説明

固体農薬活性化合物を含有するマイクロカプセル

【課題】固体農薬活性化合物を含有するマイクロカプセル、及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】固体農薬活性化合物が、一般式(I)で示される有機溶媒に懸濁されてなる液滴が樹脂で被覆されてなるマイクロカプセル;及び当該有機溶媒中で固体農薬活性化合物を湿式粉砕し、固体農薬活性化合物の懸濁液を調製し、次いで該懸濁液と水とを混合し、水中で該懸濁液の液滴を調製し、次いで該液滴の周囲に樹脂の被膜を形成し、マイクロカプセルを調製することを特徴とするマイクロカプセルを製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体農薬活性化合物を含有するマイクロカプセル及びその製造方法に関する。
従来、農薬活性化合物の徐放製剤として、マイクロカプセルを用いた製剤が好ましく利用されている。また、固体農薬活性成分が疎水性有機溶媒に懸濁されてなる液滴が樹脂で被覆されてなるマイクロカプセルも知られている(例えば、特許文献1)。
【0002】
【特許文献1】特開平8−99805号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
固体農薬活性化合物が疎水性有機溶媒に懸濁されてなる液滴が樹脂で被覆されてなるマイクロカプセルを界面重合法等の通常の方法で製造する際には、固体農薬活性化合物が疎水性有機溶媒中に懸濁させてなる懸濁液を水と混合して、水中にてマイクロカプセルの内核となる該懸濁液の液滴を調製し、該液滴の周囲に樹脂の被覆を形成する。しかしながら固体農薬活性化合物の水溶性が高い場合等、該液滴の調製時に固体農薬活性化合物が水相に移動してしまい、固体農薬活性化合物を含有するマイクロカプセルを製造することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、固体農薬活性化合物を含有するマイクロカプセルについて鋭意検討し、本発明に至った。
【0005】
即ち、本発明は、以下のものである。
[発明1]
固体農薬活性化合物が、一般式(I)

〔式中、Xは-CH2-CH2-又は-CH=CH-を表し、R1及びR2はC1−C4アルキル基を表す。〕
で示される有機溶媒に懸濁させてなる液滴が樹脂で被覆されてなるマイクロカプセル。
[発明2]
一般式(I)で示される有機溶媒がO−アセチルリシノレイン酸メチルである発明1に記載されたマイクロカプセル。
[発明3]
樹脂がポリウレタン樹脂又はポリウレア樹脂である発明1又は2に記載されたマイクロカプセル。
[発明4]
マイクロカプセルの体積中位径が5〜50μmの範囲である発明1〜3のいずれかに記載されたマイクロカプセル。
[発明5]
固体農薬活性化合物が水溶解度が100mg/L以上の固体農薬活性化合物である発明1〜4のいずれかに記載されたマイクロカプセル。
[発明6]
固体農薬活性化合物がネオニコチノイド化合物である発明1〜5のいずれかに記載されたマイクロカプセル。
[発明7]
固体農薬活性化合物がニテンピラム、クロチアニジン又はプロシミドンである発明1〜4のいずれかに記載されたマイクロカプセル。
[発明8]
発明1〜7のいずれかに記載されたマイクロカプセルを含有する水性懸濁組成物。
[発明9]
(1)一般式(I)

〔式中、Xは-CH2-CH2-又は-CH=CH-を表し、R1及びR2はC1−C4アルキル基を表す。〕
で示される有機溶媒の存在下で固体農薬活性化合物を湿式粉砕し、固体農薬活性化合物の懸濁液を調製する工程、
(2)該懸濁液と水とを混合し、水中で該懸濁液の液滴を調製する工程、及び
(3)該液滴の周囲に樹脂の被膜を形成する工程
を有することを特徴とするマイクロカプセルを製造する方法。
【0006】
[発明10]
固体農薬活性化合物を含有する液滴が樹脂で被覆されてなるマイクロカプセルを含有する水性懸濁組成物であり、
該固体農薬活性化合物を含有する液滴が、固体農薬活性化合物を一般式(I)

〔式中、Xは-CH2-CH2-又は-CH=CH-を表し、R1及びR2はC1−C4アルキル基を表す。〕
で示される有機溶媒に懸濁させてなることを特徴とする水性懸濁組成物。
[発明11]
樹脂がポリウレタン樹脂又はポリウレア樹脂である発明10に記載された水性懸濁組成物。
[発明12]
マイクロカプセルの体積中位径が5〜50μmの範囲である発明10又は11に記載された水性懸濁組成物。
[発明13]
固体農薬活性化合物の水溶解度が100mg/L以上である発明10〜12のいずれかに記載された水性懸濁組成物。
[発明14]
一般式(I)で示される有機溶媒がO−アセチルリシノレイン酸メチルである発明10〜13のいずれかに記載された水性懸濁組成物。
[発明15]
(1)一般式(I)

〔式中、Xは-CH2-CH2-又は-CH=CH-を表し、R1及びR2はC1−C4アルキル基を表す。〕
で示される有機溶媒の存在下で固体農薬活性化合物を湿式粉砕し、固体農薬活性化合物の懸濁液を調製する工程、
(2)該懸濁液と水とを混合し、水中で該懸濁液の液滴を調製する工程、及び
(3)該液滴の周囲に樹脂の被膜を形成し、マイクロカプセルを調製する工程
