、凍結乾燥した粉末を研究した。
【0115】
顕微鏡分析
サンプルは、位相差顕微鏡分析及び蛍光顕微鏡分析について、ともにLeica TCS SP2/Leica DC500を用いて分析した。サンプルを、偏光顕微鏡(Olympus SZ 60)でも分析した。
【0116】
ロケット免疫電気泳動RIE
RIEは、Axelsenら 1973 [1]に記載されるプロトコルに従って行った。RIEでは、サンプルをアガロースゲルで一次元電気泳動により分離する。タンパク質の同定は、RIEにおいて、ロケットの形の沈殿物で与えられる。Phl pワクチンについて、サンプルの上清に対して得られた抗Phl p及び抗Phl p 6を用いるRIEを行った。Der pワクチンについて、サンプルの上清に対して得られた抗Der p、抗Der p 1及び抗Der p 2を用いるRIEを行った。
【0117】
IgE阻害実験
IgE阻害実験は、Advia Centaurシステムで行った。血清サンプル(チリダニアレルギーの個体からの血清の等量を混合して得られた血清プール25μL)を、固相(PMP、常磁性粒子)に固定化された抗IgE抗体と混合した。インキュベーション及び洗浄の後に、阻害物質(抽出物、ワクチン、又は凍結乾燥して再溶解したワクチン)の連続希釈を、一定量のビオチン標識Der pと混合した。固相吸着IgE抗体に結合したビオチン標識Der pの量を、アクリジニウムエステル標識ストレプトアビジンの添加、インキュベーション及び洗浄の後に、放射された光の量(RLU)として評価した。
RLUの測定値を、等式1に従って結合度(DoB)に変換した。
【0118】
【数1】

【0119】
式中、RLUiは、所定用量の阻害物質iの存在下で得られた読み取り値であり、RLUBasePoolは、バックグラウンドシグナルであり、RLUi=0は、阻害物質として緩衝液を用いて得られたシグナルである(0%阻害)。全てのRLU値は、3回の独立した実験として決定され、これらの平均値を計算に用いた。
それぞれ試験された阻害物質調製物についての(log10Dose,DoB)のデータの組は、等式2に従ってロジスティック関数に適合させた(GrapPad Prism v. 4.03)。
【0120】
【数2】

【0121】
式中、B、T、logEC50及びHSは、非線形適合から決定されるパラメータである。Bは、S字曲線の「底部の」漸近線であり、Tは、S字曲線の「頂部の」漸近線であり、EC50は、50%阻害を得るのに必要な用量であり、HS (ヒルスロープ(Hill Slope))は、S字曲線の勾配又は「傾き」の推定量(estimator)である。HSの値は、適合手順において直接比較され、比較した曲線の傾きが統計的に区別できない場合、共通の傾きの推定量に基づくlogEC50値を算出し、力価の比較において用いた。全ての統計的計算は、GraphPad Prism v. 4.03を用いて行った。
【0122】
阻害実験は、別々の2日間で行い、データをプールした後に解析した。
【0123】
トレハロース含有製剤を用いるマウスの免疫化−免疫化プロトコル
マウスは、以下の組成の1つを有する100μlの液体製剤で、2週間ごとに合計6回、i.p. (腹腔内)で免疫した。
1. アルヒドロゲルと一緒にしたPhl p (チモシー(Phleum pretense)抽出物) (Phl p Alum).。
2. 凍結乾燥させ使用直前に再溶解した、アルヒドロゲルと一緒にしたPhl p (FD Phl p Alum)
3. アルヒドロゲルと一緒にしたPhl p + 100 mMトレハロース(Phl p TH100)。
4. アルヒドロゲルと一緒にしたPhl p + 200 mMトレハロース(Phl p TH200)。
5. アルヒドロゲルと一緒にしたPhl p + 300 mMトレハロース(Phl p TH300)。
6. 凍結乾燥させ使用直前に再溶解した、アルヒドロゲルと一緒にしたPhl p + 100 mMトレハロース(FD Phl p TH100)。
7. 凍結乾燥させ使用直前に再溶解した、アルヒドロゲルと一緒にしたPhl p + 200 mMトレハロース(FD Phl p TH200)。
8. 凍結乾燥させ使用直前に再溶解した、アルヒドロゲルと一緒にしたPhl p + 300 mMトレハロース(FD Phl p TH300)。
【0124】
