説明

固液分離装置

【課題】液体サイクロンの摩耗損傷を受けた部分を簡易に取り外して交換でき、メンテナンスコストを低減できる長寿命の固液分離装置を提供する。
【解決手段】不純物を含む原水を旋回させたときの遠心力を利用して原水に含まれる不純物を沈降させる液体サイクロン11,11Aと、前記液体サイクロンの上部に接続され、原水が旋回流となるように前記液体サイクロンに原水を流入させる流入管10と、前記液体サイクロンの下部に接続され、沈降した不純物を前記液体サイクロンから回収する不純物回収部18と、回収した不純物が前記不純物回収部から前記液体サイクロンのほうへ戻るのを阻止する障害物16と、前記液体サイクロンの上部に接続され、沈降した不純物が前記不純物回収部に回収された後の処理水を前記液体サイクロンから流出させる流出管20と、前記液体サイクロンの内壁を覆うように前記液体サイクロンの内部に着脱可能に取り付けられた耐摩耗性部材32〜36とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原水から不純物を分離除去する固液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水処理プロセスの一例として、重力沈降、凝集沈殿または加圧浮上等の固液分離処理が利用されている。
【0003】
重力沈降や凝集沈殿では、沈降槽内に原水を流入し、原水に含まれる分離対象の不純物と水との比重の違いを利用して、水よりも比重の大きい不純物を沈降させた後に上澄を処理水とすることで、原水から不純物と処理水とを分離している。この場合、沈降速度は不純物の比重や大きさによって異なる。例えば、沈降速度の遅い不純物の場合、沈降槽の容積を大きくして沈降速度を上げるか、あるいは傾斜管や傾斜板を利用して沈降効率を上げることで、沈降速度の向上を図ることがなされている。一方、このように傾斜管や傾斜板を利用して沈降効率を上げたとしても、依然として沈降槽において1時間以上の滞留時間が必要であり、滞留時間の短縮には限界があるばかりでなく、沈降槽の容積の大きさにも問題がある。
【0004】
また、加圧浮上では、不純物の比重が小さい固形物質や油脂等のように浮上性がある場合、分離液の循環水等に空気を加圧溶解して分離糟に流入させ、発生した微細気泡を不純物に付着させて浮上分離することで、原水から不純物と処理水とを分離している。この加圧浮上では、気泡を付着させた不純物の上昇速度は、速くても200mm/minである。したがって、加圧浮上でも処理時間が長くなる問題があった。
【0005】
上述したように、従来の重量沈降や加圧浮上で問題であった処理速度を短縮するため、例えば特許文献1には原水を容器内で旋回させて遠心力を利用して不純物を遠心分離する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-333320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の固液分離装置においては、砂粒子のような硬い固形物が高速水流に伴われて激しく流動接触するために、エロージョンにより液体サイクロンの内壁が著しい摩耗損傷を受けて減肉し、比較的短期間で液体サイクロンを補修または交換する必要があり、この摩耗損傷を受けた部分の補修または交換作業に多大の労力と費用を要し、その結果メンテナンスコストが増大化するという問題があった。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、液体サイクロンの摩耗損傷を受けた部分を簡易に取り外して交換することができ、メンテナンスコストを低減できる長寿命の固液分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る固液分離装置は、不純物を含む原水を旋回させたときの遠心力を利用して原水に含まれる不純物を沈降させる液体サイクロンと、前記液体サイクロンの上部に接続され、原水が旋回流となるように前記液体サイクロンに原水を流入させる流入管と、前記液体サイクロンの下部に接続され、沈降した不純物を前記液体サイクロンから回収する不純物回収部と、回収した不純物が前記不純物回収部から前記液体サイクロンのほうへ戻るのを阻止する障害物と、前記液体サイクロンの上部に接続され、沈降した不純物が前記不純物回収部に回収された後の処理水を前記液体サイクロンから流出させる流出管と、前記液体サイクロンの内壁を覆うように前記液体サイクロンの内部に着脱可能に取り付けられた耐摩耗性部材と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明において、耐摩耗性部材は液体サイクロン本体に対して容易に脱着できるような構造にしているので、簡単な作業により損傷を受けた耐摩耗性部材を新品に交換できる。
