説明

固体高分子型燃料電池

【課題】複数の単位セルの動作時の温度を均一化可能なスタック型の固体高分子型燃料電池を提供する。
【解決手段】固体高分子型燃料電池200は、スタック210と、端板220,230と、冷却ファン240,250,260とを備える。スタック210は、端板220,230間に配置され、セル群211〜213に分類される。冷却ファン250は、セル群212を空冷し、冷却ファン240,260は、冷却ファン250よりも低い能力でそれぞれセル群211,213を空冷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、固体高分子型燃料電池に関し、特に、スタック型の固体高分子型燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素とを電気化学的に反応させることにより、電気を取り出す燃料電池は、二酸化炭素(CO)の排出を大きく低減することが可能な技術であると共に、従来の内燃機関に比べて効率が高く、静粛性に優れ、さらに、大気汚染の原因となるNO、SOおよびPM等の排出量が少ないという特徴を有している。
【0003】
このため、燃料電池は、クリーンなエネルギー変換装置として国際的にも研究開発が精力的に進められており、これまでに、リン酸型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池、および固体酸化物型燃料電池等が開発されている。
【0004】
このような状況の下、近年、自動車用および家庭用等の小型の発電に適した燃料電池として、固体高分子型燃料電池が注目されている。この固体高分子型燃料電池が注目されるようになったのは、性能が一段と向上した固体高分子電解質膜を用いることによって電池の出力密度が飛躍的に向上し、高効率という従来からの燃料電池の特性に加え、小型化および低温作動が可能になったからである。
【0005】
固体高分子型燃料電池は、数十〜数百個の単位電池を直列に接続して所要電力を得る。そして、単位電池は、固体高分子電解質膜と、2つのガス拡散電極と、2つのセパレータとを備える2つのガス拡散電極は、固体高分子電解質膜の両側に配置される。2つのセパレータは、2つのガス拡散電極の外側に配置される。
【0006】
従来、2つのセパレータのうち、一方のセパレータの固体高分子電解質膜と反対側の表面に冷却用空気流路を形成した燃料電池スタックが知られている(特許文献1)。この燃料電池スタックにおいては、2つのセパレータA,Bのうち、セパレータAは、固体高分子電解質膜と反対側の表面に冷却用空気流路用の溝を有し、セパレータBは、固体高分子電解質膜と反対側の表面に冷却用空気流路用の溝を有する。そして、セパレータAは、隣接する単位セルのセパレータBと接することによって、溝が塞がれ、冷却用空気流路が形成される。
【特許文献1】特開2006−210351号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の燃料電池スタックでは、複数の単位セルの各々を冷却するための複数の単位セルの動作時の温度を均一に保持することが困難である。
【0008】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、複数の単位セルの動作時の温度を均一化可能なスタック型の固体高分子型燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明によれば、固体高分子型燃料電池は、スタック型の固体高分子型燃料電池であって、スタックと、冷却手段とを備える。スタックは、直列に接続された複数の単位セルからなる。冷却手段は、スタックの中央部に位置する単位セルを第1の冷却能力で空冷し、スタックの端部に位置する単位セルを第2の冷却能力で空冷する。複数の単位セルは、隣接する第1および第2の単位セルを含み、第1および第2の単位セル間は、冷却手段からの空気に対して気密性を保持する構造からなる。
【0010】
