説明

固形製薬学的処方物中への付形剤としての表面活性タンパク質

本発明は、製薬学的技術における適用のための、特に製剤使用のための付形剤としての表面活性ハイドロフォビンの使用に関する。提供されるのは、製剤形態の製薬学的特性の改変のために、製剤組成物にハイドロフォビンを混合するか、ハイドロフォビン含有溶液を用いて製薬学的形態の表面を処置するための方法である。本発明の好ましい一実施態様においては、ハイドロフォビンが、製薬学的組成物の特性を改善するために、例えば、界面活性剤として作用するために、又は、製剤形態の崩壊に対する抵抗性を増加させるために、遅延された薬物放出を達成するべく、使用される。付形剤としての表面活性タンパク質の使用により改変されるべき製剤形態は、更なる製剤形態が構想されているものの、カプセル、タブレット、丸剤、マイクロ粒子、ベシクル、及び坐剤であることができる。本発明の目的のために使用される表面活性タンパク質は、そのそれぞれの天然供給源から単離されるか、又は組み換え技術及び適した宿主中での発現により製造されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製薬学的組成物の処方のための付形剤としての、ハイドロフォビン、好ましくは菌類ハイドロフォビンから選択された表面活性タンパク質の使用に関する。本発明の1の主要な課題は、薬物の安定性及び放出特性を有利に調節するために、製剤適用における表面活性タンパク質の使用である。本発明による表面活性タンパク質の使用は、製剤組成物へのこの表面活性タンパク質の混合による、又はコーティング又はマトリックス中への組み込み又はマトリックスの形成による製薬学的形態の改変による、処方である。
【0002】
背景技術
適当な製薬学的特性、例えば最適な薬物放出及び患者への利便性を達成するための医薬品の処方(formulation)において、製剤形態(galenic form)の最適化が重要な役割を果たす。製薬学的組成物の製造のためにはカプセル(Capsulae medicinales)が頻繁に使用される。このカプセルのシェルはしばしば、生体ポリマー、例えばゼラチン、デンプン又は他の適した製薬学的不活性マトリックス、例えば乾燥したゲルのマクロ分子物質からなる。このカプセルは、in vivoで生理学的条件下で溶解性、消化性又は透過性である。数々の有利な特性のために、カプセルは頻繁に、固形物、半固形物又は液体薬物を処方するために使用される:(a)敏感かつ技術的に問題のある製薬学的組成物でさえ処方されることができ、(b)この薬物は環境的危険(光、空気、湿分)から保護され、(c)有効期限及び貯蔵寿命が増加し、(d)特に液体薬物の場合の高用量信頼性(high dosage reliability)、(e)最適かつ保証された薬物放出特性(徐放作用あり又はなしで)、(f)中性の(neutral)味及び匂いを有する便利な適用、(g)良好に寛容される、(h)増加した薬物安全性を示唆する、形状、色及び刻印による明白な同定。経口適用されるカプセルの使用に伴う1の問題は、胃及び腸の通過の間の制御された放出である。様々な程度での胃酸に対する抵抗性は、セルロースアセタートフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート又はアクリル樹脂のワニスを用いたコーティングにより達成されることができる。
【0003】
薬物の経口投与のための別の製剤形態は、タブレットの処方のための崩壊に対して抵抗性であるマトリックスの使用である。例えばセルロースエーテル又は架橋したアミロースからなるマトリックスは、US6238698においてタブレットについて開示されているように、マトリックス層を含む幾つかの層及び付形剤層から構成され、前記層は崩壊に対するマトリックス層の抵抗性を増加させる。US5407686 は、多層からなるタブレットの構築のための組成物を開示し、このうちの1つは、溶解性ポリマー及び可塑剤を含有するフィルムコーティングである。更なる製剤形態、例えばマイクロ顆粒(microgranule)、ミセル又はベシクルが開示されてきており、このうちの幾つかは分解又は徐放に対して増加した抵抗性を報告している。
【0004】
新規付形剤としての本発明の表面活性タンパク質の使用は、例えばマトリックスタブレット、エアロゾル、懸濁物又は液体医薬品の製造においてこれら製剤形態の改善に著しく寄与してよい。
【0005】
US 5538738は、遅延システム又はデポー材料を改変するための投与形態に対するヒドロキシカルボン酸の混合による医薬的又は生物学的材料の徐放を提供するシステムを説明する。WO 99/042086は、脂質物質を基礎とする吸収促進剤を含有する延長された放出製剤形態を提案する。US 4859469は、合成ポリマー及び薬理学的に許容可能な助剤からなる微孔膜でコーティングされているマイクロ顆粒を含む新規製剤形態を開示する。
【0006】
上述の特許のいずれも、表面活性タンパク質、例えばハイドロフォビン(hydrophobin)、チャプリン(chaplin)、カーリン(curlin)又はラテリン(latherin)を、製薬学的形態の製造において表面活性付形剤として使用することを開示しない。したがって、本発明は、有利な酸抵抗性及び延長された放出特徴の特性をポリマーに付与する、すなわち、上で概略したような種々の製剤使用のための手段を提供する。構想されるのは、製薬学的使用のためのポリマーの製造又はポリマーのコーティングのプロセス内での表面活性タンパク質の混合である。最も見込みのある利点は、薬物放出が主として腸において示されるか、又は腸中の制御された放出さえも所望される場合、本発明により製剤形態における薬物の通過が胃を介して可能になることである。
【0007】
表面活性剤は、このような剤が、分散された粒子の表面上に吸着される場合に、この界面の化学的及び物理学的特性を変更させることができる。両親媒性表面活性剤は、疎水性セグメント及び親水性セグメントからなる。この疎水性部分は、非極性表面上に吸着するか又は非極性相により引きつけられるものであり、その一方で、親水性セグメントは極性表面又は相に引きつけられるものである。このような表面活性剤は、このようにして、親水性表面を疎水性に、そして、疎水性表面を親水性にするために使用されることができる。
【0008】
特定の表面活性剤は、任意の親水性−疎水性界面で両親媒性フィルムへと自己集合できる。このような自己集合は(生体)ポリマーの特性を著しく改善できる。液体/水界面では、表面活性剤は水表面張力を減少させ、これは、水滴の接触角の変更を生じる。このパラメーターは、表面活性剤の活性の測定のために使用されることができる。表面活性剤の使用は、例えばカプセル、丸剤、タブレット、マイクロ顆粒及び坐剤の製造及び性能において製剤形態の改善に著しく寄与することができる。
【0009】