を有することを特徴とするマイクロカプセルを含有する水性懸濁組成物を製造する方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の固体農薬活性化合物を含有するマイクロカプセルは、固体農薬活性化合物の水溶性が高い場合でも製造することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明における固体農薬活性化合物(以下、本活性化合物と記す。)は有機溶媒中に懸濁させて、固体粒子として存在させるものである。そのような本活性化合物は通常、融点が15℃以上、好ましくは融点が50℃以上の化合物であり、更にテルピネオール、ジヒドロ テルピネオール、酢酸テルピネル及び酢酸ジヒドロ テルピネルからなる群より選ばれる有機溶媒に対する溶解度が好ましくは5重量%以下である化合物である。
本発明において、農薬活性化合物とは、農作物(樹木及び農林産物を含む。)を害する薗、ウイルス、線虫、ダニ、昆虫、ネズミ、その他の動植物に対する防除効力を有する化合物のみならず、農作物の生理機能の活性又は抑制効力を有する化合物、ハエ、蚊、ゴキブリ等の衛生害虫に対する防除効力を有する化合物、シロアリ、キクイムシ等の木質材害虫に対する防除効力を有する化合物等をも含む。用いることのできる本活性化合物としては、例えば、殺虫化合物、殺菌化合物、除草化合物、昆虫成長制御化合物、植物成長制御化合物等を挙げることができ、例えば次に示す化合物を具体的に挙げることができる。
【0009】
殺虫化合物としては、プロポキサー、イソプロカルブ、キシリルカルブ、メトルカルブ、XMC、カルバリル、ピリミカルブ、カルボフラン、メソミル、フェノキシカルブ、アラニカルブ、メトキサジアゾン等のカーバメート系化合物;アセフェート、フェントエート、バミドチオン、トリクロルホン、モノクロトホス、テトラクロルビンホス、ジメチルビンホス、ホサロン、クロルピリホス、クロルピリホスメチル、ピリダフェンチオン、キナルホス、メチダチオン、メタミドホス、ジメトエート、フェルモチオン、アジンホスエチル、アジンホスメチル、サリチオン等の有機リン系化合物;ジフルベンズロン、クロルフルアズロン、ルフェヌロン、ヘキサフルムロン、フルフェノクスロン、フルシクロクスロン、シロマジン、ジアフェンチウロン、ヘキシチアゾクス、ノヴァルロン、テフルベンズロン、トリフルムロン、4−クロロ−2−(2−クロロ−2−メチルプロピル)−5−(6−ヨード−3−ピリジルメトキシ)ピリダジン−3(2H)−オン、1−(2,6−ジフルオロベンゾイル)−3−[2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル]ウレア、1−(2,6−ジフルオロベンゾイル)−3−[2−フルオロ−4−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)フェニル]ウレア、2−tert−ブチルイミノ−3−イソプロピル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,3,5−チアジアゾン−4−オン、1−(2,6−ジフルオロベンゾイル)−3−[2−フルオロ−4−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]ウレア等のウレア系化合物;イミダクロプリド、ニテンピラム、アセタミプリド、クロチアニジン、チアメトキサム、ジノテフラン、チアクロプリド等のネオニコチノイド系化合物;カルタップ、ブプロフェジン、チオシクラム、ベンスルタップ、フェノキシカルブ、フェナザキン、フェンピロキシメート、ピリダベン、リプロキシフェン、ヒドラメチルノン、チオジカルブ、クロルフェナピル、フェンプロキシメート、ピメトロジン、ピリミジフェン、テブフェノジド、テブフェンピラド、トリアザメート、インドキサカーブ、スルフルラミド、ミルベメクチン、アベルメクチン、パラジクロロベンゼン等を挙げることができる。
【0010】
殺菌化合物としては、ベノミル、カルベンダジム、チアベンダゾール、チオファネートメチル等のベンズイミダゾール系化合物;ジエトフェンカルブ等のフェニルカーバメート系化合物;プロシミドン、イプロジオン、ビンクロゾリン等のジカルボキシイミド系化合物;ジニコナゾール、プロペナゾール、エポキシコナゾール、テブコナゾール、ジフェノコナゾール、シプロコナゾール、フルシラゾール、トリアジメフォン等のアゾール系化合物;メタラキシル等のアシルアラニン系化合物;フラメトピル、メプロニル、フルトラニル、トリフルザミド等のカルボキシアミド系化合物;トルクロホスメチル、フォセチルアルミニウム、ピラゾホス等の有機リン系化合物;ピリメサニル、メパニピリム、シプロジニル等のアニリノピリミジン系化合物;フルジオキソニル、フェンピクロニル等のシアノピロール系化合物;クロロタロニル、マンゼブ、キャプタン、フォルペット、トリシクラゾール、ピロキロン、プロベナゾール、フサライド、シモキサニル、ジメトモルフ、ファモキサドン、オキソリニック酸、フルアジナム、フェリムゾン、ジクロシメット、クロベンチアゾン、イソバレジオン、テトラクロオロイソフタロニトリル、チオフタルイミドオキシビスフェノキシアルシン、3−アイオド−2−プロピルブチルカーバメイト等を挙げることができる。
