説明

固体電解質燃料電池

【課題】電池セルとフレームとの間のシール性を向上できる固体電解質燃料電池を提供する。
【解決手段】電解質膜16の一方の面にカソード14、他方の面にアノードアノード12を備えるセル11と、セル11が収納されたセルフレーム51と、セル11の外周面11aとセルフレーム51との間をシールするシール部58と、を有し、セル11は、アノード12がカソード14よりも厚く形成され、セルフレーム51は、セル11の外周面11aからアノード14に亘ってセル11を収容する収容部54を備え、シール部58は、セル11の外周面11aを収容部54に対してセラミック接着剤56で固定し、セラミック接着剤56にガラス粒子を分散したガラス封着材57を、カソード14側からカソード14の厚さ以上に染み込ませ、熱処理することにより、セル11の外周面11aとセルフレーム51との間をシールしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、燃料電池の電解質にセラミックス系の平板型固体電解質膜を用い、この電解質膜をアノードとカソードとで両側から挟んでセル(電池セル)を形成した固体酸化物型燃料電池(以下、SOFCという)が知られている。このSOFCは、ダイレクト・メタノール型燃料電池等の固体高分子型燃料電池に比べ発電効率が高く、また燃料ガスとして水素ガス以外に一酸化炭素やメタン等、炭化水素系燃料全般をそのまま利用できる。さらに、作動温度が高いため、反応にPt(白金)のように高価な触媒を利用せずに済む、等のメリットがある。
【0003】
上述したセルは、その両面がシール材を介してセパレータにより挟持されている。各セパレータのうち、カソード側に配置されたセパレータにはカソードに酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス流路が形成される一方、アノード側に配置されたセパレータにはアノードに燃料ガスを供給する燃料ガス流路が形成されている。
ここで、セルとセパレータとの間を封止するシール材としては、高い作動温度に対応するため、例えば特許文献1のように、YSZ等のセラミック材料を用いる構成が記載されている。また、例えば特許文献2に示されるように、ガラス材料及び希釈材料により構成された粘性ガラス体を用いる構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−154525号公報
【特許文献2】特開2002−141083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1の構成にあっては、シール材が多孔質であるため、シール性が低いという問題がある。
また、特許文献2の構成にあっては、燃料電池の作動時において粘性ガラスが融液状態に保持されるため、圧力や熱膨張差に起因する微小な動きの繰り返しにより、セルとセパレータとの間からガラス材料が流れ出してしまう虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、電池セルとフレームとの間のシール性を向上できる固体電解質燃料電池を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、平板状の固体電解質(例えば、実施形態における電解質膜16)の一方の面にカソード極(例えば、実施形態におけるカソード14)、他方の面にアノード極(例えば、実施形態におけるアノード12)を備える電池セル(例えば、実施形態におけるセル11)と、該電池セルが収納されたフレーム(例えば、実施形態におけるセルフレーム51)と、前記電池セルの周辺端部(例えば、実施形態における外周面11a)と前記フレームとの間をシールするシール部(例えば、実施形態におけるシール部58)と、を有し、前記電池セルは、前記アノード極が前記カソード極よりも厚く形成され、前記フレームは、前記電池セルの周辺端部から前記一方の面に亘って前記電池セルを収容する収容部(例えば、実施形態における収容部54)を備え、前記シール部は、前記電池セルの周辺端部を前記収容部に対してセラミック接着剤(例えば、実施形態におけるセラミック接着剤56)で固定し、該セラミック接着剤にガラス粒子を分散したガラス封着材(例えば、実施形態におけるガラス封着材57)を、前記カソード極側から前記カソード極の厚さ以上に染み込ませ、熱処理することにより、前記電池セルの前記周辺端部と前記フレームとの間をシールしたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