説明

固体潤滑剤コーティングを有する楔形ねじ

管状結合部は、対応する雌の楔形ねじを有するボックス部材と係合するよう構成された雄の楔形ねじを有するピン部材と、そして該雌及び雄の楔形ねじの少なくとも1つの上に付けられた固体潤滑剤コーティングと、を具備しており、該固体潤滑剤コーティングは亜鉛粒子を含むエポキシ樹脂製の乾燥腐食抑制コーティングの第1均一層と、該第1均一層をカバーする乾燥潤滑剤コーティングの第2均一層と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する実施例は一般的に楔形ねじ結合部に関する。特に、ここに開示する実施例は、上に恒久的に接合された固体潤滑剤コーティングを有する楔形ねじと、該楔形ねじ上に該固体潤滑剤コーティングを恒久的に接合する関連方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
産油国の管状品で普通使われる1種類のねじ結合部は楔形ねじとして知られている。最初に図1A及び1Bを参照すると、楔形ねじを有する従来技術の管状結合部100が示されている。ここで使われる時、“楔形ねじ”は、特定のねじ山形式に関係なく、幅(すなわち、負荷フランク225及び226とスタブフランク232及び231の間の軸方向距離)が、ピン部材101及びボックス部材102上で反対方向に増加するねじである。該ねじ山の幅を該結合部に沿って変化する割合は“楔形比”として知られる変数により規定される。ここで使われる時、“楔形比”とは、技術的には比ではないが、ねじ山の幅を該結合部に沿って変化させる、スタブフランクリードと負荷フランクリードの間の差を呼ぶ。更に、ここで使われる時、ねじ山リードは、連続するねじ山でねじ山要素間の差の距離を言う。この様であるから、“スタブリード”は該結合部の軸方向長さに沿う連続するねじ山ピッチのスタブフランク間の距離である。
【0003】
楔形比の詳細論議は、本開示の譲り受け人に譲渡された、その全体の引用によりここに組み入れられる特許文献1で提供される。更に、楔形ねじは、本開示の譲り受け人に譲渡された、その全体の引用によりここに組み入れられる特許文献2、3、4、及び5で広く開示される。
【0004】
なお図1A及び1Bを参照すると、楔形ねじでは、ピン負荷フランク226及びボックス負荷フランク225の間と、ピンスタブフランク232及びボックススタブフランク231の間の結合部100の少なくとも1部分上に組立時に起こる干渉により引き起こされる接触圧力によりねじシールが達成される。谷292及び221と頂き222及び291の間の狭い接近又は干渉は、この様なフランク干渉の近くで起こると、ねじシールを完成する。一般に、ピン部材101及びボックス部材102上で谷と頂の間の干渉(“谷/頂き干渉”)を増すか、又は前記フランク干渉を増やすか、何れかにより高い圧力が持たれてもよい。
【0005】
組立前に、該ねじシールを改善し、該結合部の組立時の潤滑を提供するために、“パイプドープ”と普通呼ばれる流動性接合コンパウンドが、ねじ結合部の面に付けられるのが典型的である。例えば、特許文献3で開示される様に、該パイプドープは、楔形ねじ結合部がその負荷及びスタブフランク間のねじシールを達成するのに役立つ。更に、パイプドープは、該ピン及びボックス部材のねじ山を組立及び分解時に摩擦かじりから防護する。
【0006】
パイプドープの様な流動性接合コンパウンドは、楔形ねじが組立てられる狭い嵌合の仕方のために、楔形ねじ結合部で使われてもよい。前述の様に、楔形ねじは全面接触理論に依存し、該理論は各接触面、すなわち、対応する谷/頂きとスタブ及び負荷フランク面が狭く接近するか又は完全に干渉する、ことを意味する。かくして、多数ねじ山面干渉からの楔形ねじのきつい嵌合特性のために、パイプドープは、該結合部が組み立てられ、対応するねじ山面が合わされると、該パイプドープが、該ねじ面の適切な係合を妨げないように、圧搾して出されるように使われる。
【0007】
楔形ねじ結合でのパイプドープの使用には或る欠陥が無くはない。楔形ねじ結合部が組
