説明

固形筆記体及びそれを用いた固形筆記体セット

【課題】 滑らかな筆記感を有すると共に、筆跡は明瞭な色変化を示し、しかも、筆跡を消色させた際に筆記面の筆跡を形成した箇所に残像が視認され難く、筆跡の消去性に優れた固形筆記体及びそれを用いた固形筆記体セットを提供する。
【解決手段】 (イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と、ポリアルキレンワックスと、数平均分子量が3000以上のポリアルキレングリコール及び/又は融点が50℃以下のケトン類とを少なくとも含有してなる固形筆記体、前記固形筆記体と摩擦体とからなる固形筆記体セット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固形筆記体及びそれを用いた固形筆記体セットに関する。詳細には、滑らかな筆記感を有すると共に筆跡の消去性に優れたクレヨン、色芯等の固形筆記体及びそれを用いた固形筆記体セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱変色性筆跡を形成させる固形筆記体に関して、幾つかの提案が開示されている(例えば、特許文献1乃至3参照)。
前記固形筆記体は、温度変化により変色する筆跡を形成できるものの、ワックスとして蜜蝋、木蝋、パラフィンワックスやマイクロクリスタリンワックスを用いると、滑らかな筆記感を付与することができるとしても筆跡を形成した紙面にワックスが浸透し易いため、筆跡を消去した箇所に残像が視認され易くなる。一方、ポリエチレンワックス等のポリアルキレンワックスを用いると、筆跡を消去した箇所に残像が視認され難いものの、滑らかな筆記感は得られ難く、しかも筆跡の色濃度が薄くなるため、明瞭な筆跡を形成し難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7−6248号公報
【特許文献2】特開2008−219048号公報
【特許文献3】特開2009−166310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は滑らかに筆記することができると共に、明瞭な筆跡を形成でき、しかも、形成された筆跡を消色させた際、残像が視認され難い固形筆記体及びそれを用いた固形筆記体セットを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と、ポリアルキレンワックスと、数平均分子量が3000以上のポリアルキレングリコール及び/又は融点が50℃以下のケトン類とを少なくとも含有してなる固形筆記体を要件とする。
更には、前記ポリアルキレンワックスがポリエチレンワックスであること、前記ポリエチレンワックスの密度が0.95以下であること、固形筆記体全量中、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を5乃至50重量%、ポリアルキレンワックスを10乃至70重量%、数平均分子量が3000以上のポリアルキレングリコール及び/又は融点が50℃以下のケトン類を1乃至20重量%含有してなること、融点が50℃以下のエステル類を含有してなること、前記固形筆記体の針入度が2〜30であること、摩擦部材を設けてなること等を要件とする。
更には、前記固形筆記体と、摩擦体とからなる固形筆記体セットを要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、滑らかな筆記感を有すると共に、筆跡は明瞭な色変化を示し、しかも、筆跡を消色させた際に筆記面の筆跡を形成した箇所に残像が視認され難く、筆跡の消去性に優れた固形筆記体及びそれを用いた固形筆記体セットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】加熱消色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の変色挙動を示す説明図である。
【図2】色彩記憶性を有する加熱消色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の変色挙動を示す説明図である。
【図3】加熱発色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の変色挙動を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の固形筆記体は、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と、ポリアルキレンワックスと、数平均分子量が3000以上のポリアルキレングリコール及び/又は融点が50℃以下のケトン類を混合して固めたものである。
前記ポリアルキレンワックスとして具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体のワックスが挙げられる。
前記ポリアルキレンワックスのうちポリエチレンワックスが好適に用いられ、密度が0.95以下のポリエチレンワックスがより好適に用いられる。
【0009】
前記可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料としては、特公昭51−44706号公報、特公昭51−44707号公報、特公平1−29398号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1〜7℃)を有する加熱消色型(加熱により消色し、冷却により発色する)の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料を適用できる(図1参照)。
【0010】
また、特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報、特開平8−39936号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性(ΔH=8〜50℃)を示す、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t)以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度(t)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t〜tの間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で色彩記憶性を有する加熱消色型(加熱により消色し、冷却により発色する)の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料も適用できる(図2参照)。
【0011】
以下に前記可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性を図2のグラフによって説明する。
図2において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全に消色した状態に達する温度t(以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、Bは消色し始める温度t(以下、消色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Cは発色し始める温度t(以下、発色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Dは完全に発色した状態に達する温度t(以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。
また、線分EFの長さが変色のコントラストを示す尺度であり、線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅ΔHと記す)であり、このΔH値が大きい程、変色前後の各状態の保持が容易である。