【0011】
除草化合物としては、アトラジン、メトリブジン等のトリアジン系化合物;フルオメツロン、イソプロチュロン等のウレア系化合物;ブロモキシニル、アイオキシニル等のヒドロキシベンゾニトリル系化合物;ペンディメサリン、トリフルラリン等の2、6―ジニトロアニリン系化合物;2,4−D、ジカンバ、フルロキシピル、メコプロップ等のアリロキシアルカノイック酸系化合物;ベンスルフロンメチル、メツルフロンメチル、ニコスルフロン、プリミスルフロンメチル、シクロスルファムロン等のスルホニルウレア系化合物;イマザピル、イマザキン、イマゼタピル等のイミダゾリノン系化合物;サルフェントラゾン、パラコート、フルメツラム、トリフルスルフロンメチル、フェノキサプロップ−p−エチル、シハロホップブチル、ジフルフェニカン、ノルフルラゾン、イソキサフルトール、グルフォシネートアンムニウム塩、グリフォセート、ベンタゾン、ベンチオカーブ、メフェナセット、プロパニル、フルチアミド、フルミクロラックペンチル、フルミオキサジン等を挙げることができる。
【0012】
昆虫成長制御化合物としてはジフルベンズロン、クロルフルアズロン、ルフェヌロン、ヘキサフルムロン、フルフェノクスロン、フルシクロクスロン、シロマジン、ジアフェンチウロン、ヘキシチアゾクス、ノヴァルロン、テフルベンズロン、トリフルムロン、1−(2,6−ジフルオロベンゾイル)−3−[2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル]ウレア、1−(2,6−ジフルオロベンゾイル)−3−[2−フルオロ−4−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)フェニル]ウレア、1−(2,6−ジフルオロベンゾイル)−3−[2−フルオロ−4−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]ウレア等のベンゾイルウレア化合物、ピリプロキシフェンなどを挙げることができる。
植物成長調節化合物としては、マレイックヒドラジド、クロルメカット、エテフォン、ジベレリン、メピカットクロライド、チジアズロン、イナベンファイド、パクロブトラゾール 、ウニコナゾール等を挙げることができる。昆虫忌避剤としては、1S,3R,4R,6R−カラン−3、4−ジオール、ジプロピル 2,5−ピリジンジカルボキシレート等を挙げることができる。
【0013】
本活性化合物が、一般式(I)で示される有機溶媒中で懸濁されて、固体粒子として該有機溶媒中に分散されるものであれば、水溶性の高い(例えば、水溶解度が100mg/L以上)本活性化合物であってもマイクロカプセル化することが可能である。
【0014】
本発明において、上記の本活性化合物は一般式(I)で示される有機溶媒(以下、本疎水性有機溶媒と記す。)中に懸濁される。
一般式(I)において、C1−C4アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
本疎水性有機溶媒は、リシノレイン酸又は12−ヒドロキシステアリン酸のカルボキシル基部位でアルコールと縮合し、更に水酸基部位で脂肪酸と縮合させることにより製造することができる。具体的には、例えば
O−アセチルリシノレイン酸メチル〔CH3(CH2)5CH(OCOCH3)CH2CH=CH(CH2)7CO2CH3〕、
O−アセチルリシノレイン酸エチル〔CH3(CH2)5CH(OCOCH3)CH2CH=CH(CH2)7CO2CH2CH3〕、
O−アセチルリシノレイン酸ブチル〔CH3(CH2)5CH(OCOCH3)CH2CH=CH(CH2)7CO2(CH2)3CH3〕、
12−アセトキシステアリン酸メチル〔CH3(CH2)5CH(OCOCH3)(CH2)10CO2CH3〕、
12−アセトキシステアリン酸ブチル〔CH3(CH2)5CH(OCOCH3)(CH2)10CO2(CH2)3CH3
が挙げられる。
【0015】
本疎水性有機溶媒は、本活性化合物の固体粒子の懸濁状態を乱さない範囲にて、他の有機溶媒を混合して用いてもよい。その他の有機溶媒としては、例えばトリメチルペンタン等の脂肪族炭化水素、フェニルキシリルエタン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン等の芳香族炭化水素、2−エチルヘキシルエーテル等のエーテル、マシン油等の鉱物油、綿実油等の植物油が挙げられる。その他の有機溶媒を混合して用いる場合は、液滴を形成する有機溶媒の全量100重量%に対して、本疎水性有機溶媒の量が50重量%以上、好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上とする。
【0016】
本発明において、本疎水性有機溶媒中に懸濁している本活性化合物の固体粒子の粒子径は通常、体積中位径として通常10μm以下、好ましくは1〜5μmの範囲であり、好ましくは10μm以上の粒径の粒子の割合が累積体積として10%以下である。
体積中位径とは、ミー散乱理論に基づくレーザー光回折散乱法により測定される多数の粒子の画像を解析することにより算出される値であり、具体的な測定機としてはマスターサイザー2000(マルバーン社製品名)が挙げられる。体積中位径(Volume Median Diameter=VMD)とは、この値より小さい粒子の体積合計とこの値より大きい粒子の体積合計が、全体の体積合計の各々50%づつである値を意味する。
