説明

固形状燃料

【課題】クリンカーの原因となるごみ固形化燃料からクリンカー性、腐食性の高い飛灰を発生させないことであり、別注入の添加剤を必要としない固形状燃料を提供する。
【解決手段】固形状燃料は、飛灰改質材を混合して成形されたごみ固形化燃料であって、該改質材が、アルミニウム化合物、ケイ素化合物及びアルミニウムケイ素化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものである。該改質材の含有量が0.1質量%以上である。該改質材の含有量が0.5〜10質量%である。該改質材が、アルミニウムケイ素化合物と、アルミニウム化合物及び/又はケイ素化合物とを含み、該アルミニウムケイ素化合物の含有量が0.1質量%以上である。該アルミニウムケイ素化合物が、ケイ酸アルミニウム化合物である。該改質材が廃棄物の再利用物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形状燃料に関する。更に詳細には、本発明は、RPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)やRDF(Refuse Derived Fuel)などの成形時に、所定の改質材を混合して成る固形状燃料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、都市ごみ等を燃焼させる焼却炉、キルン、廃熱回収ボイラー等の施設において、ごみを基準として珪素化合物の少なくとも一種を2〜200ppm(SiO換算)含む水スラリーをごみに添加し、発生するクリンカーを抑制する炉内クリンカー制御方法が提案されている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−106507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、添加剤はごみに添加あるいは炉内に直接投入するなどして炉内に投入されると、その一部は後部へ飛散してしまい、添加ロスが大きい。このため、クリンカーに対して有効に作用しにくく、有効に作用させるためには大量に使う必要があり、コスト高になるという問題点があった。また、別途、注入装置が必要となるなど、実用化には難点があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、その目的とするところは、従来技術は、添加ロスの大きい添加剤をクリンカー対策、高温腐食対策として使用するのに対し、本発明は、クリンカーの原因となるごみ固形化燃料からクリンカー性(クリンカー形成能力を意味する。)、腐食性の高い飛灰を発生させないことであり、別注入の添加剤を必要としない固形状燃料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた。そして、その結果、RPFやRDFなどのごみ固形化燃料に対して、所定の改質材を混合することなどにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明の固形状燃料は、飛灰改質材を混合して成形されたごみ固形化燃料であって、該改質材が、アルミニウム化合物、ケイ素化合物及びアルミニウムケイ素化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、飛灰改質材を混合して成形されたごみ固形化燃料であって、該改質材が、アルミニウム化合物、ケイ素化合物及びアルミニウムケイ素化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものとしたため、クリンカーの付着性が低い飛灰が生成し、あわせて飛灰の腐食性も低減することから、添加ロスの大きい添加剤を使用する必要がなく、さらには添加剤のような別注入工程を必要としない固形状燃料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】机上試験用の小型燃焼炉を示す模式図である。
【図2】バッチ式模擬燃焼炉の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の固形状燃料について詳細に説明する。
本実施形態に係る固形状燃料は、飛灰改質材を混合して成形されたごみ固形化燃料であって、該改質材が、アルミニウム化合物、ケイ素化合物及びアルミニウムケイ素化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものである。
このような構成とすることにより、燃焼時にアルミニウム化合物やケイ素化合物、アルミニウムケイ素化合物によって改質された飛灰が生成され、流動バイオマスボイラーの炉壁や煙道内水管表面などにおけるクリンカーの付着を抑制ないし防止することができる。また、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、アルミニウムケイ素化合物などの改質材がごみ固形化燃料に予め混合含有されている、すなわちごみ固形化燃料中に均一に存在しているため、付着性の低い飛灰に効率良く改質することができる。
そして、このアルミニウム化合物やケイ素化合物、アルミニウムケイ素化合物が含まれた飛灰は、アルカリや塩化水素などによる水管の腐食性が低くなるため、例えばこれまで使用が控えられていた塩素を多く含むプラスチックを使用したごみ固形化燃料は腐食の問題があるために使用が控えられてきたが、これらが問題なく使用できるようになるという利点もある。