ここで、tとtの差、或いは、tとtの差(Δt)が変色の鋭敏性を示す尺度である。
【0012】
更に、可逆熱変色性組成物の発消色状態のうち常温域では特定の一方の状態(発色状態)のみ存在させると共に、前記可逆熱変色性組成物による筆跡を摩擦により簡易に変色(消色)させるためには、完全消色温度(t)が45〜90℃であり、且つ、発色開始温度(t)が−50〜10℃である。
ここで、発色状態が常温域で保持でき、且つ、筆跡の摩擦による変色性を容易とするために何故完全消色温度(t)が45〜95℃、且つ、発色開始温度(t)が−50〜10℃であるかを説明すると、発色状態から消色開始温度(t)を経て完全消色温度(t)に達しない状態で加温を止めると、再び第一の状態に復する現象を生じること、及び、消色状態から発色開始温度(t)を経て完全発色温度(t)に達しない状態で冷却を中止しても発色を生じた状態が維持されることから、完全消色温度(t)が常温域を越える45℃以上であれば、発色状態は通常の使用状態において維持されることになり、発色開始温度(t)が常温域を下回る−50〜10℃の温度であれば消色状態は通常の使用において維持される。
更に、摩擦により筆跡を消去する場合、完全消色温度(t)が95℃以下であれば、筆記面に形成された筆跡上を摩擦部材による数回の摩擦による摩擦熱で十分に変色できる。
完全消色温度(t)が95℃を越える温度の場合、摩擦部材による摩擦で得られる摩擦熱が完全消色温度に達し難くなるため、容易に変色し難くなり、摩擦回数が増加したり、或いは、荷重をかけ過ぎて摩擦する傾向にあるため、筆記面を傷めてしまう虞がある。
よって、前記温度設定は筆記面に変色状態の筆跡を選択して択一的に視認させる固形筆記体には重要な要件であり、利便性と実用性を満足させることができる。
前述の完全消色温度(t)の温度設定において、発色状態が通常の使用状態において維持されるためにはより高い温度であることが好ましく、しかも、摩擦による摩擦熱が完全消色温度(t)を越えるようにするためには低い温度であることが好ましい。
よって、完全消色温度(t)は、好ましくは50〜90℃、より好ましくは60〜80℃である。
更に、前述の発色開始温度(t)の温度設定において、消色状態が通常の使用状態において維持されるためにはより低い温度であることが好ましく、−50〜5℃が好適であり、−50〜0℃がより好適である。
なお、筆記体に分散された状態の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料を予め発色状態にするためには冷却手段としては汎用の冷凍庫にて冷却することが好ましいが、冷凍庫の冷却能力を考慮すると、−50℃迄が限度であり、従って、完全発色温度(t)は−50℃以上である。
本発明においてヒステリシス幅(ΔH)は50℃乃至100℃の範囲であり、好ましくは55乃至90℃、更に好ましくは60乃至80℃である。
【0013】
以下に可逆熱変色性組成物を構成する(イ)、(ロ)、(ハ)成分について説明する。
前記(イ)成分である電子供与性呈色性有機化合物としては、ジフェニルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類等が挙げられる。
以下にこれらの化合物を例示する。
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、
3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、
3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、
3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、
3−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、
3,6−ジフェニルアミノフルオラン、
3,6−ジメトキシフルオラン、
3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、
2−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、
3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、
2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、
2−(2−クロロアミノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、
2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、
2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、
1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、
2−キシリジノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、
1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、
1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、
2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン、
スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン、
2−(ジエチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(N−エチル−N−i−アミルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
2−(ジブチルアミノ)−8−(ジペンチルアミノ)−4−メチル−スピロ[5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)−イソベンゾフラン]−3−オン、
3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、
3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、
3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、
4,5,6,7−テトラクロロ−3−[4−(ジメチルアミノ)−2−メチルフェニル]−3−(1−エチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン、
3´,6´−ビス〔フェニル(2−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔フェニル(3−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3´,6´−ビス〔フェニル(3−エチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9´−〔9H〕キサンテン]−3−オン等を挙げることができる。
更には、蛍光性の黄色乃至赤色の発色を発現させるのに有効な、ピリジン系、キナゾリン系、ビスキナゾリン系化合物等を挙げることができ、4−[2,6−ビス(2−エトキシフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミンを例示できる。
【0014】
前記(ロ)成分の電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して成分(イ)を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群等がある。