載した発明では、前記セラミック接着剤、前記フレーム、及び前記電池セルの熱膨張率を同一に設定したことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載した発明では、前記電池セルと前記フレームとの間をシールした後に、前記電池セルの周辺端部における前記カソード極側にスペーサ(例えば、実施形態におけるスペーサ55)を間に挟んでカバー部材(例えば、実施形態におけるカバープレート78)を配置し、前記カバー部材と、前記フレームと、を固定することで、前記カバー部材及び前記フレーム間に前記電池セルを挟持したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載した発明によれば、ガラス封着材がセラミック接着剤の多孔質内を埋めるように含浸されるため、セラミック接着剤を封止して電池セルと収容部との間のシール性を向上させることができる。この場合、ガラス封着材は、セラミック接着剤の多孔質内に一旦入り込めば、セラミック接着剤の多孔質内から流出する虞はないので、電池セルと収容部との間を単にガラス材料によりシールする場合と異なり、シール性を長期に亘って維持できる。
また、セルの周辺端部において、ガラス封着材をカソード極の厚さ以上に形成することで、アノード極やカソード極の多孔質を介して反応ガスが流通するのを防止できるので、電池セルと収容部との間を確実にシールできる。
さらに、アノード極よりも厚さの薄いカソード極側にガラス封着材を形成するので、アノード極とカソード極との間をガラス封着材により確実に封止できるとともに、材料コストの低減を図ることができる。
【0011】
請求項2に記載した発明によれば、フレーム、セラミック接着剤、及びガラス封着材の熱膨張率を同一にすることで、熱膨張の差により発生する歪み等を抑制できるため、セラミック接着剤が剥がれたり、セルフレームの収容部と電池セルとの間に隙間ができたりするのを抑制できる。これにより、長期間に亘ってシール性を維持できる。
【0012】
請求項3に記載した発明によれば、電池セルの他方の面において、スペーサを間に挟んでフレームとカバー部材とを先に固定し、電池セルを厚さ方向両側から挟持しておくことで、その後の組み付け時においても電池セルがセラミック接着剤から剥がれる虞がない。これにより、長期間に亘ってシール性を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】燃料電池モジュールの分解斜視図である。
【図2】燃料電池モジュールの断面図である。
【図3】第1ガスケットの平面図である。
【図4】インターコネクタの斜視図である。
【図5】図4のA−A線に相当する断面図である。
【図6】燃料電池モジュールの他の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、燃料電池モジュールの分解斜視図であり、図2は断面図である。
図1,図2に示すように、燃料電池モジュール10は、SOFCのセル(電池セル)11がモジュール化されて構成されている
セル11は、セラミックス系の平板型固体電解質膜(以下、電解質膜という)16をアノード12とカソード14とで両側から挟み込んで形成されている。本実施形態のセル11は、いわゆるアノードサポート型のセル11であって、アノード12の厚さがカソード14よりも厚くなっている。具体的に、本実施形態のセル11は、電解質膜16の厚さが0.5μm〜30μm程度、アノード12の厚さが100μmから1000μm程度、カソード14の厚さが1μmから100μm程度に形成されている。なお、セル11の電解質膜16は、例えばYSZ(Yttria Stabilized Zirconia)等の材料で構成されている。アノード12は例えばニッケルとYSZとの焼結体で構成され、カソード14は例えばランタン、ストロンチウム、マンガンの焼結体で構成されている。
【0015】
また、セル11には図示しない燃料ガス供給手段からアノード12に向けて燃料ガス(例えば、HC系ガス燃料)が供給され、図示しない酸化剤ガス供給手段からカソード14に向けて酸化剤ガス(例えば、空気)が供給されるようになっている。
【0016】
