固液分離装置
【課題】処理対象物(汚泥)の流動特性に応じて任意に搬送ピッチを変えることができ、1つの装置で種々の汚泥処理ができるようにし、ユーザーの使用性を向上させる。
【解決手段】長ボルト19に開口部を有する固定プレート21が挿通されて固定部材としての外胴17が構成され、モータ13で回転駆動される断面多角形のシャフト25に開口部を有する搬送プレート29及びスペーサ28が挿通されて可動部材18が構成されている。各搬送プレート29及びスペーサ28は周方向に位置をずらして挿通されており、搬送プレート29の一部とスペーサ28によって螺旋階段状の搬送羽根が構成されている。流入ボックス12から投入されたフロック化汚泥は螺旋階段状の搬送羽根で圧縮されながら搬送され、出口側から排出される。搬送プレート29とスペーサ28はシャフト25に対して偏芯しており、搬送プレート29の上下変位を伴う回転運動により目詰まりが防止される。
【解決手段】長ボルト19に開口部を有する固定プレート21が挿通されて固定部材としての外胴17が構成され、モータ13で回転駆動される断面多角形のシャフト25に開口部を有する搬送プレート29及びスペーサ28が挿通されて可動部材18が構成されている。各搬送プレート29及びスペーサ28は周方向に位置をずらして挿通されており、搬送プレート29の一部とスペーサ28によって螺旋階段状の搬送羽根が構成されている。流入ボックス12から投入されたフロック化汚泥は螺旋階段状の搬送羽根で圧縮されながら搬送され、出口側から排出される。搬送プレート29とスペーサ28はシャフト25に対して偏芯しており、搬送プレート29の上下変位を伴う回転運動により目詰まりが防止される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥(畜産糞尿、食品工場などの排水処理から発生する含油汚泥、下水処理から発生する余剰汚泥、建設現場から発生する無機汚泥等の概念を含む)中に含まれる固形物と水分とを分離する固液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の汚泥は水分を多量に含んでおり、そのままの状態(原水)では堆肥化等の処理が困難であるため、フロック化処理後固液分離装置により脱水し、含水率が約80%程度の脱水ケーキとすることが行われている。
汚泥(処理対象物)を脱水する方法としては、従来より種々の方式が提案されている。例えば、スクリュープレスタイプの方式が知られている。これは、パンチングプレートなどの水抜けの良い板を円筒形に加工した固定部材(ステータ)の中に、シャフトに螺旋状の羽根を固定したスクリューコンベアを設けて濾過体を構成し、この濾過体の一端側から処理対象物を投入してスクリューコンベアを低速で回転させ、固形物を軸方向に搬送しながら固定部材の穴から水分を流下させる仕組みになっている。
濾過体の他端側(出口側)に向かってスクリューピッチを小さくすることと、出口から排出される固形物の量を規制する板を設けることにより十分な内圧を得ることができ、固形物の含水率が約80%という高い脱水率を得ることができる。
しかしながら、パンチングプレートが目詰まりを起こしやすいために、外胴としてのパンチングプレートを頻繁に洗浄する必要があり、大量の洗浄水を要するとともに洗浄作業が面倒であるという問題があった。
【0003】
特許文献1には、多数の固定リングを間隔をおいて軸方向に積層状態に配置して円筒状の固定部材を形成するとともに、固定リング間に可動リングを配置し、固定リングと可動リングの内部空間にスクリューコンベアを設けて濾過体を構成した固液分離装置が記載されている。
可動リングの内径はスクリューコンベアの外径よりも僅かに小さく設定されており、スクリューコンベアが回転すると汚泥は軸方向に搬送され、水分は可動リングと固定リング間の微小ギャップから外部に排出される。
スクリューコンベアの回転によって可動リングは軸方向と直交する方向に押し上げられて揺動し、これにより固定リングと可動リング間の隙間に固形分が詰まることが防止される。
すなわち、スクリューコンベアの回転動作を利用して、同時に目詰まり防止動作も行うようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開平5−228695号公報
【特許文献2】特開2005−169323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された構成では、スクリューコンベアの回転動作を利用して目詰まりを防止するので、目詰まり防止のための専用の動力源を必要とせず、上述した洗浄問題も解消できる利点を有している。
しかしながら、スクリューコンベアの螺旋羽根の外縁(エッジ)は常に可動リングの内周面と金属接触を繰り返すため、経時的に可動リングの内径は摩耗により大きくなり、固定リングの内径と同等になった時点で可動リングの揺動が無くなり、目詰まり防止機能が消失するという問題があった。
この問題を解消するには、定期的に可動リングとスクリューコンベアの摩耗状態をチェックし、摩耗が大きい場合には交換をしなければならず、維持管理コストが増大するという問題があった。
【0006】
また、この種の固液分離装置では、処理対象物の種類(流動特性等)に応じて最適な装置仕様が存在し、処理対象物が異なった場合、例えばスクリューコンベアのピッチを変更しなければならない。
しかしながら、従来の装置では、ピッチを変える場合には新たなスクリューコンベアを購入しなければならず、規格が合わない場合には装置ごと買い換える必要があった。
【0007】
また、従来のスクリューコンベア方式の共通の欠点として、畜産排水あるいはダストコントロール排水などの繊維状の狭雑物を多量に含む汚泥を脱水する場合に、スクリューシャフトに繊維の絡み付きが発生していた。
濾過体の内部に十分な内圧が生じるほど、すなわち脱水機能が高まるほどシャフトに絡み付いた繊維層内に固形物が圧縮され、固形物が固着して実質的にシャフト径は大きくなる。
シャフト径が大きくなると、濾過体内の搬送路の容積が必然的に小さくなるため、仕様容量の汚泥を投入できなくなり、処理効率が低下するという問題があった。
この場合、処理効率を回復させるためには、シャフトを取り外してシャフトから繊維層とこれに付着した固形物を除去する必要があるが、シャフトには螺旋状の羽根が一体に設けられているので、除去作業が面倒であった。
また、この種の固液分離装置では、総じてオーバーホールやメンテナンス、清掃等の観点から分解・組み立ての容易性が求められていた。
【0008】
本発明は、上述した問題点のうちの少なくとも1つもしくは全部を解消できる固液分離装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明では、筒状をなす固定部材の内部にスクリューコンベア機能を呈する可動部材を設けた濾過体と、上記可動部材を回転駆動する駆動手段を有し、上記濾過体の一端側から送り込まれる汚泥を脱水しながら他端側へ搬送して排出する固液分離装置において、上記可動部材は、回転軸と、該回転軸に軸方向に積層状態に配置されて支持された取り外し可能な複数の搬送プレートを備え、該搬送プレートは、各搬送プレートをそれぞれ上記回転軸の軸方向と略直交する面内で周方向に略一定の間隔でずらして位置固定することにより搬送路及び上記軸方向に連続的に連なる螺旋階段状の搬送羽根を形成可能な形状を有していることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の固液分離装置において、上記搬送プレートは、搬送路を構成する開口部と、外側から回転中心部へ向かって延び該中心部に上記回転軸に対する挿通穴を有する突縁を有し、該突縁が連続的に連なって上記螺旋階段状の搬送羽根を形成することを特徴とする。
請求項3記載の発明では、請求項2記載の固液分離装置において、上記回転軸と上記突縁の挿通穴とが相対的な係合構造を有し、上記回転軸に挿通した時点で上記搬送プレートの上記回転軸に対する周方向の位置固定がなされることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明では、請求項3に記載の固液分離装置において、周方向の位置固定箇所が所定の角度間隔で複数設けられ、上記螺旋階段状の搬送羽根のピッチを変更可能であることを特徴とする。
請求項5記載の発明では、請求項2〜4のいずれかに記載の固液分離装置において、上記各搬送プレート間に、上記突縁と共に上記螺旋階段状の搬送羽根を形成するスペーサが配置されていることを特徴とする。
請求項6記載の発明では、請求項5に記載の固液分離装置において、上記スペーサが上記搬送プレートの上記突縁部位に一体に形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の発明では、請求項5に記載の固液分離装置において、上記スペーサが上記突縁と同等の形状を有し、上記回転軸に上記搬送プレートと交互に挿通して配置されることを特徴とする。