9. アルヒドロゲルと一緒にしたDer p (Dermatophagoides pteronyssinus抽出物) (Der p Alum)。
10. 凍結乾燥させ使用直前に再溶解した、アルヒドロゲルと一緒にしたDer p (FD Der p Alum)。
11. アルヒドロゲルと一緒にしたDer p + 100 mMトレハロース(Der p TH100)。
12. アルヒドロゲルと一緒にしたDer p + 200 mMトレハロース(Der p TH200)。
13. アルヒドロゲルと一緒にしたDer p + 300 mMトレハロース(Der p TH300)。
14. 凍結乾燥させ使用直前に再溶解した、アルヒドロゲルと一緒にしたDer p + 100 mMトレハロース(FD Der p TH100)。
15. 凍結乾燥させ使用直前に再溶解した、アルヒドロゲルと一緒にしたDer p + 200 mMトレハロース(FD Der p TH200)。
16. 凍結乾燥させ使用直前に再溶解した、アルヒドロゲルと一緒にしたDer p + 300 mMトレハロース(FD Der p TH300)。
【0125】
各群は、7〜8匹のマウスを含み、Balb c/Aを群1〜8に、SJLを群9〜16に用いた。
液体製剤は、10%のアレルゲン、1000000 SQ/mlを、Brenntagから得られた20%のアルヒドロゲル(登録商標) 1.3 % (灰分残渣含量(Al2O3): 1.3重量%; 対応するAl(OH)3含量: 1.99重量%; アルミニウム含量: 6.25 mg Al/ml±5%)と4〜8℃にて一晩混合することにより調製した。トレハロースを含むか又は含まない追加の70%のコカ緩衝液を加えた。各製剤の一部分を、凍結乾燥の方法で記載したようにして凍結乾燥させた。凍結乾燥サンプルは、冷凍庫で貯蔵し、各免疫化の前に再溶解した。
血液サンプルを、0回、2回、3回、5回及び6回目の免疫化の後に採取し、血清を回収し、アレルゲン特異的IgGのレベルを、次のアッセイにより決定した。
【0126】
IgGアッセイ
Phl p、Der p 1又はDer p 2特異的IgGを、直接ELISAにより、群1〜8及び9〜16でそれぞれ決定した。ELISAは、アレルゲンでの被覆、ブロッキング、血清とのインキュベーション、及びHRP標識抗マウスIgGと、続いてTMBと、反応停止のための酸性酸(acidic acid)とによる検出により行った。吸光度は、ELISAリーダーで測定した。各工程の間は、洗浄で分けられていた。
【0127】
結果及び考察
顕微鏡分析及びRIE
まず、抗原なしでのトレハロースの水酸化アルミニウムに対する影響を試験した。
トレハロースを含まずに及び300 mM トレハロースを含んで、5℃にて貯蔵された未処理の水酸化アルミニウム、並びにトレハロースを含まずに及び300 mM トレハロースを含んで凍結乾燥され再溶解された水酸化アルミニウムの位相差写真は、サンプルを5℃にて貯蔵した場合はトレハロースが水酸化アルミニウム粒子に影響を与えないようであることを示す。水酸化アルミニウムが凍結乾燥されると、小板の結晶が、サンプルを再溶解した後でさえも形成される。300 mMのトレハロースとともに凍結乾燥され再溶解された水酸化アルミニウムは、5℃で貯蔵された参照サンプルが維持するのと同じゲル構造を維持しているようであることがさらに観察される。
【0128】
トレハロースを含まずに及び300 mM トレハロースを含んで凍結乾燥され再溶解された水酸化アルミニウムの偏光顕微鏡写真は、トレハロースなしで凍結乾燥され再溶解された水酸化アルミニウムでは結晶が形成されるが、トレハロースの存在下で水酸化アルミニウムが凍結乾燥された場合は、結晶が観察されないことを明確に示す。
【0129】
0、50、100、150、200及び300 mMの濃度のトレハロースとともに5℃で貯蔵したFITC標識水酸化アルミニウム Phl p、並びに0、50、100、150、200及び300 mMの濃度のトレハロースとともに凍結乾燥され再溶解されたFITC標識水酸化アルミニウム Phl pの位相差写真は、トレハロース濃度の増加とともに、再溶解されたサンプル中のゲル粒子の構造が、参照サンプルのゲル構造をより多く維持することを示す。位相差写真から、150〜200mMのトレハロース濃度がゲル構造を維持するのに充分であるとみられる。
【0130】
