説明

固体酸触媒の製造方法

【課題】碍子や光ファイバ、あるいは、スート法などによる光ファイバ製造過程で発生する微細な二酸化ケイ素粉末廃棄物や、光ファイバへの延伸工程で発生する石英ガラス不利用物などの産業廃棄物を原料として有効利用することができ、生産性が良好で、かつ、粒径の大きい高性能の固体酸触媒が得られる、優れた固体酸触媒の製造方法を提供する。
【解決手段】下記化学式1で示される化合物、


などの1種以上のテンプレート剤、含珪素無機化合物、含アルミニウム無機化合物、及び、水を、原料中のアルミニウム原子の数を1としたときの、原料中の珪素の原子の数が7.5以上となるように調製した後、密閉容器内で第1の加熱処理を行い、その後、酸素含有雰囲気下で第2の加熱処理を行うことを特徴とする固体酸触媒の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸触媒の製造方法、特に、ゼオライト系固体酸触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒は様々な応用分野を有するが、その1つに、窒素酸化物(NOx)を窒素と酸素とに分解する用途が挙げられる。例えば内燃機関内で形成された窒素酸化物は、このような窒素酸化物を含むガスが大気に放出される前に、触媒により分解され、処理される。
【0003】
ここで、ZSM−5として知られるゼオライトは、高機能な固体酸触媒として著名であり、炭化水素の炭化水素異性化、アルキル化および接触分解のような化学反応を有効に促進する触媒機能を有することで知られている。
【0004】
しかしながら、従来のZSM−5にはいくつかの問題点がある。すなわち、原料のコストが高価で、製造工程が複雑であるために、ZSM−5は高価となる。そのために、ZSM−5の用途が自動車分野などの特定の分野に限定される傾向がある。
【0005】
これに対して、本発明者等は特開平6−182212号公報(特許文献1)で、このようなZSM−5様固体酸触媒の製造方法を提案している。
【0006】
特許文献1記載の技術は、石炭灰を原料とするものであり、原料コストの大幅な引き下げを可能としたが、反応時間が36時間と非常に長いので、生産性が低く、さらに、製造時のエネルギーコストが高いと云う問題があった。
【0007】
さらに、得られるZSM−5様固体酸触媒の粒径が極めて小さいので、有効な細孔の数が相対的に少なくなると共に、製造最終段階での液固分離を行う際の濾過に時間がかかり、さらに、得られた製品を実際の気相処理や液相処理に用いることができるようにハニカム構造体等の形状に成形する際にもバインダーの影響による性能低下が大きいなどの問題があった。
【0008】
また、現在、廃碍子、廃光ファイバ、あるいは、スート法などによる光ファイバ製造過程で発生する微細な二酸化ケイ素粉末廃棄物(白色スート)や、光ファイバへの延伸工程で発生する端材(石英ガラス不利用物)などの産業廃棄物が多量に発生している。これらは、今後とも継続して多量に発生すると考えられるが、有効な処理方法がなく、かつ、廃棄処理のコストも高い。
【特許文献1】特開平6−182212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、碍子や光ファイバ、あるいは光ファイバ製造過程で発生する二酸化ケイ素(白色スート)などの産業廃棄物を原料として有効利用することができ、生産性が良好で、かつ、低コストで、粒径の大きい高性能の固体酸触媒が得られる固体酸触媒の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の固体酸触媒の製造方法は上記課題を解決するため、請求項1に記載の通り、下記化学式1で示される化合物、
【化1】

式中R〜Rはアルキル基、Xはハロゲン化物イオンまたは水酸化物イオン
下記化学式2で示される化合物、化学式RX(式中Rはアルキル基、Xはハロゲン化物イオンまたは水酸化物イオン)で示される化合物、及び、化学式R14COR15で示される化合物(式中R14及びR15はアルキル基)の組合せA、
【化2】

式中R〜Rはアルキル基
化学式RNHR10(式中RおよびR10はアルキル基)で示される化合物、化学式R11X(式中R11はアルキル基、Xはハロゲン化物イオンまたは水酸化物イオン)で示される化合物、及び、化学式R14COR15で示される化合物(式中R14及びR15はアルキル基)との組合せB、及び、
