説明

固液分離装置

【課題】 ペレット状のハイドレートとスラリー母液との分離効率を向上できる固液分離装置の提供を課題とする。
【解決手段】 ペレット状のハイドレートとスラリー母液とが混在したスラリー状のハイドレートを流下させながらそのスラリー母液を分離するために傾斜配置された脱液スクリーン20を備えた固液分離装置10において、脱液スクリーン20上を流下するスラリー状のハイドレートの脱液スクリーン20上での滞留時間を調整する滞留時間調整手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペレット状のハイドレートとスラリー母液とが混在したスラリー状のハイドレートを流下させながらそのスラリー母液を分離するために傾斜配置された脱液スクリーンを備えた固液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から天然ガスと水をタンク内に投入し、所定温度下、所定圧力下で反応させて天然ガスハイドレート(Natural Gas Hydrate:以下「NGH」という)を生成する技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなNGH生成装置においては、通常、タンク内で生成されたスラリー状のNGHを脱水してペレット状のNGHを形成するが、こうしてできたペレット状のNGHは、その粒径が小さいため、スラリー母液によりその微小粒子が固められて、粒径の大きいペレット状のNGHとされる場合がある。この場合、次工程の固液分離装置において、粒径を大とされたペレット状のNGHとスラリー母液とが分離される。
【0004】
固液分離装置は、例えば傾斜配置された多孔板で構成された脱液スクリーンを備え、その脱液スクリーン上を、ペレット状のNGHとスラリー母液とが混在するスラリー状のNGHが流下することにより、スラリー母液が脱液スクリーンによって分離除去される。つまり、脱液スクリーンの多数の孔からスラリー母液のみが流れ落ち、ペレット状のNGHのみが次工程へ排出される。
【0005】
しかしながら、このような構成であると、脱液スクリーン上に供給されるスラリー状のNGHの供給量が多量の場合、スラリー母液が充分に分離除去されないで、ペレット状のNGHと共に排出されるという問題があった。つまり、ペレット状のNGHとスラリー母液との分離効率を向上させることが、従来から要望されていた。
【特許文献1】特開2001−342473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、ペレット状のハイドレートとスラリー母液との分離効率を向上できる固液分離装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載の固液分離装置は、ペレット状のハイドレートとスラリー母液とが混在したスラリー状のハイドレートを流下させながら該スラリー母液を分離するために傾斜配置された脱液スクリーンを備えた固液分離装置において、前記脱液スクリーン上を流下するスラリー状のハイドレートの該脱液スクリーン上での滞留時間を調整する滞留時間調整手段を設けたことを特徴としている。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、滞留時間調整手段により、脱液スクリーン上を流下するスラリー状のハイドレートの脱液スクリーン上での滞留時間が調整される。つまり、脱液スクリーン上に滞留するスラリー状のハイドレートの滞留時間を延長することができる。したがって、ペレット状のハイドレートとスラリー母液との分離効率を向上させることができる。
【0009】
また、本発明に係る請求項2に記載の固液分離装置は、ペレット状のハイドレートとスラリー母液とが混在したスラリー状のハイドレートを流下させながら該スラリー母液を分離するために傾斜配置された脱液スクリーンを備えた固液分離装置において、前記脱液スクリーン上を流下するスラリー状のハイドレートの通過可能な面積を変更する規制部材を設けたことを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、規制部材により、脱液スクリーン上を流下するスラリー状のハイドレートの流下量が調整される。つまり、脱液スクリーン上に滞留するスラリー状のハイドレートの滞留時間を延長することができる。したがって、ペレット状のハイドレートとスラリー母液との分離効率を向上させることができる。
