説明

固定シールと動的シール

固定シールまたは動的シールを表面に形成するシール部材に用いる技法について述べられている。シール部材は、少なくともその表面がVespel SCP 5000またはVespel SCP 50094の一方から形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2010年1月11日に出願された米国仮出願第61/293879号の優先権を主張する。これらの出願の内容の全体が参照により明確に本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願は一般的にシールに関し、より詳しくは、固定シールおよび/または動的シールを形成する表面を有する構成要素に使用される材料に関する。
【背景技術】
【0003】
研究所または他の環境で試料が様々な異なった目的および用途で処理される場合がある。クロマトグラフィとは、試料混合物を分離する技法を意味する。一般的なクロマトグラフィの技法は、ガスクロマトグラフィ(GC)および液体クロマトグラフィ(LC)を含む。LCを実施する機器によって、分析されるべき液体試料の少量が分析のために取り込まれる。試料は、カラムを通して搬送される溶剤ストリームの中に注入される場合がある。すると試料内の化合物が、カラムを通って異なった速度で移動することによって分離されることが可能となり、その結果、カラムから異なった時間に異なった化合物が溶出する。高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)および超高性能液体クロマトグラフィ(UPLC)に関連して、クロマトグラフィのカラムを通したシステム内の流体流れを促進するために、圧力が使用される。
【0004】
LCまたはGCを実施する機器は、様々な異なった材料を使用して製作されてもよい異なった構成要素を含む。LCシステムなどのシステムに関連して、様々な異なった構成要素が、圧力下で作動するシールを形成することができる。シールの形成に使用される表面を有するロータなどの構成要素または部品が交換される場合がある。これは例えば、過度の漏れがあって所望の圧力が充分に維持されることが可能でなくなるときに行われる。このような場合には、構成要素または部品は、その有用な耐用期間の終わりに到達したとして特徴付けられることができる。構成要素とシールが形成されるそれらの表面との形成に使用される材料の選択は、LCシステムまたは他のシステム内で構成要素が交換までに使用されることができる耐用期間または時間量に影響する場合がある。選択される材料は、システムの中での用途および使用法に依存して特定の特徴または特性を有する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2005/079543号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によるのは、固定シールまたは動的シールを表面に形成するシール部材において、少なくともその表面がVespel SCP 5000またはVespel SCP 50094の一方から形成されているシール部材である。シール部材は、液体クロマトグラフィシステム内で固定シールまたは動的シールを形成してもよい。シール部材は弁内に含まれてもよい。弁は注入弁であってもよい。シール部材はロータ要素であってもよい。シール部材はニードルシールであってもよい。ニードルシールは、Vespel SCP 5000から形成された第1部位を含んでもよく、第1部位は通り穴を含み、通り穴の側壁が、針先端と接触して動的シールを形成する表面を形成する。ニードルシールは第1部位を包み込む第2部位を含んでもよい。第2部位は金またはステンレススチールを含む材料から形成されてもよい。通り穴は、針先端を有する針が中に挿入される通り穴の第1端部の開口部に対して内向きにテーパ状となる第1部位を含んでもよい。通り穴は、ニードルシールの第1部位に隣接した非テーパ状の第2部位を含んでもよい。通り穴は、ニードルシールの第2部位に隣接した他のテーパ状部位を含んでもよい。ニードルシールの他のテーパ状部位は、第1端部に対向する通り穴の第2端部で円錐状部位を形成してもよい。ニードルシールの第1部位は、上部位とt字形状の輪郭を有する底部位とを含んでもよい。上部位は円筒形状を有してもよく、前記底部位はニードルシールの第2部位の中に挿入されてもよい。ニードルシールの第2部位はステンレススチールから形成されてもよい。ニードルシールの第2部位は、ニードルシールの第2部位が第1部位よりも大きな機械強度を有することを示す機械的特性を有する材料から形成されてもよい。
【0007】
本発明の他の態様によるのは、シールを表面に形成するニードルシールにおいて、少なくとも表面は、Vespel SCP 5000またはVespel SCP 50094を含む材料から形成されるニードルシールである。形成されるシールは液体クロマトグラフィシステム内の動的シールであってもよい。ニードルシールは、試料を液体クロマトグラフィシステムの中に注入するために使用される注入器内に含まれてもよい。ニードルシールは、Vespel SCP 5000で製作された、通り穴が中に通して形成された第1内側部位を含んでもよい。通り穴の内側表面は、通り穴の中に挿入された針先端と内側表面が接触すると動的シールが形成される表面であってもよい。ニードルシールは、第1内側部位を包み込む第2部位を含んでもよい。第2部位は、金またはステンレススチールの一方を備えてもよい。ニードルシールは、t字形状の輪郭を有する第1部位を含んでもよく、Vespel SCP 5000で製作され、通り穴が中に通して形成されてもよい。通り穴の内側表面は、通り穴の中に挿入された針先端と内側表面が接触すると動的シールが形成される表面であってもよい。第1部位は、上部位と底部位を含んでもよい。上部位は円柱形状を有してもよく、底部位は第2部位の中に挿入されてもよい。第2部位はステンレススチールから形成されてもよい。第2部位は、第2部位が第1部位よりも大きな機械強度を有することを示す機械的特性を有する材料から形成されてもよい。
【0008】
本発明の他の態様によるのは、シールを表面に形成する、少なくともその表面が、Vespel SCP 5000またはVespel SCP 50094の一方を含む材料から形成されたロータ要素である。ロータ要素は弁内に含まれてもよい。弁は注入弁であってもよい。弁は、液体クロマトグラフィを実施するシステム内に含まれてもよい。
【0009】
本発明の他の態様によるのは、一部品を製作する方法であって、Vespel SCP 5000またはVespel SCP 50094の一方である材料の部位を提供するステップと、部品を作り出すために一部位を処理するステップとを備える方法である。部品はその表面で固定シールまたは動的シールを形成するのに使用される。処理は、前記部位を機械加工するステップと、前記部位を切断するステップと、前記部位をプレス嵌めするステップとのうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0010】
本発明の他の態様によるのは、ロータを製作する方法にであって、Vespel SCP 5000またはVespel SCP 50094の一方である材料の、ディスク様形状を有する一部位を提供するステップと、一部位の少なくとも第1表面に、少なくとも1つの溝がその上に形成されるようにパタン付けするステップとを備える方法である。方法は、前記材料で製作された円柱状ロッドから一部位を切り取るステップも含んでもよい。
【0011】
本発明の他の態様によるのは、ニードルシールを製作する方法であって、Vespel SCP 5000またはVespel SCP 50094の一方である材料の一部位を提供するステップと、ニードルシールを製造するために一部位を処理するステップとを備える方法である。処理するステップは、一部位を通して通り穴を形成することを含み、通り穴は一方端部に通り穴の第1内向きテーパ状部位への開口部を有する。処理するステップは、プレス嵌めすることと機械加工することとの少なくとも一方を含んでもよい。
【0012】
本発明の例示的な実施形態についての以下の詳しい説明を、添付図面と併せて読めば、本発明の特徴および利点がより明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】本明細書で述べられる技法によって製作されたロータの実施形態を例証する実施例を示す図である。
【図1B】本明細書で述べられる技法によって製作されたロータの実施形態を例証する実施例を示す図である。
【図2A】本明細書で述べられる技法による針の実施例を示す図である。
【図2B】本明細書で述べられる技法によるニードルシールの実施形態を示す図である。
【図2C】本明細書の技法によるニードルシールの実施形態の一態様を例証する実施例を示す図である。
【図2D】本明細書の技法によるニードルシールの実施形態の一態様を例証する実施例を示す図である。
【図2E】本明細書の技法によるニードルシールの実施形態の一態様を例証する実施例を示す図である。
【図2F】本明細書の技法によるニードルシールの実施形態の一態様を例証する実施例を示す図である。
【図2G】本明細書の技法によるニードルシールの実施形態の一態様を例証する実施例を示す図である。
【図2H】本明細書の技法によるニードルシールの実施形態の一態様を例証する実施例を示す図である。
【図2I】本明細書の技法によるニードルシールの実施形態の一態様を例証する実施例を示す図である。
【図3A】本明細書の技法によるニードルシールの実施形態の一態様を例証する実施例を示す図である。
【図3B】本明細書の技法によるニードルシールの実施形態の一態様を例証する実施例を示す図である。
【図3C】本明細書の技法によるニードルシールの実施形態の一態様を例証する実施例を示す図である。