請求項8記載の発明では、請求項5〜7のいずれかに記載の固液分離装置において、上記固定部材は、開口部を有し上記回転軸の軸方向に間隔をおいて配置された複数の固定プレートを備え、上記各固定プレートは上記スペーサの回転軌跡の外周を覆うように配置されていることを特徴とする。
請求項9記載の発明では、請求項8に記載の固液分離装置において、上記回転軸の軸方向における、上記スペーサの厚みをSt、上記固定プレートの厚みをKt、上記搬送プレートの厚みをFtとするとき、St>Kt>Ftの関係を満足することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の搬送プレートの周方向の位置をずらした積層構成によりスクリューコンベアに相当する螺旋階段状の羽根を形成できるので、処理対象物の流動特性等に応じて羽根ピッチを任意に変えることができ、新たにスクリューコンベアを購入することなく汚泥特性又はユーザー特性に合った処理機能を得ることができる。
可動部材の回転動作において金属接触等の部材接触が無いので、維持管理費を大幅に低減できる。
【0014】
可動部材及び螺旋階段状の羽根を細かく分解できるので、メンテナンス、オーバーホール、清掃を精度よく行える。スクリューコンベア等の一体不可分の重量物が存在しないので、分解・組み立てが少ない労力で容易に行える。
繊維が絡み付いてもスクリューコンベア状の構成を細かく分解できるので、除去作業が容易となる。
スペーサの存在により搬送力を向上させることができる。
回転軸に搬送プレート、スペーサを挿通するだけで略全体の組付がなされるので、1部品毎に固定する場合に比べて組み立て・分解性が大幅に向上する。
搬送プレート、スペーサの周方向の位置を変えて挿通するだけで螺旋階段状の羽根のピッチを変えることができるので、ピッチ変更が容易となる。
スペーサを一体成形した場合には、部品点数の低減を図れるとともに、組み立て・分解が一層容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の第1の実施の形態を図1乃至図16に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る固液分離装置10は、汚泥を脱水する濾過体11と、この濾過体11の一端側(入口側)に設けられ、フロック化された汚泥が投入される流入ボックス12と、濾過体11の他端側(出口側又は排出側)に設けられ、濾過体11の内部に設けられた後述する可動部材を回転駆動する駆動手段としてのモータ13と、同じく濾過体11の他端側に設けられ、出口側の排出容量を制限して濾過体11の内部の圧力を調整する圧力調整手段14と、濾過体11を支持するL字状のプレートからなる3つの支持体15と、モータ13が固定されるモータ固定板16等を有している。
ここでの固液分離装置10は、床面に略平行となる水平設置タイプである。
【0016】
濾過体11は、角筒状をなす固定部材としての外胴17と、この外胴17の内部に設けられた可動部材18を有している。
外胴17は、図2に示すように、支持体15に支持される3本の長ボルト19に、軸方向に固定プレート21を多数枚積層状態に配置し、両側と中央部を支持体15で補強した構成となっている。
したがって、外胴17は、固定プレート21間に確保される隙間(後述)により、全体として、軸方向と直交する方向への水分の抜けが可能な角筒体となっている。
長ボルト19の一端側は図中右側の支持体15の外側でナット部材22により固定されている。長ボルト19の他端側はモータ固定板16に固定された図中左側の支持体15の外側でナット部材22により固定されている。
【0017】
図3に示すように、支持体15は、垂直部23と水平部24とから構成されており、垂直部23には汚泥の搬送路の一部を構成する円形の穴23aと、長ボルト19の挿通穴23bが形成されている。水平部24には、図示しない装置本体架台に固定するための固定用穴24aが形成されている。
固定プレート21には、中央部に汚泥の搬送路の一部を構成する円形の穴21aが形成されており、3箇所に長ボルト19の挿通穴21bが形成されている。固定プレート21の穴21aと支持体15の穴23aは略同径となっている。
図4に示すように、固定プレート21は、径方向の幅w1を有する周縁部21cが連なったリング状に形成されており、周縁部21cに略120°間隔で連設された各突片21dに挿通穴21bが形成されている。固定プレート21の厚みKtは約2mmに設定されている。
【0018】
汚泥を搬送するスクリューコンベアの機能を呈する可動部材18は、図5に示すように、回転軸としての断面が多角形(ここでは12角形)のシャフト25に、i型のスペーサ28と搬送プレート29を交互に挿通して、軸方向にスペーサ28と搬送プレート29を多数枚積層状態に配置した構成となっている。
可動部材18は、スペーサ28によって確保される隙間(後述)により、軸方向と直交する方向への水分の抜けが可能な円筒状となっている。
【0019】
図6に示すように、搬送プレート29は、全体としては円板状で、具体的には径方向の幅w2を有する周縁部29aが連なったリング状に形成されており、その内側に搬送路を構成する開口部29bと、外側(周縁部29a)から回転中心部へ向かって延び、中心部にシャフト25に対する挿通穴29cを有する突縁29dとを有している。突縁29dは、挿通部29d−1と、扇形部29d−2とから構成されている。
挿通穴29cはシャフト25の外形(12角形)に合わせて12角形に形成されている。
挿通穴29cの中心h1は、円板としての搬送プレート29の中心h0よりも寸法δ(ここでは2mm)偏芯している。搬送プレート29の厚みFtは約1mmに設定されている。
【0020】
図7に示すように、スペーサ28は、搬送プレート29の突縁29dと同様の形状を有している。すなわち、シャフト25に対する挿通穴28aを有する挿通部28bと、扇形部28cとから構成されている。
挿通穴28aも同様に、シャフト25の外形に合わせて12角形に形成されている。挿通穴28aの中心h2も、円板としての搬送プレート29の中心h0よりも寸法δ(ここでは2mm)偏芯している。スペーサ28の厚みStは約3mmに設定されている。
【0021】
スペーサ28の挿通穴28aは、搬送プレート29の挿通穴29cよりも時計回り方向に所定角度(ここでは5°)ずらされている。
したがって、図8に示すように、搬送プレート29とスペーサ28を対応する頂角が一致した状態で順にシャフト25に挿通して重ねた場合、スペーサ28の扇形部28cと搬送プレート29の突縁29dの扇形部29d−2はずれた状態となる。
組み立てにおいては、図3に示すように、最初にスペーサ28を挿通して左側の支持体15の穴23aに位置させ、次いで順に搬送プレート29、スペーサ28、固定プレート21(スペーサ28と固定プレート21間では順序はいずれでもよい)、搬送プレート29、スペーサ28・・・と軸方向に積層状態に配置していく。
ここで、図8で示した搬送プレート29とスペーサ28の1組を、図9に示すように、軸方向と直交する方向に略一定の間隔でずらしながら配置する。ここでは、シャフト25が12角形であるので、例えば多角形の頂角位置を1つずつずらした場合、30°ずつずれることになる。
搬送プレート29とスペーサ28の挿通穴29c、28aの周辺に1、2、3・・の数字や符号等の角度位置が区別できるマークを付けておけば組み立てが容易となる。この場合、シャフト25にマークを付け、挿通穴29c、28aの基準位置に印を1つ付けるようにしてもよい。
【0022】
多角形同士の係合構造であるため、スペーサ28と搬送プレート29はシャフト25に挿通した時点で周方向の位置固定がなされる。本実施形態では、シャフト25の外面を多角形状とし、搬送プレート29及びスペーサ28の挿通穴29c、28aの形状をこれに対応した多角形状としたが、これに限定される趣旨ではなく、例えば挿通穴側に凸部を形成し、シャフトの外面に係合溝を形成するようにしてもよい。例えば、セレーション又はスプライン状の係合等、挿通穴とシャフトとの間で相対的な係合構造を採ることができる。
図9に示すずらし位置(a)〜(h)は図5の(a)〜(h)に対応している。このように搬送プレート29及びスペーサ28を周方向の位置をずらしながら配置することにより、可動部材18の内部には、搬送プレート29の突縁29dとスペーサ28とが軸方向に連続的に連なった螺旋階段状の搬送羽根が構成される。
モータ13により可動部材18が回転すると、螺旋階段状の搬送羽根が回転し、スクリューコンベアと同様の搬送機能を有することになる。
【0023】
搬送機能を高めるために、上述のように搬送プレート29に対するスペーサ28の角度をずらしている。このようにすれば、搬送プレート29の突縁29dとスペーサ28とが略一致する場合に比べて多段化が促進され、搬送力が高まる。
図1、図5では搬送プレート29の上下方向の位置は全て同じように表示しているが、上述のように偏芯しているので、実際には偏芯量の範囲内で波打ち状態にずれる。