天然起源の幾つかのタンパク質は、表面活性剤として作用する。表面活性タンパク質は、ハイドロフォビン、チャプリン、カーリン又はラテリンを含むが、これに限定されない。
【0010】
ハイドロフォビンは、サイズにして約10kDaの小さなシステインリッチな菌類表面活性タンパク質であり、親水性−疎水性表面又は界面で高度に不溶性の両親媒性層へと自己集合する。これらは、糸状菌、例えば、スエヒロタケ(Schizophyllum commune)又はテルコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)の特徴を有し、かつ、菌類の空中構造の表面上に構造タンパク質として見出され、ここではこの疎水性コーティングが、乾燥、湿潤両者に対して保護的役割を有することが提案され、極端な環境条件に対する糸状菌の分生子を保護している。2つのクラス(class)のハイドロフォビンが、水溶性及びヒドロパシーを基礎として区別されてきている。ハイドロフォビンは、天然の供給源から単離されることができるが、天然に生じないハイドロフォビンを、化学的及び/又はバイオテクノロジー的な製造方法により合成することも可能である。表面改変、すなわち、湿潤性及び促進された繊維芽細胞成長を達成するために、工学処理された(engineered)SC3の使用が、Scholtmeijer, K. et al. (Surface modifications created by using engineered hydrophobins, Appl. Environ. Microbiol. 2002, 68(3): 1367-73)により説明されている。
【0011】
EP1254158は、ハイドロフォビンを用いた表面のコーティングのための一般的方法を説明する。WO96/41882は、ハイドロフォビンを乳化剤、増粘剤又は表面活性物質として、疎水表面を親水性にするために、親水性基材の水抵抗性を改善するために、そして水中油エマルション又は油中水エマルションを製造するために使用することを提案している。
【0012】
また、製薬学的使用、例えば、軟膏又はクリームの製造及び化粧品的使用、例えば、皮膚保護又は毛髪コンディショナー又は毛髪コンディショナーの製造も提案されている(US2003/217419)。化粧品的使用はWO 06/136607にも提案され、ここで、ハイドロフォビンのケラチンへの又は粘膜又は歯への結合特性が、化粧品的エフェクター分子を所望される作用部位(毛髪、爪、皮膚)へと指向させるために、例えば、ハイドロフォビンを有する組成物又はコンジュゲートの形で利用される。ハイドロフォビン様コーティングを使用して、興味のもたれる化合物(例えば、酵素、抗体、核酸)を表面へと結合させる方法がWO04/00880に説明されている。
【0013】
しかし、先行技術によるハイドロフォビンの使用は、大抵は、ハイドロフォビン含有溶液を用いたコーティングによる表面特性の改変に関している。上述した、乳化剤及び増粘剤としての実施とは別に、ハイドロフォビン又は他の表面活性タンパク質の、製剤における付形剤としての使用は現在まで説明されていない。
【0014】
発明の要約
本発明は、製薬学的技術において、特に製剤において、付形剤として表面活性タンパク質を利用する方法を提供する。好ましい本発明の一実施態様において、ハイドロフォビンは、in vivoでの薬物放出の特徴を調節するために、製薬学的組成物の処方のための製剤的付形剤として利用される。ハイドロフォビンは、製薬学的に利用されるポリマー及び化合物への混合により、マトリックス中への組み込み/マトリックスの形成により、又は製剤形態のコーティングにより、放出キネティックスの調節を達成するために、使用されてよい。特に好ましいのは、ハイドロフォビン含有製剤形態のpH依存性性能であり、これにより、例えば、製剤形態の、酸性胃液に対する増加した抵抗性、及び、腸のアルカリ性環境への薬物の徐放が可能になる。本発明による方法を用いて処理されるべき製薬学的形態は、経口適用又は他の投与経路のために設計されることができる(例えば、直腸適用)。本発明による製剤形態のための例は、カプセル、丸剤、タブレット、マトリックスタブレット、マイクロ顆粒及び坐剤であるが、これらに限定されない。
【0015】
以上に詳細に説明される、本発明の好ましい実施態様の目的のために使用されるクラスIハイドロフォビンは、様々なpHの環境に対して異なる特性を示す(図3参照のこと)。これにより、当業者が有利に調節されるべき製剤形態のために適したハイドロフォビンを選択することが可能になる。一例として、ハイドロフォビンTT1は、カプセルを塩基性環境に対してより抵抗性にし、これは、遅延した薬物放出を有する坐剤の製造のために利用されることができる(図3c参照のこと)。
【0016】
ハイドロフォビンは、処方された薬物の徐放又は製剤形態の分解に対する増加した抵抗性を有する様々な製剤形態の製造において付形剤として利用されることができる:カプセル又は坐剤は、例えば、ゼラチン、デンプン、アルギナート又は任意の他の製薬学的に許容可能なポリマーから構成されることができる;薬物組成物のマイクロ顆粒は、例えばメタクリラート酸メチルエステルからなる微孔膜でコーティングされることができる;ミセル、タブレット又は丸剤は、例えばアミラーゼからなることができ、かつ、様々な層から構成されることができ、このうちの1の層(例えば、付形剤層)は、崩壊に対して抵抗性である。
【0017】
発明の詳細な説明
本発明の方法は、微生物起源の表面活性タンパク質−すなわちハイドロフォビン−の使用により説明されるものであり、これは、改善された製剤形態及び投与を提供するために、ヒト及び/又は動物における適用のために意図されている。この改善された製剤形態は、とりわけ、この処方された製薬学的組成物を、胃液に対して抵抗性にし、徐放をin vivoで提供し、タブレット及びカプセルの溶解キネティックスを調節し、このようにして、活性剤のバイオアベイラビリティを潜在的に高めることができる。
【0018】
表面活性タンパク質は両親媒性であり、疎水性及び親水性の特性の両方を所有する。したがって、このクラスの天然に生じる化合物は、「自然の界面活性剤」と呼称されている。両親媒性(amphiphilic)の同義語は「両親媒性(amphipathic)」である。
【0019】
両親媒性タンパク質は、固形物質の表面上に物理的に吸着し、処理された表面の湿潤性に従って方向付けられた疎水性と親水性の両方を所有する表面を形成することができる。
【0020】
表面が疎水性の場合、コーティングの疎水性側はコーティングされた疎水性表面に接触し、コーティングの外側表面は親水性であり、それによってコーティングされた表面の水湿潤性を増加させる。
【0021】