燃料電池モジュール10は、後述する各構成品が厚さ方向に沿って積層されてなり、反応ガス(燃料ガス及び酸化剤ガス)の流通方向を長手方向とする平板状に形成されている。燃料電池モジュール10には、セル11を燃料電池モジュール10に固定するための第1固定孔41と、各構成品同士を固定するための第2固定孔42と、が形成されている。さらに、燃料電池モジュール10の各角部近傍には、各供給手段から供給される酸化剤ガス及び燃料ガスが流通する酸化剤ガス連通孔44、及び燃料ガス連通孔45と、セル11で発電に供された燃料排ガス及び酸化剤排ガスが流通する酸化剤排ガス連通孔46、及び燃料排ガス連通孔47と、が各構成品の積層方向に沿ってそれぞれ形成されている。
【0017】
具体的に、燃料電池モジュール10は、セル11を支持するセルフレーム(フレーム)51を備えている。セルフレーム51は、平面視形状がセル11よりも大きい矩形状の板材であり、その中央部には厚さ方向に沿って貫通する貫通孔52が形成されている。貫通孔52は、セル11の外形よりも僅かに大きい矩形状に形成され、厚さ方向一端側の内周縁には周方向全周に亘って台座部53が形成されている。そして、セル11は、セルフレーム51の厚さ方向他端側から貫通孔52内にアノード12を向けた状態で挿入されることで、アノード12の外周側が台座部53に支持される。これにより、セル11が貫通孔52内に収容される。この際、セル11の厚さ方向に沿う外周面(周辺端部)11aが貫通孔52内に配置されるとともに、アノード12の外周側が台座部53に支持されている。すなわち、貫通孔52及び台座部53により、セル11の外周面11aからアノード12に亘ってセル11を収容する収容部54が形成されている。
【0018】
収容部54の貫通孔52内には、枠型のスペーサ55が挿入されている。スペーサ55は、収容部54内におけるセル11を間に挟んで台座部53の反対側で、カソード14の外周側に当接している。これにより、セル11の外周側は収容部54の台座部53と、スペーサ55と、により厚さ方向で挟持されている。
【0019】
ここで、セル11は、セラミック接着剤56を介して収容部54内に固定されている。具体的に、セラミック接着剤56は、セルフレーム51の断面視で台座部53の内面から貫通孔52の厚さ方向中途部に亘って塗布されるとともに、平面視で収容部54の周方向全域に亘って塗布されている。すなわち、セラミック接着剤56は、セル11の外周面11aと貫通孔52の内面との間において、セル11の厚さ方向及び周方向全域に亘って介在するとともに、セル11におけるアノード12の外周部と台座部53との間においてセル11の周方向全域に亘って介在している。これにより、セル11がセルフレーム51の収容部54内で接着固定されている。
【0020】
さらに、セラミック接着剤56には、微小なガラス粒子が分散されてなるガラス封着材57が含浸されている。ガラス封着材57をセラミック接着剤56に染み込ませるためには、まずセル11の外周面11aと貫通孔52の内面との間に介在するセラミック接着剤56に向けて、上述したガラス粒子を微粒子にして液体に分散させた状態で、カソード14側から塗布する。すると、ガラス微粒子は、毛細管現象によりセラミック接着剤56の多孔質内に侵入する。その後、熱処理を行いガラス粒子を溶融させることで、溶融したガラス粒子がセラミック接着剤56の多孔質内に定着する。これにより、ガラス封着材57がセラミック接着剤56の多孔質内を埋めた状態となる。この際、ガラス封着材57は、セル11の厚さ方向においてカソード14よりも厚く形成されている。そして、これらセラミック接着剤56及びガラス封着材57により、セル11とセルフレーム51の収容部54との間をシールするシール部58を構成している。
【0021】
なお、セラミック接着剤56、及びガラス封着材57は、それぞれ熱膨張率がセルフレーム51と同等の材料により形成されている。
また、セラミック接着剤56、及びガラス封着材57の融点は、燃料電池モジュール10の作動温度(例えば、600℃以上)よりも高くなっている。ただし、ガラス封着材57は微小なガラス粒子であるため、セラミック接着剤56の多孔質内に一旦入り込めば、ガラス封着材57の融点が燃料電池モジュール10の作動温度よりも低い場合であっても、セラミック接着剤56の多孔質内から流出する虞はない。
【0022】
上述した収容部54内には、セル11を厚さ方向両側から挟持するように一対の集電部材61が配置されている。各集電部材61のうち、一方の集電部材61aは、スペーサ55の内側に配置され、他方の集電部材61bは、台座部53の内側に配置されている。集電部材61は、メッシュ状に形成され、セル11の面内方向での反応ガスの流通を可能としている。また、集電部材61は、厚さ方向一端側がセル11(アノード12またはカソード14)に接触しているとともに、厚さ方向他端側が後述する第1ガスケット62を介して後述するインターコネクタ63に接触している。これにより、セル11で発電された電力が集電部材61を介してインターコネクタ63で取り出される。また、セルフレーム51の短手方向両側には、短手方向における幅が互いに縮小するように切り欠かれた一対の切欠き部64a,64bが形成されている。
