説明

固液分離装置及び固液分離方法

【課題】搬送機構により液面を超えて搬送された排出物を、少量の空気で確実に剥離させることのできる、固液分離装置及び固液分離方法を提供する。
【解決手段】固形成分を含有する処理対象液を受け入れるパイプと、前記パイプ内に配置され、前記固形成分を、前記処理対象液により前記パイプ内に形成される液面の下から前記液面の上方に掻き揚げる、搬送機構と、前記液面の上方で前記搬送機構に気体を噴きつけ、前記搬送機構に付着した前記固形成分を前記搬送機構から剥離させる、気体噴射機構と、前記パイプに設けられ、前記搬送機構から剥離した前記固形成分を排出する、排出口とを具備する。前記搬送機構は、前記パイプ内に配置された、複数の掻き揚げ板を備えている。前記複数の掻き揚げ板の各々は、前記固形成分を主面上に保持して搬送する。前記気体噴射機構は、気体を、前記各掻き揚げ板の主面に衝突するような方向から、噴きつける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固液分離装置及び固液分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固形成分が含有する処理対象液から、固形成分と液体成分とを分離する固液分離装置が知られている。このような固液分離装置は、様々な用途に用いられている。
【0003】
固液分離装置の一例として、特許第4185145号公報(特許文献1)には、砂除去装置が記載されている。この砂除去装置は、砂と有機物とを含む処理対象物を、砂が除かれた除砂液と砂を含む濃厚処理液とに分離する液体サイクロンと、濃厚処理液に対して沈殿分級を行う沈殿分級機構と、沈殿分級によって得られた砂を含む沈殿物を濃厚処理液の液面を越えて搬送して排出物として取り出す排出物取り出し機構と、液体吸引装置とを具備する。排出物取り出し機構は、沈殿分級機構に接続されたパイプと、パイプの中に配置された複数のブレードと、複数のブレードを連結する牽引索と、牽引索を駆動する駆動装置とを備える。液体吸引装置は、排出物に接触するフィルタを備えており、フィルタに負圧を印加することによって、排出物取り出し機構によって取り出された排出物に含有される液体成分を吸引する。
【0004】
また、特開2006−263702号公報(特許文献2)には、パイプコンベアにより移送された砂にエアーをあてることにより、ブレードから砂を剥離させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4185145号公報
【特許文献2】特開2006−263702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開2006−263702号公報に記載された技術によれば、エアーは、砂に直接に吹き付けられる。また、特開2006−263702号公報には、砂に対して、真上方向からエアーが吹き付けられることが好ましい旨が記載されている。
【0007】
しかしながら、特開2006−263702号公報に記載された方法では、砂を完全に剥離させる為に、砂全体にエアーを噴きつける必要がある。このためには、エアーの噴射幅をブレードの幅以上に設定する必要がある。その結果、ブレードに付着した砂を完全に剥離させるために、大量のエアーが必要となる。
【0008】
また、特許第4185145号公報や特開2006−263702号公報に記載の装置では、パイプコンベアが、鉛直方向に対して傾斜して延びている。パイプコンベアが傾斜していると、ブレードが砂(固形成分)と共に液体成分をも掻き揚げてしまい、水切りが不十分になることがあった。水切りが不十分であると、既述のように、ブレードに対する砂の付着力が高まってしまい、排出口から排出させることが困難になってしまう。逆に、パイプコンベアが延びる方向を鉛直方向に近づけると、ブレードが液面を通過する際に、砂がブレードから流れ落ちてしまい易くなることがあった。
【0009】
従って、本発明の課題は、以下のいずれかの目的を達成することにある。
本発明の目的の一つは、搬送機構により液面を超えて搬送された排出物を、少量の空気で確実に剥離させることのできる、固液分離装置及び固液分離方法を提供することにある。
本発明の目的の他の一つは、水切りを十分に行うことのできる、固液分離装置及び固液分離方法を提供することにある。
