説明

固体酸化物型燃料電池利用の発電装置

【課題】 本発明は、ガス燃焼コンロの予混火炎が直接曝される固体酸化物型燃料電池セルにより発電し、小型、安全で、取り扱い簡単な発電装置を提供する。
【解決手段】 固体酸化物型燃料電池セルCは、固体酸化物基板と、一方面に形成されたカソード電極層と、反対側の面に形成されたアノード電極層とを有し、燃料電池セルは、ガス燃焼コンロのコンロ本体5中央部にあるバーナー6に対向するように、取付台9に固定されたリード線L1、L2で支持される。バーナーで生成された予混火炎が、アノード電極層を直接曝し、燃料リッチ状態とし、カソード電極層側は空気リッチ状態とする。リード線から、燃料電池としての出力が取出される。燃料電池セルは複数取り付けられても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物型燃料電池利用の発電装置に関し、特に、固体酸化物基板にカソード電極層とアノード電極層を形成し、密閉を必要としない簡単な構造による固体酸化物型燃料電池セルを備え、ガス燃焼コンロのバーナーで形成される予混火炎を直接曝すことにより発電でき、手軽で取り扱いが簡単な固体酸化物型燃料電池利用の発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から開発されている燃料電池には、種々の発電形式があるが、この中に、固体電解質を用いた形式の燃料電池がある。この固体電解質による燃料電池の一例として挙げると、イットリア(Y)が添加された安定化ジルコニアからなる焼成体を酸素イオン伝導型の固体酸化物基板として用いたものがある。この固体酸化物基板の一面にカソード電極層を、そして、その反対面にアノード電極層を形成し、このカソード電極層側に酸素又は酸素含有気体が供給され、さらに、アノード電極層には、メタン等の燃料ガスが供給されるようになっている。
【0003】
この燃料電池内では、カソード電極層に供給された酸素(O)が、カソード電極層と固体酸化物基板との境界で、酸素イオン(O2−)にイオン化され、この酸素イオンが、固体酸化物基板によってアノード電極層に伝導され、アノード電極層に供給された、例えば、メタン(CH)ガスと反応し、そこで、水(HO)、二酸化炭素(CO)、水素(H)、一酸化炭素(CO)が生成される。この反応において、酸素イオンが、電子を放出するため、カソード電極層とアノード電極層との間に電位差が生じる。そこで、カソード電極層とアノード電極層とにリード線を取り付ければ、アノード電極層の電子が、リード線を介してカソード電極層側に流れ、燃料電池として発電することになる。なお、この燃料電池の駆動温度は、約1000℃である。
【0004】
しかし、この形式の燃料電池では、カソード電極層側に、酸素又は酸素含有ガス供給チャンバーを、そして、アノード電極層側に、燃料ガス供給チャンバーを夫々分離したセパレート型チャンバーを用意しなければならず、しかも、高温下で、酸化性雰囲気と還元性雰囲気とに晒されるため、燃料電池セルとしての耐久性を向上することが困難であった。
【0005】
一方、固体酸化物基板の対向した面に、カソード電極層とアノード電極層とを設けて燃料電池セルを形成し、この燃料電池セルを、燃料ガス、例えば、メタンガスと、酸素ガスとが混合された混合燃料ガス中に置いて、カソード電極層とアノード電極層との間に起電力を発生させる形式の燃料電池が開発されている。この形式の燃料電池では、カソード電極層とアノード電極層との間に起電力を発生する原理は、上述したセパレート型チャンバー形式の燃料電池の場合と同様であるが、燃料電池セル全体を実質的に同一雰囲気にすることができるため、混合燃料ガスが供給されるシングル型チャンバーとすることができ、燃料電池セルの耐久性を向上できる。
【0006】
しかし、このシングル型チャンバーの燃料電池においても、約1000℃の高温下で駆動しなければならないので、混合燃料ガスの爆発の危険性がある。この危険性を回避するために、酸素濃度を発火限界よりも低い濃度にすると、メタン等の燃料の炭化が進み、電池性能が低下するという問題が生じた。そのため、混合燃料ガスの爆発を防止しつつ、燃料の炭化の進行を防止し得る酸素濃度の混合燃料ガスを使用できるシングル型チャンバーの燃料電池が開発されている。
【0007】
一方、以上に述べた燃料電池は、密封構造を有するチャンバー内に収納された燃料電池セルによって構成された形式のものであるが、固体酸化物型燃料電池セルを火炎中、或いは、その近傍に配置し、火炎の熱によって固体酸化物型燃料電池セルをその動作温度に保持させて、発電を行う装置が提案されている。
【0008】
この提案された発電装置の燃料電池セルは、ジルコニアによる固体酸化物基板から成る管体と、その管体の内側に形成された空気極であるカソード電極層と、管体の外側に形成された燃料極であるアノード電極層とから構成されている。この固体電解質による固体酸化物型燃料電池セルを、燃料ガスが供給される燃焼装置から発生する火炎の還元炎部分に、アノード電極層を曝した状態で設置している。この様に設置することにより、還元炎中に存在するラジカル成分等を燃料として利用でき、菅内部のカソード電極層には、対流又は拡散によって、空気が供給され、固体酸化物型燃料電池セルとして、発電が行われる。
【0009】
ところで、上述したシングル型チャンバーの燃料電池では、従来の固体酸化物型燃料電池のように、燃料と空気を厳粛に分離する必要がない代わりに、気密封止構造を採用せざるを得ない。そして、高温下で駆動できるように、複数の板状固体酸化物型燃料電池セルが耐熱性高電気伝導性を有するインターコネクト材を用いて積層接続され、起電力を上げていた。そのため、板状固体酸化物型燃料電池セルによるシングル型チャンバーの燃料電池は、大掛かりな構造となり、コストが嵩むという問題がある。
【0010】
また、このシングル型チャンバーの燃料電池の稼動に際しては、高温になるまで徐々に昇温して、固体電解質燃料電池セルの割れを防止しているので、起電するまでの時間が長く、手間がかかるものである。
【0011】
