説明

固定装置、スピンドルモータ、検査装置及びハードディスク装置の製造方法

【課題】小型で自動的且つ固定力を精度良く維持してディスクを固定することが可能な固定装置、スピンドルモータ及び検査装置を提供する。
【解決手段】段差部でディスク2を支持してモータ軸51aと共に回転するセンターシャフトは傘状突起を有し、押えユニット11のロック部20に設けられてロック状態とロック解除状態との間で弾性変形が可能な弾性部23Aはロック解除状態では傘状突起の外側にあり、その後にロック状態に移行すると弾性部23Aの一部は傘状突起の内側に入り込み、ロック部20とキャップ40との間に設けられた圧縮バネ30によってロック部20がキャップ40から離れることを前記一部と傘状突起との係合が妨げる固定装置10Aを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定装置、スピンドルモータ、検査装置及びハードディスク装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク装置(HDD)の製造においては、磁気ディスクの磁気特性を検査装置によって検査する。磁気ディスクの記録密度の増加とHDDの低価格化の要請に伴い、検査装置には、小型でスループット良く(即ち、自動的に)且つ固定力を精度良く維持して磁気ディスクを固定することが求められている。従来は、特許文献1の図8のようなネジによる固定や、特許文献1の図9のようにエア吸引よる固定が提案されている。
【特許文献1】特開2005−243204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の図8のようなネジによる固定は自動化には不向きであり、また、ネジによる締結力(固定力)を一定に維持することは困難である。固定力が高すぎると磁気ディスクが変形し、固定力が低すぎると磁気ディスクが回転中に振動し、いずれの場合にも検査精度が低下する。一方、特許文献1の図9のようにエア吸引よる固定機構は大型で、検査装置の小型化を妨げる。
【0004】
本発明は、小型で自動的且つ固定力を精度良く維持してディスクを固定することが可能な固定装置、スピンドルモータ及び検査装置を提供することを例示的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面としての固定装置は、ディスクを固定する固定装置であって、断面凸形状を有して当該断面凸形状の段差部で前記ディスクを支持すると共にモータ部のモータ軸に固定されてモータ軸と共に回転するセンターシャフトと、貫通孔と当該貫通孔内に設けられてロック状態とロック解除状態との間で弾性変形が可能な弾性部を有するロック部と、前記センターシャフトと共に前記ディスクを挟んで固定するキャップと、前記ロック部と前記キャップとの間に設けられた圧縮バネと、を有する押えユニットと、を有し、前記センターシャフトは、前記断面凸形状の上面から前記圧縮バネの中心軸に沿って突出する傘状突起を有し、前記弾性部はロック解除状態では前記傘状突起の外側にあり、その後にロック状態に移行すると前記弾性部の一部は前記傘状突起の内側に入り込み、前記一部と前記傘状突起との係合によって前記ロック部が前記圧縮バネによって前記キャップから離れることを妨げることを特徴とする。
【0006】
かかる固定装置を有するスピンドルモータや検査装置、該検査装置を用いてディスクを検査するステップとを有するハードディスク装置の製造方法も本発明の別の側面を構成する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、小型で自動的且つ固定力を精度良く維持してディスクを固定することが可能な固定装置、スピンドルモータ、検査装置及びハードディスク装置の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は、実施例1のスピンドルモータ100の組み立てを説明するための分解斜視図であり、図2は、スピンドルモータ100の断面図である。スピンドルモータ100は、ディスク2を固定する固定装置10Aと、ディスク2を回転するモータ部51(又は押えユニット11Aと駆動部50)を有する。本実施例のディスク2は、磁気ディスクであるが、その種類は問わない。ディスク2は、中央に貫通孔3を有する。
【0010】
固定装置10Aは、押えユニット11A及び後述するセンターシャフトを有する。センターシャフトとモータ部51は駆動部50を構成する。センターシャフトはモータ部51に固定されており、押えユニット11Aはセンターシャフトと機械的に係合して被検体であるディスク2を挟み込んで固定すると共に検査が終了するとセンターシャフトから分離してディスク2を取り外し可能にする。そして、新しいディスク2に対して同様に固定及び固定解除を行うが、固定装置10Aは各ディスク2に対する固定力をほぼ一定に維持する。