【0011】
固形状燃料においては、上記改質材の含有量が0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であるとより好ましい。また、クリンカーの付着防止と腐食防止という双方の観点からは、上記改質材の含有量が0.5〜10質量%であることが好ましい。更に、上記改質材の合計含有量が1〜10質量%であることがより好ましい。上記改質材の含有量が0.5質量%より少ないとクリンカーの付着防止効果も腐食防止効果も低下し、上記改質材の含有量が10質量%を超えるとクリンカーの付着防止効果も腐食防止効果も低下しないが、固形状燃料中の灰分量が増加して発熱量が下がり、燃料として使用する上で好ましくない。更に、上記改質材の含有量が20質量%を超えると、灰分量が増加しすぎて固形状燃料自体の成形が難しくなる。クリンカー付着防止効果、腐食防止効果、燃料成形性及び燃料コストの全てを考慮すると、上記改質材の含有量が1〜10質量%であることが特に好ましい。
【0012】
固形状燃料において、アルミニウムケイ素化合物と、アルミニウム化合物及びケイ素化合物のいずれか一方又は双方とを含有するときは、アルミニウムケイ素化合物の含有量が0.1質量%以上であることが好ましい。特にアルミニウムケイ素化合物の含有量が0.1質量%以上であると、水管の腐食防止に対して優れた効果が発揮される。
【0013】
アルミニウム化合物としては、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、ボーキサイト、又はこれらを主成分とするものであれば特に限定されるものではない。これらは単独で又は混合して用いることができる。その中でも、水酸化アルミニウムを好適に用いることができる。
ケイ素化合物としては、二酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、又はこれらを主成分とするものであれば特に限定されるものではない。これらは単独で又は混合して用いることができる。その中でも、二酸化ケイ素(シリカ)を好適に用いることができる。
アルミニウムケイ素化合物としては、ケイ酸アルミニウム化合物やカオリンに代表されるケイ酸アルミニウムを主成分とする鉱物を好適に用いることができる。これらは単独で又は混合して用いることができる。
【0014】
固形状燃料においては、上記改質材が廃棄物の再利用物を含むことが望ましい。アルミニウム化合物やケイ素化合物、アルミニウムケイ素化合物が各種製造工程から排出された研磨くず、集塵ダストなどの廃棄物、焼却残渣物等の再利用物であると、安価な固形状燃料とすることができるからである。
【0015】
各種製造工程から排出された研磨くずや集塵ダストなどの廃棄物は、ケイ素やアルミニウム以外の不純物を多量に含んでいないものを用いることが好ましい。例えば、高純度シリコンの切削加工時に排出される切削くず、カオリン鉱物の破砕時に発生する微粉末ダストを挙げることができる。不純物としては鉛、亜鉛、ヒ素、錫、水銀、カドミウムなどの環境に有害な重金属が挙げられ、これらの物質がほとんど含まれないものを使用するのが良い。また、ごみ固形化燃料に混合して使用した際に、クリンカーや高温腐食の原因となるナトリウムやカリウム、塩素、リンなどの不純物についてもあまり含んでいないものを用いることが好ましい。
【0016】
なお、上記改質材におけるアルミニウム化合物、ケイ素化合物、アルミニウムケイ素化合物の組合せ及びその添加量は、成形する固形化燃料の性状、特にナトリウム、カリウム、塩素及び灰分の量等の因子を考慮して決定することができる。すなわち、灰分の多い固形状燃料を成形しているか否か、あるいは灰分中のナトリウムや塩素などが多い固形状燃料を成形しているか否かによって、改質材の混合量を適時決定することができる。
一般的に、クリンカー付着に対してはアルミニウム化合物やケイ素化合物の成分割合を多くすることが好ましく、腐食に対してはアルミニウムケイ素化合物の成分割合を多くすることが好ましく、クリンカー付着及び腐食の双方に対しては、これらを併用することが好ましい。
また、クリンカー抑制及び腐食防止に対しては、マグネシウム、カルシウム及びそれらの化合物も用いることができる。ドロマイトなどのケイ素を含む鉱物であればなお良い。
【実施例】
【0017】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0018】
・実施例及び比較例に用いたRPF
廃プラスチックと紙類とを、廃プラスチック:紙類=6:4で配合し、圧縮成形した固形化燃料のRPFである。
【0019】
・試験例1〜3に使用した本発明における改質材A〜Eの5種類
改質材A〜Dは一般の工業用製品である。改質材Eは産業廃棄物として引き取られたシリコン研磨くずや、カオリン鉱石の破砕ダストの廃棄物を再利用したものである。
・改質材A:アルミナ
・改質材B:シリカ
・改質材C:ケイ酸アルミニウム
・改質材D:アルミナ(35質量%)、シリカ(30質量%)及びケイ酸アルミニウム(35質量%)の混合物
・改質材E:アルミニウム化合物(35質量%)、ケイ素化合物(35質量%)、その他(10質量%)及びケイ酸アルミニウム(20質量%)の混合物(いずれも廃棄物の再利用)
【0020】
(試験例1)
実施例1−1〜実施例1−5と比較例1−1及び比較例2−1〜比較例2−5について、実験室で下記方法により灰化させて得た灰分の評価を行った。得られた結果を表1に示す。また、各例の仕様の一部を表1に併記する。
【0021】
【表1】