活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂等を挙げることができる。又、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩であってもよい。
【0015】
以下に具体例を挙げる。
フェノール、o−クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)2−エチルヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン等がある。
前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2〜5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1、2、3−トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物等であってもよい。
【0016】
前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(ハ)成分としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類を挙げることができる。
前記(ハ)成分として好ましくは、色濃度−温度曲線に関し、大きなヒステリシス特性(温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線が、温度を低温側から高温側へ変化させる場合と、高温側から低温側へ変化させる場合で異なる)を示して変色する、色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を得ることのできる5℃以上50℃未満のΔT値(融点−曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等が用いられる。
【0017】
また、炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n−ペンチルアルコール又はn−ヘプチルアルコールと炭素数10乃至16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17乃至23の脂肪酸エステル化合物も有効である。
具体的には、酢酸n−ペンタデシル、酪酸n−トリデシル、酪酸n−ペンタデシル、カプロン酸n−ウンデシル、カプロン酸n−トリデシル、カプロン酸n−ペンタデシル、カプリル酸n−ノニル、カプリル酸n−ウンデシル、カプリル酸n−トリデシル、カプリル酸n−ペンタデシル、カプリン酸n−ヘプチル、カプリン酸n−ノニル、カプリン酸n−ウンデシル、カプリン酸n−トリデシル、カプリン酸n−ペンタデシル、ラウリン酸n−ペンチル、ラウリン酸n−ヘプチル、ラウリン酸n−ノニル、ラウリン酸n−ウンデシル、ラウリン酸n−トリデシル、ラウリン酸n−ペンタデシル、ミリスチン酸n−ペンチル、ミリスチン酸n−ヘプチル、ミリスチン酸n−ノニル、ミリスチン酸n−ウンデシル、ミリスチン酸n−トリデシル、ミリスチン酸n−ペンタデシル、パルミチン酸n−ペンチル、パルミチン酸n−ヘプチル、パルミチン酸n−ノニル、パルミチン酸n−ウンデシル、パルミチン酸n−トリデシル、パルミチン酸n−ペンタデシル、ステアリン酸n−ノニル、ステアリン酸n−ウンデシル、ステアリン酸n−トリデシル、ステアリン酸n−ペンタデシル、エイコサン酸n−ノニル、エイコサン酸n−ウンデシル、エイコサン酸n−トリデシル、エイコサン酸n−ペンタデシル、ベヘニン酸n−ノニル、ベヘニン酸n−ウンデシル、ベヘニン酸n−トリデシル、ベヘニン酸n−ペンタデシル等を挙げることができる。
【0018】
また、ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、2−ウンデカノン、3−ウンデカノン、4−ウンデカノン、5−ウンデカノン、2−ドデカノン、3−ドデカノン、4−ドデカノン、5−ドデカノン、2−トリデカノン、3−トリデカノン、2−テトラデカノン、2−ペンタデカノン、8−ペンタデカノン、2−ヘキサデカノン、3−ヘキサデカノン、9−ヘプタデカノン、2−ペンタデカノン、2−オクタデカノン、2−ノナデカノン、10−ノナデカノン、2−エイコサノン、11−エイコサノン、2−ヘンエイコサノン、2−ドコサノン、ラウロン、ステアロン等を挙げることができる。
また、総炭素数が12乃至24のアリールアルキルケトン類、例えば、n−オクタデカノフェノン、n−ヘプタデカノフェノン、n−ヘキサデカノフェノン、n−ペンタデカノフェノン、n−テトラデカノフェノン、4−n−ドデカアセトフェノン、n−トリデカノフェノン、4−n−ウンデカノアセトフェノン、n−ラウロフェノン、4−n−デカノアセトフェノン、n−ウンデカノフェノン、4−n−ノニルアセトフェノン、n−デカノフェノン、4−n−オクチルアセトフェノン、n−ノナノフェノン、4−n−ヘプチルアセトフェノン、n−オクタノフェノン、4−n−ヘキシルアセトフェノン、4−n−シクロヘキシルアセトフェノン、4−tert−ブチルプロピオフェノン、n−ヘプタフェノン、4−n−ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル−n−ブチルケトン、4−n−ブチルアセトフェノン、n−ヘキサノフェノン、4−イソブチルアセトフェノン、1−アセトナフトン、2−アセトナフトン、シクロペンチルフェニルケトン等を挙げることができる。
【0019】
また、エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効であり、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、デカンジオールジメチルエーテル、ウンデカンジオールジメチルエーテル、ドデカンジオールジメチルエーテル、トリデカンジオールジメチルエーテル、デカンジオールジエチルエーテル、ウンデカンジオールジエチルエーテル等を挙げることができる。
【0020】
また、前記(ハ)成分として、下記一般式(1)で示される化合物を用いることもできる。
【化1】

〔式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、mは0〜2の整数を示し、X、Xのいずれか一方は−(CHOCOR又は−(CHCOOR、他方は水素原子を示し、nは0〜2の整数を示し、Rは炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、Y及びYは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、又は、ハロゲンを示し、r及びpは1〜3の整数を示す。〕
前記式(1)で示される化合物のうち、Rが水素原子の場合、より広いヒステリシス幅を有する可逆熱変色性組成物が得られるため好適であり、更にRが水素原子であり、且つ、mが0の場合がより好適である。
なお、式(1)で示される化合物のうち、より好ましくは下記一般式(2)で示される化合物が用いられる。
【化2】

式中のRは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示すが、好ましくは炭素数10〜24のアルキル基、更に好ましくは炭素数12〜22のアルキル基である。
