固体酸化物燃料電池
【課題】炭化水素系燃料を改質することができる改質支持層を燃料電池の内側または外側に備えることにより、別途の改質器を備える必要がない固体酸化物燃料電池を提供する。
【解決手段】固体酸化物燃料電池100は、管状に形成されて内部に供給される燃料を改質する改質支持層110、改質支持層110の外側に形成された燃料極120、燃料極120の外側に形成された電解質130、及び電解質130の外側に形成された空気極140を含む構成であり、固体酸化物燃料電池100に改質支持層110を備えることにより、別途の改質器を備える必要がないため、全体的な燃料電池システムの体積と重量を減らすことができる長所がある。
【解決手段】固体酸化物燃料電池100は、管状に形成されて内部に供給される燃料を改質する改質支持層110、改質支持層110の外側に形成された燃料極120、燃料極120の外側に形成された電解質130、及び電解質130の外側に形成された空気極140を含む構成であり、固体酸化物燃料電池100に改質支持層110を備えることにより、別途の改質器を備える必要がないため、全体的な燃料電池システムの体積と重量を減らすことができる長所がある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池とは、燃料(水素、LNG、LPGなど)と酸素(空気)の化学エネルギーを電気化学的反応によって、電気及び熱に直接変換させる装置である。既存の発電技術が燃料燃焼、蒸気発生、タービン駆動、発電機駆動などの過程を経ることとは異なって、燃料電池は、燃料燃焼やタービン駆動の過程がないため、効率が高いだけでなく、環境問題を誘発しない新しい概念の発電技術である。このような燃料電池は、SOXとNOXなどの大気汚染物質を殆ど排出せず、二酸化炭素の発生も少なくて無公害発電が可能であり、低騷音、無振動などの長所を有する。
【0003】
燃料電池は、リン酸型燃料電池(PAFC)、アルカリ型燃料電池(AFC)、高分子電解質型燃料電池(PEMFC)、直接メタノール燃料電池(DMFC)、固体酸化物燃料電池(SOFC)など、多様な種類があるが、このうち固体酸化物燃料電池(SOFC)は、活性化分極に基づいた過電圧が低く、非可逆的損失が少ないため、発電効率が高い。また、電極での反応速度が早いため、電極触媒として高価の貴金属を必要としない。従って、固体酸化物燃料電池は、今後の水素経済社会への進入のために必須の発電技術である。
【0004】
図1は、固体酸化物燃料電池の発電原理を図示した概念図である。
【0005】
図1を参照して、固体酸化物燃料電池(SOFC;solid oxide fuel cell)の基本的な発電原理を説明すると、燃料が水素(H2)または一酸化炭素(CO)である場合、燃料極1と空気極2では、下記のような電極反応が行われる。
【0006】
燃料極:CO+H2O→H2+CO2
2H2+2O2−→4e−+2H2O
空気極:O2+4e−→2O2−
全反応:H2+CO+O2→CO2+H2O
【0007】
即ち、燃料極1で生成された電子(e−)は、外部回路4を介して空気極2に伝達され、同時に空気極2で発生した酸素イオン(O2−)は、電解質3を介して燃料極1に伝達される。また、燃料極1では、水素(H2)が酸素イオン(O2−)と結合されて電子(e−)及び水(H2O)が生成される。結局、固体酸化物燃料電池の全反応を説明すると、水素(H2)または一酸化炭素(CO)が燃料極1に供給され、酸素が空気極2に供給されて、最終的に二酸化炭素(CO2)と水(H2O)が生成されることが分かる。
【0008】
しかし、固体酸化物燃料電池に供給される燃料が水素または一酸化炭素でなく、プロパン、メタンまたはブタンのような炭化水素系である場合、炭化水素系燃料を外部で水素または一酸化炭素に改質した後、固体酸化物燃料電池に供給しなければならない。従って、燃料が炭化水素系である場合、固体酸化物燃料電池の外部に改質器(Reformer)を別途に備えて燃料を改質しなければならないため、全体的な燃料電池システムの体積と重量が増加するだけでなく、システムが複雑になり、製造コストが増加して効率が落ちるという問題点が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述のような問題点を解決するために導き出されたものであり、炭化水素系燃料を改質することができる改質支持層を燃料電池の内側または外側に備えることにより、別途の改質器を備える必要がない固体酸化物燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の好ましい第1実施例による固体酸化物燃料電池は、管状に形成されて内部に供給される燃料を改質する改質支持層、前記改質支持層の外側に形成された燃料極、前記燃料極の外側に形成された電解質、及び前記電解質の外側に形成された空気極を含む構成である。
【0011】
ここで、前記改質支持層の断面は、円形状、偏平管状、三角形状、四角形状または六角形状であることを特徴とする。
【0012】
また、前記燃料は、炭化水素系であることを特徴とする。
【0013】
また、前記改質支持層と前記燃料極は、酸化ニッケル(NiO)とイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を含み、前記改質支持層のイットリア安定化ジルコニアに対する酸化ニッケルの重量比が、前記燃料極のイットリア安定化ジルコニアに対する酸化ニッケル重量比より大きいことを特徴とする。
【0014】
また、前記燃料極と前記電解質の間に形成された燃料極機能層をさらに含むことを特徴とする。
【0015】
また、前記電解質と前記空気極の間に形成された空気極機能層をさらに含むことを特徴とする。
【0016】
本発明の好ましい第2実施例による固体酸化物燃料電池は、管状に形成されて外部に供給される燃料を改質する改質支持層、前記改質支持層の内側に形成された燃料極、前記燃料極の内側に形成された電解質及び前記電解質の内側に形成された空気極を含む構成である。
【0017】
ここで、前記改質支持層の断面は、円形状、偏平管状、三角形状、四角形状または六角形状であることを特徴とする。
【0018】
また、前記燃料は、炭化水素系であることを特徴とする。
【0019】
また、前記改質支持層と前記燃料極は、酸化ニッケル(NiO)とイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を含み、前記改質支持層のイットリア安定化ジルコニアに対する酸化ニッケルの重量比が、前記燃料極のイットリア安定化ジルコニアに対する酸化ニッケルの重量比より大きいことを特徴とする。
【0020】
また、前記燃料極と前記電解質の間に形成された燃料極機能層をさらに含むことを特徴とする。
【0021】
また、前記電解質と前記空気極の間に形成された空気極機能層をさらに含むことを特徴とする。
【0022】
本発明の特徴及び利点は、添付図面に基づいた以下の詳細な説明によってさらに明らかになるであろう。