好ましくは、第1の単位セルは、第1の固体高分子電解質膜と、第1および第2のガス拡散電極と、第1および第2のセパレータとを含む。第1および第2のガス拡散電極は、第1の固体高分子電解質膜の両側に配置される。第1のセパレータは、第1のガス拡散電極の第1の固体高分子電解質膜側と反対側に配置され、金属からなる。第2のセパレータは、第2のガス拡散電極の第1の固体高分子電解質膜側と反対側に配置され、金属からなる。第2の単位セルは、第2の固体高分子電解質膜と、第3および第4のガス拡散電極と、第3および第4のセパレータとを含む。第3および第4のガス拡散電極は、第2の固体高分子電解質膜の両側に配置される。第3のセパレータは、第3のガス拡散電極の第2の固体高分子電解質膜側と反対側に配置され、金属からなる。第4のセパレータは、第4のガス拡散電極の第2の固体高分子電解質膜側と反対側に配置され、金属からなる。そして、第2のセパレータは、第2のガス拡散電極側と反対側の表面に第1の凹凸構造を有し、第3のセパレータは、第3のガス拡散電極側と反対側の表面に第2の凹凸構造を有する。また、第1の凹凸構造の凸部は、第2の凹凸構造の凸部に接している。さらに、スタックは、相互に接する第1の凹凸構造と第2の凹凸構造との周辺部に配置され、冷却手段からの空気が第1および第2の凹凸構造に入るのを遮断するシール部材を含む。
【0011】
好ましくは、スタックは、各々が所定数の単位セルを含む第1から第3のセル群からなる。第1のセル群は、スタックの中央部に位置し、第2のセル群は、中央部の一方側に位置し、第3のセル群は、中央部の他方側に位置する。冷却手段は、第1から第3の冷却ファンを含む。第1の冷却ファンは、第1のセル群を第1の冷却能力で空冷する。第2の冷却ファンは、第2のセル群を第2の冷却能力で空冷する。第3の冷却ファンは、第3のセル群を第2の冷却能力で空冷する。
【0012】
好ましくは、第1から第3の冷却ファンは、複数の単位セルの配列方向に垂直な方向から複数の単位セルを空冷する。
【0013】
好ましくは、第1から第3のセル群は、相互に等しい数の単位セルを含む。
【発明の効果】
【0014】
この発明による固体高分子型燃料電池においては、スタックの中央部は、相対的に高い能力で空冷され、スタックの端部は、相対的に低い能力で空冷される。また、隣接する第1および第2の単位セル間、冷却手段からの空気に対して気密性を保持する構造からなる
。その結果、スタックの中央部に位置する単位セルで発生した熱は、スタックの端部に位置する単位セルへ拡散し易くなる。そして、スタックは、均一な温度になり易い。
【0015】
したがって、この発明によれば、複数の単位セルの動作時の温度を均一化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0017】
図1は、この発明の実施の形態によるスタック型の固体高分子型燃料電池の断面図である。図1を参照して、この発明の実施の形態によるスタック型の固体高分子型燃料電池200は、スタック210と、端板220,230と、冷却ファン240,250,260とを備える。
【0018】
スタック210は、端板220と端板230との間に配置され、たとえば、36個の単位セル2101〜2136からなる。そして、36個の単位セル2101〜2136は、たとえば、3個のセル群211〜213に分類される。セル群211は、単位セル2101〜2112を含む。セル群212は、単位セル2113〜2124を含む。セル群213は、単位セル2125〜2136を含む。このように、セル群211〜213は、相互に等しい数の単位セルを含む。
【0019】
冷却ファン240,250,260は、端板220と端板230との間にスタック210に対向して配置される。そして、冷却ファン240は、複数の単位セル2101〜2136の配列方向に垂直な方向からセル群211を空冷し、冷却ファン250は、複数の単位セル2101〜2136の配列方向に垂直な方向からセル群212を空冷し、冷却ファン260は、複数の単位セル2101〜2136の配列方向に垂直な方向からセル群213を空冷する。
【0020】
冷却ファン240,260の冷却能力は、冷却ファン250の冷却能力よりも低い。したがって、冷却ファン250は、冷却ファン240,260よりも高い冷却能力でセル群212を空冷し、冷却ファン240,260は、冷却ファン250よりも低い冷却能力でそれぞれセル群211,213を空冷する。