【図3D】本明細書の技法によるニードルシールの実施形態の一態様を例証する実施例を示す図である。
【図3E】本明細書の技法によるニードルシールの実施形態の一態様を例証する実施例を示す図である。
【図3F】本明細書の技法によるニードルシールの実施形態の一態様を例証する実施例を示す図である。
【図3G】本明細書の技法によるニードルシールの実施形態の一態様を例証する実施例を示す図である。
【図3H】本明細書の技法によるニードルシールの実施形態の一態様を例証する実施例を示す図である。
【図3I】本明細書の技法によるニードルシールの実施形態の一態様を例証する実施例を示す図である。
【図3J】本明細書の技法によるニードルシールの実施形態の一態様を例証する実施例を示す図である。
【図3K】本明細書の技法によるニードルシールの実施形態の一態様を例証する実施例を示す図である。
【図3L】本明細書の技法によるニードルシールの実施形態の一態様を例証する実施例を示す図である。
【図3M】本明細書の技法によるニードルシールの実施形態の一態様を例証する実施例を示す図である。
【図3N】本明細書の技法によるニードルシールの実施形態の一態様を例証する実施例を示す図である。
【図3O】本明細書の技法によるニードルシールの実施形態の一態様を例証する実施例を示す図である。
【図3P】本明細書の技法によるニードルシールの実施形態の一態様を例証する実施例を示す図である。
【図3Q】本明細書の技法によるニードルシールの実施形態の一態様を例証する実施例を示す図である。
【図3R】本明細書の技法によるニードルシールの実施形態の一態様を例証する実施例を示す図である。
【図4】本明細書の技法に関連した実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 5000についての応力−歪み曲線のグラフである。
【図5A】本明細書の技法に関連した実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 5000の特性を示す図である。
【図5B】本明細書の技法に関連した実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 5000の特性を示す図である。
【図5C】本明細書の技法に関連した実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 5000の特性を示す図である。
【図5D】本明細書の技法に関連した実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 5000の特性を示す図である。
【図5E】本明細書の技法に関連した実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 5000の特性を示す図である。
【図5F】本明細書の技法に関連した実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 5000の特性を示す図である。
【図5G】本明細書の技法に関連した実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 5000の特性を示す図である。
【図5H】本明細書の技法に関連した実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 5000の特性を示す図である。
【図5I】本明細書の技法に関連した実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 5000の特性を示す図である。
【図6A】本明細書の技法に関連した実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 5000の特性を示す図である。
【図6B】本明細書の技法に関連した一実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 5000の特性を示す図である。
【図6C】本明細書の技法に関連した実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 5000の特性を示す図である。
【図6D】本明細書の技法に関連した実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 5000の特性を示す図である。
【図6E】本明細書の技法に関連した実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 5000の特性を示す図である。
【図6F】本明細書の技法に関連した実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 5000の特性を示す図である。
【図6G】本明細書の技法に関連した実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 5000の特性を示す図である。
【図7A】本明細書の技法に関連した実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 50094の特性を示す図である。
【図7B】本明細書の技法に関連した実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 50094の特性を示す図である。
【図7C】本明細書の技法に関連した実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 50094の特性を示す図である。
【図7D】本明細書の技法に関連した実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 50094の特性を示す図である。
【図7E】本明細書の技法に関連した一実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 50094の特性を示す図である。
【図7F】本明細書の技法に関連した実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 50094の特性を示す図である。
【図7G】本明細書の技法に関連した実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 50094の特性を示す図である。
【図7H】本明細書の技法に関連した実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 50094の特性を示す図である。
【図7I】本明細書の技法に関連した実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 50094の特性を示す図である。
【図8A】本明細書の技法に関連した実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 50094の特性を示す図である。
【図8B】本明細書の技法に関連した実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 50094の特性を示す図である。
【図8C】本明細書の技法に関連した実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 50094の特性を示す図である。
【図8D】本明細書の技法に関連した実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 5000およびVespel SCP 50094の特性を示す図である。
【図8E】本明細書の技法に関連した実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 5000およびVespel SCP 50094の特性を示す図である。
【図8F】本明細書の技法に関連した実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 5000およびVespel SCP 50094の特性を示す図である。
【図9A】本明細書の技法に関連した実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 5000試料を使用した化学的適合性試験の結果を示す実施例を示す図である。
【図9B】本明細書の技法に関連した実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 5000試料を使用した化学的適合性試験の結果を示す実施例を示す図である。
【図9C】本明細書の技法に関連した実施形態で使用される場合のあるVespel SCP 5000試料を使用した化学的適合性試験の結果を示す実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下のパラグラフで述べられるのは、液体クロマトグラフィ(LC)システムなどのシステムの構成要素を製作するのに使用される場合のある技法である。LCシステムは、例えば、マサチューセッツ州ミルフォードのWaters CorporationのACQUITY UPLCシステム(R)およびナノACQUITY UPLC(R)システムなどの、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)システムまたは超高性能液体クロマトグラフィ(UPLC)システムであってもよい。Waters Corporationの前述のものなどのLCシステムは、5000PSI(一部のHPLCシステムで一般的である)から15000PSI(一部のUPLCシステムで一般的である)の範囲などの高圧下で動作することができる。LCシステムは、様々な異なった技法および材料を使用して製作された構成要素を含んでもよい。LCシステムの一実施形態では、シールを形成するのに使用される1つまたは複数の構成要素が、DuPont(TM)によって販売されるVespel SCP 5000またはSCP 50094で製作されてもよい。Vespel SCP 50094は、非充填型熱硬化性ポリイミド重合体として特徴付けられることができる。Vespel SCP 5000はグラファイト充填材を含む熱硬化性ポリイミド重合体として特徴付けられることができる。前述の材料の追加の特性および特徴について、以下のパラグラフおよび図でより詳しく述べられる。
