説明

固体基板の表面の官能基化のためのゾル−ゲル法

本発明は、化学的分子又は生物学的分子と反応することができる化学官能基、即ち生物学的分子又は化学的分子を固定化、結合、グラフトすることができる化学官能基を有する表面を提供するための、固体基板の表面を官能基化するためのゾルゲル法に関する。本発明は、例えば、化学的及び生物学的センサの調製に(例えば、DNA、オリゴヌクレオチド、糖、ペプチド及び小有機分子を含むチップを製造するのに)使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体基板の表面の官能基化のためのゾル−ゲル法に関する。
【0002】
本発明の技術分野は、化学的分子又は生物学的分子と反応することが可能な化学官能基、換言すると、生物学的分子又は化学的分子を固定化、結合又はグラフトすることが可能な化学官能基を有する表面を提供する目的で、固体基板の表面の官能基化の技術分野として定義され得る。
【0003】
本発明は、例えば、化学的及び生物学的センサの調製、特にDNAチップ、オリゴヌクレオチドチップ、糖チップ、ペプチドチップ及び小さな有機分子用のチップの生産の状況でその用途が見出されている。
【0004】
また、本発明は、壁の官能基化を要する流体マイクロシステムの調製においてその用途が見出されている。
【背景技術】
【0005】
基板へ又は基板上に生物学的分子又は化学的分子をグラフト、固定化及び結合するためには、この基板に、機能層、即ち生物学的分子又は化学的分子をグラフトすることが可能な化学官能基を有する層を提供することが一般に必要である。
【0006】
したがって、生物学的分子をグラフトするためには、2つのタイプの機能層、即ち一方は単分子層、及び他方は厚い層が現在存在する。
【0007】
単分子層は、制御された配置を有し、且つ自己組織化単分子層(自己組織化単層、即ちSAM)とも知られる層である。これらの層は、溶液中での凝集体の形成及び厚いまとまりのない層を招くシランの高度の加水分解を回避するために、低い水含有量を有する有機媒質中でのシランのグラフトを包含する方法により一般に得られる。
【0008】
単分子層の調製方法は、攻撃的及び/又は有毒な有機溶媒(例えば、芳香族溶媒、アルカン又は塩素化溶媒)を一般に使用するという不都合を示す。
【0009】
かかる層の調製は、特に文献:フランス特許第2818662A号(FR-A-2 818 662)に開示されている。
【0010】
厚い層は、一般に数nm〜数マイクロメートル(ミクロン)、例えば10nm〜10μmの厚さを有する層であり、それらは、事実上、より多様性である。
【0011】
厚い層は、文献:国際公開第01/67129号パンフレット(WO-A-01/67129)に開示されるように有機ポリマーから、有機及び無機オルガノシリル化前駆体の混合物から、又はアミノタイプの官能基を含むシルセスキオキサン(「SSQ」)から調製することができる。
【0012】
従来技術で開示されている厚い層には幾つかの不都合が存在する。
【0013】
したがって、ナイロンのような有機ポリマーは、非特異的吸着の問題をしばしば示す。
【0014】
アミノ官能基を含むシルセスキオキサンは、市販のオリゴヌクレオチドのような生物学的分子の共有結合を直接的には可能にさせない。
【0015】
さらに、これらの2つのタイプの層は、以下のようなプロセスにより得られる:
−時間がかかる(slow):官能基化は、数時間〜24時間という長期間、表面を分子と接触させることを要する;
−エネルギーが高価である:グラフトは、数時間〜24時間という期間、高温(典型的に80℃)の維持を要する;
−多段階、したがって複雑である:官能基化後、超音波支援により有機溶媒を使用して表面を洗浄することが必要である;
−攻撃的な溶媒(例えば、トルエン及び塩素化溶媒)を使用するため、多数の基板(特に、プラスチック)と適合性がない;
−有毒な溶媒(例えば、トルエン及び塩素化溶媒)を使用するため、人間及び環境に対してあまりやさしくない。
【0016】
有機及び無機オルガノシリル化前駆体の混合物は、多数の構成成分から構成され、制御され且つ再現性のある厚さを有する層を得るためのそれらの配合の開発は、非常に複雑である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、官能性の厚い層を使用して基板の表面を官能基化することを可能にさせる方法、即ち、化学的分子又は生物学的分子の結合、グラフト又は固定化を可能にさせる化学官能基を基板の表面に提供することを可能にさせ、迅速且つ容易であり、ほとんどエネルギーを消費せず、また安価である方法が必要とされる。
【0018】
また、厚い層を使用して、あらゆる種類の表面(それらの形態が何であろうと、またそれらが構成される材料が何であろうと)、例えばバルク又はフィルム形態であるシリコン、ガラス及び酸化物のような無機基板の表面や、有機又は金属基板の表面を官能基化することを可能にさせる方法が必要とされる。
【0019】
特に、数cmの標準基板に関するのと同じ性能を有する大型基板を官能基化することを可能にさせる方法が必要とされる。
【0020】
さらに、調製される厚い層は、均一であり、且つ完全に制御された厚さを有さなくてはならない。
【0021】
本発明の目的は、とりわけ上述の必要性を満たす、基板の表面を官能基化する方法を提供することである。
【0022】
また、本発明の目的は、従来技術の方法の不都合、弱点、制限及び欠点を示さず、制御された厚さを有する厚くて均一な層を有する基板を提供することを可能にさせ、且つ上述の基準及び要件に対処する基板の表面を官能基化する方法を提供することである。
【0023】
支持体がバイオチップである場合、また表面がプローブ又は生物学的分子をグラフトするのに使用される場合には、支持体は、例えばプローブのハイブリダイゼーション後の蛍光の測定中に得られるシグナルが、十分な規模を有することを保証しなくてはならない。
【課題を解決するための手段】
【0024】
この目的及びさらに他の目的は、固体基板の任意に清浄及び/又は活性化された表面の官能基化のためのゾル−ゲル法であって、下記段階:
a)水と揮発性水混和性有機溶媒との混合物中の、酸性触媒又は塩基性触媒及びシラン又はシロキサンの溶液が、室温で前記表面上に堆積される段階であって、前記シラン又はシロキサンが、生物学的分子若しくは化学的分子の固定化を可能にさせ及び/又は生物学的分子若しくは化学的分子の固体化を可能にさせる化学官能基A’に変換されることが可能である少なくとも1つの化学官能基Aと、共有結合によって化学的に又は機械的に、前記表面に結合することが可能な少なくとも1つの結合用化学官能基Bとを有している段階、
b)前記揮発性有機溶媒が、段階a)と同時に、及び/又はこの段階の直後に蒸発され、それにより前記溶液が、湿潤ゲルへ変換されて、厚いゲル化層を形成する段階、続いて、
c)前記厚いゲル化層は乾燥され、それにより共有結合によって化学的に又は機械的に前記表面に結合され且つ化学的分子又は生物学的分子の固定化を可能にさせる前記化学官能基Aを有する厚い層が得られる段階