【0011】
また、本発明に係る請求項3に記載の固液分離装置は、ペレット状のハイドレートとスラリー母液とが混在したスラリー状のハイドレートを流下させながら該スラリー母液を分離するために傾斜配置された脱液スクリーンを備えた固液分離装置において、前記脱液スクリーンの傾斜角度を変更可能に構成したことを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、脱液スクリーンの傾斜角度を変更することにより、脱液スクリーン上を流下するスラリー状のハイドレートの流下速度が調整される。つまり、脱液スクリーン上に滞留するスラリー状のハイドレートの滞留時間を延長することができる。したがって、ペレット状のハイドレートとスラリー母液との分離効率を向上させることができる。
【0013】
また、請求項4に記載の固液分離装置は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の固液分離装置において、前記脱液スクリーンを振動可能に構成したことを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、脱液スクリーンの下流端付近に、ペレット状のNGHが滞留するのを防止することができる。つまり、ペレット状のNGHをスムーズに排出することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上、何れにしても本発明によれば、ペレット状のハイドレートとスラリー母液との分離効率を向上できる固液分離装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の最良な実施の形態を図面に示す実施例を基に詳細に説明する。図1は本発明に係る固液分離装置におけるスラリー母液の循環経路を含んだ全体模式図であり、図2は本発明に係る固液分離装置の構成を示す模式図である。そして、図3は規制部材の揺動構成を示す説明図であり、図4は脱液スクリーンの揺動構成を示す説明図である。なお、本実施例ではNGHを例に採って説明するが、本発明に係る固液分離装置は、NGHに限定されるものではない。また、以下において、紙面に垂直な方向を「幅方向」とする。
【0017】
図1で示すように、図示しないペレタイザーによって粒径の小さいペレット状とされたNGHは、タンク12内においてスラリー母液により微小粒子が固められて、粒径の大きいペレット状のNGHとされる。そして、ペレット状のNGHとスラリー母液とが混在するスラリー状のNGHが、固液分離装置10へ供給される。なお、タンク12内から固液分離装置10内へスラリー状のNGHを供給する際、ロータリーバルブ14によって、その供給量が調節される。
【0018】
固液分離装置10は、図2で示すように、スラリー状のNGHを供給する供給口16と、ペレット状のNGHを排出する排出口18と、供給口16から供給されたスラリー状のNGHを流下させながらそのスラリー母液を分離除去するために傾斜配置された脱液スクリーン20と、脱液スクリーン20上を流下するスラリー状のNGHの通過可能な面積を変更する揺動式の規制部材22とを有している。
【0019】
規制部材22は、例えば可撓性を有する平板状等に構成され、その幅は脱液スクリーン20の幅以上とされている。そして、その傾斜角度が調節可能に構成されている。すなわち、図3で示すように、規制部材22の上端が固液分離装置10のハウジング24等に回動可能に枢支され、下端の幅方向における左右両端には回転体26の内側の中心が回転可能に枢支されている。そして、その回転体26の外側の中心に設けられた凸部26Aが、ハウジング24等に設けられた円弧状の案内溝28に挿入されている。
【0020】
また、回転体26の外周面における一部が、チェーン30(又は無端ベルトでもよい)に固着されている。チェーン30は、正逆回転可能なモーター(図示省略)に接続された駆動スプロケット32と、従動スプロケット34に巻回されており、正逆方向に循環移動(回動)する構成とされている。
【0021】
したがって、チェーン30が正逆方向に循環移動(回動)することにより、回転体26を介して、規制部材22が案内溝28に沿って図示の矢印A方向に揺動可能となる構成であり、これによって、脱液スクリーン20上を流下するスラリー状のNGHの通過可能な面積が変更され、その流下量が調整される構成である。
【0022】