化学式NH12で示される化合物(式中R13はアルキル基)、化学式R13X(式中R13はアルキル基、Xはハロゲン化物イオンまたは水酸化物イオン)、及び、化学式R14COR15で示される化合物(式中R14及びR15はアルキル基)で示される化合物との組合せCから選ばれる1つ以上のテンプレート剤、
含珪素無機化合物、含アルミニウム無機化合物、及び、水を、原料中のアルミニウム原子の数を1としたときの、原料中の珪素の原子の数が7.5以上となるように調製した後、密閉容器内で第1の加熱処理を行い、その後、酸素含有雰囲気下で第2の加熱処理を行うことを特徴とする固体酸触媒の製造方法である。
【0011】
また、本発明の固体酸触媒の製造方法は、請求項2に記載の通り、請求項1に記載の固体酸触媒の製造方法において、上記含珪素無機化合物が、碍子からなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の固体酸触媒の製造方法は、請求項3に記載の通り、請求項1または請求項2に記載の固体酸触媒の製造方法において、上記含珪素無機化合物が廃光ファイバ、光ファイバ製造過程で発生する二酸化ケイ素粉末廃棄物、石英ガラス不利用物から選ばれる1つ以上であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の固体酸触媒の製造方法は、請求項4に記載の通り、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の固体酸触媒の製造方法において、上記テンプレート剤として、上記化学式1で示される化合物を用い、かつ、該化学式中のR〜Rがすべて、炭素数2以上5以下の同じアルキル基であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の固体酸触媒の製造方法は、請求項5に記載の通り、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の固体酸触媒の製造方法において、上記テンプレート剤として、上記組合せAを用い、かつ、該組合せAにおける、R〜R、及び、化学式R14COR15で示される化合物におけるR14及R15がすべて、炭素数2以上5以下の同じアルキル基であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の固体酸触媒の製造方法は、請求項6に記載の通り、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の固体酸触媒の製造方法において、上記テンプレート剤として、上記組合せBを用い、かつ、該組合せBにおける、R〜R11、及び、化学式R14COR15で示される化合物におけるR14及R15がすべて、炭素数2以上5以下の同じアルキル基であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の固体酸触媒の製造方法は、請求項7に記載の通り、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の固体酸触媒の製造方法において、上記テンプレート剤として、上記組合せCを用い、かつ、該組合せCにおける、R12およびR13、及び、化学式R14COR15で示される化合物におけるR14及R15がすべて、炭素数2以上5以下の同じアルキル基であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の固体酸触媒の製造方法によれば廃碍子、廃光ファイバ、あるいは、スート法などによる光ファイバ製造過程で発生する微細な二酸化ケイ素粉末廃棄物(白色スート)や、光ファイバへの延伸工程で発生する端材(石英ガラス不利用物)などの産業廃棄物を原料として有効利用することができ、生産性が良好で、かつ、低コストで、粒径の大きい、高純度で均一な、高性能の固体酸触媒が得られる。
【0018】
請求項2〜3に記載の固体酸触媒の製造方法によれば、これら廃棄物を有効利用することができ、また、同時に、原料コストを低く抑えることができるとともに、これら産業廃棄物の有効で理想的な新規な処理方法となる。
【0019】