0、50、100、150、200及び300 mMの濃度のトレハロースとともに5℃で貯蔵した水酸化アルミニウム Phl p、並びに0、50、100、150、200及び300 mMの濃度のトレハロースとともに凍結乾燥され再溶解された水酸化アルミニウム Phl pの偏光顕微鏡写真は、結晶の形成を妨げるために、50mMが水酸化アルミニウム Phl pを凍結乾燥するのに充分であることを示す。
【0131】
0及び300 mMのトレハロース濃度について、i) 凍結乾燥され再溶解された、及び ii) 5℃にて貯蔵した、A) ウサギ抗Phl p抗体で沈殿させた水酸化アルミニウム Phl pの上清の形の試験サンプル、B)ウサギ抗Phl p 6抗体で沈殿させた25000 SQ及び50000 SQを含有するPhl pの標準溶液の形の試験サンプル、C) 0、50、100、150、200及び300 mMのトレハロース濃度で5℃にて貯蔵し、ウサギ抗Phl p 6抗体で沈殿させた水酸化アルミニウム Phl pの上清の形の試験サンプル、並びにD) 0、50、100、150、200及び300 mMのトレハロース濃度で凍結乾燥され再溶解された、ウサギ抗Phl p 6抗体で沈殿させた水酸化アルミニウム Phl pの上清の形の試験サンプルを用いて行ったRIEは、トレハロースの存在が、上清中のPhl p及びPhl p 6の量を増加させることを示し、トレハロースの存在がいくらかのPhl p/Phl p 6を脱着させることを意味する。トレハロース濃度を50mMから300mMに増加させた場合に、Phl p 6の脱着のみがわずかに増加することも観察される。
【0132】
FITC標識水酸化アルミニウム Phl pを、トレハロースなし及び300mMのトレハロースとともに凍結乾燥させ、再溶解させて、Phl p抽出物が位相差顕微鏡により視覚化される水酸化アルミニウムゲル粒子に吸着されるかについて検出した。サンプルは、位相差顕微鏡及び蛍光顕微鏡の両方により分析し、その後、2つの画像の重ね合わせを行った。FITC標識から検出される蛍光は、300mMのトレハロースの存否で凍結乾燥させたサンプルの両方について、水酸化アルミニウムゲル粒子と同じ位置であり、Phl p抽出物が水酸化アルミニウムゲル粒子に吸着されることを示唆することがわかる。さらに、トレハロースの存在下で凍結乾燥されたゲル粒子は、トレハロースの非存在下で凍結乾燥させたゲル粒子と比較して、より小さく、均一に分配され、凍結乾燥に供していないゲル粒子によく似ていることがわかる。
【0133】
トレハロースを含まずに及び300 mMのトレハロースを含んで5℃にて貯蔵された未処理の水酸化アルミニウム Der p、並びにトレハロースを含まずに及び300 mMのトレハロースを含んで凍結乾燥させ再溶解させた水酸化アルミニウム Der pの位相差顕微鏡写真から、トレハロースの存在は、5℃で貯蔵された水酸化アルミニウムゲル粒子に影響を与えないが、ゲル粒子が5℃で貯蔵された参照製剤と同じ構造を維持するので、トレハロースは、凍結乾燥の間に水酸化アルミニウム Der pを明確に安定化することがわかる。
【0134】
トレハロースを含まずに及び300 mMのトレハロースを含んで5℃にて貯蔵された未処理の水酸化アルミニウム Der p、並びにトレハロースを含まずに及び300 mMのトレハロースを含んで凍結乾燥され再溶解された水酸化アルミニウム Der pの偏光顕微鏡写真も、水酸化アルミニウム Der pがトレハロースなしで凍結乾燥されたときに結晶が形成され、水酸化アルミニウム Der pが300mMトレハロースの存在下で凍結乾燥されたときに結晶が観察されないことを明確に示す。
【0135】
0及び300 mMのトレハロース濃度について、i) 凍結乾燥され再溶解された、及び ii) 5℃にて貯蔵した、A) ウサギ抗Der p抗体で沈殿させた水酸化アルミニウムDer pの上清の形の試験サンプル、0及び300 mMのトレハロース濃度について、i) 凍結乾燥され再溶解された、及び ii) 5℃にて貯蔵した、ウサギ抗Der p 1抗体で沈殿させた、B) 33000 SQ、100000 SQ及び300000 SQを含有するDer p 1標準溶液、及び水酸化アルミニウム Der pの上清の形の試験サンプル、並びにC) 0及び300 mMのトレハロース濃度について、i) 凍結乾燥され再溶解された、及び ii) 5℃にて貯蔵した、ウサギ抗Der p 2抗体で沈殿させた、B) 33000 SQ、100000 SQ及び300000 SQを含有するDer p 1標準溶液、及び水酸化アルミニウム Der pの上清の形のサンプルを用いて行ったRIEから、トレハロースの存在がいずれの脱着も誘発しないようであることがわかる。
