説明

固相化アルブミンを用いた酸化ストレス検出法

【課題】本発明は、活性酸素種および親電子性物質の簡便かつ迅速な検出方法に関する。
【解決手段】還元型チオール基を有する化合物とチオール基と反応し得る化合物を含み得る試料とを混合させ、試料中のチオール基と反応し得る化合物を前記化合物の還元型チオール基に結合させ、次に該還元型チオール基に結合し得る検出可能な化合物を加え、前記還元型チオール基を有する化合物のチオール基と反応し得る化合物が結合していない還元型チオール基と結合した前記還元型チオール基に結合し得る検出可能な化合物を検出することを含む、前記試料中のチオール基と反応し得る化合物を測定する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中の親電子性物質などの「システイン等のチオール基を有する化合物が有するチオール基と反応し得る化合物」を測定する方法に関し、さらに生体由来の試料中の酸化ストレスを引き起こす物質を測定し酸化ストレスを検出するための方法に関するものである。さらに詳細には、酸化を受けていない遊離のチオール基(−SH基)(以下「還元型チオール基」)を有する化合物と試料とを混合させ、該化合物と酸化ストレスを引き起こす物質との複合体を形成させ、次に前記の還元型チオール基に結合し得る検出可能な化合物を用いて還元型チオール基を有する化合物に結合した還元型チオール基を有する化合物を検出することによって、試料中の活性酸素種または親電子性物質などの「チオール基と反応し得る化合物」を検出する方法及びその検出キットに関する。
【背景技術】
【0002】
活性酸素、一酸化窒素または、求核試薬と共有結合する性質のある物質(親電子性物質)は、生体においてDNA、タンパク質、脂質などの生体物質を酸化させて傷害を与える有害性を持ち、これら物質による有害性を総称して、「酸化ストレス」という。近年の研究により、酸化ストレスは癌や動脈硬化・糖尿病などの発症要因の1つとして注目されている。
【0003】
これまでに、様々な酸化ストレスを検出するための方法が報告されている。その一つは、酸化ストレスの原因となる活性酸素種等の化合物(酸化ストレス源)を直接的に測定する方法である(非特許文献1を参照)。この方法では、酸化ストレスの原因となる活性酸素を、活性酸素と反応する蛍光色素を用いた細胞生物学的手法や、電子スピン共鳴法など物理化学的手法によって測定し、酸化ストレスを比較的初期のレベルで検出できる。
【0004】
また、別の方法では、活性酸素により酸化された修飾産物(核酸、タンパク質、細胞膜などの酸化された脂質、糖、化合物)を、例えば、抗体などを用いて検出することによって、酸化ストレスを測定することが可能である(非特許文献2を参照)。
【0005】
一方、ヒト血清中のアルブミンは20数個ものシステイン残基をもつが、その多くがジスルフィド結合に関与しており、還元型のまま存在するのは34番目のシステインのみである。34番目のシステインは通常、還元されており、34番目のシステインが還元されたままのアルブミンを還元型アルブミンとよび、酸化されているものを酸化型アルブミンとよぶ。酸化型アルブミンおよび還元型アルブミンの比率は、周囲のレドックス状態に依存することがわかっている。すなわち周囲のレドックス状態が酸化的状態の傾くとすみやかに酸化型アルブミンに変化する。また還元型から酸化型のアルブミンに変化すると、その立体構造が大きく変化する。このため特殊なカラムを用いればゲルろ過で分離でき、酸化型と還元型の割合を測定することによりこのアルブミンに注目して、血清中のレドックス状態を推定し得ることが報告されていた(非特許文献3を参照)。
【0006】
【非特許文献1】Satoh Tら (1998) J Neurochem 70:316-324
【非特許文献2】Tanaka Nら (2001) Arch Dermatol Res. Jul;293(7):363-7
【非特許文献3】Eraら (1995) Biochem Biophys Acta 1247: 12-16
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の酸化ストレス源を直接的に測定する方法では、専用の大型機器を必要とし、また多量の検体を扱うことは困難である。また、修飾産物を測定する方法では、抗原抗体反応を用いるために測定に長時間を要すること、および酸化ストレスの初期段階を検出することができない。さらに、アルブミンの構造変化を利用した方法では、ゲルろ過を用いるために、測定に長時間を要し、そしてなによりも、多くの検体に対応することができない。そのため、酸化ストレスの初期段階を検出でき、かつ短時間で、多量の検体を扱うことができる簡便かつ迅速な測定方法が切望されている。
【0008】
そこで本発明は、試料中の酸化ストレスを引き起こす物質を直接測定し、酸化ストレスを迅速かつ簡便に検出する方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、還元型チオール基を有するタンパク質等の化合物を酸化ストレスを引き起こし得る物質に曝し、これにチオールキレーターのような還元型チオール基に特異的に結合する化合物を添加して、還元型チオール基を有するタンパク質に結合した当該化合物を検出することによって、酸化ストレスを測定できることを見出した。さらに、本発明者らは、広く植物体中や環境水中に存在する親電子性物質をも測定できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 還元型チオール基を有する化合物とチオール基と反応し得る化合物を含み得る試料とを接触させ、試料中のチオール基と反応し得る化合物を前記化合物の還元型チオール基に結合させ、次に該還元型チオール基に結合し得る検出可能な化合物を加え、前記還元型チオール基を有する化合物のチオール基と反応し得る化合物が結合していない還元型チオール基と結合した前記還元型チオール基に結合し得る検出可能な該化合物を検出することを含む、前記該試料中の親電子性物質などの酸化ストレスを引き起こし得る化合物を測定するための方法。