【0024】
搬送プレート29の挿通穴29cの形状は、図10に示すように、頂角が真上にくる形状としてもよい。この場合、図11に示すように、スペーサ28の挿通穴28aは、対応する頂角位置が時計回り方向に5°ずらされており、対応する頂角同士が一致するように挿通した場合、上記と同様にスペーサ28はずれる。
また、本実施形態ではスペーサ28を搬送プレート29とは別部材としたが、モールド成形や射出成形等により搬送プレート29の突縁29d部位に一体に形成してもよい。
【0025】
シャフト25は、図12、図13に示すように、断面多角形(ここでは12角形)の引き抜き加工棒材で形成されている。角数が多くなるほどスパイラル状の搬送羽根のピッチを自在に変えることができる。
シャフト25の汚泥入口側には、流入ボックス12に投入されたフロック化された汚泥の可動部材18への送り込みを促進させる汚泥押し込み手段37が設けられている。
汚泥押し込み手段37は、シャフト25に挿通固定される軸部38と、この軸部38に溶接等の手段により固定された螺旋羽根(送り羽根)39を有している。
シャフト25の汚泥出口側には、図示しないがモータ連結用のマシンキー溝加工がなされている。シャフト25に挿通されるスペーサ28と搬送プレート29の軸方向の位置固定は、C型止め輪28によってなされている。
図13に示すように、シャフト25の汚泥入口側端部と軸部38の対応部位にはボルト挿通孔25a、38aが形成されており、シャフト25を軸部38に挿入して両者を図示しない貫通ボルトで一体に固定するようになっている。
このように予め螺旋羽根39が固定された軸部38に挿入して一体化する方式とすれば、シャフト25の両端部のどちらの側にでも螺旋羽根39を形成することができ、組み付けでの自由度が大きい。シャフト25に螺旋羽根39を直接固定してもよい。
【0026】
図14に示すように、圧力調整手段14は、シャフト25にしっかりと固定できるボス部30と、ボス部30に一体に形成された円形プレート(背圧板)31と、ボス部30に形成されたねじ穴に螺合される固定ねじ36を有している。固定ねじ36を緩めて背圧板31の軸方向の位置を調整することにより、出口側における脱水ケーキの排出容量を制限でき、これにより濾過体11の内圧を調整できる。
背圧板31の外径は、支持体15の穴23aの径よりもやや大きく設定されている。
【0027】
図15に示すように、搬送プレート29の周縁部29aと、固定プレート21の周縁部21cは常に向かい合わせの関係にある。搬送プレート29間の軸方向の隙間を形成するスペーサ28の外周上に固定プレート21の内周面が位置している。
すなわち、スペーサ28の回転奇跡の外周を覆うように固定プレート21が配置されている。固定プレート21の内周面は、いわゆるスクリューコンベアのケースの役割を担っており、この内周面でスペーサ28が回転することにより搬送機能が得られる。よってスペーサ28と固定プレート21の双方の厚みが増すほど搬送能力を高めることができる。
濾過体11の出口側では、上述のように、支持体15の内周面にスペーサ28が配置されており、最終段階でも搬送力が低下しないようになっている。
搬送機能をより大きく得るためには、固定プレート21の厚みKtは搬送プレート29の厚みFtより大きくする方が有利である。
すなわち、搬送プレート29の厚みFtが固定プレート21の厚みKtより大きいと、スペーサ28と固定プレート21の内周面との摩擦力が小さくなるとともに、搬送プレート29の厚みFt内に汚泥が留まろうとする作用が大きくなり、結果として搬送力が低下する。
【0028】
本実施形態では、上述のように、St=3mm、Kt=2mm、Ft=1mmに設定されており、固定プレート21と搬送プレート29間には0.5mmのギャップgが存在する。この僅かなギャップgにより水分は重力によって落下していくことになる。
固定プレート21はスペーサ28によってできた搬送プレート29間の隙間に配置されており、また、固定プレート21間には間隔保持部材としてのスペーサが存在しないため、隙間の範囲内で軸方向に摺動(移動)可能となっている。
この固定プレート21の軸方向のフリー構成によって、搬送プレート29とスペーサ28を百数十枚積層した場合においても、積層によって生じる誤差を吸収することができ、回転をよりスムーズに行うことができる。
勿論、固定プレート21間に、固定プレート21と別体のあるいは固定プレート21と一体に形成されたスペーサを配置する構成としてもよい。しかしながら、この場合には精密性が要求されるため、コスト高を避けられない。
【0029】
モータ13が回転すると、搬送プレート29とスペーサ28が同期回転するが、ギャップgに入り込んだ微小な固形物は、搬送プレート29の周縁部29aと、固定プレート21の周縁部21cとの間に挟まれながら搬送プレート29とともに回転することになる。
本実施形態では、搬送プレート29の外径は固定プレート21の外径よりも僅かに大きく設定されており(搬送プレート29の外径=100mm、固定プレート21の外径=98mm)、図6に示す搬送プレート29の周縁部29aの幅w2は、図4に示す固定プレート21の周縁部21cの幅w1よりも大きく設定されている(w2=10mm、w1=6mm)。
上述のように、搬送プレート29の偏芯量は2mmである。したがって、搬送プレート29と固定プレート21の重なり量は偏芯量よりも大きい。すなわち、どの回転位置でも搬送プレート29の周縁部29aと、固定プレート21の周縁部21cとの間に重なり部分が存在するように設定されている。
【0030】
この、重なり量が回転位置で変化する擦り合わせ運動により、偏芯していない場合に比べて目詰まり防止機能と水抜け機能が向上する。この動作を図16に示す。
図16(a)に示す状態では、下部において重なり量が大きいため水抜け作用が減少傾向にあり、上部では重なり量が少ないために目詰まりが解消されやすい。
図16(b)に示す状態では、下部において重なり量が小さいため水抜け作用が大きいとともに目詰まりも解消されやすい。図16(c)は搬送プレート29が最も左側に偏芯した状態を、図16(d)は搬送プレート29が最も右側に偏芯した状態をそれぞれ示している。
搬送プレート29及びスペーサ28の偏芯量が大きいほど、また搬送プレート29と固定プレート21の重なり量が小さいほど液分の流出を促す効果が期待できる。
【0031】
水分除去を目的とするために、搬送プレート29の材質はステンレスがよく、板厚(Ft)は1〜3mm程度がよい。また、食品排水のように油分を多量に含む汚泥を対象とする場合には、水の抜けをさらに高めるためには、撥液性(撥水性、撥油性等の概念を含む)の高い材料、例えばテフロン(登録商標)でコーティングすることが有効である。固定プレート21においても水抜けを良好にするために同様のコーティングをしてもよい。
搬送プレート29の外径は60mm〜300mm程度がよく、螺旋階段状の搬送羽根のピッチを設定するときに大きく影響する突縁29dの面積比率は、1/16〜1/4程度がよい。
【0032】
搬送プレート29及びスペーサ28のずらし角度を小さくすれば(例えば30〜60°)、螺旋階段状の搬送羽根のピッチは小さくなり、濾過体11内での汚泥に対する内圧を高める作用が発生することにつながり、固形物の水分除去に大きく影響を与える。
畜産排水など有機系活性汚泥の余剰汚泥の脱水を目的とする場合には、多分に液分を含む(例えば含水率99%)ため、濾過体11の入口側ではより多くの濾過面を使用して自重で離水する濃縮効果を高めるためにも、汚泥を素早く出口方向に搬送する必要がある。
このため、搬送プレート29の内径と同程度のピッチで搬送することを重視してずらし角度を考慮するとよい。
本実施形態では、濾過体11の入口側では自重で離水する濃縮効果を高めることができるようにピッチを大きくし、出口側に向かって次第にそのピッチが小さくなるように、搬送プレート29及びスペーサ28のずらし角度が調整されている。したがって、出口側に近づくにつれて内圧は高くなる。
【0033】
鍍金排水などの無機質の汚泥を脱水する場合には、液分量が例えば含水率98%〜96%程度であり、既に十分に濃縮された状態にあるときには、搬送プレート29及びスペーサ28のピッチを組み替えることで内圧と搬送力を自在に変えられることになる。
従来のように、幾つかのスクリューピッチの物の中から選択するのではなく、その汚泥特性に合ったピッチを自在に構成することができるために、多くの部品点数を必要とせず、安価な構成とすることができる。
【0034】
次に、本実施形態における固液分離装置10の脱水動作を説明する。養豚排水などの有機系活性汚泥法から発生する余剰汚泥に高分子凝集剤を加えてフロック化し、固形物と液分に分離する脱水に使用した例である。
図示しないフロック化装置から流入ボックス12にフロック化汚泥が投入される。投入された汚泥では流入ボックス12内で汚泥押し込み手段37により濾過体11の一端側(入口側)に送り込まれる。