【0021】
図2は、図1に示す単位セル2101の断面図である。図2を参照して、単位セル2101は、固体高分子電解質膜110と、ガス拡散電極120,130と、セパレータ140,150と、ガスケット160,170とを含む。
【0022】
ガス拡散電極120は、その一主面に触媒180を担持し、触媒180が固体高分子電解質膜110の一方面に接するように固体高分子電解質膜110の一方側に配置される。また、ガス拡散電極130は、その一主面に触媒190を担持し、触媒190が固体高分子電解質膜110の他方面に接するように固体高分子電解質膜110の他方側に配置される。
【0023】
セパレータ140は、ガス拡散電極120の一主面(触媒180が担持された一主面と反対側の一主面)に接するように配置される。セパレータ150は、ガス拡散電極130の一主面(触媒190が担持された一主面と反対側の一主面)に接するように配置される。
【0024】
ガスケット160は、固体高分子電解質膜110の外周部とセパレータ140の外周部との間に設けられ、気密性を保持してセパレータ140の外周部を固体高分子電解質膜110の外周部に連結する。ガスケット170は、固体高分子電解質膜110の外周部とセパレータ150の外周部との間に設けられ、気密性を保持してセパレータ150の外周部を固体高分子電解質膜110の外周部に連結する。
【0025】
固体高分子電解質膜110は、たとえば、フッ素系のイオン交換膜からなる。ガス拡散電極120,130の各々は、ガス透過性および導電性を有する多孔体からなる。触媒180,190の各々は、白金(Pt)または白金合金(Pt−Ru)からなる。ガスケット160,170の各々は、フッ素樹脂、バイトンゴム、シリコンゴムおよびエチレンプロピレンゴム等のいずれかからなる。そして、フッ素樹脂は、より具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、およびテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等である。
【0026】
固体高分子電解質膜110は、触媒180によって分離された電子eと水素イオンHとのうち、水素イオンHのみを触媒190側へ通過させる。ガス拡散電極120は、セパレータ140から供給された水素ガスを触媒180へ拡散させる。触媒180は、ガス拡散電極120に供給された水素ガスを電子eと水素イオンHとに分離する。
【0027】
ガス拡散電極130は、セパレータ150から供給された空気(または酸素)を触媒190へ拡散させる。触媒190は、固体高分子電解質膜110から供給された水素イオンHと、ガス拡散電極130から供給された電子eと空気(または酸素)とを反応させ、水を生成する。
【0028】
セパレータ140は、ガス拡散電極120に接する一主面に凹凸構造からなるガス供給溝140Aを有する。そして、セパレータ140は、ガス供給溝140Aを介して水素ガスをガス拡散電極120に供給する。
【0029】
セパレータ150は、ガス拡散電極130に接する一主面に凹凸構造からなるガス供給溝150Aを有する。そして、セパレータ150は、ガス供給溝150Aを介して空気(または酸素)をガス拡散電極130に供給する。
【0030】
固体高分子型燃料電池からなる単位セル2101が発電する動作について説明する。セパレータ140のガス供給溝140Aを介して水素がガス拡散電極120へ供給されると、ガス拡散電極120は、水素ガスを触媒180へ拡散し、触媒180は、水素を水素イオンHと電子eとに分離する。
【0031】
そうすると、固体高分子電解質膜110は、触媒180によって分離された水素イオンHおよび電子eのうち、水素イオンHのみを透過して触媒190へ供給する。一方、電子eは、触媒180からガス拡散電極120を介してセパレータ140へ移動し、セパレータ140から外部の負荷(図示せず)を介してセパレータ150へ流れる。そして、セパレータ150、電子eをガス拡散電極130へ供給する。
【0032】
また、セパレータ150のガス供給溝150Aを介して空気(または酸素)がガス拡散電極130へ供給される。そして、ガス拡散電極130は、空気(または酸素)を触媒190へ拡散し、電子eを触媒190へ供給する。
