説明

固体高分子型燃料電池スタック

【課題】 大きな反応面積を確保することができる上に、円滑なガス供給を図り且つ小型化を実現する固体高分子型燃料電池スタックを提供する。
【解決手段】 セパレータの各々の部分に形成され、前記燃料ガス流路および前記酸化剤ガス流路の周囲に配置され、前記セパレータの面に対して直交する方向に冷媒を通流させる複数の冷却剤流路と、を有する固体高分子型燃料電池スタックにおいて、前記酸化剤ガス流路は、その一端に酸化剤ガス入口を有し、かつ、その他端に酸化剤ガス出口を有し、前記冷却剤流路は、その一端に冷却剤入口を有し、かつ、その他端に冷却剤出口を有し、前記冷却剤入口は前記酸化剤ガス入口と隣接するところに配置され、かつ、前記冷却剤入口と前記酸化剤ガス入口とが同じ方向を向き、前記冷却剤出口は前記酸化剤ガス出口と隣接するところに配置され、かつ、前記冷却剤出口と前記酸化剤ガス出口とが同じ方向を向いている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン伝導性を有する固体高分子を電解質とする固体高分子型燃料電池スタックに係り、特に、大きな反応面積を確保するべく改良を施した固体高分子型燃料電池スタックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高効率のエネルギー変換装置として、燃料電池が注目を集めている。この燃料電池は、用いられる電解質の種類により、アルカリ型、固体高分子型、リン酸型等の低温作動燃料電池と、溶融炭酸塩型、固体酸化物型等の高温作動燃料電池とに大別される。
【0003】
なかでも、電解質としてプロトン伝導性を有する固体高分子電解質膜を用いた固体高分子型燃料電池(以下、PEFCと記す)は、コンパクトな構造で高出力密度が得られ、かつ簡易なシステムで運転が可能なことから、宇宙用や車両用などの電源として注目されている。
【0004】
この高分子電解質膜(以下、高分子膜という)としては、パーフルオロカーボンスルホン酸膜(例えば、ナフィオン:商品名、デュポン社製)などが用いられている。そして、このような高分子膜を、白金などの触媒を有する一対の多孔質電極(燃料極と酸化剤極)によって狭持して、膜電極複合体が構成されている。なお、上記高分子膜および多孔質電極は共にシート状に形成されており、内部抵抗を低減するために、その厚みは概略1mm以下にされている。
【0005】
また、前記高分子膜および電極のシートの形状は通常矩形であり、電極の面積は、発電に必要な電流値および単位面積当たりの電流値すなわち電流密度によって決まり、概略100cm2 以上、すなわち1辺が10cm以上の大きさに設定されているものが多い。なお、高分子膜は燃料極と酸化剤極に供給されるガスの混合を防ぐ役割もあるため、その面積は電極の面積より大きく設定されている。
【0006】
前記膜電極複合体から電流を取り出すために、燃料極と酸化剤極の外側には集電体が配置される。この集電体には、燃料極および酸化剤極の面と平行に多数の溝が形成され、この溝が、燃料極および酸化剤極に電池反応に必要な燃料ガスおよび酸化剤ガスを供給するガス流路となっている。また、1つの膜電極複合体によって生じる起電力は1V以下と小さいため、複数の膜電極複合体を積層し、直列に接続してPEFC積層体を構成し、起電力を高くしている。この際、燃料極側の集電体と酸化剤極側の集電体が必要となるため、隣接する膜電極複合体の燃料極側の集電体と酸化剤極側の集電体を一体に構成したセパレータが用いられている。
【0007】
ところで、膜電極複合体では電池反応によって熱を生じる。この熱を取り除く冷却方法としては、複数の膜電極複合体の間に冷却板を挿入し、この冷却板に冷却水を流通させる方法が一般的である。しかし、この方法では、ガスを供給するセパレータとは別に冷却水を供給するセパレータも必要になるため、積層方向の厚みが増してしまうという問題点があった。
【0008】
この問題点を解決する方法として、ガス流路の周囲4方を取り囲むように冷却水流路を形成することにより、膜電極複合体の間に挿入されていた冷却板を省略する方法が、特開平10−21949号公報に開示されている。すなわち、前記公報に示された技術は、図1に示すように、中央部にガス流路となる溝201が形成されたセパレータ200の上下左右4ヶ所に、冷却水を流通させる流路202を形成し、この流路202内に冷却水を流すことによって反応熱を取り除くものである。
【0009】
しかしながら、上記の冷却方法には、以下のような問題点があった。
【0010】
第一の問題点として、反応面積を大きくできないという点が挙げられる。すなわち、上記の冷却方法では、セパレータ200によって挟持された膜電極複合体で生じた熱は、セパレータ200に伝わり、セパレータの厚み方向と直角な方向に伝わって、流路202内を流れる冷却水により取り除かれる。つまり、反応部中央のセパレータの温度が周囲部より高くなる。
【0011】
したがって、反応面積を大きくすると、反応部中央と冷却流路の距離も大きくなり、上記の温度差も大きくなる。一方、セパレータの厚みを増やし、断面積、すなわち伝熱面積を増やすことにより温度差を小さくすることも考えられるが、この方法ではセルの厚みも増えてしまい、コンパクト性が失われるという問題がある。
【0012】
第二の問題点として、セパレータ平面内の温度分布が3次元になるという点が挙げられる。すなわち、上記の冷却方法では、上述したようにセパレータ平面内の温度分布は、中央部が高く、周囲4辺が低くなる。これでは、ガス流路を平面状に形成しても、反応によって生じた水は、セパレータの周囲で凝縮してしまうため、反応によって生じた水を効率よく回収することはできない。
【0013】
第三の問題点として、燃料ガスおよび酸化剤ガスの供給孔および排出孔を大きくできないという問題点が挙げられる。図21のようにガス流路の四方に冷却水流路を配置した場合、燃料ガスおよび酸化剤ガスの供給孔および排出孔を4角に配置することになり、供給孔および排出孔の断面積は、冷却水流路の断面積よりも小さくなってしまう。
【0014】
これは、反応面積を大きくし、多量の燃料ガスまたは酸化剤ガスを必要とした場合に、供給孔、すなわちガスの分配マニホールドの断面積が小さくなり、積層した燃料電池スタックの各単セルに、燃料ガスまたは酸化剤ガスを均一に分配できなくなる。
【特許文献1】特開平10−21949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、大きな反応面積を確保することができる上に、円滑なガス供給を図り且つ小型化を実現する固体高分子型燃料電池スタックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明に係る固体高分子型燃料電池スタックは、積層された複数のセル(4)と、前記セル(4)間に挿入されたセパレータ(60,70,80,90)とを備え、前記セル(4)の各々は、アノードと、カソードと、前記アノードとカソードの間に挟持された固体高分子電解質膜とを有し、前記セパレータの各々は、前記アノードに燃料ガスを供給する燃料ガス流路と、前記カソードに酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス流路とのうち少なくとも一方を有し、かつ外形が長方形であり、前記セパレータの各々の部分に形成され、前記燃料ガス流路および前記酸化剤ガス流路の周囲に配置され、前記セパレータの面に対して直交する方向に冷媒を通流させる複数の冷却剤流路(62,72,82,82b,92,92b,102,102b)と、を有する固体高分子型燃料電池スタック(1)において、前記酸化剤ガス流路は、その一端に酸化剤ガス入口(85a,95a)を有し、かつ、その他端に酸化剤ガス出口(85b,95b)を有し、前記冷却剤流路は、その一端に冷却剤入口(87a,97a)を有し、かつ、その他端に冷却剤出口(87b,97b)を有し、前記冷却剤入口(87a,97a)は前記酸化剤ガス入口(85a,95a)と隣接するところに配置され、かつ、前記冷却剤入口(87a,97a)と前記酸化剤ガス入口(85a,