【0011】
図3は、押えユニット11Aの拡大斜視図である。図4は、押えユニット11Aの分解斜視図である。固定装置10Aは、図3及び図4に示すように、ロック部20、圧縮バネ30、キャップ40を有する。
【0012】
固定装置10Aは、圧縮バネ30によるバネ力(弾性力)を利用してディスク2に固定力を加える。バネ定数を制御すればバネ力(弾性力)をほぼ一定に制御することができるので固定力を精度良く一定の値に維持することができる。この一定の値をディスク2が振動しない程度に強く、ディスク2が変形しない程度に弱い範囲に設定することによって、後述する検査装置60はディスク2の検査精度を維持することができる。また、固定装置10Aは、ロック部20の弾性力を利用してディスク2を駆動部50にロックし、ロック解除部材5によってロックが解除される。このように、固定装置10Aは、ディスク2のロック及びロック解除にネジを使用しないので自動化に向いているため、スループットの向上に貢献する。更に、固定装置10Aは、エアの吸引を利用しないので小型に構成することができる。
【0013】
図5は、押えユニット11Aを図3とは別の角度から見た拡大斜視図であり、図6は、押えユニット11Aの上面図、図7は、図6のAA断面図である。
【0014】
ロック部20は、基部21と、3つの弾性部23Aと、3つの突出部25と、を有し、本実施例では、樹脂による射出成形によって一体的に形成される。ロック部20は、押えユニット11Aがセンターシャフトから抜けないように(即ち、押えユニット11Aをセンターシャフトにロックするように)、後述するセンターシャフトの突出部55と係合する。
【0015】
図8は、ロック部20とロック解除部材5との係合を説明する斜視図である。ロック部20は、ロック解除部材5が係合されるとロック解除状態になり、ロック解除部材5が分離するとロック状態になる。ロック解除部材5は、保持部材6によって保持されて昇降機構7に固定されている。昇降機構7は、ロック解除部材5と、押えユニット11Aを保持する保持部材8を独立して圧縮バネ30の中心軸35に沿って昇降移動する移動部である。 ロック解除部材5は、図1及び図8に示すように、円筒部材である。ロック解除部材5は、ロック部20の弾性部23Aをロック解除状態にする機能を有し、円筒側面5a、底面5b、及び、円筒側面5aと底面5bとの間の円形縁部5cを有する。
【0016】
基部21は、円筒形状を有し、上面21aと下面21bとを有する。上面21aからは弾性部23Aの一部が突出し、下面21bからは弾性部23Aの一部と突出部25の一部が突出する。なお、図5では突出部25は省略されている。
【0017】
上面21aと下面21bには、これらを貫通する中央貫通孔22aと、3つの貫通孔22bが設けられている。
【0018】
中央貫通孔22aは、図6に示すように、原点OとXY座標系を設定すると、中央円筒孔22aと、3つの延長孔22aが結合した形状を有し、基部21の厚さ方向(図6の紙面に垂直な方向)であるZ軸方向に延びている。
【0019】
3つの延長孔22aは、図6において、中央円筒孔22aからY軸方向、+X軸方向に対して−30度方向、−X軸方向に対して−30度方向に径方向の外側に向かって延びている。各延長孔22aは、ほぼ四角柱形状の同一形状を有し、原点O周りに120度間隔で設けられ、図7に示す端部22aが弾性部23Aとの結合部になっている。
【0020】
延長孔22aは弾性部23Aを収納し、弾性部23Aは延長孔22aから中央円筒孔22aへ突出及び退避可能なように弾性変形が可能である。
【0021】
保持部材8がロック部20の基部21を保持することにより、押えユニット11Aは保持部材8によって保持される。保持部材8は不図示の昇降機構に接続されており、Z軸方向に移動可能に構成されている。この結果、押えユニット11AはZ軸方向に移動可能である。保持部材8はロック解除部材5と同期して昇降することもできるし、別個に昇降することもできる。
【0022】
各弾性部23Aは、同一材量で構成されると共に同一構造を有して貫通孔内(中央貫通孔22a内及び貫通孔22b内)に設けられる。図7に示す延長孔22aの端部22aから上方(Z軸方向)に一旦延びてから屈曲して下向き(−Z軸方向)に延びている。弾性部23Aは、ロック状態とロック解除状態との間で弾性変形が可能である。ロック解除部材5が弾性部23Aに係合していない弾性部23Aの初期状態はロック状態である。