本発明の目的の更に他の一つは、固形成分を、流れ落ちないように掻き揚げることのできる、固液分離装置及び固液分離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下に、発明を実施するための形態で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態との対応関係を明らかにするために括弧付きで付加されたものである。ただし、それらの番号・符号を、特許請求の範囲に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0011】
本発明に係る固液分離装置(1)は、固形成分を含有する処理対象液を受け入れるパイプ(2)と、パイプ(2)内に配置され、固形成分を、処理対象液によりパイプ(2)内に形成される液面(17)の下から液面(17)の上方に掻き揚げる、搬送機構(5)と、液面(17)の上方で搬送機構(5)に気体を噴きつけ、搬送機構(5)に付着した固形成分を搬送機構(5)から剥離させる、気体噴射機構(11)と、パイプ(2)に設けられ、搬送機構(5)から剥離した固形成分を排出する、排出口とを具備する。搬送機構(5)は、パイプ(2)内に配置された、複数の掻き揚げ板を備えている。複数の掻き揚げ板の各々は、前記固形成分を主面上に載せて搬送する。気体噴射機構(11)は、気体を、前記各掻き揚げ板の主面に衝突するような方向から、噴きつける。このような構成によれば、気体が、各掻き揚げ板の主面に衝突するように吹き付けられる。その結果、気体が主面上で拡散する。その結果、主面の全体で、付着した搬送物に気体が吹き付けられる。その結果、少量の空気で、搬送物を効率よく剥離させることができる。
【0012】
上述の固液分離装置(1)において、搬送機構(5)は、更に、複数の掻き揚げ板を連結する、牽引索(4)とを備え、牽引索(4)は、複数の掻き揚げ板の各々がパイプ(2)の延在方向に対して垂直に配置されるように、各掻き揚げ板を支持していることが好ましい。更に、パイプ(2)は、少なくとも一箇所に設けられ、鉛直方向に向いて延びる、鉛直部(10)を備えていることが好ましい。ここで、液面(17)は、鉛直部に形成される。搬送機構(5)は、固形成分を、液面(17)下から鉛直部を介して排出口に搬送する。このような構成によれば、液面を通過する際に、各掻き揚げ板は、液面と水平である。そのため、液体成分が各掻き揚げ板から流れ落ち易くなり、搬送物中における液体成分の含有率を少なくすることができる。
【0013】
更に、上述の固液分離装置(1)において、搬送機構(5)は、更に、牽引索(4)を移動させる、駆動機構を備えている。また、駆動機構は、各掻き揚げ板が液面(17)を通過するときに、各掻き揚げ板上に保持された固形成分が流れ落ちないような速度で、牽引索(4)を移動させる。このような速度で牽引索(4)を移動させることで、固形成分を効率よく各掻き揚げ板に保持させることができる。
【0014】
以上のように、本発明によれば、気体噴射機構(11)によって搬送物を確実に剥離させることができる。加えて、パイプ(2)に鉛直部(10)を設けることによって、液体成分の含有率を低減させることができる。更に、牽引索(4)の移動速度を最適化することによって固形物の搬送効率を高めることができる。すなわち、高い搬送効率と水切り率を併せ持ち、更に搬送物を確実に剥離することができる。
【0015】
本発明に係る固液分離方法は、固形成分を含有する処理対象液を、パイプ(2)内に受け入れる工程と、搬送機構(5)により、パイプ内の処理対象液に含まれる固形成分を、処理対象液の液面(17)下から液面(17)の上方に掻き揚げる工程と、液面(17)の上方で搬送機構(5)に気体を噴きつけ、搬送機構(5)に付着した固形成分を搬送機構(5)から剥離させる工程と、搬送機構(5)から剥離した固形成分を排出する工程とを具備する。搬送機構(5)は、パイプ(2)内に配置された、複数の掻き揚げ板を備えている。掻き揚げる工程は、複数の掻き揚げ板の各々が、固形成分を主面上に載せて搬送する工程を含んでいる。剥離させる工程は、気体を、前記各掻き揚げ板の主面に衝突するような方向から、噴きつける工程を含んでいる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、搬送機構により液面を超えて搬送された排出物を、少量の空気で確実に剥離させることのできる、固液分離装置及び固液分離方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】固液分離装置を示す概略図である。
【図2】パイプの延在方向に沿う断面図である。
【図3】図2のAA’断面を示す断面図である。