これに対して、既提案の管状の固体酸化物型燃料電池セルでは、火炎を直接利用する形態が採用されており、この形態の燃料電池は、固体電解質燃料電池セルを密封構造の容器に収容する必要がなく、開放型であるという特徴を持っている。そのため、この燃料電池では、起電時間が短縮でき、構造が簡単なので、燃料電池の小型軽量化、低コスト化に有利であるといえる。そして火炎を直接利用する点で、一般の燃焼装置や焼却装置等に組み込むことが可能となり、電力供給装置として利用することが期待されている。
【0012】
しかしながら、この形態の燃料電池では、管状の固体酸化物基板の外面にアノード電極層が形成されているので、主に、そのアノード電極層の下半分に火炎によるラジカル成分が供給されず、管状の固体酸化物基板の外面に形成されたアノード電極層全面を有効に利用することができない。そのため、発電効率が低いものであった。さらに、固体酸化物型燃料電池セルが、火炎で直接に、しかも偏って加熱されるため、急激な温度変化によってひび割れが発生しやすいという問題があった。
【0013】
そこで、燃料の燃焼による火炎を直接利用する形態の固体酸化物型燃料電池を採用し、火炎が、平板状の固体酸化物基板上に形成されたアノード電極層の全面を晒すようにして、耐久性の向上と発電効率の向上、小型化、低コスト化を図った簡便な電力供給手段としての固体酸化物型燃料電池による発電装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0014】
その提案された固体酸化物型燃料電池による発電装置が、図5に示されている。図5に示された発電装置に利用される固体酸化物型燃料電池セルCは、平板状で、円形又は矩形の固体酸化物基板1と、その基板の一方の面に形成された空気極であるカソード電極層2と、その一方の面と反対側の面に形成された燃料極であるアノード電極層3とを有している。カソード電極層2とアノード電極層3とが、固体酸化物基板1を介して対向配置されている。
【0015】
以上のように構成された固体酸化物型燃料電池セルCを用い、この燃料電池セルCのアノード電極層3を下側にして、燃料ガスが供給される燃焼装置4上に配置し、燃料による火炎fに曝して発電する発電装置とする。燃焼装置4には、火炎を伴って燃焼酸化する燃料が供給される。燃料としては、燐、硫黄、フッ素、塩素、及びこれらの化合物等でも良いが、排ガス処理が不要な有機物が好ましい。有機物燃料としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン等のガス類、ヘキサン、へプタン、オクタン等のガソリン系液体、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール、アセトン等のケトン、その他の有機溶剤各種、食用油、灯油、紙類、木材等が挙げられる。この中でも、特に、ガス類が好ましい。
【0016】
さらに、火炎は拡散炎でも予混火炎でも良いが、拡散炎は、炎が不安定であり、煤の発生によってアノード電極層の機能低下を招きやすいので、予混火炎の方が好適である。予混火炎は安定している上に、火炎サイズを調整しやすく、さらに燃料濃度を調整して、煤の発生を防止することができる。
【0017】
前記固体酸化物型燃料電池セルが平板状に形成されているので、燃焼装置4からの火炎fを固体酸化物型燃料電池セルCのアノード電極層3に均一にあてることができ、管状のものに比べて、ムラなく火炎fを当てることができる。さらに、アノード電極層3を火炎f側に向けて配置され、火炎中に存在する炭化水素、水素、ラジカル(OH、CH、C、OH、CH)などを酸化還元反応に基づく発電の燃料として利用しやすくなる。また、カソード電極層2が、酸素を含有する気体、例えば、空気中に露出されるので、カソード電極層2から酸素を利用しやすくなり、さらに、カソード電極層2に向かって酸素を含有する気体が吹きつけられると、より効率良く、カソード電極層側を酸素リッチ状態にすることができる。
【0018】
固体酸化物型燃料電池セルCで発電された電力は、カソード電極層2とアノード電極層3からそれぞれ引き出されたリード線L1、L2によって取り出される。リード線L1、L2としては、耐熱性のある白金製、或いは、白金を含む合金製のものが使用される。
【0019】
【特許文献1】特開2004−139936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
以上に説明したように、これまでに提案された固体酸化物型燃料電池利用による発電装置では、チャンバー型のものにあっては、固体酸化物型燃料電池セルを駆動温度まで昇温させる電気炉や、燃料ガスと酸素又は空気とを供給する供給装置などが必要であり、装置自体が複雑で、嵩張るものであったため、発電装置として、人が携帯することはできなかった。
【0021】
これに対して、提案されている直接火炎利用の固体酸化物型燃料電池セルによる発電装置では、燃料を燃焼して火炎を生成する燃焼装置を必要とするが、燃焼装置として、例えば、ローソク、ライターなどの火炎を利用できるため、小型、軽量で、コンパクトな発電装置を実現できる。しかしながら、この発電装置では、火炎を利用することから、簡便に発電させることができても、安全性に難点があり、さらには、拡散炎を利用するところから、火炎が安定しないなどの理由で、安定的発電に使用することが困難であった。
【0022】
そこで、本発明は、固体酸化物型燃料電池セルを利用して発電するとき、安定した燃料供給を行うことができるガス燃焼コンロのバーナーで形成される予混火炎を利用して、直接火炎に曝される固体酸化物型燃料電池利用による発電を実現し、小型、軽量で、しかも安全であり、取り扱いが簡単な固体酸化物型燃料電池利用の発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
以上の課題を解決するため、本発明の固体酸化物型燃料電池利用の発電装置では、固体酸化物基板と、該基板の一方の面に形成されたカソード電極層と、該一方の面と反対側の面に形成されたアノード電極層とを有する固体酸化物型燃料電池セルと、前記アノード電極層をガス燃焼コンロのバーナーで形成される予混火炎に直接曝して配置し、前記固体酸化物型燃料電池セルを支持する燃料電池取付台と、を備え、前記アノード電極層に、前記予混火炎の成分が供給され、前記カソード電極層には、空気が供給されることにより発電することとした。