【0023】
弾性部23Aは、屈曲部23a、テーパー部23b、垂直部23c及び係合部23dを有し、原点Oに関して120度間隔で(等間隔で)原点Oから等距離に配置されている。
【0024】
屈曲部23aは、図7に示す延長孔22aの端部22aから鉛直上方に延びてから下向きに屈曲している部分である。本実施例では、図7に示すように、上部にテーパー部23bを形成するために、下向きに延びている垂直部23cの厚さを屈曲部23aの厚さよりも大きくしているが、垂直部23cを屈曲部23aと同じ厚さにして屈曲形状にしてもよい。
【0025】
テーパー部23bは、ロック解除部材5の円形縁部5cが最初に接触して摺動する部分である。屈曲部23aの内側の垂直面23eと垂直部23cの内側の垂直面23fとの間には空隙24が設けられ、テーパー部23bがロック解除部材5の円形縁部5cによって下向きに押されると屈曲部23aは外側に(図5に矢印で示す径方向Rに)弾性変形する。ロック解除部材5の円形縁部5cは弾性部23Aを外側に変形させながらテーパー部23bを摺動し、ロック解除部材5は、その円筒側面5aにおいて垂直部23cに接触して弾性部23Aを外側に変形させる。この状態で、ロック解除部材5は弾性部23Aの弾性変形を停止する。各弾性部23Aは原点Oから等距離に配置されているのでロック解除部材5が各弾性部23Aの垂直部23cに接触すると、各弾性部23Aの弾性変形量は等しくなる。
【0026】
垂直部23cは、上から見た場合に、図6に示すXY平面において接線方向に延びていてもよいし、原点Oを中心とする円弧形状を有していてもよい。係合部23dは、後述する図11に示すように、XY平面と平行な上面23dを有し、上面23dにおいて後述するセンターシャフトと係合する。
【0027】
下面21bには、図7に示すように、原点Oを中心とする円環形状の溝22cが形成されている。溝22cは、圧縮バネ30を係止する機能を有し、溝22cの原点Oからの距離は圧縮バネ30の径とほぼ等しい。
【0028】
突出部25は、図4及び図7に示すように、基部21から−Z軸方向に突出して外側の表面の下方に係合部26を有する。突出部25は、上から見ると円弧形状を有する。
【0029】
係合部26は、後述するキャップ40の係合部46と係合することができるように構成された断面三角形状を有する。係合部26がキャップ40の係合部46と係合することによってロック部20の上向き(Z軸方向)の変位が拘束される。ロック部20の下向き(−Z軸方向)の変位は、基部21の下面21bが後述するキャップ40の基部41の上面42aと接触することによって、拘束される。
【0030】
圧縮バネ30は、上部がロック部20の溝22cに係合し、下部が後述するキャップ40の溝43に係合する。圧縮バネ30のバネ定数はディスク2に上述した一定の固定力が加わるように予め設定されている。圧縮バネ30の中心軸35は、Z軸方向に沿っている。
【0031】
キャップ40は、センターシャフトと共にディスク2を挟んでディスク2をモータ部51に押し付けて固定する。キャップ40は、基部41及び突出部45を有する。
【0032】
基部41は、中空円筒形状を有し、図4及び図7に示すように、上面42aと底面42bを有する。上面42aの内側には溝43が形成されている。溝43は、圧縮バネ30の下部を係止する機能を有し、溝43の原点Oからの距離は圧縮バネ30の径とほぼ等しい。底面42bは、ディスク2の貫通孔3の周囲を押えてディスク2を固定すると共にディスク2に固定力を加える部分である。基部41の内部には、センターシャフトの一部を収納する収納部44が形成されている。
【0033】
突出部45は、図4及び図7に示すように、基部41からロック部20側(Z軸方向)に突出して内側の表面の上部に係合部46を有する。突出部45は、上から見ると円弧形状を有する。係合部46は、ロック部20の係合部26と係合可能に構成された断面三角形状を有する。突出部25及び45は係合部26と45が係合するための多少の変形を行うことができる。係合部46は、ロック部20が圧縮バネ30によってキャップ40から分離しないようにロック部20の更なる移動を規制する規制部として機能する。
【0034】
押えユニット11Aは、図4に示すような順番でロック部20、圧縮バネ30、キャップ40が重ねられて係合部26と45が係合し、図3に示すように組み立てられてユニット化される。
【0035】
図9は、スピンドルモータ100の駆動部50の斜視図である。駆動部50は、モータ部51と、モータ部51とセンターシャフトを有する。固定装置10Aとモータ部51はスピンドルモータ100を構成する。
【0036】