【0011】
(2)(1)の発明において、液体サイクロンは、前記流入管から原水が流入する円筒部と、前記円筒部の下部に連結された円錐部と、前記円錐部の下部に連結されたロート部と、前記円筒部の上部開口を塞ぎ、前記流出管が貫通する蓋と、を有することができる。また、前記耐摩耗性部材は、前記円筒部の内面形状に対応する円筒型の耐摩耗性部材と、前記円錐部の内面形状に対応する円錐型の耐摩耗性部材と、前記ロート部の内面形状に対応する漏斗型の耐摩耗性部材と、前記蓋の内面形状に対応する中央筒付き平板型の耐摩耗性部材と、を有することができる。この場合に、前記円筒部、円錐部およびロート部は、前記液体サイクロンの軸に交差する面で分割されて成るものであり、該分割面で互いにフランジ継手により連結されていることが好ましい。
【0012】
本発明によれば、フランジ継手を解除するという簡単な作業を行うだけで、耐摩耗性部材を液体サイクロンの内部から撤去することができる。すなわち、円筒型の耐摩耗性部材は液体サイクロンの円筒部の内面に(図4)、円錐型の耐摩耗性部材は液体サイクロンの円錐部の内面に(図5)、漏斗型の耐摩耗性部材は液体サイクロンのロート部の内面に(図6)、中央筒付き平板型の耐摩耗性部材は液体サイクロンの蓋の内面に(図3)に、それぞれ形状が適合しているため、撤去作業ばかりでなく装着作業も迅速かつ円滑になり、比較的短時間で作業を終わらせることができ、メンテナンス費用を大幅に削減できる。
【0013】
(3)(1)の発明において、液体サイクロンは、軸対称に分割された左右1対の縦分割筺体アッセンブリと、前記左右1対の縦分割筺体アッセンブリを組み合わせたときの上部開口を塞ぎ、前記流出管が貫通する蓋と、を有することができる。また、前記耐摩耗性部材は、前記左右1対の縦分割筺体アッセンブリの内面にそれぞれ対応する形状の耐摩耗性部材を有することができる。この場合に、前記縦分割筺体アッセンブリは、前記液体サイクロンの軸に平行な面で分割されて成るものであり、該分割面で互いにヒンジ継手により連結されていることが好ましい(図9)。
【0014】
本発明によれば、ヒンジ継手を解除するという簡単な作業を行うだけで、耐摩耗性部材を液体サイクロンの内部から撤去することができる。
【0015】
(4)(1)〜(3)の発明において、耐摩耗性部材は2層以上を含むことが好ましい。2層以上の層は、材質が異なるものとしてもよいし、材質が同じものとしてもよい。また、2層以上の層は、厚みが異なるものとしてもよいし、厚みが同じものとしてもよい。
【0016】
本発明によれば、流入管から原水が流入するサイクロン上部および不純物回収部に不純物(フロック)を排出するサイクロン下部はともに摩耗損傷の著しい部位であるため、他の部位に比べて耐摩耗性部材の摩耗損傷量が大きく、これらの部位の耐摩耗性部材として2層以上の層をラミネートしたものを採用することにより、表面層が剥がれ落ちて下地層があらわれるのをモニタリングすることで摩耗損傷の進行度合いを検知することができるというメリットがある。
【0017】
(5)(1)〜(4)の発明において、耐摩耗性部材は、隣接する層の色が異なる2層以上を含むことが好ましい。2層以上の色違い層は、材質が異なるものとしてもよいし、材質が同じものとしてもよい。また、2層以上の色違い層は、厚みが異なるものとしてもよいし、厚みが同じものとしてもよい。
【0018】
本発明によれば、摩耗損傷量を目視で簡単に検知することができ、上記(4)の発明よりもさらに摩耗損傷の進行度合いを容易に把握することができるというメリットがある。
【0019】
(6)(1)〜(5)の発明において、耐摩耗性部材は、前記円筒部、円錐部、ロート部および蓋を互いに連結するフランジ継手からの液漏れを防止するシール機能を備えたフランジを有することが好ましい。
【0020】
本発明によれば、耐摩耗性部材を交換するという1つの作業だけで、液体サイクロンの摩耗損傷を受けた部分を更新できるばかりでなく、液漏れ防止シール機能の劣化した部分を更新できるという一石二鳥の効果が得られる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、保守点検時の脱着を簡便にでき、保守コストを低減でき、寿命延長を図ることができる固液分離装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の固液分離装置を示す内部透視断面図。
【図2】本発明の実施形態に係る液体サイクロンを示すブロック分解図。