本疎水性有機溶媒100重量%に対して、本活性化合物の量は通常5〜40重量%の割合、好ましくは10〜30重量%の割合である。
【0017】
本発明において、本活性化合物を本疎水性有機溶媒に懸濁させてなる液滴(以下、本懸濁液滴と記す。)の粒子径は、本発明のマイクロカプセルの粒子径とほぼ同じである。本懸濁液滴及び本発明のマイクロカプセルの粒径は、体積中位径として通常1〜80μm、好ましくは5〜50μmの範囲である。
【0018】
本発明において、マイクロカプセルの被膜を形成する樹脂としては、例えばポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホナート樹脂、ポリスルホンアミド樹脂、アミノプラスト樹脂、尿素ホルマリン樹脂及びメラミンホルマリン樹脂が挙げられる。好ましくは、ポリウレタン樹脂及びポリウレア樹脂が挙げられる。
また、本発明において、マイクロカプセルの被膜を形成する樹脂がポリウレタン樹脂又はポリウレア樹脂である場合、マイクロカプセルの保存安定性、特に高温時の保存安定性が良好である。
本発明において、マイクロカプセルの被膜を形成する樹脂の量は、マイクロカプセル全体の量100重量%に対して、通常5〜30重量%の範囲である。
【0019】
界面重合法にて樹脂の被膜を形成する場合は、樹脂を形成する2種類の原料のうちの油溶性の原料を、本活性化合物を懸濁させてなる本疎水性有機溶媒の懸濁液中に溶解させておき、一方で樹脂を形成する2種類の原料のうちの水溶性の原料を、該懸濁液を分散させる水中に溶解させておいた後、該懸濁液を水中で分散させ、本懸濁液滴と水との界面にて当該2種類の原料の重合反応を行わせて、被膜を形成させる。被膜の膜厚は、本懸濁液滴の粒径と被膜を構成する樹脂の量より、計算することができる。
【0020】
本発明のマイクロカプセルの被膜として好ましく用いられるポリウレタン樹脂又はポリウレア樹脂は、通常、ポリイソシアネート化合物と、ポリアルコール化合物又はポリアミン化合物とを、反応させることにより得られる樹脂である。
ポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナートとトリメチロールプロパンとの付加体、ヘキサメチレンジイソシアナート3分子のビウレット縮合物、トリレンジイソシアナートとトリメチロールプロパンとの付加体、トリレンジイソシアナートのイソシアヌレート縮合物、ヘキサメチレンジイソシアナートのイソシアヌレート縮合物、イソホロンジイソシアナートのイソシアヌレート縮合物、ヘキサメチレンジイソシアナートの一方のイソシアナート部が2分子のトリレンジイソシアナートと共にイソシアヌレート体を構成し他方のイソシアナート部が2分子の他のヘキサメチレンジイソシアナートと共にイソシアヌレート体を構成するイソシアナートプレポリマー、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナートが挙げられるが、トリレンジイソシアナートとトリメチロールプロパンとの付加体トリレンジイソシアナートのイソシアヌレート縮合物、ヘキサメチレンジイソシアナートのイソシアヌレート縮合物、イソホロンジイソシアナートのイソシアヌレート縮合物の使用が好ましい。
ポリアルコール化合物としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、シクロプロピレングリコールが挙げられ、ポリアミン化合物としては、例えばエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンが挙げられる。
本発明のマイクロカプセルを含有する水性懸濁組成物は、本発明のマイクロカプセルが媒体である水に分散されてなる組成物であり、本発明のマイクロカプセルの全量100重量%に対して分散媒体である水の量は好ましくは80重量%以上、より好ましくは80〜200重量%である。この水には、必要に応じて、増粘剤、凍結防止剤、防腐剤、比重調節剤等の添加剤が含有していてもよい。
【0021】
次に、本発明のマイクロカプセル及びそれを含有する水性懸濁組成物の製造方法(以下、本製造法と記す。)について、説明する。
本製造法は大きく分けて、次の3つの工程よりなる。第1工程は本疎水性有機溶媒の存在下で本活性化合物の固体を湿式粉砕し、本活性化合物の懸濁液を調整する工程である。第2工程は前工程で得られた本活性化合物の懸濁液と水とを混合し、水中で本懸濁液滴を調整する工程である。第3工程は前工程で得られた本懸濁液滴の周囲に樹脂の被膜を形成させる工程である。
【0022】
第1工程において、本活性化合物の湿式粉砕は例えば、ビーズミル、ボールミル、ロッドミル等の公知の粉砕機を用いることができ、具体的にはアトライター(三井三池化工機製)、ダイノミル(WILLY A. BACHOFEN AG. MASHINENFABRIK社製)、コロイドミル(特殊機化工業製)、パールミル(芦沢鉄工製)が挙げられる。本疎水性有機溶媒に、本活性化合物及び粉砕用のビーズ等を加え、前記の粉砕機を用いて、本活性化合物が所定の粒径になるまで粉砕を行う。