が行われるゾル−ゲル法により、本発明によって達成される。
【0025】
本発明による方法は、表面を官能基化するための特定のシラン又はシロキサンの特定の溶液を使用する「ゾル−ゲル」タイプの方法として定義され得る。
【0026】
かかる前駆体のかかる溶液を使用する、かかる表面を官能基化する方法は、従来技術で記載されておらず、また示唆もされていない。
【0027】
本発明による方法は、上述の必要性を満たし、従来技術の方法の問題に対する解決法を与え、また従来技術の方法の不都合、弱点、制限及び欠点を克服する。
【0028】
本発明による方法は、低減されたエネルギー消費且つ低コストで、支持体(それが何であろうと)を迅速且つ均一に官能基化することを可能にさせる。
【0029】
本発明による方法は、酸性触媒又は塩基性触媒の存在下で、水及び揮発性水混和性有機溶媒(例えば、エタノール又はイソプロパノールのようなアルコール)の混合物中の官能性シラン又はシロキサンの溶液を使用する。
【0030】
したがって、単分子層の調製で一般に使用されるトルエン、アルカン又は塩素化溶媒のような有機溶媒の使用は回避される。これらの溶媒は、一般にゾル−ゲル法で使用されるアルコールよりも攻撃的及び/又は有毒である。
【0031】
この理由のため、本発明による方法は、従来技術の方法に比べて、プラスチック(例えば、マイクロタイトレーションプレート(MTP))、樹脂(感光性樹脂及びマスキング樹脂)、接着剤(例えば、アクリル系、エポキシ又はPU接着剤等)等のような従来技術の方法で使用することができなかった多数の材料と適合性がある。
【0032】
本発明による方法は、数mに達し得る大きな表面に適用させることができ、堆積された厚い層は、一般に数十(例えば、2、3、4、5、10)ナノメートル〜数十(例えば、2、3、4、5、10)マイクロメートル(ミクロン)の範囲の厚さを有し、その厚さは、特に光学特性を有する層を生産することを可能にするために、数パーセント以内に非常に正確に制御される。
【0033】
段階a)の堆積又は接触操作は、容易であり、試験済みであり且つ信頼性のある技法である当業者に既知の液相堆積技法を用いて一般に行われる。
【0034】
この液相堆積技法は、例えばスピンコーティング、浸漬コーティング、層流コーティング及びその代替的形態、ローラーコーティング及びカーテンコーティング、スプレーコーティング、プリンティング(例えば、ジェットプリンティング技法を使用することによる)及びスポッティングから選択することができる。
【0035】
本発明の方法は、段階(a)において、また一般に段階(b)において、室温、即ち一般に15〜35℃で一般に行われ、これは、SAMタイプの層の調製方法の堆積段階中に使用される約80℃の温度よりも著しく低い。
【0036】
したがって、従来技術の方法に比べて、溶液及び/又は基板を加熱する必要性はなく、加工処理の簡素化及びコストの低減をもたらす。
【0037】
したがって、本発明による方法により引き起こされるエネルギー消費量は、従来技術の方法のエネルギー消費量よりも著しく少ない。この理由のため、コストもまた低減される。
【0038】
本発明の全体的な方法の期間は、従来技術の方法の期間よりも著しく短い。
【0039】
本発明の方法の段階a)、b)及びc)の全期間は、一般に1時間以下であり、例えば、15〜30分である。
【0040】
本発明の方法の利点の1つは、SAMタイプの層を調製することを可能にさせる方法の期間(これは、一般に約16時間である)よりも少なくとも6倍短いという非常に短時間で行われることが可能であることである。
【0041】
さらに、段階a)中に基板を溶液と接触させる操作の期間は、従来技術の方法に比べて、官能基化の性質に影響を与えない。
【0042】
溶液を基板と接触させる操作の期間の、官能基化の性質に対する影響は、基板の表面が好ましくは予め清浄及び/又は活性化されているにつれ、及び/又は溶液が予備熟成段階に付されているにつれ減少する。
【0043】
本発明による方法では、堆積又は接触操作のこの期間は、官能基化されるべき表面全体上へ溶液を広げるのに必要な最小時間へ一般に低減され、基板の表面全体に又は表面全体の一部のみに相当するように表面が官能基化されることが可能である。
【0044】
この期間は、選択される堆積技法、並びに基板のサイズ及び形態に主に依存する。この期間は、一般にスピンコーティング、プリンティング及びスポッティングのような方法に関して1又は数秒(例えば、2、5〜10秒)〜浸漬コーティング、層流コーティング及びスプレーコーティングのような方法に関して数分(例えば、2、5〜10分)である。この期間は、全ての場合において、匹敵する段階に関して従来技術で用いられる期間よりもかなり少ない。
【0045】
段階b)の期間は、一般に10分以下であり、例えば、1〜5分である。この段階b)は、有利には段階a)と部分的に同時であり、即ち段階b)は、段階a)がまだ完了してないときに開始され、それは、段階a)の完了後も依然として継続し、これはさらなる時間の節約をもたらす。
【0046】
段階c)で行われるゲル化層の乾燥は、一般に15分以下の期間、好ましくは1〜10分、例えば5分の期間での迅速な乾燥である。
【0047】
この乾燥は、中程度の温度、例えば25〜60℃の温度で一般に行われる。有利には、このことは必須でないが、要件に従って、化学的分子又は生物学的分子の固定化に関する続くプロトコルに対する層の良好な耐性を保証するために、段階c)の乾燥後に、乾燥の温度よりも高温で加熱(cooking)又はアニーリングの段階d)を行うことが可能である。
【0048】
アニーリング温度は、一般に70〜200℃であることができ、このアニーリングの期間は、1分〜数分(例えば、1、2又は5分)〜1時間の範囲であることができる。
【0049】
アニーリングの温度は、基板に応じて、当業者により容易に選択することができる。
【0050】
本発明による方法の、この有利であり、望ましいが、それにもかかわらず任意の段階d)は、シラン又はシロキサン層の高温加熱の段階であり、したがって、従来技術の方法の匹敵する段階の期間と比較して、極めて制限された期間を有する。
【0051】
有利には、化学官能基Aは、エポキシド官能基のような、求核性基と反応性である官能基である。このタイプの官能基は、生物学的及び化学的分子の直接的な結合を可能にさせるという利点を示す。
【0052】
有利には、上記シラン又は上記シロキサンは、下記式(I):
【0053】
【化1】

【0054】
(式中、R、R及びRは、同一であるか、又は異なり、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル又はt−ブチルのような、炭素数1〜6の線状又は分岐状アルキル基を表し;Yは、炭素数1〜20の線状又は分岐状アルキル鎖のような炭化水素鎖を表し、ここで1つ以上の炭素原子は、酸素、硫黄又は窒素原子により任意に置換されることができる)に相当する。
【0055】