[2]チオール基と反応し得る化合物が、親電子性物質、活性酸素または一酸化窒素である、[1]の方法。
[3] 試料が生体由来の試料である[1]または[2]の方法。
[4] 試料が生体由来の試料であり、チオール基と反応し得る化合物が生体に酸化ストレスを引き起こす物質である、[3]の方法。
[5] 前記酸化ストレスを引き起こす物質が、活性酸素種である、[4]の方法。
[6] 活性酸素種が、一重項酸素、スーパーオキシド、ヒドロキシラジカル、過酸化水素、一酸化窒素もしくはその誘導体および脂質ペルオキシドなどの過酸化脂質からなる群から選択される[5]の方法。
[7] 前記試料が、血漿、血清、尿、涙、唾液および汗からなる群から選択される体液である、[3]〜[6]のいずれかの方法。
[8] 前記試料が、植物体を粉砕し水性溶液に懸濁したものであり、チオール基と反応し得る化合物が生体に酸化ストレスを引き起こす物質である、[1]の方法。
[9] 前記試料が、環境から採取した環境水であり、チオール基と反応し得る化合物が生体に酸化ストレスを引き起こす物質である[1]の方法。
[10] チオール基と反応し得る化合物が、親電子性物質である、[8]または[9]の方法。
[11] 前記親電子性物質が、エノン基を有する化合物、キノンもしくはハイドロキノンを有する化合物、親電子性を有する抗がん剤、親電子性を有する生理活性物質、イソシアネート誘導体、一酸化窒素もしくはその誘導体および過酸化脂質からなる群から選択される[10]の方法。
[12] 前記親電子性物質が、プロスタグランジンJ2誘導体、アドリアマイシン、シスプラチン、クルクミン、一部のフラボノイドおよびサルフォラファンを含むイソシアネート誘導体からなる群から選択される[11]の方法。
[13] 還元型チオール基を有する化合物がタンパク質またはペプチドである[1]〜[12]のいずれかの方法。
[14] 前記タンパク質またはペプチドが、血清アルブミン、アルブミン、オバルブミン、グルタチオンおよびカゼインからなる群から選択される、[13]の方法。
[15] 前記還元型チオール基を有する化合物が、固相に結合されている、[1]〜[14]のいずれかの方法。
[16] 還元型チオール基に結合し得る検出可能な前記化合物が、チオールキレーターである、[1]〜[15]のいずれかの方法。
[17] 前記チオールキレーターが、マレイミド基、ヨードアセチル基、ピリジルジチオール基およびキノン基などの官能基からなる群から選択される化合物である、[16]の方法。
[18] 還元型チオール基に結合し得る検出可能な前記化合物がビオチン、蛍光物質、酵素、化学発光物質、放射性同位元素および磁性体からなる群から選択される物質により標識されている、[16]または[17]の方法。
[19] 生体由来の試料中の酸化ストレスを引き起こす物質を測定することにより、生体の酸化ストレスを検出する、[1]〜[7]および[13]〜[18]のいずれかの方法。
【0011】
[20] 還元型チオール基を有する化合物が固定化された基板であって、試料中のチオール基と反応し得る化合物を測定するための基板。
[21] チオール基と反応し得る化合物が、親電子性物質である、[20]の基板。
[22] 還元型チオール基を有する化合物がタンパク質またはペプチドである、[20]または[21]の基板。
[23] タンパク質またはペプチドが、血清アルブミン、アルブミン、オバルブミン、グルタチオン、カゼインおよびそれらの組合せからなる群から選択される、[22]の基板。
[24] 試料が生体由来の試料であり、試料中のチオール基と反応し得る化合物が生体に酸化ストレスを引き起こす物質である、[20]〜[23]のいずれかの基板。
[25] 酸化ストレスを引き起こす物質が、活性酸素種である、[24]の基板。
[26] 活性酸素種が、一重項酸素、スーパーオキシド、ヒドロキシラジカル、過酸化水素、一酸化窒素とその誘導体および脂質ペルオキシドなどの過酸化脂質からなる群から選択される[25]の基板。
[27] 試料が、植物体を粉砕し水性溶液に懸濁したものであり、試料中のチオール基と反応し得る化合物が生体に酸化ストレスを引き起こす物質である、[20]〜[23]のいずれかの基板。
[28] 試料が、環境から採取した環境水であり、チオール基と反応し得る化合物が生体に酸化ストレスを引き起こす物質である[20]〜[23]のいずれかの基板。
[29] チオール基と反応し得る化合物が、親電子性物質である、[27]または[28]の基板。
[30] 生体由来の試料中の酸化ストレスを引き起こす物質を測定することにより、生体の酸化ストレスを検出するために用いる、[20]〜[26]のいずれかの基板。
[31] [20]〜[30]の基板と還元型チオール基に結合し得る検出可能な化合物とを含む、試料中のチオール基と反応し得る化合物を測定するためのキット。
[32] チオール基と反応し得る化合物が、親電子性物質である、[31]のキット。
[33] 還元型チオール基に結合し得る検出可能な化合物が、チオールキレーターである、[31]または[32]のキット。
[34] チオールキレーターが、マレイミド基、ヨードアセチル基、ピリジルジチオール基およびキノン基などの官能基からなる群またはそれらの組合せである、[33]のキット。