【0015】
当業者には言うまでもなく、特定の商品名によって本明細書で言及され、かつ/または特定の販売元または製造元によって提供される材料は、本明細書で述べられるものとは別の名前を使用して言及され、かつ/または別の販売元によって提供されてもよい。
【0016】
Dupont(TM)によって販売されるVespel SCP 5000またはSCP 50094で製作された構成要素などの構成要素を使用して形成されたシールは、固定シールまたは動的シールであってもよい。動的シールとは、シールを形成する表面同士の間に相対的な動きが存在するシールであると定義されることができる。動的シールとは対照的であるのは、シールを形成する表面同士の間に相対的な動きがない固定シールである。本明細書で述べられるのは、動的シールなどのシールを形成するのに構成要素が使用されるLCシステム内に含まれてもよい構成要素の実施例である。しかし、当業者には言うまでもなく、本明細書で述べられる材料および技法の使用は、例証のためにここに提示されるそれらの特定の実施例に限定されない。
【0017】
LCシステムは注入器を含んでもよく、注入器は制御された量の試料を手動または自動で流体ストリームの中に注入するために使用され、流体ストリームは試料をLCカラムに搬送し、そこで試料が分離されることができる。注入器は注入器弁を含んでもよく、注入器弁は、LCシステム内の分析のための固定量の試料の取り込みを制御または調整することに関連して使用される。注入器弁は、パタンが表面上に1つずつ形成された1つまたは複数の部品を含んでもよい。パタンは、例えば1つまたは複数の溝を含んでもよい。溝が形成される表面は、試料を含んだ流体と接触することもできる。即ち、溝または他のパタン付き区域は、LCシステム内で試料の流路の一部を形成することができる。
【0018】
以下のパラグラフで述べられるように、注入器弁アセンブリの1つまたは複数の部品は、本明細書で述べられる材料を使用して製作されてもよい。当業者には言うまでもなく、注入器弁アセンブリは、本明細書の技法を例証する目的でここに述べられるものとは別の部品を含んでもよく、追加の小部品を有してもよい。例えば、参照によって本明細書に組み込まれるKeeneらの国際公開第2005/079543号(国際出願/米国特許出願第2005/005714号明細書)のPIN VALVE ASSEMBLYで述べられる注入器弁アセンブリが、一般的に当分野で知られている。LCシステム内に使用されてもよい注入器弁などの弁はステータとロータを含んでもよく、それらは共に作用して弁のポートを接続または位置合わせする。ロータは、静止したままのステータに対するロータの位置を変化させるために、弁の軸に対して回転可能なやり方で作動されてもよい。ロータの第1表面はステータの表面に面してもよい。ロータは、以下のパラグラフで述べられるように、第1表面上に形成されるパタンを含んでもてもよい取り外し可能なディスクでであってもよい。ロータは、大量の試料を充填することに関係するなどの弁アセンブリの作動を促進するために、エンジンまたはモータなどの他の構成要素に結合された駆動シャフトを含む弁アセンブリ内に含まれてもよい。
【0019】
次に述べられるのは、パタンが表面上に形成されたロータである。ロータはVespel SCP 5000またはSCP 50094で製作されてもよく、LCシステムの注入器弁内に含まれてもよい。
【0020】
本明細書の図に関しては例示的な測定値が含まれることに留意されたい。以下の図で提示される測定値は、角度測定値などの他の指定がない限り、インチの概略値である。ここに指示される測定値は、例証を目的とした実施形態に含まれる場合のあるものの例にすぎず、本明細書の技法を限定するものとして見なされるべきではない。
【0021】
図1Aおよび図1Bを参照すると、本明細書で述べられる技法によってパタン付けされてもよいロータの実施形態が図示されている。図1Aおよび図1Bのロータは、注入器弁アセンブリ内に含まれてもよい。図1Aおよび図1Bの実施例100内に明記された様々な図を有するロータは、その表面に溝112、114、および116を含む。要素110は、ステータに面するロータの表面図を提示する。110のロータは、3つの溝112、114、および116がステータに面する表面上に形成されたディスクとして図示されている。要素115a〜115cは、ロータ内に形成されてもよい3つの通り穴である。通り穴115a〜115cは、ロータを弁アセンブリ内に位置決めするために使用されてもよい。例えば、弁アセンブリ内に含まれ、ステータに面しないロータの表面と接触した別の部品(図示されず)が、3つの通り穴115a〜115cそれぞれに対応する位置を備えた3つの突起部を含んでもよい。
【0022】
ロータの一実施形態では、ロータは約0.706+/−0.003インチの直径を有してもよい。各溝はほぼ同じ寸法および大きさを有してもよい。例えば、各溝は、幅が0.008+/−0.001インチであってもよく、0.04マイクロリットルの容積を保持してもよい。溝112、114、および116はそれぞれロータの中心から同じ間隔Rを置いて位置付けられ、半径Rを有する円の同じ円周の一部位に沿って延在するように形状化される。この実施例では、上述の円は0.100インチという例示的な直径を有する。各溝は、60度の角度に関連付けられる円周の一部位のまわりに延在するのに充分な長さを有する。各溝は、円周に沿って他の溝から等間隔となるように位置決めされる。要素150は、注入器弁内に含まれる場合のあるような外側金属リング内に含まれるディスクとしての、ロータの異なった図を示す。3つの溝112、114、および116、ならびに通り穴115a〜115cは、例えばドリルまたは他の適切な工具を使用して機械加工するなど、当分野で知られている任意の1つまたは複数の適切な技法を使用して形成されてもよい。
【0023】
図1Aおよび図1Bのロータを備えた注入弁アセンブリ内にステータ(図示されず)が含まれてもよい。当分野で知られているように、また以下により詳しく述べられるように、ステータは、ロータの表面に接触しない第1表面と、図1Aおよび図1Bの実施例100内で示されるような溝が形成されたロータの表面と接触する対向する第2表面とを有してもよい。前述のステータの第1表面は、ステータを通る対応するポート穴を有する、開口部を第2表上に備えた6つのポートなどの、いくつかのポートを含んでもよい。ロータに面するステータの第2表面上に形成されたポート穴の開口部は、図1Aのロータ110内の3つの溝112、114、および116と中心から同じ間隔に位置付けられる。上述のことによって、ステータの第2表面(ロータと接触する)上のポート穴の開口部がロータの溝112、114、および116と位置合わせされた状態になる。
【0024】
ロータは、この例示的な弁アセンブリでは3つの溝が形成されたディスクであるが、本明細書で述べられる技法を使用して形成されるロータには、任意の数、形状、および寸法の溝が形成されてもよい。例えば、本明細書で述べられる技法によって製作されるロータの第2実施形態では、ロータは3つの溝を含んでもよく、溝114と116は同じ寸法であってもよく、上述の大きさを有してもよい。第3溝112は溝114、116よりも長い長さを有してもよい。溝112は、60度の角度ではなく、74度の角度に関連付けられた上述の円周の一部位のまわりに延在するのに充分な長さを有してもよい。
【0025】
Vespel SCP 5000から形成されるロータの実施形態は、例えばVespel SCP 5000の円柱状ロッドから0.141インチなどの所望の厚みのディスク部位を切り取ることによって製作されてもよい。ディスク部位は、当業者に知られている任意の適切な技法を使用して所望の仕様に従ってさらに形状化されてもよい。例えば、溝、通り穴などが、機械加工または当分野で知られている他の適切な技法を使用して製作されてもよい。他の実施例として、参照によって本明細書に組み込まれる、代理人整理番号WCS−004PR/W−541の2008年10月28日に出願された米国仮特許出願第61/108,965号明細書のTECHNIQUES FOR PATTERNING VALVE COMPONENTSで述べられるように、本明細書で述べられるロータの表面上などの溝またはパタンは、圧力を掛けることのみの、または熱と組み合わせた型押し技法を使用して形成されてもよい。さらに、ロータの任意の部位が任意選択で、知られている被覆および適正な技法を使用して必要に応じて被覆されてもよい。Vespel SCP 50094から形成されるロータの実施形態も、上述の方法と類似の方法で製作されてもよい。
【0026】
上述のような実施形態のロータがその中心軸のまわりで回転式に作動する。この作動によって、ステータに面したロータの表面上に位置付けられた溝が動いて、ステータの様々なポートへの様々な流体接続をもたらす。そこで溝は2つのポートの間にチャネルを形成し、そこに流体が流れる。さらに、試料ループに出入りする注入試料の流路を形成することに関連して、第1表面(ロータに面さない)内でステータのポートに管が接続されてもよい。試料は、ポンプなどを使用して圧力を掛けることによって試料ループから押し出されることができる。弁の構成および使用法に依存して、任意のポートが、LCシステム内の流体に対する入口ポートまたは出口ポートとなってもよい。LCシステムの注入器弁では、様々な量の試料を充填し、次いでLCシステムの中に注入するために、ロータは固定ステータに対して様々な位置へと作動されてもよい。LCシステム内の注入器に関連した本明細書に述べられるロータおよび関連付けられる弁は、固定ループ注入器または他のタイプの注入器で使用されてもよいことに留意されたい。本明細書で述べられるロータおよび材料は、注入器に関連して使用されるものとは別の弁に関連して使用されてもよい。