【0024】
そして、前記カソード電極層と前記アノード電極層の一方又は双方に設けられた集電電極が、該電極層全面に拡がるメッシュ金属で形成されることとし、前記燃料電池取付台は、前記ガス燃焼コンロの本体上面に設けられ、前記固体酸化物型燃料電池セルを前記バーナーに対向させるようにした。
【0025】
さらに、前記燃料電池取付台は、前記固体酸化物型燃料電池セルを任意の傾斜角で自在に支持できるようにし、前記固体酸化物型燃料電池セルは、該燃料電池セルの電力取出用のリード線で前記燃料電池取付台に支持されることとした。
【0026】
複数の前記固体酸化物型燃料電池セルが前記バーナーに対向して配置されるようにし、該複数の固体酸化物型燃料電池セルは、直列、並列又は直並列に接続され、各固体酸化物型燃料電池セルの直列、並列又は直並列接続は、該固体酸化物型燃料電池セルのリード線に着脱自在な導電体で行われることとした。
【0027】
前記固体酸化物型燃料電池セルの上端が、前記ガス燃焼コンロに設けられる五徳の上面を超えないようにし、或いは、該固体酸化物型燃料電池セルの上端が、該ガス燃焼コンロに設けられる五徳の上面を超えるようにした。
【0028】
前記固体酸化物型燃料電池セルは、前記固体酸化物基板の一方の面に形成された複数のカソード層と、該固体酸化物基板の該一方の面と反対側の面に形成された複数のアノード層とを有し、該固体酸化物基板を介して対向する前記アノード層と前記カソード層とで複数の燃料電池セルが形成されることとした。
【0029】
また、本発明の固体酸化物型燃料電池利用発電装置では、前記固体酸化物型燃料電池セルは、前記燃料電池取付台に着脱自在に支持されることとした。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本発明による固体酸化物型燃料電池利用の発電装置では、固体酸化物基板と、カソード電極層と、アノード電極層とを有する固体酸化物型燃料電池セルと、前記アノード電極層をガス燃焼コンロのバーナーで形成される予混火炎に直接曝して配置し、前記固体酸化物型燃料電池セルを支持する燃料電池取付台とが備えられ、前記アノード電極層に、ガス燃焼コンロのバーナーで生成される予混火炎の成分が供給され、カソード電極層に空気が供給されて発電するようにした。そのため、ガス燃焼コンロのバーナーで生成される予混火炎は、バーナーの孔で定着して安定して生成され、且つ、安全に発生されるものであり、この予混火炎による熱で固体酸化物型燃料電池セルを駆動温度に簡単に維持することができ、また、燃料電池の燃料として、予混火炎に含まれるラジカル成分を安定的に供給することができる。
【0031】
また、ガス燃焼を行うバーナーを備えたコンロに、燃料電池取付台を用いて平板状の固体酸化物型燃料電池セルを組み込むことにより、発電装置を、小型、軽量、コンパクトに構成することができ、調理用のガス燃焼コンロとしての機能を損なうことなく発電でき、しかも、手軽な発電装置として使用することが可能となる。或いは、固体酸化物型燃料電池自体が赤熱されるので、セル面積を大きくすることにより、ガス燃焼コンロを燃料源とする発電装置として、安定した大きな発電出力を得られるだけでなく、発電し続けながら、暖房器具として使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
次に、本発明による固体酸化物型燃料電池利用の発電装置に係る実施形態について、図1乃至図4を参照しながら、説明する。ここで、本実施形態の発電装置に使用することができる固体酸化物型燃料電池セルについて、以下に説明する。
【0033】
本実施形態に使用される固体酸化物型燃料電池セルは、基本的には、図5に示された固体酸化物型燃料電池セルCと同様の構成であり、固体酸化物基板1、カソード電極層2及びアノード電極層3を有している。
【0034】
固体酸化物基板1は、例えば、矩形状の平板であり、カソード電極層2とアノード電極層3とが、固体酸化物基板1を介して対向するように、その平面のほぼ全面に形成されている。そして、カソード電極層2には、リード線L1が接続され、アノード電極層3には、リード線L2が接続されており、リード線L1とL2とで、燃料電池としての出力が取り出される。なお、固体酸化物基板1は、板状に形成されていればよく、矩形状に限られず、ガス燃焼コンロのバーナーから生成される予混火炎に曝される形状を有していればよく、例えば、円形状とすることができ、或いは、バーナーを取り囲むような形状であってもよい。
【0035】
固体酸化物基板1には、例えば、公知のものを採用でき、次に示す材料を使用できる。
a) YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、これらにCe、Al等をドープしたジルコニア系セラミックス
b) SDC(サマリアドープドセリア)、GDC(ガドリアドープドセリア)等のセリア系セラミックス
c) LSGM(ランタンガレート)、酸化ビスマス系セラミックス
【0036】
また、アノード電極層3には、例えば、公知のものを採用でき、次に示す材料を使用できる。
d) ニッケルと、イットリア安定化ジルコニア系、スカンジア安定化ジルコニア系、又は、セリア系(SDC、GDC、YDC等)セラミックとのサーメット
e) 導電性酸化物を主成分(50重量%以上99重量%以下)とする焼結体(導電性酸化物とは、例えば、リチウムが固溶された酸化ニッケル等である)
f) d)、e)に挙げたものに、白金族金属元素から成る金属、又は、その酸化物が1〜10重量%程度配合されたもの
等が挙げられ、この中でも、特にd)、e)が好ましい。
【0037】
また、e)の導電性酸化物を主成分とする焼結体は、優れた耐酸化性を有するのでアノード電極層の酸化に起因して発生する、アノード電極層の電極抵抗の上昇による発電効率の低下、或いは、発電不能、アノード電極層の固体酸化物基板からの剥離といった現象を防止できる。また、導電性酸化物としては、リチウムが固溶された酸化ニッケルが好適である。さらに、上記d)、e)に挙げたものに、白金族金属元素から成る金属、またはその酸化物を配合することにより、高い発電性能を得ることができる。
