説明

固定式等速自在継手

【課題】内輪(内側継手部材)やケージの強度を確保しつつ、小型軽量化を図り得ることが可能であり、また高角度強度および耐久性を向上させることができる固定式等速自在継手を提供する。
【解決手段】内球面21にトラック溝22を形成した外側継手部材と、外球面22にトラック溝25を形成した内側継手部材と、外側継手部材のトラック溝22と内側継手部材のトラック溝25との対で形成されるボールトラックに配置されるトルク伝達ボール27と、トルク伝達ボール27を保持するケージ28を備えた固定式等速自在継手である。内側継手部材の内径面に、挿入されるシャフト65の雄セレーション66と嵌合する雌セレーション61が形成されるとともに、雌セレーション61は継手開口側において省略され、その省略部に、底面83が雌セレーション61の大径よりも大きな円筒形状となる周方向切欠部84を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や各種産業機械の動力伝達系において使用され、駆動側と従動側の二軸間で作動角変位を許容しながら回転トルクを伝達する固定式等速自在継手に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車及びこれに準ずる各種車両においては、エンジンからの駆動力をホイールに伝達する動力伝達経路に、二軸間で角度変位や軸方向変位があった場合でも等速で回転動力を伝達することが可能な等速自在継手を配設することが行われている。等速自在継手には、プランジング運動(軸方向変位)を行わない固定式等速自在継手とプランジング運動を行う摺動式等速自在継手がある。固定式等速自在継手としては、バーフィールド型(BJ)やアンダーカットフリー型(UJ)が広く知られている。
【0003】
例えば、UJタイプの固定式等速自在継手は、図27と図28に示すように内球面1に複数のトラック溝2が円周方向等間隔に軸方向に沿って形成された外側継手部材としての外輪3と、外球面4に外輪3のトラック溝2と対をなす複数のトラック溝5が円周方向等間隔に軸方向に沿って形成された内側継手部材としての内輪6と、外輪3のトラック溝2と内輪6のトラック溝5との間に介在してトルクを伝達する複数のボール7と、外輪3の内球面1と内輪6の外球面4との間に介在してボール7を保持するケージ8とを備えている。ケージ8には、ボール7が収容されるポケット9が周方向に沿って複数配設されている。
【0004】
また、外輪3のトラック溝2は、奥側が円弧部2aとされ、開口側が直線部2bとされる。内輪6のトラック溝5は、奥側が直線部5aとされ、開口側が円弧部5bとされる。内輪6のトラック溝5の曲率中心O1および外輪3のトラック溝2の曲率中心O2は、継手中心Oに対して等距離F、Fだけ軸方向に逆向きにオフセットされている。
【0005】
近年においては、コンパクト化を図るために、図28に示すようにボールを8個としたものがある。この場合、ケージのポケット中心位置におけるケージ肉厚をTCAGEとするとともに、作動角が0°のときのボールのピッチ円半径をPCRBALLとし、この比であるTCAGE/PCRBALLを0.11〜0.19程度とされる。
【0006】
また、従来のUJ型等速自在継手には、図29に示すように、小型軽量化のために、上記内外輪3,6の各トラック溝2,5の曲率中心O1,O2とトルク伝達ボール7の中心Qを結ぶ直線と、トルク伝達ボール7の中心Qと継手中心Oを結ぶ直線とが成すトラック溝のオフセット角θTRACKを、4°≦θTRACK≦6°の範囲に設定するものがある。
【0007】
このようなものでは、外輪3の内球面1の曲率中心O10(ケージ8の外球面8aの曲率中心)及び内輪6の外球面4の曲率中心O20(ケージ8の内球面8bの曲率中心)も、それぞれ継手中心Oを挟んで軸方向に等距離だけオフセットされている。そして、ケージ8の内外球面8a,8bの曲率中心O10,O20とトルク伝達ボール7の中心Qを結ぶ直線と、トルク伝達ボール7の中心Qと継手中心Oを結ぶ直線とが成すケージ8のオフセット角θCAGEを、0°<θCAGE<1°の範囲に設定している。このように、ケージ8は、そのオフセット角θCAGEが非常に小さく設定されているため、略均一な厚さに成形される。
【0008】
近年、固定式等速自在継手の更なる小型軽量化のため、ケージ8の厚さを更に薄くすることが試みられている。図28に示す等速自在継手において、TCAGE/PCRBALLを0.11〜0.19に保ったまま、更なるコンパクト化、つまりピッチ円半径を小さくしようとすれば、ケージ8の肉厚が必然的に薄くなる。このように薄くなれば、ポケット9間の柱部、及びポケット9の側枠(軸方向に対面する窓枠)の剛性が低下する。すなわち、継手が高作動角をとった状態で回転する場合、ケージ8の継手開口側の端部に大きな負荷がかかるため、その部分の強度は確保しなければならない。しかしながら、高作動角時において、等速自在継手としての強度を確保することが困難である。
【0009】
また、前記図29に示す継手の構成において、ケージ8の厚さを薄く設定すると、ケージ8が均一に薄く成形されるため、ケージ8の継手開口側の端部の強度を十分に確保することが困難であった。また、このケージ8の小型軽量化に伴う継手開口側の端部の強度低下は、特に小型車・軽自動車用等に適用する小サイズの固定式等速自在継手に顕著に認められる。
【0010】
そこで、コンパクト化を図った新しいタイプの固定式等速自在継手として、特許文献1に記載のように、6個ボールタイプものが提案されている。
【0011】
ところで、図30〜図32に示すように、内輪6の内径面に雌セレーション(雌スプライン)11が形成され、この雌セレーション11に、シャフト13に形成された雄セレーション(雄スプライン)12が嵌合する。これによって、シャフト13と内輪6とがトルク伝達可能に連結される。
【0012】
また、雄スプライン12には、図30に示すように、谷部12aをそのままシャフト13の外周面に抜いたタイプ(切抜けタイプ)と、図31に示すように、雄スプライン12の谷部12aの終端側を滑らかに拡径させたタイプ(切上げタイプ)とがある(特許文献2)。ここで、終端側とは、内輪6へのシャフト13の挿入時に、内輪6に最初に嵌合するシャフト端面を始端側とした場合の反対側をいう。
【0013】
図30では、1箇所のみにシャフト13の抜け止め手段Wが設けられている。すなわち、この抜け止め手段Wは、雄セレーション12に形成された周方向溝15と、内輪6の雌セレーション11に設けられる周方向溝14と、この周方向溝14、15に係合する止め輪16とを備える。
【0014】
図31では、抜け止め手段Wと位置決め手段W1とが設けられている。この場合の抜け止め手段Wは、内輪6の雌セレーション11の始端に設けられる切欠部17と、雄セレーション12に形成された周方向溝15と、切欠部17と周方向溝15とに係合する止め輪16とを備える。また、位置決め手段W1は、内輪6の終端側に設けられる端面18と、シャフト13の外径面に設けられた当接端面19とで構成される。
【0015】
図32においては、雄スプライン12を図30と同様の切抜けタイプとしている。抜け止め手段Wも図31と同様、雌セレーション11の切欠部17と、雄セレーション12に形成された周方向溝15と、切欠部17と周方向溝15とに係合する止め輪16とを備える。しかしながら、位置決め手段W1は、シャフト13に装着されたストッパ20で構成される。すなわち、このストッパ20が内輪6の端面6aに当接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2000−263163号公報
【特許文献2】特開2000−97244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