【0027】
上述のものは、試料が試料ループの中に移送され、試料ループがシステムの流路の一部になるLCシステム内に含まれてもよい、固定ループ注入器としても知られるタイプの注入器の実施例である。例えば、Walters CorporationのACQUITY UPLC(R)システムは固定ループ注入器を使用する。当分野で知られている他のタイプの注入器が、試料が針の中に吸引されてもよく、針がシステムの流路の一部になる直接注入器として特徴付けられることができる。直接注入器では、LCシステムの中への試料の取り込みに関連して試料ループが利用されることはない。例えば、Walters CorporationによるAlliance HPLC(R)システムは、直接注入を使用する。
【0028】
次に述べられるのは、直接注入器で使用される、ニードルシールであるシール部材の例示的な実施形態である。このような実施形態では、ニードルシールは、Vespel SCP 5000またはSCP 50094の材料などの本明細書で述べられる材料の1つを使用して形成されてもよい。シール部材という用語は、一般的に、固定シールまたは動的シールを形成するのに使用される本明細書で述べられるニードルシールまたはロータなどの部品を指して用いられてもよいことに留意されたい。
【0029】
図2Aおよび図2Bを参照すると、本明細書の技法によるLCシステム内の直接注入で使用されるニードルシールと、針と、注入ポートの構成要素との実施例が示されている。実施例180は、ニードルシール184を含む注入ポート181の構成要素を図示する。本明細書の技法および材料によるニードルシールの例示的な実施形態について、以下のパラグラフでより詳しく述べられる。ニードルシール184は、試料をLCシステムの中に取り込む直接注入技法の動作中に動的シールを形成するものとして特徴付けられることができる。直接注入を実施することに関連して、試料が、196によって図示されるような針の中に吸引されてもよい。次いで最初の時点で、針は充分な下向きの力によって垂直方向に開口部182の中へ、通路183の中へ、ニードルシール184内の開口部184aの中へと挿入される。針先端は、ニードルシール184内の開口部184aの中の側壁と接触してシールを形成する。要素190は、181内に含まれるニードルシールの一部位の拡大図である。190にさらに詳しく図示されるように、開口部184aはニードルシールを通る通り穴を形成する。184aの内側壁はテーパ状にされ、一点へと狭窄されて、針先端が184aの中に挿入されると184aの内側壁が狭まるにつれてそれと接触するようになる。シールが形成されるのは、針先端と内側壁の間の前述の接触点においてである。針が挿入される間の最初の時点で、ニードルシールに対する加圧はない。針がニードルシール184の中に一度挿入され、針先端と開口部184aの中のニードルシール側壁表面との間の接触点に適正な量の力が存在すると、流体流れがオンにされ、システムの加圧をもたらす。針先端と184aの内側壁の間の接触点にシールが形成される。すると針を通る流体流れが停止され、ニードルシールおよびシステムはなお加圧された状態となる。次いで第2の時点で、針は上向き垂直方向に183に沿ってニードルシール184から引き出されて、圧力降下を引き起こす。
【0030】
参照によって本明細書に組み込まれる、代理人整理番号W−539/WCS−010PRの2010年1月11日に出願された米国仮特許出願第61/203,902号明細書のINJECTION PORT NEEDLE SUPPORT AND WASHING(「NEEDLE SUPPORT AND WASHINGの特許出願」)などでより詳しく述べられるように、187によって示される材料と、その中に形成される通路183と、任意選択のポート186a、186bと、それらの183への接続部186c、186dは針支持構造体を備えることができる。通路183は、例えば、針196で使用するために0.062+/−0.003インチの範囲内の直径を有してもよい。針支持構造体は、一実施形態で使用される場合のある所望の針の直径および/または長さを収容するために他の適切な大きさを有してもよいことに留意されたい。
【0031】
一実施形態では、針先端が、第1点196aで0.040+/−0.001インチの外径(OD)を有するようにテーパ状の先端を有する針196が使用されてもよい。針は、例えばステンレススチールであってもよい。針先端は第一点196aから第2点196bへテーパ状にされ、狭窄されてもよく、そこで針先端の外側表面がニードルシールの内側壁と接触する。一実施形態では、第2点のODは0.013+/−0.001インチであってもよい。針先端は196で図示されるように13度の角度でテーパ状にされてもよい。要素190は、上述の針196で使用されることができるニードルシール184の一実施形態のいくつかの例示的な測定値を示す。ニードルシールの開口部184aは、図示されるように20度の角度に従って点190aへテーパ状にすることによって狭窄されてもよい。点190aから点190bへ、開口部184aは0.007インチという比較的均一または一定の直径を有してもよい。開口部184aは、針が第1表面または上表面で進入するように、ニードルシール184を通る通り穴を形成してもよい。点190bは上述の上表面に対向するニードルシールの底表面にあってもよい。
【0032】
さらに図示されているのはポート186aおよび186bであり、それらを通って様々な溶剤または他の流体が181を流入出することができる。要素185は、ポートと、関連付けられる導管または配管とであってもよく、試料がそれを通って上述のように一度注入されたところから流れ出す。要素185は直接または間接的にLCカラムに接続されてもよい。ニードルシールと挿入された針とに関連して掛けられ、使用される力の量は、当分野で知られている多様な技法のいずれかを使用して決定されてもよい。例えば、本明細書で述べられる直接注入に関連した動的シールを形成するニードルシールの実施形態は、例えば、参照によって本明細書に組み込まれる代理人整理番号WCS−009PR/W−540の2010年1月11日に出願された米国仮特許出願第61/293,889号明細書のNEEDLE SEAL FORCE SENSOR(「NEEDLE SEAL FORCE SENSORの特許出願」)で述べられる技法によって使用されてもよい。図2Bで示される一部の構成要素、バネ188aおよび荷重セル188bなどは、任意選択でNEEDLE SEAL FORCE SENSORの特許出願で述べられる力センサを使用する実施形態に含まれてもよい。
【0033】
図2C〜図2Iを参照すると、本明細書で述べられる技法によって製作されてもよいニードルシールの第1実施形態の実施例が示されている。実施例200は、第1内側部位またはコア224と第2外側部位またはコア222とを有するニードルシール220を図示する。第1内側部位224内に形成されているのは、開口部226(図2Aおよび図2B内では184aと付されている)であり、この中に針が直接試料注入のために挿入される。この実施形態では、内側部位224はVespel SCP 5000で製作されてもよい。内側部位224は第2外側部位222で包み込まれてもよい。第2外側部位222は、例えば18K金または12K金あるいはステンレススチールで製作されてもよい。要素210は、ニードルシール220を上から見た図である。210のニードルシールの上部の直径は0.215インチであってもよい。
【0034】
要素230は、210の線A−Aに沿ったニードルシールの側面図である。実施例230では、ニードルシールの外側円筒壁の長さ230aは、0.235+/0.003インチであってもよい。上述のように、開口部232は、第1部位230cと第2部位230bを有するニードルシールを通る通り穴を形成してもよい。部位230bは非テーパ状であってもよく、0.093インチの長さを有してもよい。開口部234は、0.007+0.001/−002インチの直径を有してもよい。230の様々な態様の追加の詳細部が、後続図に、詳細部Bの236、詳細部Cの238、詳細部Fの240、および詳細部Gの242と示されて提示されている。図2Fの要素236は追加の詳細部Bを示し、角表面が、ここに示される45度の角度で形成されて、表面2Fで長さが0.005+/−0.002インチとなってもよい。
【0035】
図2G〜図2Iを参照すると、図2C〜2Fに示された本明細書で述べられる技法によるニードルシールの実施形態の様々な態様の追加の詳細部が示されている。要素238は、試料のLCシステムの中への取り込みに関連して針が挿入されるニードルシールの開口部および通り穴の追加の詳細部Cを提示する。部位252は、均一な直径を有する第1部位252aと狭窄されたテーパ状部位である第2部位252bとを含む。第1部位252aは0.065インチの長さを有してもよく、第2部位252bは0.077インチの長さを有してもよい。針が最初に挿入されるニードルシールの表面の開口部232は、0.0410+0.0005/−0.0010インチの直径を有してもよい。第2のテーパ状部位は、図示されるように25度の角度を有する円錐状セクションを形成してもよい。要素240は追加の詳細部Fを提示し、ここに示される45度の角度で形成された角表面の長さが表面2Hで測定して0.013+0.010/−0.005インチであってもよいことを示す。要素242は追加の詳細部Gを提示し、シールの底表面の通り穴が図示されるように82度の角度で外向きにテーパ状となってもよいことを示す。底表面の点242bで測定して、通り穴は0.015+/−0.003インチの直径を有してもよい。242では、通り穴は点242aで上述のように0.007インチなどの第一直径を有する。第一直径は、表面の点242bで測定して0.015+/−0.003インチの第2直径に対して増大してゆき、それによって開口部に外向きテーパ状または円錐状のセクションを形成する。