【図3】(a)は蓋用の耐摩耗性部材を示す斜視図、(b)は耐摩耗性部材を装着した流出管付き蓋を示す部分側断面図。
【図4】(a)は円筒部用の耐摩耗性部材を示す斜視図、(b)は耐摩耗性部材を装着した円筒部を示す部分側断面図。
【図5】(a)は円錐部用の耐摩耗性部材を示す斜視図、(b)は耐摩耗性部材を装着した円錐部を示す部分側断面図。
【図6】(a)はロート部用の耐摩耗性部材を示す斜視図、(b)は耐摩耗性部材を装着したロート部を示す部分側断面図。
【図7】(a)はロート部のフランジと不純物回収部のフランジを示す部分拡大斜視図、(b)はロート部/不純物回収部の接続部に取り付けられる障害物、保持部およびシール部材を示す斜視図。
【図8】耐摩耗性部材の断面図。
【図9】他の実施形態に係る液体サイクロンを示すブロック分解図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付の図面を参照して本発明を実施するための種々の形態について説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
先ず図1〜図6を参照して本発明の第1の実施形態を説明する。
【0025】
固液分離装置1は、粒子を含む原水が導入され、比重差を利用する遠心分離作用により原水から不純物粒子(砂粒、金属粉、フロックなど)を分離して不純物の少ない処理水を生成するための水処理装置である。不純物のうち金属粉と砂粒は、比重が2〜10程度であり、直径が数mmから数μm程度である。フロックは、比重が1より僅かに大きく、直径が数mmから数10μm程度である。
【0026】
図1に示すように、第1の実施形態に係る固液分離装置1は、液体サイクロン11と、液体サイクロン11に原水を流入させる流入管10と、障害物16と、不純物回収部18と、処理水を液体サイクロン11から流出させる流出管20と、耐摩耗性部材32,33,34,35と、を備えている。
【0027】
液体サイクロン11は、上部から順に蓋15、円筒部12、円錐部13およびロート部14からなり、これらの部材12〜15を互いにシール性を有するフランジ継手で液密に接続して組み立て、上方から下方へ移行するに従って縮径する縦長の筺体として形成されている。円筒部12は、液体サイクロン11のなかで最も内径が大きく、側周部に流入管10が連通し、上部開口に蓋15が被せられている。流入管10は、円筒部12の内周面に接する接線に沿って外方に延び出している。円錐部13は、上部の内径が大きく、下方に移行するに従って内径が漸次小さくなっており、円筒部12の下部に連続するようにフランジ継手で接続されている。ロート部14は、円錐形状の上半部と円筒形状の下半部とを組み合せて全体が漏斗形状と成るように形成され、円錐部13の下部に連続するようにフランジ継手で接続されている。蓋15は、円筒部12の上部開口を塞ぐものであり、その中央を流出管20が上下に貫通している。
【0028】
このような液体サイクロン11では、原水は、流入管10から円筒部12内に流入し、円筒部12の内周壁に沿って流れの向きを変えられて旋回流となり、円錐部13の内周壁に沿って渦巻きながら下降する間に水より比重の大きいフロックなどの不純物が渦の中心に集まり、さらにロート部12によって絞り込まれた狭い流路に吸い込まれるようになっている。一方、不純物が分離された後の処理水は、上方の流出管20を通って次工程に送られるようになっている。
【0029】
不純物回収部18は、液体サイクロン下部のロート部14にフランジ継手により接続され、沈降した不純物を液体サイクロン11から回収するものである。不純物回収部18の底部には排出ライン21が接続され、排出バルブ22を開けて回収不純物を不純物回収部18から図示しない再利用処理装置に排出するようになっている。
【0030】
図2に示すように、耐摩耗性部材32〜35は、液体サイクロン11の内壁をくまなく覆うように、それぞれが液体サイクロン11の各部12〜15に着脱可能に取り付けられている。例えば図3の(b)に示すように、中央筒付き平板型の耐摩耗性部材35が蓋15の内面形状に沿って取り付けられ、蓋15の内面とこれを貫通する流出管20の外周面とが耐摩耗性部材35で覆われている。この中央筒付き平板型の耐摩耗性部材35は、図3の(a)に示すように、蓋15の内面形状に対応する円盤部35aと、流出管20の外周面形状に対応する中央円筒部35bと、フランジ継手のシールとなるフランジ部35fとを備えている。耐摩耗性部材のフランジ部35fは、図1に示すように、蓋のフランジ15fと円筒部のフランジ12fとの間に挟み込まれて、液体サイクロン11の内部から水漏れしないように継手を液密にシールするものである。
