説明

固定構造および骨プレートキット

【課題】被固定物に対して傾斜させた状態で目的物に固定されるスクリュを、より確実に被固定物に固定することができ、荷重が高い部位にも適用可能とする。
【解決手段】目的物Aの表面に固定される被固定物1に設けられた下穴6と、該下穴6の周囲に形成されるとともに内周面にプラグ4が締結される雌ねじ7bを有し、かつ、底面7aが円筒内面形状または内球面形状を有する座ぐりと、下穴6を貫通して目的物Aに締結されるスクリュ3に設けられ、座ぐりの底面7aと相補的な形状の肩部8aを有するヘッド8とを備える固定構造を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定構造および骨プレートキットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、骨プレートの固定構造として、テーパねじを有するプレート穴を有し、該プレート穴が周方向に間隔をあけて3つの凹みを有するものが採用されている(例えば、特許文献1参照。)。この固定構造によれば、凹みを隔てて離れた3箇所のテーパねじ部分において、異なるねじ山にスクリュのヘッドに設けた雄ねじを締結することにより、骨プレートに対して任意の方向にスクリュを傾斜させて固定することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−506450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の固定構造では、骨プレートに設けたテーパねじとスクリュのヘッドに設けた雄ねじとの噛み合いは、骨プレートに対するスクリュの傾斜角度が増加するほど悪化し、固定力が低下していくという不都合がある。特に、特許文献1の固定構造では、全周の3分の1未満の領域において1山強のねじ山が確実に係合しているに過ぎず、比較的大きな荷重が加わる大腿骨や頸骨の固定用には適用することができないという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、被固定物に対して傾斜させた状態で目的物に固定されるスクリュを、より確実に被固定物に固定することができ、荷重が高い部位にも適用可能な固定構造および骨プレートキットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、目的物の表面に固定される被固定物に設けられた下穴と、該下穴の周囲に形成されるとともに内周面にプラグが締結される雌ねじを有し、かつ、底面が円筒内面形状または内球面形状を有する座ぐりと、前記下穴を貫通して前記目的物に締結されるスクリュに設けられ、前記座ぐりの底面と相補的な形状の肩部を有するヘッドとを含む固定構造を提供する。
【0007】
本発明によれば、目的物の表面に被固定物を配置し、被固定物に設けられた下穴を貫通してスクリュを目的物に締結していくと、スクリュに設けたヘッドの肩部が下穴の周囲に設けられた座ぐりの底面に突き当たる。座ぐりの底面は円筒内面形状または内球面形状を有しており、肩部は座ぐりの底面と相補的な形状を有しているので、スクリュは肩部と座ぐりの底面とを密着させた状態を維持しつつ被固定物に対する角度を変更することができる。そして、例えば、スクリュのヘッドとプラグとの間に楔形状のスペーサを挟み、あるいは、ヘッドの端面に傾斜面を設けておき、座ぐりの内周面に設けられた雌ねじにプラグを締結していくことにより、プラグによってヘッドを押圧してスクリュを被固定物に対して固定することができる。
【0008】
この場合において、本実施形態によれば、プラグは座ぐりの内周面に設けた雌ねじに全周にわたって、かつ、複数ねじ山にわたって確実に噛み合って締結されるので、十分な固定力を得ることができる。すなわち、被固定物に対して傾斜した状態で目的物に締結されたスクリュを、プラグによってその傾斜した状態で確実に被固定物に固定することができる。
【0009】
上記発明においては、前記目的物が骨であり、前記被固定物が骨プレートであることとしてもよい。
このようにすることで、骨の表面に骨プレートを配置し、骨プレートに設けられた下穴を貫通してスクリュを骨に締結していくと、スクリュに設けたヘッドの肩部が下穴の周囲に設けられた座ぐりの底面に突き当たる。円筒内面と円筒面、内球面と球面のように相互に相補的な形状を有するヘッドの肩部と座ぐりの底面とは、骨プレートに対して傾斜した方向にスクリュを締結したとしても、相互に密着させ、プラグによってスクリュを骨プレートに対して固定することができる。