本疎水性有機溶媒の存在下に本活性化合物を湿式粉砕すると、本活性化合物の固体粒子が本疎水性有機溶媒に均一に分散して、また粉砕後の粒子同士が凝集することが殆どなく、湿式粉砕時の懸濁液の粘度もあまり高くならない。この為、本工程における粉砕機に対する動力負荷も小さく、製造が容易である。
被膜を形成する樹脂がポリウレタン樹脂又はポリウレア樹脂である場合は、第1工程にて得られた懸濁液にポリイソシアネート化合物を予め添加しておく。
第1工程で得られた本活性化合物が本疎水性有機溶媒に懸濁されてなる懸濁液(以下、本懸濁液と記す。)は、速やかに次工程にて用いられることが好ましい。
【0023】
第2工程において、本懸濁液と水とを混合して、水中で本懸濁液滴を調製するには、プロペラ攪拌機、タービン攪拌機、高速せん断攪拌機等の公知の攪拌機を用いることができる。具体的にはT.Kホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)、クレアミックス(エム・テクニック株式会社製)、ポリトロンホモジナイザー、メガトロンホモジナイザー(KINEMATICA)、スープラトン(月島機械株式会社製)等の攪拌機が挙げられる。本懸濁液を水に加えて、本懸濁液滴が所定の粒径になるまで前記の攪拌機を用いて攪拌を行う。
本懸濁液を分散させる水の量は通常、本懸濁液100重量%に対して、好ましくは80重量%以上、より好ましくは80〜200重量%の範囲である。本懸濁液を分散させる水は好ましくは、脱イオン水が用いられ、また必要に応じて、増粘剤、凍結防止剤、防腐剤、比重調節剤等の添加剤が添加されていてもよい。
用いられる増粘剤としては、ザンタンガム、ラムザンガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、ウェラントガム等の天然多糖類、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成高分子、カルボキシメチルセルロース等の半合成高分子、アルミニウムマグネシウムシリケート、スメクタイト、ベントナイト、ヘクトライト、乾式シリカ等の鉱物質粉末、アルミナゾルなどが挙げられる。凍結防止剤としては、プロピレングリコールなどが挙げられる。防腐剤としては、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、サリチル酸誘導体などが挙げられる。比重調節剤としては、硫酸ナトリウム等の水溶性塩、尿素等の水溶性化合物などが挙げられる。
本懸濁液は粘度が低く、本懸濁液と水とを上記の攪拌機を用いて混合した場合に、比較的容易に水中で分散されて、本懸濁液滴を形成する。分散時に強力な攪拌が不要であり、本工程を実施するにおいて、設備的な制約が少ない。
本懸濁液滴が分散されてなる分散液(以下、本分散液と記す。)において、本活性化合物は固体粒子として本疎水性有機溶媒中でしっかりと保持される為に、本活性化合物の固体粒子が分散媒である水中へ移動することがほとんどなく、水溶性の高い本活性化合物を用いた場合であっても、本懸濁液滴を調製することが可能である。尚、マイクロカプセルの製造において、有効成分のマイクロカプセル化率は、使用した有効成分の量と、分散媒中の有効成分の量から、容易に算出することができる。
被膜を形成する樹脂がポリウレタン樹脂である場合は、ポリアルコール化合物を、本懸濁液を分散させる水に予め加えておくか、第2工程で本分散液を調製した後に本分散液に加える。被膜を形成する樹脂がポリウレア樹脂である場合は、ポリアミン化合物の塩を、本懸濁液を分散させる水に予め加えておくか、第2工程で本分散液を調製した後に本分散液に加える。
本分散液は、速やかに次工程にて用いられることが好ましい。
【0024】
第3工程において、本分散液中の本懸濁液滴の周囲に樹脂の被覆を形成させる方法としては特に限定されるものではなく、界面重合法やIn-situ重合法等の通常のマイクロカプセル化法を用いることができる。界面重合法においては、具体的には重合反応が進行する温度に本分散液を加熱するか、樹脂を形成する一方の原料を本分散液に添加するか、或いは樹脂を形成する一方の原料を活性化(例えばpHの調整)することにより行う。
被膜を形成する樹脂がポリウレタン樹脂である場合は、本分散液を攪拌下に通常40〜80℃に加熱し、0.5〜48時間程度保持して、本懸濁液滴の周囲にポリウレタン樹脂の被膜を形成することができる。被膜を形成する樹脂がポリウレア樹脂である場合は、本分散液の液性を中性〜弱アルカリ性に調整して、通常0〜50℃で0.5〜48時間程度保持して、本懸濁液滴の周囲にポリウレア樹脂の被膜を形成することができる。
このようにして得られるマイクロカプセルを含有する水性懸濁組成物において、本活性化合物の殆どは固体粒子としてマイクロカプセル中に存在しており、マイクロカプセルの被膜外の水中に溶解又は懸濁している本活性化合物の量は、本活性化合物の全量に比して少ない。
得られた本発明のマイクロカプセルを含有する水性懸濁組成物は、遠心分離、濾過、スプレードライ等により粉末状製剤を製造する原料として使用することもできる。また、上記の製造方法にて得られたマイクロカプセルの水懸濁状組成物に、更に増粘剤、凍結防止剤、防腐剤、比重調節剤、水等を添加して使用することもできる。