基材上でのタンパク質の表面活性特性は、界面張力の測定、水中油型エマルションの特性決定及び水との接触角によって評価されることができる。本発明において有用な両親媒性タンパク質は、疎水性表面(例えば、ポリオレフィン表面又はTeflon(R)表面)に対する水の接触角(WCA)を強力に小さくすることにより特徴付けられる。具体的には、本発明において有用な両親媒性タンパク質の1質量%の水溶液又は分散液はしばしば、純水で観察された接触角よりも20度以上、有利には30度以上、更に有利には40度以上、最も有利には45度以上、幾つかの特定の場合には50度以上小さい、ポリプロピレン表面に対する接触角(具体的には:PPホモポリマー型HC115MO、Borealis、溶融流速=4.0g/10分[230℃/2.16kg])を示す(図4;静的液滴法による全てのWCA測定、及び言及したデータを参照のこと)。本発明における表面活性タンパク質としての使用のために好ましいのは、ハイドロフォビン、例えば、クラスI又はクラスIIのものである。本発明において有用なハイドロフォビン、並びにその供給源及び特性は、一般的に知られており(更に上で言及されている刊行物を参照のこと)、特にWO96/41882号(第1頁、第14行〜第7頁、第20行、及び実施例1〜5からの節を参照のこと);WO03/10331号(第1頁、第4行〜第5頁、第20行からの節を参照のこと);又はWO06/103230号(第3頁、第6段落〜第12頁の下から第3行からの節を参照のこと)に説明されている;これらの記載された特定の節は参照により本願に組み込まれる。
【0022】
「ハイドロフォビン」及びその製造は知られている;本発明の実施のために適したハイドロフォビンは、例えば、WO 06/103230のものである。このフラグメント又は誘導体を使用することもできる。改変されたハイドロフォビンを使用することも更に可能であり、例えば、その際、幾つかの同一の又は異なる構造が、相互に連結され(例えば、ダイマー又はトリマーとして)、かつ/又は、ハイドロフォビン中で天然に生じない1以上の適したポリペプチド配列に連結されている。天然に生じるハイドロフォビンは、適した方法により、天然の供給源から単離されてよい(例えば、Woesten et. al., Eur. J. Cell Biol.. 63, 122-129 (1994)又はWO 96/41882を参照のこと)。ハイドロフォビンの製造は、遺伝子工学法により実施されてもよく、この場合に核酸配列、特にDNA配列であって本発明の意味合いにおけるハイドロフォビンをコードするものが宿主生物中に挿入されて、この核酸配列の遺伝子発現により所望のタンパク質が生産される。この遺伝子発現は、異種(heterologous)又は同種(homologous)の宿主株いずれかの中で実施されることができる。一般に、このような方法は知られている;相応する開示は、例えばWO 06/082251中に見出されることができる。
【0023】
本発明による処理のために使用される組成物は、少なくとも1のハイドロフォビン及び水性溶剤を含有し、例えば、この溶剤は水又は水と混合可能な溶剤との混合物である。
【0024】
この改変されたポリマーを製造するために本発明に従ったハイドロフォビンの使用のためには、ハイドロフォビンは溶剤不含形態において使用されることができ、好ましくは、これらは、水又は他の任意の製薬学的に許容可能な溶剤を基礎とする処方物の形態において使用される。溶剤の混合物も使用できることが理解されるものである。溶剤の性質は、例えば、ハイドロフォビン、処理すべきポリマーの性質及びその用途に依存し、かつ、相応して当業者により選択される。
【0025】
本発明に従って使用される組成物の製造のために、好ましくはハイドロフォビンの水溶液が使用される。適した溶液は、ハイドロフォビンの合成、単離及び/又は精製の間に得られてよい。代替的に、ハイドロフォビンを最初に溶剤不含の形態で、例えば凍結乾燥により単離し、かつ、第2の工程においてだけ処方することも可能である。
【0026】
本発明の実施のためのハイドロフォビンの選択は、限定されない。1のハイドロフォビン又は複数の様々なハイドロフォビンが使用されることができる。
【0027】
この処方物中のハイドロフォビンの量は、当業者により、この表面の性質及び/又は用途に従って当業者により決定されてよい。比較的少量がしばしばこの所望される作用、例えば所望される表面特性の変更を達成するのに十分である。0.01〜10.0mg/mlの表面活性タンパク質の濃度が一般的であり、約0.2mg/ml(約0.2〜2mg/ml、又は0.5〜1mg/mlさえも)が特に好ましい。
【0028】
本発明の固形適用形態の例はタブレット、コーティングされたタブレット、カプセル、顆粒、坐剤、植え込み剤(implant)である。
【0029】
本願の固形適用形態中に含有されてよい製薬学的成分(APIs)又は薬物は、次のものを含む:アカルボース、アセチルサリチル酸、アルフゾシン、アリスキレン、アンブリセンタン、アムロジピン、アモキシシリン、アナストロゾール、アピキサバン、アプレピタント、アリピプラゾール、アタザナビル、アテノロール、アトモキセチン、アトルバスタチン、アジトロマイシン、バゼドキシフェン、ベナゼプリル、ビカルトアミド、ビサコジル、ブデソニド、ブチルスコポラミン、カンデサルタン、カペシタビン、カルバマゼピン、カリスブアマート、カルベジロール、カソピタント、セレコキシブ、セチリジン、クロロキン、シナカルセト、シプロフロキサシン、クラブラン酸、クロドロナート、クロニジン、クロピドグレル、シプロテロンアセタート、ダポキセチン、ダルナビル、ダサチニブ、デフェラシロキス、デキストロメトルファン、ジクロフェナク、ジエノゲスト、ジピリダモール、ドセタキセル、ドネペジル、ドロスピレノン、ズロキセチン、エファビレンズ、エルトリプタン、エナラプリル、エンタカポン、エンテカビル、エンザスタウリン、エルロチニブ、エソメプラゾール、エスゾピクロン、エチニルエストラジオール、エトリコキシブ、エトラビリン、エベロリスムス、エキセメスタン、フェキソフェナジン、フィナステリド、フルオキセチン、フルチカソン、フルチカソンプロピオナート、フルバスタチン、ホルモテロール、ガンシクロビル、ゲフィチニブ、グリメピリド、ヒドロコドン、イバンドロン酸、イブプロフェン、インジナビル、イプラトロピウム、イルベサルタン、ラモトリギン、ランソプラゾール、ラパチニブ、レトロゾール、レボノルゲストレル、リネゾリド、リシノプリル、ロサルタン、マラビロク、メロキシカム、メトホルミン、メチルフェニダート、メトプロロール、モキシデクチン、ミコフェノール酸、ナプロキセン、ナテグリニド、ネビラピン、ニコランジル、ニフェジピン、ニロチニブ、オランザピン、オメプラゾール、オルリスタト、オセルタミビル、オキサリプラチン、オキスカルバゼピン、パリペリドン、パントプラゾール、パルアセタモール、パロキセチン、ピオグリタゾン、プラミペキソール、プラバスタチン、プレガバリン、クェチアピン、ラベプラゾール、ラロキシフェン、ラミプリル、レボキセチン、リセドロナート ナトリウム、リバロキサバン、リバスチグミン、リザトリプタン、ロシグリタゾン、ルボキシスタウリン、サルメテロール、シルデナフィル シトラート、シムバスタチン、シロリムス、シタグリプチン、ソラフェニブ、スマトリプタン、スニチニブ、スリナバント、タダラフィル、タムスロシン、タペンタドール、テルビブジン、テルミサルタン、テルビナフィン塩酸塩、テリフルノミド、チオトロピウム、トルテロジン、トピルアマート、バビカセリン塩酸塩、バラシクロビル、バルガンシクロビル、バルサルタン、バンデタニブ、バルデナフィル、バレニクリン、ベンラファキシン、ビルダグリプチン、ボリコナゾール、ワルファリン、ジプラシドン、ゾルミトリプタン、ゾルピデム。