汚泥は可動部材18の上述した螺旋階段状の搬送羽根により軸方向に搬送される。上述のように、濾過体11の入口側(前段)においては螺旋階段状の搬送羽根のピッチは大きく設定されているため、汚泥は素早く搬送され、この時点で多くの水分が濾過体11から下方へ流下する。
投入直後の汚泥は、固形分:水分=1:99の比率であるために、できるだけ多くの濾過面を円筒状で利用するには軸方向に素早く搬送する必要があるからである。
この重力作用を利用して濾過される部分では、濾過体11の内圧が小さいために、落下する水分に含まれる固形物は極めて少ないといえる。
この部分(濾過体11の前段)から得られる水分の全量を処理水として装置外部に排出する。
【0035】
濾過体11の出口方向に向かって螺旋階段状の搬送羽根のピッチは次第に小さくなるため、内圧が高まり、脱水率が向上していく。脱水された水分は濾過体11から下方へ流下する。
搬送プレート29の開口部29bの径をd、螺旋階段状の搬送羽根のピッチをLとした場合、出口方向に向かってd:L=1:0.5程度まで小さくすることで、濾過体11の内部に汚泥が充満して内圧が生じることになる。
この間、固定プレート21と搬送プレート29間のギャップgに入り込んだ汚泥は、搬送プレート29の上記偏芯運動(擦り合わせ揺動)により掻き落とされる。
固定プレート21と搬送プレート29は、重なり量>偏芯量の関係を満足するように設定されているので、常に目詰まりが防止される。
脱水された固形物(脱水ケーキ)は、濾過体11の出口側から排出されるが、出口側に設けられた圧力調整手段14の背圧板35により排出量を制限され、これにより濾過体11の内圧が高められる。
十分に脱水されたケーキは、出口側支持体15と背圧板35との間から排出される。
【0036】
図13に第2の実施形態を示す。なお、上記実施形態と同一部分は同一符号で示し、特に必要がない限り既にした構成上及び機能上の説明は省略して要部のみ説明する。
本実施形態における固液分離装置10Aでは、濾過体11の脱水性能をその傾斜配置によっても高めることを特徴としている。上記実施形態では水平配置方式を例示したが、本実施形態では濾過体11の出口側が高くなるように傾斜角θを有するように設置されている。
濾過体11の起動時、すなわち、可動部材18を回転駆動して脱水を開始した初期には、濾過体11の内部には汚泥が十分に充填されてはいない。この状態では十分な内圧が得られず、脱水機能も低い。
濾過体11が傾斜していると、汚泥は自重で入口側に戻ろうとしながら搬送されるので、内圧も速やかに高くなり、出口側から十分な脱水ケーキとならない状態の汚泥が排出されるのを防止することができる。
【0037】
本実施形態における濾過体11はその機能上、入口側は重力濃縮部Aとして、出口側は加圧脱水部Bとして分けられる。濾過体11の下方には、重力濃縮部Aと加圧脱水部Bから排出される処理液(分離液)を個別に回収する手段としての回収トレー44が配置されている。
回収トレー44は、重力濃縮部Aに対応するトレー部45と、加圧脱水部Bに対応するトレー部46からなる2分割構成を有している。
重力濃縮部Aより排出される水分には固形物の含まれる量が少ないため、トレー部45に回収された全量を処理水として排出させることができる。このため、トレー部45の水分は水処理施設に回されるべくタンク47に直接溜められる。
【0038】
加圧脱水部Bからは、加圧の影響で固形物と水分が混合されて落下する。この部分だけを回収できるようにトレー部46が区画されており、トレー部46の下方には一定時間沈殿できるだけの沈殿槽48が設けられている。沈殿槽48に入った混合処理水は沈殿分離され、沈殿物は沈殿槽48内に設置されたポンプ49によって定期的に吸引されてフロック化装置に送られ、再処理となる。
沈殿槽48でポンプ49が稼動しないときには上澄水は装置外に処理水として排出すべくタンク47に入れられる。
スペーサ28の厚み(St)を変えて固定プレート21と搬送プレート29間のギャップgを、加圧脱水部Bの方が重力濃縮部Aよりも小さくなるようにすれば、加圧脱水部Bにおける固形物の落下を少なくでき、同時に濾過体11の内圧も高めることができる。
【0039】
上記各実施形態では、濾過体を1つ有する構成としたが、濾過体を2つ以上並列して設け、個別の又は共通のフロック化装置から各濾過体に汚泥を供給して処理能力を増大させるシステムとしてもよい。
また、濾過体の周辺をタイマーによって定期的に且つ自動的に洗浄する洗浄装置を備えた構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る固液分離装置の概要正面図である。
【図2】固定部材の概要正面図である。
【図3】要部分解斜視図である。
【図4】固定プレートを示す図で、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図5】可動部材の概要正面図である。
【図6】搬送プレートを示す図で、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図7】スペーサを示す図で、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図8】搬送プレートとスペーサを挿通して重ねた状態の側面図である。
【図9】搬送プレートとスペーサの位置ずらし状態を示すパターン図である。
【図10】搬送プレートの変形例を示す側面図である。
【図11】スペーサの変形例を示す側面図である。
【図12】回転軸を示す図で、(a)は正面図、(b)は拡大側面図である。
【図13】回転軸の組み立て構造を示す図である。
【図14】圧力調整手段を示す図で(a)は断面図、(b)は側面図である。
【図15】搬送プレート、スペーサ及び固定プレート間の位置関係及び厚さ関係を示す図である。
【図16】固定プレートに対する搬送プレートの偏芯回転を示す図である。
【図17】第2の実施形態に係る固液分離装置の概要正面図である。
【符号の説明】
【0041】
11 濾過体
13 駆動手段としてのモータ
17 固定部材
18 可動部材
21 固定プレート
25 回転軸
28 スペーサ
29 搬送プレート
29b 開口部
29d 突縁
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥(畜産糞尿、食品工場などの排水処理から発生する含油汚泥、下水処理から発生する余剰汚泥、建設現場から発生する無機汚泥等の概念を含む)中に含まれる固形物と水分とを分離する固液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の汚泥は水分を多量に含んでおり、そのままの状態(原水)では堆肥化等の処理が困難であるため、フロック化処理後固液分離装置により脱水し、含水率が約80%程度の脱水ケーキとすることが行われている。
汚泥(処理対象物)を脱水する方法としては、従来より種々の方式が提案されている。例えば、スクリュープレスタイプの方式が知られている。これは、パンチングプレートなどの水抜けの良い板を円筒形に加工した固定部材(ステータ)の中に、シャフトに螺旋状の羽根を固定したスクリューコンベアを設けて濾過体を構成し、この濾過体の一端側から処理対象物を投入してスクリューコンベアを低速で回転させ、固形物を軸方向に搬送しながら固定部材の穴から水分を流下させる仕組みになっている。
濾過体の他端側(出口側)に向かってスクリューピッチを小さくすることと、出口から排出される固形物の量を規制する板を設けることにより十分な内圧を得ることができ、固形物の含水率が約80%という高い脱水率を得ることができる。
しかしながら、パンチングプレートが目詰まりを起こしやすいために、外胴としてのパンチングプレートを頻繁に洗浄する必要があり、大量の洗浄水を要するとともに洗浄作業が面倒であるという問題があった。
【0003】
特許文献1には、多数の固定リングを間隔をおいて軸方向に積層状態に配置して円筒状の固定部材を形成するとともに、固定リング間に可動リングを配置し、固定リングと可動リングの内部空間にスクリューコンベアを設けて濾過体を構成した固液分離装置が記載されている。
可動リングの内径はスクリューコンベアの外径よりも僅かに小さく設定されており、スクリューコンベアが回転すると汚泥は軸方向に搬送され、水分は可動リングと固定リング間の微小ギャップから外部に排出される。
スクリューコンベアの回転によって可動リングは軸方向と直交する方向に押し上げられて揺動し、これにより固定リングと可動リング間の隙間に固形分が詰まることが防止される。
すなわち、スクリューコンベアの回転動作を利用して、同時に目詰まり防止動作も行うようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開平5−228695号公報
【特許文献2】特開2005−169323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された構成では、スクリューコンベアの回転動作を利用して目詰まりを防止するので、目詰まり防止のための専用の動力源を必要とせず、上述した洗浄問題も解消できる利点を有している。