【0031】
次に図4を参照して円筒型の耐摩耗性部材32を説明する。
【0032】
図4の(b)に示すように、円筒型の耐摩耗性部材32が円筒部12の内面形状に沿って取り付けられ、円筒部12の内面が耐摩耗性部材32で覆われている。この円筒型の耐摩耗性部材32は、図4の(a)に示すように、円筒部12の内面形状に対応する円筒部32aと、円筒部32aの一方側の端部に形成され、フランジ継手のシールとなるフランジ部32fとを備えている。耐摩耗性部材のフランジ部32fは、図1に示すように、蓋のフランジ15fと円筒部のフランジ12fとの間に挟み込まれて、液体サイクロン11の内部から水漏れしないように継手を液密にシールするものである。
【0033】
次に図5を参照して円錐型の耐摩耗性部材33を説明する。
【0034】
図5の(b)に示すように、円錐型の耐摩耗性部材33が円錐部13の内面形状に沿って取り付けられ、円錐部13の内面が耐摩耗性部材33で覆われている。この円錐型の耐摩耗性部材33は、図5の(a)に示すように、円錐部13の内面形状に対応する円錐部33aと、円錐部33aの一方側の端部に形成され、フランジ継手のシールとなるフランジ部33fとを備えている。耐摩耗性部材のフランジ部33fは、図1に示すように、円筒部のフランジ12fと円錐部のフランジ13fとの間に挟み込まれて、液体サイクロン11の内部から水漏れしないように継手を液密にシールするものである。
【0035】
次に図6を参照して漏斗型の耐摩耗性部材34を説明する。
【0036】
図6の(b)に示すように、漏斗型の耐摩耗性部材34がロート部14の内面形状に沿って取り付けられ、ロート部14の内面が耐摩耗性部材34で覆われている。この漏斗型の耐摩耗性部材34は、図6の(a)に示すように、ロート部14の上半部の内面形状に対応する円錐部と、ロート部14の下半部の内面形状に対応する円筒部と、円錐部の上部端部に形成され、フランジ継手のシールとなるフランジ部34fとを備えている。耐摩耗性部材のフランジ部34fは、図1に示すように、円錐部のフランジ13fとロート部のフランジ部14fとの間に挟み込まれて、液体サイクロン11の内部から水漏れしないように継手を液密にシールするものである。
【0037】
次に図7を参照して障害物16を説明する。
【0038】
障害物16は、不純物回収部18とロート部14との間の適所の流路に取り付けられ、回収した不純物が不純物回収部18から液体サイクロン11のほうへ戻るのを阻止する役割を有するものである。不純物回収部18とロート部14との間の流路であれば、障害物16をどの位置に取り付けてもよい。本実施形態の装置では、図7の(a)に示すように、ロート部のフランジ部14fと不純物回収部のフランジ部18fとが組み合わせられてフランジ継手が形成され、図7の(b)に示すように、両フランジ部14f,18fの間に障害物16を有するシール部材19が挿入されている。すなわち、障害物16は、ワイヤなどからなる複数本の保持部17によりシール部材19に保持された状態で、両フランジ部14f,18fを締結する接続部分の流路中央に配置されている。障害物16として円錐、円盤、円柱、三角錐、四角錐、矩形板など種々の形状のものを用いることができる。なお、障害物16の厚みは、限定しないが、薄過ぎる場合には、原水に与えられる圧力で破損しやすいため、原水に与えられる圧力や保持部17の保持力等に応じて定めるのが好ましい。
【0039】
不純物回収部18には、回収対象である不純物とともに、原水の一部も供給される。このとき、従来の装置では不純物回収部18に回収された不純物は、原水の動きによって不純物回収部18の内部で流動して巻き上がり、液体サイクロン11の原水に再混入する問題が生じる。しかし、本実施形態の装置1では、図1に示すように、液体サイクロンのロート部14と不純物回収部18との間に障害物16が設けられているので、不純物回収部18で回収された不純物が、巻き上がって液体サイクロン11の原水に再混入するのを防ぐことができる。特に、原水で生じる旋回流の中心軸の付近で不純物の巻き上がりが多いため、旋回流の中心軸の付近に障害物16を設けることは、不純物の再混入の防止に効果的である。
【0040】
本発明によれば、フランジ継手を解除するという簡単な作業を行うだけで、耐摩耗性部材を液体サイクロンの内部から撤去することができる。すなわち、円筒型の耐摩耗性部材は液体サイクロンの円筒部の内面に(図4)、円錐型の耐摩耗性部材は液体サイクロンの円錐部の内面に(図5)、漏斗型の耐摩耗性部材は液体サイクロンのロート部の内面に(図6)、中央筒付き平板型の耐摩耗性部材は液体サイクロンの蓋の内面に(図3)に、それぞれ形状が適合しているため、撤去作業ばかりでなく装着作業も迅速かつ円滑になり、比較的短時間で作業を終わらせることができ、メンテナンス費用を大幅に削減できる。