95a)とが同じ方向を向き、前記冷却剤出口(87b,97b)は前記酸化剤ガス出口(85b,95b)と隣接するところに配置され、かつ、前記冷却剤出口(87b,97b)と前記酸化剤ガス出口(85b,95b)とが同じ方向を向いていることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明に係る固体高分子型燃料電池スタックは、積層された複数のセル(4)と、前記セル(4)間に挿入されたセパレータ(60,70,100)とを備え、前記セル(4)の各々は、アノードと、カソードと、前記アノードとカソードの間に挟持された固体高分子電解質膜とを有し、前記セパレータの各々は、前記アノードに燃料ガスを供給する燃料ガス流路と、前記カソードに酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス流路とのうち少なくとも一方を有し、かつ外形が長方形であり、前記セパレータの各々の部分に形成され、前記燃料ガス流路および前記酸化剤ガス流路の周囲に配置され、前記セパレータの面に対して直交する方向に冷媒を通流させる複数の冷却剤流路(102,102b)と、を有する固体高分子型燃料電池スタック(1)において、前記酸化剤ガス流路は、その一端に酸化剤ガス入口(85a)を有し、かつ、その他端に酸化剤ガス出口(85b)を有し、前記冷却剤流路(102,102b)は、直列に接続され、その一端に冷却剤入口(87a)を有し、かつ、その他端に冷却剤出口(87b)を有し、前記冷却剤入口(87a)は前記酸化剤ガス入口(85a)と隣接するところに配置され、かつ、前記冷却剤入口(87a)と前記酸化剤ガス入口(85a)とが同じ方向を向き、前記冷却剤出口(87b)は前記酸化剤ガス出口(85b)と隣接するところに配置され、かつ、前記冷却剤出口(87b)と前記酸化剤ガス出口(85b)とが同じ方向を向いていることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明に係る固体高分子型燃料電池スタックは、積層された複数のセル(4)と、前記セル(4)間に挿入されたセパレータ(60,70,80,90)とを備え、前記セル(4)の各々は、アノードと、カソードと、前記アノードとカソードの間に挟持された固体高分子電解質膜とを有し、前記セパレータの各々は、前記アノードに燃料ガスを供給する燃料ガス流路と、前記カソードに酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス流路とのうち少なくとも一方を有し、かつ外形が長方形であり、前記セパレータの各々の部分に形成され、前記燃料ガス流路および前記酸化剤ガス流路の周囲に配置され、前記セパレータの面に対して直交する方向に冷媒を通流させる複数の冷却剤流路(82,82b,92,92b)と、を有する固体高分子型燃料電池スタック(1)において、前記酸化剤ガス流路は、その一端に酸化剤ガス入口(85a,95a)を有し、かつ、その他端に酸化剤ガス出口(85b,95b)を有し、前記冷却剤流路(82,82b,92,92b)は、それらのうちの一部の流路が並列に接続された第1の冷却剤流路グループと、他の一部の流路が並列に接続された第2の冷却剤流路グループと、前記第1の冷却剤流路グループが集合する一端に連通する冷却剤入口(87a,97a)と、前記第1の冷却剤流路グループが集合する他端に連通する冷却剤出口(87b,97b)と、前記第2の冷却剤流路グループが集合する一端に連通する冷却剤入口(87a,97a)と、前記第2の冷却剤流路グループが集合する他端に連通する冷却剤出口(87b,97b)と、を有し、前記冷却剤入口(87a,97a)の各々は前記酸化剤ガス入口(85a,95a)と隣接するところに配置され、かつ、前記冷却剤入口(87a,97a) の各々と前記酸化剤ガス入口(85a,95a)とが同じ方向を向き、前記冷却剤出口(87b,97b) の各々は前記酸化剤ガス出口(85b,95b)と隣接するところに配置され、かつ、前記冷却剤出口(87b,97b) の各々と前記酸化剤ガス出口(85b,95b)とが同じ方向を向いていることを特徴とするものである。
【0019】
上記のような構成を有する本発明によれば、セパレータの外形形状を長方形とし、冷却剤入口(87a,97a)が酸化剤ガス入口(85a,95a)と隣接するところに配置され、かつ、冷却剤入口(87a,97a)と酸化剤ガス入口(85a,95a)とが同じ方向を向き、冷却剤出口(87b,97b)が酸化剤ガス出口(85b,95b)と隣接するところに配置され、かつ、冷却剤出口(87b,97b)と酸化剤ガス出口(85b,95b)とが同じ方向を向いているため、冷却剤流路と酸化剤ガス流路とが並行流路(コ・フロー)の位置関係になり(図20A参照)、冷却剤を酸化剤ガスと並行して通流させることにより、酸化剤ガス中に含まれる湿気(水分)が酸化剤ガス出口において凝縮するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
上記のような構成を有する本発明によれば、冷却剤流路をセパレータの相対する長辺の伸長方向と実質的に平行な部分に複数形成しているので、上記請求項1に記載の発明の作用・効果に加えて、さらに優れた冷却効果が得られる。
【0021】
さらに別の発明によれば、燃料極と酸化剤極とに狭持された固体高分子電解質膜を有する単セルが、前記燃料極に燃料ガスを供給する燃料ガス流路と、前記酸化剤極に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス流路の少なくとも一方を備えたセパレータを介して複数積層されてなる固体高分子型燃料電池スタックにおいて、前記セパレータの外形形状を長方形とし、前記セパレータの燃料極または酸化剤極に接する面に複数の冷却領域を設け、各冷却領域の中央部に冷却剤流路を形成し、前記冷却媒体をセパレータ平面に対して直角方向に流通させるように構成したことを特徴とするものである。
【0022】
上記のような構成を有する本発明によれば、各冷却領域の中央部に冷却剤流路を形成しているので、各冷却領域で発生した反応熱は、その領域内に形成された冷却剤流路を流れる冷却媒体によって冷却されるように構成されている。この場合、冷却剤流路の内壁が伝熱面となるが、この流路は各冷却領域の中央に位置しているため、その内壁のすべての面を伝熱面とすることができるので、効率良い冷却が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図2は本発明による固体高分子型燃料電池スタックの第1実施形態の構成を示す斜視図である。
【0025】
すなわち、燃料電池スタック1は、セル部2とエンドプレート3a,3bから構成されている。このセル部2は、単セル4を複数積層して構成されている。また、エンドプレート3a,3bは、セル部2の前後端に1枚ずつ設けられ、図示しないスタッドやバネなどの締め付け冶具により、セル部2を締め付けるように配設されている。また、エンドプレート3a,3bには、図示しない電流取り出し端子があり、燃料電池スタック1で発電した電力を取り出すように構成されている。
【0026】
また、前面のエンドプレート3aには、各流体用の配管が取り付けられている。具体的には、前面のエンドプレート3aの右端上部に酸化剤ガス入口5aが設けられ、エンドプレート左端下部には酸化剤ガス出口5bが設けられている。また、エンドプレート3aの左方上部には燃料ガス入口6aが設けられ、右方下部には燃料ガス出口6bが設けられている。さらに、前面のエンドプレート3aの中央には、その上下部に冷却剤入口7aが設けられている。一方、後面のエンドプレート3bの中央には、その上下部に冷却剤出口7bが設けられている。
【0027】
