説明

固定軌道の高さ修正方法

本発明は、以下の手順、すなわち、
道床2を共通の接触面9において路盤3から分離すること、
道床2の上側から下側へ伸びる注入孔10を設けること、
道床2を所定の基準高さまでリフトアップすること、
道床2と路盤3との間の中空間を満たすための流体状の鋳込み材料11を注入孔から注入すること、なお分離は衝撃圧力によりおこなわれることを含み、
レール6,7を支えるまくらぎ4,5が路盤3の上にのっている道床2に敷き込まれている形態の固定軌道1の高さ修正方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールを支えるまくらぎが路盤の上にのっている道床に敷き込まれている形態の固定軌道の高さ修正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】DE19653858A1
【特許文献2】DE19631430C2
【特許文献3】DE19848655A1
【0003】
固定軌道の製作には、たとえば、特許文献1などさまざまな方法が公知である。一般に、固定軌道では、レールを支えるまくらぎは鋳込みにより道床に敷き込まれる。その道床はさらに路盤の上にのっている。この特許出願における「路盤」の概念はさまざまな種類の下部構造の総称であり、たとえば、液圧により結合される支持層(HGT)をも含む。
【0004】
現実には、レールの実際の高さは時の経過とともに所定の基準高さから乖離するというトラブルが生じている。そのような乖離は多くの場合下部構造の沈下に起因する。以前に使用されたバラスト線路ではそのような欠陥は目詰め作業(plugging operation)により比較的簡単に是正できた。しかし、固定軌道の形態のレール、特にコンクリート構造のレールでは、レール支持点の領域に発生する高低差の調整は、制約はあるが可能である。ところが、この方法では、比較的僅かの高低差しか修正できない。しかし、大きな沈下が起こった場合、レール支持点内だけでレールの基準高さを回復することはできない。
【0005】
特許文献2では、軌道車両用のための固定軌道の2つの層の間に充填材を注入する方法が記述されている。その充填材は液体の中にあり、固定軌道の孔を通じて注入されるか、圧入される。
【0006】
特許文献3では、固定軌道の各層は物理的手段により分離され、その分離は、たとえば、くさび、カッターソーまくらぎウオータージェット切断でおこなうことができる様態の固定軌道の修復法が記述されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、比較的大きい高低差の場合でも用いることができ、各層を確実に分離できるような固定軌道の高さ修正方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、本発明に従い、以下の手順による固定軌道の高さ修正方法が提案される。
道床を共通の接触面において路盤から分離し、
道床の上側から下側へ伸びる注入孔を設け、
道床を所定の基準高さまでリフトアップし、
道床と路盤との間の中空間を満たすための流体状の鋳込み材料を注入孔から注入することからなり、なお、分離は衝撃圧力によりおこなわれる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、比較的大きい高低差の場合でも用いることができ、各層を確実に分離できるような固定軌道の高さ修正方法が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
高さ修正はレール支持点の領域における処置だけでは実現は不可能であり、全道床のリフトアップによって実現できるという認識が本発明の基礎となっている。高さ修正のために、本発明に従って、道床は衝撃圧力により路盤ないしは下部構造、または液体圧力により結合されている支持層から、どの箇所も損傷を受けることなく、分離される。次に、道床に垂直に規則的な間隔で注入孔が設けられる。適切な補助手段により路盤の上に浮遊状態(loosely)でのっている道床がリフトアップされ、希望の基準位置に、特に基準高さにまで動かされ、そこで固定される。次に、注入孔から流体状の鋳込み材料が注入される。この鋳込み材料は注入孔を通って道床と路盤との間の空間に流れ込み、ついには道床と路盤との間の全ての中空間が満たされる。鋳込み材料が硬化したあと、レール軌道は規定の基準高さに恒久的に固定される。
【0011】
本発明の方法では、道床内の注入孔はレールの領域内に設けられる。その場合、レールを横断する方向に複数の、とりわけ2つの注入孔を設けるならば理に適っている。その代案としては、またはその追加処置として、レールの縦方向に場合によっては複数の注入孔をずらして設けてもよく、それらの注入孔の個数は高さを修正しようとする線路区画の長さに依存する。
【0012】
必要な注入孔は、本発明の方法を実施するときになって、穿孔すればよい。鋳込み材料の注入を容易にするために、鋳込み材料は圧入してもよいし、または噴射注入してもよい。
【0013】
本発明による高さ修正方法を実施したあと、必要な耐荷重力が存続するために、鋳込み材料としては特にコンクリートまたはコンクリート代替系材料が適している。
【0014】
本発明の方法では、路盤からの道床の分離は、特に空気圧による衝撃圧力によりおこなうことができる。分離の前に衝撃圧力を伝達するための孔を設けるならば理に適っている。
【0015】
さらに場合によっては、追加的に水平に設けられ、圧力を生み出すための、液圧シリンダのような機器を使って分離することもできる。その他の方策として、道床は水平方向に設けられる水平式ワイヤーソーにより分断することもできる。
【実施例】
【0016】
本発明の他の利点および詳細は1つの実施例により図面を参照しながら説明する。図面は概念的に裁断された図面であり、以下の内容である。
図1は道床が本発明の方法に従って路盤から分離されたあとの固定軌道を示す。
図2はリフトアップされた状態の、図1に示す注入孔付き固定軌道を示す。
図3は鋳込材料が圧入された状態の固定軌道を示す。
【0017】