【0033】
そうすると、水素イオンH、空気(または酸素)および電子eは、触媒190の助けを借りて反応し、水になる。このようにして、単位セル2101は発電する。
【0034】
なお、図1に示す単位セル2102〜2136の各々は、図2に示す単位セル2101と同じ構造からなり、上述した方法によって発電する。
【0035】
図3は、図2に示すセパレータ140の平面図である。図3を参照して、セパレータ140は、ステンレス鋼等の金属板からなり、ガス供給部11と、ガス流路部12と、ガス排出部13と、孔14〜19とを含む。ガス供給部11、ガス流路部12、ガス排出部13および孔14〜19は、金属板にプレス成形を施すことによって一体的に成形される。
【0036】
ガス供給部11は、凹部111と、孔112と、複数の凸部113とを含む。孔112および複数の凸部113は、凹部111内に配置される。そして、孔112は、長孔形状からなり、セパレータ140を厚み方向に貫通する。また、複数の凸部113は、孔112に沿ってガス流路部12側に直線状に配置される。
【0037】
凹部111は、基準面を構成し、複数の凸部113は、凹部111から0.4mmの高さを有する。また、周縁部21は、凹部111から0.5mmの高さを有する。
【0038】
ガス流路部12は、複数の溝121を有する。複数の溝121は、略平行に設けられる。複数の溝121は、ガス供給部11の凹部111と同じ基準面を有する。そして、隣接する2つの溝121,121間の凸部122は、溝121から0.5mmの高さを有する。
【0039】
ガス排出部13は、凹部131と、孔132と、複数の凸部133とを含む。孔132および複数の凸部133は、凹部131内に配置される。そして、孔132は、長孔形状からなり、セパレータ140を厚み方向に貫通する。また、複数の凸部133は、孔132に沿ってガス流路部12側に直線状に配置される。
【0040】
凹部131は、ガス流路部12の溝121と同じ基準面を有する。そして、複数の凸部133は、凹部131から0.4mmの高さを有する。
【0041】
孔14〜16は、ガス供給部11の孔112と直線状になるように周縁部21に形成される。孔14,15の各々は、略円形形状からなり、孔112と孔16との間に配置される。また、孔16は、長孔形状からなる。そして、孔14〜16は、セパレータ140を厚み方向に貫通する。
【0042】
孔17〜19は、ガス排出部13の孔132と直線状になるように周縁部21に形成される。孔17,18の各々は、略円形形状からなり、孔132と孔19との間に配置される。また、孔19は、長孔形状からなる。そして、孔17〜19は、セパレータ140を厚み方向に貫通する。
【0043】
ガス供給部11は、孔112から水素ガスまたは空気(または酸素ガス)を受け、その受けた水素ガスまたは空気(または酸素ガス)をガス流路部12へ供給する。ガス流路部12は、ガス供給部11から供給された水素ガスまたは空気(または酸素ガス)を複数の溝121によってガス排出部13へ流す。ガス排出部13は、ガス流路部12から受けた水素ガスまたは空気(または酸素ガス)を孔132から排出する。
【0044】
図4は、図3に示すセパレータ140の裏面の平面図である。図4を参照して、周縁部21Rは、図3に示す周縁部21に対応する。ガス供給部11において、凸部111Rは、図3に示す凹部111に対応する。また、複数の凸部113Rは、図3に示す複数の凸部113に対応する。図4においては、周縁部21Rが基準面を構成し、凸部111Rは、周縁部21Rから0.5mmの高さを有する。また、凸部113Rは、周縁部21Rから0.1mmの高さを有する。したがって、凸部113Rは、凸部111Rよりも窪んでいる。
【0045】
ガス流路部12において、凹部122Rは、図3に示す凸部122に対応し、凸部121Rは、図3に示す溝121に対応する。そして、凹部122Rは、周縁部21Rと同じ基準面を構成し、凸部121Rは、凹部122Rから0.5mmの高さを有する。
【0046】