【0030】
更なる薬物:アセプロマジン、アモキシリン、アンピシリン、アプラマイシン、ベナゼプリル、ベタメタソン、ブスコパン、カルプロフェン、セファピリン、クレンブテロール、クリンダマイシン、クロキサシリン、シクロスポリンA、シロマジン、デラコキシブ、ジクロルボース、ジシクラニル、ジフロキサシン、エンロフロキサシン、エトドラク、フェンベンダゾール、フラミセチン、フロセミド、グリセオフルビン、ヘタシリン、ヒグロマイシン、イミダクロプリド、レバミソール、レボチロキシン、ルフェヌロン、メロキシカム、ミルベマイシンオキシム、モネンシン、モキシデクチン、ナラシン、ニカルバジン、ニテンピラム、オレアンドマイシン、オキスフェンダゾール、オキシクロザニド、パラメクチン、パロモマイシン、ペルメトリン、フェニルブタゾン、プラジクアンテル、プロカインベンジルペニシリン、プロカインペニシリン、ピランテルパモアート、スピノサド、スルファジアジン、チアメトキサム、チアムリン、トリアムシノロン、トリクラベンダゾール、トリメトプリム、タイロシン。
【0031】
より具体的に、本発明は以下の実施態様を含むが、これらに限定されない:
1.in vivo、特に胃及び/又は腸において固形適用形態からの薬物放出の特性を調節する方法であって、表面活性タンパク質を前記適用形態に組み込むか、又は前記表面活性タンパク質で前記適用形態を被覆することを含む方法。
【0032】
2.表面活性タンパク質を含有することを特徴とする、固形適用形態を含む医薬組成物。
【0033】
3.in vivo、特に胃及び/又は腸における固形適用形態からの薬物放出の特性を調節するための表面活性タンパク質の使用。
【0034】
4.表面活性タンパク質が、その1質量%水溶液又は分散液が、純粋な水に対して20°以上だけポリプロピレン表面に対する接触角を少なくさせることにより特徴付けられている、上述の方法又は組成物又は使用。
【0035】
5.表面活性タンパク質が、ハイドロフォビン、例えばクラスIIハイドロフォビン又は特にクラスIハイドロフォビンである、上述の方法、組成物又は使用。
【0036】
6.胃の強酸環境及び/又は腸のアルカリ性環境と、製剤適用形態(特にタブレット、カプセル)の表面との界面特性が変更される、上述の方法、組成物又は使用。
【0037】
7.胃の強酸環境及び/又は腸のアルカリ性環境と、製剤適用形態の活性成分又は1以上の付形剤の界面特性が変更される、上述の方法、組成物又は使用。
【0038】
8.胃の胃液及び/又は腸のアルカリ性環境による化学的分解に対する活性成分の保護を包含する、上述の方法、組成物又は使用。
【0039】
9.1以上の更なる製薬学的に許容可能な成分、特に、更なる表面活性剤、例えばバインダー、生体ポリマー、流動助剤、潤滑剤、崩壊剤(消化管中でのタブレット崩壊を保証するため);甘味剤又はフレーバー:着色剤から選択された成分を更に含有する、上述の方法、組成物又は使用。
【0040】
10.固形適用形態がカプセル、丸剤、タブレット、マトリックスタブレット、マイクロ顆粒及び坐剤から選択された製剤形態である、上述の方法、組成物又は使用。
【0041】
11.表面活性タンパク質が、薬物放出の特性を、特にその遅延を伴ってin vivo、特に胃及び/又は腸中で調節する、上述の方法、組成物又は使用。
【0042】
12.固形適用形態が、in vivo、特に胃及び/又は腸中の薬物放出の特性を調節するために表面活性タンパク質を含有するタブレット形態にある、上述の方法、組成物又は使用。
【0043】
13.固形適用形態が、in vivo、特に胃及び/又は腸中の薬物放出の特性を調節するために表面活性タンパク質を含有する多層タブレット形態にある、上述の方法、組成物又は使用。
【0044】
14.固形適用形態が、in vivo、特に胃及び/又は腸中の薬物放出の特性を調節するために表面活性タンパク質を含有するカプセル形態にある、上述の方法、組成物又は使用。
【0045】
15.固形適用形態が、in vivo、特に胃及び/又は腸中の薬物放出の特性を調節するために表面活性タンパク質を含有するマルチカプセル形態にある、上述の方法、組成物又は使用。
【0046】
16.製剤形態が活性成分を、化学的プロセス、例えば加水分解及び酵素による攻撃を介してin vivoで、特に胃及び/又は腸中で放出する、上述の方法、組成物又は使用。
【0047】
17.製剤形態が活性成分を、物理的プロセス、例えばエロージョン(erosion)及び拡散プロセスを介してin vivoで、特に胃及び/又は腸中で放出する、上述の方法、組成物又は使用。
【0048】
18.製剤形態が活性成分を、物理的プロセス及び化学的プロセスの両方の組み合わせを介してin vivoで、特に胃及び/又は腸中で放出する、上述の方法、組成物又は使用。
【0049】
19.製剤形態が胃中に活性成分を放出する、上述の方法、組成物又は使用。
【0050】
20.製剤形態が腸中に活性成分を放出する、上述の方法、組成物又は使用。
【0051】
21.(1)〜(20)で挙げた上述の特性のいずれかを組み合わせる、上述の方法、組成物又は使用。
【0052】
ハイドロフォビン含有処方物は、場合により、この分野で知られているとおりの更なる成分を含んでよく(例えば、Lehrbuch der Pharmazeutischen Chemie by Harry Auterhoff, Joachim Knabe and Hans-Dieter Hoeltje, 14th Ed. 1999, Wissenschaftliche Verlagsgesellschft mbH Stuttgart [ISBN 3-8047-1645-8]を参照のこと、特にこのD部分)、このような成分の例は他の付形剤、添加剤及び/又は助剤を含む。このような成分の例は、界面活性剤、例えばアニオン性、非イオン性、両性及び/又はカチオン性界面活性剤、及び(生体−)ポリマー、及び/又は以下列記する成分を含む:
バインダー、例えばデンプン、糖、セルロース又は変性セルロース、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ラクトース、糖アルコール、例えばキシリトール、ソルビトール又はマルチトール;バインダーは、その適用に応じて分類され、溶液バインダーを含む(溶剤、例えば水、アルコールに溶解されている);湿潤造粒プロセスにおいて使用されるバインダー(例えば、ゼラチン、セルロース、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、デンプン、スクロース及びポリエチレングリコールを含む):乾燥バインダー、例えば、直接粉末圧縮(DC)処方の一部として(例は、セルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、及びポリエチレングリコールを含む)を含む。
【0053】
コーティング、例えばセルロース(植物繊維)フィルムコーティング、合成ポリマー、シェラック、コーンタンパク質ゼイン(corn protein zein)又は他の多糖、ゼラチン(特にカプセルのため);薬物放出速度のコントロール及び決定のための腸溶コーティング、ここで薬物は消化管において放出される。
【0054】
崩壊剤(消化管中で湿潤によりタブレットが破壊されると膨張し、溶解し、吸収のために活性成分を放出する)、例えば水取り込み容易化剤(water uptake facilitator)及びタブレット破断促進剤を含む;例は、デンプン、セルロース、架橋したポリビニルピロリドン、ナトリウムデンプングリコラート、ナトリウムカルボキシメチルセルロースメチルセルロース。
【0055】
充填剤/希釈剤(不活性、この処方物の他の成分と相容性、非吸湿性、溶解性、圧縮性(compactible)、好ましくは味なし又は快い味):例は、植物セルロース(純粋な植物充填剤、特にタブレット又は硬質ゼラチンカプセル中)、二塩基性リン酸カルシウム(特にタブレット中)、植物油脂(特に、軟質ゼラチンカプセル中)、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、ソルビトール、炭酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム。
【0056】
このような付加的成分のための市販の例は、EUDRAGIT(R)(供給者:EVONIK)Kollicoat(R)及びKollidon(R)(供給者:BASF)系列からのコーティング材料及び処方助剤を含む。
【0057】
本発明に従って、対象物が、この対象物(の表面)をハイドロフォビンと、又は少なくとも1のハイドロフォビン、少なくとも1の溶剤及び場合により1以上の更なる成分であって例えば界面活性剤及び(生体−)ポリマーから選択されるものを含有する組成物と接触させることにより処理される。
【0058】
「接触させる」との語句は、例えば、この材料とハイドロフォビンとの混合物を生じること、又はこの全体的な物品/対象物をこの処方物で吹き付けること又はこの処方物中に浸漬することによることを意味する。処理が達成される温度は一般的には周囲温度であり、しかし、高められたか又は低められた温度、例えば−5℃〜+40℃の範囲も適用可能であり、これは、処理すべき対象物の温度寛容性に依存する。処理の期間は当業者により決定され、かつ、約1秒から数時間までであることができる。処理後に、表面を洗い流し、例えば、水で過剰の処理溶液を除去するために洗い流すことができる。
【0059】
本願に説明されるとおりの実施例による本発明の具体化は、本発明による教示のいかなる限定も意味しない。前記実施例により、本発明により作用し、かつ、同じように本願の他の分野の適用に適用可能な要素の開示された組み合わせが存在する。とりわけ、本発明は、製薬学的技術における幅広い範囲の適用に適用可能であり、具体的には、有利な放出特性、例えば徐放又はpH依存性放出及び調節された溶解キネティック(タブレット、丸剤、カプセル、マイクロ粒子及び坐剤の)でもって放出されるべき製薬学的組成物の製剤形態に適用可能である。
【0060】
室温(r.t.又はRT)又は周囲温度は20〜25℃の範囲の温度を表す;終夜は12〜16時間の範囲の期間を示す。パーセントは特段示されない限り質量、摂氏温度(摂氏度)に対するものである。実施例又はその他で使用される略称:
ACN アセトニトリル
API 活性製薬学的成分
BSA ウシ血清アルブミン(Fluka)
IPA イソプロパノール
PO ヒラタケ(Pleurotus ostreatus)由来のクラスIハイドロフォビン
RT 室温
SC スエヒロタケ(Schizophyllum commune)由来のクラスIハイドロフォビン
SDS ドデシル硫酸ナトリウム
TR トリコデルマリーセイ(Trichoderma reesei)由来のクラスIIハイドロフォビン
TT タラロマイセス・サーモフィラス(Talaromyces thermophilus)由来のクラスIハイドロフォビン
U 酵素単位
w/v 全体積に対する質量部又は質量パーセント(概算密度=1)
w/w 全質量に対する質量部又は質量パーセント。
【0061】
一般的手順
ハイドロフォビンの製造
スエヒロタケ(Schizophyllum commune)(SC)、ヒラタケ(Pleurotus ostreatus)(PO)及びタラロミセス・テルモフィルス(Talaromyces thermophilus)(TT)からのクラスIハイドロフォビン、及び、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)(TR)からのクラスIIハイドロフォビンが、本発明の目的のために使用される。
【0062】
前記ハイドロフォビンのためのタンパク質配列は、NCBI/遺伝子バンクから取得される:SC:アクセッション番号P16933;PO:アクセッション番号CAA76494;TR:アクセッション番号CAA72636。アミノ酸配列を核酸配列に翻訳する。TTの発現のために、このヌクレオチド配列を、アクセッション番号CS390617でもってNCBI/遺伝子バンクから取得する。大腸菌(E. coli)に向けたコドン利用の最適化後に、このcDNAsを合成する(Sloning BioTechnology, Pucheim, ドイツ国)。ハイドロフォビン核酸配列を、T7−RNA−ポリメラーゼ及び6xhis−タグ配列を含有するpETベクター(pET15、Novagen)中にクローニング導入し、この発現宿主大腸菌BL21中に形質転換する。
【0063】
