説明

固定具

【課題】 取り付けおよび取り外しを容易に行うことができる固定具を提供する。
【解決手段】 固定具1は、スナップ部2と、コイルバネ3と、からなる。スナップ部2は、支柱部4と、係止部5と、解除片6と、接触部7とを備えるものである。固定具1を被固定部材20,21に取り付けた状態において、接触部7に形成された貫通孔8に取り外し治具10の押圧部材12を挿入していくと、押圧部材12の先端部13が解除片6の上端部6aに接触する。さらに押圧部材12を挿入すると解除片6は支柱部4側に押されて移動し、解除片6と連接する係止片5aも支柱部4側に弾性変形して縮小するため、取付孔21aに対する係止片5aの係止が解除されて、固定具1の取り外しが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板や筐体のような板状の部材同士の固定などに用いる固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板や筐体のような板状の部材同士を固定するために、ネジを用いて固定する方法が採られていた。しかしながら、ネジを用いる方法は取り付け時および取り外し時のいずれにもドライバなどの工具が必要であるため作業性が悪いという問題があった。
【0003】
そのような問題を解決するために、基板などの被締結部材に形成された所定形状の穴を所定の角度においてのみ通過する裏側部材と、上記穴を通過できない表側部材と、からなり、その両方の部材に配置された係止片を係止させて用いる締結機構が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
この締結機構では、裏側部材を上述した穴から被締結部材の裏面に通過させ、その状態で穴と裏側部材との角度を変えるように回転させることで、裏側部材の角度が変わって穴を通過できなくなり、表側部材と裏側部材とで挟み込むことによる被締結部材の固定が実現される。また、表側部材の係止片は、分解工具を所定の位置に挿入することで裏側部材との係止が解除されるため、取り外す際には表側部材から分解工具を挿入するだけでよく、ネジを用いる場合と比較して作業性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−9644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記締結機構では、分解工具を挿入すると表側部材と裏側部材との係止が解除される。その際に裏側部材が脱落することを抑制するため、分解工具を挿入した状態で表側部材と裏側部材とが軽く固定された構成も上記特許文献1の図40に開示されている。
【0007】
しかしながら上記締結機構では、締結機構を取り外す場合には、分解工具を挿入して裏側部材と表側部材との係止を解除した後に、裏側部材を穴が通過できる向きに回転させて引き抜く必要がある。したがって、裏側部材が穴に引っ掛かって容易に抜き取れなかったり、その際に脱落してしまったりする虞がある。このような問題は締結機構が小さい場合にはより顕著となる。
【0008】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、取り付けおよび取り外しを容易に行うことができる固定具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した問題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、支柱部と、先端が支柱部の一端側に連接され、支柱部の軸方向と交差する方向に弾性変形する一対の係止片と、支柱部の他端側に設けられ、支柱部よりも外周側に張り出した接触部と、を備え、板状の被固定部材に設けられた取付孔に、当該被固定部材の一方の面から一対の係止片を挿入して被固定部材の他方の面側に突出させると、係止片の後端が取付孔の周縁部に係止し、一対の係止片と接触部とにより被固定部材を挟み込むように構成される固定具であって、さらに次のような特徴を有する。
【0010】
この固定具は、一対の係止片それぞれの後端に連接された解除片を備え、また、接触部は、棒状の押圧部材を挿入可能である貫通孔が形成されており、そして、貫通孔から押圧部材を挿入して解除片を一端方向に押圧すると、解除片と連接する係止片の後端が支柱部の方向に変位することを特徴とする。
【0011】