【0010】
すなわち、本実施形態によれば、プラグは座ぐりの内周面に設けた雌ねじに全周にわたって、かつ、複数ねじ山にわたって確実に噛み合って締結されるので、十分な固定力を得ることができる。これにより、骨プレートに対して傾斜した状態で骨に締結されたスクリュを、プラグによってその傾斜した状態のままで確実に骨プレートに固定することができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記ヘッドと前記プラグとの間に挟まれるスペーサを備え、該スペーサが、相対的に傾斜する両端面を有する楔形状に形成されていてもよい。
このようにすることで、ヘッドとプラグとの間にスペーサの傾斜方向を調節して挟み、プラグを締結していくだけで、目的物に締結されたスクリュを、プラグによってその傾斜した状態で確実に被固定物に固定することができる。スクリュとしては、長手軸に対して端面が直交するヘッドを有するものを用意すれば足り、楔形状のスペーサの傾斜角度の異なるものを選択することで、被固定物に対するスクリュの傾斜角度を適宜変更することができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記スペーサに半径方向外方に突出する突起が設けられ、前記座ぐりに、前記突起を収容して前記スペーサの前記座ぐりに対する周方向の回転を係止する溝が設けられていてもよい。
このようにすることで、スペーサに設けられた突起を座ぐりの溝に挿入した状態で、座ぐりの雌ねじにプラグを締結していくと、座ぐり内においてスペーサを回転させることなくプラグを締結していくことができる。これにより、スペーサに設けられた傾斜面の方向を変化させずに済むので、所望の方向にスクリュを傾斜させた状態で固定することができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記座ぐりに、半径方向内方に突出する突起が設けられ、前記スペーサに、前記突起を収容して前記スペーサの前記座ぐりに対する周方向の回転を係止する溝が設けられていてもよい。
このようにすることで、スペーサに設けられた溝を座ぐりの突起に位置合わせした状態で、座ぐりの雌ねじにプラグを締結していくと、座ぐり内においてスペーサを回転させることなくプラグを締結していくことができる。これにより、スペーサに設けられた傾斜面の方向を変化させずに済むので、所望の方向にスクリュを傾斜させた状態で固定することができる。
【0014】
また、上記発明においては、前記溝が周方向に間隔をあけて複数設けられていてもよい。
このようにすることで、突起を挿入する溝を変更することにより、スペーサに設けられた傾斜面の方向を変更することができる。スクリュを傾斜させたい方向に合わせて突起を挿入する溝を選ぶだけで、種々の方向に傾斜させた状態でスクリュを固定することができる。
【0015】
また、上記発明においては、楔形状の前記スペーサが厚さ方向に複数重ねて配置されていてもよい。
このようにすることで、厚さ方向に重ねた複数のスペーサの相対的な回転角度を変化させることにより、スクリュの傾斜角度を連続的に変化させることができる。この構造によれば、より自由にスクリュの傾斜角度を設定することができる。
【0016】
また、本発明は、骨の表面に沿って配置され、下穴と、該下穴の周囲に形成され内周面に雌ねじを有する座ぐりとが設けられ、該座ぐりの底面が、円筒内面形状または内球面形状を有する骨プレートと、前記座ぐりの底面と相補的な形状の肩部を有するヘッドを有し、前記骨プレートの下穴を貫通して該骨プレートを前記骨に固定するスクリュと、前記雌ねじに締結されて前記スクリュを固定するプラグと、前記ヘッドと前記プラグとの間に挟まれ、両端面が相対的に傾斜する楔形状に形成されたスペーサとを備える骨プレートキットを提供する。
【0017】
本発明によれば、プレートを骨の表面に沿って配置し、プレートに対して所望の角度で傾斜させたスクリュをプレートの下穴に貫通させて骨に締結していくと、スクリュのヘッドに設けられた肩部が、下穴の周囲に設けられた座ぐりの底面を押圧することで、プレートを骨の表面に固定することができる。座ぐりの底面は円筒内面形状または内球面形状を有し、肩部とはその相補的な形状を有しているので、プレートに対するスクリュの傾斜角度に拘わらず、肩部と座ぐりの底面とを密着させることができる。そして、スクリュのヘッドに設けられた傾斜面が下穴の軸線に直交するように配置した状態で、ヘッドとプラグとの間に傾斜方向を調節したスペーサを配置して、座ぐりの内周面に設けられた雌ねじにプラグを締結していくことにより、スペーサを介してプラグによってスクリュを押圧し、スクリュをプレートに対して傾斜した状態で固定することができる。