前記の最適化したハイドロフォビンcDNAを含有する発現ベクターで形質転換した大腸菌BL21(DE3)の発酵を、10リットルの規模において16時間ZYM−5052培地(25mM Na2HPO4、25mM KH2PO4、50mM NH4Cl、5mM Na2SO4、20mM MgSO4、5g/l グリセロール、0.5g/l グルコース、2g/l アルファ−ラクトース一水和物、5g/l 酵母エキス、及び10g/l NZ−アミン(Sigmaから購入))を用いて、100μg/mlアンピシリン又は25μg/mlカナマイシンそれぞれの存在下で実施する。このバイオマスの回収後に、この沈殿した細胞を液体窒素中で凍結させ、−80℃で貯蔵する。沈殿した細胞の解凍したアリコートの超音波処理後に、この放出された封入体を、30秒間のこの細胞ホモジェナートの沸騰により可溶化させ、かつ、2h600rpmで20℃で撹拌する。細胞デブリを、10分間の遠心分離により沈殿させ、このタンパク質含有上清を0.22μmを有するフィルターを通じて透過させる。この濾過物をニッケルセファロース(GE Healthcare)に対するアフィニティクロマトグラフィにより分離し、この溶出した分画をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で分析する。このハイドロフォビン含有分画を蓄積し、引き続きこのハイドロフォビン含有溶液を10kDaのカットオフ膜を有するSlide-A-Lyzer (Pierce)中で透析により水に対して脱塩する(16時間にわたる3リットルの水中の30mlの溶出物)。このタンパク質濃度をBCAアッセイ(Pierce)を用いて決定する。このハイドロフォビン溶液を液体窒素中で迅速凍結させ、凍結乾燥する。本発明の使用のために、200μg/mlタンパク質を含有するハイドロフォビンの水溶液を適用する。
【0064】
指示薬染料を用いたカプセルの充填
漏出実験の組立のために、容積0.68cm3を有するゼラチンカプセル(Capsulae operculatae Nr. 0, Pharmapol GmbH, D-25578 Daegeling)を、指示薬染料ブロモフェノールブルーで充填する。このカプセルを、等質量割合のマンニトール、炭酸水素ナトリウム、クエン酸三ナトリウム脱水素物(dehydrogenate)及び水溶性ブロモフェノールブルーで充填し、このカプセルの上部及び下部を固く接合することにより密閉する。このカプセルからの非特異的漏出を回避するために、この接合部を封止する。
【0065】
ハイドロフィビンを用いたカプセルのコーティング
充填され、かつ封止されたカプセルを、水中の200μg/ml SCの溶液で市販のネブライザーを用いて吹付ける。対照実験のために、カプセルを水中の200μg/ml BSAで吹き付け、これは0.002% w/vのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を有するか、又は0.002% w/v SDSを含有する水のみ有する。
【0066】
アルギナート及びハイドロフォビンからなる生体ポリマーを用いたカプセルのコーティング
充填され、かつ封止されたカプセルを、200μg/mlのハイドロフォビンを含有する2% w/v アルギナート(E400)の溶液中に10秒間液浸する。対照実験のために、カプセルを0.002% w/v SDSを含有する200μg/ml BSAの溶液中に液浸する。アルギナートの架橋を、0.1M CaCl2中の引き続く液浸により達成する。引き続き、このカプセルを室温で乾燥させる。
【0067】
放出特性の評価
様々な表面処理後の前記カプセルからの染料の放出の試験のために、このカプセルを、pH1.0に相応する0.1M HCl 50ml中に液浸し、これは、胃中の酸性環境を模倣するためである。第2の組立において、0.4U/mlペプシンを0.1M HClに添加し、これは、胃液中の典型的酵素に対する抵抗性を試験するためである。この放出の定量化を、任意の輝度単位を生じる、浸漬浴(immersion bath)中のこの溶液の様々な領域のコンピューターにより補助された光学的評価により達成する。
【0068】
タブレットのコーティング
Homeopathic Traumeel (R)Sタブレット(Heel GmbH, Baden Baden,ドイツ国)を、コーティング実験のために使用する。これらタブレットは高度に溶解性であり、かつ、ラクトース一水和物及びステアリン酸マグネシウムを基礎として処方されている。タブレットを、それぞれ、200μg/ml SC、TT又はBSA(コントロールとして)を含有する2%アルギナートの溶液中に浸漬する。タブレットを次いで、0.1M CaCl2の溶液中にすぐさま浸漬し、かつ室温で乾燥させる。溶解試験のために、タブレットを0.1M HCl 50ml中に室温で浸漬させる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1:ハイドロフォビンSC3又は水を用いた吹付けによりコーティングされた指示薬染料で充填されたゼラチンカプセルからの拡散及び/又は漏出。カプセルを、ペプシンの存在あり(B)又はなし(A)で、pH1.0を有する水中に液浸する。このカプセルからのブロモフェノールブルーの放出を、比色評価により水の輝度として決定し、インキュベーションの時間に対してプロットする。ハイドロフォビンコーティングは、酸性環境に対してカプセルを抵抗性にする。
【図2】図2:pH1.0(A)又はpH1.0+0.4U/mlペプシン(B)で、ハイドロフォビンSC3又はBSA(コントロール)それぞれを含有するアルギナート溶液中に液浸することによりコーティングされた指示薬染料で充填されたゼラチンカプセルからの拡散及び/又は漏出。図1に説明されるとおりに評価を実施する。
【図3】図3:酸性(A、胃を模倣)、中性(B)又は塩基性(C、腸を模倣)の環境中で、ハイドロフォビンSC3、TT1、POH3又はBSAそれぞれを含有するアルギナート−溶液中への液浸によりコーティングされた指示薬染料で充填されたゼラチンカプセルからの拡散及び/又は漏出。図1に説明されるとおりに評価を実施する。
【図4】図4:純水と比較した、ポリプロピレンプレート(Borealis HC115MO)上での1質量%(b.w.)のタンパク質溶液の水接触角の相対的変化は、ヒドロホビンの高い両親媒性を実証する。
【図5】図5:A:10〜120分間の期間にわたるpH1.0の酸性溶液中のタブレットの溶解。タブレットを、ハイドロフォビンHFB2又はSC3又はTT1又はPOH3、又は対照としてBSAのいずれかを含有するアルギナート溶液中への液浸により前もってコーティングした。ハイドロフォビン、特にSC3でのコーティングは、このタブレットの溶解を著しく遅延させる。B:ゼラチフィルム(左)及びゼラチンフィルムであってハイドロフォビンを含むもの(右)を水、0.1N aq.HCl及び0.1N HCl含有ペプシンと接触させる(等しい期間);ハイドロフォビン含有フィルムは、顕著により遅い溶解速度を示す。
【0070】
実施例1:ハイドロフォビンコーティングあり又はなしでのゼラチンカプセルからの放出