【0038】
カソード電極層2は、公知のものを採用でき、例えば、ストロンチウム(Sr)等の周期律表第3族元素が添加されたランタンのマンガン(例えば、ランタンストロンチウムマンガナイト)、ガリウム又はコバルト酸化化合物(例えば、ランタンストロンチウムコバルタイト)等が挙げられる。
【0039】
カソード電極層2とアノード電極層3とは、共に多孔質体に形成される。これらの電極層は、多孔質体の開気孔率を、20%以上、好ましくは、30〜70%、特に、40〜50%とすることが好ましい。本実施形態に使用される固体酸化物型燃料電池セルでは、多孔質体に形成されたカソード電極層2とアノード電極層3とすることにより、カソード電極層2では、空気中の酸素を固体酸化物基板1との境界面の全面に供給しやすくし、また、アノード電極層3では、燃料を固体酸化物基板1との境界面の全面に供給しやすくしている。
【0040】
固体酸化物基板1も多孔質に形成することもできる。固体酸化物基板は、緻密質に形成された場合には、耐熱衝撃性が低く、急激な温度変化によって、ひび割れが生じやすい。また、一般に、固体酸化物基板は、アノード電極層及びカソード電極層よりも厚く形成されるので、固体酸化物基板のひび割れが引き金となり、固体酸化物型燃料電池セルの全体にひび割れが発生し、バラバラになることがある。
【0041】
固体酸化物基板1が多孔質に形成されることで、発電時に、急激に温度変化を与えても、さらに、温度差の激しいヒートサイクルに対しても、ひび割れ等がなくなり、耐熱衝撃性が向上する。また、多孔質であっても、その気孔率が10%未満のときは、耐熱衝撃性に著しい向上が認められなかったが、10%以上であると良好な耐熱衝撃性が見られ、20%以上であるとより好適である。これは、固体酸化物基板が多孔質であると、加熱による熱膨張が空隙部分で緩和されるためと考えられる。
【0042】
固体酸化物型燃料電池セルCは、例えば、次のように製造される。先ず、固体酸化物基板の材料粉末を所定配合割合で混合し、平板状に成形する。その後、これを焼成して焼結することで固体酸化物層としての基板が作られる。このとき、気孔形成剤等の材料粉末の種類や配合割合、焼成温度、焼成時間、予備焼成等の焼成条件等を調整することによって、様々な気孔率の固体酸化物基板を作ることができる。こうして得られた固体酸化物層としての基板の一面側に、カソード電極層となる形状でペーストを、他面側にアノード電極層となる形状でペーストを夫々塗布した後に、焼成を行うことにより、一枚の固体酸化物型燃料電池セルを製造することができる。
【0043】
また、固体酸化物型燃料電池セルは、さらに耐久性を向上することができる。この耐久性の向上手法としては、燃料電池セルにおけるカソード電極層とアノード電極層とに、メッシュ状金属を埋設、或いは、固着させるものである。そして、このメッシュ状金属を、固体酸化物型燃料電池セルの集電電極とし、集電効率をも向上させることができる。埋設する方法としては、各層の材料(ペースト)を固体酸化物基板に塗布し、メッシュ状金属をその塗布された材料中に埋め込んだ後に焼成を行う。固着する方法としては、メッシュ状金属を各層の材料によって完全に埋め込むことなく、接着させて焼結しても良い。
【0044】
メッシュ状金属としては、これを埋設する、或いは、固着するカソード電極層、アノード電極層との熱膨張係数の調和や、耐熱性に優れたものが好適である。具体的には、白金や、白金を含む合金から成る金属でメッシュ状にしたものが挙げられる。SUS300番代(304、316等)、或いは、SUS400番代(430等)のステンレスでも良く、これらはコストの点で有利である。
【0045】
また、メッシュ状金属を用いる代わりに、ワイヤ状金属をアノード電極層、カソード電極層に埋設或いは固着させてもよい。ワイヤ状金属は、メッシュ状の金属と同様の金属から成り、その数や配設形状等に限定はない。メッシュ状金属やワイヤ状金属を、アノード電極層やカソード電極層に埋設、或いは、固着することにより、熱履歴等によってひび割れした固体酸化物基板がバラバラになって崩れないように補強されることになり、さらに、メッシュ状金属やワイヤ状金属は、ひび割れした部分を電気的に接続している。
【0046】
なお、これまで、固体酸化物基板を多孔質性にした場合を説明したが、燃料電池の固体酸化物基板に、緻密構造のものを使用した場合には、特に、熱履歴によるひび割れに対処するのに、カソード電極層及びアノード電極層にメッシュ状金属又はワイヤ状金属を埋め込み、或いは、埋設することは、有効な手段となる。
【0047】
また、固体酸化物型燃料電池セルには、ガス燃焼コンロの点火による急激な加熱によってもひび割れが発生するが、カソード電極層及びアノード電極層に、適宜の密度でメッシュ状金属又はワイヤ状金属を埋め込み、或いは、埋設すると、急激に加熱されたときに、燃料電池セルの面的な熱伝導が均一となり、熱伝導不均一によるひび割れを抑制することができる。
【0048】
メッシュ状金属或いはワイヤ状金属は、アノード電極層とカソード電極層の両方に配設しても良いし、どちらか一方に配設しても良い。また、メッシュ状金属とワイヤ状金属を組み合わせて配設しても良い。熱履歴によってひび割れが生じたときには、少なくともアノード電極層に、メッシュ状金属又はワイヤ状金属が埋設されていれば、その発電能力を低下させることがなく、発電を継続することができる。固体酸化物型燃料電池セルの発電能力は、アノード電極層の燃料極としての有効面積に負うところが大きいので、少なくとも、アノード電極層にメッシュ状金属、或いは、ワイヤ状金属を配設すると良い。
【0049】
このようにして形成された固体酸化物型燃料電池セルが、本実施形態の固体酸化物型燃料電池発電装置の燃料電池セルCとして使用される。本実施形態では、この固体酸化物型燃料電池セルに形成されたアノード電極層3に供給される燃料として、ガス燃焼コンロに設けられたバーナーで発生した予混火炎を直接に利用することとした。そして、その予混火炎で発生する熱の温度が、図5に示した直接火炎利用の場合と同様であるので、この温度は、固体酸化物型燃料電池セルが作動可能な温度になっている。そのため、ガス燃焼コンロにおける燃焼が、固体酸化物型燃料電池セルに対する燃料供給源として、さらには、駆動熱源として適したものとなっている。