【0023】
本発明の詳細な説明に先立ち、本明細書及び請求範囲に用いられた用語や単語は、通常的かつ辞書的な意味に解釈されてはならず、発明者が自らの発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則にしたがって本発明の技術的思想にかなう意味と概念に解釈されるべきである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、改質支持層を燃料電池の最内側または最外側に備えることにより、別途の改質器を備える必要がなく、全体的な燃料電池システムの体積と重量を減らすことができる長所がある。
【0025】
また、本発明によると、燃料電池システムが簡素になり、製造コストを低減することができて、効率を高めることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】固体酸化物燃料電池の発電原理を図示した概念図である。
【図2】本発明の好ましい第1実施例による固体酸化物燃料電池の断面図(1)である。
【図3】本発明の好ましい第1実施例による固体酸化物燃料電池の断面図(2)である。
【図4】本発明の好ましい第1実施例による固体酸化物燃料電池の断面図(3)である。
【図5】本発明の好ましい第1実施例による固体酸化物燃料電池の断面図(4)である。
【図6】本発明の好ましい第1実施例による固体酸化物燃料電池の断面図(5)である。
【図7】図2に図示された固体酸化物燃料電池の斜視図である。
【図8】本発明の好ましい第2実施例による固体酸化物燃料電池の断面図(1)である。
【図9】本発明の好ましい第2実施例による固体酸化物燃料電池の断面図(2)である。
【図10】本発明の好ましい第2実施例による固体酸化物燃料電池の断面図(3)である。
【図11】本発明の好ましい第2実施例による固体酸化物燃料電池の断面図(4)である。
【図12】本発明の好ましい第2実施例による固体酸化物燃料電池の断面図(5)である。
【図13】図8に図示された固体酸化物燃料電池の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の目的、特定の長所及び新規の特徴は、添付図面に係わる以下の詳細な説明および好ましい実施例によってさらに明らかになるであろう。本明細書において、各図面の構成要素に参照番号を付け加えるに際し、同一の構成要素に限っては、たとえ異なる図面に示されても、できるだけ同一の番号を付けるようにしていることに留意しなければならない。
【0028】
また、図面上に示されたO2及びCH4は、燃料電池の作動過程を詳細に説明するための例示に過ぎず、燃料極や空気極に供給される気体の種類を制限するものではない。また、本発明の説明において、係わる公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を不必要にぼかす可能性があると判断される場合は、その詳細な説明を省略する。
【0029】
以下、添付された図面を参照して、本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。
【0030】
図2から図6は、本発明の好ましい第1実施例による固体酸化物燃料電池の断面図である。図7は、図2に図示された固体酸化物燃料電池の斜視図である。
【0031】
図2から図7に図示されたように、本実施例による固体酸化物燃料電池100は、管状に形成されて内部に供給される燃料を改質する改質支持層110、改質支持層110の外側に形成された燃料極120、燃料極120の外側に形成された電解質130、及び電解質130の外側に形成された空気極140を含む構成である。
【0032】
前記改質支持層110は、外側に形成された燃料極120、電解質130及び空気極140を支持する役割だけでなく、炭化水素系燃料を改質する役割を遂行するものである。従って、改質支持層110は、支持力を確保するために、燃料極120、電解質130及び空気極140より厚いことが好ましく、圧出工程などを利用して形成することができる。また、改質支持層110は管状に形成され、内部に供給される燃料を改質する。
【0033】
ここで、燃料は、図面上に記載されているメタン(CH4)だけでなく、プロパンまたはブタンを含む炭化水素系であり、前記燃料は、改質支持層110で水素と炭素に改質されて、改質支持層110の外側に形成された燃料極120に伝達される。従って、改質支持層110は、燃料を伝達することができるように、多孔性構造で形成することが好ましい。また、改質支持層110は、酸化ニッケル(NiO)とイットリア安定化ジルコニア(YSZ)で形成されて、相対的に酸化ニッケルの重量比が高くて炭化水素系燃料を改質することができるが、これに対する詳細な説明は後述する。
【0034】
一方、改質支持層110は、管状であれば、特に断面の形状が限定されるものではないが、円形状(図2参照)、偏平管状(図3参照)、三角形状(図4参照)、四角形状(図5参照)または六角形状(図6参照)に形成することができる。改質支持層110の断面の形状は、最終的な固体酸化物燃料電池100の断面の形状を決定するため、固体酸化物燃料電池100も円形状(図2参照)、偏平管状(図3参照)、三角形状(図4参照)、四角形状(図5参照)または六角形状(図6参照)に形成することができる。一方、改質支持層110を管状に形成することにより、燃料を供給するマニホールド(manifold)と固体酸化物燃料電池100を確実に密封して、燃料が漏出されることを防止することができる長所がある。
【0035】
前記燃料極120は、改質支持層110から改質された燃料の伝達を受けて電極反応を通じて陰極の役割を遂行するものであり、改質支持層110の外側に形成される。ここで、燃料極120は、プラズマスプレー法(Plasma spray)、電気化学蒸着法、スパッタリング法(sputtering)、イオンビーム法、イオン注入法などの乾式法や、テープキャスティング法(tape casting)、スプレーコーティング法(spray coating)、ディップコーティング法(dip coating)、スクリーンプリンティング法(screen printing)、ドクターブレード法(doctor blade)などの湿式法でコーティングした後、1200℃から1300℃で加熱して形成することができる。
【0036】