【図4】ドライブホイルを示す斜視図である。
【図5】パイプの断面図である。
【図6】排出口を上方から見たときの図である。
【図7】理想的な空気の噴射方向を説明するための説明図である。
【図8A】パイプが傾斜している場合の例を示す側断面図である。
【図8B】パイプをチェンの進行方向から見たときの図である。
【図9】チェンの移動速度を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態について説明する。本実施形態に係る固液分離装置は、処理対象液から固形成分と液体成分とを分離する装置である。本実施形態では、その処理対象液が、砂と有機物とを含む液体(例えば下水汚泥、し尿処理汚泥など)であるものとする。また、処理対象液に含まれる砂の平均粒子径は、10μm〜1000μm(沈降法による)であるものとする。このような処理対象液では、有機物によって粒子の保水性が高められている。そのため、処理対象液から固形成分を掻き揚げたとしても、掻き揚げられた固形成分中に多くの液体成分が含まれ易い。また、上述のような粒子径を有する砂は、処理装置の構成部品を磨耗させ易い。本発明は、これらの課題を解決できる観点から、砂と有機物とを含む処理対象液に対して、好適に適用される。但し、処理対象液としては、砂と有機物とを含む液体に限定されるものではなく、他の固液混合物が処理対象液であってもよい。また、砂の粒子径も、10μm〜1000μmに限定されるものではない。
【0019】
図1は、本実施形態に係る固液分離装置1を示す概略図である。図1に示されるように、固液分離装置1は、パイプ2と、搬送機構5と、駆動機構8と、気体噴射機構11とを備えている。
【0020】
パイプ2は、環状に形成されている。パイプ2には、高低差がつけられている。パイプ2には、受入口21と、受入口21よりも上方に形成された排出口15とが設けられている。受入口21は、処理対象液をパイプ2内に受け入れるために設けられており、分離槽22の底部に接続されている。分離槽22には、砂と有機物を含む処理液が蓄えられている。処理液は、分離槽22にて沈殿分級される。分離槽22の底部に沈殿した成分が、処理対象液として、受入口21からパイプ2内に導入される。パイプ2内には、導入された処理対象液により、液面17が形成される。液面17は、分離槽22における処理液の液面と同じ高さに形成される。排出口15は、液面17よりも上方に設けられている。
【0021】
パイプ2には、液面17と排出口15との間の少なくとも一箇所に、鉛直に延びる鉛直部10が形成されている。液面17は、鉛直部10の途中に形成されている。また、パイプ2には、液面17の上方において、水平方向に延びる水平部9が形成されている。排出口15は、水平部9において、鉛直下方を向くように、設けられている。
【0022】
搬送機構5は、処理対象液から、主として固形成分を含む搬送物18を掻き揚げ、排出口15に搬送する。搬送機構5は、パイプ2内に配置された複数の掻き揚げ板3と、複数の掻き揚げ板3を連結するチェン4とを備えている。チェン4は、パイプ2の形状に対応して、環状である。
【0023】
駆動機構8は、搬送機構5を駆動する(移動させる)ために設けられている。駆動機構8は、チェン4が掛けられるドライブホイル6と、ドライブホイル6を回転させる回転機構7とを備えている。駆動機構5によりチェン4を移動させることにより、複数の掻き揚げ板3が移動する。これにより、処理対象液中から搬送物18が複数の掻き揚げ板3により掻き揚げられる。搬送物18は、複数の掻き揚げ板3により、鉛直部10を通って水平部9へ搬送され、排出口15から排出される。駆動機構8は、排出口15よりもチェンの進行方向の後方に設けられている。
【0024】
気体噴射機構11は、搬送機構5に付着した搬送物18を剥離させるために設けられている。気体噴射機構11は、空気源12、圧力調整装置13、及び噴射ノズル14を備えている。空気源12に蓄えられた空気は、圧力調整装置13によって圧力が調整された後、噴射ノズル14から噴射される。噴射された空気は、搬送機構5に吹き付けられ、搬送物18を剥離させる。
【0025】
尚、空気源12が、パイプ2内に接続されていてもよい。この場合、パイプ2内の空気が、気体噴射機構11を介して循環する。このような構成を採用すれば、気体噴射機構11とパイプ2とによって密閉空間を形成することができ、臭気発生量を著しく減らすことができる。
【0026】