しかしながら、スクリューコンベアの螺旋羽根の外縁(エッジ)は常に可動リングの内周面と金属接触を繰り返すため、経時的に可動リングの内径は摩耗により大きくなり、固定リングの内径と同等になった時点で可動リングの揺動が無くなり、目詰まり防止機能が消失するという問題があった。
この問題を解消するには、定期的に可動リングとスクリューコンベアの摩耗状態をチェックし、摩耗が大きい場合には交換をしなければならず、維持管理コストが増大するという問題があった。
【0006】
また、この種の固液分離装置では、処理対象物の種類(流動特性等)に応じて最適な装置仕様が存在し、処理対象物が異なった場合、例えばスクリューコンベアのピッチを変更しなければならない。
しかしながら、従来の装置では、ピッチを変える場合には新たなスクリューコンベアを購入しなければならず、規格が合わない場合には装置ごと買い換える必要があった。
【0007】
また、従来のスクリューコンベア方式の共通の欠点として、畜産排水あるいはダストコントロール排水などの繊維状の狭雑物を多量に含む汚泥を脱水する場合に、スクリューシャフトに繊維の絡み付きが発生していた。
濾過体の内部に十分な内圧が生じるほど、すなわち脱水機能が高まるほどシャフトに絡み付いた繊維層内に固形物が圧縮され、固形物が固着して実質的にシャフト径は大きくなる。
シャフト径が大きくなると、濾過体内の搬送路の容積が必然的に小さくなるため、仕様容量の汚泥を投入できなくなり、処理効率が低下するという問題があった。
この場合、処理効率を回復させるためには、シャフトを取り外してシャフトから繊維層とこれに付着した固形物を除去する必要があるが、シャフトには螺旋状の羽根が一体に設けられているので、除去作業が面倒であった。
また、この種の固液分離装置では、総じてオーバーホールやメンテナンス、清掃等の観点から分解・組み立ての容易性が求められていた。
【0008】
本発明は、上述した問題点のうちの少なくとも1つもしくは全部を解消できる固液分離装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明では、筒状をなす固定部材の内部にスクリューコンベア機能を呈する可動部材を設けた濾過体と、上記可動部材を回転駆動する駆動手段を有し、上記濾過体の一端側から送り込まれる汚泥を脱水しながら他端側へ搬送して排出する固液分離装置において、上記可動部材は、回転軸と、該回転軸に軸方向に積層状態に配置されて支持された取り外し可能な複数の搬送プレートを備え、該搬送プレートは、各搬送プレートをそれぞれ上記回転軸の軸方向と略直交する面内で周方向に略一定の間隔でずらして位置固定することにより搬送路及び上記軸方向に連続的に連なる螺旋階段状の搬送羽根を形成可能な形状を有していることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の固液分離装置において、上記搬送プレートは、搬送路を構成する開口部と、外側から回転中心部へ向かって延び該中心部に上記回転軸に対する挿通穴を有する突縁を有し、該突縁が連続的に連なって上記螺旋階段状の搬送羽根を形成することを特徴とする。
請求項3記載の発明では、請求項2記載の固液分離装置において、上記回転軸と上記突縁の挿通穴とが相対的な係合構造を有し、上記回転軸に挿通した時点で上記搬送プレートの上記回転軸に対する周方向の位置固定がなされることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明では、請求項3に記載の固液分離装置において、周方向の位置固定箇所が所定の角度間隔で複数設けられ、上記螺旋階段状の搬送羽根のピッチを変更可能であることを特徴とする。
請求項5記載の発明では、請求項2〜4のいずれかに記載の固液分離装置において、上記各搬送プレート間に、上記突縁と共に上記螺旋階段状の搬送羽根を形成するスペーサが配置されていることを特徴とする。
請求項6記載の発明では、請求項5に記載の固液分離装置において、上記スペーサが上記搬送プレートの上記突縁部位に一体に形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の発明では、請求項5に記載の固液分離装置において、上記スペーサが上記突縁と同等の形状を有し、上記回転軸に上記搬送プレートと交互に挿通して配置されることを特徴とする。
請求項8記載の発明では、請求項5〜7のいずれかに記載の固液分離装置において、上記固定部材は、開口部を有し上記回転軸の軸方向に間隔をおいて配置された複数の固定プレートを備え、上記各固定プレートは上記スペーサの回転軌跡の外周を覆うように配置されていることを特徴とする。
請求項9記載の発明では、請求項8に記載の固液分離装置において、上記回転軸の軸方向における、上記スペーサの厚みをSt、上記固定プレートの厚みをKt、上記搬送プレートの厚みをFtとするとき、St>Kt>Ftの関係を満足することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の搬送プレートの周方向の位置をずらした積層構成によりスクリューコンベアに相当する螺旋階段状の羽根を形成できるので、処理対象物の流動特性等に応じて羽根ピッチを任意に変えることができ、新たにスクリューコンベアを購入することなく汚泥特性又はユーザー特性に合った処理機能を得ることができる。
可動部材の回転動作において金属接触等の部材接触が無いので、維持管理費を大幅に低減できる。
【0014】
可動部材及び螺旋階段状の羽根を細かく分解できるので、メンテナンス、オーバーホール、清掃を精度よく行える。スクリューコンベア等の一体不可分の重量物が存在しないので、分解・組み立てが少ない労力で容易に行える。
繊維が絡み付いてもスクリューコンベア状の構成を細かく分解できるので、除去作業が容易となる。
スペーサの存在により搬送力を向上させることができる。
回転軸に搬送プレート、スペーサを挿通するだけで略全体の組付がなされるので、1部品毎に固定する場合に比べて組み立て・分解性が大幅に向上する。
搬送プレート、スペーサの周方向の位置を変えて挿通するだけで螺旋階段状の羽根のピッチを変えることができるので、ピッチ変更が容易となる。
スペーサを一体成形した場合には、部品点数の低減を図れるとともに、組み立て・分解が一層容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の第1の実施の形態を図1乃至図16に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る固液分離装置10は、汚泥を脱水する濾過体11と、この濾過体11の一端側(入口側)に設けられ、フロック化された汚泥が投入される流入ボックス12と、濾過体11の他端側(出口側又は排出側)に設けられ、濾過体11の内部に設けられた後述する可動部材を回転駆動する駆動手段としてのモータ13と、同じく濾過体11の他端側に設けられ、出口側の排出容量を制限して濾過体11の内部の圧力を調整する圧力調整手段14と、濾過体11を支持するL字状のプレートからなる3つの支持体15と、モータ13が固定されるモータ固定板16等を有している。
ここでの固液分離装置10は、床面に略平行となる水平設置タイプである。
【0016】
濾過体11は、角筒状をなす固定部材としての外胴17と、この外胴17の内部に設けられた可動部材18を有している。
外胴17は、図2に示すように、支持体15に支持される3本の長ボルト19に、軸方向に固定プレート21を多数枚積層状態に配置し、両側と中央部を支持体15で補強した構成となっている。
したがって、外胴17は、固定プレート21間に確保される隙間(後述)により、全体として、軸方向と直交する方向への水分の抜けが可能な角筒体となっている。
長ボルト19の一端側は図中右側の支持体15の外側でナット部材22により固定されている。長ボルト19の他端側はモータ固定板16に固定された図中左側の支持体15の外側でナット部材22により固定されている。
【0017】
図3に示すように、支持体15は、垂直部23と水平部24とから構成されており、垂直部23には汚泥の搬送路の一部を構成する円形の穴23aと、長ボルト19の挿通穴23bが形成されている。水平部24には、図示しない装置本体架台に固定するための固定用穴24aが形成されている。
固定プレート21には、中央部に汚泥の搬送路の一部を構成する円形の穴21aが形成されており、3箇所に長ボルト19の挿通穴21bが形成されている。固定プレート21の穴21aと支持体15の穴23aは略同径となっている。
図4に示すように、固定プレート21は、径方向の幅w1を有する周縁部21cが連なったリング状に形成されており、周縁部21cに略120°間隔で連設された各突片21dに挿通穴21bが形成されている。固定プレート21の厚みKtは約2mmに設定されている。
【0018】