【0018】
上記発明においては、前記スペーサに半径方向外方に突出する突起が設けられ、前記座ぐりに、前記突起を収容して前記スペーサの前記座ぐりに対する周方向の回転を係止する溝が設けられていてもよい。
【0019】
また、上記発明においては、前記座ぐりに、半径方向内方に突出する突起が設けられ、前記スペーサに、前記突起を収容して前記スペーサの前記座ぐりに対する周方向の回転を係止する溝が設けられていてもよい。
また、上記発明においては、前記溝が周方向に間隔をあけて複数設けられていてもよい。
また、上記発明においては、楔形状の前記スペーサを厚さ方向に重ねて複数備えていてもよい。
【0020】
また、上記発明においては、前記スペーサを前記プラグに取り付け状態に保持し、前記プラグの締結時に、該プラグに対する前記スペーサの相対回転を許容する仮固定手段を備えていてもよい。
このようにすることで、プラグとスペーサとが仮固定された一体的な状態で取り扱うことができ、取り扱い性を向上することができる。スペーサ付きのプラグを座ぐりの雌ねじに締結していくと、締結の途中においてスペーサの仮固定が外れ、スペーサをスクリュのヘッドの端面に密着させた状態に留めつつ、プラグを締結していくことができる。
【0021】
また、上記発明においては、前記仮固定手段が、接着剤であってもよい。
接着剤によってプラグとスペーサとを簡易に仮固定し、プラグの締結時には、接着剤による仮固定を解除してプラグの独立した回転を許容することができる。
【0022】
また、上記発明においては、前記仮固定手段が、前記プラグの端面の中央に設けられた円筒状の凸部と、前記スペーサに設けられ前記凸部の外径寸法より若干小さい内径寸法を有する嵌合孔とを備え、前記スペーサが、その外縁から前記嵌合孔まで半径方向に切断する切り込みによってCリング状に形成されていてもよい。
このようにすることで、Cリング状のスペーサの嵌合孔をプラグの端面の凸部に嵌合させて、スペーサをプラグに摩擦によって仮固定することができる。
【0023】
また、上記発明においては、前記凸部の基端側に、前記スペーサの嵌合孔の内径寸法より若干小さい外径寸法の小径部が設けられていてもよい。
このようにすることで、小径部を逃げとして使用することができ、スペーサをプラグの端面に密着させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、被固定物に対して傾斜させた状態で目的物に固定されるスクリュを、より確実に被固定物に固定することができ、荷重が高い部位にも適用することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る固定構造および骨プレートキットを示す部分的な縦断面図である。
【図2】図1の骨プレートキットの骨プレートに設けた座ぐりを示す平面図である。
【図3】図1の骨プレートキットのスペーサを示す斜視図である。
【図4】図1の骨プレートキットにより骨プレートを骨に固定する作業を説明する部分的な分解縦断面図である。
【図5】図1の骨プレートキットのプラグの変形例を示す部分的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一実施形態に係る固定構造および骨プレートキットについて図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る固定構造は骨プレート1の固定構造である。本実施形態に係る骨プレートキット2は、図1に示されるように、骨Aの表面に沿って配置される骨プレート1と、該骨プレート1を骨Aに固定するスクリュ3と、スクリュ3を骨プレート1に固定するプラグ4と、該プラグ4とスクリュ3との間に挟まれるスペーサ5とを備えている。
【0027】
本実施形態に係る固定構造は、骨プレート1に設けられた下穴6と、該下穴6に設けられた座ぐり7と、スクリュ3に設けられたヘッド8とにより構成されている。
すなわち、座ぐり7は、下穴6の周囲に設けられているとともに、その底面7aが内球面形状を有している。座ぐり7の内周面には、図2に示されるように、雌ねじ7bが形成されている。座ぐり7には周方向に間隔をあけて、長手方向に延びる2つの溝9が設けられている。
【0028】
スクリュ3は、下穴6を貫通可能な下穴6より若干小さい外径寸法のねじ部3aを備えている。
ヘッド8は、該ネジ部3aの端部に配置され、ねじ部3aより大きな外径寸法を有している。また、ヘッド8は、座ぐり7の底面7aと相補的な形状、すなわち、略半球面形状の肩部8aを有している。
