説明

固化用粉末、組合せ菓子及びそれを用いたコマ様菓子の製造方法

【課題】無水ぶどう糖に加水したときの固化速度を適度に遅延し、固化後はコマ様菓子に最適な固化強度を保持し得、組合せ菓子に用いた際には、喫食者が簡単に且つ確実にコマ様菓子を作ることができる固化用粉末、組合せ菓子及びそれを用いたコマ様菓子の製造方法を提供する。
【解決手段】無水ぶどう糖を主成分とする固化用粉末において、該固化用粉末中に澱粉分解物を含有することを特徴とする固化用粉末、又は該固化用粉末と把持用菓子を組合わせた組合せ菓子によって達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無水ぶどう糖に加水したときの固化速度を適度に遅延し、固化後はコマ様菓子に最適な固化強度を保持し得、組合せ菓子に用いた際には、喫食者が簡単に且つ確実にコマ様菓子を作ることができる固化用粉末、組合せ菓子及びそれを用いたコマ様菓子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無水ぶどう糖を主成分とする固化用粉末を用いて、喫食者が該固化用粉末に加水し、短時間でラムネ様菓子に変化させる組合せ菓子としては、例えば下記特許文献1〜3が知られている。
【0003】
特許文献1は、容器詰め固化用粉末と成形用モールドとを備え、該成形用モールドの成形用凹部で固化用粉末を水と接触させて固化させ成形菓子化させうる組合せ菓子に関するものである。この組合せ菓子では、成形用凹部内に水を所定量入れた後、無水ぶどう糖を主成分とする固化用粉末を均一に振りいれ、上記固形用粉末を短時間でラムネ様の成形菓子に変化させた後、成形用モールドを裏返して底部を軽くたたいて成形菓子を取り出し、喫食するものである。
しかしながら、特許文献1記載の固化用粉末は、非常に短時間で固化が進行するため、例えばラムネ様菓子に治具を挿入したようなコマ様菓子を調製しようとする場合、治具を挿入する時点では、殆どラムネ様に固まっており、治具とラムネ様菓子とが一体化し難い。このため、確実にコマ様菓子を形成するには、治具を挿入するタイミングが非常に狭い時間範囲となり、幼児が手作りするには、改良の余地があった。
【0004】
特許文献2は、固化用粉末と水とを混合した後、これを圧延用のシート状物に挟んで圧延し、短時間放置すると薄板状の固形菓子を得ることが出来る組合せ菓子に関するものである。
しかしながら、特許文献2では、無水ぶどう糖の粒度と含有量の検討を行なっているが、上記特許文献1でも述べたコマ様菓子を得るには、固化速度が速すぎ、治具を挿入することは出来るが、治具と固形菓子とが一体化せず、確実にコマ様菓子を形成することは出来なかった。
【0005】
特許文献3は、無水の糖類粉末であっても含水化すること無く均一に着色することができ、着色された粉末のままでも保存中に吸湿し難く経時的に安定で、その調節時において乾燥性に優れた、均一に着色されている着色糖類粉末及び手作りの過程で成形性、視覚的変化及び意外性にも優れた成型菓子を得ることが出来る組合せ菓子に関するものである。
しかしながら、特許文献3は均一な着色に関するものであり、着色糖類粉末を用いて、特許文献1でも述べたようなコマ様菓子を成型しようとする場合、やはり固化速度が速すぎるため、上記と同様に改良の余地があった。
【0006】
また、無水ぶどう糖を主成分とする固化用粉末においては、特許文献1〜3に記載されているように、無水ぶどう糖を50%未満にしてその他の粉末成分(澱粉など)を多くすれば、粉末全体の迅速な固化状態が得られにくくなることが知られている。しかしながら、その他の粉末成分を増やして固化速度を遅くすると、本願のようなコマ様菓子を成型しても、コマ様菓子としての強度が不十分となり、成型トレイの成型用凹部から完全なコマ様の形で取り出したり、コマのように回転させて喫食前に遊ぶことは難しかった。もとより、従来は、無水ぶどう糖を用いたコマ様菓子についての発想がなかった。