[35] 還元型チオール基に結合し得る検出可能な化合物がビオチン、蛍光物質、酵素、化学発光物質、放射性同位元素、および磁性体からなる群から選択される物質により標識されている、[31]〜[34]のいずれかのキット。
[36] 生体由来の試料中の酸化ストレスを引き起こす物質を測定することにより、生体の酸化ストレスを検出するために用いる、[31]〜[35]のいずれかのキット。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、還元型チオール基を有する化合物と試料とを接触させ、次にこの還元型チオール基に結合可能な化合物を加え、上記タンパク質の還元型チオール基と結合した当該化合物を検出することによって、迅速かつ簡便に試料中の酸化ストレスを引き起こす物質等の親電子性物質を検出することができるという格別の作用効果を有する。特に本発明の場合、従来法のように酸化ストレスの結果として生成する、活性酸素による修飾化合物を酸化ストレスマーカーとして測定するのではなく、酸化ストレスを引き起こす物質を直接マーカーとして測定することができるので、酸化ストレスに曝される初期の状態を即時に検出することができる即時性を有する。また、環境水や植物体中などのヒトが摂取し得る物質中の酸化ストレスを引き起こし得る物質を測定することもでき、環境汚染等を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、試料中の親電子性物質などの「システイン等のチオール基を有する化合物が有するチオール基と反応し得る化合物」を測定する方法である。さらに詳細にいえば、還元型チオール基を有する化合物と試料とを接触させ、親電子性物質などの「チオール基と反応し得る化合物」を前記化合物の還元型チオール基に結合させ、次に還元型チオール基に結合し得る検出可能なチオールキレーターを加え、前記の還元型チオール基を有する化合物の親電子性物質が結合していない還元型チオール基と結合した当該チオールキレーターを検出することによって、前記試料中の親電子性物質を測定する方法である。本発明の方法により、親電子性物質として生体由来の試料中の酸化ストレスを引き起こす物質を測定することにより、生体の酸化ストレスを検出することができる。
【0014】
親電子性物質とは、電子の存在確率の不足する原子が分子内に存在するために、チオール基などの求核試薬に対する親和性が高い物質であり、チオール基などの求核試薬と容易に共有結合を形成する。親電子性物質には、プロスタグランジンJ2誘導体などのエノン基を有する化合物、キノンまたはハイドロキノンをもつ化合物、アドリアマイシンおよびシスプラチンなどの親電子性を有する抗がん剤、クルクミン、一部のフラボノイド、サルフォラファンを含むイソシアネート誘導体などの植物由来の親電子性を有する生理活性物質、一酸化窒素およびその誘導体、遊離のNO化合物、過酸化脂質などが含まれる。さらに、狭義の親電子性物質には含まれないが、活性酸素種はチオール基を酸化する点から、親電子性物質と同じ作用を有するものとして考えることができる。従って、本発明においては、親電子性物質という場合、活性酸素種をも含むことがある。本発明で測定し得る親電子性物質は、好ましくは水溶性の物質である。
【0015】
「酸化ストレス」とは、活性酸素種や親電子性物質などの「チオール基と反応し得る化合物」が、細胞の還元力のレベルを超えて増加したために、非特異的な酸化反応が進行し、正常な細胞機能が抑制されている状態をいう。また、特に、親電子性物質による酸化ストレスを親電子性ストレスと呼ぶことがある。活性酸素種は、反応性に富み生体内でタンパク質、核酸、脂質等と反応し、その構造や機能を変化させ得る物質であり、一重項酸素、スーパーオキシド、ヒドロキシラジカル、過酸化水素、脂質ペルオキシド等が含まれる。一般的に、生体内にこれらの活性酸素種が多く存在する場合、該生体は酸化ストレスに曝されており、あるいは酸化ストレスが大きい状態にあると言われる。
【0016】
本発明において、試料中の上記の活性酸素種や親電子性物質等の酸化ストレスを引き起こす物質を、活性酸素種および親電子性物質による酸化を受けていない還元型チオール基を用いて測定する。親電子性物質の測定は、定量でも定性でもよい。
還元型チオール基とは、酸化を受けていない遊離のチオール基(−SH基)をいう。
【0017】
本発明の一実施形態において、「試料」とは、ヒト等の生体由来の全血液、血漿、血清、尿、涙、唾液、汗などの体液であり得る。生体由来の生検組織の抽出物等を用いることもできる。好ましくは、全血液、血漿、または血清であり得る。血液を採取する際、血液凝固防止のためにEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を添加することが好ましい。血液凝固防止のためには、一般的にヘパリンなども用いられるが、添加したヘパリンによって、還元型チオール基が酸化型に変化してしまう可能性があるため、EDTAを用いるのが好ましい。また、EDTAを添加することによって、還元型チオール基を酸化し得る酵素の補酵素を阻害することもできる。
【0018】
さらに、試料中の夾雑タンパク質およびチオールを酸化し得る酵素を除去するために除タンパク質処理を行っても良い。除タンパク質は、酸を試料に添加し、タンパク質を変性させ、変性したタンパク質をフィルター処理又は遠心分離により取り除くことによって行うことができる。用いる酸としては、pHが極端に低くないものが好ましく、例えば、スルホサリチル酸(SSA)が好ましい。SSAは、トリクロロ酢酸(TCA)などのタンパク質変性除去剤と比べて、還元型チオール基への影響が少ないために望ましい。用いる除タンパク質剤の濃度は、1〜5%、好ましくは2〜5%、さらに好ましくは2〜3%、特に好ましくは2.5%である。
【0019】