【0050】
ここで、以下に、本実施形態の発電装置における固体酸化物型燃料電池セルの燃料供給源となるガス燃焼コンロについて説明する。
【0051】
本実施形態に燃料源として使用されるガス燃焼コンロは、従来から知られている、例えば、調理用のものでよい。この様なガス燃焼コンロには、燃料のガスを燃焼するためのガスバーナーが備えられている。このガスバーナーでは、そのガスバーナー本体の端部に設けられた小さな噴射口から、燃料ガスが高速で噴出される。このときに生じる圧力低下を利用して空気が吸い込まれるように構成されている。そこで、ガスバーナー本体の内部で、燃料ガスと空気とが混合される。
【0052】
ガスバーナー本体内で混合された混合気体は、ガスバーナー本体の他端部に設けられている燃焼用の開口部である複数のバーナー孔に導かれる。この複数のバーナー孔は、調理用のガス燃焼コンロの場合には、通常、円環状に配列されている。本実施形態の発電装置の燃料源として使用するガス燃焼コンロには、複数のバーナー孔が円環状に配列されたものだけでなく、複数のバーナー孔が直線的に配列されたものも使用することができる。
【0053】
複数のバーナー孔から噴出する混合気に着火すると、各バーナー孔において、燃料が燃焼し、予混火炎が生成される。この予混火炎では、バーナー孔から噴出し上方に向かう混合気の流れと、この混合気の燃焼による火炎の進行とが釣り合った状態にあり、火炎面が形成され、火炎がバーナー孔に定着し、安定した燃焼が起きている。
【0054】
通常のガス燃焼コンロには、ガスの燃焼量が調整できるようになっているが、燃料と空気の混合割合によっては、不完全燃焼を起す可能性があるため、この調整に伴って空気量も調整される機構が備えられているので、安定した予混火炎が生成される。そのため、本実施形態の発電装置に利用される固体酸化物型燃料電池セルの燃料として安定供給することができ、安定した発電量を得るのに都合がよい。
【0055】
また、家庭用のガス燃焼コンロに使用される燃料には、都市ガスとして、液化天然ガス(LNG)、石油分解ガス、液化石油ガス(LPG)が使用されている。これらの都市ガスが燃焼されて予混火炎が生成されると、上述したように、予混火炎には、未燃焼成分や、ラジカル成分が多く含まれているので、これらは、本実施形態の発電装置に利用される固体酸化物型燃料電池セルの燃料として活用できる点でも都合がよい。
【0056】
以上に説明したガス燃焼コンロでは、混合気がバーナーで燃焼され、定着して安定した予混火炎が生成されるので、調理用の熱源として使用できるだけでなく、さらに、燃料の燃焼によるラジカル成分が含まれ、その火炎を直接的に利用して、本実施形態の発電装置に使用される上述した固体酸化物型燃料電池セルに対して、その発電駆動に必要な熱源及び燃料源にでき、直接火炎型の燃料電池発電装置を構成することができる。
【0057】
以上のようなガス燃焼コンロのバーナーで生成される予混火炎に直接曝されるように、上述した平板状の固体酸化物型燃料電池セルを配置することにより、直接火炎型の固体酸化物型燃料電池利用の発電装置を構成し、安定して発電し続けることができ、その発電電力を簡単に取り出せるようにした。次に、ガス燃焼コンロのバーナーで生成される予混火炎を利用した固体酸化物型燃料電池利用の発電装置の実施形態を、第1実施形態として、ガス燃焼コンロが調理中のときに発電できるように構成する場合と、第2実施形態として、ガス燃焼コンロを他の用途、例えば、暖房器具として使用しながら発電できるように構成する場合とに分けて、以下に説明する。
【0058】
〔第1実施形態〕
固体酸化物型燃料電池セルに燃料を供給でき、しかも、その作動温度を維持する熱源として、ガス燃焼コンロのバーナーを利用した直接火炎型の固体酸化物型燃料電池利用発電装置の第1実施形態が、図1に示されている。図1の発電装置では、通常に使用されているガス燃焼コンロを利用している。図1では、1個口のガス燃焼コンロにおける右側半分の側面が示されている。
【0059】
そのガス燃焼コンロは、コンロ本体5、バーナー6、五徳脚7とで構成され、コンロ本体5の中央部に、バーナー6が配置されている。そして、複数の五徳脚7が、バーナー6を囲むように、等間隔で設けられている。バーナー6の上部周縁には、複数のバーナー孔が開けられており、コンロ本体内に収納されているバーナー本体内で生成された混合気が、各バーナー孔から噴出され、着火されると、上述したように、予混火炎Fが生成される。なお、図1では、五徳脚7の上に、調理器8が載置され、調理中であることを示している。
【0060】
図1では、ガス燃焼コンロを使用した固体酸化物型燃料電池利用の発電装置とするため、図5に示された固体酸化物型燃料電池セルと同様の構成を有する固体酸化物型燃料電池セルCが、バーナー6に対向した近傍に位置するように支持されている。これにより、バーナー6で生成された予混火炎が、固体酸化物型燃料電池セルCを直接曝す。
【0061】
ここで、固体酸化物型燃料電池セルCの支持には、燃料電池セルに取り付けられたリード線L1、L2を使用することとし、このリード線L1、L2の太さは、燃料電池セルCを定位置に支持できる強度となるように選択される。また、燃料電池セルCの支持高さは、燃料電池セルの上端が調理器8の底面に接触、又は、当たらないように、五徳脚7の高さ以下としておく。この様な高さにしておくことにより、ガス燃焼コンロで調理中でも、燃料電池セルCが邪魔になることなく、安定した発電をさせることができる。
【0062】
さらに、固体酸化物型燃料電池セルCの支持に関しては、燃料電池セルCをバーナー6に対して定位置に保持するため、コンロ本体5の上面に燃料電池取付台9を設ける。この燃料電池取付台9は、電気絶縁性であり、耐熱性の材料で形成され、リード線L1、L2を、例えば、埋設によって保持するものである。ここで、固体酸化物型燃料電池セルCは、アノード電極層3をバーナー6側になるように、燃料電池取付台9で支持される。
【0063】