図3は、図2に示す燃料電池スタック1を、前記冷却剤入口7aおよび冷却剤出口7bの中心線を含む平面で切断した断面図を示すものである。すなわち、単セル4は、膜電極複合体(MEA)8、1組のシールパッキン9およびセパレータ10から構成され、膜電極複合体8は、電解質膜8aと燃料極8b、消化剤極8cの2個の電極から構成されている。また、セパレータ10には、その中央部の両面にガスが流れる溝が形成されている。具体的には、燃料極8bと接する面に燃料ガス流路11が、酸化剤極8cに接する面に酸化剤ガス流路12が設けられている。シールパッキン9は、両電極、後述するガス流通マニホールドおよび冷却剤流路に相当する部分が切り落とされており、その厚みは電極とほぼ同じに構成されている。
【0028】
図4A、図4Bはセパレータの構成を示す図であって、図4Aはセパレータ10の燃料ガス流路側の正面図であり、図4Bは図4AにおけるA−A断面図である。セパレータ10の外形寸法は、長さ25cm、幅7cm、厚さ2mmに設定され、その材質は、導電性があり緻密な構造な物であれば良く、ここでは、緻密なカーボン材を用いた。
【0029】
また、セパレータ10の周囲部には複数の貫通孔が設けられている。具体的には、セパレータ10の右側部には酸化剤ガス供給マニホールド13aが、左側部には酸化剤ガス排出マニホールド13bが設けられている。また、セパレータ10の長辺の伸長方向に実質的に平行な部分、つまりセパレータ10の上部には、燃料ガス供給マニホールド14aおよび8個の冷却剤流路15が設けられ、セパレータ10の下部には、燃料ガス排出マニホールド14bおよび8個の冷却剤流路15が設けられている。
【0030】
さらに、セパレータ10の表面中央部には、幅1mm、深さ0.5mmの溝が機械加工により複数設けられている。これらの溝は、前記燃料ガス供給マニホールド14aおよび燃料ガス排出マニホールド14bと連通され、燃料ガス流路11を構成している。そして、図中矢印で示すように、燃料ガス供給マニホールド14aより供給された燃料ガスをセパレータ10の溝内に供給し、未反応の燃料ガスを燃料ガス排出マニホールド14bから排出するように構成されている。
【0031】
また、セパレータ10の裏面中央部には、表面と同様の溝が設けられており、これらの溝は、前記酸化剤ガス供給マニホールド13aおよび酸化剤ガス排出マニホールド13bと連通されて酸化剤ガス流路12を構成し、酸化剤ガスを供給、排出するように構成されている。
【0032】
なお、図4Aに示す矩形の破線は、燃料極8bおよび酸化剤極8cの大きさを示しており、ここでは、長さ5cm、幅20cmの燃料極および酸化剤極を用いた。
【0033】
また、前記冷却剤流路15に導入される冷却剤としては水を用いても良いが、寒冷地での使用を考えた場合、不凍液を用いるのがより望ましい。ここでは、エチレングリコール水溶液を用いた。この冷却剤は、図2に示す前面のエンドプレート3aに設けられた2個の冷却剤入口7aから、燃料電池スタック1内に均等に導入される。なお、エンドプレート3a内には図示しない分配ヘッダーが設けられており、この分配ヘッダーによって冷却剤入口7aから導入された冷却剤が、上下それぞれ8個の流れに分割される。
【0034】
8個の流れに分割された冷却剤は、セパレータ10とシールパッキン9、電解質膜8aの上下に設けられた共通の冷却剤流路15を、これら部品平面と直角方向に流れる。その際に、冷却剤流路15の壁面から熱を奪い、冷却を行う。冷却を行った冷却剤は、後面のエンドプレート3bに到達し、エンドプレート3b内に設けられた図示しない合流ヘッダーにより、上下2個の流れにまとめられ、冷却剤出口7bから排出されるように構成されている。
【0035】
図5は、単セル4内の熱の流れを示す図である。すなわち、電池反応により発生した熱は、燃料極8bおよび酸化剤極8cを伝導して、セパレータ10との接触面からセパレータ内に伝達され、セパレータ平面と直角方向に伝達される。その後、熱はセパレータ内を上下方向に伝達され、冷却剤流路15の壁面から冷却剤に伝達され、冷却される。
【0036】
上記の電極(5cm×20cm)およびセパレータ(7cm×25cm×2mm)で構成した単セルを100枚積層した本実施形態の燃料電池スタックと、電極の大きさが10cm×10cm、セパレータの大きさが12cm×12cm、厚さ2mmの単セルを100枚積層した従来の燃料電池スタックを製作し、反応ガスとしてH2 /Air(利用率70%/40%)を供給し、冷却剤として入口温度50℃、流量1.5kg/secのエチレングリコール水溶液を供給して、電流密度0.5A/cm2 にて発電試験を実施して、両者のスタック電圧およびセパレータ内の温度分布およびスタック内の各セルの電圧分布を測定したところ、以下のような結果が得られた。
【0037】
図6は、発明者らが検証した、本実施形態の燃料電池スタックおよび従来の燃料電池スタックの各単位セルの電圧分布特性を示す。セル番号は前面のエンドプレート、すなわち燃料ガスおよび酸化剤ガスの供給および排出口が設けられた方から順につけられている。
【0038】
本実施の形態の燃料電池スタックでは、各単位セルの電圧はほぼ均一であった。これは、セパレータの短辺の伸長方向に実質的に平行な部分に酸化剤供給マニホールドを設けることで、十分な断面積(1cm×5cm)を確保できたためと考えられる。
【0039】
一方、従来の燃料電池スタックでは、セパレータの4角にしかガス供給/排出マニホールドを設けることができず、その大きさが1cm×1cmと小さいため、各単位セルに酸化剤ガスを均一に供給することができなくなり、平均電圧に比べて±30%の偏りを生じてしまった。このようにセパレータの短辺の伸長方向と実質的に平行な部分に燃料ガスまたは酸化剤ガスの供給マニホールドを設けることで、マニホールドの断面積を大きくとることができ、反応面積が大きくなって多量の燃料ガスまたは酸化剤ガスが必要になった場合でも、スタックの各単位セルに均一に分配することが可能となる。
【0040】
すなわち、図7は発明者らが検証した、セパレータ内の上下方向の温度分布を示すものであり、図8は発明者らが検証した、左右方向の温度分布を示すものである。図から明らかなように、従来の燃料電池スタックでは、電極およびセパレータが正方形で、かつ周囲4方に冷却剤流路が形成されているため、上下方向および左右方向の温度分布は等しくなっている。しかし電極端部と電極中央部の距離が5cmと離れているために、電極中央部の温度は上昇し、周囲部の温度が70℃であるに対して80℃となり、10℃の温度差が生じた。
【0041】
これに対して、本実施形態の燃料電池スタックでは、上下方向の長さが5cmと短く、電極端部と電極中央部の距離は2.5cmしか離れていないため、周囲部と中央部の温度差も小さく、2℃の温度差に抑えることができた。また、図5に示すように、熱は上下方向に伝達されるので、左右方向の温度分布はほとんど一定になり、72℃を示す(図8参照)。
【0042】
また、スタック電圧を調べたところ、従来の燃料電池スタックでは40Vだったのに対し、本実施形態の燃料電池スタックでは55Vであった。このように高いスタック電圧が得られたのは、図7および図8に示すように電極中央部の温度の上昇を抑えることができるため、膜の導電性を保つ水分の蒸発を防ぐことができるためと考えられる。
【0043】
以上のように、セパレータの外形形状を長方形とし、セパレータのガス流路の周囲部分で、セパレータの長辺の伸長方向と実質的に平行な部分に、冷却媒体をセパレータ平面と直角方向に流通させるように、冷却剤流路を形成したことにより、燃料電池反応による熱を取り除く構造となり得、反応面積が大きくなっても、セパレータ内の温度差を小さく抑えることができた。
【0044】
なお、反応面積を大きくする場合には、電極形状およびセパレータの長方形の長辺を伸ばすことによって、熱が伝わる短辺方向の距離を保つことができるので、セパレータ内の温度差は、上記と同様に小さくできる。
【0045】
(第2実施形態)
本実施形態は上記第1実施形態の変形例であり、燃料ガス供給マニホールドおよび燃料ガス排出マニホールドの配設箇所を、セパレータの側部に変更したものである。なお、図9は第2実施形態の固体高分子型燃料電池スタックの構成を示す斜視図であり、図10A、図10Bはセパレータの構成を示す図であって、図10Aはセパレータの燃料ガス流路側の正面図であり、図10Bは図10AにおけるB−B断面図である。
【0046】
