説明

固体酸化物形燃料電池

【課題】 量産性に優れた燃料電池スタックを提供することである。
【解決手段】 本発明の燃料電池セルは、筒状の燃料電池セルと、複数のセルを電気的に接続する集電部材とを備えた燃料電池スタックであって、セルと集電部材とを接着するための、導電性金属粒子と樹脂バインダーとからなるシート層を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の燃料電池セルを集電部材によって電気的に接続してなる燃料電池スタックおよび燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、固体電解質を燃料極と酸素極とで挟んで構成された燃料電池セルの複数を、金属製、あるいは合金製、あるいはセラミックス製の集電部材によって電気的に接続した燃料電池スタックを備えている。
【0003】
従来の燃料電池スタックでは、金属製の集電部材と燃料電池セルをエポキシ樹脂にニッケル粉末を充填した接着剤により接着する方法が用いられている。(例えば、特許文献1)
上記の方法では集電部材と燃料電池セルの組立て時の接合強度は確保できるものの、ペースト状であるため、接着剤を塗布する際や乾燥させる際に液ダレが発生する可能性がある。
また、接着剤を塗布する際には、集電部材を付けるところ以外に、塗布しないようにするため、マスキングが必要であり、スタックの製造工程が煩雑であった。
【特許文献1】特開2004−349262
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、量産性に優れた燃料電池スタックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため本発明の燃料電池は、筒状の燃料電池セルと、前記複数の燃料電池セルを電気的に接続する集電部材とを備えた燃料電池であって、前記セルと前記集電部材とを接着する、導電性金属粒子と樹脂バインダーとからなるシート層を備えたことを特徴とする。
【0006】
本発明の好ましい態様においては、前記導電性金属粒子がニッケルであることを特徴する。
【0007】
本発明の好ましい態様においては、前記粘着性樹脂バインダーが、アクリル系樹脂および/またはゴム系樹脂であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の燃料電池セルスタックでは、導電性金属粒子と樹脂バインダーとからなるシート層、すなわち流動性のない均一膜でセルと集電部材とを接着するので、ペーストのように、マスキングを行なうなどの工程が不要となり、作業性が向上し、量産性に優れた燃料電池スタックを提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下の図面を参照して本発明をより具体的に説明する。
図1には、本発明で用いる燃料電池セルに集電部材を貼り付けた概略図を示す。セル5は、筒状の空気極支持体1上に、電解質2、燃料極3が積層されている。さらに、セルの長軸方向に連続して、空気極支持体1から電気を取り出すためのインターコネクター4が形成されている。
【0010】
図2は、本発明で用いる集電部材の形状の一実施形態を説明する図である。
【0011】
図3は、本発明における燃料電池セルスタックの一実施形態を示す断面図である。4本のセル5は、インターコネクター4を同じ方向に向けて、長軸方向に並列に横方向に2本、縦方向に2本が配置されている。セル5同士は、粘着性導電シート6と集電部材7を用いて、図3の上下方向では電気的に直列に接続され、左右方向では電気的に並列に接続されている。
【0012】
粘着性導電シートは、導電性金属粒子と樹脂バインダーとからなる。このような構成とすることで、粘着性導電シートを数μm単位のばらつきの均一な膜厚にでき、焼き付けまたは発電による熱履歴に関係なく燃料電池セルと集電部材の接触面積を十分に確保できるため、セルと集電部材とを安定に接着することができる。
また、流動性のないシート状の接着部材とすることで、接着時の液ダレなどを起こすことなく短絡の心配もない。粘着性導電シートに含まれる常温で粘着性を有する樹脂バインダーとしては、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、或いはアクリル系樹脂とゴム系樹脂の混合物を好適に用いることができる。アクリル系樹脂やゴム系樹脂は、常温で粘着性を有し、さらに燃料電池の運転温度である700〜1000℃程度の温度下では水素、水蒸気等を含む還元ガスにより、分解、気化して除去される。
従って、スタック製造時は樹脂バインダーの粘着性によってセルと集電部材が接着されているセルスタックは、燃料電池の運転温度である700〜1000℃程度の熱履歴が加わった後には、シート中に含まれている導電性金属粒子でセルと集電部材とが接着された状態へと変化し、スタック全体として良好な電子伝導性を示すようになる。
【0013】
集電部材には、インコネル、ステンレス、ニッケルなどの耐熱金属材料、あるいは導電性セラミック材料などを好適に用いることができる。また、板材、メッシュ、フェルト、フォームなど適宜の形状のものを用いることができる。図2に示されるようなアコーディオン状に折り畳んだ形状にすることにより、優れた弾力性を得ることができ、燃料電池セルと集電部材との接続部の応力緩和を効果的にすることができる。
【0014】
粘着性導電シートに使用される導電性金属粒子としては、使用雰囲気下で安定で導電性がよい材料であれば使用可能である。例えば、円筒形燃料電池セルの外側電極が燃料極の場合に、粘着性導電シートは還元雰囲気に曝されるので、導電性金属粒子にはニッケルや銅などを用いることが好ましい。ニッケルや銅は比較的安価であり、コストダウンの面でも望ましい。導電性金属粒子の粒子径は特に限定されるものではないが、例えば、平均粒子径が0.1〜3.0μm程度のものを好適に用いることができる。
【0015】
本発明の燃料電池スタックの製造方法としては、例えば、バインダーと導電性金属粒子とを混合したスラリーをドクターブレード法などの適宜の方法でシート成形したものを所定の大きさに切断し、セル、あるいは集電部材に貼り付けた後に、セルと集電部材とを貼り合せていくことで作製することができる。
セルと集電部材との接続をシート状の成形体で行うので、ペーストや流動性を有する接着剤などを用いる場合に発生する液ダレがなく、スタックの製造が容易である。また、液ダレによるセルの燃料極と空気極との短絡を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明で用いる燃料電池セルに集電部材を貼り付けた概略図である。
【図2】本発明で用いる集電部材の形状を説明する図である。
【図3】本発明における燃料電池セルスタックの一実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1…空気極
2…電解質
3…燃料極
4…インターコネクター
5…セル
6…粘着性導電シート
7…集電部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の燃料電池セルと、
前記複数のセルを電気的に接続する集電部材とを備えた燃料電池スタックであって、
前記セルと前記集電部材とを接着する、導電性金属粒子と樹脂バインダーとからなるシート層を備えたことを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項2】
前記導電性金属粒子がニッケルであることを特徴する請求項1に記載の燃料電池スタック。
【請求項3】
前記樹脂バインダーが、アクリル系樹脂および/またはゴム系樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料電池スタック。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の燃料電池スタックを備えた固体酸化物形燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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