また、脱液スクリーン20は、粒径が大とされたペレット状のNGHが通過不能な孔径を有する多孔板で構成され、その傾斜角度が調節可能に構成されている。すなわち、図4で示すように、脱液スクリーン20の下流側(排出口18側)端部がハウジング24等に回動可能に枢支され、上流側(供給口16側)端部の幅方向における左右両端には回転体36の内側の中心が回転可能に枢支されている。そして、その回転体36の外側の中心に設けられた凸部36Aが、ハウジング24等に設けられた円弧状の案内溝38に挿入されている。
【0023】
また、回転体36の外周面における一部が、チェーン40(又は無端ベルトでもよい)に固着されている。チェーン40は、正逆回転可能なモーター(図示省略)に接続された駆動スプロケット42と、従動スプロケット44に巻回されており、正逆方向に循環移動(回動)する構成とされている。
【0024】
したがって、チェーン40が正逆方向に循環移動(回動)することにより、回転体36を介して、脱液スクリーン20が案内溝38に沿って図示の矢印B方向に揺動可能となる構成であり、これによって、脱液スクリーン20の傾斜角度が調節され、脱液スクリーン20上を流下するスラリー状のNGHの流下速度(脱液速度)が調整される構成である。
【0025】
つまり、ペレット状のNGHとスラリー母液とが混在したスラリー状のNGHの脱液スクリーン20上での滞留時間が長くなるように、脱液スクリーン20の傾斜角度(スラリー状のNGHの流下速度)と、規制部材22の傾斜角度(スラリー状のNGHの流下量)を調節することができるので、そのスラリー母液の分離効率を向上させることができる。なお、脱液スクリーン20の場合は、駆動スプロケット42にモーターを接続するのではなく、手動で回転させられるように、ハンドル(図示省略)等を接続する構成にしてもよい。
【0026】
以上ような構成の固液分離装置10において、次にその作用について説明する。タンク12内において、スラリー母液により粒径が大とされたペレット状のNGHは、スラリー母液が混在したスラリー状態で固液分離装置10へ供給口16から供給される。そして、固液分離装置10内へ供給されたスラリー状のNGHは、脱液スクリーン20上に供給される。
【0027】
ここで、脱液スクリーン20は、所定角度傾斜した多孔板で構成されているので、脱液スクリーン20上に供給されたスラリー状のNGHは、その脱液スクリーン20上を流下しながら、スラリー母液が分離除去される。つまり、脱液スクリーン20の多数の孔から重力の作用によってスラリー母液のみが流れ落ちる。
【0028】
そして、ペレット状のNGHのみが排出口18へ流下されて次工程へ排出される。なお、脱液スクリーン20によってペレット状のNGHと分離されたスラリー母液は、固液分離装置10の下部に設けられたサクションドラム50に貯留され、配管46を通ってタンク12内に供給されて再利用される。したがって、その配管46には、循環ポンプ48が配設されている(図1参照)。
【0029】
ところで、供給されるスラリー状のNGHの供給量が多量の場合には、充分にスラリー母液が分離除去されないで、ペレット状のNGHと共にそのスラリー母液が排出されてしまうという不具合が起こる。このような不具合は、スラリー状のNGHの脱液スクリーン20上での滞留時間が長くなれば解消される。したがって、規制部材22及び脱液スクリーン20の傾斜角度が調節(変更)可能に構成されている。
【0030】
すなわち、図2で示す規制部材22の鉛直方向に対する傾斜角度α1と、脱液スクリーン20の水平方向に対する傾斜角度β1が、それぞれ通常時の傾斜角度であるとすると、図5(A)で示すように、規制部材22の傾斜角度をα2(α2<α1)として、脱液スクリーン20上を流下するスラリー状のNGHの通過可能な面積を低減したり(流下量を制限したり)、図5(B)で示すように、脱液スクリーン20の傾斜角度をβ2(β2<β1)として、脱液スクリーン20上を流下するスラリー状のNGHの流下速度を低減することが可能になっている。
【0031】
なお、図5(C)で示すように、規制部材22の傾斜角度をα2(α2<α1)として、脱液スクリーン20上を流下するスラリー状のNGHの通過可能な面積を低減する(流下量を制限する)とともに、脱液スクリーン20の傾斜角度をβ2(β2<β1)として、脱液スクリーン20上を流下するスラリー状のNGHの流下速度を低減するようにしてもよいことは言うまでもない。このように、規制部材22の傾斜角度α及び脱液スクリーン20の傾斜角度βは、適宜変更可能となっている。