固液分離装置1の概略動作について説明する。駆動機構8によって搬送機構5が移動させられると、処理対象液中から搬送物18が液面17を越えて掻き揚げられる。掻き揚げられた搬送物18は、主として固形成分を含む。但し、搬送物18中には依然として液体成分も含まれている。この液体成分により、搬送物18は、搬送機構5に付着していることがある。そこで、搬送物18に対して、気体噴射機構11により、気体が吹き付けられる。これにより、搬送機構5から搬送物18が剥離する。剥離した搬送物18は、排出口15から排出される。気体噴射機構11が設けられているため、搬送物18を確実に排出口15から排出することができる。
【0027】
尚、搬送物18を搬送機構5から剥離させるために、機械的に搬送物18と接触する機構(スクレーパなど)を用いることも考えられる。しかしながら、搬送物18に対して機械的に接触する機構を用いた場合には、搬送機構5の磨耗及び損傷が懸念される。これに対して、本実施形態によれば、気体が搬送物18に吹き付けられるため、搬送機構5の磨耗や損傷を防止した上で、搬送物18を確実に剥離させることができる。
【0028】
続いて、搬送機構5に含まれるチェン4及び複数の掻き揚げ板3の構成について、詳述する。
【0029】
図2は、パイプ2の延在方向に沿う断面図である。図2に示されるように、チェン4は、複数の環状のチェン要素41を有している。複数のチェン要素41は互いに連結され、パイプ2の延在方向に沿って延びている。一方、複数の掻き揚げ板3の各々は、平板状である。各掻き揚げ板3は、パイプ2の延在方向に対して垂直となるように配置されている。各掻き揚げ板3は、例えば溶接などにより、チェン4に支持されている。搬送物18は、掻き揚げ板3の主面上に載せられて掻き揚げられ、搬送される。
【0030】
図3は、図2のAA’断面を示す断面図である。図3に示されるように、各掻き揚げ板3の大きさは、パイプ2との間に若干の空隙19が生じるような大きさである。パイプ2の断面に対する空隙19の割合(空隙率)は、例えば、28%である。このような空隙率を採用すれば、掻き揚げ板3によって効率よく固形成分が保持されると共に、液体成分が空隙19から流れ落ち易くなる。そのため、搬送物18に含まれる液体成分の含有量を少なくすることができる。
【0031】
続いて、駆動機構8のドライブホイル6について説明する。図4は、ドライブホイル6を示す斜視図である。図4に示されるように、ドライブホイル6には、複数のチェン要素41の各々が嵌まり込むカム部61が形成されている。このカム部61により、ドライブホイル6が回転すると、チェン4が移動する。ここで、チェン4や掻き揚げ板3に搬送物18が付着していると、カム部61とチェン4との間に搬送物18が噛みこまれ、カム部61やチェン4が磨耗してしまうことがある。しかし、本実施形態によれば、気体噴射機構11によって搬送機構5から搬送物18が除去されている。そのため、搬送物18が駆動機構8に持ち込まれることがなく、カム部61やチェン4の磨耗が防止される。
【0032】
続いて、気体噴射機構11について詳細に説明する。図5は、排出口15が設けられた部分におけるパイプ2の断面図である。また、図6は、排出口15を上方から見たときの図である。図5及び図6には、チェン4の進行方向が矢印によって示されている。
【0033】
図5に示されるように、噴射ノズル14は、移動する各掻き揚げ板3と接触しないように、各掻き揚げ板3の上端よりも高い位置に配置されている。図5には、噴射ノズル14の下端部と各掻き揚げ板3との間の高低差が、距離aとして示されている。
【0034】
また、噴射ノズル14から噴射される空気の噴射方向は、各掻き揚げ板3に対して傾いている。図中、空気の噴射方向と各掻き揚げ板3とが成す角度が、角度θとして示されている。また、図6に示されるように、噴射ノズル14は、チェン4の中心線cに空気を吹き付けるように、配置されている。
【0035】
このような構成を採用することにより、各掻き揚げ板3が移動すると、噴射された空気は、各掻き揚げ板3の主面に衝突する。主面に衝突した空気は、拡散する。これにより、主面に付着した搬送物18が粉砕され、剥離する。ここで、特開2006−263702号公報に記載されるように、ブレード(各掻き揚げ板3に相当)に付着した砂(搬送物に相当)に対し、真上方向(チェンの進行方向と直角な方向)から空気が噴きつけられる場合には、ブレードの主面に空気は衝突しない。その結果、空気は拡散しない。既述のように、搬送物18を確実に剥離させるためには、大量の空気を使用しなければならない。これに対して、本実施形態によれば、空気が主面に衝突して拡散するので、少量の空気でも搬送物18を確実に剥離させることができる。