【0036】
図2C〜図2Iに関連して図示されたニードルシールの実施形態は、Vespel SCP 5000の内側部位またはコア(図2Eの224など)を形成することによって形成されてもよい。ロータと共に上述された一実施形態では、Vespel SCP 5000の材料は円柱状ロッドから得られてもよく、そこからディスク部位が所望の厚みに切り取られることができる。次いでディスク部位はさらに機械加工されて、針が中に挿入される開口部を備えた通り穴を含む所望の形状および大きさを得ることができる。金またはステンレススチールから製作されてもよいなどの外側部位またはコア(図2Eの222など)は、所望の形状および大きさに形成されてもよく、Vespel SCP 5000の内側部位またはコアの挿入を収容するように適正な寸法の通り穴を含んでもよい。Vespel SCP 5000の内側部位またはコアは、内側部位が、外側部位の中への挿入によってプレス嵌めされることができるように変形可能である。
【0037】
図3A〜3Gを参照すると、本明細書で述べられる技法によって製作されてもよいニードルシールの第2実施形態の実施例が示されている。実施例300は、部位またはコア322を有するニードルシール320を図示する。部位322内に形成されるのは、直接試料注入のために針が中に挿入される開口部326(図2Aおよび図2Bでは184aと付されている)である。この実施例では、部位322はVespel SCP 5000で製作されてもよい。要素310はニードルシール220を上から見た図である。310のニードルシールの上部の直径は、0.215+0.0005/−0.0010インチであってもよい。
【0038】
要素330は310の線A−Aに沿ったニードルシールの側面図である。実施例330では、ニードルシールの外側円筒壁の長さ330aは0.235+/0.0003インチであってもよい。上述のように、開口部332は、ニードルシールを通るように、第1部位330cと第2部位330bを有する通り穴を形成してもよい。部位330bは非テーパ状であってもよく、0.93インチの長さを有してもよい。開口部334は0.007+0.001/−002インチの直径を有してもよい。330の様々な態様の追加の詳細部が、後続図に、詳細部Bの336、詳細部Cの338、詳細部Dの340、および詳細部Eの242と示されて提示されている。図3Dの要素338は追加の詳細部Cを示し、ここに示される45度の角度で形成された角表面3Dは0.005+/−0.002インチであってもよいことを示す。
【0039】
図3E〜図3Gを参照すると、図3A〜図3Dに図示される本明細書の技法によるニードルシールの実施形態の様々な態様の追加の詳細部が示されている。要素336は、LCシステムの中への試料の取り込みに関連して針が挿入されるニードルシールの開口部および通り穴の追加の詳細部Dを提示する。部位352は、均一な直径を有する第1部位352aと狭窄テーパ状部位である第2部位352bとを含む。第1部位352aは0.065インチの長さを有してもよく、第2部位352bは0.077インチの長さを有してもよい。針が最初に挿入されるニードルシールの表面の開口部332は、0.0410+/−0.0010インチを有してもよい。第2テーパ状部位は図示されるように25度の角度を形成してもよい。要素342は追加の詳細部Eを提示し、ここに示される45度の角度で形成される角表面3Fが0.013+0.010/−0.005インチでもよいことを示す。要素340は追加の詳細部Dを提示し、シールの底表面の通り穴が図示されるように90度の角度で外向きにテーパ状となってもよいことを示す。点342bの底表面で測定されるように、通り穴は0.015+/−0.003インチの直径を有してもよい。340では、通り穴は上述のように0.007インチなどの第1直径を点342aで有し、第1直径は、点342bの表面で測定して0.015+/−0.003インチの第2直径に対して増大してゆき、それによって外向きにテーパ状または円錐状の開口部を形成する。
【0040】
図3A〜図3Gに関連して図示されるニードルシールの実施形態は、Vespel SCP 5000の部位またはコア(図3Cの322など)を形成することによって製作されてもよい。ロータと共に上述された一実施形態では、Vespel SCP 5000の材料は、ディスク部位が所望の厚みで切り取られることができる円柱状ロッドから得られてもよい。次いでディスク部位はさらに機械加工されて、針が中に挿入される開口部を備えた通り穴を含む所望の形状および大きさを得ることができる。図3A〜図3Gのこの第2実施形態では、ニードルシール全体がVespel SCP 5000から形成されてもよい。図3A〜図3Gの上述の実施形態は、ニードルシールの第1実施形態(図2C〜図2I)とは対照的である。第1実施形態(図2C〜図2I)では、Vespel SCP 5000が内側部位を形成し、これが、金またはステンレスで製作されるなどの外側部位内に包み込まれる。
【0041】
図3H〜図3Rを参照すると、本明細書で述べられる技法によって製作されてもよいニードルシールの第3実施形態の実施例が示されている。実施例1000は、第1部品1002と第2部品1004を有するニードルシール1001を図示する。第2部品1004内に形成されるのは、直接試料注入のために針が中に挿入される開口部1006である。この実施形態では、第2部品1004はVespel SCP 5000で製作されてもよい。第1部品1002は、例えばタイプ316ステンレススチールなどのステンレススチールで製作されてもよい。第1部品1002はむしろ一般的に、第2部品1004を備える材料よりも機械的強度が高いと特徴付けられることができる1つまたは複数の他の材料で製作されてもよい。例えば、第1部品1002は、第1材料(およびその結果もたらされる第1部品1002)が第2部品1004よりも大きな強度を有することを示す1つまたは複数の機械的特性を有する第1材料で製作されてもよい。
【0042】
第2部品1004は、1001の図で見られる上部位1022aと、1001の組み合わせられた図では見られない底部位1022b(点線によって示される)とを含んでもよい。上部位1022aは1001の図では円形またはディスク形状を有する。点線は、底部位1022bによって形成される外形線を図示する。底部位1022bは第1部品1002の側壁の中に包み込まれる。第1部品1002は、ニードルシールが組み合わせられるときに底部位1022bが中に挿入される穴または開口部(図示されず)を有する。
【0043】
1022によって示されるように、第2部品1004は、側方から見るとT字形状の輪郭を有してもよく、0.235インチの長さL1を有してもよい。底部位1022bの直径D1は、0.1005インチから0.1010インチまでの端値を含む範囲内の寸法を有してもよい。上部位1022aの長さまたは厚みL2は0.055インチであってもよい。要素1010は、上から見た1001のニードルシールを示す図であり、上部位1022aの直径は、0.225から0.226インチまでの端値を含む範囲内であってもよい。
【0044】
要素1021は、1010の線H−Hに沿ったニードルシールの側面図であり、1001の組み合わせられたニードルシール内で底部位1022bが中に挿入される第1部品1002に関する追加の詳細部を提示する。第1部品1002の形状は、円筒状であってもよく、底部位1022bが中に挿入される穴または開口部1021aが通るように形成される側壁1002aを有する。穴1021aは0.1000インチから0.1004インチまでの端値を含む範囲内の直径を有してもよい。第1部品1002の側壁1002aは0.180インチの長さL3を有してもよい。図3Lの要素1020は追加の詳細部Jを図示し、角表面3Lがここに示される45度の角度で形成されて、表面の長さが0.010+/−0.005インチとなってもよいことを示す。
【0045】
図3M〜図3Oを参照すると、本明細書の技法によるニードルシールの第3実施形態の様々な態様の追加の詳細図が示されている。要素1110は、1010の線A−Aに沿ったニードルシールの側面図である。実施例1110では、ニードルシールの外側円筒状壁の長さ1116は(1001内に示されるように組み合わされると)0.235+/−0.003インチであってもよい。第2部品1004には、開口部1006と1112を両端部に備えた穴または通路1120がそれを通るように形成されている。第2部品1004内の穴1120は、第1部位1119(内向きに狭窄され、またはテーパ状である)と第2部位1118とを有するように形成されてもよい。部位1118は0.156インチの長さを有してもよい。開口部1122は0.007+0.001/−002インチの直径を有してもよい。第1部品の底部(開口部1122を有する端部)の直径1114は、0.215から0.216インチまでの端値を含む範囲内であってもよい。1110の様々な態様の追加の詳細部が後続図に、詳細部Bの1104、詳細部Cの1102、詳細部Fの1108、詳細部Gの1124、および詳細部Kの1106と示されて提示されている。
【0046】