【0007】
【特許文献1】実公平3−33275号公報
【特許文献2】実案登2579848号公報
【特許文献3】特開2001−128639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、無水ぶどう糖に加水したときの固化速度を適度に遅延し、固化後はコマ様菓子に最適な固化強度を保持し得、組合せ菓子に用いた際には、喫食者が簡単に且つ確実にコマ様菓子を作ることができる固化用粉末、組合せ菓子及びそれを用いたコマ様菓子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、無水ぶどう糖を主成分とする固化用粉末において、該固化用粉末中に澱粉分解物を含有することを特徴とする固化用粉末により上記目的を達成する。
【0010】
好ましくは、澱粉分解物を固化用粉末全体重量中1〜10重量%含有する。更に好ましくは、澱粉分解物が粉体状である。
【0011】
また、本発明は、別々に容器詰めされた下記(A)粉末及び(B)菓子が組み合わされていることを特徴とする組合せ菓子によって上記目的を達成する。
(A)無水ぶどう糖を主成分とする固化用粉末において、該固化用粉末中に澱粉分解物を含有する固化用粉末
(B)把持用菓子
【0012】
更に下記(C)が組み合わされていることが好ましい。
(C)コマ様菓子の回転体部を成型するための略錐形状の成型用凹部が設けられた成型用トレイ
【0013】
また、本発明は下記(1)〜(4)の工程を備えてなることを特徴とするコマ様菓子の製造方法により上記目的を達成する。
(1)成型用トレイの成型用凹部内に、下記(A)粉末を収容する工程
(A)無水ぶどう糖を主成分とする固化用粉末において、該固化用粉末中に澱粉分解物を含有する固化用粉末
(2)上記(A)粉末が収容された成型用トレイの成型用凹部内に、水性媒体を投入し混合する工程
(3)上記(A)粉末と水性媒体との混合物中に、把持用菓子を挿入する工程
(4)上記混合物中に挿入された把持用菓子を、該混合物が固化するまで保持した後、固化混合物を離型し、コマ様菓子を得る工程
【0014】
すなわち、本発明者らは、まず、無水ぶどう糖を用いて幼児が手作りで独楽として遊べるコマ様菓子を提案できないかと考えた。そして、無水ぶどう糖に加水したときの固化速度を適度に遅延させて、回転軸を挿入固定できるようにし、固化後は独楽として回転持続できる強力な固化強度を発現し、組合せ菓子に用いた際には、喫食者が簡単に且つ確実に上記コマ様菓子を作ることができる固化用粉末及び組合せ菓子について検討を行なった。そして、無水ぶどう糖の固化を遅延させる遅延剤について鋭意研究した結果、無水ぶどう糖を主体とした固化用粉末中に、澱粉分解物を含有させると、固化速度を適度に遅延させることができると共に、成型された固化物は、コマ様菓子に最適な強度を有していることを見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、固化用粉末と水性媒体を混合した際に、固化用粉末の固化速度の遅延を図ることができる。従って、把持用菓子を組合わせたコマ様菓子を調製する際に、固化速度が速すぎて、上記把持用菓子を挿入できないという問題点が生じない。
なおかつ、固化用粉末が固化した際に、コマ様菓子に最適な固化強度を有する。従って、把持用菓子を組合わせることによって得られたコマ様菓子を、喫食前に独楽のように回転させて遊ぶことができる。
【0016】
また、本発明の組合せ菓子は、コマ様菓子を調製するに当り必要な上記固化用粉末、把持用菓子及び成型用トレイを予め組合せたものであるので、水性媒体を準備すれば、いつでもどこでも簡便にコマ様菓子を調製できるという簡便性に優れている。
【0017】
更に、本発明の組合わせ菓子によれば、喫食者が単に出来上がったコマ様菓子の食感や風味を楽しむだけでなく、コマ様菓子を作るという創造的面白さと、出来上がったコマ様菓子で喫食前に遊ぶという玩具的面白さとを一度に味わうことが出来るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明を詳しく説明する。