特許文献1に記載のような構造とすることによって、等速自在継手のコンパクト化を実現できる。しかしながら、小さいピッチ円直径(PCD)に大きなボールを配置することになり、内部部品(内側継手部材、ボール、ケージ等からなる組立体)の強度バランスが今までの等速自在継手と異なることになる。すなわち、従来と同じシャフトを適用した場合、雌セレーション11を形成したことによって、内輪6の肉厚(特に、継手開口側)が薄くなる。このため、他部品である外輪3やケージ8に比べて内輪6の強度がバランス的に劣ることになる。
【0018】
また、雄スプラインが切抜けタイプでは、特許文献2に記載されているように、静的強度および疲労強度で劣る。このため、静的強度および疲労強度を考慮すれば、図31に示すような切上げタイプが好ましい。
【0019】
しかしながら、切上げタイプを用いた場合であっても、内輪6を、鍛造成形にて構成した場合、図33に示すように、トラック溝5に沿ってファイバーフローが形成される。このファイバーフローは、雌スプライン11側に切れた状態となる。このため、切上げタイプであっても、静捩り強度や疲労強度試験等において、ファイバーフローの切断部が疲労起点等となって、強度低下を招くことになる。また、トルク伝達面積を稼ぐため、雌セレーション(雌スプライン)が、比較的、内輪開口側(スプライン終端側)にまで形成されることになる。雌セレーションがスプライン終端側まで形成されていることも、強度低下を招く要因となっている。
【0020】
そこで、本発明は斯かる実情に鑑み、内輪(内側継手部材)やケージの強度を確保しつつ、小型軽量化を図り得ることが可能であり、また高角度強度および耐久性を向上させることができる固定式等速自在継手を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の固定式等速自在継手は、内球面に軸方向に延びた複数のトラック溝を形成した外側継手部材と、外球面に軸方向に延びた複数のトラック溝を形成した内側継手部材と、前記外側継手部材のトラック溝と前記内側継手部材のトラック溝との対で形成されるボールトラックに配置される複数のトルク伝達ボールと、前記外側継手部材の内球面と前記内側継手部材の外球面との間に介在すると共に前記トルク伝達ボールを保持するケージを備えた固定式等速自在継手において、前記内側継手部材の内径面に、挿入されるシャフトの雄セレーションと嵌合する雌セレーションが形成されるとともに、前記雌セレーションは継手開口側において省略され、その省略部に、底面が前記雌セレーションの大径よりも大きな円筒形状となる周方向切欠部を形成したものである。
【0022】
本発明の固定式等速自在継手によれば、雌セレーションは継手開口側において省略され、その省略部に周方向切欠部を形成したので、ファイバーフローの継手開口側切断部におけるセレーションを無くすことができる。このため、内側継手部材の継手開口側における応力緩和を図ることができる。
【0023】
内側継手部材の内径面の継手開口側にシャフトの位置決め手段を設けるとともに、内側継手部材の内径面の継手奥側にシャフトの抜け止め手段を設けるのが好ましい。内側継手部材の内径面の継手開口側にシャフトの抜け止め手段を設けたものであってもよい。
【0024】
前記トルク伝達ボールの数を6個とするとともに、前記トルク伝達ボールのピッチ円直径(PCDBALL)と前記トルク伝達ボールの直径(DBALL)との比r1(=PCDBALL/DBALL)を、3.0≦r1≦3.3の範囲に設定するようにできる。これによって、等速自在継手としての強度・耐久性を確保することができる。
【0025】
ピッチ円直径とボールの直径との比が3.0未満であると、ボールの直径が大きい場合は内側継手部材の肉厚が薄くなりすぎて、強度の点で懸念が生じ、ボールのピッチ円直径が小さい場合は内側継手部材(内輪)・外側継手部材(外輪)とボール間の面圧が大きくなり、耐久性の点で懸念が生じる。逆に、3.3を越えると、ボールの直径が小さい場合はボールの負荷容量が小さくなり、耐久性の点で懸念が生じ、ボールのピッチ円直径が大きい場合は、外側継手部材外径が大きくなり、コンパクト化が達成できない。
【0026】
前記外側継手部材の外径(DOUTER)と前記トルク伝達ボールの直径(DBALL)との比r2(=DOUTER/DBALL)を、4.6≦r2≦4.8の範囲に設定することができる。外側継手部材の外径とボールの直径との比が4.6未満であると、ボールの直径が大きい場合は外側継手部材の肉厚が薄くなりすぎて、強度の点で懸念が生じ、外側継手部材の外径が小さい場合は内側継手部材・外側継手部材とボール間の面圧が大きくなり、耐久性の点で懸念が生じる。逆に、4.8を越えると、ボールの直径が小さい場合はボールの負荷容量が小さくなり、耐久性の点で懸念が生じ、外側継手部材の外径が大きい場合はコンパクト化が達成できない。
【0027】
継手作動角が0°の状態における、前記ケージの内外球面の曲率中心と前記トルク伝達ボールの中心を結ぶ直線と、前記トルク伝達ボールの中心と継手中心とを結ぶ直線とが成すケージのオフセット角θCAGEを、2.7°≦θCAGE≦5.7°の範囲に設定することができる。
【0028】
ケージのオフセット角θCAGEを、従来のケージのオフセット角(0°<θCAGE<1°)より大きく設定することによって、ケージの継手開口側の端部の肉厚が、他の部分に比べて厚く成形される。ケージのオフセット角が、2.7°未満であると、ケージの継手開口側の端部が薄くなり、十分な強度が確保できない。また、5.7°を越えると、ケージの継手奥側の端部の肉厚が極端に薄くなる。ケージの製造工程において一般的に熱処理を施すが、ケージの肉厚が極端に薄くなると、その肉厚の薄い部分では熱処理による未硬化層が少なくなり、靱性が低下し十分な強度が確保できなくなる。また、ケージの継手開口側の端部と継手奥側の端部とで、肉厚差が大きいと加工性の悪化も懸念される。
【0029】
ケージのポケット中心位置におけるケージ肉厚をTCAGEとするとともに、作動角が0°のときのボールのピッチ円半径をPCRBALLとし、この比であるTCAGE/PCRBALLを0.20以上0.23以下としてもよい。0.20≦tCAGE/PCRBALL≦0.23とすることによって、小型化及びケージ強度の向上を図ることができ、しかも、ボール27のトラック溝のエッジ部への乗り上げを防止できる。
【0030】
CAGE/PCRBALLが0.20未満となると、外径が大きくなり、コンパクト化が困難になったり、ケージの肉厚が薄くなったり、大角度時の必要継手強度が確保することが困難となる。一方、tCAGE/PCRBALLが0.23を越えると、内径セレーション部(シャフト嵌合部)における内輪(内側継手部材)の肉厚が薄くなり、大角度時(高作動角時)の必要継手強度の確保が困難になったり、内輪及び外輪の球面が小さくなることにより、許容可能なトルクレベルが低下したりする。この結果、ボールが内輪及び外輪のトラック溝のエッジ部に乗り上げ易くなり、耐久性が著しく低下してしまうおそれがある。
【0031】
外側継手部材のトラック溝の曲率中心と内側継手部材のトラック溝の曲率中心とを、継手中心に対して等距離だけ軸方向に逆向きにオフセットさせるとともに、ケージの外球面の曲率中心とケージの内球面の曲率中心とを、継手中心に対して等距離だけ軸方向に逆向きにオフセットさせ、このケージのオフセット量をトラック溝のオフセット量と略同一とするのが好ましい。これによって、継手奥側のトラック溝深さが浅くなるのを防止できるとともに、開口側のケージの肉厚(径方向厚さ)を大きくすることができる。
【0032】
ところで、内側継手部材をケージに組み込む際は、内側継手部材のトラック溝相互間に配設された外球面の一つを、ケージのポケットに挿入して、内側継手部材をケージ内に収納することになる。このため、内外継手部材の各トラック溝を、周方向不等ピッチに配設すると共に、狭いピッチ内に配設されたケージの柱部を除去したものとすれば、柱部を除去することによって、この除去部に内側継手部材の外球面を落とし込むことができる。
【0033】