本発明のマイクロカプセルを含有する水性懸濁組成物における本活性化合物の含有量は、通常全体100重量%に対して0.1〜30重量%である。
【0025】
本活性化合物が殺虫剤の有効成分である場合、本発明のマイクロカプセルを含有する製剤を、害虫又は害虫の生息場所に対して、本活性化合物の量で0.1〜1000g/1000m2程度、好ましくは1〜100g/1000m2程度の割合で散布することにより施用される。
【実施例】
【0026】
以下、製造例、試験例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
尚、実施例にて使用したネオニコチノイド殺虫化合物であるニテンピラム(nitempyram;(E)−N−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−エチル−N’−メチル−2−ニトロビニリデンジアミン)は融点が82.0℃、水溶解度が>590g/L(pH7.0、20℃)の化合物であり、クロチアニジン(clothianidin;(E)−1−(2−クロロー1,3−チアゾールー5−イルメチル)−3−メチルー2−ニトログアニジン)は融点が176.8℃、水溶解度が0.3g/L(20℃)の化合物であり、
ジカルボキシイミド殺菌化合物であるプロシミドン(procymidone;N−3,5−ジクロロフェニル)−1,2−ジメチルシクロプロパン−1,2−ジカルボキシミド)は融点が166-166.5℃、水溶解度が4.5mg/L(25℃)の化合物である。
【0027】
製造例1
プロシミドン200g及びO−アセチルリシノレイン酸メチル(リックサイザー C-101、伊藤製油社製、含量95.5%)800gを混合し、混合物を高速せん断攪拌機(ポリトロンホモジナイザー、KINEMATICA AG社製)を用いて約10分間粗粉砕した。得られた混合物を、ビーズ(1.25mmのジルコニア)1120gを充填したダイノミル(ベッセルサイズ600ml、WILLY A.BACHOFEN AG. MASHINENFABRIK社製)を用いて、供給量3L/hr、周速10m/secの運転条件にて、更に湿式粉砕を行った。湿式粉砕後のプロシミドンの固体粒子の体積中位径は2.6μmであった。プロシミドンの固体粒子は溶剤中にてほぼ均一に懸濁しており、凝集はほとんど認められなかった。また湿式粉砕時の懸濁液の粘度は2050mPa・s(ブルックフィールド粘度計、ローターNo.3、6rpm)であった。
得られた懸濁液25gに、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンとの付加体(スミジュールL−75、住化バイエルウレタン社製)2.42gを加えたものを、エチレングリコール1.4g及びアラビアガム(アラビコールSS、三栄薬品貿易社製)3.29gを溶解させた脱イオン水39.2gに加え、ホモジナイザー(特殊機化社製)を用いて、7000rpmの運転条件にて、5分間攪拌した。得られた分散液の粘度も2200mPa・s(ブルックフィールド粘度計・L型ローター・6rpm)であった。
該分散液を、60℃に加熱し、24時間攪拌して、油滴の周囲にポリウレタン被膜を形成させ、プロシミドンの固体粒子を含有するマイクロカプセルのスラリー1を得た。
この時得られたマイクロカプセルの体積平均粒子径(マルバーン社マスターサイザー2000)は19.5μmであった。
【0028】
製造例2
ニテンピラム200g及びO−アセチルリシノレイン酸メチル(リックサイザー C-101、伊藤製油社製、含量95.5%)800gを混合し、混合物を高速せん断攪拌機(ポリトロンホモジナイザー、KINEMATICA AG社製)を用いて約10分間粗粉砕した。得られた混合物を、ビーズ(1.25mmのジルコニア)1120gを充填したダイノミル(ベッセルサイズ600ml、WILLY A. BACHOFEN AG. MASHINENFABRIK社製)を用いて、供給量3L/hr、周速10m/secの運転条件にて、更に湿式粉砕を行った。また湿式粉砕時の懸濁液の粘度は2150mPa・s(ブルックフィールド粘度計、ローターNo.3、6rpm)であった。
得られた懸濁液25gに、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンとの付加体(スミジュールL−75、住化バイエルウレタン社製)2.42gを加えたものを、エチレングリコール1.4g及びアラビアガム(アラビコールSS、三栄薬品貿易社製)3.29gを溶解させた脱イオン水39.2gに加え、ホモジナイザー(特殊機化社製)を用いて、1000rpmの運転条件にて、5分間攪拌した。
該分散液を、60℃に加熱し、24時間攪拌して、油滴の周囲にポリウレタン被膜を形成させ、ニテンピラムの固体粒子を含有するマイクロカプセルのスラリー2を得た。
この時得られたマイクロカプセルの体積平均粒子径(マルバーン社マスターサイザー2000)は21.3μmであった。
【0029】
製造例3
クロチアニジン200gとO−アセチルリシノレイン酸メチル(リックサイザーC−101、伊藤製油社製、含量95.5%)800gとを混合し、混合物を高速せん断攪拌機(ポリトロンホモジナイザー、KINEMATICA AG社製)を用いて約10分間粗粉砕した。得られた混合物を、ビーズ(1.25mmのジルコニア)1120gを充填したダイノミル(ベッセルサイズ600mL、WILLY A. BACHOFEN AG. MASHINENFABRIK社製)を用いて、供給量3L/hr、周速10m/secの条件にて、更に湿式粉砕を行った。湿式粉砕後のクロチアニジン粒子の体積中位径は2.6μmであった。クロチアニジン粒子は溶剤中にてほぼ均一に懸濁しており、凝集はほとんど認められなかった。また湿式粉砕時の懸濁液の粘度は2080mPa・s(ブルックフィールド粘度計、ローターNo.3、6rpm)であった。
得られた懸濁液25gに、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンとの付加体(スミジュールL−75、住化バイエルウレタン社製)2.42gを加えたものを、エチレングリコール1.4g及びアラビアガム(アラビコールSS、三栄薬品貿易社製)3.29gを溶解させた脱イオン水39.2gに加え、ホモジナイザー(特殊機化社製)を用いて、7000rpmの運転条件にて、5分間攪拌した。得られた分散液の粘度も2200mPa・s(ブルックフィールド粘度計、ローターNo.2、6rpm)であった。
得られた分散液を60℃に加熱し、24時間攪拌して、クロチアニジンのマイクロカプセルを含有する水性懸濁組成物(以下、水性懸濁組成物3と記す。)を得た。
この時得られたマイクロカプセルの体積平均粒子径(マルバーン社マスターサイザー2000)は21.0μmであった。
【0030】
製造例4
クロチアニジン244.2gとO−アセチルリシノレイン酸メチル(リックサイザーC−101、伊藤製油社製、含量95.5%)755.6gとを混合し、混合物を高速せん断攪拌機(ポリトロンホモジナイザー、KINEMATICA AG社製)を用いて約10分間粗粉砕した。得られた混合物を、ビーズ(1.25mmのジルコニア)1120gを充填したダイノミル(ベッセルサイズ600mL、WILLY A. BACHOFEN AG. MASHINENFABRIK社製)を用いて、供給量3L/hr、周速10m/secの条件にて、更に湿式粉砕を行った。湿式粉砕後のクロチアニジン粒子の体積中位径は2.7μmであった。クロチアニジン粒子は溶剤中にてほぼ均一に懸濁しており、凝集はほとんど認められなかった。また湿式粉砕時の懸濁液の粘度は2100mPa・s(ブルックフィールド粘度計、ローターNo.2、6rpm)であった。
得られた懸濁液30.7gに、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンとの付加体(スミジュール L−75、住化バイエルウレタン社製)6.62gを加えたものを、エチレングリコール3.82g及びアラビアガム(アラビコールSS、三栄薬品貿易社製)3.87gを溶解させた脱イオン水44.6gに加え、ホモジナイザー(特殊機化社製)を用いて、1000rpmの条件にて、5分間攪拌した。
得られた分散液を60℃に加熱し、24時間攪拌して、クロチアニジンのマイクロカプセルを含有する水性懸濁組成物(以下、水性懸濁組成物4と記す。)を得た。
この時得られたマイクロカプセルの体積平均粒子径(マルバーン社マスターサイザー2000)は18.2μmであった。
【0031】
製造例5
クロチアニジン301.2gとO−アセチルリシノレイン酸メチル(リックサイザーC−101、伊藤製油社製、含量95.5%)698.8gとを混合し、混合物を高速せん断攪拌機(ポリトロンホモジナイザー、KINEMATICA AG社製)を用いて約10分間粗粉砕した。得られた混合物を、ビーズ(1.25mmのジルコニア)1120gを充填したダイノミル(ベッセルサイズ600mL、WILLY A. BACHOFEN AG. MASHINENFABRIK社製)を用いて、供給量3L/hr、周速10m/secの条件にて、更に湿式粉砕を行った。湿式粉砕後のクロチアニジン粒子の体積中位径は2.4μmであった。クロチアニジン粒子は溶剤中にてほぼ均一に懸濁しており、凝集はほとんど認められなかった。また湿式粉砕時の懸濁液の粘度は3900mPa・s(ブルックフィールド粘度計、ローターNo.2、6rpm)であった。
得られた懸濁液33.2gに、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンとの付加体(スミジュールL−75、住化バイエルウレタン社製)3.22gを加えたものを、エチレングリコール1.86g及びアラビアガム(アラビコールSS、三栄薬品貿易社製)4gを溶解させた脱イオン水48.14gに加え、ホモジナイザー(特殊機化社製)を用いて、1000rpmの条件にて、5分間攪拌した。
得られた分散液を60℃に加熱し、24時間攪拌して、クロチアニジンのマイクロカプセルを含有する水性懸濁組成物(以下、水性懸濁組成物5と記す。)を得た。
この時得られたマイクロカプセルの体積平均粒子径(マルバーン社マスターサイザー2000)は22.0μmであった。
【0032】
比較製造例1
製造例2において、O−アセチルリシノレイン酸メチル800gをアジピン酸イソデシル800gに代えた以外は製造例2と同様にして、マイクロカプセルを含有する水性懸濁組成物(以下、比較懸濁組成物と記す。)を得た。マイクロカプセルを光学顕微鏡にて観察したところ、マイクロカプセル内に固体粒子の存在が認められなかった。
【0033】
比較製造例2
製造例3において、O−アセチルリシノレイン酸メチル800gをアジピン酸イソデシル800gに代えた以外は製造例2と同様にして、マイクロカプセルを含有する水性懸濁組成物(以下、比較懸濁組成物2と記す。)を得た。しかしながら、マイクロカプセルを光学顕微鏡にて観察したところ、マイクロカプセル内に固体粒子の存在がほとんど認められなかった。
【0034】
試験例1(高温条件での保存安定性)
製造例1及び2で得られた水性懸濁組成物を、54℃で2週間保存した。この保存前後での水性懸濁組成物中のマイクロカプセルの状態について、下記の方法にて観察した。
水性懸濁組成物を各々20回づつよく振り混ぜた後、20μLを正確に秤量し、2mLの蒸留水にて希釈した。該希釈液の一滴を各々スライドグラス上にとり、光学顕微鏡(HIROX社製HI−SCOPE Advanced KH−3000)を用い、倍率350倍にて372μm×500μmの視野中に存在するマイクロカプセル数をカウントした。各サンプルにおけるマイクロカプセル数のカウントは、一枚のスライドグラス上のサンプルにつき、異なる視野3個所について実施し、その平均値をマイクロカプセル密度とした。結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

観察されるマイクロカプセルの状態に変化は無く、視野中のマイクロカプセル数についても特段の変化は認められなかった。
【0036】
試験例2(マイクロカプセル化率)
製造例2および比較製造例1で得られた水性懸濁組成物を各10gサンプリングし、10000回転で30分間遠心を行った(ハイマックSCR20BB、日立製作所製、使用遠心ローター:PRP−20)。その後、サンプル中の上清中のニテンピラムの含量を測定して、マイクロカプセルの膜外のニテンピラム量を求めて、マイクロカプセル中のニテンピラム量を算出した。結果を表2に示す。
【0037】
【表2】

【0038】
試験例3(マイクロカプセル化率)
製造例3、4、5及び比較製造例2で得られた水性懸濁組成物を各10gサンプリングし、10000回転で30分間遠心分離機にかけた(ハイマックSCR20BB、日立製作所製、使用遠心ローター:PRP−20)。その後、サンプルの上清中のクロチアニジンの含量を測定して、マイクロカプセルの膜外に存在するクロチアニジン量を求めて、マイクロカプセル中のクロチアニジン量を算出した。結果を表2に示す。
また、上記の水性懸濁組成物を54℃で2週間保管後の、マイクロカプセル中のクロチアニジン量についても測定した結果を合わせて表3に示す。
【0039】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のマイクロカプセルを含有する水性懸濁組成物は、徐放化された本活性化合物の製剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体農薬活性化合物が、一般式(I)

〔式中、Xは-CH2-CH2-又は-CH=CH-を表し、R1及びR2はC1−C4アルキル基を表す。〕
で示される有機溶媒に懸濁させてなる液滴が樹脂で被覆されてなるマイクロカプセル。
【請求項2】
一般式(I)で示される有機溶媒がO−アセチルリシノレイン酸メチルである請求項1に記載されたマイクロカプセル。
【請求項3】
樹脂がポリウレタン樹脂又はポリウレア樹脂である請求項1又は2に記載されたマイクロカプセル。
【請求項4】
マイクロカプセルの体積中位径が5〜50μmの範囲である請求項1〜3のいずれかに記載されたマイクロカプセル。
【請求項5】
固体農薬活性化合物が水溶解度が100mg/L以上の固体農薬活性化合物である請求項1〜4のいずれかに記載されたマイクロカプセル。
【請求項6】
固体農薬活性化合物がネオニコチノイド化合物である請求項1〜5のいずれかに記載されたマイクロカプセル。
【請求項7】
固体農薬活性化合物がニテンピラム、クロチアニジン又はプロシミドンである請求項1〜4のいずれかに記載されたマイクロカプセル。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載されたマイクロカプセルを含有する水性懸濁組成物。
【請求項9】
(1)一般式(I)

〔式中、Xは-CH2-CH2-又は-CH=CH-を表し、R1及びR2はC1−C4アルキル基を表す。〕
で示される有機溶媒の存在下で固体農薬活性化合物を湿式粉砕し、固体農薬活性化合物の懸濁液を調製する工程、
(2)該懸濁液と水とを混合し、水中で該懸濁液の液滴を調製する工程、及び
(3)該液滴の周囲に樹脂の被膜を形成する工程
を有することを特徴とするマイクロカプセルを製造する方法。

【公開番号】特開2007−186497(P2007−186497A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−323222(P2006−323222)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】