【0136】
IgE阻害実験
アジュバントとして水酸化アルミニウムを含有するワクチン製剤は、製剤への不可逆的な損傷を防ぐために凍結点より上に維持しなければならず、ワクチンの活性を深刻に犠牲にすることなくワクチン調製物を凍結乾燥することは不可能である。トレハロースは、タンパク質安定化特性を有することが知られており、以下で示されるように、この化合物は、凍結乾燥条件下で水酸化アルミニウム製剤を安定化できる。
【0137】
図1は、Der p特異的IgEのビオチン標識Der pへの結合の、種々の阻害物質、すなわちDer p抽出溶液(Der p IMP 7331_23,240205)、水酸化アルミニウム Der p (Dp_Alu-TH_5C_230205)、水酸化アルミニウムDer pと300 mMトレハロース(Dp_Alu+TH_5C_230205)、水酸化アルミニウムDer pの上清(Dp_Sup-TH_5C_230205)、並びに水酸化アルミニウム Der pと300 mM トレハロースの上清(Dp_Sup+TH_5C_230205)による阻害の程度を示す。図1は、トレハロース(300 mM)は、ワクチン活性に検出可能な変化をもたらすことなく水酸化アルミニウム製剤と混合でき、上清で活性が検出できなかったことを示し、トレハロースが、水酸化アルミニウムに結合/吸着したタンパク質を溶出しなかったことを示唆する。
【0138】
図2は、Der p特異的IgEのビオチン標識Der pへの結合の、種々の阻害物質、すなわちDer p抽出溶液(Der p IMP 7331_23,240205)、凍結乾燥された水酸化アルミニウムDer p (Dp_Alu-TH_Lyo_230205)、水酸化アルミニウム Der pと300 mMトレハロース (Dp_Alu+TH_Lyo_230205)、水酸化アルミニウムDer pの上清(Dp_Sup-TH_LyoSup_230205)、並びに水酸化アルミニウム Der pと300 mMトレハロースの上清(Dp_Sup+TH_LyoSup_230205)による阻害の程度を示す。
【0139】
図2は、トレハロースが、凍結乾燥及び緩衝液中での再構成の後に、水酸化アルミニウムワクチン製剤の力価を維持できることを示す。トレハロースを凍結乾燥プロセスにおいて省略した場合、ワクチンは、その以前の力価の85%を失う。
【0140】
図3は、3つの製剤の試験の対、すなわち上記の命名を用いて、i) Dp_Alu-TH_Lyo対Dp_Alu+TH_Lyo,、ii) IMP対Dp_Alu+TH_Lyo及びiii) IMP対Dp_Alu-TH_Lyoについての推定力価の比較を示す。95%信頼限界(CL)を含むLogEC50値の差を、種々の試験対についてプロットする。試験対のCLが0を含むならば、値は統計的に区別できず、0を含まないならば、値は統計的に有意差がある。図3から明らかになるように、トレハロースを含む凍結乾燥され再溶解された水酸化アルミニウム調製物は、未処理の参照調製物とは統計的に区別できないが、安定化剤なしで凍結乾燥させた調製物は、有意に力価を失う。
【0141】
マウスの免疫化
図4は、異なるPhl p製剤で3回免疫化されたマウスでのPhl p特異的IgGのレベルを示し、ここで、Phl p特異的IgGは、相対的OD値(1:40000の希釈での参照サンプルについてのOD値で補正された1:64000の希釈での血清サンプルのOD値)として表され、各点は1つのマウス血清を表す。「Phl p alum」は水酸化アルミニウムPhl pを意味し、FDは凍結乾燥されたことを意味し、TH 100、200及び300はトレハロース100、200及び300 mMをそれぞれ意味する。結果は、トレハロース自体は、用いた濃度のいずれでもPhl pに対する免疫応答を阻害しないことを明らかにする。トレハロースの非存在下で凍結乾燥された水酸化アルミニウムPhl pについて、免疫応答の著しい減少は、予測されたように観察されない。
【0142】