【0023】
図3は第1ガスケットの平面図である。なお、各第1ガスケット62は表裏で対称の部材であるため、図3ではセル11のカソード14側に配置される第1ガスケット62aのみを示す。
図1〜図3に示すように、セルフレーム51の厚さ方向両側には、平面視でセルフレーム51と同等の外形に形成された第1ガスケット62が配置されている。各第1ガスケット62は、マイカ等の絶縁材料からなり、セルフレーム51の切欠き部64a,64bと重なる位置切欠き部65a,65bが形成されている。
【0024】
各第1ガスケット62のうち、一方の第1ガスケット62aは、セル11に対してカソード14側に配置され、その中央部には酸化剤ガス流路66が形成されている。酸化剤ガス流路66は、第1ガスケット62aを厚さ方向に貫通する略六角形状の貫通孔であり、酸化剤ガス流路66及びスペーサ55の内側を通じてセル11のカソード14が露出している。酸化剤ガス流路66の一端側(上流側)には、酸化剤ガス連通孔44との間を接続する酸化剤ガス接続流路67が形成されるとともに、他端側(下流側)には、酸化剤排ガス連通孔46との間を接続する酸化剤排ガス接続流路68が形成されている。
【0025】
また、各第1ガスケット62のうち、他方の第1ガスケット62bは、セル11に対してアノード12側に配置され、その中央部には燃料ガス流路71が形成されている。燃料ガス流路71は、第1ガスケット62bを厚さ方向に貫通する略六角形状の貫通孔であり、燃料ガス流路71及び台座部53の内側を通じてセル11のアノード12が露出している。燃料ガス流路71の一端側(上流側)には、燃料ガス連通孔45との間を接続する燃料ガス接続流路72が形成されるとともに、燃料ガス流路71の他端側(下流側)には、燃料排ガス連通孔47との間を接続する燃料排ガス接続流路73が形成されている。
【0026】
図4はインターコネクタの斜視図である。なお、各インターコネクタ63は表裏で対称の部材であるため、図4ではセル11のカソード14側に配置されるインターコネクタ63aのみを示す。
図1,図2,図4に示すように、各第1ガスケット62を間に挟んでセルフレーム51の両側には、上述した各流路66,71及び接続流路67,68,72,73をそれぞれ閉塞するように、それぞれインターコネクタ63が配置されている。インターコネクタ63は、例えばCrofer22APU(ティッセンクルップ社製)に金メッキを施したものからなり、平面視でセルフレーム51と同等の外形に形成されている。
【0027】
なお、各インターコネクタ63に形成された固定孔41,42の外径は、他の構成品に形成された固定孔41,42に比べて大きく形成されている。
また、図5に示すように、各インターコネクタ63における連通孔44〜47の内周縁には、後述する第2ガスケット76に形成された反応ガスの連通孔44〜47に向けて立設されたリング部70が形成されている。これらリング部70は、第2ガスケット76の各連通孔44〜47内にそれぞれ挿入されて、第2ガスケット76とインターコネクタ63との位置決めを行うものである。なお、図5は、図4のA−A線に相当する断面を示しており、第2ガスケットとインターコネクタとの連結状態を説明するための説明図である。
【0028】
また、図1,図2,図4に示すように、インターコネクタ63のうち、カソード14側に配置されたインターコネクタ63aには、例えば上述した第1ガスケット62に形成された一対の切欠き部65a,65bのうち、一方の切欠き部65bと重なる位置に切欠き部74が形成されている。アノード12側に配置されたインターコネクタ63bには、他方の切欠き部65aと重なる位置に切欠き部75が形成されている。
【0029】
図1,図2に示すように、各インターコネクタ63を間に挟んで、第1ガスケット62の反対側には、それぞれ第2ガスケット76が配置されている。各第2ガスケット76は、マイカ等の絶縁材料からなり、平面視でセルフレーム51と同等の外形に形成されるとともに、セルフレーム51の切欠き部64a,64bと重なる位置に切欠き部77a,77bが形成されている。
【0030】