【0036】
図7は、理想的な空気の噴射方向を説明するための説明図である。各掻き揚げ板3に付着した搬送物18を確実に剥離させるためには、空気を、各掻き揚げ板3の進行方向正面から各掻き揚げ板3の中央部Oに向けて噴きつけることが理想的である。すなわち、角度θは、90°であることが理想的である。一方で、搬送物18は、チェン4に噛み込まれることもある。チェン4に噛み込まれた搬送物18を剥離する観点からは、空気を、チェン4の中心線cに対して直交する方向から吹き付けることが理想的である。すなわち、角度θは、0°であることが理想的である。そこで、本実施形態では、図5に示される角度θが、35°以上55°以下となるように、噴射ノズル14が配置されている。このような角度θで空気を吹き付けることにより、各掻き揚げ板3に付着した搬送物18とチェン4に噛み込まれた搬送物18との両方を、確実に剥離させることができる。尚、角度θが55°よりも大きいと、チェン4に噛み込まれた搬送物18が剥離しにくくなる。一方、角度θが35°よりも小さいと、各掻き揚げ板3に付着した搬送物18が剥離しにくくなる。より好ましい角度θは、45°である。
【0037】
また、図5に示した高低差aは、5mm以上、50mm以下であることが好ましい。高低差aが5mmよりも小さい場合には、各掻き揚げ板3が噴射ノズル14と接触してしまい易くなる。一方、高低差aが50mmよりも大きい場合には、十分な量の空気を吹き付けることが難しくなり、搬送物18が剥離しにくくなる。
【0038】
噴射ノズル14から噴射される空気の流速は、100m/秒以上、300m/秒以下であることが好ましい。流速が100m/秒よりも遅い場合には、搬送物18が剥離しないことがある。流速が300m/秒より速い場合には、チェン4がばたつき、各掻き揚げ板3が噴射ノズル14と接触してしまい易くなる。空気の流速は、圧力調整装置13(図1参照)によって、制御することができる。
【0039】
噴射ノズル14は、図示しない噴射口から、空気を噴射する。この噴射口の形状としては、特に限定されるものではない。その噴射口の形状として、例えば、楕円状、円形、及び矩形状などを採用することができる。
【0040】
また、図5及び図6に示されるように、噴射ノズル14は、排出口15の直上で空気を吹き付けるように、構成されていることが好ましい。このような構成を採用すれば、剥離した搬送物18は、そのまま排出口15に落下し、外部へ排出される。これにより、搬送物18をより確実に排出することが可能である。但し、空気の吹き付け位置は、必ずしも排出口15の直上である必要はない。例えば、水平部9(図1参照)において、排出口15よりも進行方向の前側で、空気が噴きつけられてもよい。このような場合には、一度剥離した搬送物18が、各掻き揚げ板3に押され、排出口15まで導かれる。一度剥離した搬送物18は、搬送機構5に再付着することはあまりない。従って、このような構成を採用しても、搬送物18を排出口15から効率よく排出することは可能である。
【0041】
また、本実施形態では、図1に示したように、パイプ2に鉛直部10が設けられている。鉛直部10を設けることにより、搬送機構5から搬送物18をより確実に剥離させることができる。以下に、この点について説明する。
【0042】
本実施形態との比較のために、パイプ2が水平方向に対して傾斜するように延びている場合の例について説明する。図8Aは、パイプ2が傾斜している場合の例を示す側断面図である。図8Bは、図8Aに示されるパイプ2をチェン4の進行方向から見たときの図である。図8A及び図8Bに示されるように、パイプ2が傾斜して延びていると、搬送物18に液だまり20が生じやすい。その結果、搬送物18の水切りが不完全になり易く、搬送物18中における液体成分の含有率が大きくなり易い。そのため、搬送物18が搬送機構5に付着し易くなってしまう。これに対して、本実施形態では、鉛直部10を設けることによって、液体成分が流れ落ちやすくなっている。そのため、液だまり20の発生が防止される。搬送物18中における液体成分の含有率を十分に少なくすることができ、搬送機構5から搬送物18を剥離させ易くすることができる。
【0043】
鉛直部10は、液体成分の含有率を十分に少なくする観点から、500mm以上の長さで設けることが好ましい。
【0044】
続いて、チェン4の移動速度について説明する。本実施形態では、駆動機構8によるチェン4の移動速度は、各掻き揚げ板3が液面17を通過するときに、各掻き揚げ板3上に保持された固形成分が流れ落ちないような速度に設定されている。この点について以下に説明する。