要素1102は、LCシステムの中への試料の取り込みに関連して針が挿入されるニードルシールの開口部1106の追加の詳細部Cを提示する。部位1119は、0.079インチの長さを有する狭窄されたテーパ状の部位である。針が最初に挿入されるニードルシールの表面の開口部1006は、0.042+/−0.002インチの直径を有してもよい。部位1119は、図示されるように25度の角度を有する円錐状セクションを形成してもよい。ニードルシールが組み合わされた後に(図3Iの1001などのように)、穴1120(およびその両端部の開口部)が機械加工されてもよい。要素1124は追加の詳細部Gを提示し、シールの底表面に開口部1122(針が挿入される1120の対向端部)を有する通り穴1120が、図示されるように90度の角度で外向きにテーパ状になってもよいことを示す。底表面の1160で測定して、通り穴は0.013+0.002/−0.001インチの直径を有してもよい。1124で、通り穴の図示される端部の開口部は、点1161で上述のように0.007+0.001/−002などの第1直径を有する。第1直径は、表面の点1160で測定して0.013+0.002/−0.001インチの第2直径に対して増大してゆき、それによって外向きのテーパ状または円錐状のセクションを形成する。
【0047】
図3P〜図3Rを参照すると、本明細書の技法によるニードルシールの第3実施形態の様々な態様の追加の詳細部が示されている。図3P〜図3Rの図1200は、図3Mの詳細部Bの1104、詳細部Fの1108、および詳細部Kの1106についてさらに述べる。要素1106は追加の詳細部Kを提示し、図示される45度の角度で形成される角表面の長さは表面3Qで測定して0.005インチであってもよいことを示す。要素1108は追加の詳細図Fを提示し、ここに示される45度の角度で形成される角表面の長さが表面3Pで測定して0.013+0.010/−0.005インチであってもよいことを示す。図3Rの要素1104は追加の詳細部Bを図示し、角表面がここに示される45度の角度で形成され、その長さが表面3Rで0.005+/−0.002インチであってもよいことを示す。
【0048】
図3H〜図3Rに関連して図示される第3のニードルシール実施形態は、Vespel SCP 5000のt字形状の第2部品(図31の1004など)を形成することによって製作されてもよい。上述のように、Vespel SCP 5000の材料は、ディスク部位が所望の厚みで切り取られることができる円柱状ロッドから得られてもよい。次いでディスク部位はさらに機械加工されて、針が中に挿入される開口部を備えた通り穴を含む所望の形状および大きさを得る。ステンレススチールなどで製作されてもよい第1部品(図31の1002など)は所望の形状および大きさに形成されてもよく、Vespel SCP 5000の第2部品の底部位の挿入を収容するように適正な寸法の通り穴を含んでもよい。Vespel SCP 5000で製作された1004の底部位1022bは、上述のように 第1部位1002の通り穴の中への挿入によってプレス嵌めされることができるように変形可能である。図3Mの要素1110を参照して、第2部品の底部位が第1部品の中にプレス嵌めされた後、1111によって示される底表面同士は0.0002インチ内で同一平面上であるように機械加工されてもよいことに留意されたい。
【0049】
戻って図2を参照して、要素183は、針が中に挿入される通路または導管を指し、材料187、例えば、ステンレススチールあるいは当分野で知られている様々な異なった適切なPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)材料の1つによって取り囲まれてもよいことに留意されたい。例えば、図2C〜図2Fのニードルシールを使用するとき、実施形態によってはステンレススチールから187を形成してもよい。図3A〜図3Dまたは図3H〜図3Lのニードルシールを使用するとき、実施形態によってはステンレススチールまたはPEEK材料から187を形成してもよい。図3Iの要素1004は、組み合わせ時に、要素1004が機械的組み合わせによる圧力を受けてもその形状を保持するように、充分な直径と周囲材料187との充分な接触面積とを有するべきであることに留意されたい。要素189aはシールを保持する構成要素であってもよい。要素189bはスペーサであってもよい。要素189cはバネ支持体またはカップであってもよい。
【0050】
図2Aおよび図2Bの注入ポートの構成要素はハウジングの中に含まれてもよいことに留意されたい。図2Aおよび図2Bに図示された構成要素は任意の適切な材料で製作され、当分野で知られている任意の適切な手段および技法を使用して製造されてもよい。例えば、上述のように、針支持構造体材料187、ならびにポート186aおよび186cを183に接続する接続部はPEEK材料で製作されてもよい。ハウジングはアルミニウムで製作されてもよい。バネ188aと、185に関連して使用される配管と、189a、189b、および189cによって表わされる構成要素とはステンレススチールから製作されてもよい。
【0051】
図2Aおよび図2Bに関連して図示されるように、ニードルシールの表面は通路183と接触し、その間に実質的に流体密の接続が存在する。同様に、針の洗浄のための洗浄液の経路内に含まれる接続部186cと183の間、186dと183の間にも実質的に流体密の接続が存在してもよい。当業者には言うまでもなく、ここでは明確に記載されていないが、試料、洗浄液などの望ましくない漏れを起こさないように、図2Aおよび図2B内に示され、述べられる他の構成要素同士の間、また本明細書の他の構成要素同士の間の接続も流体密であると特徴付けられてもよい。
【0052】
ニードルシールは、様々な形状で、本明細書で述べられるものとは異なる封入部を使用して形成されてもよい。本明細書の技法によるニードルシールの実施形態は、針先端と接触してシールを形成する密閉表面で、Vespel SCP 5000またはVespel SCP 50094の材料を使用して形成されてもよい。このようなニードルシールの実施形態は、Vespel SCP 5000またはVespel SCP 50094(図3A〜図3Gなど)のみによって、あるいは針先端と接触するニードルシールの表面がVespel SCP 5000またはVespel SCP 50094から形成される限り、他の適切な材料から形成された他の部位と組み合わせて形成されてもよい。より一般的に、本明細書の技法によるニードルシールまたはロータなどのシール部材の実施形態は、少なくとも密閉表面(固定シールまたは動的シールが形成される)がVespel SCP 5000またはVespel SCP 50094の材料で製作されてもよいことに留意されたい。
【0053】
本明細書では動的シールの特定の実施例が提示されるが、Vespel SCP 5000および/またはVespel SCP 50094(あるいは他の商品名および/または販売元を有してもよい類似のポリマー)は、HPLCまたはUPLCシステムなどのLCシステムに関連して使用されてもよい他のタイプの固定シールおよび/または動的シールを形成するのに使用されてもよいことに留意されたい。例えば、LCシステムは、固定シールまたは動的シールが形成される表面で、Vespel SCP 5000またはVespel SCP 50094から製作されたニードシール、チューブシール、フェルール、ガスケット(例えば、チェク弁ガスケット)などの1つまたは複数を含んでもよい。
【0054】
次に述べられるのは、Dupontによって提供されるVespel SCP 5000およびVespel SCP 50094の他の様々な特徴についてである。他の材料が、Vespel SCP 5000およびVespel SCP 50094の特性および特徴に従ったものを有することができる場合には、そのような材料が他の販売元によって供給され、かつ/または本明細書で述べられる以外の商品名を使用して参照されてもよいことに留意されたい。そのような材料は、固定シールまたは動的シールを表面が形成する部品またはシール部材の実施形態で使用するのにも適切である。Vespel SCP 5000およびVespel SCP 50094などの材料は、動的シールまたは固定シールを形成するシール部材で使用するのに望ましい化学的、機械的、および他の特性を有する。
【0055】
図4を参照すると、本明細書の技法による実施形態で使用されてもよいVespel SCP 5000の応力−歪み曲線のグラフが示されている。図4に関して、応力とは、掛けられた力を横断面積によって除したものとして定義されることができ、歪みは、試料の単位長さあたりの伸長として定義されることができる。図4に関連した臨界点は、図示された曲線の直線部位に沿った最大応力である降伏点として特徴付けられてもよいことに留意されたい。全ての図示された曲線について、これは約30,000psiであり、このことは、材料が潜在的に約30,000psiのこの最大値までの流体圧力で性能を発揮することが可能であることを示唆する。図4の曲線を作成することに関連して利用される標準試験法は、標準試験法ASTM D695である。
【0056】
図4は、Vespel SCP 5000(Vespel SCP 5000 ISOとも呼ばれる)の平衡圧縮形状または平衡成形形状を特徴とすることに留意されたい。
【0057】
図5Aおよび図5Bを参照すると、本明細書の技法による実施形態で使用されてもよいVespel SCP 5000(Vespel SCP 5000 ISOまたはSCP 5000 ISOとも呼ばれる)の平衡圧縮形状または平衡成形形状を特徴付ける一部の特性が示されている。これらの特性は、本明細書で述べられるVespel SCP 5000の円柱形状のロッドから機械加工されたロータおよびニードルシールなどの部品に典型的なものの例である。図5Aには、様々な機械的特性が示されている。図5Bでは、様々な熱的特性、電気的特性、摩耗性状、および他の特性が示されている。
【0058】
以下のパラグラフでは、図5c〜図5Iと図6A〜図6Fが本明細書の技法による実施形態で使用されてもよいVespel SCP 5000 ISOの他の特性を明記する。
【0059】