本発明の別の実施形態において、「試料」とは、植物体を粉砕し、水性溶液に懸濁したものであり得る。この試料を用いることによって、食物となり得る植物体中に含まれる活性酸素種や親電子性物質(例えば、クルクミン、一部のフラボノイド、サルフォラファンを含むイソシアネート誘導体などの生理活性物質)を測定することができる。これらの植物体中の親電子性物質は、ヒト等の生体が植物を摂取した場合に、該生体の親電子性ストレスを引き起こし得る。
【0020】
さらに別の実施形態において、「試料」とは、海、河川、湖、池、沼、地下水、水道水などの環境から採取したあらゆる環境水であり得る。これらを試料として用いることによって、環境水中に存在する親電子性を有する環境ホルモン(例えば、ビスフェノールA、ダイオキシン、パラチオン、DDTなど)の検出が可能となる。これらの親電子性物質は、例えば、ヒト等の生体が親電子性物質を含むこれらの環境水を摂取した場合に、該生体に対して親電子性ストレスを引き起こし得る。
【0021】
本発明において「還元型チオール基を有する化合物」としては、酸化されていないSH基を有する化合物であり、還元型チオール基を少なくとも1つ有するタンパク質およびペプチド、並びに低分子化合物が含まれる。還元型チオール基を有するタンパク質としては、ヒト血清アルブミン(HSA)、ウシ血清アルブミン(BSA)、ウマ血清アルブミン、ヒツジ血清アルブミン、ブタ血清アルブミン、ヤギ血清アルブミン等の動物由来血清アルブミン、動物由来のアルブミン、オバルブミン、カゼインなどが挙げられるが、これらに限定されず、フリーのチオール基を有するタンパク質であればいずれのタンパク質であっても利用可能である。チオール基として、例えばタンパク質やペプチドに含まれるシステインのチオール基が挙げられる。例えば、血清アルブミンは、34番目のシステインのSH基が還元された状態で存在し、該SH基に還元型チオール基に結合し得る検出可能な化合物が結合する。還元型チオール基を有するペプチドとしては、例えばグルタチオン、システニルグリシン等が挙げられる。本発明において「還元型チオール基を有するタンパク質またはペプチド」とは、好ましくは、BSA等の血清アルブミンまたはグルタチオンであり、さらに好ましくは血清アルブミンである。BSA等の血清アルブミンは、大量に入手可能であるために特に好ましい。
【0022】
本発明の一実施形態において、上記還元型チオール基を有するタンパク質を固相(担体)に結合させ、酸化ストレスを引き起こす物質を検出するための基板を作製することができる。固相の材料としては、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ナイロン膜などを用いることができ、板状、膜状等の固相を用いることができる。還元型チオール基を有する化合物としてタンパク質やペプチドを用いる場合、タンパク質の固相化に適したものであれば、いかなるものでも用いることができる。また、市販のマイクロタイタープレート、ウェルプレート、ELISAプレート、マルチウェルプレートなどを用いることもできる。
【0023】
還元型チオール基を有する化合物の固相への結合は、公知の物理吸着や化学結合による固相化方法によって行うことができる。例えば、タンパク質やペプチドをマイクロタイタープレート等に結合させる場合、例えば、上記プレートの各ウェルに水溶性緩衝液に溶解させた数μg/mL〜数十mg/mLのタンパク質を10〜500μl添加し、室温にて、1時間〜十数時間静置することによって、タンパク質をプレートのウェルの底面に結合させ、検出用基板を作製することができる。
【0024】
また、アミノ基、カルボキシル基等の官能基を結合させた固相を用いて、固相上の官能基と低分子化合物のアミノ基、カルボキシル基等の官能基とを結合させればよい。特に、低分子化合物を用いる場合、この方法が有効である。
【0025】
酸化ストレスを検出するための基板は、タンパク質等の化合物をガラス板、ナイロン膜等の担体に高密度で整列させたものを含み、この場合、該基板を酸化ストレスを検出するためのチップ、マイクロアレイという場合がある。例えば、タンパク質をアレイヤー等を用いて、固相上にドット状に固相化すればよい。
【0026】
本発明において「還元型チオール基に結合し得る化合物」とは、還元型チオール基に対して特異的に結合するチオールキレーターであり得る。本発明において「チオールキレーター」としては、マレイミド基、ヨードアセチル基、ピリジルジチオール基およびキノン基などの官能基からなる群から選択される化合物が挙げられるが、これらに限定されず、強い親電子性を持つ官能基を有する化合物であればチオールキレーターとして機能し得る。
【0027】
本発明において、当該還元型チオール基に結合し得る化合物は、検出し得る必要がある。例えば、蛍光を発する化合物を用いてもよいし、検出し得る物質によって前記化合物を標識してもよい。標識はビオチン、蛍光物質、酵素、化学発光物質、放射性同位元素、磁性体等の、当業者に公知であるものを用いて行うことができる。好ましくは、蛍光物質または酵素を用いる。蛍光物質としては、ピレン、FITC、ローダミン、AlexaFluor(登録商標:Molecular Probes, Inc.)などが挙げられる。酵素としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、βガラクトシダーゼなどが挙げられる。さらに、検出されるシグナルを増強するためにアビジン−ビオチン系またはストレプトアビジン−ビオチン系を利用することも可能である。また、化合物に結合した標識物質を認識する抗体を、先の標識物質とは異なる標識物質で標識して用いてもよい。標識は、公知の方法で行えばよい。
【0028】