式(I)のシラン又はシロキサンの一例は、例えば、引例SIE 4575.0(reference SIE 4575.0)に基づき、ABCRから入手可能な(5,6−エポキシヘキシル)トリエトキシシラン(EHTEOS)である。
【0056】
他のシラン又はシロキサンは、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)メチルジエトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン(GLYMO)、(3−グリシドキシプロピル)ビス(トリメトキシシロキシ)メチルシラン、(3−グリシドキシプロピル)ジメチルエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン又は(3−グリシドキシプロピル)ペンタメチルジシロキサンである。
【0057】
例えば、式(I)のシラン又はシロキサンは、0.1〜10重量%の濃度で溶液中に一般に存在する。
【0058】
触媒は、0.005〜5重量%の濃度で溶液中に一般に存在する。
【0059】
触媒は、酸性触媒であり得る。
【0060】
酸性触媒は、例えば、HCl、HNO、HSO及びそれらの混合物のような無機酸、又は例えば、HCOOH、CHCOOH、CH=CH(CH)COOH及びそれらの混合物のような有機酸から一般に選択される。
【0061】
触媒は、塩基性触媒であり得る。
【0062】
塩基性触媒は、アンモニア、並びに第一級、第二級、第三級及び芳香族アミンから一般に選択される。
【0063】
好ましくは、触媒は、それが塩基性触媒である場合、トリエチルアミン(TEA)のようなトリ(C〜C10アルキル)アミンから選択される。
【0064】
有利には、段階a)の溶液中で混和性である有機溶媒は、炭素数1〜12を含む脂肪族アルコールのようなアルコール(例えば、エタノール又はイソプロパノール)である。
【0065】
有利には、水及びアルコールの混合物中のアルコール(例えば、エタノール)と水との重量比率は、アルコールに関して水が0.05%〜10%である。
【0066】
一般に、パラメータH=[HO]/[シラン又はシロキサン]及びT=[触媒]/[シラン又はシロキサン](式中、[x]は、存在物(entity)xのモル濃度を表す)により規定される水、シラン又はシロキサン(例えば、EHTEOS)及び触媒(例えば、TEA)の相対量は、0<H<100及び0<T<100、好ましくは0.1<H<20及び0.01<T<10、より好ましくは0.8<H<2及び0.1<T<2となる。
【0067】
エポキシド官能基は、化学的分子又は生物学的分子の直接的な結合を可能にさせることが認識されている。しかしながら、当業者に既知の化学反応により、段階c)若しくはd)の後に、又は続いて、厚い層により有される官能基A(例えば、エポキシド官能基)を、官能基A(例えば、エポキシド官能基)とは異なり、且つ化学的分子又は生物学的分子の固定化を可能にさせる他の官能基A’へ変換することが可能である。
【0068】
官能基Aとは異なる(例えば、エポキシド官能基とは異なる)上記官能基A’は、例えば、ジオール、アルデヒド、カルボン酸、活性エステル、酸ハロゲン化物、酸無水物、アミド、スルホニルハロゲン化物及びアルキル又はアリールハロゲン化物官能基のような求核性基に関して反応性である官能基から好ましくは選択される。
【0069】
好ましくは、上記官能基A’は、アルデヒド官能基である。
【0070】
表面上への溶液の堆積(段階a))の前に、溶液は任意に、熟成に付すことができる。
【0071】
本発明は、化学的分子又は生物学的分子(一般に、プローブと称される)が固定化又はグラフトされる表面を含む固体基板の調製方法にさらに関し、ここでは固体基板の表面は、上述のような官能基化方法により官能基化され、続いて官能基化された表面を洗浄せずに、化学的分子又は生物学的分子は、厚い層により有される上記化学官能基A又はA’と反応される。
【0072】
好ましくは、上記化学的分子又は上記生物学的分子は、例えばアミン、ヒドロキシル、フェノール、オキシアミン若しくはチオール官能基のような求核性基を含む分子、又はそれらの陰イオン性誘導体である。
【0073】
プローブは、以下の:
−固定化されるべき化学的分子又は生物学的分子を含む溶液中に基板を浸漬させることにより;
−この同じ溶液の基板上への液滴の堆積(この堆積は、手動で又は堆積ロボットにより行われることが可能である)により
官能基化された表面上へ固定化させることができる。
【0074】
生物学的分子又は化学的分子は、化学官能基A又はA’と、固定化されるべき生物学的分子又は化学的分子により有される求核性基との間の求核攻撃反応中に共有結合を形成することにより不可逆的に固定化される。
【0075】
官能基化段階の終了時に、及び続く段階の前に、本発明による方法の基本特性に従って、表面を洗浄する必要はないのに対して、SAM層の製造に使用される方法では、有機溶媒及び任意に超音波を使用して表面を洗浄する必要があることに留意すべきである。
【0076】
したがって、本発明による方法は、より短く、且つより容易であり、したがってより安価である。したがって、特にプラスチックのような、より多くの種類の基板と適合性がある。
【0077】
ゾル−ゲル経路により調製される官能基化された層を包含する本発明の方法により堆積される化学的分子又は生物学的分子が固定化される、得られた表面は、蛍光による分析中に、類似しているが、官能基化された層又はSAM層が従来のシラン化技法により調製される表面と比較して著しく低減されたバックグラウンド識別を驚くべきことに付与する。蛍光信号の強度が類似しているため、これは、特に信号対雑音比の増大をもたらす。
【0078】
さらに、本発明の方法により堆積される化学的分子又は生物学的分子が固定化される、得られた表面の第2の特徴は、非常に均一であり、且つ従来技術よりもサイズが小さいスポットを驚くべきことに付与するということである。具体的に、より小さな直径を有するスポットの生成によって表面上のプローブの密度を増大させることが可能となり、且つ装置のサイズを低減させる(同一の複雑性で)か、又は堆積されるプローブの数を増大させる(同等の表面積で)ことが可能となるため、このことは利点となる。
【0079】
本発明は、光学層としての、段階c)(乾燥された厚い層)又はd)(加熱された厚い層)の終了時に上述の方法により得られる厚い層の使用にさらに関する。
【0080】
「光学層」又は「光学特性を有する層」という用語は、一般に干渉を創出する主な特性を有する数十〜数百nmの一般的な厚い層を意味すると理解される。
【0081】
この層は単独で使用することができるか、又はそうでなければ、幾つかの光学層(例えば、2〜30個の層)を積重ねて使用することができる。積重ねの層は全て、本発明による方法により堆積される層(段階c)又はd)の終了時)であってよく、又はこれらの層のほんの幾つかが、本発明の方法により堆積される層であってもよい。
【0082】