【0041】
次に、耐摩耗性部材について図8等を参照して詳しく説明する。
【0042】
液体サイクロンの容器内壁は、大きなものでは直径が数ミリにも及ぶ砂粒子のような固形物が高速水流に伴われて激しく流動接触するため、エロージョンによる摩耗損傷量が著しく大きくなる。このため、従来装置では液体サイクロンの寿命が比較的短く、メンテナンスコストを増大化させる大きな要因となっていた。ちなみに、液体サイクロンの内壁近傍における水流の速度は、一般的なプロセス条件下では2〜6m/秒の範囲、やや厳しいプロセス条件下では6〜10m/秒の範囲、最も過酷なプロセス条件になると10m/秒を超える。よって、本発明装置に用いられる耐摩耗性部材の役割は重要である。
【0043】
耐摩耗性部材の材料は、処理対象の液体に懸濁している固体の性状に応じて、種々の樹脂、合成ゴムあるいは金属材料を用いることができる。樹脂を耐摩耗性部材に用いる場合は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフッ素系樹脂、ポリアミドやポリアミドイミドのようなポリアミド系樹脂、ポリブチレンのようなポリブチレン系樹脂などを用いることが好ましい。また、合成ゴムを耐摩耗性部材に用いる場合は、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)のようなニトリルブタジエン系ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)のようなスチレンブタジエン系ゴム、ウレタンゴムのようなウレタン系ゴムなどを用いることが好ましい。耐摩耗性部材に金属材料を用いる場合は、低合金鋼やステンレス鋼などの耐食性と耐摩耗性を兼ね備えた各種の金属材料を用いることが好ましい。
【0044】
耐摩耗性部材は、単一の材料のみで作製するものに本発明は限定されるものではなく、複数の層を組み合わせて作製することができる。例えば図8に示すように、第1の層34a、第2の層34bおよび第3の層34cをラミネート接合した3層構造の耐摩耗性部材35を用いることができる。これら3つの層34a〜34cは、厚み、材質、色をそれぞれ変えて、様々な組合せとすることができる。例えば、第1の層34aを最も厚くし、第2の層34bを最も薄くし、第3の層34cを中間の厚みとすることができる。また、例えば第1の層34aと第3の層34cとをアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)とし、第2の層34bをウレタンゴムとすることができる。また、例えば第1の層34aを黄色に着色にし、第2の層34bを赤色に着色し、第3の層34cを白色に着色することができる。
【0045】
本発明によれば、流入管から原水が流入するサイクロン上部および不純物回収部に不純物(フロック)を排出するサイクロン下部はともに摩耗損傷の著しい部位であるため、他の部位に比べて耐摩耗性部材の摩耗損傷量が大きく、これらの部位の耐摩耗性部材として2層以上の層をラミネートしたものを採用することにより、表面層が剥がれ落ちて下地層があらわれるのをモニタリングすることで摩耗損傷の進行度合いを検知することができるというメリットがある。とくに、耐摩耗性部材に色違いの層を設けることにより、摩耗損傷量を目視で簡単に検知することができ、摩耗損傷の進行度合いをさらに容易に把握することができるというメリットがある。
【0046】
(第2の実施形態)
図9を参照して本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と共通する部分の説明は省略する。
【0047】
本実施形態の固液分離装置は、液体サイクロン11Aの本体を縦分割した左右1対の縦分割筺体アッセンブリ11a,11bと、これら縦分割筺体アッセンブリ11a,11bを開閉可能に連結するシール性の複数のヒンジ継手28と、縦分割筺体アッセンブリ11a,11bの内面形状に対応する耐摩耗性部材36と、を備えている。左右1対の縦分割筺体アッセンブリ11a,11bは、液体サイクロン11Aの軸に平行な面に沿って軸対称に等分割したものである。ヒンジ継手28は、左右1対の縦分割筺体アッセンブリ11a,11bの2つの接合面(図には表側の1つのみを示したが裏側にもう1つのヒンジ継手が存在する)を締結・解除するものである。
【0048】
