説明

固定構造

【課題】第1部材の突起部と第2部材の係合部との係合により第1部材と第2部材とを互いに固定する固定構造であって、係合保持力が強く、また、解体が容易な構造を提供する。
【解決手段】本発明の固定構造は、前キャビネット6に設けられた突起部64を、後キャビネット7に設けられた係合穴72に係合させることにより前キャビネット6と後キャビネット7を互いに固定するものである。突起部64が、係合穴72と接する係合面及び当該突起部64の突出方向の先端面にまたがってテーパー面64cが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1部材の突起部と第2部材の係合部との係合により第1部材と第2部材とを互いに固定する固定構造、特に、薄型表示装置に用いられる固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置やプラズマ表示装置といった薄型表示装置等の電子機器では、その筐体を二つの部材で構成することがあり、その場合の該二つの部材の固定構造として、様々なものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
固定構造の一例では、液晶表示装置の液晶パネル等を覆う筐体を、正面側の前キャビネットと背面側の後キャビネットとの2つの部材で構成し、図10(A)に示すように、前キャビネット200に突起部201を設け、さらに、図10(B)に示すように、後キャビネット210に係合穴211すなわち係合部を設ける。そして、突起部201と係合穴211との係合により、前キャビネット200と後キャビネット210とが固定される。
この固定構造では、固定用のビスを削減できるため、筐体の小型化、より具体的には、狭額縁化が可能であり、また、ドライバによるビスはずしの手間が減り、組立て時の作業性も向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−42537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
突起部と係合部とによる固定構造は、上述のようなメリットがあるが、図10の構造では、以下のような点で改善が求められる。
すなわち、液晶表示装置等では、メンテナンス等のために解体作業の容易性が求められるが、図10の構造では、係合保持と解体作業の容易性の両立をすることが困難であり、係合保持力を強くすると解体しにくくなり、また解体し易くすると係合保持力が低下する。特に、意匠上、前キャビネット200と後キャビネット210との合わせ目が外観上可視となるようなデザインをもった製品である場合、この合わせ目が開いてしまわないように、係合保持力を強化すると、解体が困難になるため、これらキャビネット200,210を樹脂製とした場合に解体の際に破損してしまう恐れがある。
特許文献1には、この点に関し、何ら開示も示唆もされていない。
【0006】
本発明は、上述のような実情を鑑み、第1部材の突起部と第2部材の係合部との係合により第1部材と第2部材とを互いに固定する固定構造であって、係合保持力が強く、また、解体が容易な構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の技術手段は、第1部材に設けられた突起部を、第2部材に設けられた係合部に係合させることにより前記第1部材と前記第2部材を互いに固定する固定構造であって、前記突起部が、前記係合部と接する係合面及び当該突起部の突出方向の先端面にまたがってテーパー面が形成されていることを特徴としたものである。
【0008】
本発明の第2の技術手段は、第1の技術手段において、前記テーパー面が、前記突起部の一方の側面側から前記先端面の中央側に向かって幅が狭くなる斜面であることを特徴としたものである。
【0009】
本発明の第3の技術手段は、第1または第2の技術手段において、前記第1部材及び前記第2部材は枠体であり、前記第1部材は前記枠体の一辺に複数の前記突起部を有し、前記第2部材は前記第1部材の複数の前記突起部に対応する位置に複数の前記係合部を有し、前記複数の突起部と前記複数の係合部とが係合され、前記テーパー面が、前記突起部に対して取り外しの際の被操作位置側に設けられていることを特徴としたものである。
【0010】
本発明の第4の技術手段は、第3の技術手段において、前記複数の突起部のうち、前記被操作位置に近い1つの前記突起部に前記テーパー面が設けられていることを特徴としたものである。
【0011】