【0045】
図9は、チェン4の移動速度を説明するための説明図である。図9(a)に示されるように、チェン4の移動速度が、vとして示されている。チェン4の移動速度がvであれば、液面17下で空隙19を流れる液体の流速もvになる。ここで、速度vが速すぎると、図9(b)に示されるように、各掻き揚げ板3が液面17を超えるときに、液体成分と共に固形成分が空隙19から流れ落ちてしまいやすくなる。そこで、本実施形態では、速度vが、各掻き揚げ板3上に保持された固形成分が流れ落ちない程度に遅い速度に設定されている。
【0046】
具体的には、速度vが、処理対象液中で固形成分が流下していく限界流速の最小値よりも遅いことが好ましい。速度vをこのような値に設定することにより、固形成分は、空隙19を通過する前に各掻き揚げ板13上に堆積しやすくなる。固形成分が各掻き揚げ板13が流れ落ちてしまうことが防止され、効率よく固形成分を掻き揚げることができる。より好ましくは、速度vは、その限界流速の最小値の1/3以下であることが好ましい。具体例として、処理対象液中に含まれる固形成分の比重が2.0であり、処理対液中で固形成分が流下していく限界流速の最小値が、0.05m/sであったとする。この場合、速度vは、「0.05m/s×60s/min×1/3=1.0m/min」より、1.0m/minよりも遅いことが、より好ましい。実際に、固形成分として、限界流速の最小値が0.05m/sである砂を用いて実験を行った。この実験で、チェン4の移動速度vを、3.0m/min、2.0m/min、及び1.0m/min,0.5m/minのそれぞれに設定した。そして、それぞれの条件における搬送効率を確認した。その結果、速度vが1.0m/minである場合に、最も搬送効率が高かった。
【0047】
尚、上述の、「固形成分が流下していく限界流速」については、たとえば、「下水道施設計画設計指針と解説(前編)、社団法人日本下水道協会発行、2001年版、p369」の記載に基づいて求めることができる。すなわち、限界流速Vcは、常数β(0.06)、摩擦係数f(0.03)、重力加速度(9.8m/s)、粒子の比重S、及び粒子の直径Dを用いて、下記式により示される。
(数式1)Vc=[(8×β)/f×g×(S-1)×D]0.5
【0048】
以上説明したように、本実施形態によれば、処理対象液中から掻き揚げられた搬送物18に対して空気が噴射されるため、搬送物18を確実に剥離させることができる。これにより、搬送機構5や駆動機構8の磨耗や損傷を防止することができる。ここで、各掻き揚げ板の主面と衝突するように空気が噴射されるため、搬送物18を剥離させるのに必要な空気量を減らすことができる。
【0049】
また、本実施形態によれば、鉛直部10が設けられているために、搬送物18中における液体成分の含有率を十分に小さくすることができる。これにより、搬送物18が搬送機構5から剥離し易くなり、搬送機構5や駆動機構8の損傷をより確実に防止することができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、チェン4が、各掻き揚げ板3上に保持された固形成分が流れ落ちない程度に遅い速度で、駆動される。これにより、固形成分を効率よく搬送することが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1 固液分離装置
2 パイプ
3 掻き揚げ板(フライト)
4 チェン
5 搬送機構
6 ドライブホイル
7 回転機構
8 駆動機構
9 水平部
10 鉛直部
11 気体噴射機構
12 空気源
13 圧力調整装置
14 噴射ノズル
15 排出口
17 液面
18 搬送物
19 空隙
20 液だまり
21 受入口
22 分離槽
41 チェン要素
61 カム部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形成分を含有する処理対象液を受け入れるパイプと、
前記パイプ内に配置され、前記固形成分を、前記処理対象液により前記パイプ内に形成される液面の下から前記液面の上方に掻き揚げる、搬送機構と、
前記液面の上方で前記搬送機構に気体を噴きつけ、前記搬送機構に付着した前記固形成分を前記搬送機構から剥離させる、気体噴射機構と、
前記パイプに設けられ、前記搬送機構から剥離した前記固形成分を排出する、排出口と、
を具備し、
前記搬送機構は、前記パイプ内に配置された、複数の掻き揚げ板を備えており、