【0029】
また、ヘッド8の端面は、ねじ部3aの長手軸に略直交しており、スクリュ3を長手軸回りに回転させて骨Aに締結する際に工具を挿入するための六角孔10と、プラグ4の先端部を挿入させる凹部11とが設けられている。
プラグ4は、座ぐり7の内周面に設けられた雌ねじ7bに締結される雄ねじ4aと、スクリュ3のヘッド8の凹部11内に挿入される凸部4bとを備えている。
【0030】
スペーサ5は、図3に示されるように、プラグ4の凸部4bにしまり嵌め状態に嵌合する嵌合孔5aを中央に有する円環状の部材であって、その一部が切り欠かれて略C字状に形成されている。切欠5bを設けることによって、スペーサ5はその弾性により、嵌合孔5aに嵌合したプラグ4の凸部4bを締め付けるようになっている。そして、プラグ4とスペーサ5との間の静止摩擦力より大きなトルクが加わると、両者が相対回転させられるようになっている。
【0031】
また、スペーサ5の外面には、周方向の一部に半径方向外方に延びて座ぐり7の溝9に係合する突起5cが設けられている。
スペーサ5は、その厚さ寸法が一方向に漸次変化することにより、一表面に対して他表面が傾斜する傾斜面5dを有する略楔形状に形成されている。
【0032】
このように構成された本実施形態に係る固定構造および骨プレートキット2の作用について説明する。
本実施形態の固定構造および骨プレートキット2を用いて、骨プレート1を骨Aの表面に固定するには、骨プレート1を骨Aの表面に沿って配置し、骨プレート1に設けられた下穴6を貫通して配置したスクリュ3の六角孔10に工具(図示略)を挿入し、スクリュ3を長手軸回りに回転させることにより、スクリュ3を骨Aに締結していく。
【0033】
この際、骨プレート1に対してスクリュ3が予め定められた傾斜角度、すなわち、使用しようとしているスペーサ5の楔形状の傾斜角度となるように、スクリュ3を下穴6に貫通させ締結していく。
スクリュ3の骨Aへの締結が進行していき、ヘッド8の肩部8aが座ぐり7の底面7aに突き当たると、肩部8aによって座ぐり7の底面7aが押圧されることにより、骨プレート1が骨Aの表面の方向に押し付けられていき、骨プレート1が骨Aに固定される。
【0034】
座ぐり7の底面7aは内球面形状に形成され、スクリュ3の肩部8aは座ぐり7の底面7aと相補的な半球面形状を有しているので、骨プレート1に対するスクリュ3の傾斜角度に拘わらず、スクリュ3の肩部8aを座ぐり7の底面7aに密着させることができる。
この状態で、スクリュ3のヘッド8の端面8bは、座ぐり7の軸線に対して所定の傾斜角度で傾斜して配置されている。
【0035】
この後に、図4に示されるように、スペーサ5の嵌合孔5aに凸部4bを嵌合させてスペーサ5と一体化させられた状態のプラグ4を座ぐり7に設けられた雌ねじ7bに締結する。この際に、スペーサ5に設けられた突起5cが、座ぐり7に設けられた溝9内に配置されるように挿入してから、締結を開始する。プラグ4にトルクを加えて回転させると、スペーサ5の回転は溝9に係合した突起5cによって制限されるので、プラグ4とスペーサ5との間にトルクが加わり、トルクが両者の静止摩擦力を超えた時点で、スペーサ5に対してプラグ4が回転させられる。
【0036】
スペーサ5に設けた突起5cは溝9内に収容されているので、スペーサ5は座ぐり7に対してその回転位置を一定に保持されたまま、深さ方向に押されていき、スクリュ3のヘッド8の端面8bに密着させられる。
スペーサ5はヘッド8の端面8bの傾斜角度と同じ傾斜角度の楔形状に形成されているので、ヘッド8の端面8bに密着させられると、ヘッド8の端面8bの傾斜を吸収して、スペーサ5の表面が座ぐり7の軸線に対して直交する方向に配されるようになる。
【0037】
この状態で、さらにプラグ4を締結していくと、締結とともにプラグ4からスペーサ5に対して軸方向に押圧力が加えられ、スペーサ5を介して密着しているスクリュ3のヘッド8を軸方向に押圧するようになる。これにより、スクリュ3が骨プレート1に対して傾斜した状態で骨プレート1に固定される。
【0038】
このように本実施形態に係る固定構造および骨プレートキット2によれば、プラグ4を座ぐり7の雌ねじ7bにしっかりと締結するので高い固定力でスクリュ3を骨プレート1に固定することができる。従来のように、スクリュ3と雌ねじ7bのねじ山を掛け違えることによって骨プレート1に対してスクリュ3を傾斜させる場合と比較して、高い固定力を発生することができるという利点がある。これにより、比較的大きな荷重が加わる大腿骨や頸骨の固定用にも適用することができる。