まず、本発明の固化用粉末は、無水ぶどう糖を主成分とし、更に澱粉分解物を含有する。
【0019】
上記無水ぶどう糖とは、汎用のぶどう糖(含水ぶどう糖)とは異なり、水性媒体と接触し瞬時に固化する性質を有する。
本発明において、無水ぶどう糖は、固化用粉末全体重量中50重量%(以下「%」と略す)以上含有されていることが、適度な固化速度及び固化強度の点で重要である。更に好ましくは、80%以上である。
【0020】
上記澱粉分解物は、原料となる澱粉を酸、酵素、熱等で加水分解した部分分解物で、好ましくはDEが2〜50または平均分子量が300〜8500、更に好ましくはDEが25〜40又は平均分子量が400〜2300、より好ましくはDEが25〜40且つ平均分子量が400〜2300の範囲であることが、固化速度及び固化強度の点で好適である。
ここで、DEとは、dextrose equivalentの略で、澱粉の加水分解の度合いを示すものであり、固形分中のグルコースとして表わした全還元糖の比率であり、次式により算出される。
DE=直接還元糖(グルコースとして表示)÷固形分×100
なお、上記DEは、ベルトラン法またはウイルシュテッターシューデル法で測定した値である。
また、平均分子量とは、ゲルろ過クロマトグラフィーにより測定した値である。
【0021】
澱粉分解物の種類は、特に限定されないが、例えば、デキストリン、マルトデキストリン、粉あめ(粉末水あめ)等が挙げられ、適宜単独もしくは数種組合わせて用いればよい。この中でも、特に粉あめは、固化強度の点で好適である。
【0022】
上記澱粉分解物の剤型は、粉体状が無水ぶどう糖との混合性の点で好適である。粉体状とは、粒度が500μm以下の粉体が90%以上であることを意味する。このような粒度とすることにより、固化速度及び固化強度の点で好適である。更に好適には、粒度が400μm以下の粉体が90%以上である。
上記澱粉分解物の具体的な製品としては、例えば、「HLD」(DE30±2、平均分子量460)、「HLD N25」(DE25±2、平均分子量590)、「HLD N2
0」(DE20±2、平均分子量780)、「FSD−815」(DE15〜17、平均分子量900)、「FSD−810」(DE10〜12、平均分子量1350)、「FSD−610」(DE10〜12、平均分子量1500)、「FSD−607」(DE7〜9、平均分子量1700)、「FSD−703」(DE3〜5、平均分子量2500)(以上、二村化学(株)製)や、「パインデックス#1」(DE8、平均分子量2300)、「パインデックス#2」(DE11、平均分子量1500)、「パインデックス#3」(DE25、平均分子量680)、「パインデックス#4」(DE19、平均分子量990)、「パインデックス#6」(DE40、平均分子量400)、「MPD」(DE25、平均分子量680)、「TK−16」(DE17、平均分子量910)(以上、松谷化学(株)製)等が挙げられる。
【0023】
澱粉分解物の含有量は、固化用粉末全重量中、好ましくは1〜10%、更に好ましくは3〜7%であることが、固化速度を適度に遅延させることができ、且つ固化強度を保持し得る点で望ましい。
【0024】
また、本発明の固化用粉末には、必要に応じて副原料を添加してもよい。副原料としては、糖類、粉末果汁、酸味料、香料、呈味料や色素等の粉末原料や、チョコレートチップ、アラザン、カラースプレー、フルーツチップ等の粒状物が挙げられ、適宜単独もしくは数種組み合わせて添加すればよい。
なお、上記成分は、固化強度を損なわないよう、固化用粉末全体重量中、20%以下となるよう配合することが好ましい。
【0025】
上記固化用粉末は、様々な用途に用いられるが、特に容器詰めされ、組合せ菓子に好適に用いられる。
【0026】
次に、本発明の組合せ菓子について説明する。