汚泥を搬送するスクリューコンベアの機能を呈する可動部材18は、図5に示すように、回転軸としての断面が多角形(ここでは12角形)のシャフト25に、i型のスペーサ28と搬送プレート29を交互に挿通して、軸方向にスペーサ28と搬送プレート29を多数枚積層状態に配置した構成となっている。
可動部材18は、スペーサ28によって確保される隙間(後述)により、軸方向と直交する方向への水分の抜けが可能な円筒状となっている。
【0019】
図6に示すように、搬送プレート29は、全体としては円板状で、具体的には径方向の幅w2を有する周縁部29aが連なったリング状に形成されており、その内側に搬送路を構成する開口部29bと、外側(周縁部29a)から回転中心部へ向かって延び、中心部にシャフト25に対する挿通穴29cを有する突縁29dとを有している。突縁29dは、挿通部29d−1と、扇形部29d−2とから構成されている。
挿通穴29cはシャフト25の外形(12角形)に合わせて12角形に形成されている。
挿通穴29cの中心h1は、円板としての搬送プレート29の中心h0よりも寸法δ(ここでは2mm)偏芯している。搬送プレート29の厚みFtは約1mmに設定されている。
【0020】
図7に示すように、スペーサ28は、搬送プレート29の突縁29dと同様の形状を有している。すなわち、シャフト25に対する挿通穴28aを有する挿通部28bと、扇形部28cとから構成されている。
挿通穴28aも同様に、シャフト25の外形に合わせて12角形に形成されている。挿通穴28aの中心h2も、円板としての搬送プレート29の中心h0よりも寸法δ(ここでは2mm)偏芯している。スペーサ28の厚みStは約3mmに設定されている。
【0021】
スペーサ28の挿通穴28aは、搬送プレート29の挿通穴29cよりも時計回り方向に所定角度(ここでは5°)ずらされている。
したがって、図8に示すように、搬送プレート29とスペーサ28を対応する頂角が一致した状態で順にシャフト25に挿通して重ねた場合、スペーサ28の扇形部28cと搬送プレート29の突縁29dの扇形部29d−2はずれた状態となる。
組み立てにおいては、図3に示すように、最初にスペーサ28を挿通して左側の支持体15の穴23aに位置させ、次いで順に搬送プレート29、スペーサ28、固定プレート21(スペーサ28と固定プレート21間では順序はいずれでもよい)、搬送プレート29、スペーサ28・・・と軸方向に積層状態に配置していく。
ここで、図8で示した搬送プレート29とスペーサ28の1組を、図9に示すように、軸方向と直交する方向に略一定の間隔でずらしながら配置する。ここでは、シャフト25が12角形であるので、例えば多角形の頂角位置を1つずつずらした場合、30°ずつずれることになる。
搬送プレート29とスペーサ28の挿通穴29c、28aの周辺に1、2、3・・の数字や符号等の角度位置が区別できるマークを付けておけば組み立てが容易となる。この場合、シャフト25にマークを付け、挿通穴29c、28aの基準位置に印を1つ付けるようにしてもよい。
【0022】
多角形同士の係合構造であるため、スペーサ28と搬送プレート29はシャフト25に挿通した時点で周方向の位置固定がなされる。本実施形態では、シャフト25の外面を多角形状とし、搬送プレート29及びスペーサ28の挿通穴29c、28aの形状をこれに対応した多角形状としたが、これに限定される趣旨ではなく、例えば挿通穴側に凸部を形成し、シャフトの外面に係合溝を形成するようにしてもよい。例えば、セレーション又はスプライン状の係合等、挿通穴とシャフトとの間で相対的な係合構造を採ることができる。
図9に示すずらし位置(a)〜(h)は図5の(a)〜(h)に対応している。このように搬送プレート29及びスペーサ28を周方向の位置をずらしながら配置することにより、可動部材18の内部には、搬送プレート29の突縁29dとスペーサ28とが軸方向に連続的に連なった螺旋階段状の搬送羽根が構成される。
モータ13により可動部材18が回転すると、螺旋階段状の搬送羽根が回転し、スクリューコンベアと同様の搬送機能を有することになる。
【0023】
搬送機能を高めるために、上述のように搬送プレート29に対するスペーサ28の角度をずらしている。このようにすれば、搬送プレート29の突縁29dとスペーサ28とが略一致する場合に比べて多段化が促進され、搬送力が高まる。
図1、図5では搬送プレート29の上下方向の位置は全て同じように表示しているが、上述のように偏芯しているので、実際には偏芯量の範囲内で波打ち状態にずれる。
【0024】
搬送プレート29の挿通穴29cの形状は、図10に示すように、頂角が真上にくる形状としてもよい。この場合、図11に示すように、スペーサ28の挿通穴28aは、対応する頂角位置が時計回り方向に5°ずらされており、対応する頂角同士が一致するように挿通した場合、上記と同様にスペーサ28はずれる。
また、本実施形態ではスペーサ28を搬送プレート29とは別部材としたが、モールド成形や射出成形等により搬送プレート29の突縁29d部位に一体に形成してもよい。
【0025】
シャフト25は、図12、図13に示すように、断面多角形(ここでは12角形)の引き抜き加工棒材で形成されている。角数が多くなるほどスパイラル状の搬送羽根のピッチを自在に変えることができる。
シャフト25の汚泥入口側には、流入ボックス12に投入されたフロック化された汚泥の可動部材18への送り込みを促進させる汚泥押し込み手段37が設けられている。
汚泥押し込み手段37は、シャフト25に挿通固定される軸部38と、この軸部38に溶接等の手段により固定された螺旋羽根(送り羽根)39を有している。
シャフト25の汚泥出口側には、図示しないがモータ連結用のマシンキー溝加工がなされている。シャフト25に挿通されるスペーサ28と搬送プレート29の軸方向の位置固定は、C型止め輪28によってなされている。
図13に示すように、シャフト25の汚泥入口側端部と軸部38の対応部位にはボルト挿通孔25a、38aが形成されており、シャフト25を軸部38に挿入して両者を図示しない貫通ボルトで一体に固定するようになっている。
このように予め螺旋羽根39が固定された軸部38に挿入して一体化する方式とすれば、シャフト25の両端部のどちらの側にでも螺旋羽根39を形成することができ、組み付けでの自由度が大きい。シャフト25に螺旋羽根39を直接固定してもよい。
【0026】
図14に示すように、圧力調整手段14は、シャフト25にしっかりと固定できるボス部30と、ボス部30に一体に形成された円形プレート(背圧板)31と、ボス部30に形成されたねじ穴に螺合される固定ねじ36を有している。固定ねじ36を緩めて背圧板31の軸方向の位置を調整することにより、出口側における脱水ケーキの排出容量を制限でき、これにより濾過体11の内圧を調整できる。
背圧板31の外径は、支持体15の穴23aの径よりもやや大きく設定されている。
【0027】
図15に示すように、搬送プレート29の周縁部29aと、固定プレート21の周縁部21cは常に向かい合わせの関係にある。搬送プレート29間の軸方向の隙間を形成するスペーサ28の外周上に固定プレート21の内周面が位置している。
すなわち、スペーサ28の回転奇跡の外周を覆うように固定プレート21が配置されている。固定プレート21の内周面は、いわゆるスクリューコンベアのケースの役割を担っており、この内周面でスペーサ28が回転することにより搬送機能が得られる。よってスペーサ28と固定プレート21の双方の厚みが増すほど搬送能力を高めることができる。
濾過体11の出口側では、上述のように、支持体15の内周面にスペーサ28が配置されており、最終段階でも搬送力が低下しないようになっている。
搬送機能をより大きく得るためには、固定プレート21の厚みKtは搬送プレート29の厚みFtより大きくする方が有利である。
すなわち、搬送プレート29の厚みFtが固定プレート21の厚みKtより大きいと、スペーサ28と固定プレート21の内周面との摩擦力が小さくなるとともに、搬送プレート29の厚みFt内に汚泥が留まろうとする作用が大きくなり、結果として搬送力が低下する。
【0028】
本実施形態では、上述のように、St=3mm、Kt=2mm、Ft=1mmに設定されており、固定プレート21と搬送プレート29間には0.5mmのギャップgが存在する。この僅かなギャップgにより水分は重力によって落下していくことになる。
固定プレート21はスペーサ28によってできた搬送プレート29間の隙間に配置されており、また、固定プレート21間には間隔保持部材としてのスペーサが存在しないため、隙間の範囲内で軸方向に摺動(移動)可能となっている。
この固定プレート21の軸方向のフリー構成によって、搬送プレート29とスペーサ28を百数十枚積層した場合においても、積層によって生じる誤差を吸収することができ、回転をよりスムーズに行うことができる。
勿論、固定プレート21間に、固定プレート21と別体のあるいは固定プレート21と一体に形成されたスペーサを配置する構成としてもよい。しかしながら、この場合には精密性が要求されるため、コスト高を避けられない。
【0029】