この際、燃料極120は、酸化ニッケル(NiO)とイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を利用して形成し、ここで、酸化ニッケルが水素によって金属ニッケルに還元されて電子伝導性を発揮し、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)は、酸化物としてイオン伝導性を発揮する。一方、燃料極120と上述の改質支持層110の成分は、酸化ニッケル(NiO)とイットリア安定化ジルコニア(YSZ)であり、互いに類似することが分かる。しかし、改質支持層110のイットリア安定化ジルコニアに対する酸化ニッケルの重量比は、燃料極120のイットリア安定化ジルコニアに対する酸化ニッケルの重量比より大きいことが好ましい。例えば、燃料極120の酸化ニッケルとイットリア安定化ジルコニアの重量比は、50:50から40:60である一方、改質支持層110の酸化ニッケルとイットリア安定化ジルコニアの重量比は、60:40から80:20である。改質支持層110が酸化ニッケルを相対的に多く含むことにより、炭化水素系燃料を改質することができ、燃料極120がイットリア安定化ジルコニアを相対的に多く含むことにより、電解質130との熱膨張係数をあわせて、クラック(crack)が発生することを防止することができるのである。
【0037】
前記電解質130は、空気極140で発生した酸素イオンを燃料極120に伝達する役割を遂行するものであり、燃料極120の外側に形成される。ここで、電解質130は、イットリア安定化ジルコニアまたはScSZ(Scandium Stabilized Zirconia)、GDC、LDCなどを燃料極120と同様に乾式法または湿式法でコーティングした後、1300℃から1500℃で焼結して形成することができる。
【0038】
この際、イットリア安定化ジルコニアは、4価ジルコニウムイオンの一部が3価のイトリウムイオンに代置されているため、イトリウムイオン2個あたり1個の酸素イオン孔が内部に発生し、高温で前記孔を介して酸素イオンが移動するようになる。一方、電解質130は、固体電解質130であるため、水溶液や溶融塩のような液体電解質130に比べて、イオン伝導率が低くて抵抗分極による電圧降下が少なく発生するため、なるべく薄く形成することが好ましい。また、電解質130に気孔が生じると、燃料と酸素(空気)が直接反応するクロスオーバー(cross over)現象が発生して効率が落ちるため、きずが発生しないように注意しなければならない。
【0039】
前記空気極140は、外部から酸素または空気の伝達を受けて、電極反応を通じて陽極の役割を遂行するものであり、電解質130の外側に形成される。ここで、空気極140は、電子伝導性が高いランタンストロンチウムマンガナイト((La0.84Sr0.16)MnO3)などを燃料極120と同様に乾式法または湿式法でコーティングした後、1200℃から1300℃で焼結して形成することができる。一方、空気極140では、酸素がランタンストロンチウムマンガナイトの触媒作用によって酸素イオンに転換され、電解質130を介して燃料極120に伝達されるのである。
【0040】
一方、燃料極120と電解質130の間には、燃料極機能層150が形成されることができる。ここで、燃料極機能層150は、燃料極120の電気化学的な活性を補完する役割を遂行する。従って、燃料極機能層150は、燃料極120と同様に酸化ニッケル(NiO)とイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を利用して形成することができる。但し、電気化学的な活性を強化するために、燃料極機能層150は、粗大なイットリア安定化ジルコニアでなく、微細なイットリア安定化ジルコニアを利用して形成することが好ましい。一方、燃料極機能層150は、燃料極120に電解質130を形成するための緩衝役割も遂行するため、低い気孔率を有し、かつ表面粗さを最小化することが好ましい。
【0041】
また、電解質130と空気極140の間には、空気極機能層160が形成されることができる。ここで、空気極機能層160は、空気極140の電気化学的な活性を補完する役割を遂行する。従って、空気極機能層160は、空気極140を形成する物質と電解質130を形成する物質との間の複合体を利用して形成することが好ましい。例えば、空気極機能層160は、空気極140を形成するランタンストロンチウムマンガナイトと、電解質130を形成するイットリア安定化ジルコニアとの複合体を利用して形成することができる。一方、空気極機能層160は、燃料極機能層150のように電解質130と空気極140の間の緩衝役割を遂行する。
【0042】
本実施例による固体酸化物燃料電池100は、改質支持層110を固体酸化物燃料電池100の最内側に備えて、別途の改質器を備える必要がないため、全体的な燃料電池システムの体積と重量を減らすことができる長所がある。また、燃料電池システムが簡素になり、製造コストを低減することができて、効率を高めることができる効果がある。
【0043】
図8から図12は、本発明の好ましい第2実施例による固体酸化物燃料電池の断面図である。図13は、図8に図示された固体酸化物燃料電池の斜視図である。
【0044】
図8から図13に図示されたように、本実施例による固体酸化物燃料電池200は、管状に形成されて外部に供給される燃料を改質する改質支持層110、改質支持層110の内側に形成された燃料極120、燃料極120の内側に形成された電解質130、及び電解質130の内側に形成された空気極140を含む構成である。
【0045】
本実施例による固体酸化物燃料電池200と上述の第1実施例による固体酸化物燃料電池100のもっとも大きい差異は、燃料極120、電解質130及び空気極140の形成位置である。即ち、本実施例による固体酸化物燃料電池200は、燃料極120、電解質130及び空気極140が改質支持層110の内側に形成された反面、第1実施例による固体酸化物燃料電池100は、燃料極120、電解質130及び空気極140が改質支持層110の外側に形成される。従って、本実施例では上述の差異を中心に記述し、重複される説明は省略する。
【0046】
前記改質支持層110は、内側に形成された燃料極120、電解質130及び空気極140を支持する役割だけでなく、炭化水素系燃料を改質する役割を遂行するものである。ここで、改質支持層110は、管状に形成されて外部に供給される燃料を改質する。この際、燃料は、図面上に記載されているメタン(CH4)だけでなく、プロパンまたはブタンを含む炭化水素系であり、前記燃料は、改質支持層110で水素と炭素に改質されて改質支持層110の内側に形成された燃料極120に伝達される。一方、改質支持層110の断面は、円形状(図8参照)、偏平管状(図9参照)、三角形状(図10参照)、四角形状(図11参照)または六角形状(図12参照)に形成することができる。一方、改質支持層110を管状に形成することにより、酸素または空気を供給するマニホールド(manifold)と固体酸化物燃料電池100を確実に密封して、酸素または空気が漏出されることを防止することができる長所がある。
【0047】
前記燃料極120は、改質支持層110から改質された燃料の伝達を受けて電極反応を通じて陰極の役割を遂行するものであり、改質支持層110の内側に形成される。ここで、燃料極120は、改質支持層110と同様に酸化ニッケル(NiO)とイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を利用して形成することができる。この際、改質支持層110のイットリア安定化ジルコニアに対する酸化ニッケルの重量比は、燃料極120のイットリア安定化ジルコニアに対する酸化ニッケルの重量比より大きいことが好ましい。