そして、第2ガスケット76を間に挟んでインターコネクタ63の反対側には、それぞれカバープレート78が配置されている。各カバープレート78は、平面視でセルフレーム51と同等の外形に形成されるとともに、セルフレーム51の切欠き部64a,64bと重なる位置に切欠き部79a,79bが形成されている。
【0031】
すなわち、カソード14側に配置されたインターコネクタ63aにおいて、燃料電池モジュール10における切欠き部64a,65a,75,77a,79aを通じて露出する部分が、燃料電池モジュール10で発電された電力を外部に取り出すための配線が接続される端子部81を構成している。
一方、アノード12側に配置されたインターコネクタ63bにおいて、燃料電池モジュール10における切欠き部64b,65b,74,77b,79bを通じて露出する部分が、燃料電池モジュール10で発電された電力を外部に取り出すための配線が接続される端子部82を構成している。
【0032】
各カバープレート78のうち、アノード12側に配置されたカバープレート78bには、上述したセル11を固定するための第1固定孔41、及び反応ガスの連通孔44〜47は形成されていない。すなわち、カバープレート78bにより、燃料電池モジュール10に形成された各第1固定孔41及び連通孔44〜47を閉塞している。
【0033】
燃料電池モジュール10の各第1固定孔41には、カソード14側に配置されたカバープレート78a側からセル固定ボルト84がそれぞれ挿入されている。この場合、各第1固定孔41のうち、セルフレーム51の第1固定孔41の内面に、雌ねじ部を形成することで、セル固定ボルト84がセルフレーム51の第1固定孔41に螺合される。これにより、セル11がセルフレーム51とカバープレート78aとの間で挟持される。
この場合、カバープレート78aの第1固定孔41を厚さ方向に沿って漸次内径が縮小するテーパ状に形成するとともに、セル固定ボルト84に皿ボルトを用いることで、セル固定ボルト84の頭部が第1固定孔41内に収容される。これにより、カバープレート78aの表面とセル固定ボルト84の頭部とを面一に形成できる。
【0034】
また、燃料電池モジュール10の各第2固定孔42には、カバープレート78b側からモジュールボルト85がそれぞれ挿入されている。この場合、各第2固定孔42のうち、カバープレート78aの第2固定孔42の内面に、雌ねじ部を形成することで、モジュールボルト85がカバープレート78aに螺合される。これにより、カバープレート78a,78b間が連結され、燃料電池モジュール10の各構成品が一体化される。
この場合、カバープレート78bの第2固定孔42を厚さ方向に沿って漸次内径が縮小するテーパ状に形成するとともに、モジュールボルト85に皿ボルトを用いることで、モジュールボルト85の頭部が第2固定孔42内に収容される。これにより、カバープレート78bの表面とモジュールボルト85の頭部とを面一に形成できる。
【0035】
なお、この場合、セルフレーム51とカバープレート78aとを先にセル固定ボルト84により締結し、セル11を厚さ方向両側から挟持しておくことで、その後モジュールボルト85により燃料電池モジュール10を一体化する際に集電部材61bの接触圧力によりセル11がセラミック接着剤56から剥がれる虞がない。
【0036】
また、上述したようにインターコネクタ63の固定孔41,42の外径を、他の構成品における固定孔41,42に比べて大きく形成することで、ボルト84,85がインターコネクタ63の固定孔41,42内では遊挿された状態となる。これにより、インターコネクタ63とカバープレート78との間が、ボルト84,85を介して短絡するのを防止できる。
【0037】
(燃料電池モジュールの動作方法)
次に、上述した燃料電池モジュール10の動作方法について説明する。なお、以下の説明では、燃料ガス及び燃料排ガスをF1(図中実線)、酸化剤ガス及び酸化剤排ガスをF2(図中鎖線)として説明する。
まず、図1,図2に示すように、燃料電池モジュール10を所定温度に加熱しつつ、燃料ガス供給手段から燃料ガスF1を供給するとともに、酸化剤ガス供給手段から酸化剤ガスF2を供給する。
燃料ガス供給手段から供給される燃料ガスF1は、燃料電池モジュール10の燃料ガス連通孔45に供給される。燃料ガス連通孔45内に供給された燃料ガスF1は燃料ガス連通孔45を燃料電池モジュール10の積層方向に沿って流通し、第1ガスケット62bの燃料ガス連通孔45から燃料ガス接続流路72内に流入する。そして、燃料ガスF1は、燃料ガス接続流路72を経て燃料ガス流路71に流入し、燃料ガス流路71内でセル11のアノード12に到達する。
【0038】