請求項4〜7に記載の固体酸触媒の製造方法によれば、テンプレート剤を選択することで、所定の細孔を有する固体酸触媒が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明において、含珪素無機化合物としては、廃碍子、廃光ファイバ、あるいは、スート法などによる光ファイバ製造過程で発生する微細な二酸化ケイ素粉末廃棄物(白色スート)や、光ファイバへの延伸工程で発生する端材(石英ガラス不利用物)などの産業廃棄物を用いても良い。これら廃棄物を有効利用することができ、また、同時に、原料コストを低く抑えることができるとともに、これら産業廃棄物の有効で理想的な新規な処理方法となる
【0021】
これらは適当な大きさ、例えば、粒径が0.1μm以上0.1mm以下程度になるように粉砕、破砕等の手段に調整して用いることが、固体酸触媒の生成反応速度が高くなるので好ましい。
【0022】
光ファイバを用いる場合には、通常は充分に細いので、取り扱いが容易で、かつ、圧力容器へ収納できる程度に切断すれば良い。また、光ファイバの表面に保護樹脂が塗布されている場合があるが、この樹脂層は通常は非常に薄いので除去することなく使用することができる。
【0023】
碍子を原料として用いる場合、碍子中に含有されるアルミニウム含有量が多い場合には、碍子は含珪素無機化合物としてのみならず、含アルミニウム無機化合物としても機能し、この場合も本発明に含まれる。このとき、用いる碍子中のアルミニウム含有量が多い場合には、例えば、廃光ファイバ、あるいは、スート法などによる光ファイバ製造過程で発生する微細な二酸化ケイ素粉末廃棄物(白色スート)や、光ファイバへの延伸工程で発生する端材(石英ガラス不利用物)などのアルミニウム含有率の低いものを含珪素無機化合物として併用し、原料中のアルミニウム原子の数を1としたときの、原料中の珪素の原子の数(この比をケイバン比とも云う)を調製する。
【0024】
原料において含アルミニウム無機化合物としては上記のように適当量アルミニウム成分を含む廃棄碍子を用いることが、産業廃棄物の有効利用の点で好ましいが、碍子以外に、石炭灰、廃陶石粉砕物、陶器粉砕物、磁器粉砕物、アルミドロス、廃金属アルミニウム等を用いることができ、これらも例えば、粒径が0.1μm以上0.1mm以下程度となるように粉砕、破砕等の手段により調整して用いることが固体酸触媒の生成反応速度が高くなるので好ましい。
【0025】
本発明における原料中のアルミニウム原子の数を1としたときの、原料中の珪素の原子の数、すなわちケイバン比は7.5以上であることが必要である。このようにすることにより、従来の固体酸触媒の製造方法よりも、迅速で、かつ、粒径の大きい固体酸触媒を得ることができる。さらに望ましいケイバン比は5000以上である。
【0026】
本発明における原料において、テンプレート剤は固体酸触媒の細孔の形状・大きさを決定する重要な働きをする。すなわち、固体酸触媒の、主として珪素・酸素四面体構造、及び、アルミニウム・酸素四面体構造からなる立体骨格はこのテンプレート剤を囲むようにして形成される。従ってテンプレート剤の形状・大きさの選択は重要である。
【0027】
ここで、本発明では、テンプレート剤としては、第四アンモニウム塩、ないし、第四アンモニウム塩状の立体構造を形成する化合物の組合せを用いる。このようなものとして、下記化学式1で示される化合物、
【化3】

式中R〜Rはアルキル基、Xはハロゲン化物イオンまたは水酸化物イオン
下記化学式2で示される化合物、化学式RX(式中Rはアルキル基、Xはハロゲン化物イオンまたは水酸化物イオン)で示される化合物、及び、化学式R14COR15で示される化合物(式中R14及びR15はアルキル基)の組合せA、
【化4】

式中R〜Rはアルキル基
化学式RNHR10(式中RおよびR10はアルキル基)で示される化合物、化学式R11X(式中R11はアルキル基、Xはハロゲン化物イオンまたは水酸化物イオン)で示される化合物、及び、化学式R14COR15で示される化合物(式中R14及びR15はアルキル基)の組合せB、あるいは、化学式NH12で示される化合物(式中R13はアルキル基)、化学式R13X(式中R13はアルキル基、Xはハロゲン化物イオンまたは水酸化物イオン)で示される化合物、及び、化学式R14COR15で示される化合物(式中R14及びR15はアルキル基)の組合せCなどが挙げられる。
【0028】