このように構成された固定具では、係止片が被固定部材に係止している状態で接触部の貫通孔に押圧部材を挿入すると、係止片が支柱部の方向に変位し、被固定部材の取付孔の周縁部に接触しなくなったときに係止が解除されて固定具の取り外しができるようになる。つまり、押圧部材を挿入するだけで容易に係止を解除して固定具の取り外しができるようになる。
【0012】
また、押圧部材を挿入する操作は、被固定部材における固定具を挿入した側(被固定部材の一方の面側)にて行い、そしてその一方の面側に固定具が抜ける。つまり、固定具の取り付けおよび取り外しを、すべて被固定部材における同じ面側で行うことができる。そのため、係止片が突出した側、即ち被固定部材の他方の面側に固定具やその一部が脱落してしまう虞がない。また、他方の面側に手を入れて係止片を操作して係止を解除する必要もない。
【0013】
また、押圧部材を貫通孔に挿入することにより解除片の押圧を実現しているので、手や何らかの物品が固定具に接触しても、誤って解除片を押圧してしまうといったことが起こりにくい。よって、誤って固定具を取り外してしまい、被固定部材の固定が解除されてしまう危険を低減できる。
【0014】
また、一対の係止片を取付孔に挿入する際、それら係止片は、支柱部側に弾性変形して取付孔に挿入できる幅に縮小する。そして一対の係止片が被固定部材の他方の面側から突出した後は、係止片が支柱部から離れる方向に弾性変形して取付孔よりも大きく拡張し、取付孔の周縁部に係止する。したがって、上記構成の固定具では、被固定部材の取付孔に係止片を挿入するだけで簡便に被固定部材に固定具を取り付けることができる。
【0015】
このように、上記構成の固定具では、取り付けおよび取り外しを容易に行うことができる。
なお、上記固定具において、支柱部の軸方向とは支柱が延びる方向であって、軸方向の両端が、支柱部の一端および他端となる。
【0016】
また、被固定部材は、少なくとも固定具を取り付ける部分、即ち上述した取付孔が設けられた部分が板状であればよい。したがって、それ以外の箇所は板状に限られずさまざまな形状とすることができる。例えば、取付孔が設けられた部分以外は、ヒートシンクのように棒状や板状の突起物が多数配置される形状であってもよいし、取付孔が設けられた部分よりも厚さの大きいブロックのような形状であってもよい。
【0017】
また、上述した貫通孔は、接触部を突き抜けて押圧部材が挿入可能となるように構成されていれば、その具体的な形状は特に限定されない。例えば、貫通孔とは、接触部によって周囲を完全に囲まれた形状の孔に限らず、接触部に形成された切り欠きのようなものであってもよい。さらに、請求項2に記載のように形状を定めてもよい。
【0018】
請求項2に記載の固定具は、貫通孔が、押圧部材を挿入した際に、その押圧部材の変位方向を規定するように構成されていることを特徴とする。
このように構成された固定具であれば、押圧部材を貫通孔に挿入すれば適切に解除片を押圧できる位置に案内されるため、解除片を確実に押圧でき、容易に固定具の取り外しができるようになる。
【0019】
請求項3に記載の固定具は、請求項1または請求項2に記載の固定具において、接触部に一端側から接触するものであって、一対の係止片を被固定部材の取付孔に挿入した状態においては、被固定部材を一端方向に付勢する付勢部材を備えることを特徴とする。
【0020】
このように構成された固定具では、被固定部材の一方の面を付勢部材が付勢するため、被固定部材における一方および他方の面側から被固定部材を十分な力で挟み込むことができ、固定具を取り付けた後にがたつきが生じることを抑制できる。
【0021】
また、解除片を支柱部に接近させて係止片の係止が解除されると、付勢部材の付勢力によって固定具が取付孔から押し出されるため、固定具を取付孔から抜き出す作業が容易になる。
【0022】
請求項4に記載の固定具は、請求項3に記載の固定具において、付勢部材がコイルバネであることを特徴とする。
このように構成された固定具では、コイルバネにより被固定部材を付勢することができる。また、支柱部などをコイルバネの筒状体の内部に収めるように配置することで、固定具をコンパクトにすることができる。
【0023】
請求項5に記載の固定具は、請求項4に記載の固定具において、支柱部における他端側の一部領域の幅が、コイルバネの筒状の内径とほぼ等しくなるように形成されていることを特徴とする。
【0024】
このように構成された固定具では、支柱部がコイルバネに内側から接触するため、コイルバネを支柱部から脱落しにくくすることができる。