本発明の方法は、試料を、上記還元型チオール基を有する化合物と接触させ、例えば、室温にて、1時間反応させる。この工程において、試料中の活性酸素種や親電子性物質が還元型チオール基を有する化合物の還元型チオール基に結合し、還元型チオールを酸化する。
【0029】
その後、還元型チオール基に特異的に結合する化合物を添加し、例えば室温にて、1時間反応させる。この化合物は、上記工程において酸化されずに残存する遊離の還元型チオール基に特異的に結合する。
【0030】
その後、リン酸緩衝液などの緩衝液を用いて洗浄し、未結合の還元型チオール基に結合し得る検出可能な化合物を除去し、還元型チオール基に特異的に結合した還元型チオール基に結合し得る検出可能な化合物を測定する。すなわち、本発明の方法においては、試料中の親電子性物質などの「チオール基と反応し得る化合物」と還元型チオール基に結合し得る検出可能な化合物が還元型チオール基への結合において競合する、競合法の原理により測定する。測定は、還元型チオール基に結合し得る検出可能な化合物からの蛍光シグナル強度、または酵素反応による発色シグナル強度等を、蛍光強度計、吸光度計(例えば、マイクロプレートリーダー)等の専用の測定器を用いて行うことができる。また、目視で蛍光や呈色を検出することができる。目視で判定する場合、検出器も不要なので、より簡便に親電子性物質を測定することができる。特に環境水中の親電子性物質を測定する場合、現場で迅速に測定できる。この際、既知濃度の活性酸素種または親電子性物質を用いて検量線を作成することによって、試料内の活性酸素種または親電子性物質の濃度を定量できる。
【0031】
上記測定によって、還元型チオール基に結合し得る検出可能な化合物が多く検出された場合、すなわち、還元型チオールが多く残存している場合、試料中の活性酸素種や親電子性物質などの「チオール基と反応し得る化合物」が少ないことを示す。試料が生体由来の試料であり、試料中の親電子性物質が活性酸素種等の生体に酸化ストレスを引き起こす物質である場合、生体の酸化ストレスを検出することができる。ここで、酸化ストレスの検出とは、生体が受けている酸化ストレスレベルを検出し、あるいは生体が曝されている酸化ストレスの大きさを評価することをいう。生体由来の試料中の酸化ストレスを引き起こす物質が多い場合、該生体は大きな酸化ストレスを有している、または大きな酸化ストレスに曝されていると評価することができる。生体の酸化ストレスの評価により、該生体が癌や高血圧、動脈硬化、糖尿病などの生活習慣病に罹患するリスクを評価・判定することができる。本発明の方法によれば、生体の酸化ストレスを定性または定量的に検出することができる。
【0032】
本発明において、生体由来の試料中の酸化ストレスを引き起こす物質を測定することを、生体由来の試料中の酸化ストレスを検出するということもある。
【0033】
試料が植物体である場合、植物体の活性酸素種や親電子性物質(例えば、クルクミン、一部のフラボノイド、サルフォラファンを含むイソシアネート誘導体などの生理活性物質)を測定することにより、ヒト等の生体に親電子性ストレスを引き起こす物質を測定することができる。また、試料が環境水の場合、環境水中の親電子性物質を測定することにより、環境中の親電子性物質である、環境ホルモン等を測定することができる。このような測定により、環境水中の環境汚染の程度を評価することができる。
【0034】
さらに、本発明は、還元型チオール基を有する化合物が固定化された基板であって、試料中の親電子性物質を測定するための基板を包含し、さらに、該基板と還元型チオール基に結合し得る検出可能な化合物とを含む親電子性物質を測定するためのキットを包含する。該基板またはキットは、生体の酸化ストレスの検出等のために用いることができる。前記基板は、例えば生体の酸化ストレス検出用チップまたはアレイとしても利用できる。
【実施例】
【0035】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0036】
[血清アルブミンを用いた酸化ストレスの簡便な検出]
本実施例において、血清アルブミンを用いた酸化ストレスの簡便な検出方法を例示する。本発明者は、この方法を「Simple Detection of Oxidative stress by use of Serum Albumin (S-DOSA)」と命名した。以下に本方法を具体的に説明する。
【0037】
(検出用基板の作製)
ELISA用プレート(イワキ)の各ウェルに、PBS中10 mg/mlのBSA (fraction 5)(和光純薬)を100μlづつ添加して、室温にて1時間放置した。
【0038】
実施例1.酸化ストレスの検出
(1)過酸化水素およびN-エチルマレイミドの検出
酸化剤である過酸化水素および親電子性物質であるN-エチルマレイミド(NEM)は、和光純薬より購入した。各試薬を、PBSを用いて、最終濃度の2倍の濃度となるように調製した。それぞれの濃度の各試薬を、上記基板の各ウェルに100μlづつ添加し、室温にて1時間放置した。
その後、300 nM(最終濃度の3倍)のAlexa Fluor(登録商標)680 C2マレイミド(C2M: インビトロジェン)を各ウェルに100μlづつ添加し、室温にて1時間放置した。
その後、PBSを用いて3回洗浄し、未結合のC2マレイミドを除去した後、波長680 nmにおける蛍光画像を、Odyssay(バイオラド)を用いて得た。
結果を、図1に示す。図1は、ELSA用プレートの蛍光画像を示す。C2マレイミドを添加しなかったウェルは、蛍光が認められなかった(ゼロレベル)。過酸化水素およびNEMの添加濃度がゼロのものは、100%レベルの強い蛍光強度を示した。NEMの添加により、濃度依存的に蛍光強度が減弱し、30μMでほとんど抑制された。また、過酸化水素の添加により、濃度依存的に蛍光強度が減弱した。蛍光強度は、過酸化水素の濃度が300μMで抑制され始め、1000μMで大部分が抑制された。