【0032】
したがって、脱液スクリーン20上に供給されるスラリー状のNGHの供給量が多量の場合でも、スラリー母液がペレット状のNGHと共に排出されるような不具合は起きず、ペレット状のNGHのみを排出口18から排出することができる。つまり、規制部材22の傾斜角度α及び/又は脱液スクリーン20の傾斜角度βを変更することにより、ペレット状のNGHとスラリー母液とが混在したスラリー状のNGHの脱液スクリーン20上での滞留時間を延長(調整)することができるので、そのスラリー状のNGHから、スラリー母液を充分に分離除去することができる。
【0033】
なお、規制部材22の傾斜角度α及び脱液スクリーン20の傾斜角度βは、ロータリーバルブ14によるスラリー状のNGHの供給量に応じて、適宜モーター(ハンドルを含む)の回転駆動が制御されることによって変更されるのが好ましいが、規制部材22は、供給されるスラリー状のNGHの供給量によらずに、周期的に揺動するような構成にしてもよい。また、規制部材22を取り付ける位置も、スラリー状のNGHの流下量を好適に規制できる位置であればよく、図示の位置に限定されるものではない。更に、スラリー母液は、NGHから分離されやすい液体とされていることは言うまでもない。
【0034】
また、このような構成であると、モーター(又はハンドル)によってチェーン40を正逆方向に小刻みに循環移動(回動)させることにより、脱液スクリーン20を上下方向に振動させることができるので、脱液スクリーン20の下流側端部付近にペレット状のNGHが滞留するのを防止することができる。つまり、脱液スクリーン20の下流側端部付近において、ペレット状のNGHの流れが停滞した場合には、脱液スクリーン20を振動させることにより、ペレット状のNGHをスムーズに排出口18へ流下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】固液分離装置におけるスラリー母液の循環経路を含んだ全体模式図
【図2】固液分離装置の構成を示す模式図
【図3】規制部材の揺動構成を示す説明図
【図4】脱液スクリーンの揺動構成を示す説明図
【図5】(A)規制部材の傾斜角度を変更した様子を示す模式図、(B)脱液スクリーンの傾斜角度を変更した様子を示す模式図、(C)規制部材及び脱液スクリーンの傾斜角度を変更した様子を示す模式図
【符号の説明】
【0036】
10 固液分離装置
12 タンク
14 ロータリーバルブ
16 供給口
18 排出口
20 脱液スクリーン
22 規制部材
26、36 回転体
28、38 案内溝
30、40 チェーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペレット状のハイドレートとスラリー母液とが混在したスラリー状のハイドレートを流下させながら該スラリー母液を分離するために傾斜配置された脱液スクリーンを備えた固液分離装置において、
前記脱液スクリーン上を流下するスラリー状のハイドレートの該脱液スクリーン上での滞留時間を調整する滞留時間調整手段を設けたことを特徴とする固液分離装置。
【請求項2】
ペレット状のハイドレートとスラリー母液とが混在したスラリー状のハイドレートを流下させながら該スラリー母液を分離するために傾斜配置された脱液スクリーンを備えた固液分離装置において、
前記脱液スクリーン上を流下するスラリー状のハイドレートの通過可能な面積を変更する規制部材を設けたことを特徴とする固液分離装置。
【請求項3】
ペレット状のハイドレートとスラリー母液とが混在したスラリー状のハイドレートを流下させながら該スラリー母液を分離するために傾斜配置された脱液スクリーンを備えた固液分離装置において、
前記脱液スクリーンの傾斜角度を変更可能に構成したことを特徴とする固液分離装置。
【請求項4】
前記脱液スクリーンを振動可能に構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の固液分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−110498(P2006−110498A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302094(P2004−302094)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】