【0048】
前記電解質130は、空気極140で発生した酸素イオンを燃料極120に伝達する役割を遂行するものであり、燃料極120の内側に形成される。ここで、電解質130は、イットリア安定化ジルコニアまたはScSZ(Scandium Stabilized Zirconia)、GDC、LDCなどを利用して形成することができる。この際、イットリア安定化ジルコニアは、4価ジルコニウムイオンの一部が3価のイトリウムイオンに代置されているため、イトリウムイオン2個あたり1個の酸素イオン孔が内部に発生し、高温で前記孔を介して酸素イオンが移動するようになる。
【0049】
前記空気極140は、内部から酸素または空気の伝達を受けて電極反応を通じて陽極の役割を遂行するものであり、電解質130の内側に形成される。ここで、空気極140は、電子伝導性が高いランタンストロンチウムマンガナイト((La0.84Sr0.16)MnO3)などを利用して形成することができる。また、空気極140では、酸素がランタンストロンチウムマンガナイトの触媒作用によって酸素イオンに転換されて、電解質130を介して燃料極120に伝達されるのである。
【0050】
一方、燃料極120と電解質130の間には、燃料極機能層150が形成されることができる。ここで、燃料極機能層150は、燃料極120の電気化学的な活性を補完する役割を遂行する。従って、燃料極機能層150は、燃料極120と同様に酸化ニッケル(NiO)とイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を利用して形成することができる。また、燃料極機能層150は、燃料極120と電解質130の間の緩衝役割も遂行する。
【0051】
また、電解質130と空気極140の間には、空気極機能層160が形成されることができる。ここで、空気極機能層160は、空気極140の電気化学的な活性を補完する役割を遂行する。従って、空気極機能層160は、空気極140を形成するランタンストロンチウムマンガナイトと、電解質130を形成するイットリア安定化ジルコニアとの複合体を利用して形成することができる。一方、空気極機能層160は、燃料極機能層150のように電解質130と空気極140の間の緩衝役割を遂行する。
【0052】
本実施例による固体酸化物燃料電池200は、改質支持層110を固体酸化物燃料電池200の最外側に備えて、別途の改質器を備える必要がない。従って、全体的な燃料電池システムの体積と重量を減らすことができ、燃料電池システムが簡素になり、製造コストを低減することができるだけでなく、効率を高めることができる効果がある。
【0053】
以上、本発明を具体的な実施例に基づいて詳細に説明したが、これは、本発明を具体的に説明するためのものであり、本発明による固体酸化物燃料電池は、これに限定されず、該当分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想内にての変形や改良が可能であることは明白であろう。本発明の単純な変形乃至変更は、いずれも本発明の領域に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は、添付の特許請求の範囲により明確になるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、炭化水素系燃料を改質することができる改質支持層を燃料電池の内側または外側に備えることにより、別途の改質器を備える必要がない固体酸化物燃料電池に適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 燃料極
2 空気極
3 電解質
4 外部回路
100、200 固体酸化物燃料電池
110 改質支持層
120 燃料極
130 電解質
140 空気極
150 燃料極機能層
160 空気極機能層
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池とは、燃料(水素、LNG、LPGなど)と酸素(空気)の化学エネルギーを電気化学的反応によって、電気及び熱に直接変換させる装置である。既存の発電技術が燃料燃焼、蒸気発生、タービン駆動、発電機駆動などの過程を経ることとは異なって、燃料電池は、燃料燃焼やタービン駆動の過程がないため、効率が高いだけでなく、環境問題を誘発しない新しい概念の発電技術である。このような燃料電池は、SOXとNOXなどの大気汚染物質を殆ど排出せず、二酸化炭素の発生も少なくて無公害発電が可能であり、低騷音、無振動などの長所を有する。
【0003】
燃料電池は、リン酸型燃料電池(PAFC)、アルカリ型燃料電池(AFC)、高分子電解質型燃料電池(PEMFC)、直接メタノール燃料電池(DMFC)、固体酸化物燃料電池(SOFC)など、多様な種類があるが、このうち固体酸化物燃料電池(SOFC)は、活性化分極に基づいた過電圧が低く、非可逆的損失が少ないため、発電効率が高い。また、電極での反応速度が早いため、電極触媒として高価の貴金属を必要としない。従って、固体酸化物燃料電池は、今後の水素経済社会への進入のために必須の発電技術である。
【0004】
図1は、固体酸化物燃料電池の発電原理を図示した概念図である。
【0005】
図1を参照して、固体酸化物燃料電池(SOFC;solid oxide fuel cell)の基本的な発電原理を説明すると、燃料が水素(H2)または一酸化炭素(CO)である場合、燃料極1と空気極2では、下記のような電極反応が行われる。
【0006】
燃料極:CO+H2O→H2+CO2
2H2+2O2−→4e−+2H2O
空気極:O2+4e−→2O2−
全反応:H2+CO+O2→CO2+H2O
【0007】
即ち、燃料極1で生成された電子(e−)は、外部回路4を介して空気極2に伝達され、同時に空気極2で発生した酸素イオン(O2−)は、電解質3を介して燃料極1に伝達される。また、燃料極1では、水素(H2)が酸素イオン(O2−)と結合されて電子(e−)及び水(H2O)が生成される。結局、固体酸化物燃料電池の全反応を説明すると、水素(H2)または一酸化炭素(CO)が燃料極1に供給され、酸素が空気極2に供給されて、最終的に二酸化炭素(CO2)と水(H2O)が生成されることが分かる。
【0008】