本発明の第5の技術手段は、第3の技術手段において、前記複数の突起部のうち、前記被操作位置の両側にある前記突起部に前記テーパー面が設けられていることを特徴としたものである。
【0012】
本発明の第6の技術手段は、第3の技術手段において、前記複数の突起部の全てに前記テーパー面が設けられていることを特徴としたものである。
【0013】
本発明の第7の技術手段は、第6の技術手段において、前記被操作位置が前記突起部が設けられた辺の前記突起部の配列方向の一端であることを特徴としたものである。
【0014】
本発明の第8の技術手段は、第6の技術手段において、前記被操作位置が前記突起部が設けられた辺の前記突起部の配列方向の一端及び他端であり、前記複数の突起部あgそれぞれ前記一端及び前記他端の何れか近い側にテーパー面が設けられていることを特徴としたものである。
【0015】
本発明の第9の技術手段は、第6の技術手段において、前記被操作位置が前記突起部が設けられた辺の前記突起部の配列方向の中央であることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1部材の突起部と第2部材の係合部との係合により第1部材と第2部材とを互いに固定する固定構造であって、係合保持力が強く、また、解体が容易な構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の固定構造が適用された液晶表示装置の一例を示す外観図である。
【図2】図1の前キャビネットを示す図である。
【図3】図1の後キャビネットを示す図である。
【図4】本発明の特徴部に関わる前キャビネットの突起部の形状を説明する図である。
【図5】本発明の特徴部に関わる前キャビネットの突起部の形状を説明する別の図である。
【図6】前キャビネットの他の例を説明する側面図である。
【図7】前キャビネットの別の例を説明する側面図である。
【図8】前キャビネットの別の例を説明する側面図である。
【図9】前キャビネットの別の例を説明する側面図である。
【図10】従来の固定構造を説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の固定構造が適用された液晶表示装置の一例を示す外観図である。図示するように、液晶表示装置1は、装置本体2と、該本体2を支持する支持台3とを備え、装置本体2は、液晶パネルとバックライトとから成る矩形の表示モジュール4と、該表示モジュール4や各種回路基板(不図示)を収納する筐体5とを有する。筐体5は、表示モジュール4の外周部を液晶表示装置1の正面側から覆う前キャビネット6と、表示モジュール4等の全体を背面側から覆う後キャビネット7と、が固定されて成る。前キャビネット6が本発明の「第1部材」に相当し、後キャビネット7が本発明の「第2部材」に相当する。前キャビネット6及び後キャビネット7は、ポリカABSアロイ樹脂等の樹脂材料から成る。
【0019】
図2及び図3はそれぞれ、図1の前キャビネット6及び後キャビネット7を個別に示す図であり、図2(A)は前キャビネット6の背面図、図2(B)は図2(A)のA方向矢視図、図3(A)は後キャビネット7の背面図、図3(B)は図3(A)のB方向矢視図である。
【0020】
前キャビネット6は、図2(A)に示すように、表示モジュール4(図1参照)の表示画面が露出しユーザが視聴可能となるように開口61を有する枠体となっている。また、前キャビネット6の内側面には、図2(B)に示すように、内側に突出する突起部62〜64を有する。上側と略中央の突起部62,63の形状は、従来の突起部(図11の突起部101a参照)と同様であり、下側の突起部64の形状については、後述する。なお、前キャビネット6の図2(B)で示した内側面とは反対側の内側面にも同様に突起部が設けられている。
【0021】
一方、後キャビネット7は、図3(A)に示すように、前キャビネット6と略同等の大きさを有し、電源ケーブルを導入するための開口71を有する。また、後キャビネット7の外側面には、図3(B)に示すように、前キャビネット6の突起部62〜64に対応する位置に、内側に凹む係合部すなわち係合穴72〜74を有する。係合穴72〜74の形状は、従来の係合部(図11の係合部102a)のものと同様である。なお、後キャビネット7の図3(B)で示した側辺とは反対側の側辺にも同様に係合穴が設けられている。
【0022】
液晶表示装置1の組立の際、後キャビネット7の係合穴72に、前キャビネット6の突起部62が挿入され、係合穴73に突起部63が挿入され、係合穴74に突起部64が挿入され、係合穴72と突起部62の係合、係合穴73と突起部63の係合、係合穴74と突起部64の係合により、前キャビネットと後キャビネット7とが互いに固定される。