本発明の組合せ菓子は、上記固化用粉末と把持用菓子とが別々に容器詰めされており、コマ様菓子を得るための組合せ菓子である。
【0027】
まず、本発明でいうコマ様菓子を、図1を用いて説明する。
図1(A)はコマ様菓子の一例を示す斜視図であり、(B)はコマ様菓子の正面図である。この図1において、1はコマ様菓子であり、把持用菓子5と回転体部6とで構成されている。
このコマ様菓子とは、喫食前に把持用菓子5を回転軸として手で持って回転させることにより、頂部6aが支点となり把持用菓子5及び回転体部6が回転し、所謂「独楽」のようにして喫食者が楽しむことができる菓子である。
上記回転体部6は、頂部6aが頂点となる略錐形状である。上記略錐形状とは、具体的に、円錐、三角錐、四角錐、それ以上の角を有する多角錐や回転体部6の上面6bの形状が手裏剣様、花形様、クローバー様等となっている変則錐形等が挙げられ、適宜設定すればよい。上記のような形状は、線対称であることが、成型されたコマ様菓子を「独楽」のようにして回転させて遊ぶ際にバランスを取りやすいので好適である。なお、本発明で言う略錐形状とは、頂点6aが尖鋭状のみならず、アール状、もしくはこれらを組合わせたもので頂点6aが尖鋭状であるものでもよい。
【0028】
本発明の組合せ菓子は、上述のコマ様菓子を調製するためのものであり、係る把持用菓子は、コマ様菓子が成型された際に手で把持し、回転させることが可能であって、回転時の回転軸となることができれば、特に限定するものではない。例えば、ビスケット、クラッカー、クッキー、ウエハース、パフ、せんべい、ボーロ等の焼き菓子や、ガム、キャンディ、チョコレート等が挙げられる。
その形状も、特に限定するものではなく、柱状等が挙げられる。
【0029】
本発明の組合せ菓子には、更に回転体部6を成型するための略錐形状の成型用凹部が設けられた成型用トレイを組合わせることが、喫食者が簡単にコマ様菓子を調製し得る点で好適である。
本発明にかかる成型用トレイの第一の実施形態について、図2を用いて説明する。
図2は、成型用トレイの一例を示す斜視図である。
この図2において、10は成型用トレイであり、該トレイ10は、成型用凹部15、収容部16及び計量カップ17とから構成されている。なお、上記計量カップ17は、コマ様菓子を調製する際に、切り離し手段としてのミシン目18で切り離して用いるようになっている。
この成型用トレイ10は、ポリスチレン製である。
【0030】
上記凹部15は、図1におけるコマ様菓子1の回転体部6を成型するためのものである。凹部15は、成型用トレイ10に三ヶ所設けられており、その深さは17mmであり、その凹部形状は開口周縁部19から頂点20に向かうに従いすぼまる略錐形状である。そして、この頂点20が、コマ様菓子1における回転体部6の頂部6aを形成するのである。また、凹部15の各形状は、一つが三角錐であり、その他二つは頂点20から開口周縁部19にかけて手裏剣様、花形様を形成する変則錐形となっている。
【0031】
上記収容部16は、コマ様菓子1調製時に、把持用菓子5を一時的に収容したり、出来上がったコマ様菓子1を回して遊ぶための部分である。また、製品化する際には、上述した固化用粉末と把持用菓子等を収容するために用いられる。
収容部16の底面21は、傾斜等のない平面である。
【0032】
また、計量カップ17は、コマ様菓子1を調製する際に用いる水性媒体を計量するためのものであって、計量カップ17に満杯充填で好適な水性媒体量となるように設計されている。
【0033】
本発明の組合せ菓子に係る成型用トレイは、上記実施形態に限定されるものではない。
上述した第一の実施形態では、成型用トレイ10の材質は、ポリスチレンであったが、上記の例に限定するものではなく、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリビニル系樹脂等が挙げられ、適宜選択して用いればよい。