しかし、固体酸化物燃料電池に供給される燃料が水素または一酸化炭素でなく、プロパン、メタンまたはブタンのような炭化水素系である場合、炭化水素系燃料を外部で水素または一酸化炭素に改質した後、固体酸化物燃料電池に供給しなければならない。従って、燃料が炭化水素系である場合、固体酸化物燃料電池の外部に改質器(Reformer)を別途に備えて燃料を改質しなければならないため、全体的な燃料電池システムの体積と重量が増加するだけでなく、システムが複雑になり、製造コストが増加して効率が落ちるという問題点が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述のような問題点を解決するために導き出されたものであり、炭化水素系燃料を改質することができる改質支持層を燃料電池の内側または外側に備えることにより、別途の改質器を備える必要がない固体酸化物燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の好ましい第1実施例による固体酸化物燃料電池は、管状に形成されて内部に供給される燃料を改質する改質支持層、前記改質支持層の外側に形成された燃料極、前記燃料極の外側に形成された電解質、及び前記電解質の外側に形成された空気極を含む構成である。
【0011】
ここで、前記改質支持層の断面は、円形状、偏平管状、三角形状、四角形状または六角形状であることを特徴とする。
【0012】
また、前記燃料は、炭化水素系であることを特徴とする。
【0013】
また、前記改質支持層と前記燃料極は、酸化ニッケル(NiO)とイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を含み、前記改質支持層のイットリア安定化ジルコニアに対する酸化ニッケルの重量比が、前記燃料極のイットリア安定化ジルコニアに対する酸化ニッケル重量比より大きいことを特徴とする。
【0014】
また、前記燃料極と前記電解質の間に形成された燃料極機能層をさらに含むことを特徴とする。
【0015】
また、前記電解質と前記空気極の間に形成された空気極機能層をさらに含むことを特徴とする。
【0016】
本発明の好ましい第2実施例による固体酸化物燃料電池は、管状に形成されて外部に供給される燃料を改質する改質支持層、前記改質支持層の内側に形成された燃料極、前記燃料極の内側に形成された電解質及び前記電解質の内側に形成された空気極を含む構成である。
【0017】
ここで、前記改質支持層の断面は、円形状、偏平管状、三角形状、四角形状または六角形状であることを特徴とする。
【0018】
また、前記燃料は、炭化水素系であることを特徴とする。
【0019】
また、前記改質支持層と前記燃料極は、酸化ニッケル(NiO)とイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を含み、前記改質支持層のイットリア安定化ジルコニアに対する酸化ニッケルの重量比が、前記燃料極のイットリア安定化ジルコニアに対する酸化ニッケルの重量比より大きいことを特徴とする。
【0020】
また、前記燃料極と前記電解質の間に形成された燃料極機能層をさらに含むことを特徴とする。
【0021】
また、前記電解質と前記空気極の間に形成された空気極機能層をさらに含むことを特徴とする。
【0022】
本発明の特徴及び利点は、添付図面に基づいた以下の詳細な説明によってさらに明らかになるであろう。
【0023】
本発明の詳細な説明に先立ち、本明細書及び請求範囲に用いられた用語や単語は、通常的かつ辞書的な意味に解釈されてはならず、発明者が自らの発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則にしたがって本発明の技術的思想にかなう意味と概念に解釈されるべきである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、改質支持層を燃料電池の最内側または最外側に備えることにより、別途の改質器を備える必要がなく、全体的な燃料電池システムの体積と重量を減らすことができる長所がある。
【0025】
また、本発明によると、燃料電池システムが簡素になり、製造コストを低減することができて、効率を高めることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】固体酸化物燃料電池の発電原理を図示した概念図である。
【図2】本発明の好ましい第1実施例による固体酸化物燃料電池の断面図(1)である。
【図3】本発明の好ましい第1実施例による固体酸化物燃料電池の断面図(2)である。
【図4】本発明の好ましい第1実施例による固体酸化物燃料電池の断面図(3)である。
【図5】本発明の好ましい第1実施例による固体酸化物燃料電池の断面図(4)である。
【図6】本発明の好ましい第1実施例による固体酸化物燃料電池の断面図(5)である。
【図7】図2に図示された固体酸化物燃料電池の斜視図である。
【図8】本発明の好ましい第2実施例による固体酸化物燃料電池の断面図(1)である。
【図9】本発明の好ましい第2実施例による固体酸化物燃料電池の断面図(2)である。
【図10】本発明の好ましい第2実施例による固体酸化物燃料電池の断面図(3)である。
【図11】本発明の好ましい第2実施例による固体酸化物燃料電池の断面図(4)である。
【図12】本発明の好ましい第2実施例による固体酸化物燃料電池の断面図(5)である。
【図13】図8に図示された固体酸化物燃料電池の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の目的、特定の長所及び新規の特徴は、添付図面に係わる以下の詳細な説明および好ましい実施例によってさらに明らかになるであろう。本明細書において、各図面の構成要素に参照番号を付け加えるに際し、同一の構成要素に限っては、たとえ異なる図面に示されても、できるだけ同一の番号を付けるようにしていることに留意しなければならない。
【0028】
また、図面上に示されたO2及びCH4は、燃料電池の作動過程を詳細に説明するための例示に過ぎず、燃料極や空気極に供給される気体の種類を制限するものではない。また、本発明の説明において、係わる公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を不必要にぼかす可能性があると判断される場合は、その詳細な説明を省略する。
【0029】
以下、添付された図面を参照して、本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。
【0030】
図2から図6は、本発明の好ましい第1実施例による固体酸化物燃料電池の断面図である。図7は、図2に図示された固体酸化物燃料電池の斜視図である。
【0031】
図2から図7に図示されたように、本実施例による固体酸化物燃料電池100は、管状に形成されて内部に供給される燃料を改質する改質支持層110、改質支持層110の外側に形成された燃料極120、燃料極120の外側に形成された電解質130、及び電解質130の外側に形成された空気極140を含む構成である。
【0032】
前記改質支持層110は、外側に形成された燃料極120、電解質130及び空気極140を支持する役割だけでなく、炭化水素系燃料を改質する役割を遂行するものである。従って、改質支持層110は、支持力を確保するために、燃料極120、電解質130及び空気極140より厚いことが好ましく、圧出工程などを利用して形成することができる。また、改質支持層110は管状に形成され、内部に供給される燃料を改質する。