図5Cを参照すると、SP−1との関係におけるVespel SCP 5000 ISOの引張強度のグラフが示されている。室温で、SCP 5000は、SP−1の約2倍の強度と、それと同様の伸長率を示す。摂氏260度で、SCP5000は約50%分大きな強度とより大きな伸長率の特徴を呈示する。
【0060】
図5Dを参照すると、圧縮下のSCP 5000 ISO およびSP−1の応力−歪み曲線のグラフが示されている。図5Dに示されるように、SCP5000は、室温でも高温でもSP−1よりも大きな圧縮強度を呈示する。
【0061】
図5Cおよび図5DはSCP 5000 ISOの物理的特性を特徴付ける。SPC500は融解せず、摂氏330度のガラス転位温度を有することに留意されたい。
【0062】
図5Eを参照すると、SP−1との関係におけるSCP 5000 ISOの熱的特性のグラフが示されている。図5Eは、高温度で、初期引張強度の50%分までの低下を時間の観点で見た、SP−1ポリアミドと比較したSP5000の特徴を示す。例えば、SP−1は、摂氏370度に連続100時間空気に晒された後、その初期強度の半分を保持する。それとは対照的に、SCP500は、同じ条件下で約550時間持続した後にその初期強度が50%分低下する。少なくとも摂氏340度までの温度では、SCPの部品は、窒素または真空などの不活性の環境では、時間経過による特性の損失をほとんど伴わずに性能を発揮する。図5Eのグラフはむしろ一般的な指針であり、SCP5000で製作された部品の実際の有用な耐用期間はより長くなる場合があることに留意されたい。これは、部品が遭遇する温度が連続的であるよりむしろ間欠的である場合があるということと、部品が、高温の用途で完全に空気に晒されるよりはむしろハウジングによって少なくとも部分的に被覆される場合があるということとによる。
【0063】
以下の図5F、図5G、および図5Hは、本明細書の技法による実施形態で使用されてもよいSCP 5000 ISOの電気的特性を示す。
【0064】
図5Fを参照すると、SP−1と比較した、SCP 5000 ISOの温度および周波数の関数としての誘電定数のグラフが示されている。図示されるように、SCP5000は、広範な温度および周波数の範囲にわたってより安定した誘電定数を呈示する。
【0065】
図5Gを参照すると、SP−1と比較したSCP 5000 ISOの散逸率のグラフが示されている。
【0066】
図5Hを参照すると、SP−1と比較したSCP 5000 ISOの絶縁耐力のグラフが示されている。試験結果は、1.0mmの厚さの試料について、SP−1およびSCP 5000は、広範な温度範囲にわたって安定した絶縁耐力を呈示するが、SCP5000がSP−1よりも僅かに大きな絶縁耐力を呈示することを示している。図5Iに同様に含まれている表572は、SP−1と比較したSCP5000の表面抵抗率および体積抵抗率を示す。
【0067】
以下の図6Aおよび図6Bは、本明細書の技法による実施形態で使用されてもよいSCP5000 ISOの寸法安定性を示す。
【0068】
図6Aを参照すると、制御された環境チャンバ内で華氏100度と相対湿度90%とに晒されたときの、SP−1と比較したSCP5000の寸法安定性のグラフが示されている。
【0069】
図6Bを参照すると、図6Aで述べられた制御された環境条件下でのSP−1と比較したSCP5000の被検査物の重量増加のグラフが示されている。図6Bは、時間経過による試料の重量パーセントの増加を示し、SCP5000はSP−1と比較して吸湿量が約50%少ない。
【0070】
ポリアミドと同様に、SCP5000およびSP−1は加水分解を受け、摂氏100度を超える温度の水また蒸気内で厳しいクラッキングが起こる場合があることに留意されたい。
【0071】
以下の図6C、図6D、および図6Eは、無水アンモニア蒸気への暴露の影響に関するSP−1と比較したSCP 5000 ISOの特性を示すグラフである。40時間を超える暴露の後、SCP5000の被検査物は厚みの無変化(図6C)と、最小限の重量増加(図6D)とを呈示した。さらに、SCP‐5000はその初期強度のほぼ全てを保持する(図6E)。
【0072】
有機溶剤は、一般的にポリイミド部品の機械的および寸法安定性に対して最小限の影響しかもたらさないことに留意されたい。ぺルクロロエチレンおよびトリクロロエチレンなどの塩素化溶剤およびフッ化溶剤が表面洗浄に推奨される。トルエンおよびケロセンなどの炭化水素溶剤は、ポリイミド材料に対して実質的に影響をもたらさない。m−クレゾールおよびニトロベンゼンなどの官能基を含む一部の溶剤は、高温で、その機械的強度を実質的に低下させずにポリアミドの膨張を引き起こすことが可能である。
【0073】
濃縮鉱酸は、比較的短時間でポリイミド部品の激しい脆化を引き起こす場合がある。一般的に、希酸溶液と酸性pHを有する無機塩類の水性溶液とはポリイミドに対して水とほぼ同じ影響をもたらす。一般的に、ポリイミド樹脂はアルカリ性の攻撃に対して感受性が高い。塩基水溶液はポリアミド類を攻撃して、特性の急速な劣化をもたらす。したがって、塩水溶液を含むpH10以上を有する塩基溶液は、SCP5000の部品での使用は好まれない場合がある。
【0074】
図6Fおよび図6Gを参照すると、表内にSCP 5000 ISOで形成された平衡圧縮形状に典型的な追加の特性が示される。
【0075】
次に述べられ、示されるのは、Vespel SCP 50094の特性についてである。
【0076】
図7A〜図7Dを参照すると、表内に、Dupont(TM)によって販売されるVespel SCP 50094から製作された直接成形(DF)部品の特性が示されている。当業者には言うまでもなく、直接成形とは、機械加工に対立するものとして部品が作り出される別の方法を意味する。当分野で知られているように、直接成形とは、熱硬化材料で近似値正味形状部品を形成することを意味する。図7A〜図7Bは、Vespel SCP 50094で製作されたポリイミドDF部品の機械的特性を示す。図7C〜図7Dは、Vespel SCP 50094で製作されたポリイミドDF部品の熱的特性、電気的特性、および摩耗性状を示す。
【0077】
図7E〜図7Fを参照すると、Vespel SCP 50094で製作されたDF部品の追加の特性のグラフが示されている。図7Eは、圧縮クリープを示す第1グラフ722を含み、図7Fは熱伝導性を示す第2グラフ724を含む。
【0078】
図7G、図7H、および図7Iを参照すると、Vespel SCP 50094(Vespel SCP 50094 ISO)の平衡圧縮形状または平衡成形形状を特徴付けるVespel SCP 50094から製作された部品の特性が表に示されている。図7G〜図7Hは、平衡圧縮または平衡成形されたVespel SCP 50094(Vespel SCP 50094 ISO)から製作された部品の機械的特性を示す。図7Iは、平衡圧縮または平衡成形されたVespel SCP 50094(Vespel SCP 50094 ISO)から製作された部品の熱的特性、摩耗性状、および他の特性を示す。
【0079】
図8A〜図8Cを参照すると、他の材料と比較したSCP 50094の様々な特性が示されている。要素802は、他の材料と比較したSCP 50094 DFの熱酸化安定性のグラフであり、ここでは試料は、摂氏371度、4.76atm(70psia)の条件に100時間晒された。このような条件下で、SCP 50094から製作された試料は2.81%の重量損失を生じた。要素804は、他の材料と比較したSCP 50094 DFのヤング係数および曲げ弾性率(804aおよび804bで示される)のグラフである。要素806は、他の材料と比較したSCP 50094の熱膨張の係数(806aで示される)のグラフである。
【0080】
図8D〜図8Fを参照すると、平衡形状グレード(ISO)の他のVespel材料と比較したVespel SCP 5000およびSCP 50094の追加の様々な特性が示されている。図820は、表822内の例示的な機械的特性、摩耗性状、および他の特性を含む。要素826は、SCP 5000の特性を示し、要素828はSCP 50094の特性を示す。同様に図8Eの引張強度のグラフ表示830と図8Fの曲げ弾性率のグラフ表示832とも含まれる。ここでAは室温(RT)における材料を示し、Bは華氏500度における材料を示す。
【0081】
図9A、図9B、および図9Cを参照すると、発明者らによって試験された、Vespel SCP 5000との使用に適応性があると判定された溶剤の表が示されている。試験用試料は、長さが0.40インチ、直径が0.25インチの円柱である(試験ガイドラインに示される通り)。試験用試料は4週間観察され、ここに示される溶剤を含む試験容器内に配置された。試験は、溶剤または材料に視覚的変化のないことを示した。試料が取り除かれたとき、質量または形状に有意な変化はなかった。
【0082】
Vespel SCP 5000および/またはVespel SCP 50094などの材料は、LCシステムならびに他の用途に関連してロータまたはニードルシールなどのシール部材を形成することに関連して使用するのに望ましい、本明細書で述べられる通りの特性を有する。類似のシール用途で使用される他のポリマーと比較して優れた強度および摩耗性、ならびに高度の化学的適合性などの特徴が、例えば本明細書で述べられるUPLCシステムまたはHPLCシステムなどの様々な異なった用途の固定シール部材および/または動的シール部材を形成するための材料に極めて望ましい場合のあるものの一部である。材料の選択に関連して考慮される他の特質としては、多孔性処理の問題(シールが形成される表面の状態など)などに関連して充分なシールを形成する材料の能力、あるいは炭素、ガラス、または当業者に知られている他の適切な補強材などによって材料が補強される能力に関連する場合がある。
【0083】