【0039】
また、本実施形態に係る固定構造および骨プレートキット2によれば、楔形状のスペーサ5によって、スクリュ3とプラグ4との間の隙間を埋めるので、骨プレート1に対してスクリュ3がぐらつかないように固定することができる。また、使用するスペーサ5の傾斜角度を変更することにより、骨プレート1に対するスクリュ3の傾斜角度を種々設定することができる。
【0040】
また、スペーサ5に設けた突起5cを座ぐり7に設けた溝9に係合させることにより、プラグ4の締結中にスペーサ5の位置ずれが発生してしまうことを防止できる。また、溝9を周方向に2カ所に設けたので、突起5cを係合させる溝9を変更することにより、骨プレート1に対するスクリュ3の傾斜方向を変更することができる。
【0041】
また、本実施形態においては、スペーサ5に設けた嵌合孔5aに切欠5bを設けて略C字状に形成したので、スペーサ5の弾性によってプラグ4の凸部4bを締め付けて、スペーサ5をプラグ4に一体化させることができる。これにより、スペーサ5を一体化したプラグ4を単一部品として取り扱うことが可能となり、取り扱い性を向上することができる。
【0042】
なお、本実施形態においては、周方向に間隔を空けて2カ所に溝9を設けたが、これに代えて、1カ所に設けてもよいし、3カ所以上に設けることにしてもよい。また、スクリュ3のヘッド8の端面8aにスペーサ5を回転しないように固定できれば、溝9および突起5cを設けなくてもよい。
【0043】
また、座ぐり7の内周面に溝9を設け、スペーサ5に突起5cを設けることとしたが、これに代えて、座ぐり7に半径方向内方に突出する突起を設け、スペーサ5に該突起を係合させる切欠を設けることにしてもよい。この場合、スペーサ5に設ける切欠については、周方向に間隔を空けて複数設けることが好ましい。
【0044】
また、本実施形態においては、スクリュ3の傾斜角度に一致する傾斜角度を有する単一のスペーサ5を使用して、スクリュ3のヘッド8の端面8aとプラグ4との隙間を埋めることとしたが、これに代えて、2枚の楔形状のスペーサ5を重ねて使用することにしてもよい。このようにすることで、2枚のスペーサ5の相対的な位相を変化させることで、傾斜角度を連続的に変更することができる。したがって、骨プレート1に対するスクリュ3の傾斜角度を連続的に調節することが可能となり、より柔軟にスクリュ3の角度を選択して骨プレート1をより確実に固定することができる。スペーサ5は3枚以上用いてもよい。
【0045】
また、本実施形態においては、スペーサ5の嵌合孔5aによってプラグ4の凸部4bを締め付けることで、スペーサ5をプラグ4に一体化させたが、これに代えて、図5に示されるように、凸部4bにスペーサ5の嵌合孔5aより小さい外径寸法の小径部4cを設け、該小径部4cに遊びを有してスペーサ5を嵌合させることにしてもよい。これにより、プラグ4とスペーサ5とを一体的に構成しつつ、プラグ4に対するスペーサ5の自由な回転を許容し、取り扱い性をさらに向上することができるという利点がある。
【0046】
また、スペーサ5をプラグ4に摩擦によって取り付ける方法や小径部4cに嵌合させて取り付ける方法に代えて、接着材によって取り付けることにしてもよい。接着材としては、スペーサ5とプラグ4との間に所定のトルクがかかったときに、接着状態を解除してスペーサ5に対するプラグ4の自由な回転を許容する程度の接着力を有するものが好ましい。
【0047】
また、スペーサ5によって傾斜面5dを構成することとしたが、これに代えて、スクリュ3のヘッド8の端面8bに一体的に傾斜面5dを設けることにしてもよい。また、スクリュ3のヘッド8の端面8bにスペーサ5を接着材により仮固定することにしてもよい。この場合、スペーサ5には突起5cを設けない。
【0048】
また、本実施形態においては骨プレート1の固定構造およびこの固定構造を有する骨プレートキット2を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、他の任意の被固定物を目標物の表面に固定する場合の固定構造として利用することにしてもよい。
また、座ぐり7の底面として内球面状のものを例示したが、これに代えて、円筒内面状のものを採用してもよい。この場合、ヘッド8の肩部8aは円筒内面状の底面7aと相補的な形状、すなわち半円筒面を有する形状をしていればよい。このようにすることで、円筒内面の周方向に沿って一方向に、骨プレート1に対するスクリュ3の角度を変化させることができる。
【0049】