前記化合物として具体的には、オクタン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ノナン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、デカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ウンデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ドデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、トリデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、テトラデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ペンタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘキサデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘプタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、オクタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチルを例示できる。
【0021】
更に、前記(ハ)成分として、下記一般式(3)で示される化合物を用いることもできる。
【化3】

(式中、Rは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、m及びnはそれぞれ1〜3の整数を示し、X及びYはそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲンを示す。)
前記化合物として具体的には、オクタン酸1,1−ジフェニルメチル、ノナン酸1,1−ジフェニルメチル、デカン酸1,1−ジフェニルメチル、ウンデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ドデカン酸1,1−ジフェニルメチル、トリデカン酸1,1−ジフェニルメチル、テトラデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ペンタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘキサデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘプタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、オクタデカン酸1,1−ジフェニルメチルを例示できる。
【0022】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(4)で示される化合物を用いることもできる。
【化4】

(式中、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、メトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1乃至3の整数を示し、nは1乃至20の整数を示す。)
前記化合物としては、マロン酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、こはく酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、こはく酸と2−〔4−(3−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アジピン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、ピメリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(3−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(2,4−ジクロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アゼライン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、セバシン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,10−デカンジカルボン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−〔4−(2−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステルを例示できる。
【0023】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(5)で示される化合物を用いることもできる。
【化5】

(式中、Rは炭素数1乃至21のアルキル基又はアルケニル基を示し、nは1乃至3の整数を示す。)
前記化合物としては、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとウンデカン酸とのジエステル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステル、1,4−ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンと酪酸とのジエステル、1,4−ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンとイソ吉草酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと酢酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとプロピオン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと吉草酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプロン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリル酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステルを例示できる。
【0024】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(6)で示される化合物を用いることもできる。
【化6】

(式中、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1乃至3の整数を示し、nは1乃至20の整数を示す。)
前記化合物としては、こはく酸と2−フェノキシエタノールとのジエステル、スベリン酸と2−フェノキシエタノールとのジエステル、セバシン酸と2−フェノキシエタノールとのジエステル、1,10-デカンジカルボン酸と2−フェノキシエタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−フェノキシエタノールとのジエステルを例示できる。
【0025】
更に、電子受容性化合物として炭素数3乃至18の直鎖又は側鎖アルキル基を有する特定のアルコキシフェノール化合物(特開平11−129623号公報)、特定のヒドロキシ安息香酸エステル(特開2001−105732号公報)、没食子酸エステル(特開2003−253149号公報)等を用いた加熱発色型の可逆熱変色性組成物を適用することもできる(図3参照)。
【0026】
前記(イ)、(ロ)、(ハ)成分の配合割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の変色特性が得られる成分比は、(イ)成分1に対して、(ロ)成分0.1〜50、好ましくは0.5〜20、(ハ)成分1〜800、好ましくは5〜200の範囲である(前記割合はいずれも質量部である)。又、各成分は各々二種以上を混合して用いてもよい。
【0027】