モータ部51は円筒形状を有する。モータ部51は、不図示の電源部から電源を供給されて回転するモータを内蔵している。必要があれば、モータ部51の下にエンコーダその他の部材が接続されてもよい。
【0037】
センターシャフトは、円筒部52及び53からなる断面凸形状を有し、当該断面凸形状の段差部(円筒部52の上面52a)でディスク2を支持する。また、センターシャフトは突出部55を更に有する。センターシャフトは、モータ部51のモータ軸51aに固定されてモータ軸51aと共に回転する。
【0038】
円筒部52は、図2に示すモータ軸51aを介してモータ部51と結合し、モータ軸51aと共に回転する。円筒部52は、円筒部53との間に段差を構成し、段差部である上面52aでキャップ40の底面42bと共にディスク2を挟んで保持する。円筒部53は、円筒部52から突出し、円筒部52と一体的に形成される。円筒部52と円筒部53の一部は、図2に示すように、キャップ40の収納部44に収納される。円筒部53は、図1及び図2に示すように、ディスク2の貫通孔3に挿入され、円筒部52と共に回転する。円筒部53の高さは、図2に示すように、ディスク2の厚さよりも大きく、その径はディスク2の貫通孔3の径(内径)にほぼ等しい。
【0039】
突出部55は、円筒部53の上面54から上方に突出し、ロック部20の弾性部23Aと係合する。突出部55は、胴部56、胴部56に接続された首部57、及び、首部57に接続された頭部58を有する。胴部56と首部57は円筒形状を有し、首部57は胴部56よりも直径が小さい。頭部58は円盤形状を有して、首部57よりも径が大きい(D>D)。頭部58と首部57は傘状突起を構成する。
【0040】
図10は、ロック状態にある押えユニット11Aの図5に対応する斜視図である。図9に示す頭部58の直径Dはロック状態にある弾性部23Aの係合部23dの点線で示す内接円ICの直径よりも大きく、首部57の直径Dはロック状態にある固定装置10Aの弾性部23Aの係合部23dの点線で示す内接円ICの直径よりも若干大きい。この結果、図2に示すように、係合部23dは首部57に弱い弾性力を持って接触する。また、図1に示すロック解除状態にある固定装置10Aの弾性部23Aの係合部23dの内接円の直径は頭部58の直径Dよりも大きくなる。
【0041】
以下、図2に示すスピンドルモータ100の組立方法及び分解方法について説明する。
【0042】
まず、前提として、図4に示すように、係合部26を係合部46に位置合わせした後で接触させ、両者のテーパー部を接触及び摺動させながら−Z軸方向に押えユニット11Aを移動させて係合部26を係合部46の下まで押し込む。これにより、図3に示す押えユニット11Aを形成する。
【0043】
次に、ロック部20を保持部材8により保持(固定)した状態で、図8に示すように、ロック解除部材5を−Z軸方向に弾性部23Aの間の中央貫通孔22aに挿入する。ロック解除部材5は、その底面5bが係合部23dの上面23dに到達する前に停止し、底面5bと上面23dとの間には隙間が存在する。隙間のZ方向の距離は頭部58のZ方向の厚さよりも若干大きい。ロック解除部材5は弾性部23Aをロック解除状態にする。
【0044】
一方、不図示のロボットハンドは、ディスク2を、図1に示すような状態に配置して貫通孔3を円筒部53に位置合わせし、ディスク2を下降して円筒部53の周囲に嵌め込でおく。
【0045】
次に、図1に示すように、押えユニット11Aをロック解除部材5でロック解除状態にし、保持部材8とロック解除部材5を同期して(同じ速度で)−Z軸方向に移動する。押えユニット11Aはキャップ40の底面42bがディスク2に接触する位置まで下降する。この位置では、ロック解除部材5の底面5bは突出部55の上面55aに接触するか、上面55aに接触する位置よりも多少前の位置にある。ロック解除状態では、係合部23dは頭部58の外側の位置に変形して頭部58が中央貫通孔22aに挿入されることを許容する。即ち、係合部23dは頭部58に接触することなく係合部23dの上面23dは頭部58の下面59よりも下の位置まで移動することができる。
【0046】
その後に、押えユニット11Aとロック解除部材5、押えユニット11Aと保持部材8との係合を解除する。ロック解除部材5が押えユニット11Aから分離すると弾性部23Aはロック状態に移行して弾性部23Aの一部である係合部23dは首部57に隣接して頭部58よりも内側に入り込んだ位置に変形する。
【0047】