リード線L1、L2は、コンロ本体5から離れた所に置かれている電力供給先に接続される。なお、燃料電池取付台9は、コンロ本体5に着脱自在に設けられると、発電が不要なとき、或いは、コンロ掃除などのときに、便利である。また、通常に市販されているガス燃焼コンロであっても、発電装置の取り付けが簡単となる。
【0064】
以上のように構成された固体酸化物型燃料電池利用の発電装置によると、ガス燃焼コンロが加熱調理機能を発揮しつつ、発生する熱により、固体酸化物型燃料電池セルCを駆動温度に維持し、アノード電極層3には、バーナー孔で生成された予混火炎が直接に供給され、つまり、その火炎に含まれるラジカル成分又は未燃焼成分が供給される。
【0065】
そして、固体酸化物型燃料電池セルCのカソード電極層2は、バーナー6と反対側にあり、酸素が十分に供給される。ここで、固体酸化物型燃料電池セルCが平板状に形成されていることから、アノード電極層の燃料リッチ状態と、カソード電極層の酸素リッチ状態を簡単に形成できる。カソード電極層2には、リードL1が接続され、アノード電極層3には、リード線L2が接続されているので、このリード線L1、L2によって、外部に発電電力が取り出される。このリード線L1、L2は、金属製であるので、容易に曲げることができるため、アノード電極層の燃料リッチ状態が最適なものとなるように、固体酸化物型燃料電池セルCの傾斜角度を簡単に調整することができる。
【0066】
以上に説明した固体酸化物型燃料電池利用の発電装置では、固体酸化物型燃料電池セルCの熱源及び燃料源として使用したバーナー6は、複数のバーナー孔が円環状に配列された例であったが、各バーナー孔は、円環状に限られず、直線状に配列された場合であっても、固体酸化物型燃料電池セルCは、上述の燃料電池取付台9を使用すれば、円環状配列の場合と同様に使用される。
【0067】
これまでに説明した第1実施形態による固体酸化物型燃料電池利用の発電装置では、固体酸化物型燃料電池セルCが1個である場合についてであった。そこで、複数の固体酸化物型燃料電池セルを使用した第1実施形態の変形例について、図2を参照して、以下に説明する。
【0068】
図2では、ガス燃焼コンロの構成について、図示を省略し、発電装置の構成を示している。図1に示した発電装置では、固体酸化物型燃料電池セルCの1個が示されていたが、図2の発電装置では、例えば、3個の固体酸化物型燃料電池セルC1乃至C3を備えた場合が示されている。ここで、燃料電池取付台9は、ガス燃焼コンロのバーナー6を取り囲むように、円環状に形成され、その径は、バーナー6から適宜離間するように選定されている。なお、図2では、3個の固体酸化物型燃料電池セルの場合であるが、さらに多くの固体酸化物型燃料電池セルを、バーナー6の周囲に配列することもできる。
【0069】
燃料電池取付台9は、コンロ本体に固定しておくこともできるが、通常のガス燃焼コンロの五徳脚7は、取り外しが自在に構成されているので、燃料電池取付台9も、コンロ本体上に載置するだけにしてもよい。そして、この変形例における燃料電池取付台9も、電気絶縁性であり、かつ耐熱性の材料で形成される。図2では、固体酸化物型燃料電池セルC1乃至C3のリード線L11乃至L32は、リード線のそれぞれが個別に燃料電池取付台9に取り付けられている。
【0070】
図2に示した例では、リード線L12とL21とが、そして、リード線L22とL31とが、着脱自在な導電体W1、W2、例えば、金属製クリップなどで電気的に接続されることにより、固体酸化物型燃料電池セルC1乃至C3が直列接続され、高い起電電圧を得るようにされている。或いは、図示されていないが、リード線L11と、L21と、L31とを接続し、そして、リード線L12と、L22と、L32とを接続して、燃料電池セル全体を並列接続とし、出力電流を多く取り出せるようにすることもできる。さらには、燃料電池セル全体を直並列接続とすることもできる。
【0071】
図2の発電装置では、各リード線が燃料電池取付台9から突き出た状態で取り付けられているが、相互にリード線を接続する部分については、燃料電池取付台9の内部に埋設し、発電装置として電力を取り出すリード線のみを突き出させるようにしてもよい。この様な構成とすることにより、不要な突起物をなくすことができ、取り扱いを簡便なものとすることができる。
【0072】
以上に説明した変形例による固体酸化物型燃料電池利用の発電装置では、固体酸化物型燃料電池セルC1乃至C3のいずれのカソード電極層2も、バーナー6と反対側にあり、酸素が十分に供給される。ここで、固体酸化物型燃料電池セルC1乃至C3いずれもが平板状に形成されていることから、アノード電極層の燃料リッチ状態と、カソード電極層の酸素リッチ状態を簡単に形成でき、安定して、かつ簡便に発電することができる。
【0073】
〔第2実施形態〕
以上の第1実施形態は、ガス燃焼コンロが調理中のときであっても発電できるように構成した場合であったが、第2実施形態の発電装置は、ガス燃焼コンロを他の用途、例えば、単に発電装置の燃料源とし、或いは、暖房器具として使用しながら、発電できるように構成する場合であり、図3を参照して、以下に説明する。
【0074】
図3に示された固体酸化物型燃料電池利用の発電装置も、図1に示されたガス燃焼コンロと同様のものを使用し、固体酸化物型燃料電池セルの燃料として、バーナーから生成される予混火炎を利用する点では、第1実施形態の発電装置と同様である。そこで、図3には、図1と同様の部分には、同様の符号が付されている。使用されるガス燃焼コンロも、コンロ本体5、バーナー6、そして、五徳脚7を備えている。
【0075】
第2実施形態の発電装置が、第1実施形態の発電装置と異なるところは、第2実施形態の発電装置に使用される固体酸化物型燃料電池セルの大きさの点である。第1実施形態では、ガス燃焼コンロ本来の調理加熱機能を損なうことなく、発電させる必要から、固体酸化物型燃料電池セルの高さが制限されていたが、第2実施形態では、調理中に発電することを要しないため、バーナー6からの予混火炎を有効に利用できるように、五徳脚7の高さを越えて、固体酸化物型燃料電池セルの大きさを拡げている。
【0076】
図3に示されるように、固体酸化物型燃料電池セルC1、C2が、燃料電池取付台9に取り付けられたリード線L1、L2で支持され、各燃料電池セルのアノード電極層をバーナー6側に向けて配置される。そして、固体酸化物型燃料電池セルC1、C2は、バーナー6からの予混火炎に直接曝されると、燃料電池セル自体が加熱されて赤熱し、赤外線輻射体となる。そこで、固体酸化物型燃料電池セルから放出される赤外線を暖房用に使用することができる。なお、第2実施形態の発電装置では、第1実施形態の場合より、固体酸化物型燃料電池セルの発電有効面積を大きくしているので、ガス燃焼コンロを、単に発電装置の燃料源とすることもできる。例えば、緊急時、野外活動時などにおける予備電源に適している。
【0077】
固体酸化物型燃料電池セルの大きさは、バーナー6から生成される予混火炎によって、アノード電極層の全面が曝されるように選定され、さらに、バーナー6の側に傾斜させるとよい。図3の例では、2個の固体酸化物型燃料電池セルC1、C2を使用したが、さらに多い固体酸化物型燃料電池セルを配列することができる。この場合には、燃料電池取付台9は、図2に示された円環状の取付台とすることができる。
【0078】
以上に説明した第2実施形態による固体酸化物型燃料電池利用の発電装置では、固体酸化物型燃料電池セルC1、C2のいずれのカソード電極層2も、バーナー6と反対側にあり、酸素が十分に供給される。ここで、固体酸化物型燃料電池セルC1、C2のいずれもが平板状に形成されていることから、アノード電極層の燃料リッチ状態と、カソード電極層の酸素リッチ状態を簡単に形成でき、安定して、かつ簡便に発電することができる。
【0079】
なお、第2実施形態の発電装置は、ガス燃焼コンロを調理中に使用することがないので、必ずしも、五徳脚7が、コンロ本体の上になくても良い。そこで、固体酸化物型燃料電池セルを、アノード電極層を内側にし、そして、カソード電極層を外側にした円錐台形状とし、この五徳脚7を取り外した上で、バーナー6を中央部にして、コンロ本体5に載置するようにしてもよい。
【0080】
図3に示された第2実施形態の発電装置に使用された固体酸化物型燃料電池セルC1、C2は、1枚の固体酸化物基板にカソード電極層とアノード電極層とが形成されたものであったが、図4に示されるように、1枚の固体酸化物基板に、複数の固体酸化物型燃料電池セルを形成することもでき、各固体酸化物型燃料電池セル同士の接続の仕方を工夫することによって、1個の固体酸化物型燃料電池セルでありながら、起電電圧を高め、或いは、出力電流の大きさを調整することができる。
【0081】
図4には、第2実施形態の変形例による固体酸化物型燃料電池セルの構成が、図3に示された固体酸化物型燃料電池セルC1を例にして示されている。図4(a)では、その固体酸化物型燃料電池の側面図が、図4(b)には、その固体酸化物型燃料電池の平面図が示されている。図4(a)及び(b)に示された変形例の固体酸化物型燃料電池は、図5に示されるような、火炎を直接利用する形態に適用できる。
【0082】
図4(a)及び(b)に示されるように、本実施形態の変形例による固体酸化物型燃料電池は、平板による電解質の固体酸化物基板1と、その片面に形成された複数、図4(a)及び(b)では、2つのカソード電極層21、22と、その反対面に形成された2つのアノード電極層31、32とからなり、カソード電極層21とアノード電極層31とで燃料電池セルC11が、そして、カソード電極層22とアノード電極層32とで燃料電池セルC12が形成されている。
【0083】
そして、カソード電極層21に、起電力取出し用のリード線L1が取り付けられ、アノード電極層32にも、起電力取出し用のリード線L2が取り付けられている。さらに、カソード電極層22とアノード電極層31とは、接続線Wで電気的に接続されている。リード線及び接続線としては、耐熱性のある白金製、或いは、白金を含む合金製のものが使用される。
【0084】
そこで、固体酸化物型燃料電池セルC11、C12のアノード電極層31、32の全面には、バーナー6からの予混火炎が燃料として供給される。図4の例では、燃料電池セルC11とC12とは、直列接続されているので、リード線L1とリード線L2との間には、燃料電池セルC11と燃料電池セルC12の起電力が足し合わされた大きさの出力が得られる。
【0085】
なお、以上に説明した第1及び第2実施形態のいずれにおいても、固体酸化物型燃料電池セルのリード線が燃料電池取付台に固定的に取り付けられることにより、固体酸化物型燃料電池セルが支持される構成であった。本発明は、この構成に限られず、固体酸化物型燃料電池セルのリード線を燃料電池取付台に、受け金具などにより、着脱自在に装着できる構成とすることもできる。この着脱自在な装着構成にすると、燃料電池取付台は、コンロ本体に備えられたままでも、故障した燃料電池セルの交換、燃料電池セルの大小の交換、或いは、燃料電池セルの数の調整などを簡単に行うことができる。
【実施例1】
【0086】
次に、上述した第1実施形態の固体酸化物型燃料電池利用発電装置に係る実施例について、以下に説明する。ここでは、図2に示された発電装置の場合について、固体酸化物型燃料電池セルを製作し、ガス燃焼コンロを使用して発電実験を行った。
【0087】
先ず、固体酸化物基板には、固体電解質として、サマリアドープドセリア(SDC、Sm0.2Ce0.81.9セラミック)を用いた。グリーンシート法により、大気中において、1300℃で焼成し、厚さ200μm、径15mmのセラミック基板を作製した。次いで、この基板の一方の面に、サマリアストロンチウムコバルタイト(SSC、Sm0.2Sr0.5Ce0.8)とSDCの50重量%・50重量%混合物からなるペーストを径13mmに印刷し、そのペーストを乾燥させた。
【0088】
さらに、基板の他方の面に、リチウムを8mol%固溶した酸化ニッケルとSDCの60重量%・40重量%混合物に、5重量%の酸化ロジウムを添加したペーストを、径13mmに印刷し、それぞれの面にリード線となる白金ワイヤを溶接した白金メッシュを埋め込んだ。その後、大気中において、1200℃で焼成し、単体の固体酸化物型燃料電池セルを作製した。
【0089】