前記可逆熱変色性組成物はマイクロカプセルに内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料として使用される。これは、種々の使用条件において可逆熱変色性組成物は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができるからである。
前記可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル化する方法としては、界面重合法、界面重縮合法、in Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与したり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
前記マイクロカプセル顔料の形態は円形断面の形態の他、非円形断面の形態であってもよい。
ここで、可逆熱変色性組成物とマイクロカプセル壁膜の質量比は7:1〜1:1、好ましくは6:1〜1:1の範囲を満たす。
可逆熱変色性組成物の壁膜に対する比率が前記範囲より大になると、壁膜の厚みが肉薄となり過ぎ、圧力や熱に対する耐性の低下を生じ易く、壁膜の可逆熱変色性組成物に対する比率が前記範囲より大になると発色時の色濃度及び鮮明性の低下を生じ易くなる。
【0028】
前記マイクロカプセル顔料は、平均粒子径が0.1〜30μm、好ましくは0.3〜20μm、より好ましくは0.5〜10μmの範囲が実用性を満たす。
前記マイクロカプセルは最大外径の平均値が30μmを越えると分散安定性に欠けることがあり、また、最大外径の平均値が0.1μm未満では高濃度の発色性を示し難くなる。
【0029】
前記数平均分子量が3000以上のポリアルキレングリコール、融点が50℃以下のケトン類は、ポリアルキレンワックスを含む固形筆記体に滑らかな筆記感を付与することができると共に、前記可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の色濃度を低下させることがないため、明瞭な筆跡を形成することができる。
前記数平均分子量が3000以上のポリアルキレングリコールとして、数平均分子量が3000〜20000、好ましくは8000〜20000、より好ましくは10000〜20000のポリアルキレングリコールが可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の色濃度の維持又は向上にいっそう有効である。
前記融点が50℃以下のケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン、例えば、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、2−ウンデカノン、3−ウンデカノン、5−ウンデカノン、2−ドデカノン、5−ドデカノン、2−トリデカノン、2−ペンタデカノン、8−ペンタデカノン、2−ヘキサデカノン、3−ヘキサデカノン、2−ペンタデカノン、総炭素数が12乃至24のアリールアルキルケトン、例えば、n−テトラデカノフェノン、n−トリデカノフェノンを挙げることができる。
【0030】
前記固形筆記体全量中、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を5乃至50重量%、好ましくは10乃至40重量%、ポリアルキレンワックスを10乃至70重量%、好ましくは15乃至50重量%、数平均分子量が3000以上のポリアルキレングリコール及び/又は融点が50℃以下のケトン類を1乃至20重量%、好ましくは2乃至10重量%含有させることが好ましい。
【0031】
更に、前記固形筆記体中に融点が50℃以下のエステル類を含有させることにより、前記可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の色濃度をよりいっそう向上させることができる。
前記融点が50℃以下のエステル類としては、ラウリン酸ステアリル、カプリン酸ステアリル、カプリン酸セチル、ミリスチン酸デシル、ステアリン酸ベンジルが挙げられる。
【0032】
前記固形筆記体は、針入度が2〜30、好ましくは2〜25、より好ましくは2〜20である。
針入度は、JIS K2207に規格化されており、固形筆記体に規定重量の針を温度25℃,荷重100g、貫入時間5秒にて垂直に進入させ、進入した長さを表したものであって、針入度の値は、0.1mmを針入度1と表す。従って、数字が小さいほど硬く、大きいほど柔らかい固形筆記体である。
針入度が2未満では、固形筆記体が硬すぎて筆跡がうすく、視認性に乏しくなる。一方、針入度が30を越えると、固形筆記体が柔らかすぎて筆記し難く、しかも、筆跡は乾き難いため筆記面の空白部分を汚染したり、他の紙への色移りや汚れを生じる。
【0033】
なお、鉛筆芯やシャープペンシル用芯等の鉛芯の場合は、タルク、マイカ、カオリン、クレー、沈降性硫酸バリウム、炭酸カルシウム、窒化ホウ素、チタン酸カリウムウィスカー等の体質材を強度の向上や書き味を調整する目的で配合することができる。
【0034】
本発明の固形筆記体により形成された筆跡を変色させるためには、指による擦過や加熱又は冷熱具の適用により変色させることができる。
前記加熱具としては、抵抗発熱体を装備した通電加熱変色具、温水等を充填した加熱変色具、ヘアドライヤーの適用が挙げられるが、好ましくは、簡便な方法により変色可能な手段として摩擦部材が用いられる。
前記摩擦部材としては、弾性感に富み、擦過時に適度な摩擦を生じて摩擦熱を発生させることのできるエラストマー、プラスチック発泡体等の弾性体が好適である。
なお、消しゴムを使用して筆跡を摩擦することもできるが、摩擦時に消しカスが発生するため、消しカスが殆ど発生しない前述の摩擦部材が好適に用いられる。
前記摩擦部材の材質としては、シリコーン樹脂やSEBS樹脂(スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体)、ポリエステル系樹脂、ポリエステル系エラストマー等が用いられる。
前記摩擦部材は固形筆記体と別体の任意形状の部材(摩擦体)とを組み合わせて固形筆記体セットを得ることもできるが、固形筆記体に摩擦部材を設けることにより、携帯性に優れる。
冷熱具としては、ペルチエ素子を利用した冷熱変色具、冷水、氷片等の冷媒を充填した冷熱変色具、冷蔵庫や冷凍庫の適用が挙げられる。
【実施例】
【0035】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
尚、実施例中の部は質量部を示す。
実施例1
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として4,5,6,7−テトラクロロ−3−〔4−(ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル〕−3−〔1−エチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル〕−1(3H)−イソベンゾフラノン1.5部、(ロ)成分として2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、4,4′−(2−メチルプロピリデン)ビスフェノール3.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる色彩記憶性を有する加熱消色型の可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料(T:−16℃、T:−8℃、T:48℃、T:58℃、ΔH:65℃、平均粒子径:2.5μm、可逆熱変色性組成物:壁膜=2.6:1.0、青色から無色に色変化する)を調製した。
【0036】
固形筆記体の作製
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料30部、ポリエチレンワックス〔商品名:サンワックス171P、三洋化成工業(株)製、20℃における密度0.92〕60部、ポリエチレングリコール〔商品名:PEG−4000N、三洋化成工業(株)製、数平均分子量3,100〕10部を加熱混合溶融し、クレヨン成形金型に流し込み冷却させて固形筆記体(クレヨン)を得た。