み立てられると、過剰なパイプドープがピンねじとボックスねじの間に捕らえられ(圧搾して出されるよりも寧ろ)、該パイプドープは誤りの高いトルク読み値を引き起こすか(不充分な組立又は“膠着状態”へ導く)、又は或る環境では、該結合部を損傷する。パイプ膠着状態を緩和する企ては、例えば、本出願の譲り受け人に譲渡され、その全体の引用によりここに組み入れられる特許文献6の様に、該ねじ結合部の組立で使われるパイプドープの圧力形成を減じるねじ形式の特徴を提供する形に到った。加えて、楔形ねじ結合部上の過剰なパイプドープに付随する問題は、付けるパイプドープの量を制限し、そして該楔形ねじ結合部が組み立てられる速度を管理することにより避けられてもよい。楔形ねじ結合部の組立速度の制限は、パイプドープが移り、該パイプドープが高圧で該結合部内に捕らえられる前に、圧搾して出されることを可能にする。しかしながら、結合部の組立速度の制限はドリルストリングを組み立てる過程全体をスローダウンさせる。
【0008】
パイプドープの不適切な排除によるパイプ膠着状態は楔形ねじ結合部の構造的完全性に有害である。使用中に形成圧力が滲出停止すると、該結合部は使用中偶然後退する危険に会う。従って、楔形ねじ結合部の膠着状態は、該状態がシール完全性の喪失或いは2つの結合部材の機械的分離にさえ導くので、特に心配される。更に、パイプ膠着は、高い下げ孔サービス温度(すなわち、配管がサービス時経験すると期待される温度)で使われる管列で特に問題である。特に高温サービスでは{例えば、約121.1℃(250°F)より高い温度、蒸気の溢れた管列、又は地熱に曝される管列}、僅かな膠着状態も有害である。例えば、もし、例え無限小でも膠着状態を有して組み立てられた楔形ねじ結合部が高温油井へ展開されるなら、該パイプドープは楔形ねじ結合部から流れ出し、かくして該ねじシールの完全性を減じる。更に、該パイプドープの粘性が増すと、該楔形ねじ内の流動性パイプドープの使用は特に高温で、ねじシール漏れへ導く。
【0009】
パイプドープを利用する大きな外径の楔形ねじは、ねじ結合部の完全な組立を保証するためにトルクの第2印加を要するのが典型的である。楔形ねじの長さ及び形状のために、大きな直径の結合部は油圧ロックをしやすく、該結合部の長さに沿いねじ山ドープを押す(すなわち、該ねじドープを流れさせる)ために特別のトルクを要する。この様な手順は結合部の“二重当たり”として普通知られており、それは該ねじ山に沿ってパイプドープを“圧搾する”ために何回もトルクが印加されるからである。注意すべきことに、二重当たりは結合部組立時間を増加させる。
【0010】
従って、きつく嵌合する楔形ねじ結合部で使われることが可能で、パイプ膠着の心配を実質的に減じ、上昇した下げ孔温度で効果的であるねじ潤滑剤のニーヅが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6,206,436号明細書、Mallis
【特許文献2】米国特許第RE30,647号明細書、Blose
【特許文献3】米国特許第RE34,467号明細書、Reeves
【特許文献4】米国特許第4,703,954号明細書、Ortloff
【特許文献5】米国特許第5,454,605号明細書、Mott
【特許文献6】米国刊行物第2008/0054633号
【特許文献7】国際出願公開第PCT/EP2003/011238号明細書
【特許文献8】米国刊行物第2008/129044号
【発明の概要】
【0012】
1側面では、ここで開示される実施例は、対応する雌の楔形ねじを有するボックス部材と係合するよう構成された雄の楔形ねじを有するピン部材と、該雌及び雄の楔形ねじの少なくとも1つ上に恒久的に接合された固体潤滑剤コーティングと、を備える管状結合部に
関する。
【0013】
他の側面では、ここで開示される実施例は、楔形ねじを有する結合部を製造する方法に関しており、該方法はボックス部材上に雌の楔形ねじと、ピン部材上に雄の楔形ねじと、を加工する過程であって、該雌及び雄の楔形ねじは対応するよう構成された該雌及び雄の楔形ねじを加工する過程と、該雌及び雄の楔形ねじの少なくとも1つ上に固体潤滑剤コーティングを恒久的に接合する過程と、を具備する。