また、保持部材8が押えユニット11Aから分離すると、圧縮バネ30の弾性力により、ロック部20は上方向(Z軸方向)へ移動する。しかし、図11に示すように、係合部23dの上面23dと頭部58の下面59の係合によってロック部20が圧縮バネ30によって圧縮バネ30の中心軸35に沿って(即ち、Z軸方向に)キャップ40から離れることを妨げる。このため、圧縮バネ30の反力により、キャップ40の底面42bがディスク2に弾性力を付与して固定する。圧縮バネ30による弾性力は一定であるため、安定した固定力を得ることができる。
【0048】
分解時には上記と反対の動作を行う。即ち、保持部材8を貫通孔22bに挿入して保持し、ロック解除部材5を弾性部23Aの間の中央貫通孔22aに挿入して弾性部23Aをロック解除状態にする。その後、不図示の昇降機構がロック解除部材5と保持部材8と押えユニット11AをZ軸方向に移動する。ロック解除状態では、係合部23dは頭部58よりも広がっているので係合部23dの上面23dは頭部58の下面59に掛からずに上昇することができ、簡単にディスク2の固定を解除することができる。
【0049】
センターシャフトは、突出部55を設ければ足り、エア吸引機構などの複雑な固定機構を必要としないため、駆動部50を小型化できる。固定装置10Aは、圧縮バネ30により常に一定の力でディスク2を押さえつけるため、安定した固定力を維持することができる。ロック部20の弾性部23Aは変形可能であるため、ディスク2の駆動部50への固定及び固定解除を簡単かつ自動的に行うことができる。固定機構が単純な構成であるため、構成部品数も少なく安価に製作することが可能である。
【実施例2】
【0050】
図12は、実施例2の押えユニット11Bの斜視図である。押えユニット11Aは、ロック部20を樹脂成型により一体的に形成していたが、押えユニット11Bは、弾性部23Bを弾力性のある金属線により構成している。金属線を使用することにより、弾性部23Bの強度が増し、強い固定力にも対応可能な固定装置を実現することができる。
【実施例3】
【0051】
図13は、実施例3の押えユニット11Cの斜視図である。押えユニット11Aは、ロック解除部材5を中央貫通孔22aに挿入することにより弾性部23Aを弾性変形させている。一方、押えユニット11Cは、テーパー部23Cbの裏面23Cbを不図示のロック解除部材がW方向に押す。押えユニット11Cのロック部は、テーパー部23Cbと垂直部の境界Bに対応する裏面において弾性部23Cを支持する薄板部22eを有する基部21Cを有する。ここで、圧縮バネ30の中心軸35に直交する面内の力(XY平面に平行な径方向の力)が弾性部23Cの基部21Cから突出した部分(テーパー部23Cbの裏面23Cb)に加えられたとする。すると、薄板部22eを支点としてテーパー部23Cbが内側に倒れるように弾性変形する。押えユニット11Aはロック解除部材5を挿入される際に、摺動によるゴミが発生するおそれがあるが、固定装置10Cは摺動をなくしてゴミの発生を軽減するという効果を与える。
【0052】
図14は、検査装置60の斜視図である。なお、図12は、押えユニット11Aを簡略的に示している。検査装置60は、スピンドルモータ100とそれに電源を供給する不図示の電源部を備えた駆動ユニット101、ディスク2に情報を記録し、ディスク2から情報を再生する磁気ヘッド62を備えたアクチュエータ61、及び、制御部63を有する。また、検査装置60は、図8に示すロック解除部材5、保持部材6、8、昇降機構(移動部)7を更に有する。
【0053】
制御部63は、駆動ユニット101でディスク2を回転し、磁気ヘッド62をアクチュエータ61で位置決めして情報の記録再生及び情報の消去などの磁気特性の検査を行う。また、制御部63は、昇降機構7による昇降動作やディスク2を交換する不図示のロボットハンドの動作も制御する。制御部63は、予め格納されている情報とディスク2の磁気特性を比較して良品判定を行う。良品であれば検査合格とし、不良品であれば検査不合格とする。ディスク2の固定力が一定に維持されるのでその回転動作が安定し、検査精度を維持することができる。また、ディスク2の交換、固定、取り外しが自動機によって自動的に実行可能であるので、検査のスループットも維持することができる。
【0054】
ハードディスク装置(HDD)の製造方法は、検査装置60を使用してディスク2を検査する工程と、検査に合格したディスク2を筺体に取り付ける工程と、他の周知の工程と、を経ることにより製造される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例1のスピンドルモータの組立を説明するための分解斜視図である。
【図2】実施例1のスピンドルモータの断面図である。
【図3】図1に示す固定装置の斜視図である。
【図4】図3に示す固定装置の分解斜視図である。