図5は、異なるDer p製剤で2回(上のパネル)及び5回(上のパネル)免疫したマウスでのDer p 1特異的IgGのレベルを示し、ここで、Der p 1特異的IgGは、相対的OD値(1:45000の希釈での参照サンプルについてのOD値で補正された1:15000の希釈での血清サンプルのOD値)として表され、各点は1つのマウス血清を表す。
【0143】
異なるDer p製剤で免疫化されたマウスについての結果は、Phl p製剤についての結果と矛盾することなく、トレハロースがアレルゲン特異的免疫応答を阻害しないことを示す(図5、両方のパネル)。トレハロースを含まずに凍結乾燥されたDer p製剤は、非凍結乾燥製剤に比較して、遅延しかつ減じられた応答を有するが(図5、上及び下のパネル)、トレハロースを含んで凍結乾燥された製剤での特異的IgGのレベルが、凍結乾燥されていない水酸化アルミニウム Der pのものと匹敵する(図5、下のパネル)ので、製剤へのトレハロースの添加は、凍結乾燥の間にそれを保護する。同じレベルの保護の改善が、トレハロースの試験した濃度について得られる。
【0144】
図6は、免疫化プログラムの間のDer p 1特異的IgGの時間的発達を示す。上述したように、凍結乾燥された水酸化アルミニウムDer p製剤についての免疫応答の開始は、凍結乾燥していない水酸化アルミニウム Der pのものに比較してかなり遅延される。凍結乾燥前のトレハロースの添加は、好ましい製剤として300 mMのトレハロースを用いて、IgG応答の発達を非凍結乾燥製剤に近づける。
【0145】
結論
顕微鏡及びロケット免疫電気泳動(RIE)
水酸化アルミニウムPhl p及び水酸化アルミニウムDer pの分析は、次のことを示す。
1. トレハロースは、サンプルが5℃にて貯蔵される場合、ゲル粒子に影響しないようである。
2. 凍結乾燥の間のトレハロースの存在は、50mMのトレハロースの添加で既に、結晶の形成を妨げる。
3. 位相差写真は、凍結乾燥され再溶解された製剤のゲル粒子が、150mMを超えるトレハロース濃度で、凍結乾燥していない参照製剤と同様の構造を維持することを示す。
【0146】
水酸化アルミニウムPhl pサンプルの上清のRIEは、トレハロースの存在がPhl p及びPhl p 6の脱着を誘発することを示す。しかし、FITC標識水酸化アルミニウム Phl pの顕微鏡法は、Phl pがゲル粒子と会合することを示した。
水酸化アルミニウム Der pサンプルのRIE分析は、Der p、Der p 1、Der p 2の脱着が検出できなかったことを示した。
【0147】
IgE阻害実験
1. トレハロースは、凍結乾燥の間にDer p Alutardワクチン製剤を保護し、再構成されたワクチンは、力価及び組成に関して、凍結乾燥していない参照調製物に匹敵する。
2. トレハロースは、ワクチン製剤からタンパク質を溶出させない。
3. 混合物中でトレハロースを含まずに凍結乾燥された水酸化アルミニウムワクチンは、緩衝液中で再構成したときに85%の力価を失う。
【0148】
マウス免疫化
1. 水酸化アルミニウムPhl p及びDer p製剤の両方について、トレハロース自体は免疫応答を阻害しないことが示される。
2. 凍結乾燥された水酸化アルミニウムDer p製剤の免疫応答の開始は、凍結乾燥していない水酸化アルミニウムDer pのものに比較してかなり遅延される。凍結乾燥前のトレハロースの添加は、好ましい製剤として300 mMのトレハロースを用いて、IgG応答の発達を非凍結乾燥製剤に近づける。
【0149】
参考文献
Axelsen N H, Kroll J及びWeeke B; 1973; A Manual of Quantitative Immunoelectrophoresis-Methods and Applications; Scandinavian Journal of Immunology; vol. 2; Supplement no. 1
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】種々の阻害物質製剤によるDer p特異的IgEのビオチン標識Der pへの結合の阻害の程度を示す。
【図2】種々の阻害物質製剤によるDer p特異的IgEのビオチン標識Der pへの結合の阻害の程度を示す。
【図3】試験した製剤の3つの対の力価の推定量の比較を示す。
【図4】種々のPhl p製剤で3回免疫されたマウスでのPhl p特異的IgGのレベルを示す。