また、スクリュ3の軸線を座ぐり7の軸線に対して傾斜して固定する場合について例示したが、これに代えて、スクリュ3の軸線を座ぐり7の軸線に対して傾斜させずに配置することもできる。その場合には、スペーサ5としては傾斜を有しないものを使用すればよい。あるいは、スペーサ5を使用せずにプラグ4によって直接スクリュ3を押圧してもよい。
【符号の説明】
【0050】
A 骨(目的物)
1 骨プレート(被固定物)
3 スクリュ
4 プラグ
4b 凸部
4c 小径部
5 スペーサ
5a 嵌合孔(仮固定手段)
5b 切欠(切り込み)
5c 突起
5d 傾斜面
6 下穴
7 座ぐり
7a 底面
7b 雌ねじ
8 ヘッド
8a 肩部
8b 端面
9 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的物の表面に固定される被固定物に設けられた下穴と、
該下穴の周囲に形成されるとともに内周面にプラグが締結される雌ねじを有し、かつ、底面が円筒内面形状または内球面形状を有する座ぐりと、
前記下穴を貫通して前記目的物に締結されるスクリュに設けられ、前記座ぐりの底面と相補的な形状の肩部を有するヘッドとを備える固定構造。
【請求項2】
前記目的物が骨であり、前記被固定物が骨プレートである請求項1に記載の固定構造。
【請求項3】
前記ヘッドと前記プラグとの間に挟まれるスペーサを備え、
該スペーサが、相対的に傾斜する両端面を有する楔形状に形成されている請求項1に記載の固定構造。
【請求項4】
前記スペーサに半径方向外方に突出する突起が設けられ、
前記座ぐりに、前記突起を収容して前記スペーサの前記座ぐりに対する周方向の回転を係止する溝が設けられている請求項3に記載の固定構造。
【請求項5】
前記座ぐりに、半径方向内方に突出する突起が設けられ、
前記スペーサに、前記突起を収容して前記スペーサの前記座ぐりに対する周方向の回転を係止する溝が設けられている請求項3に記載の固定構造。
【請求項6】
前記溝が周方向に間隔をあけて複数設けられている請求項4または請求項5に記載の固定構造。
【請求項7】
楔形状の前記スペーサが厚さ方向に複数重ねて配置されている請求項3に記載の固定構造。
【請求項8】
骨の表面に沿って配置され、下穴と、該下穴の周囲に形成され内周面に雌ねじを有する座ぐりとが設けられ、該座ぐりの底面が、円筒内面形状または内球面形状を有する骨プレートと、
前記座ぐりの底面と相補的な形状の肩部を有するヘッドを有し、前記骨プレートの下穴を貫通して該骨プレートを前記骨に固定するスクリュと、
前記雌ねじに締結されて前記スクリュを固定するプラグと、
前記ヘッドと前記プラグとの間に挟まれ、両端面が相対的に傾斜する楔形状に形成されたスペーサとを備える骨プレートキット。
【請求項9】
前記スペーサに半径方向外方に突出する突起が設けられ、
前記座ぐりに、前記突起を収容して前記スペーサの前記座ぐりに対する周方向の回転を係止する溝が設けられている請求項8に記載の骨プレートキット。
【請求項10】
前記座ぐりに、半径方向内方に突出する突起が設けられ、
前記スペーサに、前記突起を収容して前記スペーサの前記座ぐりに対する周方向の回転を係止する溝が設けられている請求項8に記載の骨プレートキット。
【請求項11】
前記溝が周方向に間隔をあけて複数設けられている請求項9または請求項10に記載の骨プレートキット。
【請求項12】
楔形状の前記スペーサを厚さ方向に重ねて複数備える請求項9に記載の骨プレートキット。
【請求項13】
前記スペーサを前記プラグに取り付け状態に保持し、前記プラグの締結時に、該プラグに対する前記スペーサの相対回転を許容する仮固定手段を備える請求項8から請求項10のいずれかに記載の骨プレートキット。
【請求項14】
前記仮固定手段が、接着剤である請求項13に記載の骨プレートキット。
【請求項15】
前記仮固定手段が、前記プラグの端面の中央に設けられた円筒状の凸部と、前記スペーサに設けられ前記凸部の外径寸法より若干小さい内径寸法を有する嵌合孔とを備え、
前記スペーサが、その外縁から前記嵌合孔まで半径方向に切断する切り込みによってCリング状に形成されている請求項13に記載の骨プレートキット。
【請求項16】
前記凸部の基端側に、前記スペーサの嵌合孔の内径寸法より若干小さい外径寸法の小径部が設けられている請求項15に記載の骨プレートキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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