本発明は、添付の図面と併せて、説明の目的で付与され、且つ限定を伴わない以下の説明に目を通すことでより良く理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0083】
本発明によるゾル−ゲル経路及び官能基化が自己組織化単分子層(SAM層)の調製により行われる従来技術の従来の方法(「参照方法」)による官能基化方法を下記スキーム1に記載している。
【0084】
【化2】

【0085】
固体基板は、半導体(例えば、シリコン);有機ポリマー(例えば、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)及びポリ(塩化ビニル)(PVC));金属(例えば、金、アルミニウム及び銀);ガラス;無機酸化物(一般に層としての、例えば、SiO、Al、ZrO、TiO又はTa);並びにこれらの材料の幾つかを含む複合材料から選択される材料であり得る。
【0086】
官能基化することが望ましい固体基板の表面は、基板への層の共有結合又は機械的結合を可能にさせるために、任意に清浄及び/又は活性化される。
【0087】
この清浄及び/又はこの活性化は、以下に記載するプロトコルに従って行うことができる。
【0088】
清浄の目的は、官能基化の有効性を防止する可能性がある有機及び/又は無機混入物質を除去することである。使用される清浄方法は、基板の性質に依存し、当業者に既知の物理的、化学的又は機械的方法から選択される。例えば(限定を含まない)、清浄方法は、有機溶媒中に浸すこと及び/又は洗浄剤による清浄及び/又は酸によるストリッピングから選択することができる。これらの操作は、超音波により支援される。これらの清浄作用に続いて、任意に水道水ですすぎ、続いて脱イオン水ですすぐ。これらのすすぎ作用に続いて、任意に吊り上げる(liftout)ことにより、アルコールを噴霧することにより、圧縮空気の噴射により、熱風を用いて、又は赤外線により乾燥させる。また、清浄は、紫外線照射による清浄でもあり得る。
【0089】
活性化の目的は、官能基化段階中に表面をより反応性にするために、表面を活性化させることである。使用される活性化方法は、基板の性質に依存し、既知の活性化方法から当業者により容易に選択され得る。
【0090】
例えば、ガラス又は酸化物から作製される表面に関して、特に酸化物の層で覆われたシリコンから作製される基板の場合、表面の化学的活性化により、表面上にヒドロキシ基を付与することが可能となる。活性化の目的は、表面酸化物分子(例えば、表面SiO分子)上に最大のOH部位を創出することであり、したがって例えばSiOHを付与する。
【0091】
この活性化は、例えば水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを用いて(例えばブラウンプロセス(Brown process)の場合(ここでは表面は、長期間水酸化ナトリウム中に維持される))、塩基性条件下で、又は洗浄剤サイクルにより行うことができ、続いてEDIにより十分にすすぎ、続いて乾燥させる。
【0092】
また、ガラス又は酸化物から作製される表面は、無機酸(例えば、HF)による制御攻撃により、又はピランハプロセス(Piranha process)(H/HSO混合物)により、又は塩酸、クロム酸/硫酸、若しくはスルホ酸化酸を用いて活性化することができる。これらの系は、緩衝されてもよく、又は緩衝されなくてもよい。この攻撃に続いて、脱イオン水を用いて十分にすすぎ、乾燥させる。また、任意の表面は、フリーラジカルを生成する酸素プラズマにより活性化され得る。
【0093】
換言すると、表面は、無機酸(例えば、HF)による制御洗浄により、又はピランハプロセス(H/HSO混合物)により活性化することができ、この攻撃に続いて、水を用いて十分にすすぎ、乾燥させる。また、活性化は、酸素プラズマにより引き起こされ得る。
【0094】
シリコンに関しては、結合が主に機械的であるため、化学的活性化は必要ではない。
【0095】
プラスチック基板に関しては、組成の多様性が、プラズマタイプ(例えば、酸素プラズマ又は低圧プラズマ又は空気プラズマによる)の活性化の様式に対する優先性を付与するが、洗浄剤タイプの化学的方法は、それらが各材料に関して最適化される場合に作用する。
【0096】
液滴角度法(drop angle method)により又は赤外分光により行われる測定は、基板の表面状態の変換の有効性を特性化することを可能にさせる。
【0097】
基板は、任意の形態を示すことができるが、基板は、一般に平坦な基板でありる。それから、官能基化された表面は、一般に上記基板の自由上部表面である。
【0098】
しかしながら、同じ基板の2つの面は、同じ官能基により、又は異なる官能基により、同時に又は別個に官能基化され得る。
【0099】
基板は、構造化されてもよく、又は構造化されなくてもよい。
【0100】
本発明によれば、まず、適切なシロキサン又はシランの溶液が調製される。
【0101】
このシラン又はシロキサンは、例えば上記に付与される式(I)に相当し得る。
【0102】
このシラン又はシロキサンは、より一般的には、下記表のエポキシ官能基を有するシラン又はシロキサンから選択され得る:
【0103】
【表1】

【0104】
スキーム1では、例えば、(5,6−エポキシヘキシル)トリエトキシシラン(EHTEOS)を用いて、方法が説明されている。
【0105】
シラン又はシロキサンの溶液は、アルコールと水との混合物、好ましくはエタノールと水との混合物中の溶液であり、トリエチルアミンTEAのような触媒を一般に含む。
【0106】
構成成分の相対量は、2つのパラメータH=[HO]/[EHTEOS]及びT=[TEA]/[EHTEOS](式中、[x]は、存在物xのモル濃度を表す)により規定され、これらは、0<H<100及び0<T<100となり、好ましい値は、既に上述している。
【0107】
典型的な溶液は、トリエチルアミン(TEA)を含む、水とエタノールとの混合物中の(5,6−エポキシヘキシル)トリエトキシシラン(EHTEOS)の溶液であり、溶液中のEHTEOSの濃度は2.5重量%であり、水とエタノールとの濃度の比は0.18重量%であり、構成成分の相対量は、パラメータ[H=HO]/[EHTEOS]=1及びT=[TEA]/[EHTEOS]=1により規定される。この溶液は、任意に熟成させた後に基板上に堆積される。
【0108】
「熟成」という用語は、ゾル−ゲル経路による堆積の分野で一般に使用される用語であり、この技術分野における当業者にとって明白である。
【0109】
「熟成」という用語は、一般に、一方では表面上に後で堆積される層の粘着に、また他方では上記層の基板へのグラフトに理想的な段階に達するまで、加水分解及び縮合反応が起きるのを可能にする期間、特定の条件下で溶液を貯蔵することを意味するように理解される。
【0110】
熟成は、空気及び任意に水分を排除して(例えば、一般に不活性雰囲気下で)、静的条件下で(即ち、攪拌なしで)又は穏やかに攪拌して、一般に15℃〜60℃の温度で、一般に1時間〜数時間(例えば、2、5又は10時間)から1週間又は数週間(例えば、2、5又は10週間)の期間、密閉容器中で溶液を貯蔵することを一般に含む。