【0033】
ここで、燃料は、図面上に記載されているメタン(CH4)だけでなく、プロパンまたはブタンを含む炭化水素系であり、前記燃料は、改質支持層110で水素と炭素に改質されて、改質支持層110の外側に形成された燃料極120に伝達される。従って、改質支持層110は、燃料を伝達することができるように、多孔性構造で形成することが好ましい。また、改質支持層110は、酸化ニッケル(NiO)とイットリア安定化ジルコニア(YSZ)で形成されて、相対的に酸化ニッケルの重量比が高くて炭化水素系燃料を改質することができるが、これに対する詳細な説明は後述する。
【0034】
一方、改質支持層110は、管状であれば、特に断面の形状が限定されるものではないが、円形状(図2参照)、偏平管状(図3参照)、三角形状(図4参照)、四角形状(図5参照)または六角形状(図6参照)に形成することができる。改質支持層110の断面の形状は、最終的な固体酸化物燃料電池100の断面の形状を決定するため、固体酸化物燃料電池100も円形状(図2参照)、偏平管状(図3参照)、三角形状(図4参照)、四角形状(図5参照)または六角形状(図6参照)に形成することができる。一方、改質支持層110を管状に形成することにより、燃料を供給するマニホールド(manifold)と固体酸化物燃料電池100を確実に密封して、燃料が漏出されることを防止することができる長所がある。
【0035】
前記燃料極120は、改質支持層110から改質された燃料の伝達を受けて電極反応を通じて陰極の役割を遂行するものであり、改質支持層110の外側に形成される。ここで、燃料極120は、プラズマスプレー法(Plasma spray)、電気化学蒸着法、スパッタリング法(sputtering)、イオンビーム法、イオン注入法などの乾式法や、テープキャスティング法(tape casting)、スプレーコーティング法(spray coating)、ディップコーティング法(dip coating)、スクリーンプリンティング法(screen printing)、ドクターブレード法(doctor blade)などの湿式法でコーティングした後、1200℃から1300℃で加熱して形成することができる。
【0036】
この際、燃料極120は、酸化ニッケル(NiO)とイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を利用して形成し、ここで、酸化ニッケルが水素によって金属ニッケルに還元されて電子伝導性を発揮し、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)は、酸化物としてイオン伝導性を発揮する。一方、燃料極120と上述の改質支持層110の成分は、酸化ニッケル(NiO)とイットリア安定化ジルコニア(YSZ)であり、互いに類似することが分かる。しかし、改質支持層110のイットリア安定化ジルコニアに対する酸化ニッケルの重量比は、燃料極120のイットリア安定化ジルコニアに対する酸化ニッケルの重量比より大きいことが好ましい。例えば、燃料極120の酸化ニッケルとイットリア安定化ジルコニアの重量比は、50:50から40:60である一方、改質支持層110の酸化ニッケルとイットリア安定化ジルコニアの重量比は、60:40から80:20である。改質支持層110が酸化ニッケルを相対的に多く含むことにより、炭化水素系燃料を改質することができ、燃料極120がイットリア安定化ジルコニアを相対的に多く含むことにより、電解質130との熱膨張係数をあわせて、クラック(crack)が発生することを防止することができるのである。
【0037】
前記電解質130は、空気極140で発生した酸素イオンを燃料極120に伝達する役割を遂行するものであり、燃料極120の外側に形成される。ここで、電解質130は、イットリア安定化ジルコニアまたはScSZ(Scandium Stabilized Zirconia)、GDC、LDCなどを燃料極120と同様に乾式法または湿式法でコーティングした後、1300℃から1500℃で焼結して形成することができる。
【0038】
この際、イットリア安定化ジルコニアは、4価ジルコニウムイオンの一部が3価のイトリウムイオンに代置されているため、イトリウムイオン2個あたり1個の酸素イオン孔が内部に発生し、高温で前記孔を介して酸素イオンが移動するようになる。一方、電解質130は、固体電解質130であるため、水溶液や溶融塩のような液体電解質130に比べて、イオン伝導率が低くて抵抗分極による電圧降下が少なく発生するため、なるべく薄く形成することが好ましい。また、電解質130に気孔が生じると、燃料と酸素(空気)が直接反応するクロスオーバー(cross over)現象が発生して効率が落ちるため、きずが発生しないように注意しなければならない。
【0039】
前記空気極140は、外部から酸素または空気の伝達を受けて、電極反応を通じて陽極の役割を遂行するものであり、電解質130の外側に形成される。ここで、空気極140は、電子伝導性が高いランタンストロンチウムマンガナイト((La0.84Sr0.16)MnO3)などを燃料極120と同様に乾式法または湿式法でコーティングした後、1200℃から1300℃で焼結して形成することができる。一方、空気極140では、酸素がランタンストロンチウムマンガナイトの触媒作用によって酸素イオンに転換され、電解質130を介して燃料極120に伝達されるのである。
【0040】
一方、燃料極120と電解質130の間には、燃料極機能層150が形成されることができる。ここで、燃料極機能層150は、燃料極120の電気化学的な活性を補完する役割を遂行する。従って、燃料極機能層150は、燃料極120と同様に酸化ニッケル(NiO)とイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を利用して形成することができる。但し、電気化学的な活性を強化するために、燃料極機能層150は、粗大なイットリア安定化ジルコニアでなく、微細なイットリア安定化ジルコニアを利用して形成することが好ましい。一方、燃料極機能層150は、燃料極120に電解質130を形成するための緩衝役割も遂行するため、低い気孔率を有し、かつ表面粗さを最小化することが好ましい。
【0041】
また、電解質130と空気極140の間には、空気極機能層160が形成されることができる。ここで、空気極機能層160は、空気極140の電気化学的な活性を補完する役割を遂行する。従って、空気極機能層160は、空気極140を形成する物質と電解質130を形成する物質との間の複合体を利用して形成することが好ましい。例えば、空気極機能層160は、空気極140を形成するランタンストロンチウムマンガナイトと、電解質130を形成するイットリア安定化ジルコニアとの複合体を利用して形成することができる。一方、空気極機能層160は、燃料極機能層150のように電解質130と空気極140の間の緩衝役割を遂行する。