請求項6に記載の固定具は、請求項3に記載の固定具において、付勢部材が板バネであることを特徴とする。
【0025】
このように構成された固定具では、板バネにより被固定部材を付勢することができる。また、板バネはその厚さを小さくしやすいので、被固定部材と接触部との間に配置してもそれらの間の距離を短くすることができるため、固定具を被固定部材に取り付けた状態において固定具が被固定部材から突出する高さを小さくすることができる。
【0026】
請求項7に記載の固定具は、請求項3から請求項6のいずれか1項に記載の固定具において、付勢部材が金属で構成されていることを特徴とする。
このように構成された固定具では、付勢部材が金属であるため、熱による性能の劣化が小さく、また長期間使用しても付勢力の劣化が小さいため、長期間において固定具と被固定部材とのがたつきが生じることを抑制することができる。
【0027】
請求項8に記載の固定具は、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の固定具において、解除片には、その外周面に溝または突起が設けられていることを特徴とする。
このように構成された固定具では、押圧部材における解除片を押圧する部分に、上述した解除片の溝または突起(以降、溝等という)と係合する突起や溝(以降、突起等という)が形成された押圧部材を挿入すると、その押圧部材の突起等と解除片の溝等とが係合する。このとき、押圧部材によって解除片が押圧されて係止片の係止は解除されているため、押圧部材を貫通孔から抜く方向に動かすと、固定具は上記溝等と突起等との係合によって押圧部材に引っ張られることとなる。
【0028】
したがって、押圧部材を引き抜くことにより固定具が取付孔から取り外される方向に移動するため、固定具を取付孔から抜き出す作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】固定具の正面図(A)、右側面図(B)、平面図(C)、底面図(D)、右上斜視図(E)、右下斜視図(F)
【図2】スナップ部の正面図(A)、右側面図(B)、平面図(C)、底面図(D)、右上斜視図(E)、右下斜視図(F)
【図3】コイルバネの正面図
【図4】取り外し治具の正面図(A)、平面図(B)、右上斜視図(C)、右下斜視図(D)
【図5】被固定部材に取り付けられた固定具に取り外し治具を挿入した状態を説明する側面図
【図6】変形例の接触部を示す平面図
【図7】変形例のスナップ部の正面図(A)、右上斜視図(B)
【図8】変形例の取り外し治具を示す正面図
【図9】被固定部材に取り付けられた変形例の固定具に取り外し治具を挿入した状態を説明する側面図
【図10】変形例のスナップ部の正面図(A)、右上斜視図(B)
【図11】変形例の固定具の正面図(A)、右側面図(B)、平面図(C)、底面図(D)、右上斜視図(E)、右下斜視図(F)
【図12】板バネの斜視図(A)、平面図(B)、正面図(C)
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[実施例]
(1)固定具の構成
本実施例の固定具1は、図1(A)〜(F)に示すように、樹脂で一体形成されたスナップ部2と、スナップ部2の一部を取り巻くように配置される金属製の円筒形のコイルバネ3(図3参照)と、からなる。
【0031】
スナップ部2は、図2(A)〜(F)に示すように、支柱部4と、係止部5と、解除片6と、接触部7とを備えるものである。
支柱部4は、上下方向に延びる板状の形状であって、図2(A),(B)などに示すように、その上側の上部支柱4aと下側の下部支柱4bとからなり、上部支柱4aが幅、厚さともに下部支柱4bより大きく形成されている。なお、上部支柱4aの幅は、コイルバネ3の筒状の内径とほぼ等しくなるように形成されている。
【0032】
また、上部支柱4aの上端近傍にはコイルバネ3を係止する突起4cが設けられている。コイルバネ3を取り付けると、図1(B)などに示すように、上部支柱4aとコイルバネ3の内側面とが接触する。
【0033】
なお、本発明における支柱部の軸方向とはこの上下方向であって、支柱部4の下端が本発明の一端、支柱部4の上端が本発明の他端に相当する。
係止部5は、図2(A)などに示すように、支柱部4の下端に形成されており、下方向を向く鏃型の形状となっている。この係止部5は支柱部4を中心として互いに反対側に形成された一対の係止片5aを有している。係止片5aは先端(下端)が支柱部4の下端に連接され、支柱部4の軸方向と交差する方向に弾性変形する。
【0034】
解除片6は、図2(A)などに示すように、一対の係止片5aそれぞれの後端(上端)に連接されて、支柱部4に沿って上方向に延びている。解除片6の上端部6aは支柱部4方向に折れ曲がっており、外周面は上側ほど支柱部4に近づくように傾斜している。
【0035】
接触部7は、図2(E)などに示すように、支柱部4の上端に設けられ、支柱部4よりも外周側に張り出した略円板形状を有している。この接触部7は、コイルバネ3に上側から接触する。
【0036】
またこの接触部7には、上下方向に貫通する貫通孔8が形成されている。この貫通孔8は、一対の解除片6それぞれの位置に対応して解除片6の上方に形成されている。また、この貫通孔8の形状は、後述する取り外し治具10における棒状の押圧部材12の断面形状とほぼ等しい形状で僅かに大きく形成されている。したがって、押圧部材12はこの貫通孔8に挿入可能であって、さらに、その押圧部材12の変位方向が貫通孔8の内側面によって正しく上下に規定される。
【0037】
スナップ部2にコイルバネ3を取り付けると、図1(A)に示すように、支柱部4と解除片6がコイルバネ3の筒状内部に位置する。
(2)取り外し治具の構成
取り外し治具10は、図4(A)〜(D)に示すように、円柱形状の支持部11と、支持部11から延び出す一対の棒状の押圧部材12と、からなる。押圧部材12の先端部13は、内側(対となる押圧部材12側)面において先端に向かうほど細くなるように傾斜が形成されている。
(3)固定具の使用態様
本実施例の固定具1は、取付孔が設けられた板状の被固定部材に対して取り付けられるものであるが、ここでは2つの板状の被固定部材を互いに接触した状態で保持する使用態様を例示する。
【0038】
図5(A)に、被固定部材である板状の第1被固定部材20と第2被固定部材21それぞれの取付孔20a、21aを重ねて固定具1を取り付けた状態の側面断面図を示す。図5(A)のように取り付けるためには、取付孔20a、21aを重ねた状態で、取付孔20aに第1被固定部材20の上側面20bから係止部5を挿入する。
【0039】
このとき、係止片5aの後端(上端)は支柱部4側に弾性変形して取付孔20aに挿入できる幅に縮小する。さらに挿入すると、係止片5aは縮小した状態で第2被固定部材21の取付孔21aを通過する。そして、係止片5aを第2被固定部材21の下側面21bに突出させると、係止片5aは、支柱部4から離れる方向に弾性変形して取付孔21aよりも大きく拡張し、図5(A)に示すように、係止片5aの後端が取付孔21aの周縁部に係止する。
【0040】
この状態において、第1被固定部材20と第2被固定部材21は一対の係止片5aと接触部7によって挟み込まれる。本実施例においてはさらにコイルバネ3が配置されており、このコイルバネ3が、第1被固定部材20の取付孔20aの周縁部と接触し、固定具1の接触部7との間で圧縮される。したがって、第1被固定部材20は、圧縮されたコイルバネ3の弾性力により第2被固定部材21側に付勢される。このようにして、第1被固定部材20と第2被固定部材21とが重なる状態が保持される。
【0041】
次に、取り外し治具10を用いた固定具1の取り外し操作を説明する。接触部7に形成された貫通孔8に取り外し治具10の押圧部材12を挿入していくと、図5(B)に示すように、押圧部材12の先端部13が解除片6の上端部6aに接触する。
【0042】
この状態からさらに押圧部材12を挿入すると、図5(C)に示すように、解除片6の外周面の傾斜および先端部13の傾斜によって解除片6は支柱部4側に押されて移動し、解除片6と連接する係止片5aも支柱部4側に弾性変形して縮小するため、取付孔21aに対する係止片5aの係止が解除されて、固定具1の取り外しが可能となる。
(4)発明の効果
このように構成された固定具1は、被固定部材に取り付けられている状態において、取り外し治具10の押圧部材12を挿入するだけで容易に係止片5aの係止を解除して固定具1の取り外しができる。
【0043】
また、固定具1の取り付けおよび取り外しを、すべて被固定部材における同じ側(一方の面側)で行うことができる。そのため、係止片5aが突出した側、即ち被固定部材の他方の面側に固定具1やその一部が脱落してしまう虞がなく、また他方の面側に手を入れて係止片5aを操作して係止を解除する必要もないため都合がよい。
【0044】
また、押圧部材12を貫通孔8に挿入することにより解除片6の押圧を実現しているので、手や何らかの物品が固定具1に接触しても、誤って解除片6を押圧してしまうといったことが起こりにくい。よって、誤って固定具1を取り外してしまい、被固定部材の固定が解除されてしまう危険を低減できる。
【0045】
また、固定具1の被固定部材への取り付けは係止部5を取付孔に挿入するだけでよいので操作が簡便である。
また、貫通孔8は押圧部材12の変位方向を規定しているので、押圧部材12を貫通孔8に挿入すれば適切に解除片6を押圧できる位置に案内されるため、解除片6を確実に押圧でき、容易に固定具1の取り外しができる。
【0046】
また、コイルバネ3によって被固定部材を付勢することで、被固定部材を十分な力で挟み込むことができ、固定具1を取り付けた後にがたつきが生じることを抑制できる。また、係止片5aの被固定部材への係止が解除されると、コイルバネ3の付勢力によって固定具1が取付孔から押し出されるため、固定具1を取付孔から抜き出す作業が容易になる。
【0047】
また、コイルバネ3の筒状内部に支柱部4および解除片6が収められることとなり、固定具1をコンパクトな形状とすることができる。
また、固定具1を被固定部材に取り付けた状態においては、コイルバネ3が圧縮してその隙間が無くなるため、その隙間から解除片6を押圧することが難しい。よって、誤って解除片6を押圧してしまう危険を抑制できると共に、取り外し治具10を持たない者が勝手に固定具1を取り外してしまうことを抑制できる。さらに、コイルバネ3の内側面によって押圧部材12を挿入する際のガイドの機能も発揮する。
【0048】
また、上部支柱4aの幅はコイルバネ3の筒状の内径とほぼ等しくなるように形成されているため、コイルバネ3を上部支柱4aから脱落しにくくすることができる。
また、コイルバネ3が金属製であるため、熱による性能の劣化が小さく、また長期間使用しても付勢力の劣化が小さいため、長期間において固定具1と被固定部材とのがたつきが生じることを抑制することができる。したがって、LED基板やヒートシンクなどの耐熱性が必要な環境であっても長期間使用することができる。
【0049】
また、樹脂スナップによる固定であるため、被固定部材の膨張にも対応することができる。
また、固定具1は丸穴形状の取付孔に取り付けることができるため、従来ねじを用いて固定されていた部分において、そのねじ穴を利用してねじから固定具1に置き換えて固定を実現することができる。
(5)変形例
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0050】
例えば、接触部7に形成される貫通孔8は、押圧部材12を挿入できるものであればその形状は上述したものに限られない。例えば図6に示す貫通孔8aのように切り欠きのような形状であってもよい。
【0051】
また、貫通孔8を特殊形状とし、それに合わせた押圧部材を有する取り外し治具のみ使用可能とすることで、その治具を持たない者が勝手に固定具を取り外すことを防止できる。
【0052】
また、解除片6の形状は、上述したものに限られない。例えば、解除片6の外周面に溝や突起を設けても良い。図7(A),(B)に、解除片6の外周面の下端付近に溝6bを設けたスナップ部23を示す。また、この場合には図8に示す取り外し治具14を用いるとよい。この取り外し治具14は、棒状の押圧部材15の先端部16に、突起17が設けられている。
【0053】
図9(A)〜(C)に、上記スナップ部23を備える固定具1aの使用態様を示す。押圧部材15を挿入していくと、図9(C)に示すように、突起17が溝6bと係合する。このとき、係止片5aの係止は解除されているので、押圧部材15を貫通孔8から抜く方向に動かすと、固定具1aは突起17と溝6bとが係合しているため押圧部材15に引っ張られて取付孔から取り外される方向に移動するため、固定具1aを取付孔から抜き出す作業が容易になる。なお、上記構成において突起と溝の配置は逆であってもよい。
【0054】
また、解除片の別の形状として、図10(A),(B)に示すスナップ部24のように、先端が支柱部4側に折れ曲がらず、外周端面のみ傾斜する形状の解除片25としてもよい。このような形状の解除片25は、押圧部材12によって押圧された際に、解除片25が支柱部4に接触しにくいため解除片25を支柱部4側にスムーズに移動することができる。
【0055】
また、上記実施例においては、付勢部材としてコイルバネ3を用いる構成を例示したが、コイルバネ3以外のものを用いてもよい。例えば、接触部7に下方向に延び出す樹脂片を連接して付勢部材としてもよい。
【0056】
また、図11(A)〜(F)に示す固定具30のように、コイルバネに替えて板バネ31を用いる構成であってもよい。この固定具30において、略円板状の板バネ31は、中心の貫通孔を支柱部32が貫通し、上端が接触部7と接触するように配置される。この板バネ31は、図12(A)〜(C)に示すように、リング状のベース33と、ベース33の外周に配置され、ベース33から角度を持って延び出すバネ部34と、からなる。
【0057】
このように構成された固定具30では、板バネ31により被固定部材を付勢することができる。また、板バネ31はその厚さを小さくしやすいので、被固定部材と接触部7との間に配置してもそれらの間の距離を短くすることができるため、固定具30を被固定部材に取り付けた状態において固定具30が被固定部材から突出する高さを小さくすることができる。
【符号の説明】
【0058】
1…固定具、2…スナップ部、3…コイルバネ、4…支柱部、4a…上部支柱、4b…下部支柱、4c…突起、5…係止部、5a…係止片、6…解除片、6a…上端部、6b…溝、7…接触部、8…貫通孔、8a…貫通孔、10…取り外し治具、11…支持部、12…押圧部材、13…先端部、14…取り外し治具、15…押圧部材、16…先端部、17…突起、20…第1被固定部材、20a…取付孔、20b…上側面、21…第2被固定部材、21a…取付孔、21b…下側面、23…スナップ部、24…スナップ部、25…解除片、30…固定具、31…板バネ、32…支柱部、33…ベース、34…バネ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱部と、
先端が前記支柱部の一端側に連接され、前記支柱部の軸方向と交差する方向に弾性変形する一対の係止片と、
前記支柱部の他端側に設けられ、前記支柱部よりも外周側に張り出した接触部と、を備え、
板状の被固定部材に設けられた取付孔に、当該被固定部材の一方の面から前記一対の係止片を挿入して前記被固定部材の他方の面側に突出させると、前記係止片の後端が前記取付孔の周縁部に係止し、前記一対の係止片と前記接触部とにより前記被固定部材を挟み込むように構成される固定具であって、
前記一対の係止片それぞれの後端に連接された解除片を備え、
前記接触部は、棒状の押圧部材を挿入可能である貫通孔が形成されており、
前記貫通孔から前記押圧部材を挿入して前記解除片を前記一端方向に押圧すると、前記解除片と連接する前記係止片の後端が前記支柱部の方向に変位する
ことを特徴とする固定具。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記押圧部材を挿入した際に、当該押圧部材の変位方向を規定するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の固定具。
【請求項3】
前記接触部に前記一端側から接触するものであって、前記一対の係止片を前記取付孔に挿入した状態においては、前記被固定部材を前記一端方向に付勢する付勢部材を備える
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の固定具。
【請求項4】
前記付勢部材は、コイルバネである
ことを特徴とする請求項3に記載の固定具。
【請求項5】
前記支柱部は、他端側の一部領域の幅が、前記コイルバネの筒状の内径とほぼ等しくなるように形成されている
ことを特徴とする請求項4に記載の固定具。
【請求項6】
前記付勢部材は、板バネである
ことを特徴とする請求項3に記載の固定具。
【請求項7】
前記付勢部材は、金属で構成されている
ことを特徴とする請求項3から請求項6のいずれか1項に記載の固定具。
【請求項8】
前記解除片は、外周面に溝または突起が設けられている
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−185327(P2011−185327A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49303(P2010−49303)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000242231)北川工業株式会社 (268)
【Fターム(参考)】