【0039】
(2)チオール基を有する化合物存在下における酸化ストレスの検出
親電子性物質ではないが、チオール基を含む物質が、試料中に混在している場合、C2マレイミドは、その物質に含まれるチオール基と反応してしまい、親電子性物質の検出を困難にすることが予想される。そのためこのような場合には、上記とは別の検出方法を必要とする。以下にその具体例を示す。
チオール基を有する化合物としてグルタチオン(GSH)を用いた。GSHは、(和光純薬より購入した。GSHをPBSを用いて、最終濃度の2倍の濃度となるように調製した。それぞれの濃度のGSHを、上記基板の各ウェルに100μlづつ添加し、室温にて1時間放置した。その後以下の2つのプロトコルを実施した。
【0040】
(i)洗浄工程なし
GSHを添加して室温にて1時間放置した後、上記プロトコルと同様に、300 nM(最終濃度の3倍)のAlexa Fluor(登録商標)680 C2マレイミド(C2M: インビトロジェン)を各ウェルに100μlづつ添加し、室温にて1時間放置した。
その後、PBSを用いて3回洗浄し、未結合のC2マレイミドを除去した後、波長680 nmにおける蛍光画像を、Odyssay(バイオラド)を用いて得た。
その結果を図2Aに示す。図2Aは、ELSA用プレートの蛍光画像を示す。C2マレイミドを添加しなかったウェルは、蛍光が認められなかった(ゼロレベル)。GSHの添加により、C2マレイミドはGSHと結合し除去されたため、蛍光シグナルが抑制されていた。
【0041】
(ii)洗浄工程あり
GSHを添加して室温にて1時間放置した後、上記プロトコルとは異なり、各ウェルをPBSを用いて2回洗浄した。
続いて、300 nM(最終濃度の3倍)のAlexa Fluor(登録商標)680 C2マレイミド(C2M: インビトロジェン)を各ウェルに100μlづつ添加し、室温にて1時間放置した。
その後、PBSを用いて3回洗浄し、未結合のC2マレイミドを除去した後、波長680 nmにおける蛍光画像を、Odyssay(バイオラド)を用いて得た。
結果を、図2Bに示す。図2Bは、ELSA用プレートの蛍光画像を示す。C2マレイミドを添加しなかったウェルは、蛍光が認められなかった(ゼロレベル)。GSHの添加により、濃度依存的に蛍光強度が増強した。これはウェル中の親電子性物質がGSHによって除去されたためであると考えられる。
【0042】
以上、プロトコル(i)および(ii)の実験結果の違いから、親電子性物質ではなくチオール基を含む物質が試料中に存在する場合、その検出結果は洗浄により影響を受けることが示された。すなわち、洗浄により影響を受けるか否かを指標とすることによって、検出された結果が、親電子性物質によるものであるのか、またはチオール基を含む物質によるものであるのかを識別することができ、正確な親電子性物質の検出を可能とする。
これらの結果から、上記基板を用いることによって、試料中の酸化ストレスを引き起こし得る親電子性物質を濃度依存的に検出できることが示された。
【0043】
実施例2.ヒト血清中の酸化ストレスの検出
ヒト血清中の酸化ストレスを検出するために、上記基板の各ウェルにヒト血清試料を100μlづつ添加し、室温にて1時間放置した。その後、各ウェルをPBSを用いて2回洗浄した。続いて、200 nM、100 nM、50 nM、20 nMのAlexa Fluor(登録商標)680 C2マレイミド(C2M: インビトロジェン)を各ウェルに100μlづつ添加し、室温にて1時間放置した。その後、PBSを用いて2回洗浄し、未結合のC2マレイミドを除去した後、各ウェルに100μlづつ添加し、波長680 nmにおける蛍光画像を、Odyssay(バイオラド)を用いて得た。
【0044】
(1)PL顆粒(塩野義)投与による影響
上記方法を用いて、PL顆粒投与によるヒト血清中の酸化ストレスレベルへの影響を調べた。健常人の血液を採取し、その後PL顆粒を投与して、15時間後に再び血液を採取した。採取した血液試料より血清を調製し、血清試料として用いた。
結果を、図3に示す。PL顆粒投与前に比べて、PL顆粒投与後では、蛍光強度が減弱していることがわかった。これは、PL顆粒に含まれるアセトアミノフェンとメチレンジサリチル酸の有する酸化作用により血清中の酸化ストレスレベルが増大したことを示す。
【0045】
(2)糖尿病患者の血清中の酸化ストレスの検出
上記方法を用いて、糖尿病患者の血清中の酸化ストレスを調べた。健常人の血液およびPL顆粒投与後の血液、ならびに糖尿病患者の血液を採取した。採取した各血液試料よりそれぞれ血清を調製し、血清試料として用いた。
結果を、図4に示す。健常人(コントロール)と比較して、PL顆粒投与後の血清試料および糖尿病患者の血液試料では、蛍光強度が減弱していることがわかった。すなわち、これらの試料中では酸化ストレスレベルが増大していることが示された。このことは、糖尿病において酸化ストレスが亢進しているという最近の知見にも合致している。
これらの結果から、上記基板を用いることによって、ヒト血清中の酸化ストレスを検出できることが示された。
【0046】
実施例3.試料中の酸化ストレスのプレートリーダーを用いた定量的解析
プレートリーダーを用いて蛍光強度を解析することによって、試料中の酸化ストレスを定量的に解析することが可能である。
本方法において、上記基板は、ELISA用ブラックプレート(NUNC Cat. NO 442404 F96 MAXISORP NUNC-IMMUNO PLATE)を用いて、同様に作製した。
【0047】