また、成型用凹部15の深さ、個数も、特に限定するものではなく、適宜設定すればよい。
また、成型用凹部15の形状も、回転体部6が把持用菓子を中心に「独楽」のように回転しうる形状であれば、特に限定するものではない。
上記実施形態の成型用トレイ10には、ミシン目18で切り離し可能な計量カップ17が設けられているが、これは任意である。設けない場合には、別途添付してもよく、家庭のコップ等を代用するようにしてもよい。
【0034】
成型用トレイ10の計量カップ17と凹部15とは、それぞれに収容する水性媒体と固化用粉末とが良好に反応しうる容量に設定されている。すなわち、上記両者の反応性が良好であると、固化速度及び固化強度の点で好適である。具体的には、水性媒体と固化用粉末の割合が10:2〜8となるような容量となっている。
【0035】
次に、本発明の組合せ菓子の製品化は、例えば次のようにして行われる。
まず、(A)無水ぶどう糖を主成分とする固化用粉末において、該固化用粉末中に澱粉分解物を含有する固化用粉末、(B)把持用菓子、をそれぞれ別々の容器に包装する。そして、この別々に容器に包装された(A)粉末及び(B)菓子と、(C)コマ様菓子の回転体部を成型するための略錐形状の成型用凹部が設けられた成型用トレイとを準備する。
そして、これらを必要に応じ、更に一つの包装体に密封し、組合せ菓子製品とすればよい。
このとき、上記(A)粉末、(B)菓子の各包装は、例えば、ポリエチレン等の軟質なプラスティック袋等に包装すればよい。その包装形態は、袋状、筒状や箱状等が挙げられる。また、その材質は、プラスティックに限定されるものではなく、紙あるいは金属など各種材質の中から適宜選択して用いればよい。特に、上記(A)粉末は、無水ぶどう糖を含有するので、無水ぶどう糖の易吸湿性を考慮して、防湿性を有し、かつ密封可能な包装であることが望ましい。
なお、このとき攪拌用治具等を同封するようにしてもよい。
【0036】
次に、本発明の組合せ菓子を用いて、コマ様菓子は、例えば図3に示されるように製造される。なお、成型用トレイとして上記第一の実施形態のトレイを用い、把持用菓子としてビスケットを用いる。
まず、水性媒体を準備する。水性媒体は、例えば、水、シロップ、牛乳、溶質を溶解した水溶液等が挙げられ、これらの中から適宜選択し、単独もしくは複数組み合わせて用いればよい。この中でも、特に手軽に使用でき、固化用粉末との反応性がよく、コマ様菓子の風味に影響を与えない点で水が好適に用いられる。
なお、水性媒体は予め容器詰め等を行い、上記組合せ菓子とセットにして製品化するようにしてもよい。
【0037】
そして、図3(A)に示すように、成型用トレイ10にミシン目(図示せず)を刻設して設けられている計量カップ17を切り離し、把持用菓子であるビスケット5を包装容器から取り出して収容部16に一時的に収容する。
【0038】
次に、図3(B)に示すように、成型用トレイ10に設けられた三ヶ所の成型用凹部15全てに、容器詰めされた固化用粉末30を位置決め線(図示せず)辺りまで略均等に投入する。
その後、図3(C)に示すように、成型用トレイ10を手でRS方向(略平行方向)に揺り動かすことによりトレイ10を振動させ、固化用粉末30を凹部15内に略平らに敷き詰める。
このように、固化用粉末30を凹部15内に略平らに敷き詰めることにより、後述する水性媒体との混合時に反応が良好となり、成型の点で好適である。
【0039】
次に、図3(D)に示すように、予め準備した水31を、計量カップ17で所定量に計量した後、一ヶ所の凹部15に充填された固化用粉末30の上に投入し、引き続き攪拌用治具であるスプーン32を用いてよく攪拌溶解、混合する。混合は、混合物33に粘度が生じるまで続ける。
【0040】
次に、上記混合物33に粘度が生じたら、図3(E)に示すように、一時的に収容していたビスケット5を収容部16から取り出して、混合物33の略中央に略垂直に挿入し、そのまま混合物33が固化してビスケット5が抜けなくなるまでの約10秒間混合物33に浸漬されていないビスケット5の一部を手で保持する。やがて、上記混合物33が完全に固化し、その結果固化した混合物33(ラムネ様菓子)にビスケット5が突き刺さったコマ様菓子1が成型される。