【0014】
本発明の他の側面と利点は下記説明と附属する請求項から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A−1B】楔形ねじを有する従来技術の管状結合部の断面図を示す。
【図2】本開示の実施例の楔形ねじ上の固体潤滑剤コーティングの断面図を示す。
【図3】本開示の実施例のねじ山面近くの固体潤滑剤コーティングの拡大詳細図を示す。
【図4】本開示の実施例のねじ山面近くの代わりの固体潤滑剤コーティングの拡大詳細図を示す。
【実施例1】
【0016】
1側面では、ここに開示する実施例は、上に恒久的に接合された固体潤滑剤コーティングを有する楔形ねじ結合部と、該楔形ねじに該固体潤滑剤コーティングを恒久的に接合する関連方法と、に関する。該ねじ結合部は、上に形成された楔形ねじを有する対応するピン部材及びボックス部材を備える。該固体潤滑剤コーティングは、該結合部の組立前に、該ピン部材、該ボックス部材、又は該ピン及びボックス両部材に恒久的に接合されてもよい。該固体潤滑剤コーティングの1つ以上の層は、該結合部の端部構成の種類(すなわち、ピン全長、ボックス全長、又は組み合わせ)に依り使用されてもよい。
【0017】
今、図2を参照すると、本開示の実施例による、上に恒久的に接合された固体潤滑剤コーティング310を有する楔形ねじ300の断面図が示される。該楔形ねじ300はピン部材又はボックス部材の何れかであってもよい管状部材301上に形成される。図示される様に、固体潤滑剤コーティング310は、ねじ谷302、ねじ頂き304、スタブフランク306、そして負荷フランク308を含む、楔形ねじ300の面全体に恒久的に接合される。
【0018】
ここで使われる時、「恒久的に接合される」とは、該固体潤滑剤コーティング310が、該コーティングの適当な硬化後、該結合部の組立時“流れ”ず、寧ろ堅い構造体であり続けるよう、該固体潤滑剤コーティングが該楔形ねじ面へ接着していることを言う。この様であるから、該楔形ねじ結合部の組立時、該固体潤滑剤コーティング310は固体構造体として動作し、典型的パイプドープ潤滑剤が、接触するねじ谷302及びねじ頂き304、そしてスタブフランク306及び負荷フランク308により創られる力により流れる様には、流れない。該固体潤滑剤は流れないが、該固体潤滑剤コーティングは柔軟なコンパウンドであり、幾分弾性を有するので、該楔形ねじ結合部の組立後、該結合部の多数回の組立及び分解後には該ねじフランク内のボイド(該フランク内の欠陥によりもたらされる)を充たすよう僅かに変形してもよい。シール性を求めねじフランク内のボイドを充たすために表面張力に依存する流動性ねじコンパウンドと異なり、ここで開示される1つ以上の実施例の固体潤滑剤コーティング310は楔形ねじ面に恒久的に接着及び/又は接合する。
【0019】
本開示の実施例の固体潤滑剤コーティング310の拡大した構造が図3で示される。図示される様に、楔形ねじ300(図2)の未コート面は、約2から6μmの間の平均面粗さRaを有する。或る実施例では、未コートねじ山面は、1から10μmの間の平均面粗さを有してもよい。該ねじ山面を準備するために楔形ねじ面のベース金属の面の処理又は地ならしが必要であり、そして該処理又は地ならしは引き留め部として役立つので、該固体潤滑剤コーティングは楔形ねじに適切に接着し、そして恒久的に接合される。楔形ねじ面の面処理は研磨材吹き付け及び/又は燐酸塩コーティングを含んでもよい。
【0020】
該楔形ねじ面の面調整(もし必要なら)の後、第1固体コーティング(均一な又は実質的に一定の厚さの層)が該楔形ねじ面に付けられ、恒久的に接合される。該第1固体コーティングは、亜鉛(Zn)粒子を含むエポキシ樹脂から成っても良い。或る実施例では、第1固体コーティングは腐食抑制コーティングであってもよく、或いは腐食抑制特性を有してもよい。エポキシ樹脂内の亜鉛粒子含有量は質量で約80%以上であってもよい。或る実施例では、該亜鉛粒子は少なくとも99%の純度を有する。他の実施例では、該亜鉛粒子は少なくとも97.5%の純度を有する。第1コーティング312は、約15から35μmの間の厚さ値を有してもよい。或る実施例では、該第1コーティング312は、20から30μmの間の厚さ値を有してもよい。