本実施形態においては、第1実施形態の燃料電池スタックの燃料ガス供給マニホールドおよび燃料ガス排出マニホールド部分を冷却剤流路とし、第1実施形態の酸化剤供給マニホールドおよび酸化剤排出マニホールド部分をそれぞれ上下2分割して、一方を燃料ガス供給マニホールド24aおよび燃料ガス排出マニホールド24bとしている。
【0047】
具体的には、図10A、図10Bに示すように、セパレータのガス流路の周囲部分で、セパレータの短辺の伸長方向と実質的に平行な左側部に、燃料ガス供給マニホールド24aと酸化剤ガス排出マニホールド27bが設けられ、右側部に酸化剤ガス供給マニホールド27aと燃料ガス排出マニホールド24bとが設けられている。
【0048】
また上記の構成に対応して図9に示すように、前面のエンドプレート23aの右側部には、酸化剤ガス入口25aと燃料ガス出口26bが上下に設けられ、エンドプレート23aの左側部には、燃料ガス入口26aと酸化剤ガス出口25bが上下に設けられている。なお、冷却剤入口7aおよび冷却剤出口7bは、第1実施形態と同様の位置に設けられている。
【0049】
また、図10A、図10Bに示すように、セパレータ20の中央部に形成された燃料ガス流路11は、左側部の上部に設けられた燃料ガス供給マニホールド24aおよび右側部の下部に設けられた燃料ガス排出マニホールド24bと連通されており、図中矢印のように燃料ガスをセパレータ20に供給し、排出するように構成されている。一方、冷却剤は、セパレータの上部および下部にそれぞれ9個設けられた流路内を、セパレータ20の平面と直角方向に流通し、冷却剤流路壁面から反応熱を奪って冷却を行うように構成されている。
【0050】
本実施形態では、上記第1実施形態と同様に、電極の大きさを長さ20cm、幅5cm、セパレータの大きさを長さ25cm、幅7cm、厚さ2mmとした。また、セパレータの材質には緻密なカーボン材を用いた。これらの部品を用いて単セルを製作し、この単セルを100枚積層して発電試験を行った。試験条件は第1実施形態と同じ条件で行った。
【0051】
その結果、周囲部の温度が70℃、中央部が71.7℃となり、上下方向の温度差は第1実施形態に比べてさらに小さくなった。これは、冷却剤流路が上下1個ずつ増え、伝達面積が増えた結果、温度差がさらに小さくなったと考えられる。また、スタック電圧は56Vとなり、第1実施形態と同様に、従来の燃料電池スタックに比べて高い電圧が得られた。
【0052】
以上のように、セパレータのガス流路の周囲部分で、セパレータの短辺の伸長方向と実質的に平行な部分に、燃料ガスまたは酸化剤ガスの供給または排出マニホールドを設ける構成としたことにより、セパレータのガス流路の周囲部分のうち、上下部分をすべて冷却剤流路とすることができるため、冷却剤流路の壁面の面積が増え、伝熱面積が増えて、大きな電極面積でも小さな温度差に抑えることができた。
【0053】
また、第1の実施形態と同様に、さらにセパレータの短辺と平行な部分に燃料ガスおよび酸化剤ガスの供給マニホールドを設けることで、マニホールドの断面積を大きくとることができ、反応面積が大きくなって多量の燃料ガスまたは酸化剤ガスが必要になった場合でも、スタックの各単位セルに均一に分配することが可能となる。
【0054】
(第3実施形態)
本実施形態は、上記第2実施形態と同様の構成を有するセパレータを、可撓性黒鉛炭素からなるシートで構成したものである。この可撓性黒鉛炭素からなるシートは膨張黒鉛材とも呼ばれ、柔らかく成形が容易で、シール性に優れているという特徴を有している。また、厚み方向と平面方向で異方性を有しており、例えば、熱伝導率では、厚み方向に比べて平面方向が約10倍となるため、本発明の冷却方法に極めて適した材料である。
【0055】
ここでは、膨張黒鉛シートとして、日本カーボン製のニカフィルム(商品名)を原材料として用いた。また、セパレータの形状は第2実施形態と同じとし、厚さ4mm、密度0.5g/cm3 のニカフィルムのシートをプレス成形してセパレータを製作した。
【0056】
そして、電極の大きさを幅5cm、長さ20cmとし、上記のセパレータと組合せて単セルを構成し、この単セルを100枚積層して燃料電池スタックを製作し、第2実施形態と同条件で発電試験を行い、上下方向のセパレータ内の温度分布を測定した。その結果、周囲部が70℃であったに対して中央部が71.5℃となり、第2実施形態よりさらに温度差を小さく保つことができた。
【0057】
また、カソード極表面中央部とセパレータ中央部の温度差を測定したところほぼ0℃であった。膨張黒鉛では、厚み方向の熱伝導率は低いが、伝熱面積が大きいので問題はない。
【0058】
なお、上記の実施例では、セパレータ中央部の温度と周囲温度の温度差は1.5℃となったが、セパレータ中央部の温度と周囲温度の温度差の許容値を5℃以下に抑えることが望ましい。図11は、発明者らが検証した、反応部の温度と反応ガスにより持ち出される水蒸気の量の関係を示す特性図である。ここでは、70℃の水蒸気量を1としたときの相対値を示している。温度が上昇すると、飽和水蒸気圧が上昇し、反応ガスにより持ち出される水蒸気の量が多くなる。酸化剤ガスの流れる方向との直角面の中央部と端部とで温度が高く、水蒸気の持ち出し量が多くなり、端部で少なくなって、凝縮を生じる。
【0059】
反応部で生じる生成水の量は、上記の相対値にて0.4であり、中央部と端部とでの持ち出し量の差が、この値より小さければ、生成水量の範囲内に収まり、生成水量以上の凝縮又は蒸発を生じなくなるため、この範囲内にするのが望ましい。つまり、図11より、端部の温度を70℃とすると、中央部の温度は75℃以下に保つことが望ましい。
【0060】
図12は、発明者らが検証した、膨張黒鉛シート(熱伝導率140W/mK)を材料として用いたとき、セパレータの外形寸法の短片に対する長片の比(アスペクト比)と、中央部と端部との温度差の特性を示す。なお、反応部面積は、100cm2で一定である。この図12から、短片に対する長辺の比が3以上であれば、温度差が5℃以下となり、上記の条件を満たす。
【0061】
図13は、発明者らが検証した、アルミニウム(熱伝導率200W/mK)を材料として用いたとき、セパレータの外形寸法の短片に対する長片の比(アスペクト比)と、中央部と端部との温度差の特性を示す。なお、反応部面積は、100cm2で一定である。この図13から、短片に対する長辺の比が2.5以上であれば、温度差が5℃以下となり、上記の条件を満たす。
【0062】
以上のように、セパレータを可撓性黒鉛炭素からなるシートで構成し、前記セパレータの外形寸法の短辺に対する長辺の長さの比を3以上にすることで、大きな電極面積でも温度差を小さくすることができた。また、セパレータを可撓性黒鉛炭素からなるシートで構成した結果、プレス成形を用いることができ、量産が容易でコストに優れた燃料電池スタックを製作することができた。
【0063】
(第4実施形態)
第4実施形態では、上記第2実施形態と同様の構成を有するセパレータを、アルミニウムで構成したものである。アルミニウムは、熱伝導率が極めて高く、本発明の冷却方法に極めて適した材料であり、柔らかいので成形が容易であるという特徴を有している。
【0064】
ここでは、アルミ材としてクラッド材を用いた。また、セパレータの形状は第2実施形態と同じとし、厚さ1.5mmのアルミ板をプレス成形してセパレータを製作した。また、その表面には、防食および導電性のコーティングを施した。
【0065】
そして、電極の大きさを幅5cm、長さ20cmとし、上記のセパレータと組合せて単セルを構成し、この単セルを100枚積層して燃料電池スタックを製作し、第2実施形態と同条件で発電試験を行い、上下方向のセパレータ内の温度分布を測定した。その結果、周囲部が70℃であったのに対して中央部が71.5℃となり、第3実施形態と同様に温度差を小さく保つことができた。また同時にセパレータの厚みを1.5mmとすることができるので、第1実施形態および第2実施形態と比べて0.5mm薄くすることが可能となった。
【0066】