【0041】
このように、成型用凹部15の一ヶ所でコマ様菓子1を成型した後、上述の凹部15に固化用粉末30を充填するところから、混合物33が固化するまでビスケット5を手で保持する迄の一連の工程を、残りの二ヶ所の凹部15に充填された固化用粉末30においても繰り返し行う。
【0042】
次に、全ての凹部15でコマ様菓子1が成型された後、図3(F)に示すように、成型用トレイ10の凹部15を外側から軽く手で押すことにより、固化した混合物33を離型させ、ビスケット5部分をつまんで取り出すことにより、コマ様菓子1を得ることができる。
【0043】
このようにして得られたコマ様菓子1は、図3(G)に示すように、成型用トレイ10の収容部16で、独楽のように回転させたり、複数のコマ様菓子1を互いに回転させて接触させながら遊ぶことができる。
【0044】
なお、得られたコマ様菓子1は、このままでも喫食可能であるが、更にトッピングを施してもよい。トッピング材料としては、きなこ、粉末ジュース、抹茶、チョコレート等各種ソース、ジャム、シロップ等が挙げられ、これらは適宜選択して単独もしくは複数組合わせて用いればよい。なお、上記トッピング材料の形態は、特に限定するものではなく、粉末状、顆粒状、液状等から適宜選択すればよい。
【0045】
また、予め固化用粉末30中に、水31と接触して発色が異なる色素を添加しておくことにより、加水して混合する際に色変わりさせるようにしてもよい。
【0046】
なお、図3中の成型用トレイ10は、家庭にある逆錐形状の凹部を有する食器等を用いてもよい。また、スプーン32は、家庭にあるフォーク、スプーン、箸、マドラー等を適宜用いてもよい。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。
【0048】
〈実施例1〜7〉
《組合せ菓子の調製》
下記表1に示す組成の固化用粉末を調整し、ポリエチレン袋に充填、密封した。また、把持用菓子である長さ3.5cmの棒状のビスケット5を同じくポリエチレン袋に3個充填、密封した。そして、この容器入り固化用粉末30と、把持用菓子であるビスケット5と、第一の実施形態で説明した成型用トレイ10と、スプーン32とを、更にプラスティック袋に一纏めに密封することにより組合せ菓子とした。
【0049】
《コマ様菓子の調製》
上記組合せ菓子を用い、図3(A)〜(F)に示す手順でコマ様菓子を調製した。
すなわち、まず、成型用トレイ10から計量カップ17を切り離し、容器詰めされたビスケット5を成型用トレイ10の収容部16に一時的に収容した。
次に、成型用トレイ10に設けられた三ヶ所の凹部15全てに、容器詰めされた固化用粉末30を均等に10gずつ投入した後、成型用トレイ10を手で約3秒間RS方向に振って振動させることにより、該固化用粉末30を凹部15内に略平らに敷き詰めた。
次に、予め準備した水31を、計量カップ17で表1に示す量を計量した後、一ヶ所の凹部15に充填された固化用粉末30の上に投入し、引き続きスプーン32を用いてよく攪拌溶解、混合した。混合は、混合物33に粘度(とろみ)が生じるまで続けた。
次に、上記混合物33に粘度(とろみ)が生じたら、収容部16に一時的に収容しているビスケット5を、長手方向が混合物33の露出表面に対し略垂直となるような角度で凹部15の略中央に挿入し、そのまま混合物33が固化してビスケット5が抜けなくなるまでの約10秒間混合物33に浸漬されていないビスケット5の一部を手で保持した。
その後、上述した凹部15に充填された固化用粉末30に加水して、攪拌溶解、混合した後、この混合物33にビスケット5を挿入し、混合物33が固化するまでビスケット5を手で保持する一連の工程を、残りの二ヶ所の凹部15に充填された固化用粉末30にお