【図5】図3に示す固定装置の斜視図である。
【図6】図3に示す固定装置の平面図である。
【図7】図6のAA断面図である。
【図8】図3に示す固定装置とロック解除部材との斜視図である。
【図9】図1に示す駆動部の斜視図である。
【図10】図3に示す固定装置の斜視図である。
【図11】図2の部分拡大断面図である。
【図12】実施例2の押えユニットの斜視図である。
【図13】実施例3の押えユニットの斜視図である。
【図14】検査装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
1 検査装置
2 ディスク
10A 固定装置
11A、11B、11C 押えユニット
20 ロック部
21、21C 基部
23A、23B、23C 弾性部
22c、43 溝
23d、26、46 係合部
25、45、55 突出部
30 圧縮バネ
40 キャップ
50 駆動部
100 スピンドルモータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクを固定する固定装置であって、
断面凸形状を有して当該断面凸形状の段差部で前記ディスクを支持すると共にモータ部のモータ軸に固定されてモータ軸と共に回転するセンターシャフトと、
貫通孔と当該貫通孔内に設けられてロック状態とロック解除状態との間で弾性変形が可能な弾性部を有するロック部と、前記センターシャフトと共に前記ディスクを挟んで固定するキャップと、前記ロック部と前記キャップとの間に設けられた圧縮バネと、を有する押えユニットと、
を有し、
前記センターシャフトは、前記断面凸形状の上面から前記圧縮バネの中心軸に沿って突出する傘状突起を有し、
前記弾性部はロック解除状態では前記傘状突起の外側にあり、その後にロック状態に移行すると前記弾性部の一部は前記傘状突起の内側に入り込み、前記弾性部の前記一部と前記傘状突起との係合によって前記ロック部が前記圧縮バネによって前記キャップから離れることを妨げることを特徴とする固定装置。
【請求項2】
前記キャップは、前記ロック部が前記圧縮バネによって前記キャップから分離しないように前記ロック部の更なる移動を規制する規制部を有することを特徴とする請求項1に記載の固定装置。
【請求項3】
前記ロック部は樹脂成型によって前記弾性部と一体的に形成されることを特徴とする請求項1に記載の固定装置。
【請求項4】
前記ロック部の前記弾性部は金属線によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の固定装置。
【請求項5】
前記ロック部は、前記弾性部を支持する薄板部を有する基部を更に有し、
当該薄板部を支点として前記圧縮バネの前記中心軸に直交する面内の力が前記弾性部の前記基部から突出した部分に加えられると、前記弾性部は回転する方向に弾性変形することを特徴とする請求項1に記載の固定装置。
【請求項6】
モータ部と、
請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の固定装置と、
を有することを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項7】
ディスクを回転するスピンドルモータを有し、前記ディスクを検査する検査装置。
【請求項8】
前記ロック部の前記弾性部を前記ロック解除状態にするロック解除部材と、
前記押えユニットを保持する保持部材と、
前記ロック解除部材と前記保持部材を独立して前記圧縮バネの前記中心軸に沿って移動する移動部と、
を有することを特徴とする請求項7に記載の検査装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の検査装置を使用してディスクを検査するステップと、
検査に合格したディスクを筺体に取り付けるステップと、
を有することを特徴とするハードディスク装置の製造方法。

【図3】
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【図8】
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【図13】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−102782(P2010−102782A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273914(P2008−273914)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】