ここで、得られる固体酸触媒の、主として珪素・酸素四面体構造、及び、アルミニウム・酸素四面体構造からなる立体骨格に欠陥が生じないよう、第四アンモニウム塩、ないし、第四アンモニウム塩状の立体構造を形成する化合物の組合せは正四面体構造を形成するものとなることが望ましく、そのため、上記テンプレート剤として、上記組合せAを用いる場合にはR〜Rがすべておなじアルキル基であることが望ましく、また、得られる固体酸触媒の触媒機能が高くなるために、このようなアルキル基の炭素数としては2以上5以下であることが望ましい。
【0029】
同様に、上記テンプレート剤として、上記組合せBを用いる場合には、R〜R11が同じアルキル基であることが望ましく、またこれらアルキル基の炭素数は2以上5以下であることが望ましい。なお、化学式2で示される化合物と化学式RXで示される化合物との配合比は1:2ないしその近傍とすることが望ましい。
【0030】
さらに、上記テンプレート剤として、上記組合せCを用いる場合には、R12とR13とが同じアルキル基であることが望ましく、またこれらアルキル基の炭素数は2以上5以下であることが望ましい。なお、化学式NH12で示される化合物と化学式R13Xで示される化合物との配合比は1:3ないしその近傍とすることが望ましい。
【0031】
本発明においてテンプレート剤は通常、上記の内、いずれか1つ(1つの組合せ)を用いるが、これらを2つ以上組み合わせて用いても良い。
【0032】
これらテンプレート剤は配合物中原料における珪素重量を1としたときに対して、通常、0.1以上0.5以下となるように配合する。配合量が0.1未満であると反応が遅延して収率が低くなりやすく、0.5超であると有機化合物どうしの反応、つまり副反応が起こり、テンプレート剤が有効に用いられずに無駄となり、あるいは、固体酸触媒生成反応を阻害する可能性もある。好ましい範囲は0.15以上0.45以下である。
【0033】
本発明の固体酸触媒の製造方法では、組合せA〜Cでは、化学式R14COR15で示される化合物(式中R14及びR15はアルキル基)、いわゆるケトン類の配合を行う。
【0034】
ここでR14及びR15は同じものであることが好ましく、さらに、組合せA〜Cで併用するアミンのアルキル基と同じものであることがより好ましい。
【0035】
これらケトン類は配合物中原料における珪素重量を1としたときに対して、通常、0.01以上5以下となるように配合する。配合量が0.01未満であると反応が遅延して収率が低くなりやすく、5超であると有機化合物どうしの反応、つまり副反応が起こり、原料が無駄となり、あるいは、固体酸触媒生成反応を阻害する可能性もある。
【0036】
本発明の固体酸触媒の製造方法では、原料に水を配合する。水は配合物中原料における珪素重量を1としたときに対して、通常、2以上50以下となるように配合する。配合量が2未満であると反応物のスラリー化が困難となり反応を進行させることが困難となり、50超であるとスラリー濃度が低すぎて反応速度が低くなりやすい。
【0037】
本発明の原料には、水酸化ナトリウムを添加する。水酸化ナトリウムにより原料中の含珪素無機化合物から珪素成分を取り出し、珪素・酸素四面体構造、及び、アルミニウム・酸素四面体構造からなる立体骨格を形成させる反応を可能とする。水酸化ナトリウムの添加量としては原料における珪素重量を1としたときに対して、通常、0.01以上1以下となるように配合する。添加量が0.01未満であると反応速度が低下して実用的でなくなり、一方、1超であると所望の生成物が得られなくなったり、収率が低下する。好ましい範囲としては0.02以上0.5以下である。
【0038】
また、必要に応じて塩化ナトリウムを添加しても良い。その添加量としては原料における珪素重量を1としたときに対して、0.005以上2以下となるように配合する。添加量が0.005以下であると反応速度が低下して実用的でなくなる場合があり、2超であると所望の生成物が得られなくなったり、収率が低下する場合もある。好ましい範囲は0.05以上0.5以下である
【0039】
これら原料を密閉容器(反応容器)内に入れ、熱処理(第1の加熱処理)することにより固体酸触媒の、主として珪素・酸素四面体構造、及び、アルミニウム・酸素四面体構造からなる立体骨格を形成することができる。第1の加熱処理は100℃以上250℃以下の温度で行うことが好ましい。100℃未満であると熱処理時間が長くなって実用的でなくなる。一方、250℃以上とすると、装置にかかるコストが大きくなりすぎる。望ましい処理温度は140℃以上180℃以下である。