前記固形筆記体の針入度を測定すると10であった。
前記固形筆記体を−16℃以下に冷却して可逆熱変色性組成物を青色に発色させた後、紙面上に筆記すると、青色の筆跡を形成することができた。
前記筆跡はSEBS樹脂からなる摩擦体を用いて摩擦することにより消去でき、再び固形筆記体を用いて文字を描くことができた。
【0037】
実施例2
固形筆記体の作製
実施例1で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料30部、ポリエチレンワックス〔商品名:サンワックス171P、三洋化成工業(株)製、20℃における密度0.92〕60部、ポリエチレングリコール〔商品名:PEG−6000P、三洋化成工業(株)製、数平均分子量8,300〕10部を加熱混合溶融し、クレヨン成形金型に流し込み冷却させて固形筆記体(クレヨン)を得た。
前記固形筆記体の針入度を測定すると8であった。
前記固形筆記体を−16℃以下に冷却して可逆熱変色性組成物を青色に発色させた後、紙面上に筆記すると、青色の筆跡を形成することができた。
前記筆跡はSEBS樹脂からなる摩擦体を用いて摩擦することにより消去でき、再び固形筆記体を用いて文字を描くことができた。
【0038】
実施例3
固形筆記体の作製
実施例1で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料30部、ポリエチレンワックス〔商品名:サンワックス171P、三洋化成工業(株)製、20℃における密度0.92〕60部、ポリエチレングリコール〔商品名:PEG−10000、三洋化成工業(株)製、数平均分子量11,000〕10部を加熱混合溶融し、クレヨン成形金型に流し込み冷却させて固形筆記体(クレヨン)を得た。
前記固形筆記体の針入度を測定すると8であった。
前記固形筆記体を−16℃以下に冷却して可逆熱変色性組成物を青色に発色させた後、紙面上に筆記すると、青色の筆跡を形成することができた。
前記筆跡はSEBS樹脂からなる摩擦体を用いて摩擦することにより消去でき、再び固形筆記体を用いて文字を描くことができた。
【0039】
実施例4
固形筆記体の作製
実施例1で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料30部、ポリエチレンワックス〔商品名:サンワックス171P、三洋化成工業(株)製、20℃における密度0.92〕60部、ポリエチレングリコール〔商品名:PEG−20000、三洋化成工業(株)製、数平均分子量20,000〕10部を加熱混合溶融し、クレヨン成形金型に流し込み冷却させて固形筆記体(クレヨン)を得た。
前記固形筆記体の針入度を測定すると8であった。
前記固形筆記体を−16℃以下に冷却して可逆熱変色性組成物を青色に発色させた後、紙面上に筆記すると、青色の筆跡を形成することができた。
前記筆跡はSEBS樹脂からなる摩擦体を用いて摩擦することにより消去でき、再び固形筆記体を用いて文字を描くことができた。
【0040】
実施例5
固形筆記体の作製
実施例1で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料30部、ポリエチレンワックス〔商品名:サンワックス171P、三洋化成工業(株)製、20℃における密度0.92〕60部、ポリエチレングリコール〔商品名:PEG−10000、三洋化成工業(株)製、数平均分子量11,000〕5部、オクタデシルデカノエート5部を加熱混合溶融し、クレヨン成形金型に流し込み冷却させて固形筆記体(クレヨン)を得た。
前記固形筆記体の針入度を測定すると12であった。
前記固形筆記体を−16℃以下に冷却して可逆熱変色性組成物を青色に発色させた後、紙面上に筆記すると、青色の筆跡を形成することができた。
前記筆跡はSEBS樹脂からなる摩擦体を用いて摩擦することにより消去でき、再び固形筆記体を用いて文字を描くことができた。
【0041】
実施例6
固形筆記体の作製
実施例1で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料30部、ポリエチレンワックス〔商品名:サンワックス171P、三洋化成工業(株)製、20℃における密度0.92〕60部、7−トリデカノン(融点30℃)10部を加熱混合溶融し、クレヨン成形金型に流し込み冷却させて固形筆記体(クレヨン)を得た。
前記固形筆記体の針入度を測定すると15であった。
前記固形筆記体を−16℃以下に冷却して可逆熱変色性組成物を青色に発色させた後、紙面上に筆記すると、青色の筆跡を形成することができた。
前記筆跡はSEBS樹脂からなる摩擦体を用いて摩擦することにより消去でき、再び固形筆記体を用いて文字を描くことができた。
【0042】
実施例7
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
(イ)成分として2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン5部、(ロ)成分として2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5部、4,4′−(2−メチルプロピリデン)ビスフェノール3.0部、(ハ)成分としてラウリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50部からなる色彩記憶性を有する加熱消色型の可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料(T:−8℃、T:−1℃、T:52℃、T:65℃、ΔH:63℃、平均粒子径:3.0μm、可逆熱変色性組成物:壁膜=2.6:1.0、黒色から無色に色変化する)を調製した。
【0043】
固形筆記体の作製
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料20部、ポリエチレンワックス〔商品名:サンワックス151P、三洋化成工業(株)製、20℃における密度0.92〕40部、ポリエチレングリコール〔商品名:PEG−4000N、三洋化成工業(株)製、数平均分子量3,100〕10部、炭酸カルシウム30部を加熱混合溶融し、押出成形にて鉛筆芯を成形して固形筆記体(鉛筆用芯)を得た。
前記固形筆記体の針入度を測定すると7であった。
前記固形筆記体を−8℃以下に冷却して可逆熱変色性組成物を黒色に発色させた後、紙面上に筆記すると、黒色の筆跡を形成することができた。
前記筆跡は、SEBS樹脂からなる摩擦体を用いて摩擦することにより消去でき、再び固形筆記体を用いて文字を描くことができた。
【0044】
実施例8
固形筆記体の作製
実施例7で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料20部、ポリエチレンワックス〔商品名:サンワックス151P、三洋化成工業(株)製、20℃における密度0.92〕40部、ポリエチレングリコール〔商品名:PEG−6000P、三洋化成工業(株)製、数平均分子量8,300〕10部、炭酸カルシウム30部を加熱混合溶融し、押出成形にて鉛筆芯を成形して固形筆記体(鉛筆用芯)を得た。
前記固形筆記体の針入度を測定すると8であった。
前記固形筆記体を−8℃以下に冷却して可逆熱変色性組成物を黒色に発色させた後、紙面上に筆記すると、黒色の筆跡を形成することができた。
前記筆跡は、SEBS樹脂からなる摩擦体を用いて摩擦することにより消去でき、再び固形筆記体を用いて文字を描くことができた。
【0045】
実施例9
固形筆記体の作製