なお、上記の実施例では、セパレータ中央部の温度と周囲温度の温度差は1.5℃となったが、セパレータ中央部の温度と周囲温度の温度差の許容値を5℃とすると、アルミの場合は、電極の幅の最大値は66mmとなる。このとき、電極の長さは152mmとなり、セパレータの寸法は幅80mm、長さ200mmが好適である。つまり、セパレータの外形寸法の短辺に対する長辺の長さの比を2.5以上にすることが望ましい。
【0067】
以上のように、セパレータをアルミニウム系の金属の薄板で構成し、前記セパレータの外形寸法の短辺に対する長辺の長さの比を2.5以上にすることで、大きな電極面積でも温度差を小さくすることができた。また、セパレータの厚みを薄くすることができるので、コンパクトでコスト性に優れた燃料電池スタックを製作することができた。
【0068】
なお、セパレータの材料としては、熱伝導に優れた他の金属、例えば、銅系の金属でも同様の効果が得られた。
【0069】
(第5実施形態)
図14A、図14Bは、本発明の第5実施形態におけるセパレータの構成を示す図であって、図14Aはセパレータの燃料ガス流路側の正面図であり、図14Bは図14AにおけるC−C断面図である。
【0070】
すなわち、本実施形態では、セパレータ30の相対する上下の2辺と平行に、冷却媒体用の複数の流路が、セパレータの上下部と中央部の3ヵ所に8個ずつ計24個形成されている。なお、セパレータの大きさは、幅13cm、長さ25cm、厚さ2mmとし、セパレータの材質としては、アルミニウム材を用いた。
【0071】
そして、電極の大きさは幅10cm、長さ20cmであり、上下半分ずつの大きさに分けられている。また、図14A、図14Bに示すように、セパレータ30の左上には燃料ガス供給マニホールド34aが設けられ、右下には燃料ガス排出マニホールド34bが設けられている。さらにセパレータ30の右側部には酸化剤ガス供給マニホールド33aが、左側部には酸化剤ガス排出マニホールド33bが設けられている。
【0072】
また、セパレータ30の表面には、燃料ガス流路が上下2区画にわたって設けられており、それぞれ前記燃料ガス供給マニホールド34aおよび燃料ガス排出マニホールド34bと連通され、燃料ガス流路31を構成している。そして、図中矢印の流れに沿って、燃料ガス供給マニホールド34aより供給された燃料ガスをセパレータ30の溝内に供給し、未反応の燃料ガスを燃料ガス排出マニホールド34bから排出するように構成されている。
【0073】
一方、図示しない裏面には、同様に、酸化剤ガス流路が2区画にわたって設けられており、それぞれ左右の側部に設けられた酸化剤ガス供給マニホールド33aおよび酸化剤ガス排出マニホールド33bに連通されている。また、冷却媒体は、セパレータの上下部と中央部の3ヵ所に8個ずつ計24個形成された冷却剤流路内に導入され、この冷却媒体をセパレータ平面と直角方向に流通させることによって、燃料電池反応によって発生する熱を取り除くように構成されている。
【0074】
上記のセパレータと電極を組合せて単セルを構成し、この単セルを50枚積層して発電試験を行った。条件は第2実施形態と同じにした。その結果、上下方向の温度分布は、2区画あるガス流路で同じ分布を示し、セパレータの上下端部が69℃、ガス流路の中央が72℃、セパレータの中央部が71℃となった。
【0075】
このように本実施形態においては、セパレータの中央部に設けられた冷却剤流路内を流れる冷却剤によって、上下2区画の反応熱が取り除かれるため、セパレータの中央部の温度は上下端部より高い温度となったが、その温度差は従来の燃料電池スタックに比べて小さな温度差に抑えることができた。
【0076】
(第6実施形態)
図15A、図15Bは、本発明の第6実施形態におけるセパレータの構成を示す図であって、図15Aはセパレータの燃料ガス流路側の正面図であり、図15Bは図15AにおけるD−D断面図である。
【0077】
すなわち、本実施形態では、セパレータ40の相対する上下の2辺と平行に、冷却媒体用の複数の流路が、セパレータの上下部と中央部の3ヵ所に9個ずつ計27個形成されている。なお、セパレータの大きさは、幅13cm、長さ25cm、厚さ2mmとし、セパレータの材質としては、アルミニウム材を用いた。
【0078】
そして、電極の大きさは幅10cm、長さ20cmであり、上下半分ずつの大きさに分けられている。また、図15A、図15Bに示すように、セパレータ40の左右の側部には、燃料ガス供給マニホールド44aおよび燃料ガス排出マニホールド44b、酸化剤ガス供給マニホールド43aおよび酸化剤ガス排出マニホールド43bが、それぞれ2個ずつ合計8個設けられている。
【0079】
また、セパレータ40の表面には、燃料ガス流路が上下2区画にわたって設けられており、それぞれ前記燃料ガス供給マニホールド44aおよび燃料ガス排出マニホールド44bと連通され、燃料ガス流路41を構成している。そして、図中矢印の流れに沿って、燃料ガス供給マニホールド44aより供給された燃料ガスをセパレータ40の溝内に供給し、未反応の燃料ガスを燃料ガス排出マニホールド44bから排出するように構成されている。
【0080】
一方、図示しない裏面には、同様に、酸化剤ガス流路が2区画にわたって設けられており、それぞれ左右の側部に設けられた酸化剤ガス供給マニホールド43aおよび酸化剤ガス排出マニホールド43bに連通されている。また、冷却媒体は、セパレータの上下部と中央部の3ヵ所に9個ずつ計27個形成された冷却剤流路内に導入され、この冷却媒体をセパレータ平面と直角方向に流通させることによって、燃料電池反応によって発生する熱を取り除くように構成されている。
【0081】
上記のセパレータと電極を組合せて単セルを構成し、この単セルを50枚積層して発電試験を行った。条件は第2実施形態と同じにした。その結果、上下方向の温度分布は、2区画あるガス流路で同じ分布を示し、上下端が69℃、ガス流路の中央が72℃、セパレータの中央部が71℃となった。
【0082】
このように、本実施形態においても、上記第5実施形態と同様に、セパレータの中央部に設けられた冷却剤流路内を流れる冷却剤によって、上下2区画の反応熱が取り除かれるため、セパレータの中央部の温度は上下端部より高い温度となったが、その温度差は従来の燃料電池スタックに比べて小さな温度差に抑えることができた。
【0083】
(第7実施形態)
図16は、本発明の第7実施形態におけるセパレータの構成を示す図であって、セパレータの燃料ガス流路側の正面図である。
【0084】
すなわち、本実施形態では、セパレータ50の中央部に複数の冷却領域51が設けられ、各冷却領域51の中央に冷却媒体流通用の冷却剤流路52が形成されている。具体的には、セパレータの大きさを幅13cm、長さ25cm、厚さ2mmとし、発電反応部に相当する幅12cm、長さ21cmの領域の中に、図中破線で示す幅4cm、長さ3cmの冷却領域51が、短辺方向に3列、長辺方向に7列の計21個設けられている。そして、各々の冷却領域の中央に、冷却剤流路52が設けられ、冷却剤をセパレータ平面と直角方向に流すように構成されている。
【0085】
また、図16に示すように、セパレータ50の左側部には、燃料ガス供給マニホールド54aと酸化剤ガス排出マニホールド53bが設けられ、右側部には、燃料ガス排出マニホールド54bと酸化剤ガス供給マニホールド53aが設けられている。そしてセパレータの表面には、燃料ガス流路が前記冷却剤流路52を避けるように設けられており、それぞれ左右の供給マニホールド、排出マニホールドと連通されている。
【0086】
さらに、冷却媒体は、上記21個の冷却剤流路52内に導入され、この冷却媒体をセパレータ平面と直角方向に流通させることによって、燃料電池反応によって発生する熱を取り除くように構成されている。なお、本実施形態では、1個の冷却媒体流路は1個の冷却領域で発生した反応熱を取り除くように構成されている。その際、冷却剤流路52の内壁が伝熱面となるが、冷却剤流路52は各冷却領域51の中央に位置しているため、その内壁のすべての面を伝熱面とすることができるので、効率良い冷却が可能となる。
【0087】
(第8実施形態)