一方、酸化剤ガス供給手段から供給される酸化剤ガスF2は、燃料電池モジュール10の酸化剤ガス連通孔44に供給される。酸化剤ガス連通孔44内に供給された酸化剤ガスF2は酸化剤ガス連通孔44を燃料電池モジュール10の積層方向に沿って流通し、第1ガスケット62aの酸化剤ガス連通孔44から酸化剤ガス接続流路67内に流入する。そして、酸化剤ガスF2は、酸化剤ガス接続流路67を経て酸化剤ガス流路66に流入し、酸化剤ガス流路66内でセル11のカソード14に到達する。
【0039】
ここで、酸化剤ガス流路66を流通する酸化剤ガスF2がカソード14に到達すると、カソード14において触媒反応により酸化物イオンとなる。すると、カソード14で発生した酸化物イオンが、電解質膜16を透過してアノード12まで移動する。
一方、燃料ガス流路71内を流通する燃料ガスF1がアノード12に到達すると、アノード12に到達した燃料ガスF1と、アノード12まで移動した酸化物イオンとが結合する。この反応過程において、電子を放出することで発電が行われる(H+O2−→HO+2e)。なお、セル11で発電された電力は集電部材61を介してインターコネクタ63で取り出され、インターコネクタ63の端子部81,82から配線を介して外部に取り出される。
【0040】
セル11で発電に供された燃料排ガスF1は、燃料ガス流路71から燃料排ガス接続流路73に流出し、燃料排ガス接続流路73から燃料排ガス連通孔47内に流出する。そして、燃料排ガスF1は、燃料排ガス連通孔47を燃料電池モジュール10の積層方向に沿って流通した後、燃料電池モジュール10から排出される。
【0041】
一方、セル11で発電に供された酸化剤排ガスF2は、酸化剤ガス流路66から酸化剤排ガス接続流路68に流出し、燃料排ガス接続流路73から酸化剤排ガス連通孔46内に流出する。そして、酸化剤排ガスF2は、酸化剤排ガス連通孔46を燃料電池モジュール10の積層方向に沿って流通した後、燃料電池モジュール10から排出される。
【0042】
このように、本実施形態では、セルフレーム51の収容部54内において、セル11と収容部54との間をシールするシール部58を備え、このシール部58がセラミック接着剤56に微小なガラス粒子からなるガラス封着材57を含浸されてなる構成とした。
この構成によれば、ガラス封着材57がセラミック接着剤56の多孔質内を埋めるように含浸されるため、セラミック接着剤56を封止してセル11と収容部54との間のシール性を向上させることができる。この場合、ガラス封着材57は、セラミック接着剤56の多孔質内に一旦入り込めば、セラミック接着剤56の多孔質内から流出する虞はないので、セル11と収容部54との間を単にガラス材料によりシールする場合と異なり、シール性を長期に亘って維持できる。
【0043】
また、本実施形態では、セルフレーム51の収容部54内にアノード12を向けた状態でセル11を収容するとともに、ガラス封着材57をカソード14側からカソード14の厚さ以上形成する構成とした。
この構成によれば、セル11の外周面11aにおいて、ガラス封着材57を少なくともカソード14の厚さ以上に形成することで、アノード12やカソード14の多孔質を介して反応ガスが流通するのを防止できるので、セル11と収容部54との間を確実にシールできる。
さらに、アノード12よりも厚さの薄いカソード14側にガラス封着材57を形成するので、アノード12とカソード14との間をガラス封着材57により確実に封止できるとともに、材料コストの低減を図ることができる。
【0044】
さらに、セルフレーム51、セラミック接着剤56、及びガラス封着材57の熱膨張率を同等にすることで、熱膨張の差により発生する歪み等を抑制できるため、セラミック接着剤56が剥がれたり、セルフレーム51の収容部54とセル11との間に隙間ができたりするのを抑制できる。これにより、長期間に亘ってシール性を維持できる。
【0045】
なお、本発明の技術範囲は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、上述した実施形態で挙げた構成等はほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
例えば、ガラス封着材57は、少なくともカソード14よりも厚く形成されていれば、その形成範囲は適宜設計変更が可能である。
【0046】
また、上述した実施形態では、セル11を一枚だけ用いた単セル構造の燃料電池モジュール10について説明したが、これに限らずセル11を厚さ方向に沿って複数枚積層したスタック構造の燃料電池モジュールについても採用可能である。