また、等速自在継手を組み立てる場合、外側継手部材にケージを組み込むことになる。このため、内外継手部材の各トラック溝相互間のピッチのうち、2つのピッチの位相を60°以下に設定すると共に、残りの4つのピッチの位相を60°以上に設定することによって、組み込み性の向上を図ることができる。すなわち、外側継手部材にケージを組み込む際は、ケージのポケットを、小さい位相のピッチ内に配設された外側継手部材の内球面に対向させて組み込むことになる。この際、小さいピッチ内に配設された内球面の開口側端部の周方向長さが、対向するケージのポケットの幅より小さく設定されることになり、前記内球面がケージの外周面に干渉することなく、ケージを外側継手部材に容易に組み込むことができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の固定式等速自在継手では、内側継手部材の継手開口部において応力緩和を図ることができ、内側継手部材の強度を向上させることができる。このため、従来と同じ緒言のシャフトを適用することができ、従来品との共用が可能となって、コストの低減を図ることができる。また、3.0≦r1≦3.3の範囲に設定することによって、等速自在継手としての強度・耐久性を確保することができ、高精度の等速自在継手を提供することができる。
【0035】
また、外側継手部材の外径とボールの直径との比を、4.6以上4.8以下とすることによって、一層強度・耐久性を確保することができる。ケージのオフセット角度を、2.7°以上5.7°以下に設定することによって、ケージの継手開口側の端部の肉厚を、他の部分に比べて厚く成形することができ、継手の小型軽量化を図るためにケージを薄く成形しても、ケージの継手開口側の端部は、継手の高作動角回転時に付与される負荷に耐え得る強度を確保することができる。
【0036】
0.20≦tCAGE/PCRBALL≦0.23とすることによって、小型化及びケージ強度の向上を図ることができ、しかも、ボールのトラック溝のエッジ部への乗り上げを防止できる。すなわち、本発明によれば、コンパクト化(小型化)を可能とするとともに、小型化してもケージの強度を確保でき、さらには、高角捩りトルク負荷時のケージ損傷を防止できて、高角強度の向上を図ることができる。このため、よりコンパクトなフォルムにて継手強度耐久性を従来品(8個ボールの固定式ジョイント)と同等以上に確保することができる。
【0037】
ケージのオフセット量をトラック溝のオフセット量と略同一として大きくすることによって、継手奥側のトラック溝深さが浅くなるのを防止できるとともに、開口側のケージの肉厚(径方向厚さ)を大きくすることができる。このため、高角時のボールがトラックエッジに乗り上げるのを防止でき、エッジに過大な応力が作用することがなくなる。すなわち、高角時の捩りトルク負荷容量の低下を防ぎ、高角耐久寿命の向上(改善)や高角時の内側継手部材と外側継手部材のトラック溝の塑性変形に起因する破損強度の向上(改善)を図ることができる。
【0038】
内側継手部材のトラック溝及び外側継手部材のトラック溝を円周方向に不等ピッチで配設し、狭いピッチのケージの柱を除去すれば、ケージの外側継手部材(外輪)への組込みが容易となり、しかも、長窓が必然的に形成され、長窓幅が内輪幅より大きくなって、内輪のケージの組込みが容易となる。また、外側継手部材のトラック溝において、2つのピッチの位相を60°以下に設定すると共に、残りの4つのピッチの位相を60°以上に設定することによって、干渉なくケージの組込みができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す固定式等速自在継手の縦断面図である。
【図2】前記固定式等速自在継手の縦断面図である。
【図3】前記固定式等速自在継手の横断面図である。
【図4】前記固定式等速自在継手の要部縦断面図である。
【図5】前記固定式等速自在継手の内輪の断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態を示す固定式等速自在継手の横断面図である。
【図7】図6に示す固定式等速自在継手の外輪とケージとの関係を示す正面図である。
【図8】図6に示す固定式等速自在継手の内輪とケージとの関係を示す側面図である。
【図9】図6に示す固定式等速自在継手のケージへに内輪の組み込み状態を示す側面図である。
【図10】固定式等速自在継手のケージを示し、(a)は前記図6のケージの側面図であり、(b)はケージの第1の変形例を示す側面図であり、(c)はケージの第2の変形例を示す側面図であり、(d)はケージの第3の変形例を示す側面図である。
【図11】固定式等速自在継手のケージを示し、(a)はケージの第4の変形例を示す側面図であり、(b)はケージの第5の変形例を示す側面図である。
【図12】ケージの第6変形例を示す側面図である。
【図13】ケージの第6変形例を示す斜視図である。
【図14】内輪の変形例を示す斜視図である。
【図15】前記図14に示す内輪の正面図である。
【図16】前記図14に示す内輪の断面図である。
【図17】前記図14に示す内輪を用いたケージへの組み込み方法を示す断面図である。
【図18】ケージへの組み込み時に形成される隙間の説明図である。
【図19】内輪の他の変形例を示す斜視図である。
【図20】前記図19に示す内輪の正面図である。
【図21】前記図19に示す内輪の断面図である。
【図22】内輪に形成される切欠部を示し、(a)は第1変形例を示す拡大断図であり、(b)は第2変形例を示す拡大断図である。
【図23】内輪に形成される切欠部を示し、(a)は第3変形例の正面図であり、(b)は第3変形例の断面図である。
【図24】本発明の第3の実施形態を示す固定式等速自在継手の縦断面図である。
【図25】本発明の第4の実施形態を示す固定式等速自在継手の縦断面図である。
【図26】本発明の第5の実施形態を示す固定式等速自在継手の縦断面図である。
【図27】従来の固定式等速自在継手の縦断面図である。
【図28】従来の固定式等速自在継手の横断面図である。
【図29】従来の固定式等速自在継手の縦断面図である。
【図30】従来の固定式等速自在継手の内輪とシャフトとの関係を示す縦断面図である。
【図31】従来の固定式等速自在継手の他の内輪とシャフトとの関係を示す縦断面図である。
【図32】従来の固定式等速自在継手の別の内輪とシャフトとの関係を示す縦断面図である。
【図33】内輪に形成されるファイバーフローの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下本発明の実施の形態を図1〜図26に基づいて説明する。
【0041】
この固定式等速自在継手は、図1と図2に示すように内球面21に複数(6個)のトラック溝22が軸方向に沿って形成された外側継手部材としての外輪23と、外球面24に外輪23のトラック溝22と対をなす複数(6個)のトラック溝25が軸方向に沿って形成された内側継手部材としての内輪26と、外輪23のトラック溝22と内輪26のトラック溝25との間に介在してトルクを伝達する複数(6個)のボール27と、外輪23の内球面21と内輪26の外球面24との間に介在してボール27を保持するポケット(ポケット)29を有するケージ28とを備えている。この場合、図3に示すように、ポケット29は円周方向に沿って等ピッチ(60°ピッチ)で6個配設されている。
【0042】
前記外輪23のトラック溝22は、トラック溝底が円弧部となる奥側トラック溝22aと、トラック溝底が外輪軸線と平行なストレート部となる開口側トラック溝22bとからなる。奥側トラック溝22aは、その曲率中心O1を継手中心Oから軸方向に外輪23の開口側にずらしている。また、内輪26のトラック溝25は、トラック溝底が内輪軸線と平行なストレート部となる奥側トラック溝25aと、トラック溝底が円弧部となる開口側トラック溝25bとからなる。開口側トラック溝25bの曲率中心O2を継手中心Oから軸方向に外輪23の奥側トラック溝22aの曲率中心O1と反対側の奥側に等距離kだけ離して設けている。