【図5】種々のDer p製剤で2回(上のパネル)及び5回(上のパネル)免疫されたマウスでのDer p 1特異的IgGのレベルを示す。
【図6】免疫化プログラムの経過中のDer p 1特異的IgGの時間的発達を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性物質としての少なくとも1つの抗原を含む粘膜投与用に適合された固体ワクチン製剤であって、酸素含有金属塩と、前記抗原と、(i) 糖類、(ii) 糖アルコール及び(iii) アミノ酸又はその医薬的に許容される塩から選択される少なくとも1種の賦形剤とを含む懸濁剤の凍結乾燥物を含む製剤。
【請求項2】
懸濁剤が、デキストロース、スクロース、ラクトース、トレハロース、セロビオース、ラフィノース、イソマルトース及びシクロデキストリンからなる群より選択される糖類を含む請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
懸濁剤が、トレハロース及びスクロースからなる群より選択される糖類を含む請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
懸濁剤が糖アルコールを含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項5】
懸濁剤が、マンニトール、ソルビトール及びアリトールからなる群より選択される糖アルコールを含む請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
懸濁剤が、グリシン、アラニン、グルタミン、プロリン、セリン、アルギニン、リジン及びヒスチジン並びにそれらの医薬的に許容される塩から選択されるアミノ酸を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項7】
懸濁剤が、ポリマー、好ましくはデキストランである追加の賦形剤を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項8】
懸濁剤が、
(a) スクロースとマンニトール、
(b) スクロースとグリシンとデキストラン、
(c) トレハロースとマンニトール、
(d) スクロースとマンニトールとデキストラン、
(e) トレハロースとグリシンとデキストラン、
(f) トレハロースとマンニトールとデキストラン、
(g) トレハロースとグリシン、
(h) スクロースとグリシン、又は
(i) グリシンとマンニトール
の混合物を含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項9】
抗原がアレルゲンである請求項1〜8のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項10】
酸素含有金属塩が、水酸化アルミニウムである請求項1〜9のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項11】
錠剤である請求項1〜10のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項12】
錠剤が非圧縮錠剤である請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
非圧縮錠剤が、速溶解性錠剤である請求項12に記載の製剤。
【請求項14】
錠剤が圧縮錠剤である請求項11に記載の製剤。
【請求項15】
錠剤が舌下投与用である請求項11〜14のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項16】
散剤である請求項1〜10のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項17】
粒子の形である請求項1〜10のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項18】
顆粒剤である請求項1〜10のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項19】
凍結乾燥物を含むカプセル剤である請求項1〜10のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項20】