図6にスタック構造の燃料電池モジュール100について示す。図6に示すように、燃料電池モジュール100は、セルフレーム51とスペーサ55との間にセル11が挟持されたセルモジュール101が、第1ガスケット62を間に挟んで積層されることで構成されている。
【0047】
具体的に、燃料電池モジュール100を組み付ける場合、まず一対のセルモジュール101におけるセルフレーム51のカソード14側に、酸化剤ガス流路66が形成された一対の第1ガスケット62aをそれぞれ配置するとともに、これらセルモジュール101をカソード14同士が対向するように配置し、各セルモジュール101間に集電部材61を挟み込む。そして、これらセルモジュール101同士をセルモジュールボルト104で固定して、一つのセルユニット102とする。なお、集電部材61は、厚さ方向両側がスペーサ55の内側を通じてカソード14に接触している。また、集電部材61の外側には、第1ガスケット62a間を通って端子部105が引き出されている。
その後、一対のセルユニット102のアノード12側(外側)に、燃料ガス流路71が形成された一対の第1ガスケット62bをそれぞれ配置するとともに、これらセルユニット102をアノード12同士が対向するように配置し、各セルユニット102間に集電部材61を挟み込む。なお、この際、集電部材61は、厚さ方向両側が台座部53の内側を通じてアノード12に接触している。また、集電部材61の外側には、第1ガスケット62b間を通って端子部105が引き出されている。
【0048】
上述した手順でセルユニット102を積層していくことにより、隣接するセルモジュール101において、アノード12同士、カソード14同士がそれぞれ対向配置される。
そして、最後に積層されたセルユニット102を、外周側で図示しないユニットボルトによりまとめて固定することにより、スタック構造の燃料電池モジュール100が形成される。なお、上述した各カソード14側の端子部105同士、アノード12側の端子部105同士は、それぞれ配線(不図示)により並列接続し、燃料電池モジュール100で出力される電力を取り出している。なお、取り出した後の電力は、図示しないDC−DCコンバータにより昇圧して使用する。
【符号の説明】
【0049】
11…セル(電気セル) 11a…周辺端部 12…アノード(アノード極) 14…カソード(カソード極) 16…電解質膜(固体電解質) 51…セルフレーム(フレーム) 54…収容部 55…スペーサ 56…セラミック接着剤 57…ガラス封着材 58…シール部 78a…カバープレート(カバー部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の固体電解質の一方の面にカソード極、他方の面にアノード極を備える電池セルと、
該電池セルが収納されたフレームと、
前記電池セルの周辺端部と前記フレームとの間をシールするシール部と、を有し、
前記電池セルは、前記アノード極が前記カソード極よりも厚く形成され、
前記フレームは、前記電池セルの周辺端部から前記一方の面に亘って前記電池セルを収容する収容部を備え、
前記シール部は、前記電池セルの周辺端部を前記収容部に対してセラミック接着剤で固定し、該セラミック接着剤にガラス粒子を分散したガラス封着材を、前記カソード極側から前記カソード極の厚さ以上に染み込ませ、熱処理することにより、前記電池セルの前記周辺端部と前記フレームとの間をシールしたことを特徴とする固体電解質型燃料電池。
【請求項2】
前記セラミック接着剤、前記フレーム、及び前記電池セルの熱膨張率を同一に設定したことを特徴とする請求項1記載の固体型燃料電池。
【請求項3】
前記電池セルと前記フレームとの間をシールした後に、前記電池セルの周辺端部における前記カソード極側にスペーサを間に挟んでカバー部材を配置し、
前記カバー部材と、前記フレームと、を固定することで、前記カバー部材及び前記フレーム間に前記電池セルを挟持したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の固体電解質型燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−124020(P2012−124020A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273628(P2010−273628)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】