モータ13が回転すると、搬送プレート29とスペーサ28が同期回転するが、ギャップgに入り込んだ微小な固形物は、搬送プレート29の周縁部29aと、固定プレート21の周縁部21cとの間に挟まれながら搬送プレート29とともに回転することになる。
本実施形態では、搬送プレート29の外径は固定プレート21の外径よりも僅かに大きく設定されており(搬送プレート29の外径=100mm、固定プレート21の外径=98mm)、図6に示す搬送プレート29の周縁部29aの幅w2は、図4に示す固定プレート21の周縁部21cの幅w1よりも大きく設定されている(w2=10mm、w1=6mm)。
上述のように、搬送プレート29の偏芯量は2mmである。したがって、搬送プレート29と固定プレート21の重なり量は偏芯量よりも大きい。すなわち、どの回転位置でも搬送プレート29の周縁部29aと、固定プレート21の周縁部21cとの間に重なり部分が存在するように設定されている。
【0030】
この、重なり量が回転位置で変化する擦り合わせ運動により、偏芯していない場合に比べて目詰まり防止機能と水抜け機能が向上する。この動作を図16に示す。
図16(a)に示す状態では、下部において重なり量が大きいため水抜け作用が減少傾向にあり、上部では重なり量が少ないために目詰まりが解消されやすい。
図16(b)に示す状態では、下部において重なり量が小さいため水抜け作用が大きいとともに目詰まりも解消されやすい。図16(c)は搬送プレート29が最も左側に偏芯した状態を、図16(d)は搬送プレート29が最も右側に偏芯した状態をそれぞれ示している。
搬送プレート29及びスペーサ28の偏芯量が大きいほど、また搬送プレート29と固定プレート21の重なり量が小さいほど液分の流出を促す効果が期待できる。
【0031】
水分除去を目的とするために、搬送プレート29の材質はステンレスがよく、板厚(Ft)は1〜3mm程度がよい。また、食品排水のように油分を多量に含む汚泥を対象とする場合には、水の抜けをさらに高めるためには、撥液性(撥水性、撥油性等の概念を含む)の高い材料、例えばテフロン(登録商標)でコーティングすることが有効である。固定プレート21においても水抜けを良好にするために同様のコーティングをしてもよい。
搬送プレート29の外径は60mm〜300mm程度がよく、螺旋階段状の搬送羽根のピッチを設定するときに大きく影響する突縁29dの面積比率は、1/16〜1/4程度がよい。
【0032】
搬送プレート29及びスペーサ28のずらし角度を小さくすれば(例えば30〜60°)、螺旋階段状の搬送羽根のピッチは小さくなり、濾過体11内での汚泥に対する内圧を高める作用が発生することにつながり、固形物の水分除去に大きく影響を与える。
畜産排水など有機系活性汚泥の余剰汚泥の脱水を目的とする場合には、多分に液分を含む(例えば含水率99%)ため、濾過体11の入口側ではより多くの濾過面を使用して自重で離水する濃縮効果を高めるためにも、汚泥を素早く出口方向に搬送する必要がある。
このため、搬送プレート29の内径と同程度のピッチで搬送することを重視してずらし角度を考慮するとよい。
本実施形態では、濾過体11の入口側では自重で離水する濃縮効果を高めることができるようにピッチを大きくし、出口側に向かって次第にそのピッチが小さくなるように、搬送プレート29及びスペーサ28のずらし角度が調整されている。したがって、出口側に近づくにつれて内圧は高くなる。
【0033】
鍍金排水などの無機質の汚泥を脱水する場合には、液分量が例えば含水率98%〜96%程度であり、既に十分に濃縮された状態にあるときには、搬送プレート29及びスペーサ28のピッチを組み替えることで内圧と搬送力を自在に変えられることになる。
従来のように、幾つかのスクリューピッチの物の中から選択するのではなく、その汚泥特性に合ったピッチを自在に構成することができるために、多くの部品点数を必要とせず、安価な構成とすることができる。
【0034】
次に、本実施形態における固液分離装置10の脱水動作を説明する。養豚排水などの有機系活性汚泥法から発生する余剰汚泥に高分子凝集剤を加えてフロック化し、固形物と液分に分離する脱水に使用した例である。
図示しないフロック化装置から流入ボックス12にフロック化汚泥が投入される。投入された汚泥では流入ボックス12内で汚泥押し込み手段37により濾過体11の一端側(入口側)に送り込まれる。
汚泥は可動部材18の上述した螺旋階段状の搬送羽根により軸方向に搬送される。上述のように、濾過体11の入口側(前段)においては螺旋階段状の搬送羽根のピッチは大きく設定されているため、汚泥は素早く搬送され、この時点で多くの水分が濾過体11から下方へ流下する。
投入直後の汚泥は、固形分:水分=1:99の比率であるために、できるだけ多くの濾過面を円筒状で利用するには軸方向に素早く搬送する必要があるからである。
この重力作用を利用して濾過される部分では、濾過体11の内圧が小さいために、落下する水分に含まれる固形物は極めて少ないといえる。
この部分(濾過体11の前段)から得られる水分の全量を処理水として装置外部に排出する。
【0035】
濾過体11の出口方向に向かって螺旋階段状の搬送羽根のピッチは次第に小さくなるため、内圧が高まり、脱水率が向上していく。脱水された水分は濾過体11から下方へ流下する。
搬送プレート29の開口部29bの径をd、螺旋階段状の搬送羽根のピッチをLとした場合、出口方向に向かってd:L=1:0.5程度まで小さくすることで、濾過体11の内部に汚泥が充満して内圧が生じることになる。
この間、固定プレート21と搬送プレート29間のギャップgに入り込んだ汚泥は、搬送プレート29の上記偏芯運動(擦り合わせ揺動)により掻き落とされる。
固定プレート21と搬送プレート29は、重なり量>偏芯量の関係を満足するように設定されているので、常に目詰まりが防止される。
脱水された固形物(脱水ケーキ)は、濾過体11の出口側から排出されるが、出口側に設けられた圧力調整手段14の背圧板35により排出量を制限され、これにより濾過体11の内圧が高められる。
十分に脱水されたケーキは、出口側支持体15と背圧板35との間から排出される。
【0036】
図13に第2の実施形態を示す。なお、上記実施形態と同一部分は同一符号で示し、特に必要がない限り既にした構成上及び機能上の説明は省略して要部のみ説明する。
本実施形態における固液分離装置10Aでは、濾過体11の脱水性能をその傾斜配置によっても高めることを特徴としている。上記実施形態では水平配置方式を例示したが、本実施形態では濾過体11の出口側が高くなるように傾斜角θを有するように設置されている。
濾過体11の起動時、すなわち、可動部材18を回転駆動して脱水を開始した初期には、濾過体11の内部には汚泥が十分に充填されてはいない。この状態では十分な内圧が得られず、脱水機能も低い。
濾過体11が傾斜していると、汚泥は自重で入口側に戻ろうとしながら搬送されるので、内圧も速やかに高くなり、出口側から十分な脱水ケーキとならない状態の汚泥が排出されるのを防止することができる。
【0037】
本実施形態における濾過体11はその機能上、入口側は重力濃縮部Aとして、出口側は加圧脱水部Bとして分けられる。濾過体11の下方には、重力濃縮部Aと加圧脱水部Bから排出される処理液(分離液)を個別に回収する手段としての回収トレー44が配置されている。
回収トレー44は、重力濃縮部Aに対応するトレー部45と、加圧脱水部Bに対応するトレー部46からなる2分割構成を有している。
重力濃縮部Aより排出される水分には固形物の含まれる量が少ないため、トレー部45に回収された全量を処理水として排出させることができる。このため、トレー部45の水分は水処理施設に回されるべくタンク47に直接溜められる。
【0038】
加圧脱水部Bからは、加圧の影響で固形物と水分が混合されて落下する。この部分だけを回収できるようにトレー部46が区画されており、トレー部46の下方には一定時間沈殿できるだけの沈殿槽48が設けられている。沈殿槽48に入った混合処理水は沈殿分離され、沈殿物は沈殿槽48内に設置されたポンプ49によって定期的に吸引されてフロック化装置に送られ、再処理となる。
沈殿槽48でポンプ49が稼動しないときには上澄水は装置外に処理水として排出すべくタンク47に入れられる。
スペーサ28の厚み(St)を変えて固定プレート21と搬送プレート29間のギャップgを、加圧脱水部Bの方が重力濃縮部Aよりも小さくなるようにすれば、加圧脱水部Bにおける固形物の落下を少なくでき、同時に濾過体11の内圧も高めることができる。
【0039】
上記各実施形態では、濾過体を1つ有する構成としたが、濾過体を2つ以上並列して設け、個別の又は共通のフロック化装置から各濾過体に汚泥を供給して処理能力を増大させるシステムとしてもよい。
また、濾過体の周辺をタイマーによって定期的に且つ自動的に洗浄する洗浄装置を備えた構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る固液分離装置の概要正面図である。