ガス排出部13において、凸部131Rは、図3に示す凹部131に対応する。また、複数の凸部133Rは、図3に示す複数の凸部133に対応する。凸部131Rは、周縁部21Rから0.5mmの高さを有する。また、凸部133Rは、周縁部21Rから0.1mmの高さを有する。したがって、凸部133Rは、凸部131Rよりも窪んでいる。
【0047】
したがって、セパレータ140の裏面は、凸部121Rが周縁部21Rから突出した構造を有する。
【0048】
図5は、図3に示すガス供給部11の拡大図である。図5を参照して、直線状に配列された複数の凸部113の両側の周縁部21には、凹部114,115が設けられている。そして、金属板20は、凹部114,115間の距離に等しい長さを有し、両端が凹部114,115にはめ込まれる。
【0049】
この金属板20は、セパレータ140を用いて固体高分子型燃料電池を作製する場合、セパレータ140に接して設けられるガスケットがガス流路部12にめり込むのを防止するために設けられる。
【0050】
なお、図2に示すセパレータ150も、図3から図5に示すセパレータ140と同じ構造からなる。
【0051】
図6は、隣接する2つの単位セル間に配置されるシール部材および図4に示すセパレータ140の裏面を示す平面図である。図6を参照して、シール部材260は、略L字形状を有し、本体部262と、延伸部263と、孔2611〜2613とを有する。延伸部263は、本体部262の一方端から本体部262の幅方向に沿って延伸するように本体部262に連結される。孔2611は、長孔形状からなり、本体部262を貫通する。孔2612,2613の各々は、略円形形状からなり、本体部262を貫通する。孔2611は、セパレータ140の孔16,112,19,132と同じ寸法を有する。孔2612,2613の各々は、セパレータ140の孔14,15,17,18と同じ寸法を有する。
【0052】
そして、孔2611〜2613は、シール部材260がセパレータ140の裏面のガスマニホールド部10A,10Bに配置された場合、それぞれ、セパレータ140の孔14,15,16、セパレータ140の孔17,18,19にマッチし、延伸部263は、凸部121Rの長さ方向に沿って周縁部21Rに配置される。
【0053】
セパレータ140の裏面には、凸部121Rが形成され(図6の(b)参照)、隣接する2つの単位セルは、セパレータ140の裏面とセパレータ150の裏面とが接するので、隣接する2つの単位セルのセパレータ140,150は、凸部121R同士が接する。その結果、隣接する2つの単位セルのセパレータ140,150においては、ガスマニホールド部10A,10Bに隙間が形成される。したがって、ガスマニホールド部10A,10Bにおけるガスリークを抑制するために、シール部材260が隣接する2つの単位セルの2つのセパレータ140,150間に配置される。
【0054】
単位セル2101〜2136が2つの端板220,230間に直列に配列された場合、セパレータ140,150の孔14,15;17,18およびシール部材260の孔2612,2613は、単位セル2101〜2136の配列方向に直線状に配置されるので、単位セル2101〜2136は、セパレータ140,150の孔14,15;17,18およびシール部材260の孔2612,2613にボルトを通して端板220,230間に固定される。
【0055】
なお、セパレータ140,150は、ステンレス鋼に限らず、硫酸に対して耐腐食性を有する金属板から成っていればよい。
【0056】
図7は、図1に示す隣接する2つの単位セル2101,2102の断面図である。なお、図7は、図3および図4に示すセパレータ140の幅方向における断面図である。図7を参照して、単位セル2101のセパレータ150の凹凸構造1501(凸部121Rおよび凹部122Rからなる)は、単位セル2102のセパレータ140の凹凸構造1401(凸部121Rおよび凹部122Rからなる)に接する。
【0057】
この場合、凹凸構造1401の凸部121Rは、凹凸構造1501の凸部121Rに接し、凹凸構造1401の凹部122Rは、凹凸構造1501の凹部122Rに対向する。したがって、単位セル2101のセパレータ150と単位セル2102のセパレータ140との間には、2つの凹部122Rからなる隙間が形成される。
【0058】