【0111】
所定のシランの溶液に関して、熟成時間は、貯蔵温度並びに上記で規定されるH及びTパラメータに主に依存し、当業者により容易に決定することができる。
【0112】
例えば、上述の典型的な溶液に関して、熟成は、例えば攪拌しながら22℃で少なくとも3日間好ましくは行われる。
【0113】
熟成の終了時に、得られた溶液は、加水分解されたシランの液体溶液として規定することができ、この溶液を基板の表面と接触させて、表面上へ堆積させる。
【0114】
堆積は、スピンコーティング、浸漬コーティング、層流コーティング(メニスカスコーティング)及びその代替的形態、ローラーコーティング及びカーテンコーティング、プリンティング(例えば、インクジェットプリンティング)、スポッティング又はスプレーコーティングのような(非排他的に)当業者に既知の任意の適切な液相堆積方法により行うことができる。
【0115】
これらの堆積方法の幾つかは、例えば数百cm〜数mの広い表面をコーティングすることを可能にさせ、これは、本発明の方法の利点の1つとなる。
【0116】
これらの方法の他の幾つかは、例えば数nm〜数mmの局所的な堆積を行うことを可能にさせ、これは、本発明による方法の別の利点となる。
【0117】
他の技法は、高度に自動化することができ、高速を達成することができ(スピンコーティング、プリンティング、スポッティング)、これは、本発明の方法の別の利点となる。
【0118】
堆積は、室温で、即ち、一般に15〜35℃、好ましくは20〜25℃、例えば23℃の温度で一般に行われる。
【0119】
堆積は、数秒〜数分で一般に行われ、表面上に堆積された溶液は、表面へ共有結合された厚いゲル化層を形成するのに十分な期間(例えば、10分未満)、表面と接触させておく(段階b))。
【0120】
厚い層の形成(段階b)は、段階a)と同時に(例えば、部分的に)、又は段階a)の直後に行われる。
【0121】
最終的な乾燥は、25〜60℃で数分間、例えば15分未満の期間行われ、続いて層は、一般に70℃〜200℃の温度で任意にアニーリングされる。
【0122】
ヒドロキシル基が提供された表面、及びEHTEOSのようなシロキサンを含む溶液の場合、厚い層は、−Si−O−結合を介して表面へ結合される。
【0123】
この層は、スキーム1に表されるエポキシド(EP)官能基であり且つ化学的分子又は生物学的分子の結合、固定化又はグラフトを可能にさせる遊離の化学官能基を有する。
【0124】
「厚い層」という用語は、本発明の意義の範囲内において、数オングストローム〜数nmの厚さを一般に有する自己組織化単分子層と対比して、数ナノメートル〜数マイクロメートル(ミクロン)、例えば10nm〜10μm、例えば50nm〜1μm、例えば100nmの層を一般に意味するものと理解される。得られる層は、広い表面積にわたってさえも均一な層である(不規則は伴わない)。
【0125】
厚さの均質性は、典型的に±3%である。また、層は、吸収及び散乱により非常に少ない損失を示し(k<2×10−3)、その屈折率は、可視領域では約1.47である。したがって、この層は、単独で、又は光学層の積重ねの一部を形成する層として、その光学特性に関して使用することができる。
【0126】
スキーム1では、例えば水性/アルコール性媒質中でのゾル−ゲル経路によるシラン化方法として規定され得る本発明による方法は、シラン化がSAMタイプの層を調製することにより行われる従来技術による方法と比較される。
【0127】
従来技術のこの方法では、同じシロキサン、即ちEHTEOSであるが、トルエンのような有機溶媒中、且つ例えばトリエチルアミン(TEA)又はジイソプロピルエチルアミン(DIEA)のような有機塩基から選択される触媒の存在下での溶液が表面に適用される。
【0128】
トルエンのような攻撃的な溶媒の存在に起因して、この方法は、多数の感受性(sensitive)基板、特にプラスチック(PMMA、PC、PP、PS、PVC)、又は樹脂又は接着剤を含む部分を含む基板上で行うことができない。
【0129】
堆積は、高温で(例えば80℃で)、長期間(例えば約16時間)行われる。
【0130】
したがって、自己組織化単分子層(SAM)は、数オングストローム〜数nmの厚さで得られ、例えば−Si−O−結合により基板へ結合され、また化学的分子又は生物学的分子の固定化を可能にさせる官能基(例えば、エポキシド(EP)官能基)を有する。
【0131】
化学的分子又は生物学的分子は続いて、官能基化された表面、即ちSAM層又は厚い層(ともに、化学的分子又は生物学的分子の固定化を可能にさせる官能基を有する)が提供された表面上へ固定化、結合又はグラフトされる。
【0132】
層により有される官能基は、一般に求核性基に関して反応性であるエポキシド官能基のような官能基であるため、したがって固定化されるべき化学的分子又は生物学的分子は、アミン、チオール、オキシアミン、ヒドロキシル又はフェノール基のような求核性基、或いはこれらの基の共役塩基を一般に含む。
【0133】
化学的分子は、想定される応用形態に従って一般に選択され、例えば化学的分子は、キラル、アキラル、線状、環式又は複素環式分子であり得る。
【0134】
生物学的分子は、タンパク質、DNA、オリゴヌクレオチド、ペプチド及びオリゴ糖から一般に選択される。
【0135】
化学的分子又は生物学的分子が求核性基を有しない場合、化学的分子又は生物学的分子は、化学的分子又は生物学的分子上に求核性基の1つを付与するために修飾することができる。
【0136】
したがって、スキーム1では、固定化される分子は、NH基で修飾されたオリゴヌクレオチドである。
【0137】
生物学的分子又は化学的分子のグラフト又は固定化は、例えば水性緩衝液のような適切な媒質中に分子を溶解させることにより、並びに例えば手動で、又は圧電タイプ(表面と接触させずに)又はピン若しくはピン及びリングタイプ(表面と接触させて)のヘッドが装備されたスポッティングロボットを用いて、官能基化された表面上にそれを堆積させることにより、非常に容易に行われる。
【0138】
最終的に、化学的分子又は生物学的分子がグラフト、結合又は固定化された表面が得られる:したがって、スキーム1では、オリゴヌクレオチドは、アミン(C−N)タイプの結合を介して固定化される。
【0139】
同様に、官能基化段階の終了時に、厚い層又はSAM層により有される官能基を、化学的分子又は生物学的分子の固定化を可能にさせる他の官能基へ変換させることも可能である。これらの官能基もまた、好ましくは求核性基に関して反応性である官能基である。
【0140】
したがって、エポキシド官能基は、まずジオールを付与するために水性HCl媒質中でエポキシド環を開環し、続いて例えばNaIOによる酸化的切断を行うことにより、アルデヒド官能基へ変換することができる。
【0141】
化学的分子又は生物学的分子は、例えば求核性基を含む化学的分子又は生物学的分子を、アルデヒドにより官能基化された表面と接触させることにより、アルデヒド基を備えた層上に固定化される。オリゴ−NHを用いたスキーム1に見られるように、求核性基がNH基である場合、続いて例えばNaBHを用いて還元が行われる。
【実施例】
【0142】
[実施例1]
この実施例では、水酸化ナトリウム中でストリッピングすること(ブラウンプロセス)により清浄及び調製されるガラス(市販のフロートガラスから作製される細片)から作製される基板上に、エポキシド官能基を含む約100nmの厚さを有する厚い層が、本発明によるゾル−ゲル法により調製される。
【0143】
トリエチルアミン(TEA)及び水の存在下でのエタノール中の(5,6−エポキシヘキシル)トリエトキシシラン(EHTEOS)の溶液は、上記基板上へ堆積される。
【0144】
溶液中のEHTEOSの濃度は2.5重量%である。HOとEtOHとの濃度の比は0.18重量%である(HI/EtOH)。
【0145】
構成成分の相対量は、2つのパラメータH=[HO]/[EHTEOS]=1及びT=[TEA]/[EHTEOS]=1(式中、[x]は、存在物xのモル濃度を表す)により規定される。
【0146】
溶液は、穏やかに攪拌しながら22℃で少なくとも3日間熟成された。
【0147】
堆積は、室温で、200〜3000回転/分、例えば700回転/分の速度でスピンコーティングにより行われて、湿潤層を与える。基板と液体溶液との間の接触の期間は、1〜数秒(例えば、1〜10秒)である。基板と湿潤層との間の接触の期間は5分である(基板を依然として回転させながらの層の乾燥時間)。
【0148】
このようにして、エポキシド官能基を有する約140nmの厚さを有する厚いゲル化層が基板上に得られる。
【0149】
IRランプ下で5分間乾燥させて、1〜数分(例えば、5又は10分)〜最大30分、80℃〜150℃の温度で加熱した後、基板へグラフトされた高密度化層は、約100nm±5nmの厚さ、及び約1.47の屈折率を有する(それは、約595nmで四分の一波長である)。
【0150】
[実施例2]
この実施例では、アルデヒド官能基を含む約100nmの厚さを有する厚い層が、本発明によるゾル−ゲル法により、ガラス基板(市販のフロートガラスの細片)上に調製される。
【0151】
エポキシド環を開環させて、ジオールを形成するために、実施例1のように調製されるエポキシド官能基を有する厚い層が提供された基板を、HCl水溶液で処理し(0.2N水溶液中で室温にて3時間放置した後、脱イオン水で続けて3回すすぎ、続いて乾燥させる(エアジェット又は遠心分離により))、続いて上記ジオールをNaIOで酸化的に切断して(室温で1時間攪拌して、脱イオン水で5分間すすいだ後、遠心分離により乾燥させる)、アルデヒドタイプの官能基を生産する。
【0152】
[実施例3]
NH修飾されたオリゴヌクレオチド(20量体)は、実施例1で調製される支持体上に堆積及び固定化される。堆積は、圧電タイプのロボットにより水溶液(0.3M NaHPO)中で行われる。
【0153】
得られたオリゴヌクレオチドプローブは、CY3蛍光プローブ(fluorophore)で標識した相補的標的によりハイブリダイズされた。蛍光測定は、Axon Genepixスキャナを用いて行われる。
【0154】
[実施例4]
実施例3と同じであるが、但し実施例2で調製される支持体を用いる手順を繰り返して、修飾オリゴヌクレオチドが固定化された支持体が得られる。
【0155】
[比較例1]
この比較例では、配列が制御され(SAM層)、且つエポキシド官能基を含む単分子層が、以下の工程により基板上へ調製される:
【0156】
支持体(ガラス又はシリカ細片)は、塩基性媒質(1g/4ml/3mlの比率のNaOH/EtOH/脱イオン水)中で清浄及び活性化された後、脱イオン水ですすぎ(5分)、続いて80℃で乾燥させる。
【0157】
このようにして清浄及び活性化された支持体(表面上にヒドロキシル官能基)を続いて、トルエン中のEHTEOS(5mM)及びトリエチルアミン(TEA、0.2M)の溶液により、80℃で16時間官能基化させる。続いて、基板を、アセトン、エタノール及び水ですすいで、遠心分離により乾燥させた後、有機層を高温で(110℃で3時間)架橋させる。
【0158】
エポキシド官能基は、基板を室温で3時間、0.2M HCl水溶液中に浸漬させることによりジオールへ変換される。続いて、基板をすすいだ後、遠心分離により乾燥させる。
【0159】
続いて、実施例3の手順により、ハイブリダイズされたオリゴヌクレオチドプローブが調製されて、蛍光測定が行われる。
【0160】
[比較例2]
この比較例では、配列が制御され(SAM層)、且つアルデヒド官能基を含む単分子層が、比較例1と同じ工程により調製されて、続いてエポキシド官能基は、実施例2の手順によりアルデヒド官能基へ変換される。
【0161】
続いて、実施例3の手順により、ハイブリダイズされたオリゴヌクレオチドプローブが調製されて、蛍光測定が行われる。
【0162】
蛍光測定の結果を図1及び図2に与える。
【0163】
図1は、本発明による実施例3及び4(B及びD)並びに比較例1及び2(A及びC)で得られる様々なハイブリダイズされたプローブに関して、16ビットにわたる階調(gray level)(GL)(65536レベル)で表される蛍光シグナルを与える。
【0164】
図2は、実施例3及び4(B及びD)並びに比較例1及び2(A及びC)のサンプルに関して、基板のバックグラウンドノイズを与える。
【0165】
エポキシド及びアルデヒドタイプの表面は、同じ規模のシグナルを得ることを可能にさせる。このシグナルは、本発明による方法によるゾル−ゲル経路により得られる表面上でわずかに弱く(図1のB及びD)、ゾル−ゲル層のシグナルは、エポキシド表面に関しては30%、またアルデヒド表面に関しては20%低い。
【0166】
バックグラウンドノイズは、本発明による方法によるゾル−ゲル経路により得られる表面上で改善され(図2のB及びD)、これにより特に信号対雑音比(感度)を増大させることが可能になる。
【0167】
所定の堆積ロボット、所定の堆積緩衝液及び所定のスポット体積に関して、このスポットの直径は、表面の接触角に主に依存し、この角度が大きいほど、表面はより疎水性であり、且つ水溶液のスポットの直径はより小さい。
【0168】
驚くべきことに、接触角に関して測定される値を考慮すると、図3によるゾル−ゲル経路により得られるスポットの直径は、SAM経路により得られるものよりも小さい(図3)。
【0169】
この実施例では、スポットされる液滴の体積は、650pl(ピコリットル)である。SAM経路により得られる層上では、接触角の大きな差が、エポキシド及びアルデヒドタイプの層間に存在する(それぞれ70°及び61°)。得られたスポットは、それぞれ170マイクロメートル(ミクロン)及び200マイクロメートル(ミクロン)の直径を有する。
【0170】
本発明によるゾル−ゲル経路により得られる層上では、エポキシド及びアルデヒドタイプの層に関する接触角の値は類似している(それぞれ65°及び66°)。したがって、180〜190マイクロメートル(ミクロン)のスポット直径が得られると予測される。
【0171】
驚くべきことに、ゾル−ゲル層上で得られるスポットは、エポキシド及びアルデヒド層に関して、それぞれ90及び100マイクロメートル(ミクロン)の直径を有する。
【0172】
完全に制御された厚さを有するこの厚い層は、とりわけ、単独で又は積重ねの部分を形成して光学層(例えば、ブラッグミラー)として使用することができる。このミラーは、光学層を特徴とし、その厚さは、発光波長をこの波長での層の4倍の屈折率で除算したものに等しい。ゾル−ゲル経路によるこのタイプのミラーの調製の説明は、文献:フランス特許第2818378号(FR-A-2 818 378)(国際公開第02/48691号パンフレット(WO-A-02/48691))に与えられている。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】オリゴヌクレオチドが固定化され、それらのオリゴヌクレオチドは続いてCY3蛍光プローブにより標識される標的によりハイブリダイズされた種々の官能基化表面に関して、16ビットにわたる階調(GL)(65536レベル)として表される蛍光シグナルを与えるグラフである。棒B及びDは、本発明のゾル−ゲル法による官能基化で調製されるエポキシド及びアルデヒド表面(実施例3及び4)それぞれに関するプロットの蛍光シグナルを与え、棒A及びCは、SAMタイプの層を包含する方法による官能基化で調製されるエポキシド及びアルデヒド表面(比較例1及び2)それぞれに関する蛍光シグナルを与える。
【図2】オリゴヌクレオチドが固定化され、それらのオリゴヌクレオチドは続いてCY3蛍光プローブにより標識される標的によりハイブリダイズされた様々な官能基化表面に関して、16ビットにわたる階調(GL)(65536レベル)として表される蛍光バックグラウンドノイズを与えるグラフである。棒B及びDは、本発明のゾル−ゲル法による官能基化で調製されるエポキシド及びアルデヒド表面(実施例3及び4)それぞれに関するバックグラウンドノイズを与え、棒A及びCは、SAMタイプの層を包含する方法による官能基化で調製されるエポキシド及びアルデヒド表面(比較例1及び2)それぞれに関するバックグラウンドノイズを与える。
【図3】650pl(ピコリットル)の液滴体積に関するプロット、スポットの直径(マイクロメーターで)(縦座標上)、及び様々な層に関する表面の接触角(α、°にて)(横座標上)を与えるグラフである。塗潰しの菱形は、エポキシド官能基を有するSAMタイプの層に相当し、塗潰しの四角は、エポキシド官能基を有する「ゾル−ゲル」タイプの層に相当し、塗潰しの丸は、アルデヒド官能基を有するSAMタイプの層に相当し、塗潰しの三角は、アルデヒド官能基を保有する「ゾル−ゲル」タイプの層に相当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体基板の任意に清浄及び/又は活性化された表面の官能基化のためのゾル−ゲル法であって、下記段階:
a)水と揮発性水混和性有機溶媒との混合物中の、酸性触媒又は塩基性触媒及びシラン又はシロキサンの溶液が、室温で前記表面上に堆積される段階であって、前記シラン又はシロキサンが、生物学的分子若しくは化学的分子の固定化を可能にさせ及び/又は生物学的分子若しくは化学的分子の固体化を可能にさせる化学官能基A’に変換されることが可能である少なくとも1つの化学官能基Aと、共有結合によって化学的に又は機械的に、前記表面に結合することが可能な少なくとも1つの結合用化学官能基Bとを有している段階、
b)前記揮発性有機溶媒が、段階a)と同時に、及び/又はこの段階の直後に蒸発され、それにより前記溶液が、湿潤ゲルへ変換されて、厚いゲル化層を形成する段階、続いて、
c)前記厚いゲル化層が乾燥され、それにより共有結合によって化学的に又は機械的に前記表面に結合され且つ化学的分子又は生物学的分子の固定化を可能にさせる前記化学官能基Aを有する厚い層が得られる段階
が行われるゾル−ゲル法。
【請求項2】
段階a)における前記溶液の堆積が、スピンコーティング、浸漬コーティング、層流コーティング及びその代替的形態、ローラーコーティング及びカーテンコーティング、スプレーコーティング、プリンティング(例えば、ジェットプリンティング技法を使用することによる)及びスポッティングから選択される液相堆積技法により行われる請求項1に記載のゾル−ゲル法。
【請求項3】
段階b)が、室温で行われる請求項1に記載のゾル−ゲル法。
【請求項4】
段階a)の期間が、1秒〜10分である請求項1〜3のいずれか1項に記載のゾル−ゲル法。
【請求項5】
段階b)の期間が、10分以下、例えば1〜5分である請求項1〜4のいずれか1項に記載のゾル−ゲル法。
【請求項6】
段階b)が、段階a)と部分的に同時である請求項1〜5のいずれか1項に記載のゾル−ゲル法。
【請求項7】
段階c)で行われる乾燥が、15分以下の期間を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載のゾル−ゲル法。
【請求項8】
段階c)の乾燥が、25〜60℃の温度で行われる請求項7に記載のゾル−ゲル法。
【請求項9】
段階c)の乾燥後に、加熱又はアニーリングの段階d)が、前記乾燥温度よりも高い温度で行われる請求項1〜8のいずれか1項に記載のゾル−ゲル法。
【請求項10】
段階d)が、70〜200℃の温度で行われる請求項9に記載のゾル−ゲル法。
【請求項11】
前記化学官能基Aが、エポキシド官能基のような、求核性基に関して反応性である官能基である請求項1に記載のゾル−ゲル法。
【請求項12】
前記シラン又はシロキサンが、下記式(I):
【化1】

(式中、R、R及びRは、同一であるか又は異なり、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル又はt−ブチルのような、炭素数1〜6の線状又は分岐状アルキル基を表し;Yは、炭素数1〜20の線状又は分岐状アルキル鎖のような炭化水素鎖を表し、ここで1つ以上の炭素原子は、酸素、硫黄又は窒素原子により任意に置換され得る)に相当する請求項1に記載のゾル−ゲル法。
【請求項13】
前記シラン又はシロキサンが、(5,6−エポキシヘキシル)トリエトキシシラン(EHTEOS)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)メチルジエトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン(GLYMO)、(3−グリシドキシプロピル)ビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、(3−グリシドキシプロピル)ジメチルエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン及び(3−グリシドキシプロピル)ペンタメチルジシロキサンから選択される請求項1〜12のいずれか1項に記載のゾル−ゲル法。
【請求項14】
前記シラン又はシロキサンが、0.1〜10重量%の濃度で前記溶液中に存在する請求項1〜13のいずれか1項に記載のゾル−ゲル法。
【請求項15】
前記触媒が、酸性触媒である請求項1〜14のいずれか1項に記載のゾル−ゲル法。
【請求項16】
前記触媒が、塩基性触媒である請求項1〜14のいずれか1項に記載のゾル−ゲル法。
【請求項17】
前記酸性触媒が、HCl、HNO、HSO及びそれらの混合物のような無機酸、又はHCOOH、CHCOOH、CH=CH(CH)COOH及びそれらの混合物のような有機酸から選択される請求項15に記載のゾル−ゲル法。
【請求項18】
前記塩基性触媒が、アンモニア、並びに第一級、第二級、第三級及び芳香族アミンから選択される請求項16に記載のゾル−ゲル法。
【請求項19】
前記触媒が、トリエチルアミン(TEA)のようなトリ(C〜C10アルキル)アミンから選択される請求項18に記載のゾル−ゲル法。
【請求項20】
前記触媒が、0.005〜5重量%の濃度で前記溶液中に存在する請求項1〜19のいずれか1項に記載のゾル−ゲル法。
【請求項21】
段階a)の前記溶液において混和性である前記有機溶媒が、エタノール又はイソプロパノール等の、炭素数1〜12の脂肪族アルコールのようなアルコールである請求項1〜20のいずれか1項に記載のゾル−ゲル法。
【請求項22】
水とアルコールとの混合物中のアルコールと水との比率は、前記アルコールに関して水が0.05%〜10%である請求項21に記載のゾル−ゲル法。
【請求項23】
パラメータH=[HO]/[シラン又はシロキサン]及びT=[触媒]/[シラン又はシロキサン](式中、[x]は、存在物xのモル濃度を表す)により規定される水、EHTEOSのようなシロキサン及びTEAのような触媒の相対量が、0<H<100及び0<T<100、好ましくは0.1<H<20及び0.01<T<10、より好ましくは0.8<H<2及び0.1<T<2となる請求項1〜22のいずれか1項に記載のゾル−ゲル法。
【請求項24】
前記厚い層によって有される前記官能基A(例えば、前記エポキシド官能基)が、前記官能基Aとは異なり且つ化学的分子又は生物学的分子の固定化を可能にさせる他の官能基A’へ変換される請求項1〜23のいずれか1項に記載のゾル−ゲル法。
【請求項25】
前記官能基A’が、ジオール、アルデヒド、カルボン酸、活性エステル、酸ハロゲン化物、酸無水物、アミド、スルホニルハロゲン化物及びアルキル又はアリールハロゲン化物官能基のような、求核性基に関して反応性である官能基から選択される請求項24に記載の方法。
【請求項26】
段階a)の前に、前記溶液が熟成に付される請求項1〜25のいずれか1項に記載のゾル−ゲル法。
【請求項27】
前記熟成が、15〜60℃の温度で1時間〜10週間、攪拌なしで又は穏やかに攪拌しながら、密閉容器中で前記溶液を貯蔵することを含む請求項26に記載のゾル−ゲル法。
【請求項28】
前記固体基板が、シリコンのような半導体;ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)及びポリ(塩化ビニル)(PVC)のような有機ポリマー;金、アルミニウム及び銀のような金属;ガラス;一般に層としての、SiO、Al、ZrO、TiO又はTaのような無機酸化物;並びにこれらの材料の幾つかを含む複合材料から選択される材料から成る請求項1〜27のいずれか1項に記載のゾル−ゲル法。
【請求項29】
前記基板は、構造化されてもよく、又は構造化されなくてもよい請求項1〜28のいずれか1項に記載のゾル−ゲル法。
【請求項30】
前記厚い層が、10nm〜10μm、例えば50nm〜1μmの厚さを有する請求項1〜29のいずれか1項に記載のゾル−ゲル法。
【請求項31】
段階a)の前記溶液が、トリエチルアミン(TEA)を含む、水及びエタノールの混合物中の(5,6−エポキシヘキシル)トリエトキシシラン(EHTEOS)の溶液であり、
前記溶液中のEHTEOSの濃度が2.5重量%であり、水及びエタノールの濃度の比が0.18重量%であり、構成成分の相対量がパラメータH=[HO]/[EHTEOS]=1及びT=[TEA]/[EHTEOS]=1により規定され、
前記基板が、水酸化ナトリウム中でストリッピングすることにより清浄及び調製されたガラスから作製される基板であり、
前記溶液が、穏やかに攪拌しながら、22℃で少なくとも3日間熟成された溶液であり、
堆積が、200回転/分〜3000回転/分、例えば700回転/分の速度でのスピンコーティングにより室温で行われて、湿潤層を与え、及び前記基板と前記液体溶液との間の接触の期間が、1〜10秒であり、
前記湿潤層と前記基板との間の接触の期間が、前記基板が依然として回転したままで5分であり、したがってエポキシド官能基を有する約140nmの厚さの厚いゲル化層が前記基板上に得られ、
前記厚いゲル化層は、赤外線ランプ下で5分間乾燥されて、加熱が、80℃〜150℃の温度で1〜30分間行われて、それにより前記基板にグラフトされた高密度化層は、厚さが約100nm±5nm及び屈折率が約1.47で得られる請求項1〜30のいずれか1項に記載のゾル−ゲル法。
【請求項32】
化学的分子又は生物学的分子が固定化された表面を含む固体基板の調製方法であって、
固体基板の表面は、請求項1〜31のいずれか1項に記載の官能基化方法により官能基化され、続いて前記官能基化された表面を洗浄せずに、化学的分子又は生物学的分子は、前記厚い層によって有される前記化学官能基A又はA’と反応される調製方法。
【請求項33】
前記化学的分子又は前記生物学的分子が、アミン、ヒドロキシル、オキシアミン若しくはチオール官能基のような求核性基を含む分子、又はそれらの陰イオン性誘導体である請求項32に記載の調製方法。
【請求項34】
前記化学的分子が、キラル、アキラル、線状、環式又は複素環式分子から選択される請求項32又は33に記載の調製方法。
【請求項35】
前記生物学的分子が、タンパク質、DNA、オリゴヌクレオチド、ペプチド及びオリゴ糖から選択される請求項32又は33に記載の調製方法。
【請求項36】
請求項1〜35のいずれか1項に記載の方法の段階c)又はd)の終了時に得られる前記厚い層の光学層としての使用。
【請求項37】
前記層が、単独で使用される請求項36に記載の使用。
【請求項38】
前記層が、幾つかの光学層を積重ねて使用される請求項36に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−515610(P2008−515610A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512306(P2007−512306)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050317
【国際公開番号】WO2005/113129
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(590000514)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (429)
【Fターム(参考)】