ここに詳しく示され、述べられた好ましい実施形態に関連して本発明が以上に開示されたが、当業者にはそれらの修正形態および改良形態が容易に明らかとなろう。したがって、本発明の精神および範囲は以下の請求項によってのみ限定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定シールまたは動的シールを表面に形成するシール部材であって、少なくともその表面がVespel SCP 5000またはVespel SCP 50094の一方から形成される、シール部材。
【請求項2】
液体クロマトグラフィシステム内で固定シールまたは動的シールを形成する、請求項1に記載のシール部材。
【請求項3】
弁内に含まれる、請求項2に記載のシール部材。
【請求項4】
弁が注入弁である、請求項3に記載のシール部材。
【請求項5】
ロータ要素である、請求項2に記載のシール部材。
【請求項6】
ニードルシールである、請求項2に記載のシール部材。
【請求項7】
ニードルシールがVespel SCP 5000から形成された第1部位を含み、第1部位は通り穴を含み、通り穴の側壁が針先端と接触して動的シールを形成する表面を形成する、請求項6に記載のシール部材。
【請求項8】
ニードルシールが第1部位を包み込む第2部位を含む、請求項7に記載のシール部材。
【請求項9】
第2部位が、金またはステンレススチールを含む材料から形成される、請求項8に記載のシール部材。
【請求項10】
通り穴が、針先端を有する針が中に挿入される通り穴の第1端部の開口部に対して内向きにテーパ状となる第1部位を含む、請求項7に記載のシール部材。
【請求項11】
通り穴が、第1部位に近接した非テーパ状の第2部位を含む、請求項10に記載のシール部材。
【請求項12】
通り穴が、通り穴の第2部位に隣接した別のテーパ状部位を含み、他のテーパ状部位は、第1端部に対向する通り穴の第2端部で円錐状部位を形成する、請求項11に記載のシール部位。
【請求項13】
ニードルシールの第1部位が、上部位とt字形状の輪郭を有する底部位とを含む、請求項7に記載のシール部材。
【請求項14】
前記上部位が円筒形状を有し、前記底部位はニードルシールの第2部位の中に挿入される、請求項13に記載のシール部材。
【請求項15】
ニードルシールの前記第2部位がステンレススチールから形成される、請求項14に記載のシール部材。
【請求項16】
ニードルシールの前記第2部位が、ニードルシールの第2部位が第1部位よりも大きな機械的強度を有することを示す機械的特性を有する材料から形成される、請求項14に記載のシール部材。
【請求項17】
シールを表面に形成するニードルシールであって、少なくとも表面はVespel SCP 5000またはVespel SCP 50094の一方を含む材料から形成される、ニードルシール。
【請求項18】
形成されるシールが液体クロマトグラフィシステム内の動的シールである、請求項17に記載のニードルシール。
【請求項19】
ニードルシールが、試料を液体クロマトグラフィシステムの中に注入するために使用される注入器内に含まれる、請求項18に記載のニードルシール。
【請求項20】
Vespel SCP 5000で製作された、通り穴が中に通して形成された第1内側部位を備え、通り穴の内側表面は、通り穴の中に挿入された針先端と内側表面が接触するとき動的シールが形成される表面である、請求項17に記載のニードルシール。
【請求項21】
第1内側部位を包み込む第2部位を備える、請求項20に記載のニードルシール。
【請求項22】
第2部位が金またはステンレススチールの一方を備える、請求項21に記載のニードルシール。
【請求項23】
t字形状の輪郭を有し、Vespel SCP 5000で製作された、通り穴が中を通して形成された第1部位を備え、通り穴の内側表面は、通り穴の中に挿入された針先端と内側表面が接触するとき動的シールが形成される表面である、請求項17に記載のニードルシール。
【請求項24】
第1部位が上部位と底部位を含む、請求項23に記載のニードルシール。
【請求項25】
前記上部位が円筒形状を有し、前記底部位は第2部位の中に挿入される、請求項24に記載のニードルシール。
【請求項26】
前記第2部位がステンレススチールから形成される、請求項24に記載のニードルシール。
【請求項27】
前記第2部位が、第2部位が第1部位よりも大きな機械的強度を有することを示す機械的特性を有する材料から形成される、請求項24に記載のニードルシール。
【請求項28】
シールを表面に形成し、少なくとも表面はVespel SCP 5000またはVespel SCP 50094の一方を含む材料から形成される、ロータ要素。
【請求項29】
ロータ要素が弁内に含まれる、請求項18に記載のロータ要素。
【請求項30】
弁が注入弁である、請求項29に記載のロータ要素。
【請求項31】
弁が液体クロマトグラフィを実施するシステム内に含まれる、請求項29に記載のロータ要素。
【請求項32】
部品を製造する方法であって、
Vespel SCP 5000またはVespel SCP 50094の一方である材料の一部位を提供するステップと、
前記部品を作り出すために前記部位を処理するステップであって、前記部品はその表面に固定シールまたは動的シールを形成するのに使用されるステップと、を備える方法。
【請求項33】
前記処理するステップが、前記部位を機械加工するステップと、前記部位を切り取るステップと、前記部位をプレス嵌めするステップとのうちの少なくとも1つを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
ロータを製作する方法であって、
ディスク様形状を有する、Vespel SCP 5000またはVespel SCP50094の一方である材料の一部位を提供するステップと、
部位の少なくとも第1表面に、少なくとも1つの溝がその上に形成されるようにパタン付けするステップとを備える、方法。
【請求項35】
前記材料で製作された円柱状ロッドから前記部位を切り取ることをさらに備える、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ニードルシールを製作する方法であって、
Vespel SCP 5000またはVespel SCP 50094の一方である材料の一部位を提供するステップと、
前記ニードルシールを作り出すために前記部位を処理するステップであって、前記部位の中を通して通り穴を形成することを含み、前記通り穴は、通り穴の第1内向きテーパ状部位の一方端部に開口部を有するステップと、を備える方法。
【請求項37】
前記処理するステップが、プレス嵌めすることとおよび機械加工することとのうちの少なくとも一方を含む、請求項36に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図2I】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図3H】
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【図3I】
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【図3J】
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【図3K】
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【図3L】
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【図3M】
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【図3N】
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【図3O】
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【図3P】
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【図3Q】
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【図3R】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図5H】
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【図5I】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図6G】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図7G】
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【図7H】
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【図7I】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【公表番号】特表2013−516632(P2013−516632A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548219(P2012−548219)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【国際出願番号】PCT/US2011/020745
【国際公開番号】WO2011/085341
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(509131764)ウオーターズ・テクノロジーズ・コーポレイシヨン (46)