【0023】
図4及び図5を用いて、本発明の特徴部に関わる前キャビネット6の突起部64の形状を説明する。
図4(A)は、図2(A)の前キャビネット6の突起部64周辺の部分拡大斜視図、図4(B)は図4(A)のC方向矢視図、図4(C)は同D方向矢視図、図5(A)は前キャビネット6の突起部64が後キャビネット7の係合穴72に挿入された状態での図4()BのE−E断面図、図5(B)は同状態でのF−F断面図、図5(C)は取り外す際のF−F断面図である。
【0024】
前キャビネット6の突起部64には、図4(A),(B)に示すように、後キャビネット7の係合穴72(図3参照)と接する係合面64aが形成されている。また、図4(A)〜図4(C)に示すように、突起部64の係合面64a及び突起部64の突出方向の先端面64bにまたがってテーパー面64cが形成されている。このテーパー面64cは、突起部64の側面64d,64d´のうちの一方の側面64d側から先端面64bの中央側に向かって幅が狭くなる斜面である。
【0025】
突起部64が上述のような形状であるため、後キャビネット7の側方中央部分が背面方向に引っ張られたとき等は、図5(A)に示すように、前キャビネット6の突起部64上部の係合面64aと後キャビネット7の係合穴72との係合により、後キャビネット7が前キャビネット6から外れることはない。
【0026】
ただし、前キャビネット6の突起部64下部では、図5(B)に示すように、後キャビネット7の係合穴72と係合する部分の幅Lが小さい。そのため、解体作業のために後キャビネット7の突起部64より下方の部分が背面方向に引っ張られ、前キャビネット6が外側方向に幅Lの分だけ引っ張られたときは、上述の係合が外れ、図5(C)に示すように、後キャビネット7の係合穴72の先端部73の角部73aが、突起部64のテーパー面64cに当たる。そのため、上記角部73aが該テーパー面64c上をスムーズに摺動する。したがって、後キャビネット7が内側に撓むように変形するので、最終的に、図5(A)の前キャビネット6の突起部64の係合面64aと後キャビネット7のフック部3との係合が完全に解除される。突起部64と係合穴74との完全に係合が解除された後、さらに、後キャビネット7が背面方向に引っ張られると、前キャビネット6の突起部62,63と後キャビネット72の係合穴72,73との係合も解除され、後キャビネット7が前キャビネット6から外れる。
以上のような構成により、本発明では、係合保持力が強く、また、解体が容易となっている。
【0027】
図6〜図10は、前キャビネットの他の例を説明する図である。前キャビネットの突起部の数及び形状以外は、上述の例と同様であるため、その説明を省略する。
本発明に関わる前キャビネットは、図3の例のように突起部62〜64が3つのものに限られず、例えば、図6の前キャビネット8のように、突起部81が4つであってもよいし、3つ未満や5つ以上であってもよい。
【0028】
また、液晶表示装置の解体作業時すなわち前キャビネットからの後キャビネットの取り外しの際に被操作位置が想定される場合、テーパー面は突起部の該被操作位置側に設けられている。
図3の例は、上記被操作位置として突起部62〜64が設けられた辺の突起部62〜64の配列方向に対して下端を想定した場合の例で、前キャビネット6では、複数の突起部62〜64のうち、被操作位置である下端に近い1つの突起部64の被操作位置側すなわち下端側にテーパー面が設けられている。しかし、この例に限られず、例えば、図6の前キャビネット8のように、全ての突起部81の被操作位置R側すなわち下端側にテーパー面81aが設けられていてもよい。また、全ての突起部81ではなく、2以上の一部の突起部の所定の位置側に設けられていてもよい。
【0029】
なお、液晶表示装置の解体作業時の想定される被操作位置は下端に限られず、一辺のより中央に近い位置が想定される場合がある。そのような場合は、図7の前キャビネット9のように、複数の突起部91〜94のうち、被操作位置Rに近い突起部93,94の被操作位置R側にテーパー面94a,93aを設けるとよい。
【0030】
また、液晶表示装置の解体作業時の想定される被操作位置は一ヶ所に限られず、例えば、図8に示すように、突起部101,102が設けられた辺の該突起部101,102の配列方向の上端及び下端の二ヶ所に被操作位置R,Rがある場合がある。この場合、図の前キャビネット100のように、複数の突起部101,102はそれぞれ上端及び下端の何れか近い側にテーパー面101a,102aが設けられる。