【0022】
(灰化方法)
ガスバーナーを備えた机上試験用の小型燃焼炉(図1)の中にRPFを置いて燃焼灰化させた残渣を灰分として採取した。
【0023】
(灰分の分析)
得られた灰分を蛍光X線分析装置で分析した。
【0024】
・比較例1−1
本発明における改質材を混合せずに成形した上記のRPFである。なお、RPF(比較例1−1に相当)の性状を表2に示す。
【0025】
【表2】

【0026】
・実施例1−1〜実施例1−5
製造ラインの途中(圧縮成形前)でアルミニウム化合物、ケイ素化合物、アルミニウムケイ素化合物等の所定の改質材A〜Eの5種類をRPF量に対して1質量%混合した本発明の固形状燃料である。
【0027】
・比較例2−1〜比較例2−5
圧縮成形された製造後のRPFの表面に、所定の改質材A〜Eの5種類をRPF量に対して1質量%ふりかけて添加したものである。すなわち1質量%を表面散布したものである。
【0028】
(クリンカー性の評価:融点の測定)
RPFを灰化させて得られた灰分の融点を測定して固形状燃料のクリンカー性を評価した。なお、融点は、JIS−M−8801の石炭灰分の溶融特性評価方法を応用して測定した。
【0029】
(腐食試験)
腐食性については、灰化させて得られた灰分で高温腐食試験を実施して評価した。試験方法は、JIS−Z−2292の塩塗布試験である。実験条件は下記の通りである。
・テストピース:SUS304(13×13×2.8mm)
・雰囲気温度:400℃、450℃、500℃
・雰囲気ガス:疑似排ガス(CO:10体積%、O:10体積%、HCl:0.1体積%、HO:20体積%、N:バランス)
・時間:100時間
【0030】
(試験例1の結果)
実施例1−3はカオリンが混合されるため、特に実施例1−3は腐食性に優れている。
実施例1−2はシリカが混合されるため、クリンカー抑制に優れている。
【0031】
(試験例2)
試験例1で、本発明における改質材を混合したRPFは、添加したものよりもクリンカー性、腐食性は低かった。
試験例2は、製造ラインの途中(圧縮成形前)でアルミニウム化合物、ケイ素化合物、アルミニウムケイ素化合物等の所定の改質材A〜Eの5種類を混合して圧縮成形した固形状燃料の成形性について目視評価した。
更に、試験例1と同様に小型燃焼炉で灰化させて得られた灰分で、混合量の最適範囲を測定した。
得られた結果を表3に示す。また、各例の仕様の一部を表3に併記する。表3の「成形性評価」における、「◎」は比較例1−1(無添加)とほぼ同等の成形性であること、「○」はやや成形性が悪く、ごく一部が剥離すること、「△」はかなり成形性が悪く、やや脆いこと、「×」は成形不能(自然崩壊)であることを示す。
【0032】
【表3】