【0040】
この加熱反応時間としては、予め検討して決定するが、例えば、140℃での処理では、通常10時間以上20時間以下であり、一般に、温度が低いときには長くし、温度が高ければ、短くする。
【0041】
熱処理終了後、通常は冷却後に、反応容器から反応物を取り出し、必要に応じて水、アルコール等などで適宜洗浄後、乾燥したのち、酸素含有雰囲気下で第2の加熱処理を行う。
【0042】
第2の加熱処理では、第1の加熱処理で形成された主として珪素・酸素四面体構造、及び、アルミニウム・酸素四面体構造からなる立体骨格内のテンプレート剤を雰囲気中の酸素(例えば空気中の酸素ガス)により酸化除去する。このとき、例えば500℃以上で行う。上記骨格は耐熱性が高いが、コスト的な要因により、通常は600℃以下で行う。このような酸化処理により、固体触媒が得られる。
【実施例】
【0043】
以下に本発明の実施例について具体的に説明する。
<実施例1>
原料としては、含珪素無機化合物兼含アルミニウム無機化合物としてスート法による光ファイバ製造過程で発生した微細な二酸化ケイ素粉末(白色スート)(ケイバン比5000)を、テンプレート剤としては、テトラプロピルアンモニウムブロマイドを用いた。
【0044】
二酸化ケイ素粉末を7kg、テトラプロピルアンモニウムブロマイドを3kg、さらに、水酸化ナトリウム0.5kgを水89.4kgに溶解したアルカリ溶液を、圧力容器内に仕込んだ後110℃に80時間保った。このときの容器内圧力は0.04MPa(大気圧との差)であった。
【0045】
80時間後得られた試料を濾過し、乾燥させ中間体(内部にテンプレート剤が配されている)を得た。
【0046】
次いでこの中間体を空気中で550℃の温度で10分熱処理を行い、本発明に係る、固体酸触媒4.9kgを得た。顕微鏡による観察の結果、粒子の大きさは1〜3.5μmで平均は1.74μmであった。
【0047】
得られた固体酸触媒のX線回折解析を行った。その結果(X線回折パターン)を図1に、また、市販のZSM−5のX線回折パターンを図2に示した。
【0048】
図1及び図2により、本発明に係る試料のX線回折パターンは、ZSM−5での解析結果とほぼ一致していることが判る。このことから、本発明の固体酸触媒の製造方法によって高性能の固体酸触媒として知られているZSM−5タイプのゼオライトが製造できることが確認された。また、実施例1の試料の走査型電子顕微鏡写真を図3に示す。
【0049】
<実施例2>
実施例1の処理条件である110℃、80時間を150℃、8時間(このときの容器内圧力は0.37MPa(大気圧との差))とした以外はすべて同様にして、本発明に係る固体酸触媒5.2kgを得た。顕微鏡による観察の結果、粒子の大きさは4.5〜11.0μmで平均は6.64μmと、大きかった。また、このものの回折スペクトルから、ZSM−5タイプのゼオライトであることが確認された。実施例2に係る試料の走査型電子顕微鏡写真を図4に示す。
【0050】
<実施例3>
実施例1の処理条件である110℃、80時間を180℃、1時間(このときの容器内圧力は0.90MPa(大気圧との差))とした以外はすべて同様にして、本発明に係る固体酸触媒6.45kgを得た。顕微鏡による観察の結果、粒子の大きさは7.5〜12.0μmで平均は9.95μmと、大きかった。また、このものの回折スペクトルから、ZSM−5タイプのゼオライトであることが確認された。
この実施例3に係る試料の走査型電子顕微鏡写真を図5に示す。
【0051】
上記一連の結果から、110〜180℃の範囲で反応温度を高くすることで、反応時間を短くすることが可能となると共に、得られる固体酸触媒の粒径が大きくなり、かつ、収率が向上することが判る。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、碍子や光ファイバ、あるいはスート法などによる光ファイバ製造過程で発生する微細な二酸化ケイ素粉末廃棄物(白色スート)や、光ファイバへの延伸工程で発生する端材(石英ガラス不利用物)などの産業廃棄物を原料として有効利用することができ、生産性が良好で、かつ、低コストで、粒径の大きい高性能の固体酸触媒が得られ、このような固体酸触媒は、NOx分解分野は勿論、従来は高価格であったために応用できなかった分野に広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例1の固体酸触媒のX線回折パターンである。