【図2】固定部材の概要正面図である。
【図3】要部分解斜視図である。
【図4】固定プレートを示す図で、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図5】可動部材の概要正面図である。
【図6】搬送プレートを示す図で、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図7】スペーサを示す図で、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図8】搬送プレートとスペーサを挿通して重ねた状態の側面図である。
【図9】搬送プレートとスペーサの位置ずらし状態を示すパターン図である。
【図10】搬送プレートの変形例を示す側面図である。
【図11】スペーサの変形例を示す側面図である。
【図12】回転軸を示す図で、(a)は正面図、(b)は拡大側面図である。
【図13】回転軸の組み立て構造を示す図である。
【図14】圧力調整手段を示す図で(a)は断面図、(b)は側面図である。
【図15】搬送プレート、スペーサ及び固定プレート間の位置関係及び厚さ関係を示す図である。
【図16】固定プレートに対する搬送プレートの偏芯回転を示す図である。
【図17】第2の実施形態に係る固液分離装置の概要正面図である。
【符号の説明】
【0041】
11 濾過体
13 駆動手段としてのモータ
17 固定部材
18 可動部材
21 固定プレート
25 回転軸
28 スペーサ
29 搬送プレート
29b 開口部
29d 突縁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状をなす固定部材の内部にスクリューコンベア機能を呈する可動部材を設けた濾過体と、上記可動部材を回転駆動する駆動手段を有し、上記濾過体の一端側から送り込まれる汚泥を脱水しながら他端側へ搬送して排出する固液分離装置において、
上記可動部材は、回転軸と、該回転軸に軸方向に積層状態に配置されて支持された取り外し可能な複数の搬送プレートを備え、該搬送プレートは、各搬送プレートをそれぞれ上記回転軸の軸方向と略直交する面内で周方向に略一定の間隔でずらして位置固定することにより搬送路及び上記軸方向に連続的に連なる螺旋階段状の搬送羽根を形成可能な形状を有していることを特徴とする固液分離装置。
【請求項2】
請求項1記載の固液分離装置において、
上記搬送プレートは、搬送路を構成する開口部と、外側から回転中心部へ向かって延び該中心部に上記回転軸に対する挿通穴を有する突縁を有し、該突縁が連続的に連なって上記螺旋階段状の搬送羽根を形成することを特徴とする固液分離装置。
【請求項3】
請求項2記載の固液分離装置において、
上記回転軸と上記突縁の挿通穴とが相対的な係合構造を有し、上記回転軸に挿通した時点で上記搬送プレートの上記回転軸に対する周方向の位置固定がなされることを特徴とする固液分離装置。
【請求項4】
請求項3記載の固液分離装置において、
周方向の位置固定箇所が所定の角度間隔で複数設けられ、上記螺旋階段状の搬送羽根のピッチを変更可能であることを特徴とする固液分離装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれかに記載の固液分離装置において、
上記各搬送プレート間に、上記突縁と共に上記螺旋階段状の搬送羽根を形成するスペーサが配置されていることを特徴とする固液分離装置。
【請求項6】
請求項5記載の固液分離装置において、
上記スペーサが上記搬送プレートの上記突縁部位に一体に形成されていることを特徴とする固液分離装置。
【請求項7】
請求項5記載の固液分離装置において、
上記スペーサが上記突縁と同等の形状を有し、上記回転軸に上記搬送プレートと交互に挿通して配置されることを特徴とする固液分離装置。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれかに記載の固液分離装置において、
上記固定部材は、開口部を有し上記回転軸の軸方向に間隔をおいて配置された複数の固定プレートを備え、上記各固定プレートは上記スペーサの回転軌跡の外周を覆うように配置されていることを特徴とする固液分離装置。
【請求項9】
請求項8記載の固液分離装置において、
上記回転軸の軸方向における、上記スペーサの厚みをSt、上記固定プレートの厚みをKt、上記搬送プレートの厚みをFtとするとき、
St>Kt>Ft
の関係を満足することを特徴とする固液分離装置。
【請求項1】
筒状をなす固定部材の内部にスクリューコンベア機能を呈する可動部材を設けた濾過体と、上記可動部材を回転駆動する駆動手段を有し、上記濾過体の一端側から送り込まれる汚泥を脱水しながら他端側へ搬送して排出する固液分離装置において、
上記可動部材は、回転軸と、該回転軸に軸方向に積層状態に配置されて支持された取り外し可能な複数の搬送プレートを備え、該搬送プレートは、各搬送プレートをそれぞれ上記回転軸の軸方向と略直交する面内で周方向に略一定の間隔でずらして位置固定することにより搬送路及び上記軸方向に連続的に連なる螺旋階段状の搬送羽根を形成可能な形状を有していることを特徴とする固液分離装置。
【請求項2】
請求項1記載の固液分離装置において、
上記搬送プレートは、搬送路を構成する開口部と、外側から回転中心部へ向かって延び該中心部に上記回転軸に対する挿通穴を有する突縁を有し、該突縁が連続的に連なって上記螺旋階段状の搬送羽根を形成することを特徴とする固液分離装置。
【請求項3】
請求項2記載の固液分離装置において、
上記回転軸と上記突縁の挿通穴とが相対的な係合構造を有し、上記回転軸に挿通した時点で上記搬送プレートの上記回転軸に対する周方向の位置固定がなされることを特徴とする固液分離装置。
【請求項4】
請求項3記載の固液分離装置において、
周方向の位置固定箇所が所定の角度間隔で複数設けられ、上記螺旋階段状の搬送羽根のピッチを変更可能であることを特徴とする固液分離装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれかに記載の固液分離装置において、
上記各搬送プレート間に、上記突縁と共に上記螺旋階段状の搬送羽根を形成するスペーサが配置されていることを特徴とする固液分離装置。
【請求項6】
請求項5記載の固液分離装置において、
上記スペーサが上記搬送プレートの上記突縁部位に一体に形成されていることを特徴とする固液分離装置。
【請求項7】
請求項5記載の固液分離装置において、
上記スペーサが上記突縁と同等の形状を有し、上記回転軸に上記搬送プレートと交互に挿通して配置されることを特徴とする固液分離装置。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれかに記載の固液分離装置において、
上記固定部材は、開口部を有し上記回転軸の軸方向に間隔をおいて配置された複数の固定プレートを備え、上記各固定プレートは上記スペーサの回転軌跡の外周を覆うように配置されていることを特徴とする固液分離装置。
【請求項9】
請求項8記載の固液分離装置において、
上記回転軸の軸方向における、上記スペーサの厚みをSt、上記固定プレートの厚みをKt、上記搬送プレートの厚みをFtとするとき、
St>Kt>Ft
の関係を満足することを特徴とする固液分離装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−12522(P2008−12522A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−301441(P2006−301441)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【分割の表示】特願2006−183366(P2006−183366)の分割
【原出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【特許番号】特許第3947212号(P3947212)
【特許公報発行日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(502141393)ジャステック株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【分割の表示】特願2006−183366(P2006−183366)の分割
【原出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【特許番号】特許第3947212号(P3947212)
【特許公報発行日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(502141393)ジャステック株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
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