図1に示される固定軌道1は基本的に、路盤3の上にのっているコンクリート製固定軌道2により構成されている。ここに示す実施例では路盤は液圧により結合される支持層として構成されている。
【0018】
道床2にはまくらぎが敷き込まれ、まくらぎの単独ブロック4、5がレール6、7を支えている。図1には、下端がレール6の基準高さを示す三角8が標識として描かれている。路盤3の設置により、レール6の基準高さと実際高さとの差を示す高低差hが生まれている。
【0019】
この高低差を修正するために、道床2は衝撃圧力(pressure impact)を加えることにより路盤3から分離される。その場合、道床2および路盤3が損傷を受けないように注意しなければならない。その結果、分離は正確に道床2と路盤3との間の接触面9でおこなわれる。分離後、道床2は路盤3の上に浮遊状態でのっている状態となる。
【0020】
図2は、図1に示す注入孔付固定軌道がリフトアップされた状態を示す。
【0021】
道床2には注入孔10が穿孔される。注入孔10は道床2を横断して上側から下側に伸びている。レールの縦方向には多数のその形態の孔が規則的間隔で穿孔されている。図2に示される2つの注入孔10に加えて、レール縦方向においてジグザグ状態にずらして配置することも可能な、さらに別の注入孔を設けることができる。
【0022】
注入孔10の穿孔ののち、路盤3の上に浮遊状態でのっている道床2はリフトアップされる。このために、レール6、7を基準高さまで正確に表示し、そして調節することができる適切なリフティング手段が使われる。この調節が終了すると、「浮遊状態にある」(floating)道床2がこの位置で固定される。
【0023】
図3は鋳込み材料が圧入された状態の固定軌道を示す。
【0024】
道床2の固定のあと、注入孔10に鋳込み材料11が圧入される。鋳込み材料11は道床2の下側と路盤3の上側との間の中間空間に到達し、これを完全に満たす。道床2の側面には、鋳込み材料11の硬化後に再び除去されるコンクリート打ち込み用型枠を設けてもよい。鋳込み材料11の圧入はポンプまたはその他の適切な機器を使用することができる。鋳込み材料11の硬化のあと高さ修正のための手順は終了し、そのあとにはこの処置の前と同等の耐荷重力をもつ、所定の基準高さにまでリフトアップされた固定軌道1が生まれる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】道床が本発明の方法に従って路盤から分離されたあとの固定軌道を示す。
【図2】リフトアップされた状態の、図1に示す注入孔付き固定軌道を示す。
【図3】鋳込材料が圧入された状態の固定軌道を示す。
【符号の説明】
【0026】
1 固定軌道 2 道床 3 路盤
4 単独ブロック 5 単独ブロック 6 レール
7 レール 8 三角 9 接触面
10 注入孔 11 鋳込み材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の手順、すなわち
道床を共通の接触面において路盤から分離し、
道床の上側から下側へ伸びる注入孔を設け、
道床を所定の基準高さまでリフトアップし、
道床と路盤との間の中空間を満たすための流体状の鋳込み材料を注入孔から注入することからなる、レールを支えるまくらぎが路盤の上にのっている道床に敷き込まれている形態の固定軌道の高さ修正方法において、分離は衝撃圧力によりおこなわれることを特徴とする固定軌道の高さ修正方法。
【請求項2】
請求項1に掲げる固定軌道の高さ修正方法において、
道床内の注入孔はレールの領域内に設けられることを特徴とする固定軌道の高さ修正方法。
【請求項3】
請求項1または2に掲げる固定軌道の高さ修正方法において、
レールを横断する方向に複数の、とりわけ2つの注入孔が設けられることを特徴とする固定軌道の修正方法。
【請求項4】
前掲の請求項のいずれか1つに掲げる固定軌道の高さ修正方法において、レールの縦方向に複数の注入孔がずらして設けられることを特徴とする固定軌道の高さ修正方法。
【請求項5】
前掲の請求項のいずれか1つに掲げる固定軌道の高さ修正方法において、注入孔は穿孔されることを特徴とする固定軌道の高さ修正方法。
【請求項6】
前掲の請求項のいずれか1つに掲げる固定軌道の高さ修正方法において、鋳込み材料は鋳込まれるか、圧入されるか、または噴射注入されることを特徴とする固定軌道の高さ修正方法。
【請求項7】
前掲の請求項のいずれか1つに掲げる固定軌道の高さ修正方法において、鋳込み材料としてコンクリートまたはコンクリート代替系材料が使用されることを特徴とする固定軌道の高さ修正方法。
【請求項8】
前掲の請求項のいずれか1つに掲げる固定軌道の高さ修正方法において、分離は空気圧による衝撃圧力によりおこなわれることを特徴とする固定軌道の高さ修正方法。
【請求項9】
前掲の請求項のいずれか1つに掲げる固定軌道の高さ修正方法において、分離の前に衝撃圧力を伝達するための孔が設けられることを特徴とする固定軌道の高さ修正方法。
【請求項10】
前掲の請求項のいずれか1つに掲げる固定軌道の高さ修正方法において、追加的に水平に設けられ、圧力を生み出すための、液圧シリンダのような機器を使って分離がおこなわれることを特徴とする固定軌道の高さ修正方法。
【請求項11】
前掲の請求項のいずれか1つに掲げる固定軌道の高さ修正方法において、分断は水平方向に設けられる水平式ワイヤーソーによりおこなわれることを特徴とする固定軌道の高さ修正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−534816(P2008−534816A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502243(P2008−502243)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【国際出願番号】PCT/DE2006/000501
【国際公開番号】WO2006/102866
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(506311921)レール ワン ゲーエムベーハー (7)
【氏名又は名称原語表記】RAIL.ONE GmbH
【Fターム(参考)】