実施例7で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料20部、ポリエチレンワックス〔商品名:サンワックス151P、三洋化成工業(株)製、20℃における密度0.92〕40部、ポリエチレングリコール〔商品名:PEG−10000、三洋化成工業(株)製、数平均分子量11,000〕10部、炭酸カルシウム30部を加熱混合溶融し、押出成形にて鉛筆芯を成形して固形筆記体(鉛筆用芯)を得た。
前記固形筆記体の針入度を測定すると8であった。
前記固形筆記体を−8℃以下に冷却して可逆熱変色性組成物を黒色に発色させた後、紙面上に筆記すると、黒色の筆跡を形成することができた。
前記筆跡は、SEBS樹脂からなる摩擦体を用いて摩擦することにより消去でき、再び固形筆記体を用いて文字を描くことができた。
【0046】
実施例10
固形筆記体の作製
実施例7で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料20部、ポリエチレンワックス〔商品名:サンワックス151P、三洋化成工業(株)製、20℃における密度0.92〕40部、ポリエチレングリコール〔商品名:PEG−20000、三洋化成工業(株)製、数平均分子量20,000〕10部、炭酸カルシウム30部を加熱混合溶融し、押出成形にて鉛筆芯を成形して固形筆記体(鉛筆用芯)を得た。
前記固形筆記体の針入度を測定すると9であった。
前記固形筆記体を−8℃以下に冷却して可逆熱変色性組成物を黒色に発色させた後、紙面上に筆記すると、黒色の筆跡を形成することができた。
前記筆跡は、SEBS樹脂からなる摩擦体を用いて摩擦することにより消去でき、再び固形筆記体を用いて文字を描くことができた。
【0047】
実施例11
固形筆記体の作製
実施例7で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料20部、ポリエチレンワックス〔商品名:サンワックス151P、三洋化成工業(株)製、20℃における密度0.92〕40部、ポリエチレングリコール〔商品名:PEG−10000、三洋化成工業(株)製、数平均分子量11,000〕5部、オクタデシルデカノエート5部、炭酸カルシウム30部を加熱混合溶融し、押出成形にて鉛筆芯を成形して固形筆記体(鉛筆用芯)を得た。
前記固形筆記体の針入度を測定すると10であった。
前記固形筆記体を−8℃以下に冷却して可逆熱変色性組成物を黒色に発色させた後、紙面上に筆記すると、黒色の筆跡を形成することができた。
前記筆跡は、SEBS樹脂からなる摩擦体を用いて摩擦することにより消去でき、再び固形筆記体を用いて文字を描くことができた。
【0048】
実施例12
固形筆記体の作製
実施例7で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料20部、ポリエチレンワックス〔商品名:サンワックス151P、三洋化成工業(株)製、20℃における密度0.92〕40部、7−トリデカノン(融点30℃)10部、炭酸カルシウム30部を加熱混合溶融し、押出成形にて鉛筆芯を成形して固形筆記体(鉛筆用芯)を得た。
前記固形筆記体の針入度を測定すると13であった。
前記固形筆記体を−8℃以下に冷却して可逆熱変色性組成物を黒色に発色させた後、紙面上に筆記すると、黒色の筆跡を形成することができた。
前記筆跡は、SEBS樹脂からなる摩擦体を用いて摩擦することにより消去でき、再び固形筆記体を用いて文字を描くことができた。
【0049】
比較例1
固形筆記体の作製
実施例1で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料30部、ポリエチレンワックス〔商品名:サンワックスLEL−800、三洋化成工業(株)製、20℃における密度0.96〕70部を加熱混合溶融し、クレヨン成形金型に流し込み冷却させて固形筆記体(クレヨン)を得た。
前記固形筆記体の針入度を測定すると1であった。
前記固形筆記体を−16℃以下に冷却して可逆熱変色性組成物を青色に発色させた後、紙面上に筆記すると、青色の筆跡を形成することができた。
前記筆跡は、SEBS樹脂からなる摩擦体を用いて摩擦することにより消去でき、再び固形筆記体を用いて文字を描くことができた。
【0050】
比較例2
固形筆記体の作製
実施例1で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料30部、ポリエチレンワックス〔商品名:サンワックス171P、三洋化成工業(株)製、20℃における密度0.92〕70部を加熱混合溶融し、クレヨン成形金型に流し込み冷却させて固形筆記体(クレヨン)を得た。
前記固形筆記体の針入度を測定すると8であった。
前記固形筆記体を−16℃以下に冷却して可逆熱変色性組成物を青色に発色させた後、紙面上に筆記すると、青色の筆跡を形成することができた。
前記筆跡は、SEBS樹脂からなる摩擦体を用いて摩擦することにより消去でき、再び固形筆記体を用いて文字を描くことができた。
【0051】
比較例3
固形筆記体の作製
実施例1で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料30部、ポリエチレンワックス〔(商品名:サンワックス171P、三洋化成工業(株)製、20℃における密度0.92〕60部、ポリエチレングリコール〔商品名:PEG−600、三洋化成工業(株)製、数平均分子量600〕10部を加熱混合溶融し、クレヨン成形金型に流し込み冷却させて固形筆記体(クレヨン)を得た。
前記固形筆記体の針入度を測定すると5であった。
前記固形筆記体を−16℃以下に冷却して可逆熱変色性組成物を青色に発色させた後、紙面上に筆記すると、青色の筆跡を形成することができた。
前記筆跡は、SEBS樹脂からなる摩擦体を用いて摩擦することにより消去でき、再び固形筆記体を用いて文字を描くことができた。
【0052】
比較例4
固形筆記体の作製
実施例1で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料30部、ポリエチレンワックス〔(商品名:サンワックス171P、三洋化成工業(株)製、20℃における密度0.92〕60部、ステアロン(融点86℃)10部を加熱混合溶融し、クレヨン成形金型に流し込み冷却させて固形筆記体(クレヨン)を得た。
前記固形筆記体の針入度を測定すると8であった。
前記固形筆記体を−16℃以下に冷却して可逆熱変色性組成物を青色に発色させた後、紙面上に筆記すると、青色の筆跡を形成することができた。
前記筆跡は、SEBS樹脂からなる摩擦体を用いて摩擦することにより消去でき、再び固形筆記体を用いて文字を描くことができた。
【0053】
比較例5
固形筆記体の作製
実施例1で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料30部、パラフィンワックス70部を加熱混合溶融し、クレヨン成形金型に流し込み冷却させて固形筆記体(クレヨン)を得た。
前記固形筆記体の針入度を測定すると11であった。
前記固形筆記体を−16℃以下に冷却して可逆熱変色性組成物を青色に発色させた後、紙面上に筆記すると、青色の筆跡を形成することができた。
前記筆跡は、SEBS樹脂からなる摩擦体を用いて摩擦することにより消去でき、再び固形筆記体を用いて文字を描くことができた。
【0054】
比較例6
固形筆記体の作製
実施例7で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料20部、ポリエチレンワックス〔商品名:サンワックスLEL−800、三洋化成工業(株)製、20℃における密度0.96〕50部、炭酸カルシウム30部を加熱混合溶融し、押出成形にて鉛筆芯を成形して固形筆記体(鉛筆用芯)を得た。
前記固形筆記体の針入度を測定すると1であった。
前記固形筆記体を−8℃以下に冷却して可逆熱変色性組成物を黒色に発色させた後、紙面上に筆記すると、黒色の筆跡を形成することができた。
前記筆跡は、SEBS樹脂からなる摩擦体を用いて摩擦することにより消去でき、再び固形筆記体を用いて文字を描くことができた。
【0055】
比較例7
固形筆記体の作製