【0042】
本実施例による固体酸化物燃料電池100は、改質支持層110を固体酸化物燃料電池100の最内側に備えて、別途の改質器を備える必要がないため、全体的な燃料電池システムの体積と重量を減らすことができる長所がある。また、燃料電池システムが簡素になり、製造コストを低減することができて、効率を高めることができる効果がある。
【0043】
図8から図12は、本発明の好ましい第2実施例による固体酸化物燃料電池の断面図である。図13は、図8に図示された固体酸化物燃料電池の斜視図である。
【0044】
図8から図13に図示されたように、本実施例による固体酸化物燃料電池200は、管状に形成されて外部に供給される燃料を改質する改質支持層110、改質支持層110の内側に形成された燃料極120、燃料極120の内側に形成された電解質130、及び電解質130の内側に形成された空気極140を含む構成である。
【0045】
本実施例による固体酸化物燃料電池200と上述の第1実施例による固体酸化物燃料電池100のもっとも大きい差異は、燃料極120、電解質130及び空気極140の形成位置である。即ち、本実施例による固体酸化物燃料電池200は、燃料極120、電解質130及び空気極140が改質支持層110の内側に形成された反面、第1実施例による固体酸化物燃料電池100は、燃料極120、電解質130及び空気極140が改質支持層110の外側に形成される。従って、本実施例では上述の差異を中心に記述し、重複される説明は省略する。
【0046】
前記改質支持層110は、内側に形成された燃料極120、電解質130及び空気極140を支持する役割だけでなく、炭化水素系燃料を改質する役割を遂行するものである。ここで、改質支持層110は、管状に形成されて外部に供給される燃料を改質する。この際、燃料は、図面上に記載されているメタン(CH4)だけでなく、プロパンまたはブタンを含む炭化水素系であり、前記燃料は、改質支持層110で水素と炭素に改質されて改質支持層110の内側に形成された燃料極120に伝達される。一方、改質支持層110の断面は、円形状(図8参照)、偏平管状(図9参照)、三角形状(図10参照)、四角形状(図11参照)または六角形状(図12参照)に形成することができる。一方、改質支持層110を管状に形成することにより、酸素または空気を供給するマニホールド(manifold)と固体酸化物燃料電池100を確実に密封して、酸素または空気が漏出されることを防止することができる長所がある。
【0047】
前記燃料極120は、改質支持層110から改質された燃料の伝達を受けて電極反応を通じて陰極の役割を遂行するものであり、改質支持層110の内側に形成される。ここで、燃料極120は、改質支持層110と同様に酸化ニッケル(NiO)とイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を利用して形成することができる。この際、改質支持層110のイットリア安定化ジルコニアに対する酸化ニッケルの重量比は、燃料極120のイットリア安定化ジルコニアに対する酸化ニッケルの重量比より大きいことが好ましい。
【0048】
前記電解質130は、空気極140で発生した酸素イオンを燃料極120に伝達する役割を遂行するものであり、燃料極120の内側に形成される。ここで、電解質130は、イットリア安定化ジルコニアまたはScSZ(Scandium Stabilized Zirconia)、GDC、LDCなどを利用して形成することができる。この際、イットリア安定化ジルコニアは、4価ジルコニウムイオンの一部が3価のイトリウムイオンに代置されているため、イトリウムイオン2個あたり1個の酸素イオン孔が内部に発生し、高温で前記孔を介して酸素イオンが移動するようになる。
【0049】
前記空気極140は、内部から酸素または空気の伝達を受けて電極反応を通じて陽極の役割を遂行するものであり、電解質130の内側に形成される。ここで、空気極140は、電子伝導性が高いランタンストロンチウムマンガナイト((La0.84Sr0.16)MnO3)などを利用して形成することができる。また、空気極140では、酸素がランタンストロンチウムマンガナイトの触媒作用によって酸素イオンに転換されて、電解質130を介して燃料極120に伝達されるのである。
【0050】
一方、燃料極120と電解質130の間には、燃料極機能層150が形成されることができる。ここで、燃料極機能層150は、燃料極120の電気化学的な活性を補完する役割を遂行する。従って、燃料極機能層150は、燃料極120と同様に酸化ニッケル(NiO)とイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を利用して形成することができる。また、燃料極機能層150は、燃料極120と電解質130の間の緩衝役割も遂行する。
【0051】
また、電解質130と空気極140の間には、空気極機能層160が形成されることができる。ここで、空気極機能層160は、空気極140の電気化学的な活性を補完する役割を遂行する。従って、空気極機能層160は、空気極140を形成するランタンストロンチウムマンガナイトと、電解質130を形成するイットリア安定化ジルコニアとの複合体を利用して形成することができる。一方、空気極機能層160は、燃料極機能層150のように電解質130と空気極140の間の緩衝役割を遂行する。
【0052】
本実施例による固体酸化物燃料電池200は、改質支持層110を固体酸化物燃料電池200の最外側に備えて、別途の改質器を備える必要がない。従って、全体的な燃料電池システムの体積と重量を減らすことができ、燃料電池システムが簡素になり、製造コストを低減することができるだけでなく、効率を高めることができる効果がある。
【0053】
以上、本発明を具体的な実施例に基づいて詳細に説明したが、これは、本発明を具体的に説明するためのものであり、本発明による固体酸化物燃料電池は、これに限定されず、該当分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想内にての変形や改良が可能であることは明白であろう。本発明の単純な変形乃至変更は、いずれも本発明の領域に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は、添付の特許請求の範囲により明確になるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、炭化水素系燃料を改質することができる改質支持層を燃料電池の内側または外側に備えることにより、別途の改質器を備える必要がない固体酸化物燃料電池に適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 燃料極
2 空気極
3 電解質
4 外部回路
100、200 固体酸化物燃料電池
110 改質支持層
120 燃料極
130 電解質
140 空気極
150 燃料極機能層
160 空気極機能層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状に形成されて内部に供給される燃料を改質する改質支持層;
前記改質支持層の外側に形成された燃料極;
前記燃料極の外側に形成された電解質;及び
前記電解質の外側に形成された空気極;
を含むことを特徴とする固体酸化物燃料電池。
【請求項2】
前記改質支持層の断面は、円形状、偏平管状、三角形状、四角形状または六角形状であることを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項3】
前記燃料は、炭化水素系であることを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項4】
前記改質支持層と前記燃料極は、酸化ニッケル(NiO)とイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を含み、
前記改質支持層のイットリア安定化ジルコニアに対する酸化ニッケルの重量比が、前記燃料極のイットリア安定化ジルコニアに対する酸化ニッケル重量比より大きいことを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項5】
前記燃料極と前記電解質の間に形成された燃料極機能層をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項6】
前記電解質と前記空気極の間に形成された空気極機能層をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項7】
管状に形成されて外部に供給される燃料を改質する改質支持層;
前記改質支持層の内側に形成された燃料極;
前記燃料極の内側に形成された電解質;及び
前記電解質の内側に形成された空気極;
を含むことを特徴とする固体酸化物燃料電池。
【請求項8】
前記改質支持層の断面は、円形状、偏平管状、三角形状、四角形状または六角形状であることを特徴とする請求項7に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項9】
前記燃料は、炭化水素系であることを特徴とする請求項7に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項10】
前記改質支持層と前記燃料極は、酸化ニッケル(NiO)とイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を含み、
前記改質支持層のイットリア安定化ジルコニアに対する酸化ニッケルの重量比が、前記燃料極のイットリア安定化ジルコニアに対する酸化ニッケルの重量比より大きいことを特徴とする請求項7に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項11】
前記燃料極と前記電解質の間に形成された燃料極機能層をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項12】
前記電解質と前記空気極の間に形成された空気極機能層をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項1】
管状に形成されて内部に供給される燃料を改質する改質支持層;
前記改質支持層の外側に形成された燃料極;
前記燃料極の外側に形成された電解質;及び
前記電解質の外側に形成された空気極;
を含むことを特徴とする固体酸化物燃料電池。
【請求項2】
前記改質支持層の断面は、円形状、偏平管状、三角形状、四角形状または六角形状であることを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項3】
前記燃料は、炭化水素系であることを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項4】
前記改質支持層と前記燃料極は、酸化ニッケル(NiO)とイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を含み、
前記改質支持層のイットリア安定化ジルコニアに対する酸化ニッケルの重量比が、前記燃料極のイットリア安定化ジルコニアに対する酸化ニッケル重量比より大きいことを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項5】
前記燃料極と前記電解質の間に形成された燃料極機能層をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項6】
前記電解質と前記空気極の間に形成された空気極機能層をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項7】
管状に形成されて外部に供給される燃料を改質する改質支持層;
前記改質支持層の内側に形成された燃料極;
前記燃料極の内側に形成された電解質;及び
前記電解質の内側に形成された空気極;
を含むことを特徴とする固体酸化物燃料電池。
【請求項8】
前記改質支持層の断面は、円形状、偏平管状、三角形状、四角形状または六角形状であることを特徴とする請求項7に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項9】
前記燃料は、炭化水素系であることを特徴とする請求項7に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項10】
前記改質支持層と前記燃料極は、酸化ニッケル(NiO)とイットリア安定化ジルコニア(YSZ)を含み、
前記改質支持層のイットリア安定化ジルコニアに対する酸化ニッケルの重量比が、前記燃料極のイットリア安定化ジルコニアに対する酸化ニッケルの重量比より大きいことを特徴とする請求項7に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項11】
前記燃料極と前記電解質の間に形成された燃料極機能層をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の固体酸化物燃料電池。
【請求項12】
前記電解質と前記空気極の間に形成された空気極機能層をさらに含むことを特徴とする請求項7に記載の固体酸化物燃料電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−54224(P2012−54224A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87220(P2011−87220)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】
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