前記複数の掻き揚げ板の各々は、前記固形成分を主面上に保持して搬送し、
前記気体噴射機構は、気体を、前記各掻き揚げ板の主面に衝突するような方向から、噴きつける
固液分離装置。
【請求項2】
請求項1に記載された固液分離装置であって、
前記パイプは、前記液面の上方で水平方向に沿って延びる水平部を備えており、
前記排出口は、前記水平部に、鉛直下方を向くように形成されている
固液分離装置。
【請求項3】
請求項2に記載された固液分離装置であって、
前記気体噴射機構は、前記排出口の直上で気体を前記搬送機構に吹き付けるように、構成されている
固液分離装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載された固液分離装置であって、
前記気体噴射機構が吹き付ける気体の流速は、100m/秒以上、300m/秒以下である
固液分離装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載された固液分離装置であって、
前記搬送機構は、更に、
前記複数の掻き揚げ板を連結する、牽引索とを備え、
前記牽引索は、前記複数の掻き揚げ板の各々が前記パイプの延在方向に対して垂直に配置されるように、前記各掻き揚げ板を支持している
固液分離装置。
【請求項6】
請求項5に記載された固液分離装置であって、
前記気体噴射機構は、気体の噴射方向と前記各掻き揚げ板とが成す角度が35°以上55°以内となるように、気体を吹き付ける
固液分離装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載された固液分離装置であって、
前記搬送機構は、更に、前記牽引索を移動させる、駆動機構を備えている
固液分離装置。
【請求項8】
請求項7に記載された固液分離装置であって、
前記駆動機構は、前記各掻き揚げ板が前記液面を通過するときに、前記各掻き揚げ板上に保持された前記固形成分が流れ落ちないような速度で、前記牽引索を移動させる
固液分離装置。
【請求項9】
請求項8に記載された固液分離装置であって、
前記駆動機構は、前記処理対象液中で前記固形成分が流下していく限界流速の最小値よりも遅い速度で、前記牽引索を移動させる
固液分離装置。
【請求項10】
請求項7乃至9の何れかに記載された固液分離装置であって、
前記牽引索は、複数の環状のチェン要素が連結されたチェンにより形成され、
前記駆動機構は、
前記各チェン要素が嵌められるカム部が設けられたドライブホイールと、
前記ドライブホイールを回転させる、回転機構とを備える
固液分離装置。
【請求項11】
請求項5乃至10の何れかに記載された固液分離装置であって、
前記パイプは、少なくとも一箇所に設けられ、鉛直方向に向いて延びる、鉛直部を備えており、
前記液面は、前記鉛直部に形成され、
前記搬送機構は、前記固形成分を、前記液面下から前記鉛直部を介して前記排出口に搬送する
固液分離装置。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れかに記載された固液分離装置であって、
前記処理対象液は、砂と有機物とを含んでいる
固液分離装置。
【請求項13】
固形成分を含有する処理対象液を、パイプ内に受け入れる工程と、
搬送機構により、前記パイプ内の処理対象液に含まれる前記固形成分を、前記処理対象液の液面下から液面の上方に掻き揚げる工程と、
前記液面の上方で前記搬送機構に気体を噴きつけ、前記搬送機構に付着した前記固形成分を前記搬送機構から剥離させる工程と、
前記搬送機構から剥離した前記固形成分を排出する工程と、
を具備し、
前記搬送機構は、前記パイプ内に配置された、複数の掻き揚げ板を備えており、
前記掻き揚げる工程は、前記複数の掻き揚げ板の各々が、前記固形成分を主面上に載せて搬送する工程を含んでおり、
前記剥離させる工程は、気体を、前記各掻き揚げ板の主面に衝突するような方向から、噴きつける工程を含んでいる
固液分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−264387(P2010−264387A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117753(P2009−117753)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(501370370)三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】