【0033】
(試験例2の結果)
0.05質量%では比較的効果が小さい。
0.1質量%、0.2質量%であると腐食試験に効果が見られるが、表3中の融点の比較から、クリンカー性は良くない。
0.5質量%以上であると両方ともに効果が良く、10質量%では含ませることによる性能向上効果が小さくなる。また15質量%では成形性がやや悪く又は悪くなる。
実施例2−3−1〜実施例2−5−7はカオリンが混合されるため、特に実施例2−3−1〜2−3−7は腐食性に優れている。
実施例2−2−1〜2−2−7のシリカは、表3中の融点の比較から、クリンカー抑制に優れている。
【0034】
(試験例3)
図2に示す疑似燃焼炉において試験例1で作製した固形状燃料(1質量%混合)を灯油バーナーで助燃しながら燃焼し、テストプローブへのクリンカー付着量から本発明の評価を行った。また、添加剤として表面散布した比較例1−1、比較例2−1〜2−5及び表面散布量を多くした比較例3−1〜3−5についても、同様の評価を行った。具体的には、テストプローブ先端部分の約20cmに付着したクリンカーをスクレッパーで削り取り、質量を測定して付着量を評価した。得られた結果を表4に示す。また、各例の仕様の一部を表4に併記する。
【0035】
【表4】

【0036】
・比較例3−1〜比較例3−5
圧縮成形された製造後のRPFの表面に、所定の改質材A〜Eの5種類をRPF量に対して10質量%ふりかけて添加したものである。すなわち10質量%を表面散布したものである。
【0037】
(試験例3の結果)
クリンカー付着試験は実施例1−1のアルミナのものと実施例1−2のシリカのものが良いことが分かる。
比較例2−1〜2−5では効果がないことが分かる。但し、添加量を多くした比較例3−1〜3−5では実施例1と同様の効果が得られた(添加ではロスが多く、少量では十分な効果が発揮できなかった。)。
10質量%、15質量%では効果が変わらないが、15質量%は成形性が悪く、発熱量も下がるので、現実的ではない。特に含有量が0.5〜10質量%であると優れた効果が得られる。
【符号の説明】
【0038】
1 耐火れんが
2 ガスバーナー
3 排気口
4 のぞき窓
5 熱電対温度計
11 焼却物投入口(灰払い出し口)
12 燃焼炉
13 ブロワー
14 灯油タンク
15 灯油バーナー
16 模擬水管(テストプローブ)
17 排気煙道


【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛灰改質材を混合して成形されたごみ固形化燃料であって、当該改質材が、アルミニウム化合物、ケイ素化合物及びアルミニウムケイ素化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものであることを特徴とする固形状燃料。
【請求項2】
上記改質材の含有量が0.1質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の固形状燃料。
【請求項3】
上記改質材の含有量が0.5〜10質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の固形状燃料。
【請求項4】
上記改質材が、アルミニウムケイ素化合物と、アルミニウム化合物及び/又はケイ素化合物とを含み、
上記アルミニウムケイ素化合物の含有量が0.1質量%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の固形状燃料。
【請求項5】
上記アルミニウムケイ素化合物が、ケイ酸アルミニウム化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の固形状燃料。
【請求項6】
上記改質材が廃棄物の再利用物を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の固形状燃料。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate