説明

固相抽出カラムの水分除去確認方法及び固相抽出カラムの水分除去確認装置並びに固相抽出カラム

【課題】本発明は、固相抽出カラム内の水分除去の確認が簡単に行える固相抽出カラムの水分除去確認方法及び固相抽出カラムの水分除去確認装置を提供することにある。
【解決手段】本発明は、固相抽出カラム1に試料流体を通過させた後の脱水処理時に、前記固相抽出カラム1に、水分の存在に反応して変色する感水性物質を添加充填して、感水性物質の変色状況を目視するようにしたのである。
以上のように、感水性物質を添加し、この感水性物質の変色状況を目視することで、残留水分の有無を簡単に確認することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固相抽出カラムの水分除去確認方法及び固相抽出カラムの水分除去確認装置並びに固相抽出カラムに係り、特に、分析装置によって分析される試料流体中の目的成分を分離濃縮するために用いられる固相抽出カラムの水分除去を容易に確認できる固相抽出カラムの水分除去確認方法及び固相抽出カラムの水分除去確認装置並びに固相抽出カラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、試料流体である水試料中の農薬などの目的成分を分析するには、固相抽出/ガスクロマトグラフ質量分析法や、固相抽出/ガスクロマトグラフ法が知られている。
【0003】
そして、水試料中の農薬を迅速に分離濃縮するために、固相となる樹脂を充填した固相抽出カラムを用意し、この固相抽出カラムに水試料を通過させ、固相となる樹脂に農薬を付着させている。その後、固相抽出カラム内の水分を吸引又は窒素ガスの吹き付けによって除去し、樹脂に付着した農薬を溶液にて溶出させ、その溶出液を濃縮して分析装置によって分析している。
【0004】
尚、関係する技術として特許文献1が存在する。
【0005】
【特許文献1】特開2006−30175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記背景技術による目的成分の抽出は、固相抽出カラム内の水分除去が十分に行われることが前提となる。即ち、水分の除去が不充分であると、溶出液中に水分が混入するので目的成分の回収率が低下して分析結果の信頼性を低下させることになる。
【0007】
そこで、固相抽出カラム内の目的成分を抽出する前に、十分に時間をかけて水分除去操作を行う必要がある。しかし、この水分除去操作の所要時間は、経験に基づくものであり、固相抽出カラム内の構造によっても水分除去操作時間は変化するので、残存水分の有無を確認できる手段の出現が望まれていた。
【0008】
本発明の目的は、固相抽出カラム内の水分除去の確認が簡単に行える固相抽出カラムの水分除去確認方法及び固相抽出カラムの水分除去確認装置並びに固相抽出カラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために、固相抽出カラムに試料流体を通過させた後、固相抽出カラムの脱水処理時に、前記固相抽出カラムに、水分の存在に反応して変色する感水性物質を添加充填して、感水性物質の変色状況を目視するようにしたのである。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、感水性物質を添加充填し、この感水性物質の変色状況を目視することで、残留水分の有無を簡単に確認することができる固相抽出カラムの水分除去確認方法及び固相抽出カラムの水分除去確認装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明による固相抽出カラムの水分除去確認方法の第1の実施の形態を、図1に示す固相抽出カラムの水分除去確認装置に基づいて説明する。本実施例による固相抽出カラムの水分除去確認装置は、固相抽出カラム1と、この固相抽出カラム1に着脱される水分除去確認用カートリッジ5とから構成される。
【0012】
固相抽出カラム1は、試料流体を流入させる入口部2と、この下流側に形成され内部に目的成分を付着させる樹脂などの充填材を封入した充填材封入部3と、この充填材封入部3の下流側に形成され目的成分以外を流出させる出口部4とを有している。
【0013】
一方、水分除去確認用カートリッジ5は、透明な材料で形成されており、前記固相抽出カラム1の出口部4の外周に装着される入口部6と、その下流側に形成され感水性物質を添加充填して添加部分を構成する水分確認部(変色確認部)7と、この水分確認部7の下流側に形成された出口部8とを有している。水分確認部7内に添加充填される感水性物質は、塩化コバルト又は塩化コバルト水溶液を含浸させたシリカゲルあるいはフロリジル又はポリマーベースの樹脂やパルプ繊維などである。塩化コバルトは、青色をしており、水分に感応するとピンク色に変化し、水分が除去されると青色に戻る。また、塩化コバルト水溶液は、赤色又はピンク色をしており、水分が除去されると塩化コバルトの青色に戻る。
【0014】
次に、試料流体として水試料を用いた場合の本実施例による残存水分の確認手順を図1及び図2を用いて説明する。
【0015】
まず、固相抽出カラム1を、工程(1)で、減圧装置又は加圧装置に取付ける。この減圧装置又は加圧装置により、工程(2)で、固相抽出カラム1の入口部2から出口部4に流れるようにジクロロメタンやメチルアルコールなどの有機溶媒や精製水を通過させて、固相抽出カラム1のコンディショニングを行う。その後、工程(3)で、水試料を固相抽出カラム1の入口部2から出口部4に流れるように通水させる。この水試料の通水により、固相抽出カラム1の充填材封入部3内の充填材には、農薬などの目的成分が付着する。同時に、固相抽出カラム1の容積量又は充填材量に見合った水分も留まる。
【0016】
次に(4)工程で、固相抽出カラム1の下流側である出口部4に、感水性物質を添加充填した水分除去確認用カートリッジ5の入口部6を装着して図1(B)に示すように接続し、この状態で、(5)工程である空気の吸引又は窒素ガス吹き付けによる脱水処理を行う。吸引による空気や吹き付けられる窒素ガスは、固相抽出カラム1を通過し、残存水分を水分除去確認用カートリッジ5に移動させる。水分除去確認用カートリッジ5に移動した水分により、水分確認部7内に添加充填された感水性物質は変色するので、これを(6)工程で目視する。さらに、(6)工程で目視しながら(5)工程により、空気の吸引又は窒素ガス吹き付けによる脱水操作を継続させると、固相抽出カラム1内から水分が除去され、その結果、水分除去確認用カートリッジ5への残存水分の移動もなくなるので、水分確認部7内の感水性物質は元の色に戻る。
【0017】
固相抽出カラム1内の残存水分がなくなったことが確認されたなら、(7)工程で固相抽出カラム1から水分除去確認用カートリッジ5を取外して図1(A)に示すように分離し、(8)工程で固相抽出カラム1内にジクロロメタン等の有機溶媒を通して、充填材封入部3内に保持された農薬などの目的成分を溶出する。
【0018】
溶出により得られた溶出液は、(9)工程で窒素ガス吹き付けなどにより、定量になるまで濃縮操作を行う。定量になった溶出液は、(10)工程で分析装置による分析が行われる。
【0019】
このように本実施の形態によれば、目視により固相抽出カラム1内の残存水分の有無が簡単に確認できるので、必要以上に脱水操作を継続させたり、残存水分が存在するにも拘らず脱水操作を停止させたりする不確定動作をなくすことができる。
【0020】
ところで上記実施の形態においては、水分除去確認用カートリッジ5は、固相抽出カラム1の出口部4の外周に装着される入口部6を有しているが、この入口部6を固相抽出カラム1の出口部4の内周に装着されるように構成してもよい。また、水分除去確認用カートリッジ5は、全体を透明な材料で形成して水分確認部(変色確認部)7で残存水分の有無を確認するようにしたものであるが、水分確認部7のみを透明材料で形成してもよく、さらに水分確認部7の一部に透明材料で形成した確認窓を設けて充填材の変色を目視して残存水分の有無を確認するようにしてもよい。
【0021】
以上の第1の実施の形態は、固相抽出カラム1の下流側に水分除去確認用カートリッジ5を連結して水分除去の確認を行うものであるが、水分除去確認用カートリッジ5を用いずに水分除去の確認を行う本発明による固相抽出カラムの水分除去確認方法の第2の実施の形態を、図3に基づいて説明する。
【0022】
即ち、第2に実施の形態においては、図2に示す残存水分の確認手順のうち、(4)工程を変え、(7)工程を省略したものである。
【0023】
具体的に説明すると、まず、固相抽出カラム1の少なくとも充填材封入部3の一部あるいは充填材封入部3の全体を透明材料で形成して変色確認部とする。その上で、図2に示す確認手順と同じように、(1)〜(3)工程を行い、(4´)工程で、感水性物質を固相抽出カラム1内に添加する。
【0024】
その後は、図2に示す確認手順と同じように、(5),(6)工程を経て固相抽出カラム1内の感水性物質の変色状態を確認して、残存水分の有無を確認する。
【0025】
その後、図2に示す確認手順と同じように、(8)〜(10)工程を経るのである。
【0026】
このように、水分除去確認用カートリッジ5を用いなくても、第1の実施の形態と同様に、残存水分の有無を十分に確認することができる。
【0027】
次に、本発明による第2の実施の形態と従来による水分除去状態の確認試験の結果を図4に基づいて説明する。
【0028】
実験では、5つの固相抽出カラムを用い、感水性物質として5%の塩化コバルト水溶液を、注射器を用いて固相抽出カラム1の充填材封入部3内の充填材に1ml添加注入して充填し、夫々の固相抽出カラムに対し、遠心分離機による脱水操作や窒素ガス吹き付けによる脱水操作を行い、5つの固相抽出カラムの充填材の変色状態を目視で確認した。その検証のため、残存水分量の計測及びジクロロメタン8mlによる溶出操作を行った。
【0029】
上記確認試験において、遠心分離機による10分間脱水、及び窒素ガス吹き付けによる10分間脱水を行った固相抽出カラムの実験例1,2は、充填材がピンク色を呈し、6.27〜13.16%の残存水分が確認され、ジクロロメタンによる目的成分の溶出においては溶出液中にピンク色の呈した水が混入していた。
【0030】
これら実験例1,2に対し、窒素ガス吹き付けによる20分、30分、40分脱水を行った固相抽出カラムの実験例3,4,5は、脱水後の青色に戻り、残存水分も0.85〜0.88%と安定した値となり、ジクロロメタンによる目的成分の溶出においても溶出液中に水の混入は確認されず、充填材が良好に乾燥していることが確認された。
【0031】
尚、図1に示す水分除去確認用カートリッジ5を併用した場合においても、水分確認部7内の充填材に5%の塩化コバルト水溶液を1ml注入して同じ実験を行ったところ、ほぼ同様な結果を得ることができた。
【0032】
このように、本実施の形態によれば、リアルタイムで残存水分の有無を確認することができるので、水試料や固相抽出カラムの種類に応じた的確な脱水処理を行うことができる。
【0033】
ところで以上の説明は、試料流体として水試料を用いて説明したが、ガスや大気などの分析前の水分除去にも適用できることは云うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の固相抽出カラムの水分除去確認方法の第1の実施の形態に用いる固相抽出カラムの水分除去確認装置を示し、図1(A)は分解斜視図、図1(B)は接続斜視図。
【図2】図1に示す固相抽出カラムの水分除去確認装置を用いた残存水分の確認手順のフロー図。
【図3】本発明による別な残存水分の確認手順のフロー図。
【図4】水分除去状態の確認試験の結果を示す比較図。
【符号の説明】
【0035】
1…固相抽出カラム、2…入口部、3…充填材封入部、4…出口部、5…水分除去確認用カートリッジ、6…入口部、7…水分確認部(変色確認部)、8…出口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料流体を通過させ、目的成分を吸着させるようにした固相抽出カラムの水分を除去し残存水分の有無を確認する固相抽出カラムの水分除去確認方法において、前記固相抽出カラムに、水分の存在に反応して変色する感水性物質を添加し、感水性物質の変色状況を目視するようにしたことを特徴とする固相抽出カラムの水分除去確認方法。
【請求項2】
前記感水性物質として、塩化コバルト又は塩化コバルト水溶液を添加することを特徴とする請求項1記載の固相抽出カラムの水分除去確認方法。
【請求項3】
前記感水性物質の添加は、固相抽出カラムの脱水処理時に行うことを特徴とする請求項1記載の固相抽出カラムの水分除去確認方法。
【請求項4】
前記感水性物質の添加は、試料流体の分析前に行うことを特徴とする請求項1記載の固相抽出カラムの水分除去確認方法。
【請求項5】
試料流体を通過させ、目的成分を吸着させるようにした固相抽出カラムの水分を除去し、その除去状態を確認する固相抽出カラムの水分除去確認方法において、前記固相抽出カラムからの脱水処理時、前記固相抽出カラムの下流側に、水分の存在に反応して変色する感水性物質を添加すると共に、感水性物質の添加部分に前記固相抽出カラムから通気させて脱水を行い、前記感水性物質の変色状況を目視するようにしたことを特徴とする固相抽出カラムの水分除去確認方法。
【請求項6】
前記感水性物質として、塩化コバルト又は塩化コバルト水溶液を添加することを特徴とする請求項5記載の固相抽出カラムの水分除去確認方法。
【請求項7】
試料流体を通過させ、目的成分を吸着させるようにした固相抽出カラムの水分を除去し残存水分の有無を確認する固相抽出カラムの水分除去確認装置において、前記固相抽出カラムの下流側に、水分の存在に反応して変色する感水性物質を充填し変色確認部が形成された水分除去確認用カートリッジを装着するようにしたことを特徴とする固相抽出カラムの水分除去確認装置。
【請求項8】
前記変色確認部は、水分除去確認用カートリッジに透明材料で形成された確認窓であることを特徴とする請求項7記載の固相抽出カラムの水分除去確認装置。
【請求項9】
前記変色確認部は、水分除去確認用カートリッジを透明材料で形成したものであることを特徴とする請求項7記載の固相抽出カラムの水分除去確認装置。
【請求項10】
前記水分除去確認用カートリッジは、前記固相抽出カラムの出口に着脱可能に接続されるものであることを特徴とする請求項7,8又は9記載の固相抽出カラムの水分除去確認装置。
【請求項11】
試料流体を流入させる入口部と、この下流側に形成され内部に目的成分を付着封入させる封入部と、この封入部の下流側に形成された出口部とを備えた固相抽出カラムにおいて、前記封入部に水分の存在に反応して変色する感水性物質を充填した時、その変色状態を確認する変色確認部を前記封入部に設けたことを特徴とする固相抽出カラム。
【請求項12】
試料流体を流入させる入口部と、この下流側に形成され内部に目的成分を付着させる充填材を封入した充填材封入部と、この充填材封入部の下流側に形成された出口部とを備えた固相抽出カラムにおいて、前記充填剤封入部に水分の存在に反応して変色する感水性物質を充填した時、その変色状態を確認する変色確認部を前記充填材封入部に設けたことを特徴とする固相抽出カラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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