シール部材260は、凹凸構造1401,1501の外周側のセパレータ140とセパレータ150との間に配置される。
【0059】
図8は、図1に示す隣接する2つの単位セル2101,2102の他の断面図である。なお、図8は、図3および図4に示すセパレータ140の長さ方向における断面図である。図8を参照して、単位セル2101のセパレータ150の凸部121Rは、単位セル2102のセパレータ140の凸121Rに接する。そして、シール部材260は、2つの凸部121Rの外周側のセパレータ140とセパレータ150との間に配置される。
【0060】
上述したように、凹凸構造1401,1501は、その周囲がシール部材260によってシールされているので、冷却ファン240,250,260がスタック210を空冷したとき、単位セル2101のセパレータ150と単位セル2102のセパレータ140との間の隙間(2つの凹部122R)は、セパレータ冷却ファン240,250,260からの空気に対して気密性を保持する構造からなる。
【0061】
再び、図1を参照して、単位セル2101〜2136は、上述した動作によって発電し、冷却ファン240,250,260は、それぞれ、セル群211〜213を冷却する。この場合、冷却ファン240,260は、冷却ファン250よりも低い冷却能力でセル群211,213を空冷し、冷却ファン250は、冷却ファン240,260よりも高い冷却能力でセル群212を空冷する。
【0062】
そして、複数の単位セル2101〜2136において、隣接する2つの単位セル間の隙間は、上述したように冷却ファン240,250,260からの空気を遮断する構造からなるので、スタック210の中央部に位置するセル群212に含まれる単位セルで発生した熱は、セル群211,213に含まれる単位セルへ拡散し易くなる。また、スタック210の中央部に位置するセル群212は、冷却ファン240,260よりも冷却能力が高い冷却ファン250によって空冷され、セル群212の両側に位置するセル群211,213は、冷却ファン250よりも冷却能力が低い冷却ファン240,260によって空冷される。
【0063】
その結果、セル群211〜213の温度は、均一になり易い。したがって、この発明によれば、複数の単位セル2101〜2136の温度を均一化できる。
【0064】
このように、この発明においては、直列に接続された36個の単位セル2101〜2136は、個別に空冷されるのではなく、冷却ファン240,250,260によって、1個の発熱体として全体的に空冷される。この場合、スタック210の中央部は、相対的に高い能力で空冷され、端部は、相対的に低い能力で空冷される。
【0065】
なお、上記においては、複数の単位セル2101〜2136は、3個のセル群211〜213に分類されると説明したが、この発明においては、これに限らず、複数の単位セル2101〜2136は、3個以外のセル群に分類されてもよく、一般的には、複数のセル群に分類されていればよい。
【0066】
なお、冷却ファン240,250,260は、「冷却手段」を構成し、冷却ファン250は、「第1の冷却ファン」を構成し、冷却ファン240は、「第2の冷却ファン」を構成し、冷却ファン260は、「第3の冷却ファン」を構成する。
【0067】
また、セル群212は、「第1のセル群」を構成し、セル群211は、「第2のセル群」を構成し、セル群213は、「第3のセル群」を構成する。
【0068】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0069】
この発明は、複数の単位セルの動作時の温度を均一化可能なスタック型の固体高分子型燃料電池に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】この発明の実施の形態によるスタック型の固体高分子型燃料電池の断面図である。
【図2】図1に示す単位セルの断面図である。
【図3】図2に示すセパレータの平面図である。
【図4】図3に示すセパレータの裏面の平面図である。
【図5】図3に示すガス供給部の拡大図である。
【図6】隣接する2つの単位セル間に配置されるシール部材および図4に示すセパレータの裏面を示す平面図である。