本実施形態は、上記第4実施形態の変形例であり、冷却剤流路の内面の形状を変更したものである。なお、図17A、図17Bは本実施形態におけるセパレータの構成を示す図であって、図17Aはセパレータの燃料ガス流路側の正面図であり、図17Bは図17AにおけるE−E断面図である。
【0088】
すなわち、本実施形態のセパレータ60はアルミニウムで構成され、各冷却剤流路62の内壁に、幅2mm、長さ5mmの突起63がそれぞれ3個設けられている。その他の構成は、上記第4実施形態ひいては第2実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0089】
また、冷却媒体は、セパレータの長辺の上下部に設けられた18個の冷却剤流路62に導入され、この冷却媒体をセパレータ平面と直角方向に流通させることによって、燃料電池反応によって発生する熱を取り除くように構成されている。この場合、冷却剤流路62の内壁が伝熱面となるが、本実施形態においては各冷却剤流路62の内壁に突起63を設けることによって、内壁の長さを増やすことができ、伝熱面積を増やすことができるので、効率良く冷却可能となる。
【0090】
(第9実施形態)
本実施形態は、上記第3実施形態および第8実施形態の変形例であり、冷却剤流路の内面の形状を変更したものである。なお、図18A、図18Bは本実施形態におけるセパレータの構成を示す図であって、図18Aはセパレータの燃料ガス流路側の正面図であり、図18Bは図18AにおけるF−F断面図である。
【0091】
すなわち、本実施形態のセパレータ70は可撓性黒鉛炭素からなるシートで構成され、各冷却剤流路72の内壁中央部を幅2mmにわたって内側に張り出すような形状とされている。そして、張り出した部分の厚みを、燃料ガス流路と酸化剤ガス流路が設けられている部分と同じ厚み、つまり1mmになるようにプレスで成形し、張り出し部分73を形成した。その他の構成は、上記第3実施形態ひいては第2実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0092】
また、冷却媒体は、セパレータの長辺の上下部に設けられた18個の冷却剤流路72に導入され、この冷却媒体をセパレータ平面と直角方向に流通させることによって、燃料電池反応によって発生する熱を取り除くように構成されている。この場合、冷却剤流路72の内壁が伝熱面となるが、本実施形態においては、各冷却剤流路72の内壁に張り出し部分73を設けることによって、伝熱面積を増やすことができるので、効率良く冷却することが可能となる。
【0093】
また、セパレータを構成する膨張黒鉛は、厚さを薄くし、密度を上げることによって熱伝導率が上昇するという特徴がある。従って、張り出した部分を厚さが1mmになるように薄くすることにより、高い熱伝導率が期待できる。これにより、効率良く冷却することが可能となる。
【0094】
(第10実施形態)
本実施形態は、上記第1実施形態の変形例であり、セパレータ80の長辺に沿って設けられた上下2列の冷却剤流路82をそれぞれ直列に連通させるように構成したものである。
【0095】
なお、図19は、第10実施形態の固体高分子型燃料電池スタックの構成を示す斜視図であり、図20A、図20Bはセパレータの構成を示す図であって、図20Aはセパレータの燃料ガス流路側の正面図であり、図20Bは図20AにおけるG−G断面図である。
【0096】
すなわち、本実施形態においては、セパレータの上部および下部に設けられたそれぞれ8個の冷却剤流路82内を、冷却媒体が直列に流れるように構成されている。その他の構成は、上記第1実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0097】
また、セパレータ80の外形寸法は、長さ25cm、幅7cm、厚さ2mmに設定され、その材質は、導電性があり緻密な構造な物であれば良く、ここでは、緻密なカーボン材を用いた。
【0098】
図21A、図21Bは、図19に示す前面のエンドプレート83aを、また、図22A、図22Bは後面のエンドプレート83bを示す正面図である。これら前面のエンドプレート83aと後面のエンドプレート83bには、セパレータ80の上下2列の冷却剤流路82を直列に連通する連通用の冷却剤流路82bが設けられている。
【0099】
また、図19に示すように、前面のエンドプレート83aには、各流体用の配管が取り付けられている。具体的には、前面のエンドプレート83aの右端上部に酸化剤ガス入口85aが設けられ、エンドプレート左端下部には酸化剤ガス出口85bが設けられている。また、エンドプレート83aの左方上部には燃料ガス入口86aが設けられ、右方下部には燃料ガス出口86bが設けられている。さらに、前面のエンドプレート83aの右方には、その上下部に冷却剤入口87aが設けられ、一方、前面のエンドプレート83aの左方には、その上下部に冷却剤出口87bが設けられている。なお、冷却剤としては、水を用いても良いが、寒冷地での使用を考えた場合、不凍液を用いるのが好ましい。ここでは、エチレングリコール水溶液を用いた。
【0100】
冷却剤は、図19に示す前面のエンドプレート83aに設けられた2個の冷却剤入口87aから導入され、均等に流される。すなわち、冷却剤は、セパレータとシールパッキン、電解質膜の上下に設けられた8個の共通の冷却剤流路の右端の流路を、これら部品平面と直角に流れる。その際に、流路の壁面から、熱を奪い冷却を行うように構成されている。
【0101】
そして、図19および図21A、図21Bに示すように、前面のエンドプレート83aに設けられた2個の冷却剤入口87aから導入された冷却剤は、後面のエンドプレート83bに到達し、図22A、図22Bに示すように、後面のエンドプレート83b内に設けられた連通用の冷却剤流路82bを通って、左隣の冷却剤流路に導かれ、そこでUターンして前面のエンドプレート83aへと流される。その後、図19に示すように、8個の冷却剤流路を直列に流れ、流路の壁面から熱を奪って、燃料電池スタック内の熱を冷却していく。
【0102】
本実施形態では、冷却剤の入口を右端に、出口を左端に設けて、冷却剤を右から左へ流すようにしたため、冷却剤の流れがセパレータ内の酸化剤ガスの流れと同じになる。その結果、セパレータ内の温度分布を、冷却剤の入口がある右端を低く、出口がある左端を高くすることが可能となる。このように、酸化剤ガス出口の温度を高くすることにより、酸化剤出口で含まれる水蒸気の凝縮を防ぐことができるので、反応によって生成される水を効率よく排出することができ、より効果的である。
【0103】
(第11実施形態)
本実施形態は、上記第10実施形態の変形例であり、セパレータ90の長辺に沿って設けられた上下2列の冷却剤流路92の流れを一部統合し、統合した流れをそれぞれ直列に連通させるように構成したものである。
【0104】
なお、図23は、第11実施形態の固体高分子型燃料電池スタックの構成を示す斜視図であり、図24A、図24Bは、前面のエンドプレート93aを示し、図25A、図25Bは、後面のエンドプレート93bを示す正面図である。
【0105】
すなわち、本実施形態においては、図23に示すように、セパレータの上部および下部に2列に設けられた8個の冷却剤流路92のうち4個の冷却剤流路92が、同一方向に並列に流れるように構成されている。また、前記の流し方を実現するために、図24A、図24Bに示すように、前面のエンドプレート93aに設けられた2個の冷却剤入口97aから導入された冷却剤は、右端から4個の冷却剤流路92に分配された後、冷却剤流路92内を流れ、後面のエンドプレート93bに到達する。
【0106】
後面のエンドプレート93bに到達した冷却媒体は、図25A、図25Bに示すように、後面のエンドプレート93b内に設けられた冷却剤流路92bを通って、左端から4個の冷却剤流路92に導かれ、そこでUターンして前面のエンドプレート93aへと流される。
【0107】
このように、8個の冷却剤流路92を4個ずつに分けて連通して流すことにより、第10実施形態と同様に、セパレータの右側で温度が低く、左側で温度を高くできるので、酸化剤出口付近の温度を高くすることができ、反応による生成水の排出を良好に行うことができる。
【0108】
(第12実施形態)
本実施形態は、第10実施形態の変形例であり、セパレータの長辺に沿って設けられた上下2列の冷却剤流路を直列に連通させるように構成したものである。
【0109】
なお、図26は、第12実施形態の固体高分子型燃料電池スタックの構成を示す斜視図であり、図27A、図27Bは図26に示す前面のエンドプレート100aを、また、図28A、図28Bは後面のエンドプレート100bを示す正面図である。これら前面のエンドプレート100aと後面のエンドプレート100bには、セパレータ100の上下2列の冷却剤流路102,102bが、セパレータ100の短辺の伸長方向と実質的に平行な部分に設けられている。
【0110】
前面のエンドプレート100aに設けられた1個の冷却剤入口から導入された冷却剤は、上列の冷却剤流路102,102bのうち右端の流路を流れ、後面のエンドプレート100bに到達する。後面エンドプレート100bでは、上下の冷却剤流路102,102bが設けられており、下列の冷却剤流路102,102bの右端の流路に導かれる。下列の冷却剤流路102bの右端の流路に導入された冷却剤は前面のエンドプレート100a内の同様の連通流路を通って上列の冷却剤流路102,102bの右端から二番目の流路に導入される。
【0111】
このように冷却剤は、上下二列の冷却剤流路102,102bを交互に右端から左端に向かって流すことにより、第10実施形態と同様に、セパレータ100の右側で温度が低く、左側で温度を高くできるので、酸化剤出口付近の温度を高くすることができ、反応による生成水の排出を良好に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
以上述べたように本発明によれば、セパレータ内の温度差を小さく保つことができ、かつ積層方向の厚みを小さくすることができ、もって、小型にして反応面積を大きく確保することが可能な固体高分子型燃料電池スタックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】図1は従来の固体高分子型燃料電池スタックのセパレータの構成を示す斜視図。
【図2】図2は本発明による固体高分子型燃料電池スタックの第1実施形態の構成を示す斜視図。
【図3】図3は図2に示す燃料電池スタックの断面図。
【図4A】図4Aは第1実施形態のセパレータの構成を示す図であって、セパレータの燃料ガス流路側の正面図。
【図4B】図4Bは図4AにおけるA−A断面図。
【図5】図5は第1実施形態の燃料電池スタックの単セル内の熱の流れを示す図。
【図6】図6は第1実施形態の燃料電池スタックのセル電圧分布を示す図。
【図7】図7は第1実施形態と従来例におけるセパレータの上下方向の温度分布を示す図。
【図8】図8は第1実施形態と従来例におけるセパレータの左右方向の温度分布を示す図。
【図9】図9は本発明による固体高分子型燃料電池スタックの第2実施形態の構成を示す斜視図。
【図10A】図10Aは第2実施形態のセパレータの構成を示す図であって、セパレータの燃料ガス流路側の正面図。
【図10B】図10Bは図10AにおけるB−B断面図。
【図11】図11は本発明における温度と水蒸気量との関係を示す図。
【図12】図12は本発明における膨張黒鉛セパレータのアスペクト比と温度差との関係を示す図。
【図13】図13は本発明におけるアルミニウムセパレータのアスペクト比と温度差との関係を示す図。
【図14A】図14Aは第5実施形態のセパレータの構成を示す図であって、セパレータの燃料ガス流路側の正面図。
【図14B】図14Bは図14AにおけるC−C断面図。
【図15A】図15Aは第6実施形態のセパレータの構成を示す図であって、セパレータの燃料ガス流路側の正面図。
【図15B】図15Bは図15AにおけるD−D断面図。
【図16】図16は第7実施形態のセパレータの構成を示す図であって、セパレータの燃料ガス流路側の正面図。
【図17A】図17Aは第8実施形態のセパレータの構成を示す図であって、セパレータの燃料ガス流路側の正面図。
【図17B】図17Bは図17AにおけるE−E断面図。
【図18A】図18Aは第9実施形態のセパレータの構成を示す図であって、セパレータの燃料ガス流路側の正面図。
【図18B】図18Bは図18AにおけるF−F断面図。
【図19】図19は本発明による固体高分子型燃料電池スタックの第10実施形態の構成を示す斜視図。
【図20A】図20Aは第10実施形態のセパレータの構成を示す図であって、セパレータの燃料ガス流路側の正面図。
【図20B】図20Bは図20AにおけるG−G断面図。
【図21A】図21Aは図19に示す前面のエンドプレートを示す正面図。
【図21B】図21Bは図21AにおるH−H断面図。
【図22A】図22Aは図19に示す後面のエンドプレートを示す正面図。
【図22B】図22Bは図22AにおけるI−I断面図。
【図23】図23は本発明による固体高分子型燃料電池スタックの第11実施形態の構成を示す斜視図。
【図24A】図23に示す前面のエンドプレートの構成を示す図であって、図24Aは正面図。
【図24B】図24Bは図24AにおけるJ−J断面図。
【図25A】図23に示す後面のエンドプレートの構成を示す図であって、図25Aは正面図。
【図25B】図25Bは図25AにおけるK−K断面図。
【図26】図26は本発明による固体高分子型燃料電池スタックの第12実施形態の構成を示す斜視図。
【図27A】図26に示す前面のエンドプレートの構成を示す図であって、図27Aは正面図。
【図27B】図27Bは図27AにおけるJ−J断面図。
【図28A】図26に示す後面のエンドプレートの構成を示す図であって、図28Aは正面図。
【図28B】図28Bは図28AにおけるL−L断面図。
【符号の説明】
【0114】
2…セル部、3a,3b,23a,23b,83a,83b,93a,93b,100a,100b…エンドプレート、
4…単セル、5a,25a…酸化剤ガス入口、5b,25b…酸化剤ガス出口、6a,26a…燃料ガス入口、6b,26b…燃料ガス出口、7a,87a…冷却剤入口、7b,87b…冷却剤出口、8…膜電極複合体(MEA)、9…シールパッキン、
10,20,30,40,50,60,70,80,90,100…セパレータ、
14a,14b,24a,24b,27a,27b,33a,33b,34a,34b,43a,43b,44a,44b,53a,53b,54a,54b…マニホールド、
15,52,62,72,82,82a,82b,92,92a,92b,102,102b…冷却剤流路、
63…突起、73…張り出し部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数のセル(4)と、前記セル(4)間に挿入されたセパレータ(60,70,80,90)とを備え、前記セル(4)の各々は、アノードと、カソードと、前記アノードとカソードの間に挟持された固体高分子電解質膜とを有し、
前記セパレータの各々は、前記アノードに燃料ガスを供給する燃料ガス流路と、前記カソードに酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス流路とのうち少なくとも一方を有し、かつ外形が長方形であり、
前記セパレータの各々の部分に形成され、前記燃料ガス流路および前記酸化剤ガス流路の周囲に配置され、前記セパレータの面に対して直交する方向に冷媒を通流させる複数の冷却剤流路(62,72,82,82b,92,92b,102,102b)と、を有する固体高分子型燃料電池スタック(1)において、
前記酸化剤ガス流路は、その一端に酸化剤ガス入口(85a,95a)を有し、かつ、その他端に酸化剤ガス出口(85b,95b)を有し、
前記冷却剤流路は、その一端に冷却剤入口(87a,97a)を有し、かつ、その他端に冷却剤出口(87b,97b)を有し、
前記冷却剤入口(87a,97a)は前記酸化剤ガス入口(85a,95a)と隣接するところに配置され、かつ、前記冷却剤入口(87a,97a)と前記酸化剤ガス入口(85a,95a)とが同じ方向を向き、