ハイドロフォビン又はコントロールとしての水それぞれでの吹付けによりコーティングされたカプセルからの染料の放出を、胃の条件を模倣するために酸性環境中でアッセイする。この浸漬浴中に含有される染料の量を、光学的評価により測定し、かつ、任意の輝度単位として示す。
【0071】
図1Aに示されるとおり、このゼラチンカプセルのハイドロフォビンSCでのコーティングは観察間隔(2時間)内の酸性環境中のカプセル内の染料の延長された保持を生じる。この同じ有利な放出特性は、胃液の組成物が浸漬浴の液体に対する0.4U/mlのペプシンの添加により刺激される場合に観察される(図1B)。
【0072】
結果:図1に示されるアッセイは、ハイドロフォビンでの吹付けによるゼラチンカプセルの表面処理が、遅延された薬物放出を達成するための潜在的な使用に関して有益にこの製薬学的形態の特性を改変するために適した方法であることを示す。
【0073】
実施例2:ハイドロフォビンの混合あり又はなしでのアルギナートでコーティングされたゼラチンカプセルからの放出
ハイドロフォビンSCが調製され、かつ、このゼラチンカプセルは指示薬染料で充填され、これは上述のとおりである。充填され、かつ封止されたカプセルを、200μg/mlのハイドロフォビンを含有する2% w/v アルギナート(E400)の溶液中に液浸する。対照実験のために、カプセルを0.002% w/v SDSを含有する200μg/ml BSAの溶液中に液浸する。
【0074】
図2Aに示されるアッセイにおいて観察されることができるとおり、アルギナートとハイドロフォビン混合物からなるポリマーで処理されたカプセルの、酸性条件に対する抵抗性は、表面処理のためにハイドロフォビンで吹き付けられたゼラチンカプセルのものと匹敵する(図1A)。図2Bは、アルギナート/ハイドロフォビン−生体ポリマーで処理されたカプセルの遅延された放出特性が、胃液中の典型的酵素に対する抵抗性に関して試験するために、0.4U/mlのペプシンが0.1M HCl(pH1.0)を含有する浸漬浴の液体に添加される場合にさえ、実質的に同じであることを示す。対照的に、BSA中に液浸された対照カプセルは、ペプシンなしの浸漬浴中で観察可能なものよりもより迅速に透過性になる。
【0075】
結果:アルギナートの溶液へのハイドロフォビンの混合は、ハイドロフォビンで吹き付けた場合に得られるのと類似した特性をカプセルの液浸後に付与するポリマー溶液を生ずる(実施例1)。
【0076】
実施例3:酸性、中性及び塩基性の環境中の、アルギナート及び3つの異なるハイドロフォビンの混合物からなる生体ポリマーでコーティングされたゼラチンカプセルからの放出
3つのハイドロフォビンを、アルギナートでコーティングされたゼラチンカプセルの放出キネティックスの調節が、様々なハイドロフォビンを用いて達成されることができるかどうか試験するために使用する。SCは、上に説明されるとおりに調製される。2つの更なるハイドロフォビンを、SCについて説明したのと類似の手順において組み換えにより(recombinantly)生産する。TTは、タラロミセス・テルモフィルス(Talaromyces thermophilus)由来、POはヒラタケ(Pleurotus ostreatus)由来である。カプセルを指示薬染料で充填し、封止し、アルギナート及びハイドロフォビンSC、TT又はPOそれぞれの混合物中に浸漬し、これは実施例1及び2において説明したとおりである。対照として、アルギナート及びBSAの混合物を使用する。全てのタンパク質(ハイドロフォビン及びBSA)を、200μg/ml(w/v)の濃度で適用する。
【0077】
胃及び腸中の環境をシュミレーションするために、酸性(pH1.0、図3A)又は塩基性(pH12.0、図3C)の条件をそれぞれ、このカプセルを放出アッセイのために液浸する前に適合させる。比較のために、中性pHもアッセイする(図3B)。
【0078】
結果:各ハイドロフォビンは、比較可能な様式で、この変性したアルギナートでコーティングされたカプセルを、酸性及び中性環境に対して抵抗性にする。このカプセルの統合性(integtiry)は、酸性環境において中性環境におけるよりもより長い間にわたり維持される。対照カプセルは、ハイドロフォビン処理されたカプセルに比較して、染料放出のより迅速な開始を示す。強塩基性pHを有する浸漬浴中では、この染料放出の開始が、中性及び酸性環境を用いた場合に比較して、全てのカプセル(ハイドロフォビン及び対照)でより早いことが観察された。胃液に対する増加した抵抗性が、特にSC及びTTを用いた場合に達成されることができる。図3cにおいて観察されることができるとおり、TTは、このカプセルを他のハイドロフォビンに比較して、塩基性環境に対して著しくより抵抗性にし、これは遅延された薬物放出を有する坐剤の製造のために有用であってよい。全ての3つのハイドロフォビンは、様々な環境においてこのカプセルの漏出特性を変更させる。
【0079】
実施例4:アルギナート及び2つの異なるハイドロフォビンの混合物からなる生体ポリマーを用いたタブレット及び丸剤のコーティング
Traumeel(R) S (Heel)タブレットをハイドロフォビンでコーティングし、溶解アッセイにおいてpH1.0の酸性条件に対する抵抗性を試験する。Traumeel(R) Sタブレットを、2%のアルギナート(200μg/ml TT、PO、TR又はSCそれぞれを含有する)の溶液中に液浸する。対照として、200μg/mlのBSA及び0.002%のSDSを含有するアルギナート溶液を使用する。短期間の液浸後に、アルギナート−コーティングされたタブレットを0.1M CaCl2中で重合させ、周囲温度で終夜乾燥させる。
【0080】
この溶解試験のためのインキュベーションは、周囲温度で0.1M HCl中で10〜120分間である。
【0081】
結果:アルギナートと、ハイドロフォビン混合物からなる生体ポリマーでのタブレットのコーティングは、製薬学的組成物の徐放に関して有益な特性を生じる。260分間pH1でのインキュベーション後に、このアルギナート/ハイドロフォビン生体ポリマーでコーティングされたタブレットの延長された統合性が明らかに観察され、クラスIハイドロフォビンSC、TT及びPOは、クラスIIハイドロフォビンTRに比較して、このコーティングされたタブレットの溶解性に対する抵抗性に関してより優れている(図5A)。
【0082】
実施例5:ハイドロフォビンによるマトリックス形成及びゼラチンの増加した安定性
ゼラチン(赤に染色、RUF, Quakenbrueck,ドイツ国から購入)を、水又はSC溶液(最終濃度200μg/ml)中に可溶化させる。500μlの可溶化したゼラチンを、6ウェルマイクロプレートのウェルにつき添加する。ゼラチンを終夜50℃で乾燥させる。次いで、500μlのH2O、0.1N HCl又は0.1N HClであって0.4U/mlのペプシンを有するものそれぞれを、このウェルに添加する。このウェルの光学的評価は図5Bに示される。