この様に作製した3個の固体酸化物型燃料電池セルのリード線を、多孔質アルミナ系セラミック製の燃料電池取付台に、アルミナ−シリカ系無機接着剤でそれぞれ固定した。そして、固体酸化物型燃料電池セルと反対側に突き出たそれぞれのリード線を、導電性クリップで互いに接続して、各燃料電池セルを直列接続し、これで、発電装置を作製した。
【0090】
そこで、この発電装置の各固体酸化物型燃料電池セルが、燃料ガスカートリッジを装填したガス燃焼コンロに設けられたバーナーの周囲に、五徳以内であり、バーナーの近傍で対向する位置に配置されるように、燃料電池取付台を載置した。その後、バーナーから噴出される混合気に着火し、生成された予混火炎で各固体酸化物型燃料電池セルを曝した。
【0091】
この予混火炎に対する固体酸化物型燃料電池セルの角度を適宜調整することにより、最適な暴露状態としたところ、1.8〜2.1V程度の開回路電圧が確認された。次に、水を収容したケトルを五徳上に載置し、着火後に、再度、予混火炎に対する燃料電池セルの角度を調整したところ、1.8V程度の開回路電圧を得ることが確認された。リード線の先端に、携帯用FM/AMラジオを接続したところ、FMモードで放送を受信でき、放送番組を聴くことができることが確認され、発電装置の連続作動を確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の固体酸化物型燃料電池利用発電装置がガス燃焼コンロに組み込まれた第1実施形態を説明する図である。
【図2】第1実施形態による固体酸化物型燃料電池利用発電装置の変形例を説明する図である。
【図3】本発明の固体酸化物型燃料電池利用発電装置がガス燃焼コンロに組み込まれた第2実施形態を説明する図である。
【図4】第2実施形態による固体酸化物型燃料電池利用発電装置の変形例を説明する図である。
【図5】固体酸化物型燃料電池を利用してガス燃焼火炎を燃料として発電する様子を説明する図である。
【符号の説明】
【0093】
5 コンロ本体
6 バーナー
7 五徳脚
8 調理器
9 燃料電池取付台
C、C1〜C3 固体酸化物型燃料電池
F 予混火炎
L1、L2、L11〜L32 リード線
W 接続線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物基板と、該基板の一方の面に形成されたカソード電極層と、該一方の面と反対側の面に形成されたアノード電極層とを有する固体酸化物型燃料電池セルと、
前記アノード電極層をガス燃焼コンロのバーナーで形成される予混火炎に直接曝して配置し、前記固体酸化物型燃料電池セルを支持する燃料電池取付台と、を備え、
前記アノード電極層に、前記予混火炎の成分が供給され、前記カソード電極層には、空気が供給されることにより発電する固体酸化物型燃料電池利用発電装置。
【請求項2】
前記カソード電極層と前記アノード電極層の一方又は双方に設けられた集電電極が、該電極層全面に拡がるメッシュ金属で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物型燃料電池利用発電装置。
【請求項3】
前記燃料電池取付台は、前記ガス燃焼コンロの本体上面に設けられ、前記固体酸化物型燃料電池セルを前記バーナーに対向させることを特徴とする請求項1又は2に記載の固体酸化物型燃料電池利用発電装置。
【請求項4】
前記燃料電池取付台は、前記固体酸化物型燃料電池セルを任意の傾斜角で自在に支持できることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の固体酸化物型燃料電池利用発電装置。
【請求項5】
前記固体酸化物型燃料電池セルは、該燃料電池セルの電力取出用のリード線で前記燃料電池取付台に支持されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の固体酸化物燃料利用電池発電装置。
【請求項6】
複数の前記固体酸化物型燃料電池セルが前記バーナーに対向して配置されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の固体酸化物型燃料電池発電装置。
【請求項7】
前記複数の固体酸化物型燃料電池セルは、直列、並列又は直並列に接続されることを特徴とする請求項6に記載の固体酸化物型燃料電池発電装置。
【請求項8】
前記各固体酸化物型燃料電池セルの直列、並列又は直並列接続は、該固体酸化物型燃料電池セルのリード線に着脱自在な導電体で行われることを特徴とする請求項7に記載の固体酸化物型燃料電池発電装置。
【請求項9】
前記固体酸化物型燃料電池セルの上端が、前記ガス燃焼コンロに設けられる五徳の上面を超えないことを特徴とする1乃至8のいずれか一項に記載の固体酸化物型燃料電池利用発電装置。
【請求項10】
前記固体酸化物型燃料電池セルの上端が、前記ガス燃焼コンロに設けられる五徳の上面を超えることを特徴とする1乃至8のいずれか一項に記載の固体酸化物型燃料電池利用発電装置。
【請求項11】
前記固体酸化物型燃料電池セルは、前記固体酸化物基板の一方の面に形成された複数のカソード層と、該固体酸化物基板の該一方の面と反対側の面に形成された複数のアノード層とを有し、該固体酸化物基板を介して対向する前記アノード層と前記カソード層とで複数の燃料電池セルが形成されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の固体酸化物型燃料電池利用発電装置。
【請求項12】
前記固体酸化物型燃料電池セルは、前記燃料電池取付台に着脱自在に支持されることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の固体酸化物燃料利用電池発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−26942(P2007−26942A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−208552(P2005−208552)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】