【0021】
次ぎに、第2固体コーティング314(例えば、乾燥固体潤滑剤コーティング)が第1コーティング312及び/又は楔形ねじ面上に、付けられ、そして恒久的に接合される。1実施例では、第2コーティング314は、無機バインダー内の二硫化モリブデン(MoS)と他の固体潤滑剤の混合物から成る。他の固体潤滑剤はグラファイト、二硫化タングステン、窒化ホウ素及びポリテトラフルオロエチレン(“PTFE”)を含むが、それらに限定されない。ここに開示した1つ以上の実施例では、固体潤滑剤が分散される種類のバインダーは有機性、無機性、金属性及びセラミック性を有してもよい。当業者は、該固体潤滑剤が分散される種類のバインダーの選択がねじ結合部の材料の機械的特性に基づくことを理解するであろう。
【0022】
該第2コーティング314は約5から25μmの間の厚さを有してもよい。或る実施例では、該第1コーティング312は10から20μmの間の厚さ値を有してもよい。第1コーティング312は、コーティング厚さが制御されるスプレイ法、刷毛塗り法、浸漬法、又は当該技術で公知の他の何等かの方法により楔形ねじに付けられてもよい。同様に、第2コーティング314は、一旦第1コーティング312が充分に硬化及び/又は乾燥されると、コーティング厚さが制御されるスプレイ法、刷毛塗り法、浸漬法、又は当該技術で公知の他の何等かの方法により、該楔形ねじに付けられてもよい。
【0023】
今、図4を参照すると、本開示の代わりの実施例の固体潤滑剤コーティング310(図2)の拡大図が示される。本開示の或る実施例では、図3で示される実施例の第1コーティング312及び第2コーティング314が1つの固体コーティング316に組み合わされてもよい。1実施例では、該組み合わせ固体コーティング316は、図4に示す様な、中に混合された固体潤滑剤粒子の分散を有する乾燥腐食抑制コーティングの均一層であってもよい。固体潤滑剤は二硫化モリブデン(MoS)、グラファイト、二硫化タングステン、窒化ホウ素及びポリテトラフルオロエチレン(“PTFE”)を含むが、それらに限定されない。当業者は楔形ねじへの該コーティングの付着及び接合の前に、該乾燥腐食抑制コーティングを固体潤滑剤粒子と組み合わせることを熟知しているであろう。
【0024】
該組み合わされた乾燥腐食抑制コーティング316の厚さは約15から35μmの間にあってもよい。或る実施例では、乾燥腐食抑制コーティング312は20から30μmの間の厚さ値を有してもよい。固体潤滑剤粒子の分散を有する乾燥腐食抑制コーティングの
層316は、コーティング厚さが制御されるスプレイ法、刷毛塗り法、浸漬法、又は当該技術で公知の他の何等かの方法により付けられてもよい。固体潤滑剤コーティングの追加的な論議は両者がテナリスコネクション(Tenaris Connections)に譲り渡され、それら全体が引用によりここに組み入れられた特許文献7及び8で見出される。
【0025】
固体潤滑剤コーティングは周囲温度のみならず高い温度でも有効であってもよい。固体潤滑剤コーティングは遙かに高い温度(例えば、200℃−350℃)にも耐えることが出来て、破壊しない。かくして、高い温度で粘性を失い、該ねじ山コンパウンドの流動性への耐性を実質的に減じるグリースベースのねじ山コンパウンドと異なり、シール能力は高い温度でも保持される。ここで開示される実施例の固体潤滑剤は周囲温度のみならず高い温度の範囲に亘って動作するよう配合される。
【0026】
ここで開示される実施例の固体潤滑剤コーティングは多くの利点を提供する。特に、該結合部は、次の様に、現在使われるグリースベース(すなわち、流動する)のねじ潤滑剤より改良されたシール特性を経験した。第1に、該固体潤滑剤コーティングは、時間が経っても、或いはグリースにとってシール能力と、破壊トルクへの耐性と、を低下させる結合部負荷が掛かっても、該ねじ山を通って流れ続けることはない。第2に、該固体潤滑剤コーティングは、グリースにとってシール能力を減じるか、失いさえする高い温度でも、分解したり、粘性を失うことはない。最後に、該固体潤滑剤コーティングは、1つ又は両部材上に付けられた時、該結合部の多数回の組立及び分解時に引き起こされる欠陥又は少々の損傷を覆う(例えば、充たし込む)能力を有する。