いても繰り返し行った。
全ての凹部15において、上記工程が終了した3分後、成型用トレイ10の凹部15を外側から軽く手で押すことにより、コマ様菓子1を離型させ、ビスケット5部分をつまんで取り出すことにより、コマ様菓子1を得た。
【0050】
上記のようにして得られたコマ様菓子について、固化速度、固化強度が幼児が調製するのに適したものであるかを、専門パネラー10名で評価した。以上の結果を表1に合わせて示す。
【0051】
【表1】

【0052】
表1の結果より、実施例では、固化速度が適切で、ビスケットを確実に挿入、固化させ
ることが出来た。また、成型用凹部より確実に取り出すことが出来、独楽として回して遊ぶことが出来る強度を有するコマ様菓子を作ることができた。特に実施例1は、幼児でも非常に簡単にコマ様菓子を作ることができ、また、独楽の様に回して遊ぶことが出来たので大変好適であった。
これに対し、比較例1では、固化用粉末に加水すると瞬時に固化したため、ビスケットを挿入するタイミングを図ることが非常に困難であった。また、比較例2では、固化用粉末に加水しても、固化せず、コマ様菓子を調製することができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】(A)本発明のコマ様菓子の一例を示す斜視図 (B)本発明のコマ様菓子の一例を示す正面図
【図2】本発明に係る成型用トレイの一例を示す斜視図
【図3】本発明の組合せ菓子を用いてコマ様菓子を製造する方法の一例を示した説明図
【符号の説明】
【0054】
1 コマ様菓子
5 把持用菓子
6 回転体部
6a 頂部
6b 上面
10 成型用トレイ
15 凹部
16 収容部
17 計量カップ
18 ミシン目
19 開口周縁部
20 頂点
21 底面
30 固化用粉末
31 水
32 スプーン
33 混合物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無水ぶどう糖を主成分とする固化用粉末において、該固化用粉末中に澱粉分解物を含有することを特徴とする固化用粉末。
【請求項2】
澱粉分解物を、固化用粉末全体重量中1〜10重量%含有する請求項1記載の固化用粉末。
【請求項3】
澱粉分解物が粉体状である請求項1又は2記載の固化用粉末。
【請求項4】
別々に容器詰めされた下記(A)粉末及び(B)菓子が組み合わされていることを特徴とする組合せ菓子。
(A)無水ぶどう糖を主成分とする固化用粉末において、該固化用粉末中に澱粉分解物を含有する固化用粉末
(B)把持用菓子
【請求項5】
更に下記(C)が組み合わされている請求項4記載の組合せ菓子。
(C)コマ様菓子の回転体部を成型するための略錐形状の成型用凹部が設けられた成型用トレイ
【請求項6】
下記(1)〜(4)の工程を備えてなることを特徴とするコマ様菓子の製造方法。
(1)成型用トレイの成型用凹部内に、下記(A)粉末を収容する工程
(A)無水ぶどう糖を主成分とする固化用粉末において、該固化用粉末中に澱粉分解物を含有する固化用粉末
(2)上記(A)粉末が収容された成型用トレイの成型用凹部内に、水性媒体を投入し混合する工程
(3)上記(A)粉末と水性媒体との混合物中に、把持用菓子を挿入する工程
(4)上記混合物中に挿入された把持用菓子を、該混合物が固化するまで保持した後、固化混合物を離型し、コマ様菓子を得る工程

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−67933(P2006−67933A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−256563(P2004−256563)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000000952)カネボウ株式会社 (120)
【出願人】(393029974)カネボウフーズ株式会社 (64)
【Fターム(参考)】