実施例7で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料20部、ポリエチレンワックス〔商品名:サンワックス151P、三洋化成工業(株)製、20℃における密度0.92〕50部、炭酸カルシウム30部を加熱混合溶融し、押出成形にて鉛筆芯を成形して固形筆記体(鉛筆用芯)を得た。
前記固形筆記体の針入度を測定すると5であった。
前記固形筆記体を−8℃以下に冷却して可逆熱変色性組成物を黒色に発色させた後、紙面上に筆記すると、黒色の筆跡を形成することができた。
前記筆跡は、SEBS樹脂からなる摩擦体を用いて摩擦することにより消去でき、再び固形筆記体を用いて文字を描くことができた。
【0056】
比較例8
固形筆記体の作製
実施例7で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料20部、ポリエチレンワックス〔商品名:サンワックス151P、三洋化成工業(株)製、20℃における密度0.92〕40部、ポリエチレングリコール〔商品名:PEG−600、三洋化成工業(株)製、数平均分子量600〕10部、炭酸カルシウム30部を加熱混合溶融し、押出成形にて鉛筆芯を成形して固形筆記体(鉛筆用芯)を得た。
前記固形筆記体の針入度を測定すると13であった。
前記固形筆記体を−8℃以下に冷却して可逆熱変色性組成物を黒色に発色させた後、紙面上に筆記すると、黒色の筆跡を形成することができた。
前記筆跡は、SEBS樹脂からなる摩擦体を用いて摩擦することにより消去でき、再び固形筆記体を用いて文字を描くことができた。
【0057】
比較例9
固形筆記体の作製
実施例7で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料20部、ポリエチレンワックス〔商品名:サンワックス151P、三洋化成工業(株)製、20℃における密度0.92〕40部、ステアロン(融点86℃)10部、炭酸カルシウム30部を加熱混合溶融し、押出成形にて鉛筆芯を成形して固形筆記体(鉛筆用芯)を得た。
前記固形筆記体の針入度を測定すると6であった。
前記固形筆記体を−8℃以下に冷却して可逆熱変色性組成物を黒色に発色させた後、紙面上に筆記すると、黒色の筆跡を形成することができた。
前記筆跡は、SEBS樹脂からなる摩擦体を用いて摩擦することにより消去でき、再び固形筆記体を用いて文字を描くことができた。
【0058】
比較例10
固形筆記体の作製
実施例7で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料20部、パラフィンワックス50部、炭酸カルシウム30部を加熱混合溶融し、押出成形にて鉛筆芯を成形して固形筆記体(鉛筆用芯)を得た。
前記固形筆記体の針入度を測定すると8であった。
前記固形筆記体を−8℃以下に冷却して可逆熱変色性組成物を黒色に発色させた後、紙面上に筆記すると、黒色の筆跡を形成することができた。
前記筆跡は、SEBS樹脂からなる摩擦体を用いて摩擦することにより消去でき、再び固形筆記体を用いて文字を描くことができた。
【0059】
前記実施例1乃至12、比較例1乃至10で得られた固形筆記体を用いて、筆記感、筆跡の色濃度、筆跡を消去した後の残像の有無について評価した。
筆記感は、白色上質紙上に筆跡を描いた際の滑らかさを評価した。
筆跡濃度は固形筆記体を500gの加重で白色上質紙上に筆跡を描き、その筆跡を目視により観察した。
残像の有無は、白色上質紙上に筆跡を描き、SEBS樹脂からなる摩擦体を用いて摩擦して消去した後、残像を目視により観察した。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
以下に表中の評価に対する記号について記す。
筆記感
◎:非常に滑らかに筆記することができる。
○:滑らかに筆記することができる。
△:やや滑らかさに欠ける。
×:滑らかさに欠ける。
色濃度
◎:筆跡の視認性に優れる。
○:筆跡は視認できる。
×:筆跡の視認性に欠ける。
残像の有無
○:残像は見られない。
×:残像が見られる。
【0063】
実施例13
固形筆記具の作製
実施例3で得たクレヨンをプラスチック製円筒状容器にセットして固形筆記具を得た。なお、容器の後端部にSEBS樹脂からなる摩擦体を設けてなる。
前記固形筆記具は紙面上に筆記すると、青色の筆跡を形成することができ、容器の後端部に設けた摩擦体を用いて筆跡を摩擦することにより消去でき、携帯性に優れた固形筆記体であった。
【0064】
実施例14
固形筆記具セットの作製
実施例5で得た固形筆記体とSEBS樹脂からなる摩擦体を組み合わせて固形筆記具セットを得た。
前記固形筆記具セットは固形筆記体を用いて紙面上に筆記すると、青色の筆跡を形成することができ、摩擦体を用いて筆跡を摩擦することにより無色になり、携帯性に優れた固形筆記体セットであった。
【符号の説明】
【0065】
加熱消色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の完全発色温度
加熱消色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の発色開始温度
加熱消色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の消色開始温度
加熱消色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の完全消色温度
加熱発色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の完全消色温度
加熱発色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の消色開始温度
加熱発色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の発色開始温度
加熱発色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の完全発色温度
ΔH ヒステリシス幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と、ポリアルキレンワックスと、数平均分子量が3000以上のポリアルキレングリコール及び/又は融点が50℃以下のケトン類とを少なくとも含有してなる固形筆記体。
【請求項2】
前記ポリアルキレンワックスがポリエチレンワックスである請求項1又は2記載の固形筆記体。
【請求項3】
前記ポリエチレンワックスの密度が0.95以下である請求項2記載の固形筆記体。
【請求項4】
固形筆記体全量中、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を5乃至50重量%、ポリアルキレンワックスを10乃至70重量%、数平均分子量が3000以上のポリアルキレングリコール及び/又は融点が50℃以下のケトン類を1乃至20重量%含有してなる請求項1乃至3のいずれか一項に記載の固形筆記体。
【請求項5】
融点が50℃以下のエステル類を含有してなる請求項1乃至4のいずれか一項に記載の固形筆記体。
【請求項6】
前記固形筆記体の針入度が2〜30である請求項1乃至5のいずれか一項に記載の固形筆記体。
【請求項7】
摩擦部材を設けてなる請求項1乃至6のいずれか一項に記載の固形筆記体。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の固形筆記体と、摩擦体とからなる固形筆記体セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−219253(P2012−219253A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89748(P2011−89748)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】