【0043】
内輪26の孔部60の内径面には、トルク伝達部位である雌セレーション(雌スプライン)61が形成されている。すなわち、図5に示すように、内輪26の孔部60にシャフト65が嵌入され、このシャフト65に設けられた雄セレーション66が、内輪26の雌セレーション61に嵌合する。これによって、シャフト65と内輪26間のトルクが伝達される。なお、雄セレーション66の端部には周方向溝67が形成され、この周方向溝67に止め輪68が装着される。これによって、止め輪68が内輪26の孔部60の内径面の端部(継手奥側端部)の切欠部69に係合して、シャフト65の抜け止め手段Wが構成される。すなわち、抜け止め手段Wは、内輪26の継手奥側に設けられ、シャフト65の周方向溝67と、内輪26の切欠部69と、この周方向溝67及び切欠部69に係合する止め輪68とで構成される。
【0044】
ところで、この雄セレーション(雄スプライン)66は、雄スプライン66の谷部66aの終端側を滑らかに拡径させたタイプ(切上げタイプ)である。すなわち、雄スプライン66の谷部66aの終端側に立上り部80が設けられるとともに、雄スプライン66の山部66bのセレーション終端側に下傾部81が設けられている。ここで、終端側とは、内輪26へのシャフト65の挿入時に、内輪26に最初に嵌合するシャフト端面を始端側とした場合の反対側をいう。
【0045】
雌セレーション66は継手開口側(終端側)において省略され、その省略部に、底面83が雌セレーション66の大径よりも大きな円筒形状となる周方向切欠部(大径部)84を形成している。すなわち、雌セレーション66の最大外径寸法をD1とし、周方向切欠部84の内径寸法をD2とした場合、D1<D2となる。
【0046】
このように周方向切欠部(大径部)84を設けることによって、ファイバーフローの継手開口側切断部におけるセレーションを無くすことができる。このため、内輪26の継手開口側での応力緩和を図ることができる。
【0047】
また、シャフト65には、雄セレーション66のセレーション終端から継手開口部に向かって拡径するテーパ部87が設けられ、このテーパ部87が内輪26のテーパ部85に当接する。内輪26のテーパ部85と、シャフト65のテーパ部87とで、位置決め手段W1が構成される。
【0048】
すなわち、シャフト65の端部の雄セレーション66を内輪26に嵌入して行けば、シャフト65のテーパ部87が内輪26のテーパ部85に当接するまで嵌入することができる。この当接した状態では、止め輪68が、周方向溝67及び切欠部69に係合する状態となる。
【0049】
従って、図5に示すように、止め輪68が周方向溝67及び切欠部69に係合するとともに、内輪26のテーパ部85とシャフト65のテーパ部87とが当接している状態では、シャフト65は内輪26に対して軸心方向の移動が規制される。すなわち、シャフト65が内輪26に対して矢印E1方向に移動する方向の外力が作用した場合、シャフト65のテーパ部87が内輪26のテーパ部85に当接しているので、この矢印E1方向の移動が規制される。また、シャフト65が内輪26に対して矢印E2方向に移動する方向の外力が作用した場合、止め輪68が切欠部69に係合しているので、この矢印E2方向の移動が規制される。
【0050】
ところで、外輪23のトラック溝22や内輪26のトラック溝25は、塑性加工、研削等にて成形することができる。
【0051】
ケージ28は、外球面28aの曲率中心O3と内球面28bの曲率中心O4とを、継手中心(ケージ中心)Oに対して等距離k2だけ軸方向に逆向きにオフセットさせ、このケージ28のオフセット量をトラック溝のオフセット量と略同一として大きくしている。
【0052】
このため、ケージ28の外球面28aは、外輪23の奥側トラック溝22aの溝底とほぼ同心円弧(曲率半径は相違する同心円弧)を形成することができ、継手奥側のトラック溝深さが浅くなるのを防止できるとともに、ケージ28の開口側の肉厚(径方向厚さ)を大きくすることができる。
【0053】
図3に示すように、ケージ28のポケット中心位置におけるケージ肉厚をtCAGEとするとともに、作動角が0°のときのボール27のピッチ円半径をPCRBALLとし、この比であるtCAGE/PCRBALLを0.20以上0.23以下とする。
【0054】
また、図3に示すように、ボール27のピッチ円直径PCDBALLとボール27の直径DBALLとの比r1を、3.0以上3.3以下とする。すなわち、3.0≦r1≦3.3としている。外輪23の外径DOUTERとボール27の直径DBALLとの比r2を、4.6以上4.8以下とする。すなわち、4.6≦r2≦4.8としている。
【0055】
ここで、ピッチ円半径PCRBALLとは、ボール中心が描く円の軌跡の半径であり、ピッチ円直径PCDBALLとは、ボール中心が描く円の軌跡の直径である。すなわち、ピッチ円直径PCDBALLは、外輪23のトラック溝22の曲率中心O1、又は、内輪26のトラック溝25の曲率中心O2と、トルク伝達ボール7の中心Qとを結ぶ線分の長さPCRの2倍と定義する(PCDBALL=PCR×2)。
【0056】
図4に示すように、作動角が0°のときにおいて、ケージ28の外球面28aの曲率中心O3とボール中心Qとを結んだ直線L3と、継手中心Oとボール中心Qとを結んだ直線Lとの成す角度θ3、及びケージ28の内球面28bの曲率中心O4とボール中心Qとを結んだ直線L4と、継手中心Oとボール中心Qとを結んだ直線Lとの成す角度θ4をそれぞれ2.7°以上5.7°以下に設定している。なお、角度θ3及びθ4は、ケージオフセット角(θCAGE)と呼ぶ。また、作動角が0°とは、外輪23の軸線と内輪の軸線とが一致する状態である。すなわち、2.7°≦θCAGE≦5.7°に設定される。
【0057】
このように、上記ケージのオフセット角θCAGEを、図27に示す従来のケージのオフセット角(0°<θCAGE<1°)より大きく設定することによって、ケージ28の継手開口側の端部の肉厚が、他の部分に比べて厚く成形される。これにより、継手の小型軽量化を図るためにケージ28を薄く成形しても、ケージ28の継手開口側の端部は、継手の高作動角回転時に付与される負荷に耐え得る強度を確保することができる。
【0058】
ケージのオフセット角θCAGEが、θCAGE<2.7°であると、ケージ28の継手開口側の端部が薄くなり、十分な強度が確保できない。また、5.7°<θCAGEである場合は、ケージ28の継手奥側の端部の肉厚が極端に薄くなる。ケージの製造工程において一般的に熱処理を施すが、ケージ28の肉厚が極端に薄くなると、その肉厚の薄い部分では熱処理による未硬化層が少なくなり、靱性が低下し十分な強度が確保できなくなる。また、ケージ28の継手開口側の端部と継手奥側の端部とで、肉厚差が大きいと加工性の悪化も懸念される。
【0059】
また、作動角が0°のときにおいて、外輪23のトラック溝22の曲率中心O1とボール中心Qとを結んだ直線L1と、継手中心Oとボール中心Qとを結んだ直線Lとの成す角度θ1、及び内輪26のトラック溝25の曲率中心O2とボール中心Qとを結んだ直線L2と、継手中心Oとボール中心Qとを結んだ直線Lとの成す角度θ2をそれぞれ前記オフセット角(θCAGE)と略同一に設定される。なお、角度θ1及び角度θ2は、トラックオフセット角(θTRACK)と呼ぶ。この実施形態では、外輪23のトラック溝22の曲率中心O1をケージ28の外球面28aの曲率中心O3よりも反継手中心側に配置するとともに、内輪26のトラック溝25の曲率中心O2を、ケージ28の内球面28bの曲率中心O4よりも反継手中心側に配置している。このため、この実施形態では、トラックオフセット角(θTRACK)がケージオフセット角(θCAGE)よりも僅かに大きく設定されている。
【0060】
本発明では、ボールの数が6個であるので、比較的大きなボールを使用することができる。このため、ボール1個の許容できるトルク容量が確保でき、小さいPCDに配置、つまり外径をコンパクトにすることができる。ケージ28のポケット間の柱部の肉厚も厚くすることができるので、高作動角時の強度を確保できる。
【0061】
雌セレーション66は継手開口側において省略され、その省略部に周方向切欠部84を形成した。それによりファイバーフローの継手開口側切断部におけるセレーションを無くすことができる。このため、内輪26の継手開口側ファイバーフロー切断部における応力緩和を図ることができ、内輪26の強度を向上させることができる。従って、従来と同じ緒言のシャフトを適用することができ、従来品との共用が可能となって、コストの低減を図ることができる。
【0062】
図1に示す周方向切欠部84を有さない固定式等速自在継手と、図1に示す固定式等速自在継手と同一タイプ及び同一サイズであって、周方向切欠部84を有さない従来の固定式等速自在継手とに対して、作動角46°でFEM解析(有限要素法)によって、内輪の開口側薄肉部内径の応力値を調べた。この結果、周方向切欠部84を有さない固定式等速自在継手が、周方向切欠部84を有さない固定式等速自在継手に対して70%程度低減した。
【0063】
ところで、tCAGE/PCRBALLが0.20未満となると、外径が大きくなり、コンパクト化が困難になったり、ケージの肉厚が薄くなったり、大角度時の必要継手強度が確保することが困難となる。一方、tCAGE/PCRBALLが0.23を越えると、内径セレーション部(シャフト嵌合部)における内輪(内側継手部材)の肉厚が薄くなり、大角度時(高作動角時)の必要継手強度の確保が困難になったり、内輪26及び外輪23の球面が小さくなることにより、許容可能なトルクレベルが低下したりする。この結果、ボール27が内輪26及び外輪23のトラック溝25、22のエッジ部に乗り上げ易くなり、耐久性が著しく低下してしまうおそれがある。
【0064】
このため、0.20≦tCAGE/PCRBALL≦0.23とすることによって、小型化及びケージ強度の向上を図ることができ、しかも、ボール27のトラック溝のエッジ部への乗り上げを防止できる。すなわち、本発明によれば、コンパクト化(小型化)を可能とするとともに、小型化してもケージ28の強度を確保でき、さらには、高角捩りトルク負荷時のケージ損傷を防止できて、高角強度の向上を図ることができる。このため、よりコンパクトなフォルムにて継手強度耐久性を従来品(8個ボールの固定式ジョイント)と同等以上に確保することができる。
【0065】
また、ボール27のピッチ円直径PCDBALLとボール27の直径との比を、3.0以上3.3以下としたことによって、等速自在継手としての強度・耐久性を確保することができ、高精度の等速自在継手を提供できる。ピッチ円直径PCDBALLとボール27の直径との比をr1としたときに、r1<3.0であると、ボール27の直径が大きい場合は内輪26の肉厚が薄くなりすぎて、強度の点で懸念が生じ、ボール27のピッチ円直径が小さい場合は内・外輪26、23とボール間の面圧が大きくなり、耐久性の点で懸念が生じる。逆に、r1>3.3であると、ボール27の直径が小さい場合はボール27の負荷容量が小さくなり、耐久性の点で懸念が生じ、ボール27のピッチ円直径が大きい場合は、外輪23の肉厚が薄くなりすぎて、強度の点で懸念が生じたり、或いは外輪外径が大きくなり、コンパクト化が達成できない。
【0066】
外輪23の外径とボール27の直径との比を、4.6以上4.8以下とするのが好まし
い。これによって、一層強度・耐久性を確保できる。外輪23の外径とボール27の直径との比r2としたときに、r2<4.6であると、ボール27の直径が大きい場合は外輪23の肉厚が薄くなりすぎて、強度の点で懸念が生じ、外輪23の外径が小さい場合は内・外輪26、23とボール27間の面圧が大きくなり、耐久性の点で懸念が生じる。逆に、r2>4.8であると、ボール27の直径が小さい場合はボールの負荷容量が小さくな
り、耐久性の点で懸念が生じ、外輪23の外径が大きい場合は、コンパクト化が達成できない。
【0067】
ケージ28のオフセット角度θ3及びθ4を、2.7°以上5.7°以下に設定することによって、ケージ28の継手開口側の端部の肉厚を、他の部分に比べて厚く成形することができ、継手の小型軽量化を図るためにケージ28を薄く成形しても、ケージ28の継手開口側の端部は、継手の高作動角回転時に付与される負荷に耐え得る強度を確保することができる。ケージ28のオフセット角θ3及びθ4を、2.7°以上5.7°以下に設定することによって、ケージ28の継手開口側の端部の肉厚が、他の部分に比べて厚く成形される。ケージ28のオフセット角θ3、θ4が、2.7°未満であると、ケージ28の継手開口側の端部が薄くなり、十分な強度が確保できない。また、5.7°を越えると、ケージ28の継手奥側の端部の肉厚が極端に薄くなる。ケージの製造工程において一般的に熱処理を施すが、ケージ28の肉厚が極端に薄くなると、その肉厚の薄い部分では熱処理による未硬化層が少なくなり、靱性が低下し十分な強度が確保できなくなる。また、ケージ28の継手開口側の端部と継手奥側の端部とで、肉厚差が大きいと加工性の悪化も懸念される。
【0068】
また、本発明では、ケージ28のオフセット量kをトラック溝22、25のオフセット量と略同一として大きくしている。このため、継手奥側のトラック溝深さが浅くなるのを防止できるとともに、開口側のケージ28の肉厚(径方向厚さ)を大きくすることができる。このため、高角時のボール27がトラックエッジに乗り上げるのを防止でき、エッジに過大な応力が作用することがなくなる。すなわち、高角時の捩りトルク負荷容量の低下を防ぎ、高角耐久寿命の向上(改善)や高角時の内輪26と外輪23のトラック溝25、22の塑性変形に起因する破損強度の向上(改善)を図ることができる。
【0069】
図6は他の実施形態を示し、この場合のケージ28は、周方向間隔が大の一対の長ポケット30と、周方向間隔が小の一対の短ポケット31との4個を有している。そして、一対の長ポケット30を周方向に沿って180度ずらせるとともに、一対の短ポケット31を周方向に沿って180度ずらせて、長ポケット30と短ポケット31とを周方向に沿って交互に配置している。このため、ポケット間に設けられる柱部(ケージ柱部)33が4個となる。そして、長ポケット30には2個のボール27を収容するとともに、短ポケット31には1個のボール27を収容する。
【0070】
長ポケット30に収容される2個のボール27のPCD上のピッチ角eを60度よりも小さくするとともに、その他のボール27のピッチ角dを60度よりも大きくしている。このため、図7に示すように、ケージ28の長ポケット30に対応する外輪23の2つのトラック溝間肩幅寸法fを、ケージ軸方向におけるポケット幅gよりも小さく設定している。すなわち、内輪26及び外輪23の各トラック溝25、22を、周方向不等ピッチに配設すると共に、外輪23のトラック溝相互間に配設された複数の内球面のうち、最小の前記ピッチ内に配設された内球面の開口側端部の周方向長さ(トラック溝間肩幅寸法)fを、ケージ28のポケット幅gより小さく設定している。さらに、図8に示すように、長ポケット30の周方向間隔hよりも内輪26の軸方向長さiを短くしている。
【0071】
ところで、長ポケット30には、図7と図8に示すように、長ポケット30の相対面する長辺35a、35bの長手方向中央部に、長ポケット内方側へ張り出す膨出部36、36を設けて、長ポケット30にスリット37を介して連設される2つのボール収容部38、38を形成している。また、膨出部36、36は、その外面がケージ28の外球面28aと同一曲率半径の連続した球面であり、内面がケージ28の内球面28bと同一曲率半径の連続した球面である。なお、この実施形態では、膨出部36の形状がケージ外周側からみて側辺が円弧面とされた台形状である。このため、各膨出部36の突出端面36aは、ケージ周方向に沿って延びる平面であり、所定間隔Mをもって対向(対面)している。
【0072】
所定間隔Mとしては、図8に示すように、組立時に内輪26の肩部47(隣合うトラック溝間の突部)に干渉しない寸法とする。また、膨出部36の大きさや形状としても、作動角を付けて回転したとき等において、ボール収容部38に収容されるボール27の動きを阻害しないようにする必要がある。なお、膨出部36としては、長ポケット30を形成する際に、機械加工や塑性加工で形成することができる。
【0073】
このように、周方向間隔が大の一対の長ポケット30と、周方向間隔が小の一対の短ポケット31との4個を有し、一対の長ポケット30を周方向に沿って180度ずらせるとともに、一対の短ポケット31を周方向に沿って180度ずらせて、長ポケット30と短ポケット31とを周方向に沿って交互に配置したことによって、ケージ28のポケット間の柱部33の数を4つとすることができ、1本あたりの柱部33の周方向長さを長くすることができる。
【0074】
これにより、各ケージ柱部33の剛性を大きくすることができるので、小さなPCDに大きなボール27を配置することができ、負荷容量を低下させずにコンパクト化が可能となる固定式等速自在継手として小型化を図ることができ、しかも、高角度時の捩りトルク負荷に対して、ケージ28の破損を防止できる。また、長ポケット30を有することによって、内輪26のケージ28への組込みが容易となる。すなわち、内輪26のケージ28への組み込みは、図8と図9に示すように、内輪26の一の肩部47を一の長ポケット30に落とし込むことになるから、肩部47を落とし込むポケット29に、長ポケット30を用いることによって、その作業性の向上を図ることができる。
【0075】
長ポケット30に膨出部36、36を設けることによって、この長ポケット30を構成するための枠(窓枠)の剛性を向上できる。これによって、窓枠の剛性不足によるケージ28の変形を防止でき、この継手の作動性を損なわずに済み、長期に亘って安定した作動性を発揮することができる。
【0076】
さらに、継手開口側の長辺35a側の膨出部36によって、作動角をとる際に、外輪23の開口(入口)のインローエッジ部と、ケージ外球面28a側のポケットエッジ部との干渉を遅らせたり、無くしたりすることができ、継手奥側の長辺35bの膨出部36によって、内輪26の外球面24の奥側エッジ部とケージ内球面28b側のポケットエッジ部との干渉を遅らせたり、無くしたりすることができる。このため、ケージ28の外側継手部材の内球面21や内側継手部材の外球面24に案内しやすくなり、継手の作動性が悪化するのを防止でき、窓枠の剛性向上による継手の作動性の悪化防止と相俟って、ケージ28の欠けや割れを有効に防止できる。
【0077】
このように前記図6等に示す固定式等速自在継手では、内輪26及び外輪23の各トラック溝25,22を、周方向不等ピッチに配設すると共に、外輪23のトラック溝相互間に配設された複数の内球面のうち、最小のピッチ内に配設された内球面の開口側端部の周方向長さfを、ケージ28のポケット29の幅gより小さく設定している。
【0078】
このように構成することによって、外輪23にケージ28を組み込む際は、ケージ28のポケット29を、外輪23の最小のピッチ内に配設された内球面に対向させて組み込むことになる。この場合、最小のピッチ内に配設された内球面の開口側端部の周方向長さが、対向するケージ28のポケット29の幅より小さく設定されているので、内球面がケージ28の外周面に干渉することなく、ケージ28を外輪23に容易に組み込むことができる。
【0079】
また、内輪26及び外輪23の各トラック溝相互間のピッチのうち、継手中心に対して対称に位置する2つのピッチの位相を60°より小さく設定すると共に、残りの4つのピッチの位相を60°より大きく設定し、前記60°より小さい位相のピッチ内に配設された外輪23の内球面の開口側端部の周方向長さfを、前記ケージ28のポケット29の幅より小さく設定していることになる。
【0080】
このような場合、ケージ28を外輪23に容易に組み込むことができる。また、ポケット29の幅より小さい周方向長さの内球面(開口側端部)が、継手中心に対して対称に配置されるので、一層組み込みやすいものとなる。
【0081】
前記実施形態の長ポケット30は図10(a)に記載のように、膨出部36、36がいわゆる台形形状であったが、図10(b)、図10(c)、図10(d)のような形状であってもよい。すなわち、図10(b)の膨出部36、36は、膨出部36の突出端面36aのコーナ部がアール状とされ、図10(c)の膨出部36、36は、基部コーナ部がなだらかでない台形状とされ、図10(d)の膨出部36、36は矩形状とされている。
【0082】
この図10(b)、図10(c)、図10(d)のような形状の長ポケット30を有するケージ28であっても、図10(a)のケージ28と同様の作用効果を奏する。
【0083】
また、図11に示すように、一対の膨出部36、36のうちいずれか一方を省略してもよい。図11(a)では膨出部36を継手開口部側の長辺35a側にのみ設け、図11(b)では膨出部36を継手開口部側の長辺35b側にのみ設けている。
【0084】
図11(a)に示すものでは、外輪23の開口(入口)のインローエッジ部と、ケージ外球面28a側のポケットエッジ部との干渉を遅らせたり、無くしたりすることができ、図11(b)に示すものでは、内輪26の外球面24の奥側エッジ部とケージ内球面28b側のポケットエッジ部との干渉を遅らせたり、無くしたりすることができる。
【0085】
また、図12と図13に示すように、長ポケット30に膨出部36を設けない長円孔としてもよい。このようなものでは、膨出部36に基づく作用効果を享受できないが、内輪26のケージ28への組込性向上や軽量性向上を達成できる。
【0086】
ところで、長ポケット30を有するケージ28を製造する場合、周方向に沿って60°ピッチでポケットが形成された既存のケージにおいて、周方向に隣合うポケット間の柱部を除去すればよい。すなわち、ケージ中心に関して180°反対方向の一対の柱部を除去すればよい。この除去方法としては、例えば、プレス加工やミーリング加工等で行うことができる。図10や図11に示すケージ28の場合、除去すべき柱部の一部を残しているが、図12と図13に示すケージ28では除去すべき柱部の全体(全部)を除去している。なお、長ポケット30を形成する場合、大ピッチ内に配設された柱部を除去してもよいが、ケージ28の強度を確保するためには、小ピッチ内に配設される柱部を除去して、大ピッチ内に配設された太い柱部を残す方が望ましい。
【0087】
このように、このケージ28としては、既存のケージにおいて、柱部を除去することによって簡単に成形することができ、しかも、この柱部の除去としては、プレス加工であっても、ミーリング加工であってもよく、これらの種々の塑性加工にて安定して成形することができる。
【0088】
ケージ28に2個の前記トルク伝達ボール27を保持可能な長ポケット30を形成すると共に、長ポケット30の周方向長さhを、内輪26の幅iより大きく設定したものであれば、内輪26をケージ28に組み込む際の組み込み性の向上を図ることができる。
【0089】
図14〜図16に示すように、内輪26の一つのトラック溝25(25A)の奥側端部(継手奥側の末端縁部)に切欠部45を設けてもよい。この場合の切欠部45は、奥側端と内輪端面46とのコーナ部に形成されるテーパ面にて構成される。なお、この切欠部45は傾斜部から構成されている。この場合、機械加工による成形であっても、塑性加工による成形であってもよい。
【0090】
ところで、内輪26をケージ28に組み込むに際しては、ケージ28の軸線に対して内輪26をその軸線が垂直になるように配置した状態(ケージ28に対して内輪26を90°回転させた状態)とする。その状態で、図17に示すように、その内輪26の外球面24の一部(周方向に隣合うトラック溝25間の突部47A)をケージ28のポケット29(長ポケット30)に落とし込む。すなわち、切欠部45が形成されたトラック溝25Aを、ポケット30よりも薄肉側の側枠部48に嵌合させて、トラック溝25Aよりも反時計廻り側の突部47Aをケージ28のポケット30に落とし込んで、切欠部45の底を中心に矢印X方向に内輪26を回転させることになる。この際、この回転半径Cを、切欠部45を有さない回転半径B(従来品の回転半径)よりも小さくすることができる。ここで、この回転半径Cは、切欠部45の底中心部と、このトラック溝25Aと180度反対のトラック溝25Bの一方の開口縁50との間の寸法である。
【0091】
このため、図17にケージ28のインロー径をAとし、内輪26の回転半径を従来品をBとし、本発明品をCとしたときには、B>Cであるので、(A−B)<(A−C)となる。これにより、従来品よりも本発明品のインロー径Aを小さくすることができ、薄肉側の側枠部48の厚さを大きくすることができる。
【0092】
内輪26がケージ28に嵌入された後は、内輪26をケージ28に対して90°回転させて、ケージ28の軸線に内輪26の軸線を一致させて正規の姿勢に配置する。これによって、内輪26をケージ28内に組み込むことができる。
【0093】
トラック溝25の奥側端部に切欠部45を設けたので、ケージ28に組み込む際に、この切欠部45を起点として、内輪26を回転させることができ、内輪26の回転半径を小さくすることができる。このためケージ28のインロー内径と、内輪26との間でより大きなスペースを確保することができ、その分、ケージ28のインロー径Aを小さく設定できる。すなわち、切欠部45を形成した内輪26のトラック溝25を、ケージ28の入口部に跨がせた状態では、図18に示すように、切欠部45が入口部(インロー部)に接近ないし接触している。つまり、切欠部45を有さない従来の内輪に比べて、切欠部45を有する内輪26は、さらに下方に落とし込んで挿入することができる。これにより、内輪26の上端面と、入口部との間の隙間Sを大きく確保することができるので、組み付けが容易となる。
【0094】
これによって、ケージ28のインロー側の断面積を拡大させることができ、ケージ28の薄肉の側枠部48の剛性の向上を図ることができると共に、球面接触面積を確保することができるので、接触面圧の増加を防止し、発熱や耐久性の低下を回避することができ、さらにはケージ28の変形や強度の低下も回避できる。すなわち、内輪26の負荷容量や球面面積を減少させることなく、ケージ28の剛性を向上させることができる。また、ケージ28の内球面28bの面積も拡大できるので、内輪26の外球面24との接触面積を拡大でき、剛性向上に加え、耐久性の安定化という利点もある。
【0095】
切欠部45の大きさとしては、ケージ28への内輪26の組み込み時における内輪26の回転半径を小さくできる範囲で変更できるが、大きすぎると、内輪26が強度不足となったり、トラック溝25のボール転動範囲が小さくなったりし、また、小さすぎると、回転半径をあまり小さくできない。
【0096】
次に図19から図21は、全トラック溝25の奥側端部に切欠部45を形成したものである。このため、この内輪26であっても、前記図14から図16に示す内輪26と同様、組み込む際に、この切欠部45を起点として、内輪26を回転させることができ、内輪26の回転半径を小さくすることができる。このため、この図19から図21に示す内輪26は、図12から図14に示す内輪26と同様の作用効果を奏する。
【0097】
特に、全トラック溝25の奥側端部に切欠部45を形成しているので、この内輪26をケージ28に組み込む際に、いずれの突部(肩部)47をポケット30に挿入してもよい。このため、組み込み性の向上を図ることができる利点がある。
【0098】
ところで、前記各実施形態では、切欠部45を、開口側トラック溝25b側から内輪端面46側に向かって順次縮径するテーパ面にて形成していたが、切欠部45としては図22(a)および図22(b)に示す形状であってもよい。図22(a)に示す切欠部45は凹アール状とされ、図22(b)に示す切欠部45は凸アール状とされている。
【0099】
この図22(a)および図22(b)に示す切欠部45であっても、組み込む際に、この切欠部45を起点として、内輪26を回転させることができ、内輪26の回転半径を小さくすることができる。また、図23(a)および図23(b)に示すように、この切欠部45はトラック溝端の一部(図例では底部)に形成されていても良い。
【0100】
切欠部45としては、図示省略するが、図14から図16に示すもの、図22(a)および図22(b)に示すもの、又は図23(a)および図23(b)に示すもの以外、例えば段差部等で構成してもよい。このような段差部等の切欠部45であっても、切欠部45としての機能を発揮する。
【0101】
図24では、シャフト65の雄スプライン66が、谷部66aをそのままシャフト65の外周面に抜いたタイプ(切抜けタイプ)である。この場合も、内輪26の雌セレーション61は継手開口側において省略され、その省略部に、底面83が雌セレーションの大径よりも大きな円筒形状となる周方向切欠部84を形成している。
【0102】
また、継手奥側には抜け止め手段Wが設けられている。この場合の抜け止め手段Wは、シャフト65の雄スプライン66に設けられる周方向溝90と、内輪26の雌スプライン61に設けられる周方向溝91と、周方向溝90、91に係合する止め輪92とを備える。すなわち、抜け止め手段Wは、止め輪92が周方向溝90、91に係合するものであるので、シャフト65は、内輪26に対して軸心方向の矢印E1、E2方向にスライドすることを規制している。
【0103】
図25に示すものでは、図24に示すものと同様、シャフト65の雄スプライン66が切抜けタイプであって、内輪26の継手開口側にシャフト65の位置決め手段W1を設けるとともに、内輪26の継手奥側にシャフト65の抜け止め手段Wを設けている。
【0104】
抜け止め手段Wは、前記図5に示す抜け止め手段Wと同様、シャフト65の周方向溝67と、内輪26の切欠部69と、この周方向溝67及び切欠部69に係合する止め輪68とで構成される。また、位置決め手段W1は、シャフト65に装着されるリング体からなるストッパ93を備え、このストッパ93が内輪26の開口側の端面93aに当接する。
【0105】
すなわち、シャフト65が内輪26に対して矢印E1方向に移動する方向の外力が作用した場合、シャフト65のストッパ93が内輪26の開口側の端面93aに当接しているので、この矢印E1方向の移動が規制される。また、シャフト65が内輪26に対して矢印E2方向に移動する方向の外力が作用した場合、止め輪68が切欠部69に係合しているので、この矢印E2方向の移動が規制される。
【0106】
この図24と図25の等速自在継手であっても、シャフト65の雌セレーションは継手開口側において省略され、その省略部に周方向切欠部を形成したので、ファイバーフローの継手開口側切断部におけるセレーションを無くすことができる。このため、図1に示す等速自在継手と同様の作用効果を奏する。
【0107】
次に、図26は別の実施形態を示し、この場合、内輪26および外輪23のトラック溝底が円弧部とテーパ部とを備えたものである。すなわち、トラック溝底が円弧部となる奥側トラック溝22cと、トラック溝底が奥側から開口側に向かって外径側へ傾斜する開口側トラック溝22dとからなる。奥側トラック溝22cは、その曲率中心O1を継手中心Oから軸方向に外輪23の開口側にずらしている。また、内輪26のトラック溝25は、トラック溝底が開口側から奥側に向かって外径側へ傾斜する奥側トラック溝25cと、トラック溝底が円弧部となる開口側トラック溝25dとからなる。開口側トラック溝25bの曲率中心O2を継手中心Oから軸方向に外輪23の奥側トラック溝22aの曲率中心O1と反対側の奥側に等距離kだけ離して設けている。
【0108】
この場合も、ケージ28の外球面28aの曲率中心O3とケージ28の内球面28bの曲率中心O4とを、継手中心Oに対して等距離だけ軸方向に逆向きにオフセットさせ、このケージ28のオフセット量kをトラック溝22、25のオフセット量k2と略同一としている。