【0083】
結果:
ハイドロフォビンなしでは、このゼラチンは完全に溶解され、その一方で、SC3は、ゼラチンの溶解を阻害する。類似の結果が、POH3及びTT1について得られる(示さず)。この結果は、生体ポリマーゼラチンの水中への溶解が強力に妨げられ、かつ、胃液を模倣する環境においてもこの溶解が減少されることを示す。ハイドロフォビンを有するゼラチンは、マトリックス様構造を形成するようである(図5B)。
【0084】
結論:
様々なクラスI及びIIハイドロフォビンは、製薬学的目的のために使用される試験体の統合性を調査するために、この試験体をハイドロフォビン溶液又は−例示的に−ゼラチン及び/又はアルギナートと少なくとも1のハイドロフォビンの混合物からなる生体ポリマーとを接触させた後に使用する。本発明の意外な知見は、製剤付形剤としてのハイドロフォビンの使用が、製薬学的形態の特性を有利に調節できることである。試験体を本発明において使用されるクラスIハイドロフォビンと接触させると、この製薬学的形態(例示的にカプセル及びタブレット)は、アルギナートだけでの又はBSAとの混合物としてのコーティングに比較して胃液に対してより頑強(robust)にする。ハイドロフォビンのアルギナートの溶液への混合は、生体ポリマー溶液を生じ、これはこのカプセルの液浸後に、ハイドロフォビンを用いた吹付けによるコーティングにより得られるのと同様の特性を付与し、両方の、表面処理及び製薬学的に許容可能なポリマー又はキャリアーの改変が、本発明による製剤的付形剤としてのハイドロフォビンの潜在的な使用であることを示す。例示的に、様々なハイドロフォビンの異なる特性が、酸性、中性及び塩基性pHの環境において生ずることも示され、これにより、適したハイドロフォビンの選択により所望される薬物放出特性の製剤形態の製造が可能になる。
【0085】
したがって、本発明は、安定性−すなわち、崩壊に対する抵抗性、マトリックス形成−、pH依存性及び薬物放出キネティックスの観点において、製剤形態の調節のための手段を提供する。限定しない例によると、本発明は、製薬学的組成物の適用の経路に依存して身体を通じた通過の間の薬物の所望される放出特性を達成するために、製剤形態の製造のための適用を提供する。ハイドロフォビンは、潜在的に、製薬学的に関連するポリマーを安定化するため、又は、ポリマー状化合物を用いてマトリックスを作製するために、例えば、改善されたマトリックスタブレットを製造すべく使用されることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調節された放出特性をin vivo、特に胃及び/又は腸中で有する医薬品の固形適用形態の製造方法であって、ハイドロフォビンから選択された表面活性タンパク質の前記適用形態中への組み込み、又は前記表面活性タンパク質での前記適用形態のコーティングを含む製造方法。
【請求項2】
ハイドロフォビンから選択された表面活性タンパク質を、特に、前記適用形態の外側表面上のコーティングにおいて含むか、又は、前記適用形態の外側表面を形成するマトリックス材料中に組み込んで含むことを特徴とする、医薬品の固形適用形態を含有する製薬学的組成物。
【請求項3】
in vivo、特に胃及び/又は腸における固形適用形態からの薬物放出の特性を調節するための薬物製造における、ハイドロフォビンから選択された表面活性タンパク質の使用。
【請求項4】
前記表面活性タンパク質が、その1質量%水溶液又は分散液が、純粋な水に対して20度以上だけポリプロピレン表面に対する接触角を少なくさせることを特徴とする、請求項1記載の方法又は請求項2記載の組成物又は請求項3記載の使用。
【請求項5】
前記表面活性タンパク質が、クラスIIハイドロフォビン、又は特にクラスIハイドロフォビンである請求項4記載の方法、組成物又は使用。
【請求項6】
前記固形適用形態が、カプセル、マルチカプセル、丸剤、タブレット、マトリックスタブレット、多層タブレット、コーティングされたタブレット、マイクロ顆粒、坐剤、植え込み剤から選択される請求項1から5のいずれか1項記載の方法、組成物又は使用。
【請求項7】
前記固形適用形態が、カプセル、マルチカプセル、丸剤、タブレット、マトリックスタブレット、多層タブレット、マイクロ顆粒及び坐剤から選択され、表面活性タンパク質をコーティングの形で含むか、又は、前記適用形態の外側表面を形成するマトリックス中に組み込まれて含む、請求項6記載の方法、組成物又は使用。
【請求項8】
前記固形適用形態が、さらに、1以上の更なる製薬学的に許容可能な成分、特に、更なる表面活性剤、バインダー、生体ポリマー、流動助剤、潤滑剤、崩壊剤(消化管中でのタブレット崩壊を保証するため);甘味剤;フレーバー:着色剤から選択された成分を含有する請求項1から7のいずれか1項記載の方法、組成物又は使用。
【請求項9】
前記適用形態が、化学的プロセス、例えば加水分解及び酵素による攻撃により、又は、物理学的プロセス、例えばエロージョン及び拡散プロセスにより、活性成分をin vivoで、特に胃及び/又は腸中で放出する請求項1から8のいずれか1項記載の方法、組成物又は使用。
【請求項10】
放出特性の調節が、遅延された放出を含む請求項1から9のいずれか1項記載の方法又は使用。
【請求項11】
腸溶コーティングとしての請求項1から10のいずれか1項記載の表面活性タンパク質の使用。
【請求項12】
活性成分を、胃の胃液及び/又は腸のアルカリ性環境による化学的分解に対して保護するための医薬品の固形適用形態の製造における、特に請求項4又は5に記載の表面活性タンパク質の使用。
【請求項13】
請求項1から10のいずれか1項記載の医薬品の固形適用形態の製造方法において、前記表面活性タンパク質の水溶液又は分散液を最終固形適用形態1グラムにつき0.001〜1000μgの量で前記適用形態上にコーティングするか、又は前記適用形態中に組み込む製造方法。
【請求項14】
前記表面活性タンパク質を、表面活性タンパク質の濃度0.01〜10.0mg/mlを有する水溶液としてコーティングするか又は組み込む請求項1から10のいずれか1項又は請求項13に記載の医薬品の固形適用形態の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−509921(P2012−509921A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537925(P2011−537925)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065100
【国際公開番号】WO2010/060811
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】