【0027】
加えて、本開示の実施例は楔形ねじに、ドープ捕らえ込みによるパイプ膠着の可能性を取り除く固体潤滑剤を提供し、該固体潤滑剤が持つ流動性への耐性により次の滲出停止を提供する。更に、出願人は、ここの実施例で開示された固体潤滑剤コーティングが、楔形ねじの構造及び組み立てに典型的に付随する契合ねじ山面間の狭い許容誤差に影響すること無く楔形ねじで使われてもよいことを見出した。最後に、該ねじ山面上へより均一なコーティングを付けるために、手による流動性パイプドープコンパウンドの刷毛塗りと反対に、ここで開示した1つ以上の実施例の固体潤滑剤コーティングが、楔形ねじ面上への固体潤滑剤コーティングの制御された塗布により精密に付けられてもよい。
【0028】
更に、ここで開示された結合部は組立時増加したトルクに耐えることが出来る。時には、結合部は推薦されるより高いトルクに組み立てられるかも知れない。この様であるから、固体潤滑剤を有する楔形ねじ結合部は過剰な量のトルクに供された。例えば、約34.6cm(13.625インチ)楔形ねじ結合部はトルクで25%増しで組み立てられ、一方約11.43cm(4.50インチ)楔形ねじ結合部はトルクで50%増しで組み立てられた。更に、該結合部は多数回の組立及び分解に供された(例えば、12回の連続する組立及び分解動作)。結果はどの結合部もねじ部分の何等のかじりも変形も経験しないことを示した。かくして、固体潤滑剤コートされたねじ結合部は該結合部への損傷無しに高い組立トルクに耐えることが出来る。
【0029】
なお更に、該ねじ山上の固体潤滑剤コーティングはドリルストリングの合計ランニング時間を有利に減じる。第1に、ここに開示する実施例は組立時のピン及びボックス部材間の以前より僅かに多い誤整合を許容する。例えば、上に固体潤滑剤を有する約11.43cm(4.5インチ)の楔形ねじ結合部のピン及びボックス部材は組立に際し約15度まで誤整合された。該結合部の10回の完全な組立及び分解の後も、該ピン及びボックス部材の最初のねじ山上には最小からゼロまでのねじ山損傷しか観察されなかった。
【0030】
次ぎに、流動性パイプドープの代わりに固体潤滑剤コーティングが使われるので、流動
性パイプドープをねじ山から圧搾するよう組立時に普通使われる2重当たり手順は最早要しない。前述の様に、標準ねじ山ドープを利用する大外径楔形ねじは、完全な組立を保証するために第2のトルク印加を要するのが典型的である。楔形ねじの長さ及び形状のために、大きな直径の結合部は液圧ロックをしやすく、該結合部の長さに沿いねじ山ドープを押すために特別のトルクを要する。該結合部からのドープの除去と、ここに開示する実施例の固体潤滑剤コーティングによるその取り換えとで、液圧ロックは最早課題とはならない。
【0031】
加えて、固体潤滑剤がねじ山上に恒久的に接合されるので、ドープコンパウンドが組立前に付けられる必要はなく、かくして合計のランニング時間量を減じ、リグの生産性を高める。楔形ねじ上に恒久的に接合された固体潤滑剤で、ドープの付着は最早要せず、それにより該組立手順での組立ステップは除去される。合計で、リグの全体的生産性が高められる。例えば、リグの試行時、ここで開示する実施例の固体潤滑剤を上に有する約11.43cm(4.5インチ)楔形ねじ結合部を使って合計組立時間が研究された。組立時の平均毎分回転(“RPM”)は約19RPMであり、一方分解時の平均RPMは約21RPMであった。平均サイクル時間(すなわち、結合部を組立次いで分解する合計時間)は約2分であり、一方標準のドープされた結合部は4から5分の平均サイクル時間を有する。
【0032】
本開示が限られた数の実施例に関して説明されたが、本開示の利点を得た当業者は、他の実施例が工夫されても、該実施例がここに説明した開示の範囲から離れるものでないことを評価するであろう。従って、開示の範囲は附属する請求項によってのみ限定されるべきである。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応する雌の楔形ねじを有するボックス部材と係合するよう構成された雄の楔形ねじを有するピン部材と、そして
該雌及び雄の楔形ねじの少なくとも1つに恒久的に接合された固体潤滑剤コーティングと、を具備する管状結合部。
【請求項2】
該固体潤滑剤コーティングが、少なくとも2つの材料層を備える請求項1記載の管状結合部。
【請求項3】
該材料層の少なくとも1つが、亜鉛粒子を有するエポキシ樹脂製の乾燥腐食抑制コーティングを備える請求項2記載の管状結合部。
【請求項4】
該材料層の少なくとも1つが、乾燥潤滑剤コーティングを有する請求項2記載の管状結合部。
【請求項5】
該材料層の少なくとも1つが、約15から35μmの間の厚さを有する請求項2記載の管状結合部。
【請求項6】
該材料層の少なくとも1つが、約20から30μmの間の厚さを有する請求項2記載の管状結合部。
【請求項7】
該材料層の少なくとも1つが、約10から20μmの間の厚さを有する請求項2記載の管状結合部。
【請求項8】
該材料層の少なくとも1つが、無機バインダー内の二硫化モリブデン(MoS)と他の固体潤滑剤の混合物から成る請求項2記載の管状結合部。
【請求項9】
該固体潤滑剤コーティングの塗布の前に、該雌及び雄の楔形ねじの少なくとも1つに表面処理が適用される請求項1記載のねじパイプ結合部。
【請求項10】
該表面処理が、研磨材吹き付け及び燐酸塩コーティングから成る表面処理のグループから選択される請求項9記載のねじパイプ結合部。
【請求項11】
該固体潤滑剤コーティングが、約200℃から350℃の間の高い温度に耐えるよう構成される請求項1記載のねじパイプ結合部。
【請求項12】
該雌及び雄の楔形ねじが、略ダブテイル型の断面を有する請求項1記載の管状結合部。
【請求項13】
該雌及び雄の楔形ねじが、約2から6μmの間の平均面粗さを有する請求項1記載の管状結合部。
【請求項14】
該固体潤滑剤コーティングが、中に固体潤滑剤の粒子の分散を有する乾燥腐食抑制コーティングを備える請求項1記載の管状結合部。
【請求項15】
ボックス部材上の雌の楔形ねじと、ピン部材上の雄の楔形ねじと、を加工する過程であって、該雌及び雄の楔形ねじが対応するよう構成される、加工する過程と、そして
該雌及び雄の楔形ねじの少なくとも1つの上に固体潤滑剤コーティングを恒久的に接合する過程と、を具備する楔形ねじを有する結合部の製造方法。
【請求項16】
該恒久的に接合する過程が、該雌及び雄の楔形ねじの少なくとも1つの上に少なくとも2つの材料層コーティングを提供する過程を備える請求項15記載の方法。
【請求項17】
該材料層コーティングの少なくとも1つを恒久的に接合する過程の前に、該雌及び雄の楔形ねじの少なくとも1つの上に約2から6μmの間の平均面粗さを提供する過程を更に具備する請求項15記載の方法。
【請求項18】
研磨剤吹き付け及び燐酸塩コーティングから成るグループから選択された表面処理を使って、該雌及び雄の楔形ねじの少なくとも1つの上に約2から6μmの間の平均面粗さを提供する過程を更に具備する請求項17記載の方法。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2013−507596(P2013−507596A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534280(P2012−534280)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/052275
【国際公開番号】WO2011/046909
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(509170903)ハイドリル・カンパニー (2)
【Fターム(参考)】