耐摩耗性部材36は、縦分割筺体アッセンブリ11a,11bの内面形状に対応する形状、すなわち半割の円筒部、半割の円錐部、半割の漏斗部を一体形成して成るものである。なお、本実施形態においても耐摩耗性部材36を上述のように複数の層で形成することができる。
【0049】
本実施形態によれば、ヒンジ継手を解除するという簡単な作業を行うだけで、縦分割筺体アッセンブリ11a,11bを開けて、耐摩耗性部材を液体サイクロンの内部から容易に撤去することができる。また、耐摩耗性部材を液体サイクロンの内部に装着し、縦分割筺体アッセンブリ11a,11bを閉じて、ヒンジ継手を復帰するという簡単な作業を行うだけで耐摩耗性部材を交換することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…固液分離装置、10…流入管、
11,11A…液体サイクロン、
11a,11b…縦分割筺体アッセンブリ、
12…円筒部、13…円錐部、14…ロート部、15…蓋、
16…障害物、17…保持部、18…不純物回収部、
12f,13f,14f,15f,18f…フランジ、19…シール部材、
20…流出管、21…排出ライン、22…バルブ、28…ヒンジ継手、
32,33,34,35,36…耐摩耗性部材、
32a,33a,34a,35a,36a…本体、
32f,33f,34f,35f,36f…フランジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物を含む原水を旋回させたときの遠心力を利用して原水に含まれる不純物を沈降させる液体サイクロンと、
前記液体サイクロンの上部に接続され、原水が旋回流となるように前記液体サイクロンに原水を流入させる流入管と、
前記液体サイクロンの下部に接続され、沈降した不純物を前記液体サイクロンから回収する不純物回収部と、
回収した不純物が前記不純物回収部から前記液体サイクロンのほうへ戻るのを阻止する障害物と、
前記液体サイクロンの上部に接続され、沈降した不純物が前記不純物回収部に回収された後の処理水を前記液体サイクロンから流出させる流出管と、
前記液体サイクロンの内壁を覆うように前記液体サイクロンの内部に着脱可能に取り付けられた耐摩耗性部材と、
を有することを特徴とする固液分離装置。
【請求項2】
前記液体サイクロンは、前記流入管から原水が流入する円筒部と、前記円筒部の下部に連結された円錐部と、前記円錐部の下部に連結されたロート部と、前記円筒部の上部開口を塞ぎ、前記流出管が貫通する蓋と、を有し、
前記耐摩耗性部材は、前記円筒部の内面形状に対応する円筒型の耐摩耗性部材と、前記円錐部の内面形状に対応する円錐型の耐摩耗性部材と、前記ロート部の内面形状に対応する漏斗型の耐摩耗性部材と、前記蓋の内面形状に対応する中央筒付き平板型の耐摩耗性部材と、を有し、
前記円筒部、円錐部およびロート部は、前記液体サイクロンの軸に交差する面で分割されて成るものであり、該分割面で互いにフランジ継手により連結されていることを特徴とする請求項1記載の固液分離装置。
【請求項3】
前記液体サイクロンは、軸対称に分割された左右1対の縦分割筺体アッセンブリと、前記左右1対の縦分割筺体アッセンブリを組み合わせたときの上部開口を塞ぎ、前記流出管が貫通する蓋と、を有し、
前記耐摩耗性部材は、前記左右1対の縦分割筺体アッセンブリの内面にそれぞれ対応する形状の耐摩耗性部材を有し、
前記縦分割筺体アッセンブリは、前記液体サイクロンの軸に平行な面で分割されて成るものであり、該分割面で互いにヒンジ継手により連結されていることを特徴とする請求項1記載の固液分離装置。
【請求項4】
前記耐摩耗性部材は、2層以上を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の固液分離装置。
【請求項5】
前記耐摩耗性部材は、隣接する層の色が異なる2層以上を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の固液分離装置。
【請求項6】
前記耐摩耗性部材は、前記円筒部、円錐部、ロート部および蓋を互いに連結するフランジ継手からの液漏れを防止するシール機能を備えたフランジを有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の固液分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−83697(P2011−83697A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238184(P2009−238184)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】