【図7】図1に示す隣接する2つの単位セルの断面図である。
【図8】図1に示す隣接する2つの単位セルの他の断面図である。
【符号の説明】
【0071】
140,150 セパレータ、10A,10B,10C,10D ガスマニホールド部、11 ガス供給部、12 ガス流路部、13 ガス排出部、14〜19,112,132,2611〜2613 孔、20 金属板、21,21R 周縁部、111,114,115,122R,131 凹部、200,200A 固体高分子型燃料電池、110 固体高分子電解質膜、111R,113,113R,121R,122,131R,133,133R 凸部、120,130 ガス拡散電極、121,2311〜2321 溝、140A,150A ガス供給溝、160,170 ガスケット、180,190 触媒、210 スタック、220,230 端板、240,250,260 冷却ファン、260 シール部材、262 本体部、263 延伸部、2101〜2136 単位セル、1401,1501 凹凸構造。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタック型の固体高分子型燃料電池であって、
直列に接続された複数の単位セルからなるスタックと、
前記スタックの中央部に位置する単位セルを第1の冷却能力で空冷し、前記スタックの端部に位置する単位セルを第2の冷却能力で空冷する冷却手段とを備え、
前記複数の単位セルは、隣接する第1および第2の単位セルを含み、
前記第1および第2の単位セル間は、前記冷却手段からの空気に対して気密性を保持する構造からなる、固体高分子型燃料電池。
【請求項2】
前記第1の単位セルは、
第1の固体高分子電解質膜と、
前記第1の固体高分子電解質膜の両側に配置された第1および第2のガス拡散電極と、
前記第1のガス拡散電極の前記第1の固体高分子電解質膜側と反対側に配置され、金属からなる第1のセパレータと、
前記第2のガス拡散電極の前記第1の固体高分子電解質膜側と反対側に配置され、金属からなる第2のセパレータとを含み、
前記第2の単位セルは、
第2の固体高分子電解質膜と、
前記第2の固体高分子電解質膜の両側に配置された第3および第4のガス拡散電極と、
前記第3のガス拡散電極の前記第2の固体高分子電解質膜側と反対側に配置され、金属からなる第3のセパレータと、
前記第4のガス拡散電極の前記第2の固体高分子電解質膜側と反対側に配置され、金属からなる第4のセパレータとを含み、
前記第2のセパレータは、前記第2のガス拡散電極側と反対側の表面に第1の凹凸構造を有し、
前記第3のセパレータは、前記第3のガス拡散電極側と反対側の表面に第2の凹凸構造を有し、
前記第1の凹凸構造の凸部は、前記第2の凹凸構造の凸部に接しており、
前記スタックは、相互に接する前記第1の凹凸構造と前記第2の凹凸構造との周辺部に配置され、前記冷却手段からの空気が前記第1および第2の凹凸構造に入るのを遮断するシール部材を含む、請求項1に記載の固体高分子型燃料電池。
【請求項3】
前記スタックは、各々が所定数の単位セルを含む第1から第3のセル群からなり、
前記第1のセル群は、前記スタックの中央部に位置し、
前記第2のセル群は、前記中央部の一方側に位置し、
前記第3のセル群は、前記中央部の他方側に位置し、
前記冷却手段は、
前記第1のセル群を前記第1の冷却能力で空冷する第1の冷却ファンと、
前記第2のセル群を前記第2の冷却能力で空冷する第2の冷却ファンと、
前記第3のセル群を前記第2の冷却能力で空冷する第3の冷却ファンとを含む、請求項1または請求項2に記載の固体高分子型燃料電池。
【請求項4】
前記第1から第3の冷却ファンは、前記複数の単位セルの配列方向に垂直な方向から前記複数の単位セルを空冷する、請求項3に記載の固体高分子型燃料電池。
【請求項5】
前記第1から第3のセル群は、相互に等しい数の単位セルを含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の固体高分子型燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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