【0031】
また、液晶表示装置の解体作業時の想定される被操作位置は端部に限られず、図9に示すように、突起部111,112が設けられた辺の該突起部111,112の配列方向に対して中央である場合がある。この場合、図の前キャビネット110のように、複数の突起部101,102はそれぞれ中央の被操作位置R側にテーパー面111a,112aが設けられる。
【0032】
上述の被操作位置には、該位置が被操作位置であることを示すマークをつけておくとよい。また、取り扱い説明書で被操作位置を説明して特定しておくとよい。
なお、前キャビネットの一方の側辺と他方の側辺に設ける突起部の数及び形状は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
また、前キャビネットの側辺のみならず、上辺及び/または下辺にも、側辺に設けたものと同様な突起部を設けるようにしてもよい。
【0033】
以上の例では、前キャビネットに突起部を設け、後キャビネットに係合穴を設ける構成であったが、後キャビネットに突起部を設け、前キャビネットに係合穴を設ける構成であってもよい。
なお、本発明に関わる表示モジュールは、本例の液晶パネルを用いた構成の他、プラズマディスプレイ等の公知の他の表示形式の構成のものであってもよい。
【符号の説明】
【0034】
1…液晶表示装置、2…装置本体、3…支持台、4…表示モジュール、5…筐体、6,8,9,10,11…前キャビネット、7…後キャビネット、62〜64,81,91〜94,101,102,111,112…突起部、64c,81a,93a,94a,101a,102a,111a,112a…テーパー面、72…係合穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材に設けられた突起部を、第2部材に設けられた係合部に係合させることにより前記第1部材と前記第2部材を互いに固定する固定構造であって、
前記突起部は、前記係合部と接する係合面及び当該突起部の突出方向の先端面にまたがってテーパー面が形成されていることを特徴とする固定構造。
【請求項2】
前記テーパー面は、前記突起部の一方の側面側から前記先端面の中央側に向かって幅が狭くなる斜面であることを特徴とする請求項1に記載の固定構造。
【請求項3】
前記第1部材及び前記第2部材は枠体であり、前記第1部材は前記枠体の一辺に複数の前記突起部を有し、前記第2部材は前記第1部材の複数の前記突起部に対応する位置に複数の前記係合部を有し、前記複数の突起部と前記複数の係合部とが係合され、
前記テーパー面は、前記突起部に対して取り外しの際の被操作位置側に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の固定構造。
【請求項4】
前記複数の突起部のうち、前記被操作位置に近い1つの前記突起部に前記テーパー面が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の固定構造。
【請求項5】
前記複数の突起部のうち、前記被操作位置の両側にある前記突起部に前記テーパー面が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の固定構造。
【請求項6】
前記複数の突起部の全てに前記テーパー面が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の固定構造。
【請求項7】
前記被操作位置は前記突起部が設けられた辺の前記突起部の配列方向の一端であることを特徴とする請求項6に記載の固定構造。
【請求項8】
前記被操作位置は前記突起部が設けられた辺の前記突起部の配列方向の一端及び他端であり、前記複数の突起部はそれぞれ前記一端及び前記他端の何れか近い側にテーパー面が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の固定構造。
【請求項9】
前記被操作位置は前記突起部が設けられた辺の前記突起部の配列方向の中央であることを特徴とする請求項6に記載の固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−69849(P2013−69849A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207128(P2011−207128)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】