酸素含有金属塩と、少なくとも1種の抗原と、(i) 糖類、(ii) 糖アルコール及び(iii) アミノ酸又はその医薬的に許容される塩から選択される少なくとも1つの賦形剤とを含む懸濁剤の凍結乾燥物の、粘膜投与用の固体ワクチン製剤を製造するための使用。
【請求項21】
懸濁剤が、デキストロース、スクロース、ラクトース、トレハロース、セロビオース、ラフィノース、イソマルトース及びシクロデキストリンからなる群より選択される糖類を含む請求項20に記載の使用。
【請求項22】
糖類が、トレハロース及びスクロースからなる群より選択される請求項21に記載の使用。
【請求項23】
懸濁剤が糖アルコールを含む請求項20〜22のいずれか1項に記載の使用。
【請求項24】
糖アルコールが、マンニトール、ソルビトール及びアリトールからなる群より選択される請求項23に記載の使用。
【請求項25】
懸濁剤が、グリシン、アラニン、グルタミン、プロリン、セリン、アルギニン、リジン及びヒスチジン並びにそれらの医薬的に許容される塩から選択されるアミノ酸を含む請求項20〜24のいずれか1項に記載の使用。
【請求項26】
懸濁剤が、ポリマー、好ましくはデキストランである追加の賦形剤を含む請求項20〜25のいずれか1項に記載の使用。
【請求項27】
懸濁剤が、
(a) スクロースとマンニトール、
(b) スクロースとグリシンとデキストラン、
(c) トレハロースとマンニトール、
(d) スクロースとマンニトールとデキストラン、
(e) トレハロースとマンニトールとデキストラン、
(f) トレハロースとグリシンとデキストラン、
(g) トレハロースとグリシン、
(h) スクロースとグリシン、又は
(i) マンニトールとグリシン
の混合物を含む請求項20〜26のいずれか1項に記載の使用。
【請求項28】
抗原がアレルゲンである請求項20〜27のいずれか1項に記載の使用。
【請求項29】
酸素含有金属塩が、水酸化アルミニウムである請求項20〜28のいずれか1項に記載の使用。
【請求項30】
製剤が錠剤である請求項20〜29のいずれか1項に記載の使用。
【請求項31】
錠剤が非圧縮錠剤である請求項30に記載の使用。
【請求項32】
非圧縮錠剤が、速溶解性錠剤である請求項31に記載の使用。
【請求項33】
錠剤が圧縮錠剤である請求項30に記載の使用。
【請求項34】
錠剤が舌下投与用錠剤である請求項30〜33のいずれか1項に記載の使用。
【請求項35】
製剤が散剤である請求項20〜29のいずれか1項に記載の使用。
【請求項36】
製剤が粒子の形である請求項20〜29のいずれか1項に記載の使用。
【請求項37】
製剤が顆粒剤である請求項20〜29のいずれか1項に記載の使用。
【請求項38】
製剤が、凍結乾燥物を含むカプセル剤である請求項20〜29のいずれか1項に記載の使用。
【請求項39】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の固体製剤の有効量を粘膜投与することを含む、対象にワクチン接種する方法。
【請求項40】
少なくとも1種のアレルゲンを含む請求項1〜19のいずれか1項に記載の固体製剤の有効量を粘膜投与することを含む、アレルギーを治療するか又はアレルギー症状を緩和する方法。
【請求項41】
投与が口腔粘膜を介する請求項39又は40に記載の方法。
【請求項42】
投与が舌下粘膜を介する請求項41に記載の方法。
【請求項43】
投与が経口であり、胃腸粘膜を介する請求項39又は40に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−510136(P2009−510136A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533866(P2008−533866)
【出願日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【国際出願番号】PCT/DK2006/000546
【国際公開番号】WO2007/038926
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(505193472)
【氏名又は名称原語表記】ALK−ABELLO A/S
【住所又は居所原語表記】Boge Alle 6−8,DK−2970 Horsholm,DENMARK
【Fターム(参考)】