【0109】
この内輪26においても、雌セレーション61は継手開口側において省略され、その省略部に、底面83が雌セレーション61の大径よりも大きな円筒形状となる周方向切欠部84を形成している。なお、図26の固定式等速自在継手の他の構成は前記図1に示す固定式等速自在継手と同様であり、同一部材には図1と同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0110】
このため、図26に示す固定式等速自在継手においても、図1に示す固定式等速自在継手と同様の作用効果を奏する。図1においては、内輪26および外輪23のトラック溝底が円弧部とストレート部とを備えたアンダーカットフリー型を採用することによって、継手作動角の高角化を図ることができる。これに対して、図26に示す固定式等速自在継手に示すように、トラック溝底が円弧部とテーパ部とを備えたものであれば、より一層の高角化が可能である。
【0111】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、前記実施形態では、曲率中心O1と曲率中心O3とは僅かにずれた位置に配置されるとともに、曲率中心O2と曲率中心O4とは僅かにずれた位置に配置されているが、曲率中心O1と曲率中心O3とが同一位置であっても、曲率中心O2と曲率中心O4とが同一位置であってもよい。また、曲率中心O1と曲率中心O3とがずれたり、曲率中心O2と曲率中心O4とがずれたりする場合、そのずれ量は、任意に設定できるが、オフセット量kとずれ量(k−k2)との比は(k−k2)/k≦0.3と設定するのが好ましい。(k−k2)/k>0.3になると、図27に示す従来の固定式等速自在継手と差異が無くなって、継手奥側のトラック溝深さが浅くなるとともに、開口側のケージ28の肉厚を大きくできなくなり、ジョイントの必要強度を下回る。
【0112】
長ポケット30の周方向間隔hとしても、内輪26へのケージ28の組込み性の向上が図れて、しかも、柱部33の剛性が低下しない範囲で種々設定できる。さらに、トラック溝間肩幅寸法fやケージ28のケージ軸方向におけるポケット幅g等も、ケージ28の外輪23への組込み性等を考慮して設定できる。なお、膨出部36の突出端面36aを平面とすることなく、曲面であってもよい。
【0113】
図26に示す固定式等速自在継手において、ケージ28に図10〜図13に示すような長ポケット30を有するものを用いてもよい。また、内輪26に図14や図18に示すような切欠部45を有する内輪26を用いてもよい。
【0114】
図6等に示すように、内輪26のトラック溝25及び外輪23のトラック溝22を円周方向に不等ピッチで配設する場合、ボール27の円周方向に不等ピッチで配設されることになる。このため、前記実施形態では、60°未満で配設される2個のボールを一つの長ポケット30に収容させていた。すなわち、60°未満で配設される2個のボール間の柱部を省略した形状となっている。これに対して、この柱部を省略しないようなものであってもよく、この場合、図1に示すように柱部が6個形成されることになり、ケージ全体の強度が向上するとともに、剛性が大となる。
【符号の説明】
【0115】
21 内球面
22 トラック溝
23 外輪
24 外球面
25 トラック溝
26 内輪
27 トルク伝達ボール
28 ケージ
28a 外球面
28b 内球面
29 ポケット
33 柱部
61 雌セレーション
65 シャフト
66 雄セレーション
83 底面
84 周方向切欠部
W 抜け止め手段
W1 位置決め手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内球面に軸方向に延びた複数のトラック溝を形成した外側継手部材と、外球面に軸方向に延びた複数のトラック溝を形成した内側継手部材と、前記外側継手部材のトラック溝と前記内側継手部材のトラック溝との対で形成されるボールトラックに配置される複数のトルク伝達ボールと、前記外側継手部材の内球面と前記内側継手部材の外球面との間に介在すると共に前記トルク伝達ボールを保持するケージを備えた固定式等速自在継手において、
前記内側継手部材の内径面に、挿入されるシャフトの雄セレーションと嵌合する雌セレーションが形成されるとともに、前記雌セレーションは継手開口側において省略され、その省略部に、底面が前記雌セレーションの大径よりも大きな円筒形状となる周方向切欠部を形成したことを特徴とする固定式等速自在継手。
【請求項2】
内側継手部材の継手開口側にシャフトの位置決め手段を設けるとともに、内側継手部材の継手奥側にシャフトの抜け止め手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の固定式等速自在継手。
【請求項3】
内側継手部材の継手奥側にシャフトの抜け止め手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の固定式等速自在継手。
【請求項4】
前記トルク伝達ボールの数を6個とするとともに、前記トルク伝達ボールのピッチ円直径(PCDBALL)と前記トルク伝達ボールの直径(DBALL)との比r1(=PCDBALL/DBALL)を、3.0≦r1≦3.3の範囲に設定することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の固定式等速自在継手。
【請求項5】
前記外側継手部材の外径(DOUTER)と前記トルク伝達ボールの直径(DBALL)との比r2(=DOUTER/DBALL)を、4.6≦r2≦4.8の範囲に設定したことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の固定式等速自在継手。
【請求項6】
継手作動角が0°の状態における、前記ケージの内外球面の曲率中心と前記トルク伝達ボールの中心を結ぶ直線と、前記トルク伝達ボールの中心と継手中心とを結ぶ直線とが成すケージのオフセット角θCAGEを、2.7°≦θCAGE≦5.7°の範囲に設定したことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の固定式等速自在継手。
【請求項7】
ケージのポケット中心位置におけるケージ肉厚をTCAGEとするとともに、作動角が0°のときのボールのピッチ円半径をPCRBALLとし、この比であるTCAGE/PCRBALLを0.20以上0.23以下としたことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の固定式等速自在継手。
【請求項8】
外側継手部材のトラック溝の曲率中心と内側継手部材のトラック溝の曲率中心とを、継手中心に対して等距離だけ軸方向に逆向きにオフセットさせるとともに、ケージの外球面の曲率中心とケージの内球面の曲率中心とを、継手中心に対して等距離だけ軸方向に逆向きにオフセットさせ、このケージのオフセット量をトラック溝のオフセット量と略同一としたことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の固定式等速自在継手。
【請求項9】
内外継手部材の各トラック溝を、周方向不等ピッチに配設すると共に、狭いピッチ内に配設されたケージの柱部を除去したことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の固定式等速自在継手。
【請求項10】
前記内外継手部材の各トラック溝相互間のピッチのうち、2つのピッチの位相を60°以下に設定すると共に、残りの4つのピッチの位相を60°以上に設定したことを特徴とする請求項9に記載の固定式等速自在継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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