【図2】市販の固体酸触媒ZSM−5のX線回折パターンである。
【図3】実施例1に係る固体酸触媒の走査型電子顕微鏡である。
【図4】実施例2に係る固体酸触媒の走査型電子顕微鏡である。
【図5】実施例3に係る固体酸触媒の走査型電子顕微鏡である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で示される化合物、
【化1】

式中R〜Rはアルキル基、Xはハロゲン化物イオンまたは水酸化物イオン
下記化学式2で示される化合物、化学式RX(式中Rはアルキル基、Xはハロゲン化物イオンまたは水酸化物イオン)で示される化合物、及び、化学式R14COR15で示される化合物(式中R14及びR15はアルキル基)の組合せA、
【化2】

式中R〜Rはアルキル基
化学式RNHR10(式中RおよびR10はアルキル基)で示される化合物、化学式R11X(式中R11はアルキル基、Xはハロゲン化物イオンまたは水酸化物イオン)で示される化合物、及び、化学式R14COR15で示される化合物(式中R14及びR15はアルキル基)との組合せB、及び、
化学式NH12で示される化合物(式中R13はアルキル基)、化学式R13X(式中R13はアルキル基、Xはハロゲン化物イオンまたは水酸化物イオン)、及び、化学式R14COR15で示される化合物(式中R14及びR15はアルキル基)で示される化合物との組合せCから選ばれる1つ以上のテンプレート剤、
含珪素無機化合物、含アルミニウム無機化合物、及び、水を、原料中のアルミニウム原子の数を1としたときの、原料中の珪素の原子の数が7.5以上となるように調製した後、密閉容器内で第1の加熱処理を行い、その後、酸素含有雰囲気下で第2の加熱処理を行うことを特徴とする固体酸触媒の製造方法。
【請求項2】
上記含珪素無機化合物が、碍子からなることを特徴とする請求項1に記載の固体酸触媒の製造方法。
【請求項3】
上記含珪素無機化合物が廃光ファイバ、光ファイバ製造過程で発生する二酸化ケイ素粉末廃棄物、石英ガラス不利用物から選ばれる1つ以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の固体酸触媒の製造方法。
【請求項4】
上記テンプレート剤として、上記化学式1で示される化合物を用い、かつ、該化学式中のR〜Rがすべて、炭素数2以上5以下の同じアルキル基であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の固体酸触媒の製造方法。
【請求項5】
上記テンプレート剤として、上記組合せAを用い、かつ、該組合せAにおける、R〜R、及び、化学式R14COR15で示される化合物におけるR14及R15がすべて、炭素数2以上5以下の同じアルキル基であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の固体酸触媒の製造方法。
【請求項6】
上記テンプレート剤として、上記組合せBを用い、かつ、該組合せBにおける、R〜R11、及び、化学式R14COR15で示される化合物におけるR14及R15がすべて、炭素数2以上5以下の同じアルキル基であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の固体酸触媒の製造方法。
【請求項7】
上記テンプレート剤として、上記組合せCを用い、かつ、該組合せCにおける、R12およびR13、及び、化学式R14COR15で示される化合物におけるR14及R15がすべて、炭素数2以上5以下の同じアルキル基であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の固体酸触媒の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−6436(P2008−6436A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166004(P2007−166004)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000220642)東京電設サービス株式会社 (21)
【出願人】(390028244)プロメトロンテクニクス株式会社 (3)
【Fターム(参考)】