過酸化水素およびNEMを、PBSを用いて、最終濃度の2倍の濃度となるように調製した。それぞれの濃度の各試薬を、上記基板の各ウェルに100μlづつ添加し、室温にて1時間放置した。
【0048】
その後、300 nMのAlexa Fluor(登録商標)680 C2マレイミド(C2M: インビトロジェン)を各ウェルに100μlづつ添加し、室温にて1時間放置した。
【0049】
その後、PBSを用いて3回洗浄し、未結合のC2マレイミドを除去した後、Alexa Fluor(登録商標)488 C5マレイミド(インビトロジェン)を各ウェルに100μlづつ添加し、室温にて1時間放置した。
【0050】
その後、PBSを用いて3回洗浄し、未結合のC2マレイミドを除去した後、波長488 nmにてプレートリーダー(プレートリーダ:大日本住友製薬株式会社(DAINIPPON SUMITOMO PHARMA)Multi-Detection Microplate Reader POWERSCANT-HT;ソフトウェア:Bio-Tek Instruments.inc Microplate Data Analysis software KC4)を用いて蛍光強度を定量した。
【0051】
結果を、図5に示す。表中の蛍光強度は、サンプルを添加しなかったウェルにおける蛍光強度を100%とし、それに対する相対値として各試料の各濃度における蛍光強度を示す。過酸化水素およびNEMの添加により、蛍光強度が濃度依存的に減弱した。この結果は、Odyssayを用いた画像解析の結果と一致する。
【0052】
この結果から、上記基板をプレートリーダーによって解析し、試料中の酸化ストレスを定量的に解析できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明により、試料中の酸化ストレスを簡便かつ迅速に測定することができ、本発明の基板およびキットは、研究用試薬として、および臨床検査用試薬として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】各濃度の過酸化水素およびN-エチルマレイミド(NEM)による酸化ストレスを、本発明による検出用基板を用いて検出した結果を示す。
【図2A】各濃度のグルタチオン(GSH)を添加した際の酸化ストレスを、C2マレイミド添加前に洗浄工程を含まないプロトコルを用いて、本発明による検出用基板を用いて検出した結果を示す。
【図2B】各濃度のグルタチオン(GSH)を添加した際の酸化ストレスを、C2マレイミド添加前に洗浄工程を含むプロトコルを用いて、本発明による検出用基板を用いて検出した結果を示す。
【図3】健常人に対するPL顆粒投与による影響を、本発明による検出用基板を用いて検出した結果を示す。
【図4】健常人と糖尿病患者の血清試料中の酸化ストレスを、本発明による検出用基板を用いて検出した結果を示す。
【図5】本発明による検出用基板をプレートリーダーを用いて解析し、各濃度の過酸化水素およびNEMによる酸化ストレスを検出した結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元型チオール基を有する化合物とチオール基と反応し得る化合物を含み得る試料とを混合させ、試料中のチオール基と反応し得る化合物を前記化合物の還元型チオール基に結合させ、次に該還元型チオール基に結合し得る検出可能な化合物を加え、前記還元型チオール基を有する化合物のチオール基と反応し得る化合物が結合していない還元型チオール基と結合した前記還元型チオール基に結合し得る検出可能な化合物を検出することを含む、前記試料中のチオール基と反応し得る化合物を測定する方法。
【請求項2】
チオール基と反応し得る化合物が、親電子性物質、活性酸素または一酸化窒素である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
試料が生体由来の試料である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
試料が生体由来の試料であり、チオール基と反応し得る化合物が生体に酸化ストレスを引き起こす物質である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
酸化ストレスを引き起こす物質が、活性酸素種である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
活性酸素種が、一重項酸素、スーパーオキシド、ヒドロキシラジカル、過酸化水素、一酸化窒素もしくはその誘導体および過酸化脂質からなる群から選択される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
試料が、血漿、血清、尿、涙、唾液および汗からなる群から選択される、請求項3〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
試料が、植物体を粉砕し水性溶液に懸濁したものであり、チオール基と反応し得る化合物が生体に酸化ストレスを引き起こす物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
試料が、環境から採取した環境水であり、チオール基と反応し得る化合物が生体に酸化ストレスを引き起こす物質である請求項1に記載の方法。
【請求項10】
チオール基と反応し得る化合物が、親電子性物質である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