前記冷却剤出口(87b,97b)は前記酸化剤ガス出口(85b,95b)と隣接するところに配置され、かつ、前記冷却剤出口(87b,97b)と前記酸化剤ガス出口(85b,95b)とが同じ方向を向いていることを特徴とする固体高分子型燃料電池スタック。
【請求項2】
積層された複数のセル(4)と、前記セル(4)間に挿入されたセパレータ(60,70,100)とを備え、前記セル(4)の各々は、アノードと、カソードと、前記アノードとカソードの間に挟持された固体高分子電解質膜とを有し、
前記セパレータの各々は、前記アノードに燃料ガスを供給する燃料ガス流路と、前記カソードに酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス流路とのうち少なくとも一方を有し、かつ外形が長方形であり、
前記セパレータの各々の部分に形成され、前記燃料ガス流路および前記酸化剤ガス流路の周囲に配置され、前記セパレータの面に対して直交する方向に冷媒を通流させる複数の冷却剤流路(102,102b)と、を有する固体高分子型燃料電池スタック(1)において、
前記酸化剤ガス流路は、その一端に酸化剤ガス入口(85a)を有し、かつ、その他端に酸化剤ガス出口(85b)を有し、
前記冷却剤流路(102,102b)は、直列に接続され、その一端に冷却剤入口(87a)を有し、かつ、その他端に冷却剤出口(87b)を有し、
前記冷却剤入口(87a)は前記酸化剤ガス入口(85a)と隣接するところに配置され、かつ、前記冷却剤入口(87a)と前記酸化剤ガス入口(85a)とが同じ方向を向き、
前記冷却剤出口(87b)は前記酸化剤ガス出口(85b)と隣接するところに配置され、かつ、前記冷却剤出口(87b)と前記酸化剤ガス出口(85b)とが同じ方向を向いていることを特徴とする固体高分子型燃料電池スタック。
【請求項3】
積層された複数のセル(4)と、前記セル(4)間に挿入されたセパレータ(60,70,80,90)とを備え、前記セル(4)の各々は、アノードと、カソードと、前記アノードとカソードの間に挟持された固体高分子電解質膜とを有し、
前記セパレータの各々は、前記アノードに燃料ガスを供給する燃料ガス流路と、前記カソードに酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス流路とのうち少なくとも一方を有し、かつ外形が長方形であり、
前記セパレータの各々の部分に形成され、前記燃料ガス流路および前記酸化剤ガス流路の周囲に配置され、前記セパレータの面に対して直交する方向に冷媒を通流させる複数の冷却剤流路(82,82b,92,92b)と、を有する固体高分子型燃料電池スタック(1)において、
前記酸化剤ガス流路は、その一端に酸化剤ガス入口(85a,95a)を有し、かつ、その他端に酸化剤ガス出口(85b,95b)を有し、
前記冷却剤流路(82,82b,92,92b)は、
それらのうちの一部の流路が並列に接続された第1の冷却剤流路グループと、
他の一部の流路が並列に接続された第2の冷却剤流路グループと、
前記第1の冷却剤流路グループが集合する一端に連通する冷却剤入口(87a,97a)と、
前記第1の冷却剤流路グループが集合する他端に連通する冷却剤出口(87b,97b)と、
前記第2の冷却剤流路グループが集合する一端に連通する冷却剤入口(87a,97a)と、
前記第2の冷却剤流路グループが集合する他端に連通する冷却剤出口(87b,97b)と、
を有し、
前記冷却剤入口(87a,97a)の各々は前記酸化剤ガス入口(85a,95a)と隣接するところに配置され、かつ、前記冷却剤入口(87a,97a) の各々と前記酸化剤ガス入口(85a,95a)とが同じ方向を向き、
前記冷却剤出口(87b,97b) の各々は前記酸化剤ガス出口(85b,95b)と隣接するところに配置され、かつ、前記冷却剤出口(87b,97b) の各々と前記酸化剤ガス出口(85b,95b)とが同じ方向を向いていることを特徴とする固体高分子型燃料電池スタック。
【請求項4】
前記セパレータ(80,90)と平行に配置され、前記酸化剤ガス入口(85a,95a)、前記酸化剤ガス出口(85b,95b)、前記冷却剤入口(87a,97a)および前記冷却剤出口(87b,97b)がそれぞれ開口するエンドプレート(83a,93a,100a)をさらに有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の固体高分子型燃料電池スタック。
【請求項5】
前記エンドプレート(83a,93a,100a)は矩形であり、
前記前記酸化剤ガス入口(85a,95a)、前記酸化剤ガス出口(85b,95b)、前記冷却剤入口(87a,97a)および前記冷却剤出口(87b,97b)は、前記エンドプレート(83a,93a,100a)の短辺の周辺領域にそれぞれ開口していることを特徴とする請求項4記載の固体高分子型燃料電池スタック。
【請求項6】
前記各セパレータ(80,90)は、可撓性の黒鉛炭素のシートであり、前記セパレータの短辺に対する長辺の長さの比が3以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の固体高分子型燃料電池スタック。
【請求項7】
前記セパレータ(80,90)は、銅またはアルミニウム系の金属の薄板であり、前記セパレータの短辺に対する長辺の長さの比が2.5以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の固体高分子型燃料電池スタック。
【請求項8】
前記セパレータに形成された冷却剤流路(62)の内壁に複数の突起(63)を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の固体高分子型燃料電池スタック。
【請求項9】
前記セパレータに形成された冷却剤流路(62)の内壁に張り出し部(73)を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の固体高分子型燃料電池スタック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23】
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【図24A】
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【図24B】
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【図25A】
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【図25B】
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【図26】
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【図27A】
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【図27B】
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【図28A】
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【図28B】
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【公開番号】特開2008−305806(P2008−305806A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210053(P2008−210053)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【分割の表示】特願2000−584546(P2000−584546)の分割
【原出願日】平成11年11月26日(1999.11.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】