親電子性物質が、エノン基を有する化合物、キノンもしくはハイドロキノンを有する化合物、親電子性を有する抗がん剤、親電子性を有する生理活性物質、イソシアネート誘導体、一酸化窒素もしくはその誘導体ならびに過酸化脂質からなる群から選択される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
親電子性物質が、プロスタグランジンJ2誘導体、アドリアマイシン、シスプラチン、クルクミン、レスベラトロール、フラボノイドおよびサルフォラファンからなる群から選択される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
還元型チオール基を有する化合物がタンパク質またはペプチドである請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
タンパク質またはペプチドが、血清アルブミン、アルブミン、オバルブミン、グルタチオンおよびカゼインからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
還元型チオール基を有する化合物が、固相に結合されている、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
還元型チオール基に結合し得る検出可能な化合物が、チオールキレーターである、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
チオールキレーターが、マレイミド基、ヨードアセチル基、ピリジルジチオール基およびキノン基からなる群から選択される化合物である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
還元型チオール基に結合し得る検出可能な化合物が、ビオチン、蛍光物質、酵素、化学発光物質、放射性同位元素、および磁性体からなる群から選択される物質により標識されている、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
生体由来の試料中の酸化ストレスを引き起こす物質を測定することにより、生体の酸化ストレスを検出する、請求項1〜7および13〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
還元型チオール基を有する化合物が固定化された基板であって、試料中のチオール基と反応し得る化合物を測定するための基板。
【請求項21】
チオール基と反応し得る化合物が、親電子性物質である、請求項20に記載の基板。
【請求項22】
還元型チオール基を有する化合物がタンパク質またはペプチドである、請求項20または21に記載の基板。
【請求項23】
タンパク質またはペプチドが、血清アルブミン、アルブミン、オバルブミン、グルタチオン、カゼインおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項22に記載の基板。
【請求項24】
試料が生体由来の試料であり、チオール基と反応し得る化合物が生体に酸化ストレスを引き起こす物質である、請求項20〜23のいずれか1項に記載の基板。
【請求項25】
酸化ストレスを引き起こす物質が、活性酸素種である、請求項24に記載の基板。
【請求項26】
活性酸素種が、一重項酸素、スーパーオキシド、ヒドロキシラジカル、過酸化水素、一酸化窒素由来の化合物および過酸化脂質からなる群から選択される請求項25に記載の基板。
【請求項27】
試料が、植物体を粉砕し水性溶液に懸濁したものであり、チオール基と反応し得る化合物が生体に酸化ストレスを引き起こす物質である、請求項20〜23のいずれか1項に記載の基板。
【請求項28】
試料が、環境から採取した環境水であり、チオール基と反応し得る化合物が生体に酸化ストレスを引き起こす物質である請求項20〜23のいずれか1項に記載の基板。
【請求項29】
チオール基と反応し得る化合物が、親電子性物質である、請求項27または28に記載の基板。
【請求項30】
生体由来の試料中の酸化ストレスを引き起こす物質を測定することにより、生体の酸化ストレスを検出するために用いる、請求項20〜26のいずれか1項に記載の基板。
【請求項31】
請求項20〜30に記載の基板と還元型チオール基に結合し得る検出可能な化合物とを含む、チオール基と反応し得る化合物を測定するためのキット。
【請求項32】
チオール基と反応し得る化合物が、親電子性物質である、請求項31に記載のキット。
【請求項33】
還元型チオール基に結合し得る検出可能な化合物が、チオールキレーターである、請求項31または32に記載のキット。
【請求項34】
チオールキレーターが、マレイミド基、ヨードアセチル基、ピリジルジチオール基およびキノン基からなる群から選択される化合物またはそれらの組合せである、請求項33に記載のキット。
【請求項35】
還元型チオール基に結合し得る検出可能な化合物がビオチン、蛍光物質、酵素、化学発光物質、放射性同位元素、および磁性体からなる群から選択される物質により標識されている、請求項31〜34のいずれか1項に記載のキット。
【請求項36】
生体由来の試料中の酸化ストレスを引き起こす物質を測定することにより、生体の酸化ストレスを検出するために用いる、請求項31〜35のいずれか1項に記載のキット。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−292441(P2008−292441A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203511(P2007−203511)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(504165591)国立大学法人岩手大学 (222)
【Fターム(参考)】